IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 江蘇納盾科技有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維 図1
  • 特許-抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/10 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
D01F1/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020562805
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2018093197
(87)【国際公開番号】W WO2019144567
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-06-06
(31)【優先権主張番号】201810084187.6
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810344876.6
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522412448
【氏名又は名称】江蘇納盾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(72)【発明者】
【氏名】鄭 敏
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-249184(JP,A)
【文献】特開2000-119914(JP,A)
【文献】特表2014-501309(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103789868(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101993527(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101134815(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108048932(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1552765(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102345179(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105714402(CN,A)
【文献】国際公開第2005/097880(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101187087(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107137754(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102020762(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106835341(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08G 85/00
D01F 1/00 - 6/96
D01F 9/00 - 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ(1)-(3)を含む抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維の製造方法であって、
ステップ(1)において、可溶性金属塩と高分子複合分散剤とを1:0.02-0.5の質量比で水に溶解し、可溶性金属塩の質量濃度が5-10%の水溶液を調整し、ポリマー単量体における前記溶性金属塩のモル濃度が0.01-0.5Mとなるように、激しく攪拌しながら前記水溶液をポリマー単量体に入れ、温度が130-180℃のマイクロ波又は水熱条件下で30-50分間反応させ、含水率が2%以下に制御されるように、真空状態下で水分を蒸発除去することにより、ナノ酸化物を含むポリマー単量体が得られ、前記可溶性金属塩は、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、銅、アルミニウム、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、シリコンの化合物からなる群より選択される2種又は複数種であり、前記高分子複合分散剤は、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ無水マレイン酸、ポリクオタニウム、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリアミド、アミノ酸からなる群より選択され、前記ポリマー単量体は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、エチレンジアミン、カプロラクタム、アミノ酸からなる群より選択され、
ステップ(2)において、重合反応の開始段階又は中間段階で、ステップ(1)で得られたナノ酸化物を含むポリマー単量体を通常のポリマー単量体及び重合に必要な他の単量体に入れ、十分に混合した後、通常のポリマー単量体の重合プロセス条件で重合反応させることにより、抗菌・紫外線遮蔽多機能ポリマー溶融体が得られ、
ステップ(3)において、ステップ(2)で得られたポリマー溶融体を紡糸することにより、抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維が得られることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(2)において、前記通常のポリマーは、PET、PBT、PTT、PA、ABS、PP、PE、PVC、PUからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場重合により得られた抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維に関し、特殊紡績材料の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
化学繊維は、その優れた物理的性能及び化学的性能により幅広く使用されている。しかし、科学技術の発展及び人々の生活水準のさらなる向上につれて、機能性化学繊維織物の開発及び応用は、機能性織物の研究開発の主要な方向となっている。化学繊維の特性により、長く続く効果を得るために、機能化学繊維の生産方法は、主にブレンド紡糸である。例えば、中国特許CN1049063028Aには、抗菌ポリエステル繊維の製造方法が開示されている。この製造方法では、抗菌ポリエステル繊維は、PETポリエステルスライス、抗菌ポリエステル母粒子を溶融紡糸することにより製造される。抗菌ポリエステル母粒子は、PETポリエステルスライスと、前処理ナノ銀抗菌剤、酸化防止剤、潤滑剤および分散剤を溶融ブレンドして押出することにより製造され、前処理ナノ銀抗菌剤は、ポリエチレンワックスで包埋処理して得られたナノ銀抗菌剤である。この方法により、ナノ銀抗菌剤がPETマトリックスにおいて小粒子径で均一に分布する問題が解決され、溶融紡糸により効果が高い長時間作用型抗菌ポリエステル繊維が製造される。中国特許CN103184575Aには、抗菌ナイロンの生産方法が開示されている。当該方法は、以下のステップを含む。(1)抗菌ナイロン母粒子の調製:ナイロン6スライスとナノ銀リン酸塩とをブレンド造粒することで、抗菌ナイロン母粒子が得られる。(2)紡糸:ステップ(1)で得られた抗菌ナイロンとナイロン6スライスをブレンド紡糸し、油をかけて巻き付け、バランスし、引っ張ることにより、抗菌ナイロンが得られる。当該方法では、ナノ銀リン酸塩をそのままナイロンに入れることにより、ナイロンの物理的性能が低下し、製品の使用寿命が影響される。事前に調製されたナノ材料を直接ポリマー単量体に分散させてから他のポリマー単量体と混合して重合することが開示された文献がある。例えば、中国特許CN102345179Aには、ナノ酸化亜鉛改質ポリエステル繊維の製造方法が開示されている。この方法では、酸化亜鉛などの金属酸化物をそのままポリマー単量体に分散させて混合する。中国特許CN105962510Aにおいて、ナノミネラルエネルギー改質剤を高分子単量体の重合端から添加する方法により、ナノミネラルエネルギー繊維が得られる。上記方法では、ナノ材料がポリマー単量体に均一に分散しにくく、使用される酸化物の粒子サイズが20nmよりも大きいため、性能の発揮に影響を与え、ノズルの目詰まりをもたらす恐れがある。米国特許UA9527918B2には、亜鉛を含む塩をポリマー単量体に溶解してから、他の単量体と重合させて紡糸する方法が開示されている。しかし、この方法では、製品の抗菌性は亜鉛イオンの析出に依存するので、ただ亜鉛イオンが比較的低い濃度で析出するように制御されるだけであり、問題を根本的に解決するものではなく、機能が単一である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の多機能化学繊維技術の不足に対して、現場重合により得られた抗菌紫外線遮蔽多機能化学繊維を提供する。当該化学繊維は、効果が高く耐久的な抗菌・紫外線遮蔽多機能を有し、金属イオンの析出がなく、使用が安全で環境に優しい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的を実現するための技術手段は、以下のステップ(1)-(3)を含む抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維の製造方法であって、
ステップ(1)において、可溶性金属塩と高分子複合分散剤とを1:0.02-0.5の質量比で水に溶解し、可溶性金属塩の質量濃度が5-10%の水溶液を調整し、ポリマー単量体における前記溶性金属塩のモル濃度が0.01-0.5Mとなるように、激しく攪拌しながら前記水溶液をポリマー単量体に入れ、温度が130-180℃のマイクロ波又は水熱条件下で30-50分間反応させ、含水率が2%以下に制御されるように、真空状態下で水分を蒸発除去することにより、ナノ酸化物を含むポリマー単量体が得られ、前記可溶性金属塩は、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、銅、アルミニウム、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、シリコンの化合物からなる群より選択される2種又は複数種であり、前記高分子複合分散剤は、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ無水マレイン酸、ポリクオタニウム、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリアミド、アミノ酸からなる群より選択され、前記ポリマー単量体は、エタノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、プロパノール、エチレンジアミン、カプロラクタム、アミノ酸からなる群より選択され、
ステップ(2)において、重合反応の開始段階又は中間段階で、ステップ(1)で得られたナノ酸化物を含むポリマー単量体を通常のポリマー単量体及び重合に必要な他の単量体に入れ、十分に混合した後、通常のポリマー単量体の重合プロセス条件で重合反応させることにより、抗菌・紫外線遮蔽多機能ポリマー溶融体が得られ、
ステップ(3)において、ステップ(2)で得られたポリマー溶融体を紡糸することにより、抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維が得られるか、又はポリマー溶融体をストリップキャスティングしてスライスすることにより、抗菌・紫外線遮蔽多機能母粒子切片が得られる、製造方法を提供する。
【0005】
前記通常のポリマーは、PET、PBT、PTT、PA、ABS、PP、PE、PVC、PUからなる群より選択される。
【0006】
本発明は、化学繊維重合で用いられる単量体の一つを媒体とし、媒体中でそのまま5nm未満なナノ酸化物(多機能ナノ酸化物を含む単量体)をその場で合成し、さらに他の通常のポリマー単量体と重合反応させることにより、効果が高い多機能化学繊維又は母粒子が得られる。
【0007】
本発明で得られた抗菌・紫外線遮蔽多機能化学繊維は、プロセスが簡単で、効率が高く、省エネで環境に優しいだけではなく、製品は効果が高く耐久的な抗菌・紫外線遮蔽多機能を有し、金属イオンの析出がなく、使用が安全で環境に優しく、現在一般的に使用されている銀イオンによる析出変色及び機能単一などの問題を効果的に解決することができる。重合反応前に単量体中でナノ金属酸化物をその場で生成することにより、ナノ金属酸化物の小粒径及び分散性が保証され、後続の紡糸及び製織に影響を与えないとともに、ナノ金属酸化物の半導体触媒作用により単量体の重合速度が速くなり、通常よりも3分の1の時間が節約され、エネルギーが節約される。
【0008】
従来の機能化学繊維と比較して、事前に単量体内でナノ酸化物がその場で合成されたので、粒径が小さく、分散性に優れ、後続の紡糸及び製織に影響を与えないとともに、機能に優れ、金属イオンの析出がなく、非常に安全で環境に優しい。従来の化学繊維合成と比較して、ナノ金属酸化物の触媒効果により、重合時間が大幅に短縮され、効率が向上し、エネルギーが節約される。
【0009】
ナノ酸化物は、単量体内でその場で合成されたので、粒径が小さく、分散性に優れ、後続の紡糸及び製織に影響を与えないとともに、機能に優れ、金属イオンの析出がなく、非常に安全で環境に優しい。従来の化学繊維合成と比較して、ナノ金属酸化物の触媒効果により、重合時間が大幅に短縮され、効率が向上し、エネルギーが節約される。
【発明の効果】
【0010】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する。
1.化学繊維重合で用いられる単量体の一つを媒体とし、そのまま5nm未満なナノ酸化物をその場で合成することにより、再び分散する必要がなく、他の重合単量体との相溶性が良好である。
【0011】
2.ナノ金属酸化物の触媒効果により、重合時間が大幅に短縮され、効率が向上し、エネルギーが節約される。
【0012】
3.本発明の提供する抗菌・紫外線遮蔽多機能繊維は、極めて強い耐久的な抗菌・紫外線遮蔽機能を有し、金属イオンの析出がなく、使用が安全で環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係るナノ抗菌・紫外線遮蔽多機能ポリエステルの紫外線保護効果図である。
図2】本発明の実施例1に係るナノ抗菌・紫外線遮蔽多機能ポリエステル繊維の抗菌効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例及び図面を参照しながら本発明の技術手段をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
硫酸チタン、酢酸亜鉛、ポリエチレングリコールを0.5:0.5:0.1の質量比で水に溶解し、6%の水溶液を調製した。水溶液を激しく攪拌しながら5000mlのエチレングリコールに徐々に加えた後、電子レンジに置き、温度150℃の条件下で40分間反応させた後、冷却し、粒子サイズが5nm以下のナノ金属酸化物を含むエチレングリコール単量体を得た。さらに、真空状態下で含水率が2%以下となるように水分を蒸発し、前記ナノ金属酸化物を含むエチレングリコール単量体、テレフタル酸をモル比1.2:1でエステル化重合反応釜に入れ、さらに質量%で触媒三酸化アンチモン0.05%、安定化剤リン酸トリエチル0.02%を加え、釜圧2.0MPa、温度200℃の条件下で1時間エステル化反応させ、その後、真空システムをオンにし、270℃まで昇温し、2.5時間重縮合反応させた後、生成物を糸状に吐出し、冷却し、成形することにより、抗菌・紫外線遮蔽機能を有するポリエステル繊維が得られた。
【0015】
図1は、本実施例に係る機能ポリエステル織物と通常のポリエステル製品の紫外線保護効果の比較図である。同図における曲線から分かるように、本実施例に係るナノ抗菌・紫外線遮蔽多機能ポリエステルの紫外線保護指数は、通常のポリエステルよりも顕著に高い。
【0016】
図2は、本発明の実施例に係るナノ抗菌・紫外線遮蔽多機能ポリエステル繊維と通常のポリエステルの抗菌効果の比較図である。図2Aは、通常のポリエステルであり、図2Bは、本実施例に係る抗菌・紫外線遮蔽多機能ポリエステルであり、図2Cは、50回水洗した後の抗菌・紫外線遮蔽多機能ポリエステルである。
【0017】
(実施例2)
酢酸銅、酢酸亜鉛、硫酸チタン、ポリビニルピロリドンを0.4:0.3:0.3:0.2の質量比で水に溶解し、7%の水溶液を調製し、水溶液を激しく攪拌しながら5000mlの1,3-プロピレングリコールに徐々に加え、電子レンジに置き、温度170℃の条件下で30分間反応させた後、冷却し、粒子サイズが5nm以下のナノ金属酸化物を含む1,3-プロピレングリコール単量体を得た。さらに、真空状態下で含水率が2%以下となるように水分を蒸発し、ナノ金属酸化物を含む1,3-プロピレングリコール単量体とテレフタル酸ジメチルとをモル比1.5:1、触媒チタン酸テトラブチル0.05%、安定化剤リン酸トリエチル0.03%を反応釜に加え、窒素ガスの保護下で、釜圧0.1MPa、210℃下で1時間エステル化させ、その後、重縮合反応釜に転移し、高真空下で250℃まで昇温し、重縮合を開始し、4.5時間反応させた後、生成物を糸状に吐出し、冷却し、スライスすることにより、抗菌・紫外線遮蔽PPT化学繊維母粒子が得られた。
【0018】
(実施例3)
硫酸チタン、硝酸亜鉛、オキシ塩化ジルコニル及びポリエチレングリコールを0.3:0.4:0.3:0.5の質量比で水に溶解し、6%の水溶液を調製し、水溶液を激しく攪拌しながら5000mlのアジピン酸に徐々に加え、水熱反応釜に置き、160℃下で40分間反応させ、冷却し、粒子サイズが5nm以下のナノ金属酸化物を含むアジピン酸単量体を得た後、カプロラクタム単量体及び少量の水、酢酸コバルト、ナイロン単量体塩などの物質を反応釜に加え、窒素雰囲気、釜圧2.0MPa、235℃下で4時間反応させた後、ナノ金属酸化物を含むアジピン酸単量体を加え、引き続き2時間反応させ、ポリエチレングリコールソフトセグメント、触媒チタン酸テトラブチルを加え、247℃まで昇温し、引き続き2時間反応させ、抗菌・紫外線遮蔽PA6溶融体を得、反応終了後、生成物を糸状に吐出し、冷却し、スライスすることにより、抗菌・紫外線遠赤外線遮蔽PA6ナイロン母粒子が得られた。
図1
図2