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特許7197609封止剤、硬化体、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】封止剤、硬化体、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20221220BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20221220BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20221220BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221220BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C09K3/10 E
C09K3/10 M
C09K3/10 B
C08F220/00
C08F2/46
H05B33/04
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L27/32
H01L23/30 F
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020566489
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001385
(87)【国際公開番号】W WO2020149384
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019005937
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰則
(72)【発明者】
【氏名】栗村 啓之
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸彦
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/69400(WO,A1)
【文献】特開2003-268072(JP,A)
【文献】特開平4-253757(JP,A)
【文献】国際公開第2014/17524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
H01L23/28-23/31
H01L27/32
H05B33/00-33/28
C08F2/00-2/60
C08F220/00-220/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性モノマーと重合開始剤とを含有し、
23℃雰囲気下における比重が1.3以上であり、
硬化体の23℃雰囲気下における比重が1.3~3.0であり、
前記重合性モノマーが、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、封止剤。
【請求項2】
前記硬化体の60℃雰囲気下における比重が1.3~3.0である、請求項1に記載の封止剤。
【請求項3】
前記硬化体のガラス転移温度が60℃以上である請求項1又は2に記載の封止剤。
【請求項4】
前記硬化体の架橋密度が1.0×10-3mol/cm以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項5】
前記重合性モノマーが、原子番号9以上の元素を有する重合性モノマー(X)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項6】
前記重合性モノマー(X)が、ハロゲン族元素を有する請求項5に記載の封止剤。
【請求項7】
前記重合性モノマー(X)が、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される少なくとも一種を有する請求項5又は6に記載の封止剤。
【請求項8】
前記重合性モノマー(X)に含まれるハロゲン族元素の含有量が、前記重合性モノマーの総元素量に対して、10~50質量%ある請求項7に記載の封止剤。
【請求項9】
前記重合性モノマーが、重合性官能基を2個以上有する架橋性モノマー(Y)を含有する請求項1~8のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項10】
前記重合開始剤が、光重合開始剤である請求項1~9のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項11】
前記重合性モノマーが、芳香環を有するモノマーを含有する請求項1~10のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項12】
前記重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤である請求項1~11のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項13】
前記重合性モノマー100質量部中、原子番号9以上の元素を有する重合性モノマー(X)の含有量が、40~90質量部である請求項1~12のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項14】
前記重合性モノマーの100質量部中、重合性官能基を2個以上有する架橋性モノマー(Y)の含有量が、5~60質量部である請求項1~13のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項15】
前記重合性モノマーの100質量部に対して、前記重合開始剤の含有量が、0.01~5質量部である請求項1~14のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項16】
前記硬化体の、JIS Z0208に準拠して、温度60℃、相対湿度90%の条件下で測定される、100μm厚での透湿度が40g/m以下である請求項1~15のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項17】
前記硬化体の、厚さ10μm当たりの360nm以上800nm以下の紫外-可視光線領域の光透過率が、95%以上である請求項1~16のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項18】
有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項19】
第一の部材と第二の部材とを含む装置の製造方法であって、
前記第一の部材に、請求項1~18のいずれか一項に記載の封止剤を付着させる付着工程と、
付着させた前記封止剤に光を照射する照射工程と、
光照射された前記封止剤を介して、前記第一の部材と前記第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、
を備える、装置の製造方法。
【請求項20】
前記第一の部材が有機エレクトロルミネッセンス素子であり、
前記第二の部材が基板であり、
前記装置が有機エレクトロルミネッセンス表示装置である、
請求項19に記載の装置の製造方法。
【請求項21】
前記第一の部材が基板であり、
前記第二の部材が有機エレクトロルミネッセンス素子であり、
前記装置が有機エレクトロルミネッセンス表示装置である、
請求項19に記載の装置の製造方法。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか一項に記載の封止剤の硬化体。
【請求項23】
有機エレクトロルミネッセンス素子と、請求項22に記載の硬化体と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項24】
無機膜と有機膜とが積層した積層体を含み、
前記有機膜が請求項22に記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項25】
無機膜と有機膜とが積層した積層体を含み、
有機エレクトロルミネッセンス素子に直接積層した有機膜が、請求項22に記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止剤、硬化体、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示素子(以下、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機EL表示素子又は有機EL素子ということもある。)や有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子を用いた有機光デバイスの研究が進められている。有機薄膜素子は真空蒸着や溶液塗布等により簡便に作製できるため、生産性に優れる。
【0003】
有機EL表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された薄膜構造体を有る。この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して自己発光を行う。バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有する。
【0004】
ところが、このような有機EL表示素子は、有機発光材料層や電極が外気に曝されるとその発光特性が急激に劣化し寿命が短くなるという問題があった。従って、有機EL表示素子の安定性及び耐久性を高めることを目的として、有機EL表示素子においては、有機発光材料層や電極を大気中の水分や酸素から遮断する封止技術が不可欠となっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、上面発光型有機EL表示素子等において、有機EL表示素子基板の間に光硬化性の封止剤を満たし、光を照射して封止する方法が開示されている。また、特許文献2~4には、有機EL表示素子を封止し、水分による劣化を防止する技術が開示されている。
【0006】
一方、特許文献5には、(A)エポキシ化合物と(B)エポキシ樹脂と(C)光カチオン重合開始剤を含有し、かつ、水分量が1000ppm以下であり、塩素量が1000ppm以下である樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献5には、重合性モノマーの比重を調整することにより、透湿度を低くすることについて記載はない。
【0007】
特許文献6には、カチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤、及び、特定形状の板状の微粒子無機フィラーを含有した光硬化型樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この様な樹脂組成物では微粒子無機フィラーの影響により透明性が損なわれ、透明性を要求される用途、例えば、上面発光型有機EL表示素子への適用が困難という問題点があった。また、特許文献6には、重合性モノマーの比重に関する記載はない。
【0008】
特許文献7には、多官能カチオン重合性化合物と、有機化層状珪酸塩と、硬化剤とを含有し、前記有機化層状珪酸塩は、前記多官能カチオン重合性化合物中に分散し、前記有機化層状珪酸塩の含有量が、前記多官能カチオン重合性化合物100重量部に対して、20~250重量部であることを特徴とする透明性及びバリア性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この様な樹脂組成物では有機化層状珪酸塩の影響により透明性が損なわれ、透明性が要求される用途、例えば上面発光型有機EL表示素子への適用が困難という問題点があった。また、特許文献7には、重合性モノマーの比重に関する記載はない。
【0009】
特許文献8には、特定の比率で(a)エポキシ化合物及び(b)前記エポキシ化合物と反応性の架橋性基を2個以上有する化合物を含有し、屈折率が1.6以上である透明性かつ低透湿性のエポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この様な樹脂組成物では透過率が低く、高い透明性が要求される用途への適用が困難、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置の視認性を下げるという問題点があった。また、特許文献8には、重合性モノマーの比重に関する記載はない。
【0010】
特許文献9には、特定の反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)と特定の反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)を含む硬化性組成物であって、当該硬化性組成物の比重が0.9以上1.3以下であることを特徴とする硬化性組成物が開示されている。しかしながら、特許文献9には、重合性モノマーの比重を調整することにより、透湿度を低くすることについて記載はない。
【0011】
特許文献10には、特定構造の臭素付加型ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートを10~70重量%を含む組成物を光重合することにより得られる共重合体からなり、屈折率1.58以上、比重1.5以下、アッベ数30以上である光硬化性樹脂製レンズが開示されている。しかしながら、特許文献10には、重合性モノマーの比重を調整することにより透湿度を低くすることについて記載はないし、有機EL表示素子の封止に関する記載もない。
【0012】
特許文献11には、光重合し、官能性アクリル基を有する特定のポリシロキサン共重合体であって、約1.0より大きい比重と、自然の結晶質レンズの屈折能を復元するに適した屈折率を有するポリシロキサン共重合体が開示されている。しかしながら、特許文献11には、重合性モノマーの比重を調整することにより、透湿度を低くすることについて記載はないし、有機EL表示素子の封止に関する記載もない。
【0013】
特許文献12には、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性化合物(A)、光ラジカル重合開始剤(C)及び(又は)光カチオン重合開始剤(D)よりなり、樹脂組成物の比重が1.4(25℃)以上、粘度が1,000ポイズ(25℃)以下であるモータ類回転子のバランス用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献12には、重合性モノマーの比重を調整することにより、透湿度を低くすることについて記載はないし、有機EL表示素子の封止に関する記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2001-357973号公報
【文献】特開平10-74583号公報
【文献】特開2001-307873号公報
【文献】特開2009-37812号公報
【文献】国際公開第2014/017524号
【文献】特開2006-291072号公報
【文献】国際公開第2015/129783号
【文献】特開2010-163566号公報
【文献】特開2010-163566号公報
【文献】特開2001-124903号公報
【文献】特表2002-527171号公報
【文献】特開平08-109231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、電子デバイスの要求特性が高まり、例えば、有機EL表示素子に対するより高い信頼性及び耐久性を実現可能な封止剤が求められている。
【0016】
しかしながら、特許文献1~4に開示された技術では、有機EL表示素子に対する十分な信頼性及び耐久性が実現できない場合があった。
【0017】
また、特許文献6~7に記載の樹脂組成物では、透明性に課題があり、有機EL表示素子(特に、上面発光型有機EL表示素子)への適用が困難であった。
【0018】
また、特許文献8に記載の樹脂組成物では、透明性に課題があり、有機EL表示素子(特に、上面発光型有機EL表示素子)への適用が困難であった。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低透湿性及び透明性に優れる、有機EL表示素子用封止剤として好適な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
即ち、本発明は、以下の通りである。
<1>重合性モノマーと重合開始剤とを含有し、23℃雰囲気下における比重が1.3以上であり、硬化体の23℃雰囲気下における比重が1.3~3.0である、封止剤。
<2>硬化体の60℃雰囲気下における比重が1.3~3.0である、<1>に記載の封止剤。
<3>硬化体のガラス転移温度が60℃以上である<1>又は<2>に記載の封止剤。
<4>硬化体の架橋密度が1.0×10-3mol/cm以上である<1>~<3>のいずれかに記載の封止剤。
<5>重合性モノマーが、原子番号9以上の元素を有する重合性モノマー(X)を含有する<1>~<4>のいずれかに記載の封止剤。
<6>重合性モノマー(X)が、ハロゲン族元素を有する<5>に記載の封止剤。
<7>重合性モノマー(X)が、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される少なくとも一種を有する<5>又は<6>に記載の封止剤。
<8>重合性モノマー(X)に含まれるハロゲン族元素の含有量が、重合性モノマーの総元素量に対して、10~50質量%ある<7>に記載の封止剤。
<9>重合性モノマーが、重合性官能基を2個以上有する架橋性モノマー(Y)を含有する<1>~<8>のいずれか一項に記載の封止剤。
<10>重合開始剤が、光重合開始剤である<1>~<9>のいずれかに記載の封止剤。
<11>重合性モノマーが、芳香環を有するモノマーを含有する<1>~<10>のいずれかに記載の封止剤。
<12>重合性モノマーが、カチオン重合性官能基及びラジカル重合性官能基からなる群より選択される少なくとも一種を有する<1>~<11>のいずれかに記載の封止剤。
<13>重合性モノマーが、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する<12>に記載の封止剤。
<14>重合開始剤が、オニウム塩を含有する<13>に記載の封止剤。
<15>重合性モノマーが、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する<12>に記載の封止剤。
<16>重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤を含有する<15>に記載の封止剤。
<17>重合性モノマー100質量部中、原子番号9以上の元素を有する重合性モノマー(X)の含有量が、40~90質量部である<1>~<16>のいずれかに記載の封止剤。
<18>重合性モノマーの100質量部中、重合性官能基を2個以上有する架橋性モノマー(Y)の含有量が、5~60質量部である<1>~<17>のいずれかに記載の封止剤。
<19>重合性モノマーの100質量部に対して、重合開始剤の含有量が、0.01~5質量部である<1>~<18>のいずれかに記載の封止剤。
<20>硬化体の、JIS Z0208に準拠して、温度60℃、相対湿度90%の条件下で測定される、100μm厚での透湿度が40g/m以下である<1>~<19>のいずれかに記載の封止剤。
<21>硬化体の、厚さ10μm当たりの360nm以上800nm以下の紫外-可視光線領域の光透過率が、95%以上である<1>~<20>のいずれかに記載の封止剤。
<22>有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤である、<1>~<21>のいずれかに記載の封止剤。
<23>第一の部材と第二の部材とを含む装置の製造方法であって、第一の部材に、<1>~<22>のいずれかに記載の封止剤を付着させる付着工程と、付着させた封止剤に光を照射する照射工程と、光照射された封止剤を介して、第一の部材と第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、を備える、装置の製造方法。
<24>第一の部材が有機エレクトロルミネッセンス素子であり、第二の部材が基板であり、装置が有機エレクトロルミネッセンス表示装置である、<23>に記載の装置の製造方法。
<25>第一の部材が基板であり、第二の部材が有機エレクトロルミネッセンス素子であり、装置が有機エレクトロルミネッセンス表示装置である、<23>に記載の装置の製造方法。
<26><1>~<22>のいずれかに記載の封止剤の硬化体。
<27>有機エレクトロルミネッセンス素子と、<26>に記載の硬化体と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
<28>無機膜と有機膜とが積層した積層体を含み、有機膜が<26>に記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
<29>無機膜と有機膜とが積層した積層体を含み、有機エレクトロルミネッセンス素子に直接積層した有機膜が、<26>に記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
<30>フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される少なくとも一種を有する重合性モノマー(X)と、重合開始剤と、を含有する組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低透湿性及び透明性に優れる、有機EL表示素子用封止剤として好適な組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本明細書中、各成分の含有量は、特記しない限り、原則として、質量単位である。
【0023】
本実施形態に係る組成物は、重合性モノマーと重合開始剤とを含有する。本実施形態に係る組成物は、封止剤として好適に用いることができ、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤として特に好適に用いることができる。
【0024】
本実施形態に係る組成物の23℃雰囲気下における比重は1.3以上であることが好ましい。また、本実施形態に係る組成物は、硬化体の23℃雰囲気下における比重が1.3~3.0となる組成物であることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係る組成物は、硬化体の60℃雰囲気下における比重が1.3~3.0となる組成物であることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る組成物の重合性モノマーは、重合性官能基を有する化合物である。
【0027】
重合性モノマーは、カチオン重合性官能基及びラジカル重合性官能基からなる群より選択される少なくとも一種を有することが好ましい。カチオン重合性官能基を有する重合性モノマーとしては、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。ラジカル重合性官能基を有する重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係る組成物の重合性モノマーは、原子番号9以上の元素を有する重合性モノマー(X)と重合性官能基を2個以上有する架橋性モノマー(Y)とを含有することが好ましい。
【0029】
重合性モノマー(X)は、芳香環を有することが好ましい。
【0030】
重合性モノマー(X)は、ハロゲン族元素を一種以上有することが好ましく、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される少なくとも一種を有することがより好ましい。
【0031】
重合性モノマー(X)が有するハロゲン族元素の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。重合性モノマー(X)が有するハロゲン族元素の数の上限は特に限定されないが、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0032】
重合性モノマー(X)の具体例の一つである、カチオン重合性官能基を有する化合物としては、ブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル等のハロフェニルグリシジルエーテル、臭素化クレジルグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等)、臭素化ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
重合性モノマー(X)の具体例の一つである、ラジカル重合性官能基を有する化合物としては、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、トリフルオロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、トリクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモロフェニル(メタ)アクリレート等のハロフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
重合性モノマー(X)のハロゲン族元素の含有量は、重合性モノマーの総元素量に対して、10~50質量%が好ましい。10%以上であれば透湿性がより低くなり、50%以下であれば硬化性がより向上する。
【0035】
本実施形態において、重合性モノマーは、重合性モノマー(X)以外の他の重合性モノマーを更に含有していてもよい。他の重合性モノマーは、例えば、重合性モノマー(X)が有する重合性基と共重合可能な重合性基を有する化合物であってよい。他の重合性モノマーの使用量は、重合性モノマー100質量部中、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下が一層好ましい。
【0036】
重合性モノマー(X)以外の他の重合性モノマーのうち、カチオン重合性モノマーとしては、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びカチオン重合性ビニル化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0037】
エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する脂環式化合物、エポキシ基を有する芳香族化合物、グリシジルエーテル化合物等が挙げられる。これらの化合物又は誘導体は、1種以上を使用してもよい。
【0038】
エポキシ基を有する脂環式化合物(以下、脂環式エポキシ化合物ということもある)としては、少なくとも1個のシクロアルカン環(例えば、シクロへキセン環、シクロペンテン環、ピネン環等)を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物又はその誘導体や、芳香族エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等)を水素化して得られる水素化エポキシ化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種以上を使用してもよい。
【0039】
脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等)、(3、3’、4、4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
脂環式エポキシ化合物の中では、1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物の中では、下記式(A1-1)で表される化合物が好ましい。
【0041】
【化1】
【0042】
式(A1-1)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示し、連結基は、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド結合、又は、これらが複数個連結した基である。
【0043】
Xは連結基が好ましい。連結基の中では、エステル結合を有する官能基が好ましい。これらの中では、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
【0044】
脂環式エポキシ化合物の分子量は、低透湿性や保存安定性の点で、450以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下がさらに好ましく、100~280が一層好ましい。
【0045】
脂環式エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、脂環式エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
・溶媒(移動相):THF
・脱気装置:ERMA社製ERC-3310
・ポンプ:日本分光社製PU-980
・流速:1.0ml/min
・オートサンプラ:東ソー社製AS-8020
・カラムオーブン:日立製作所製L-5030
・設定温度:40℃
・カラム構成:東ソー社製TSKguardcolumnMP(×L)6.0mmID×4.0cm 2本、及び東ソー社製TSK-GELMULTIPORE HXL-M 7.8mmID×30.0cm 2本、計4本
・検出器:RI 日立製作所製L-3350
・データ処理:SIC480データステーション
【0046】
エポキシ基を有する芳香族化合物(以下、芳香族エポキシ化合物ということもある)としては、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれも使用可能であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、これらの変性物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種以上を使用してもよい。
これらの中では、ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物が好ましい。ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、下記式(A2-1)で表される化合物が好ましい。
【0047】
【化2】
【0048】
式(A2-1)中、nは0~30の実数を示し、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~5のアルキル基を表す。
【0049】
21、R22、R23、R24は、水素原子又はメチル基が好ましい。R21、R22、R23、R24は、同一が好ましい。
【0050】
ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好ましい。
【0051】
芳香族エポキシ化合物の分子量は、低透湿性等の点で、100~5000が好ましく、150~1000がより好ましく、200~450が最も好ましい。
【0052】
芳香族エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、芳香族エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により上述した測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
【0053】
本実施形態において、カチオン重合性モノマーは、モノマー、オリゴマー又はポリマーの何れも使用できる。
【0054】
グリシジルエーテル化合物としては、ポリグリシジルエーテル化合物が好ましい。ポリグリシジルエーテル化合物としては、特に限定されないが、アルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等)、多価アルコールのポリグリシジルエーテル(例えば、グリセリン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等)、ポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、ポリエチレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等)が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等の脂肪族系が挙げられる。
【0055】
オキセタン化合物としては、特に限定されないが、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名アロンオキセタンOXT-101等)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT-121等)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT-211等)、ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(同OXT-221等)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT-212等)等が挙げられる。オキセタン化合物とは、分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物をいう。
【0056】
カチオン重合性ビニル化合物としては、ビニルエーテル、ビニルアミン、スチレン等が挙げられる。これらの化合物若しくは誘導体は、1種以上を使用してもよい。
【0057】
ビニルエーテル化合物としては、特に限定されないが、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテルo-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0058】
重合性モノマー(X)以外の他の重合性モノマーのうち、ラジカル重合性モノマーとしては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルエーテル基及びビニルエステル基からなる群より選択される少なくとも一種のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性モノマーが好ましい。
【0059】
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性モノマーを好適に用いることができる。即ち、本実施形態に係る組成物は、フッ素原子等の原子番号9以上の元素を有さず、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性モノマーを更に含有していてよい。
【0060】
(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性モノマーとしては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
重合性モノマー(X)の含有量は、重合性モノマー100質量部中、20~100質量部が好ましく、40~90質量部がより好ましく、52.5~85質量部がさらに好ましく、55~80質量部が一層好ましい。20質量部以上であると硬化体の透湿性がより低下する。
【0062】
本実施形態に係る重合性モノマーは、架橋性モノマー(Y)を含有することが好ましい。架橋性モノマー(Y)は、重合性官能基を2個以上有する化合物である。架橋性モノマー(Y)は、重合性モノマー(X)以外のモノマー(すなわち、原子番号9以上の元素を有しないモノマー)であることが好ましい。
【0063】
架橋性モノマー(Y)としては、上記記載の化合物の中で、重合性官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0064】
架橋性モノマー(Y)の含有量は、重合性モノマー100質量部中、0~80質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましく、7.5~55質量部が最も好ましく、10~50質量部が一層好ましい。80質量部以下であれば接着耐久性がより向上する。
【0065】
本実施形態に係る組成物は、重合開始剤を必須成分とする。
【0066】
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤を用いる場合、本実施形態に係る組成物は、紫外線等のエネルギー線照射により硬化できる。
【0067】
重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。光カチオン重合開始剤を用いる場合、カチオン重合性官能基の重合が可能となる。光ラジカル重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合性官能基の重合が可能となる。
【0068】
光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、サンアプロ社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、LW-S1、ダブルボンド社製のチバキュアー1190等)、アリールヨードニウム塩誘導体(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、ローディア・ジャパン社製のRP-2074)、アレン-イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤等が挙げられる。光カチオン重合開始剤のカチオン種としては、式(B-1)で表されるオニウム塩が好ましい。
【0069】
光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、式(B-1)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【0070】
【化3】
【0071】
AはVIA族~VIIA族の原子価mの元素を示す。mは1~2を示す。pは0~3を示す。m、pは整数が好ましい。RはAに結合している有機基を示す。Dは下記式(B-1-1):
【化4】
で表される2価の基を示す。式(B-1-1)中、Eは2価の基を表し、Gは-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン又はフェニレン基(R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基)を示す。aは0~5を示す。a+1個のE及びA個のGはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。aは整数が好ましい。Xはオニウムの対イオンであり、その個数は1分子当たりp+1である。
【0072】
式(B-1-1)のオニウムイオンとしては、特に限定されないが、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等が挙げられる。
【0073】
RはAに結合している有機基である。Rは、例えば、炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基を表し、これらはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。Rの個数はm+p(m-1)+1であり、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。又、2個以上のRが互いに直接又は-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン若しくはフェニレン基を介して結合して元素Aを含む環構造を形成してもよい。ここで、R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基である。
【0074】
上記において炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基等の単環式アリール基や、ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノン、アントラキノン等の縮合多環式アリール基等が挙げられる。
【0075】
上記の炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基は少なくとも1種の置換基を有してもよい。置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクダデシル等の炭素数1~18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル等の炭素数1~18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数3~18のシクロアルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2-メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2-メチルブタノイル、3-メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル等の炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、ナフトイル等の炭素数7~11のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、オクタデシロキシカルボニル等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等の炭素数7~11のアリールオキシカルボニル基;フェニルチオカルボニル、ナフトキシチオカルボニル等の炭素数7~11のアリールチオカルボニル基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシ等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアシロキシ基;フェニルチオ、2-メチルフェニルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メチルフェニルチオ、2-クロロフェニルチオ、3-クロロフェニルチオ、4-クロロフェニルチオ、2-ブロモフェニルチオ、3-ブロモフェニルチオ、4-ブロモフェニルチオ、2-フルオロフェニルチオ、3-フルオロフェニルチオ、4-フルオロフェニルチオ、2-ヒドロキシフェニルチオ、4-ヒドロキシフェニルチオ、2-メトキシフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4-(フェニルチオ)フェニルチオ、4-ベンゾイルフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-メチルチオフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-メチルチオフェニルチオ、4-(4-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(2-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-メチルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-エチルベンゾイル)フェニルチオ4-(p-イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ等の炭素数6~20のアリールチオ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチル等の炭素数6~10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニル等の炭素数4~20の複素環基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6~10のアリールオキシ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec-ブチルスルフィニル、tert-ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert-ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニル等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニル等の炭素数6~10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert-ペンチルスルホニル、オクチルスルホニル等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニル等の炭素数の6~10のアリールスルホニル基;式(B-1-2)
【化5】
で表されるアルキレンオキシ基(Qは水素原子又はメチル基を表し、kは1~5の整数を表す);非置換のアミノ基;炭素数1~5のアルキル及び/又は炭素数6~10のアリールでモノ置換若しくはジ置換されているアミノ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン等が挙げられる。
【0076】
式(B-1)中のpは[D-Am-1]結合の繰り返し単位数を表し、0~3の整数であることが好ましい。
【0077】
式(B-1)中のオニウムイオン[A]として好ましいものはスルホニウム、ヨードニウム、セレニウムであるが、代表例としては以下のものが挙げられる。
【0078】
スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のジアルキルスルホニウム又はトリアルキルスルホニウム等が挙げられる。
【0079】
これらのオニウムイオンの中では、スルホニウムイオンとヨードニウムイオンからなる1種以上が好ましく、スルホニウムイオンがより好ましい。スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム及びオクタデシルメチルフェナシルスルホニウムからなる1種以上が好ましい。
【0080】
式(B-1)においてXは対イオンである。その個数は1分子当たりp+1である。対イオンとしては、特に限定されないが、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物、メチド化合物等が挙げられる。Xとしては、F、Cl、Br、I等のハロゲンイオン;OH;ClO ;FSO 、ClSO 、CHSO 、CSO 、CFSO 等のスルホン酸イオン類;HSO 、SO 2-等の硫酸イオン類;HCO 、CO 2-等の炭酸イオン類;HPO 、HPO 2-、PO 3-等のリン酸イオン類;PF 、PFOH、フッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等のフルオロリン酸イオン類;BF 、B(C 、B(CCF 等のホウ酸イオン類;AlCl ;BiF 等が挙げられる。その他にはSbF 、SbFOH等のフルオロアンチモン酸イオン類、或いはAsF 、AsFOH等のフルオロヒ素酸イオン類等が挙げられる。
【0081】
フッ素化アルキルフルオロリン酸イオンとしては、式(B-1-3)等で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
[(Rf)PF6-b (B-1-3)
【0082】
式(B-1-3)において、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Rfの個数bは、1~5であり、整数であることが好ましい。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rfの個数bは、2~4がより好ましく、2~3が最も好ましい。
【0083】
式(B-1-3)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオンにおいて、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1~8、より好ましい炭素数は1~4である。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;更にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられる。具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFC等が挙げられる。
【0084】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンとしては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF及び[(CFCFCFCFPF等が挙げられる。
【0085】
光カチオン重合開始剤は、エポキシ化合物、エポキシ樹脂への溶解を容易にするため、予め溶剤類に溶解したものを用いてもよい。溶剤類としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類等が挙げられる。
【0086】
これらの光カチオン重合開始剤は、1種以上を使用してもよい。
【0087】
(B)光カチオン重合開始剤のアニオン種としては、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物等が挙げられる。これらのアニオン種は、1種以上を使用してもよい。これらの中では、光硬化性に優れ、接着性、接着耐久性が向上する点で、フッ化物が好ましい。フッ化物の中では、ヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【0088】
光カチオン重合開始剤の中では、式(B-2)で表されるトリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート及び式(B-3)で表されるジフェニル4-チオフェノキシフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、トリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネートがより好ましい。
【0089】
【化6】
【0090】
【化7】
【0091】
光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、
ベンゾフェノン及びその誘導体;
ベンジル及びその誘導体;
アントラキノン及びその誘導体;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン型光重合開始剤;
ジエトキシアセトフェノン、4-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン型光重合開始剤;
2-ジメチルアミノエチルベンゾエート;
p-ジメチルアミノエチルベンゾエート;
ジフェニルジスルフィド;
チオキサントン及びその誘導体;
カンファーキノン、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-ブロモエチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-メチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸クロライド等のカンファーキノン型光重合開始剤;
2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等のα-アミノアルキルフェノン型光重合開始剤;
ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン型光重合開始剤;
フェニル-グリオキシリックアシッド-メチルエステル;
オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル;
オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル;
等が挙げられる。
【0092】
重合開始剤の含有量は、重合性モノマー100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であれば光硬化性がより良くなり、5質量部以下であれば接着耐久性がより向上する。
【0093】
本実施形態に係る組成物は、光増感剤を含有してもよい。光増感剤とは、エネルギー線を吸収して、光カチオン重合開始剤からカチオンを効率よく発生させる化合物をいう。
【0094】
光増感剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン誘導体、フェノチアジン誘導体、フェニルケトン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタセン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサンテン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、トリアリルメタン誘導体、フタロシアニン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、有機ルテニウム錯体等が挙げられる。これらの中では、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のフェニルケトン誘導体及び/又は9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体が好ましく、アントラセン誘導体がより好ましい。アントラセン誘導体の中では、9,10-ジブトキシアントラセンが好ましい。
【0095】
光増感剤の使用量は、光硬化性がより向上し、貯蔵安定性がより向上する点で、重合性モノマー100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.02~3質量部がより好ましい。
【0096】
本実施形態に係る組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を含有することにより、本実施形態に係る組成物は、優れた接着性や接着耐久性を示す。
【0097】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種以上を使用してもよい。これらの中では、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上が好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0098】
シランカップリング剤の含有量は、接着性及び接着耐久性がより向上する点で、重合性モノマー100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0099】
本実施形態に係る組成物は、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーを含有することにより、封止剤の低透湿性がより向上する。
【0100】
無機フィラーとしては、シリカ、マイカ、カオリン、タルク、酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの中では、タルクが好ましい。
【0101】
無機フィラーの平均粒子径(以下、粒子径ということもある)は、1~50μmが好ましい。平均粒子径は、マイクロトラック(レーザー回折・散乱法)により測定することが好ましい。平均粒子径は、メジアン径(d50)が好ましい。
【0102】
無機フィラーの含有量は、低透湿性がより向上する点で、重合性モノマー100質量部に対して、1~80質量部が好ましく、20~40質量部がより好ましい。
【0103】
本実施形態に係る組成物は、他の成分として当該技術分野で用いられる公知の添加剤を更に含有していてもよい。
【0104】
本実施形態に係る組成物を硬化することにより、硬化体が得られる。
【0105】
本実施形態に係る組成物の硬化や接着に用いられる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの光重合開始剤の反応波長に対応するエネルギー線の照射を効率よく行える点で、好ましい。
【0106】
上記光源は、各々放射波長やエネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。又、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0107】
上記光源の照射としては、直接照射、反射鏡やファイバー等による集光照射を行ってもよい。低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0108】
本実施形態に係る組成物は、光照射後の硬化速度を促進するために、後加熱処理をしてもよい。後加熱の温度は、有機エレクトロルミネッセンス素子の封止に用いる場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子にダメージを与えない点で、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。後加熱の温度は、50℃以上が好ましい。
【0109】
本実施形態に係る組成物は、接着剤として用いてもよい。本実施形態に係る接着剤は、有機エレクトロルミネッセンス素子等のパッケージ等の接着に、好適に用いることができる。
【0110】
本実施形態の組成物の製造方法については、上記の成分を十分に混合できれば特に制限されない。各成分の混合方法としては、特に限定されないが、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌方法、自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行える点で、好ましい。
【0111】
本実施形態の組成物を用いる基材の接着方法としては、例えば、組成物を一方の基材の全面又は一部に塗布する工程と、組成物が塗布された基材の組成物に光を照射する工程と、前記光を照射された組成物が硬化するまでの間に、前記一方の基材に他方の基材を貼合する工程と、前記組成物により貼合された基材を硬化させる工程と、を有することにより、基材を光や熱に晒すことなく接着できる。
【0112】
本実施形態の組成物を用いて有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造する方法としては、例えば、一方の基板上(背面板)に本実施形態の組成物を塗布し、該組成物に光を照射して活性化させた後に、光を遮断し、該組成物を介して背面板とエレクトロルミネッセンス素子を形成した基板を貼り合せる方法等が挙げられる。この方法により、有機エレクトロルミネッセンス素子を光や熱に晒すことなく封止できる。
【0113】
本実施形態の組成物を用いて、一方の基板に本実施形態の組成物を塗布し、組成物を介して、他方の基板を貼り合せ、本実施形態の組成物に光を照射する方法を用いて有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造できる。
【0114】
本実施形態に係る組成物の硬化体のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、85℃以上が最も好ましい。
【0115】
本明細書中、硬化体のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性スペクトルから求められる値を示す。動的粘弾性スペクトルでは、該硬化体に昇温速度一定で応力及び歪みを加え、損失正接(以下、tanδと略す)のピークトップを示す温度をガラス転移温度とすることができる。-150℃程度の十分に低い温度からある温度(Ta℃)まで昇温してもtanδのピークが現れない場合、ガラス転移温度としては、-150℃以下又はある温度(Ta℃)以上と考えられるが、ガラス転移温度が-150℃以下である硬化体は考えられないため、ある温度(Ta℃)以上と判断することができる。
【0116】
本実施形態に係る組成物の硬化体は、その架橋密度が、1.0×10-3mol/cm以上であることが好ましく、2.0×10-3~1.0mol/cmであることがより好ましい。架橋密度が1.0×10-3mol/cm以上であると、硬化体中の結合点が多く、ポリマー中のミクロブラウン運動を抑制し、低透湿性により優れるため好ましい。架橋密度が1.0mol/cm以下であると、硬化体が脆くならない。架橋密度は、組成物の硬化体の動的粘弾性測定の結果より算出できる。
【0117】
本明細書中、硬化体の架橋密度は、動的粘弾性スペクトルから求められる値を示す。厚み100μmの硬化体を幅5mm×長さ25mmに切り出し、試験片とする。この試験片について、温度範囲-50~200℃、昇温速度2℃/min、引っ張りモードの条件で、動的粘弾性測定を行い、温度と貯蔵弾性率(G’)の関係を把握する。架橋密度は、Tg+40℃の温度をT(K)、T(K)における貯蔵弾性率(G’)をG’Tg+40、気体定数をR、フロント係数をφ(=1)として、以下の式で算出される。
架橋密度(ρ)=G’Tg+40/3φRT
【0118】
本実施形態に係る組成物の硬化体は、JIS Z 0208:1976に準拠して、60℃、90%RHの環境下に24時間暴露して測定した100μm厚での透湿度が、40g/m以下であることが好ましく、35g/m以下であることがより好ましく、30g/m以下であることが更に好ましい。透湿度が低いと、有機エレクトロルミネッセンス素子の封止に用いる場合に、有機発光材料層への水分の到達によるダークスポットの発生をより抑制できる。透湿度は、生産性の点で、0.01g/m以上が好ましい。
【0119】
本実施形態に係る組成物の硬化体は、透明性に優れることが好ましい。具体的には、硬化体は、360nm以上800nm以下の紫外-可視光線領域の光透過率が、厚さ10μm当たりで、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが最も好ましい。この光透過率が95%以上であると、有機エレクトロルミネッセンス素子の封止に用いる場合には、輝度及びコントラストに優れた有機EL表示装置が得られやすくなる。
【0120】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0121】
例えば、本発明の実施形態の一側面は、上述の組成物を硬化してなる硬化体であってよい。
【0122】
本発明の実施形態の他の一側面は、上述の硬化体を含む、封止材であってよい。封止材としては、有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材が好ましい。この封止材は、硬化体からなるものであってよく、封止材の硬化体と他の構成材料とを含むものであってもよい。他の構成材料としては、例えば、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素等の無機物層等が挙げられる。
【0123】
本発明の実施形態の更に他の一側面は、有機エレクトロルミネッセンス素子と、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材とを含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置であってよい。
【0124】
本発明において、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、第一の部材に、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を付着させる付着工程と、付着させた有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤に光を照射する照射工程と、光照射された前記有機エレクトロルミネッセンス素子用封止剤を介して、第一の部材と第二の部材とを貼り合わせる貼合工程と、を有するものであってよい。この製造方法において、例えば、第一の部材は基板であってよく、第二の部材は有機エレクトロルミネッセンス素子であってよい。この製造方法において、例えば、第一の部材は有機エレクトロルミネッセンス素子であってよく、第二の部材は基板であってよい。この製造方法における各工程の条件等は、上述の実施形態の記載に基づいて適宜選択してよい。
【0125】
基板はカラーフィルターであってもよい。有機エレクトロルミネッセンス素子の最表面に無機膜がなくてもよい。
有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、無機膜と有機膜とが積層した積層体を含んでもよい。有機膜は、本実施形態に係る組成物の硬化体を含んでもよい。有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス素子に直接積層した有機膜は、本実施形態に係る組成物の硬化体を含んでもよい。
【実施例
【0126】
以下、実験例を挙げて、本実施形態を更に詳細に説明する。本実施形態はこれらに限定されるものではない。特記しない限り、23℃、相対湿度50質量%で試験した。
【0127】
実験例では、以下の化合物を使用した。
【0128】
(X)重合性モノマーとして下記を用いた。
(X-1)ジブロモフェニルグリシジルエーテル(日本化薬社製「BR-250」、臭素元素の含有量51質量%)
(X-2)臭素化クレジルグリシジルエーテル(日本化薬社製「BROC」、臭素元素の含有量50質量%)
(X-3)TBBPAエポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、DIC社「エピクロン152」、臭素元素の含有量48質量%)
(X-4)臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「BREN-105」、臭素元素の含有量36質量%)
(X’-1)フェニルグリシジルエーテル(阪本薬品工業社「PEG」)
(X-5)ペンタフルオロフェニルアクリレート(東京化成工業社製「ペンタフルオロフェニルアクリレート」)
(X-6)アクリル酸2,4,6-トリブロモフェニル(東京化成工業社製「トリブロモフェニルアクリレート」)
(X’-2)フェニルアクリレート(東京化成工業社製「フェニルアクリレート」)
(X’-3)イソボルニルアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートIB-XA」)
(X’-4)イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステル IB-X」)
【0129】
(Y)架橋性モノマーとして下記を用いた。
(Y-1)3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製「セロキサイド2021P」)
(Y-2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、分子量360~390)
(Y-3)ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(東亞合成社製「アロンオキセタンOXT-221」)
(Y-4)シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイド社製「CHDVE」)
(Y-5)1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学社製「HD-N」)
(Y-6)トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学社製「DCP」)
【0130】
重合開始剤として下記を用いた。
・トリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製「アデカオプトマーSP-170」、アニオン種はヘキサフルオロアンチモネート)
・トリアリールスルホニウム塩(ジフェニル4-チオフェノキシフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、サンアプロ社製「CPI-200K」、アニオン種はリン化合物)
・2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(BASFジャパン社製「TPO」)
・1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン社製「I-184」)
【0131】
光増感剤として下記を用いた。
9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成工業社製「ANTHRACURE UVS-1331」)
【0132】
シランカップリング剤として下記を用いた。
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM-403」)
【0133】
無機充填剤として下記を用いた。
微粒子タルク、粒子径(d50):4.5μm(松村産業社製「#5000PJ」)
【0134】
(実験例1)
カチオン重合性官能基を有する重合性モノマーについて試験した。表1~2に示す種類の原材料を、表1~2に示す組成割合で混合し、実験例の組成物を調製し、封止剤とした。組成割合の単位は質量部である。
実験例の組成物について、下記の各測定を行った。その結果を表1~2に示した。
【0135】
(実験例2)
ラジカル重合性官能基を有する重合性モノマーについて試験した。表3に示す種類の原材料を、表3に示す組成割合で混合し、実験例の組成物を調製し、封止剤とした。組成割合の単位は質量部である。
実験例の組成物について、下記の各測定を行った。その結果を表3に示した。
【0136】
〔粘度〕
組成物の粘度(せん断粘度)はE型粘度計(1°34’×R24のコーンローター)を用い、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。
【0137】
〔重合性モノマーの比重(モノマー比重)〕
重合性モノマーの比重は、ハーバート形比重瓶を用い、JIS K0061に倣い、測定を行った。
〔組成物の比重〕
組成物の比重は、ハーバート形比重瓶を用い、JIS K0061に倣い、測定を行った。
【0138】
〔光硬化条件〕
組成物の硬化性及び接着性の評価に際し、下記光照射条件により、組成物を硬化させた。無電極放電メタルハライドランプ搭載UV硬化装置(フュージョン社製)により、365nmの波長の積算光量4,000mJ/cmの条件にて、組成物を光硬化させた後、80℃のオーブン中で、30分間の後加熱処理を実施し、硬化体を得た。
【0139】
〔硬化体比重(23℃)〕
厚さ1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS K7112 B法に準拠し、硬化体の比重を測定した。浸せき液として、温度は23℃の水を使用した。
【0140】
〔硬化体比重(60℃)〕
厚さ1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS K7112 B法に準拠し、硬化体の比重を測定した。浸せき液として、温度は60℃の水を使用した。
【0141】
〔Tg〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、厚み100μmの硬化体を幅5mm×長さ25mmに切り出し、試験片とした。この試験片について、温度範囲-50℃~200℃、昇温速度2℃/min、引っ張りモードの条件で、動的粘弾性測定を行った。上記動的粘弾性測定で測定されたtanδ(損失正接)のピークトップの温度を硬化体のガラス転移温度(Tg)とした。
【0142】
〔架橋密度〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、厚み100μmの硬化体を幅5mm×長さ25mmに切り出し、試験片とした。この試験片について、温度範囲-50~200℃、昇温速度2℃/min、引っ張りモードの条件で、動的粘弾性測定を行った。架橋密度は、Tg+40℃の温度をT(K)、T(K)における貯蔵弾性率(G’)をG’Tg+40、気体定数をR、フロント係数をφ(=1)として、以下の式で算出した。
架橋密度(ρ)=G’Tg+40/3φRT
【0143】
〔透明性〕
組成物を用い、硬化体の厚みが10μmとなるように、2枚のガラス板(大きさ:40mm×20mm)で貼り合せた。前記光硬化条件にて組成物を硬化したものを試験片とした。分光光度計(日本分光株式会社)を用いて、波長400nmの光透過率を測定した。
【0144】
〔透湿度〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度60℃、相対湿度90%の条件で測定した。透湿度は120g/(m・24hr)以下が好ましい。
【0145】
〔引張せん断接着強さ〕
ホウ珪酸ガラス試験片(縦25mm×横25mm×厚2.0mm、テンパックス(登録商標)ガラス)を2枚用い、接着面積0.5cm、接着厚み80μmで、上記の光硬化条件にて組成物を硬化させた。硬化後、組成物で接合した試験片を用い、引張剪断接着強さ(単位:MPA)を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度10mm/分で測定した。
【0146】
〔有機ELの評価〕
〔有機EL素子基板の作製〕
ITO電極付きガラス基板をアセトン、イソプロパノールそれぞれを用いて洗浄した。その後、真空蒸着法にて以下の化合物を薄膜となるように順次蒸着し、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子基板を得た。各層の構成は以下の通りである。
・陽極 ITO、陽極の膜厚250nm
・正孔注入層 銅フタロシアニン 厚さ30nm
・正孔輸送層 N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチルベンジジン(α-NPD) 厚さ20nm
・発光層 トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(金属錯体系材料)、発光層の膜厚1000Å
・電子注入層 フッ化リチウム 厚さ1nm
・陰極 アルミニウム、陽極の膜厚250nm
【0147】
〔有機EL素子の作製〕
実験例で得られた封止剤を、窒素雰囲気下にて塗工装置にてガラスに塗布し、有機EL素子基板と貼り合わせ、接着厚み10μmで前記光硬化条件にて、この封止剤を硬化させ、有機EL素子を作製した。有機EL素子基板の陽極側を、封止剤を介してガラスに貼り合わせた。
【0148】
〔有機EL評価〕
〔初期〕
作製した直後の有機EL素子に、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0149】
〔高温高湿度〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0150】
ダークスポットの直径は、300μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、ダークスポットはないことが最も好ましい。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
本実施形態は、充填剤を使用しなくても低透湿性を有する。本実施形態は、充填剤を使用しないため、透過性が大きい。
本実施形態は、電子デバイスの封止、有機EL素子の封止等に用いられる。
本実施形態によれば、透明性を損なわずに防湿性に優れ、かつ、ガラス基板等との接着性に優れ、凹凸浸透性に優れた封止剤を形成できる、低透湿性樹脂組成物が得られる。
本発明に係る実施形態によれば、有機EL素子用封止剤や有機EL表示装置が得られる。