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特許7197644大電流回路の異常検出装置、および、大電流回路装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】大電流回路の異常検出装置、および、大電流回路装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20221220BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20221220BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20221220BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20221220BHJP
   G01R 31/72 20200101ALI20221220BHJP
【FI】
H05B3/00 320B
G01R31/50
G01R31/54
G01R31/56
G01R31/72
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021120765
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2017203358の分割
【原出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2021170551
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】中野 貴太
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-024184(JP,A)
【文献】特開2016-039684(JP,A)
【文献】特開2012-163229(JP,A)
【文献】特開昭55-058468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
G01R 31/50
G01R 31/54
G01R 31/56
G01R 31/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの電力供給のオンオフを制御するスイッチング部、および、このスイッチング部からの電力を降圧させるトランスであってこのトランスの二次側の電力を負荷に与えるトランスを有する大電流回路における、前記スイッチング部と前記トランスの一次側との間の電流経路での電流値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部の電流検出値を用いて前記大電流回路の前記二次側の異常の有無を判定する異常判定部と、
を備え
記トランスの二次側の電流は、前記トランスの一次側の電流よりも電流値が大きく、
前記負荷は、前記トランスの二次側に接続され、前記一次側の電流よりも電流値が大きい大電流が流れる抵抗加熱式ヒータを含むことを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の大電流回路の異常検出装置であって、
前記トランスは、スコットトランスを含み、
前記スコットトランスの一次側は三相入力とされ、前記スイッチング部を介して前記交流電源としての三相交流電源に接続され、
前記スコットトランスの二次側は、単相出力を二系統含み、
前記負荷は、前記スコットトランスの二次側の第一系統に接続された第一負荷と、前記スコットトランスの二次側の第二系統に接続された第二負荷と、を含み、
前記異常判定部は、前記第一負荷および前記第二負荷のそれぞれにおける異常の有無を判定することを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の大電流回路の異常検出装置であって、
前記異常判定部は、前記大電流回路に異常が生じていないときにおける前記電流値と、前記電流検出値との偏差に基づいて前記異常の有無を判定することを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の大電流回路の異常検出装置であって、
前記交流電源は三相交流電源であり、
前記スイッチング部は前記三相交流電源からの各相に対応する三組のスイッチング素子を含み、
前記電流検出部は、三組の前記スイッチング素子のそれぞれに対応して設けられ対応する組の前記スイッチング素子を流れる電流を検出する三つの電流検出素子を含み、
前記異常判定部は、三つの前記電流検出素子のそれぞれにおける前記電流検出値を用いて前記異常の有無を判定することを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の大電流回路の異常検出装置であって、
前記異常判定部は、断線判定部を含み、
前記断線判定部は、三つの前記電流検出素子で検出された三つの前記電流検出値の最大値と最小値との比を用いて、前記負荷に断線が生じているか否かを判定することを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の大電流回路の異常検出装置であって、
前記断線判定部は、前記比が所定のしきい値未満である場合、前記負荷に断線が生じていると判定することを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項7】
請求項4に記載の大電流回路の異常検出装置であって、
前記異常判定部は、三つの前記電流検出値の比較に基づき前記異常の有無を判定することを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の大電流回路の異常検出装置であって、
前記異常判定部は、三つの前記電流検出値のうちの二つの平均と、その他の一つとの比較に基づき、前記二次側の前記負荷の劣化の有無を判定することを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項9】
請求項4~請求項8の何れか1項に記載の大電流回路の異常検出装置であって、
前記異常判定部は、劣化判定部を含み、
前記劣化判定部は、三つの前記電流検出素子で検出された三つの前記電流検出値について、異常が検出されていないときからの低下度合いを基に前記負荷に劣化が生じているか否かを判定することを特徴とする、大電流回路の異常検出装置。
【請求項10】
交流電源からの電力供給のオンオフを制御するスイッチング部、および、このスイッチング部からの電力を降圧させるトランスを含む大電流回路と、
前記トランスの二次側の電力が与えられる負荷と、
請求項1~請求項9の何れか1項に記載の大電流回路の異常検出装置と、
を備え、
前記負荷は抵抗加熱式ヒータを含み、
前記トランスの二次側の電流は、前記トランスの一次側の電流よりも電流値が大きいことを特徴とする、大電流回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流回路の異常検出装置、および、大電流回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用加熱炉の電熱ヒータ等、交流電力によって動作する機器(負荷)が種々存在する(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1,2に記載のヒータは、それぞれ、電熱ヒータであり、電源から電源回路を介して電力を供給される。この電源回路には、ヒータの断線を検出するための断線検出回路が設けられている。
【0003】
特許文献1に記載の構成では、所定の電流実効値が基準電流実効値よりも小さい場合、ヒータ断線が発生したと判定される。また、特許文献2に記載の構成では、変圧器で変圧された後の電流の検出結果に基づいて、ヒータ断線の有無が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-70682号公報([0044])
【文献】特開平5-121147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工業用加熱炉の電熱ヒータとして、1000Aを超える大電流で動作するヒータが存在する。このような大電流ヒータにおいて、断線等の異常が発生しているか否かを検出する構成が望まれている。しかしながら、特許文献1では、大電流で動作する負荷について特段言及されているとはいえない。ここで、例えば、特許文献2に記載されているように、変圧器で変圧された後の電流が流れる電流経路に、ヒータの断線検出回路を設けることが考えられる。しかしながら、この場合、変圧器で変圧された後の大電流が流れる電流経路に断線検出回路を設ける必要がある。このため、断線検出回路は、大電流に対応可能な大型の回路となってしまい、製造コストが高くつく。さらには、断線検出回路を収容する大型の安全カバーを設ける必要があり、装置の大型化を招くとともに製造コストがより高くつく。
【0006】
同様の課題は、電熱ヒータに限らず、他の負荷においても存在する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、大電流が流れる負荷の異常をより小型な構成で且つコスト安価に検出できる大電流回路の異常検出装置、および、大電流回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、鋭意研究の結果、トランスで増幅された電流を用いて電熱ヒータを加熱する構成において、ヒータが断線したときに、トランスの一次側の電流に規則的な変動が生じることに着目した。そして、更なる鋭意研究の結果、本発明を想到するに至った。
【0009】
(1)上記の課題を解決するための、この発明のある局面に係わる大電流回路の異常検出装置は、交流電源からの電力供給のオンオフを制御するスイッチング部、および、このスイッチング部からの電力を降圧させるトランスであってこのトランスの二次側の電力を負荷に与えるトランスを有する大電流回路における、前記スイッチング部と前記トランスの一次側との間の電流経路での電流値を検出する電流検出部と、前記電流検出部の電流検出値を用いて前記大電流回路の前記二次側の異常の有無を判定する異常判定部と、を備え、前記負荷は抵抗加熱式ヒータを含み、前記トランスの二次側の電流は、前記トランスの一次側の電流よりも電流値が大きい
【0010】
この構成によると、トランスで電圧が降圧される前の一次側の電流経路、すなわち、トランスで電流が増幅される前の一次側の電流経路での電流値を、電流検出部が検出する。これにより、電流検出部が検出する電流検出値は、負荷で消費される電力の電流値である二次側の電流値よりも小さい。よって、電流検出部は、比較的小さな電流を検出することが可能な構成であればよく、小型且つコスト安価な構成で済む。これにより、大電流が流れる負荷の異常をより小型な構成でコスト安価に検出できる大電流回路の異常検出装置を実現できる。
【0011】
(2)前記トランスは、スコットトランスを含み、前記スコットトランスの一次側は三相入力とされ、前記スイッチング部を介して前記交流電源としての三相交流電源に接続され、前記スコットトランスの二次側は、単相出力を二系統含み、前記負荷は、前記スコットトランスの二次側の第一系統に接続された第一負荷と、前記スコットトランスの二次側の第二系統に接続された第二負荷と、を含み、前記異常判定部は、前記第一負荷および前記第二負荷のそれぞれにおける異常の有無を判定する場合がある。
この構成によると、スコットトランスの二次側に設けられた二つの負荷のそれぞれについて、異常判定部は、個別に異常判定を行うことができる。
)前記異常判定部は、前記大電流回路に異常が生じていないときにおける前記電流値と、前記電流検出値との偏差に基づいて前記異常の有無を判定する場合がある。
【0012】
この構成によると、トランスの一次側の電流検出値の変化を通じてトランスの二次側における異常の発生を検出できる。
【0013】
)前記交流電源は三相交流電源であり、前記スイッチング部は前記三相交流電源からの各相に対応する三組のスイッチング素子を含み、前記電流検出部は、三組の前記スイッチング素子のそれぞれに対応して設けられ対応する組の前記スイッチング素子を流れる電流を検出する三つの電流検出素子を含み、前記異常判定部は、三つの前記電流検出素子のそれぞれにおける前記電流検出値を用いて前記異常の有無を判定する場合がある。
【0014】
この構成によると、三組のスイッチング素子のそれぞれに対応して電流検出素子が設けられる。これにより、より精度よく、トランスの二次側における異常を検出できる。また、三つの電流検出素子は、何れも、比較的小さな電流を検出できればよいので、コスト安価な構成で済む。これにより、複数(三つ)の電流検出素子が用いられる場合でも、異常検出装置のコストをより低減できる。
【0015】
)前記異常判定部は、断線判定部を含み、前記断線判定部は、三つの前記電流検出素子で検出された三つの前記電流検出値の最大値と最小値との比を用いて、前記負荷に断線が生じているか否かを判定する場合がある。
【0016】
この構成によると、断線判定部は、三つの電流検出値の最大値と最小値との比を用いることで、簡易な演算によって負荷の断線の有無を判定できる。
【0017】
)前記断線判定部は、前記比が所定のしきい値未満である場合、前記負荷に断線が生じていると判定する場合がある。
【0018】
この構成によると、負荷に電流が流れていない場合、三つの電流検出値の最大値と最小値との比が所定のしきい値未満となる。よって、このような比の低下を基に、断線判定部は、負荷に断線が生じていると判定できる。
【0019】
(7)前記異常判定部は、三つの前記電流検出値の比較に基づき前記異常の有無を判定する場合がある。
(8)前記異常判定部は、三つの前記電流検出値のうちの二つの平均と、その他の一つとの比較に基づき、前記二次側の前記負荷の劣化の有無を判定する場合がある。
)前記異常判定部は、劣化判定部を含み、前記劣化判定部は、三つの前記電流検出素子で検出された三つの前記電流検出値について、異常が検出されていないときからの低下度合いを基に前記負荷に劣化が生じているか否かを判定する場合がある。
【0020】
この構成によると、負荷(負荷への電流経路)に劣化が生じている場合、異常が検出されていないときからの電流検出値の低下度合いが所定量を超える。よって、このような電流検出値の低下を基に、劣化判定部は、負荷に劣化が生じていると判定できる。
【0023】
10)上記の課題を解決するための、この発明のある局面に係わる大電流回路装置は、 交流電源からの電力供給のオンオフを制御するスイッチング部、および、このスイッチング部からの電力を降圧させるトランスを含む大電流回路と、前記トランスの二次側の電力が与えられる負荷と、前記大電流回路の異常検出装置と、を備え、前記負荷は抵抗加熱式ヒータを含み、前記トランスの二次側の電流は、前記トランスの一次側の電流よりも電流値が大きい
【0024】
この構成によると、トランスで電圧が降圧される前の一次側の電流経路、すなわち、トランスで電流が増幅される前の一次側の電流経路での電流値を、電流検出部が検出する。これにより、電流検出部が検出する電流検出値は、負荷で消費される電力の電流値である二次側の電流値よりも小さい。よって、電流検出部は、比較的小さな電流を検出することが可能な構成であればよく、小型且つコスト安価な構成で済む。これにより、大電流が流れる負荷の異常をより小型な構成でコスト安価に検出できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、大電流が流れる負荷の異常をより小型な構成で且つコスト安価に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る熱処理装置の模式図である。
図2】(A)~(D)は、それぞれ、三つの電流検出素子で検出される電流値について説明するための模式的なグラフである。
図3】異常判定部の断線判定部における断線判定の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
図4】異常判定部の劣化判定部における劣化判定の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
図5】異常判定部の断線判定部における断線判定の流れの変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理装置1の模式図である。図1を参照して、熱処理装置1は、熱処理装置1の熱処理室2内に被処理物100を配置した状態で、熱処理室2内を加熱することで、熱処理室2内に配置された被処理物100に熱処理を行うように構成されている。熱処理装置1は、本発明の「大電流回路装置」の一例である。
【0029】
被処理物100として、金属、基板等を例示することができる。被処理物100が金属である場合の熱処理として、浸炭処理、窒化処理、焼入処理、焼戻処理、焼鈍処理を例示できる。被処理物100が基板であるときの熱処理として、CVD(Chemical Vapor Deposition)処理、拡散処理、アニール処理、太陽電池の製造処理、半導体デバイスの製造処理を例示することができる。本実施形態の熱処理装置1は、熱処理室2内の雰囲気を900℃以上に加熱可能な高温の熱処理装置である。
【0030】
熱処理装置1は、熱処理室2と、熱処理室2内を加熱するための加熱装置3と、加熱装置3の異常を検出するための異常検出装置4と、を有している。
【0031】
熱処理室2は、被処理物100を収容する収容室として設けられている。熱処理室2は、中空状に形成されており、図示しない扉を通して被処理物100を出し入れすることが可能に構成されている。
【0032】
加熱装置3は、電力会社から供給される商用電源等の三相交流電源5を電源として、後述するヒータユニット7で発熱を行う。
【0033】
加熱装置3は、大電流回路6と、大電流回路6からの電力によって動作するヒータユニット7と、大電流回路6(ヒータユニット7)の動作を制御する加熱制御部8と、を有している。
【0034】
大電流回路6は、交流電源5からの電力を降圧させるとともに電流を増幅し、この電力をヒータユニット7へ出力する。本実施形態では、大電流回路6は、三相約200V、約450Aの電力を、後述するトランス11によって2相約20V、約4000Aの大電流電力に変換する。
【0035】
大電流回路6は、交流電力からの電力供給のオンオフを制御するスイッチング部9と、一次側電流経路10と、スコットトランス等のトランス11と、二次側電流経路12と、を含んでいる。
【0036】
スイッチング部9は、交流電源5のR相、T相、S相のそれぞれからの電流をオン/オフするように構成されている。スイッチング部9は、交流電源5とトランス11との間に配置されている。スイッチング部9は、本実施形態では、スイッチング素子としてのサイリスタを用いて形成されている。なお、スイッチング部9は、サイリスタで形成されていなくてもよく、トランジスタ、MOSFET等のFET、リレー等で形成されていてもよい。
【0037】
スイッチング部9は、三組のスイッチング素子としてのR相用の一組のスイッチング素子13Rと、T相用の一組のスイッチング素子13Tと、S相用の一組のスイッチング素子13Sと、を有している。なお、以下では、一組のスイッチング素子を、単に「スイッチング素子」ともいう。
【0038】
各一組のスイッチング素子13R,13T,13Sは、一組のサイリスタが並列に接続された構成を有している。すなわち、スイッチング部9は、交流電源5からの各相に対応する三組のスイッチング素子13R,13T,13Sを有している。本実施形態では、各一組のスイッチング素子13R,13T,13Sにおいて、組をなすサイリスタは、アノードの向きとカソードの向きとが互いに逆向きに配置されている。
【0039】
各一組のスイッチング素子13R,13T,13Sの一端は、交流電源5の対応するR相、T相、S相に接続されている。すなわち、一組のスイッチング素子13Rの一端は、交流電源5のR相に接続されており、一組のスイッチング素子13Tの一端は、交流電源5のT相に接続されており、一組のスイッチング素子13Sの一端は、交流電源5のS相に接続されている。スイッチング部9は、一次側電流経路10の一部を構成している。
【0040】
一次側電流経路10は、交流電源5からの電力をトランス11の二次側に供給するために設けられている。なお、本実施形態では、「一次側」とは、トランス11によって降圧される前の電力の電流が流れる箇所を示し、「二次側」とは、トランス11によって降圧された後の電力の電流が流れる箇所を示す。
【0041】
一次側電流経路10は、スイッチング部9と、R相線14Rと、T相線14Tと、S相線14Sと、トランス11の一次側コイル15M,15Tと、を含んでいる。
【0042】
R相線14Rの一端は、一組のスイッチング素子13Rの他端に接続されている。R相線14Rの他端は、トランス11の一次側コイル15MのU相端子16Uに接続されている。T相線14Tの一端は、一組のスイッチング素子13Tの他端に接続されている。T相線14Tの他端は、トランス11の一次側コイル15MのW相端子16Wに接続されている。S相線14Sの一端は、一組のスイッチング素子13Sの他端に接続されている。S相線14Sの他端は、トランス11の一次側コイル15TのV相端子16Vに接続されている。
【0043】
トランス11は、スイッチング部9からの電力を降圧させ、この降圧された二次側の大電流電力をヒータユニット7に与える。すなわち、トランス11は、一次側の高圧・低電流の電力を、二次側の電力としての低圧・高電流の電力に変換する電力変換素子である。トランス11は、本実施形態では、スコットトランスであり、三相交流電流を二相交流電流に変換する。本実施形態では、トランス11は、一次側にU相、W相、V相の三つの端子および2つのコイルが設けられているとともに、二次側に、互いに別体のM座、T座の2つのコイルが設けられた構成を有している。トランス11は、スイッチング部9とヒータユニット7との間に配置されている。
【0044】
トランス11は、一次側コイル15M,15Tと、二次側コイル17M,17Tと、を有している。
【0045】
一次側コイル15M,15Tの巻き数と二次側コイル17M,17Tの巻き数は、所望の降圧特性に応じて適宜設定されている。一方の一次側コイル15Mの両端は、U相端子16UおよびW相端子16Wを含んでいる。また、他方の一次側コイル15Tの一端は、V相端子16Vを含んでいる。他方の一次側コイル15Tの他端は、一方の一次側コイル15Mの中間部に接続された、センタータップである。
【0046】
一方の二次側コイル17Mは、本発明の「スコットトランスの二次側の第一系統」の一例である。一方の二次側コイル17Mは、M座コイルであり、一方の一次側コイル15Mと対向して配置されている。二次側コイル17Mの一端および他端は、ヒータユニット7のM座ヒータ18Mの一対の端子に電気的に接続されており、二次側コイル17Mからの電流がM座ヒータ18Mに流れる。
【0047】
同様に、他方の二次側コイル17Tは、本発明の「スコットトランスの二次側の第二系統」の一例である。他方の二次側コイル17Tは、T座コイルであり、他方の一次側コイル15Tと対向して配置されている。二次側コイル17Tの一端および他端は、ヒータユニット7のT座ヒータ18Tの一対の端子に電気的に接続されており、二次側コイル17Tからの電流がT座ヒータ18Tに流れる。上記の構成を有するトランス11は、二次側電流経路12の一部を構成している。
【0048】
二次側電流経路12は、トランス11の二次側コイル17M,17Tと、ヒータユニット7と、を含んでいる。
【0049】
ヒータユニット7は、M座ヒータ18Mと、T座ヒータ18Tと、を有している。M座ヒータ18MおよびT座ヒータ18Tは、それぞれ、本発明の「負荷、第一負荷」および「負荷、第二負荷」の一例である。M座ヒータ18MおよびT座ヒータ18Tは、それぞれ、電熱ヒータであり、対応する二次側コイル17M,17Tから電力を供給されることで発熱する。
【0050】
本実施形態では、各ヒータ18M,18Tは、断面矩形状の電熱線であるバスバーを含む、電気加熱(抵抗加熱)ヒータである。本実施形態では、各ヒータ18M,18Tは、大電流を流されるため、バスバーの軸直断面での寸法が、例えば200mm×12mmという極めて大きな値となっている。本実施形態では、M座ヒータ18Mの電熱線の一対の端子が、二次側コイル17Mの一対の端子に接続されている。同様に、T座ヒータ18Tの電熱線の一対の端子が、二次側コイル17Tの一対の端子に接続されている。
【0051】
上記の構成により、二次側コイル17Mとヒータ18Mとで、M座側電流経路19Mが形成されている。また、二次側コイル17Tとヒータ18Tとで、T座側電流経路19Tが形成されている。これらのヒータ18M,18Tへの通電制御は、加熱制御部8によって行われる。
【0052】
加熱制御部8は、所定の入力信号に基づいて、所定の出力信号を出力する構成を有し、例えば、安全プログラマブルコントローラ等を用いて形成することができる。安全プログラマブルコントローラとは、JIS(日本工業規格) C 0508-1のSIL2またはSIL3の安全機能をもつ公的に認証されたプログラマブルコントローラをいう。なお、加熱制御部8は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含むコンピュータ等を用いて形成されていてもよい。
【0053】
加熱制御部8は、スイッチング部9に接続されている。本実施形態では、加熱制御部8は、一組のスイッチング素子13R,13T,13Sのそれぞれにおけるゲート電極への電流供給を制御することで、一次側電流経路10における電流経路を制御し、これにより、各ヒータ18M,18Tの加熱量を制御する。
【0054】
次に異常検出装置4の構成を説明する。
【0055】
異常検出装置4は、加熱装置3における異常の有無を監視するために設けられている。本実施形態では、異常検出装置4は、ヒータ18M,18Tのそれぞれ(二次側電流経路12)について、劣化の有無と、断線の有無と、を判定する。なお、この場合の「劣化」とは、電熱線の劣化等によって、電気抵抗が正常時と比べて所定値以上増加していること等をいう。また、この場合の「断線」とは、電熱線の焼損等によって電流が流れない状態となっていること等をいう。
【0056】
本実施形態では、ヒータ18M,18Tに流れる電流が約4000Aと大電流であり、且つ、ヒータ18M,18Tのバスバーが太い。このため、ヒータ18M,18Tのバスバーの電流を検出するためには、大がかりなセンサが必要である。一方、本実施形態では、異常検出装置4は、電流値が比較的小さい一次側電流経路10において電流を検出するように構成されている。すなわち、ヒータ18M,18Tの大型のバスバーに電流センサおよびこの電流センサ用の安全カバーを設ける必要がない。
【0057】
異常検出装置4は、電流検出部21と、異常判定部22と、表示部23と、を有している。
【0058】
本実施形態では、異常検出装置4は、大電流回路6に対して着脱可能に構成されている。具体的には、異常検出装置4は、スイッチング部9が収容されている制御盤(図示せず)内に配置されている。そして、電流検出部21が一次側電流経路10に取り外し可能に設置されている。このような構成により、大電流回路6へ異常検出装置4を後付けで少ない工数で容易に設置できる。
【0059】
電流検出部21は、大電流回路6におけるスイッチング部9とトランス11の一次側コイル15M,15Tとの間の電流経路(一次側電流経路10)での電流値を検出するために設けられている。電流検出部21は、三つの電流検出素子25R,25T,25Sを含んでいる。
【0060】
電流検出素子25R,25T,25Sは、三組のスイッチング素子13R,13T,13Sのそれぞれに対応して設けられ対応する組のスイッチング素子13R,13T,13Sを流れる電流を検出する。各電流検出素子25R,25T,25Sは、交流電流を検出するための交流電流センサである。このようなセンサとして、公知の種々のセンサを用いることができる。本実施形態では、各電流検出素子25R,25T,25Sは、電流トランス方式を利用したセンサによって形成されており、円筒状のリングコアにトロイダル巻線が施されたCT(Current Transformer)を有している。よって、図1では、各電流検出素子25R,25T,25Sを模式的に円筒形状で示している。
【0061】
各電流検出素子25R,25T,25Sは、対応するR相線14R、T相線14T、および、S相線14Sを取り囲むように配置されており、対応するR相線14R、T相線14T、および、S相線14Sの電流値を検出する。すなわち、電流検出素子25RはR相線14Rの電流を検出し、電流検出素子25WはT相線14Tの電流を検出し、電流検出素子25SはS相線14Sの電流を検出する。
【0062】
各電流検出素子25R,25T,25Sは、本実施形態では、対応するR相線14R、T相線14T、および、S相線14Sに電流が流れると、この電流の強さに応じた電圧信号を発生する。そして、この電圧信号は、電流検出結果として、異常判定部22へ与えられる。
【0063】
異常判定部22は、各電流検出素子25R,25T,25Sの電流検出値cR,cT,cS(実効値)を用いて大電流回路6の二次側電流経路12(ヒータ18M,18T)の異常の有無を判定する。本実施形態では、異常判定部22は、大電流回路6に異常が生じていないときにおけるスイッチング素子13R,13T,13Sの電流値と、実際に検出された電流検出値cR,cT,cSとの偏差(電流検出値cR,cT,cS間のバランスの変化)に基づいて、異常の有無を判定する。異常判定部22は、所定の入力信号に基づいて、所定の出力信号を出力する構成を有し、例えば、上述した安全プログラマブルコントローラ等を用いて形成することができる。なお、異常判定部22は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含むコンピュータ等を用いて形成されていてもよい。
【0064】
異常判定部22は、上記の安全プログラマブルコントローラまたはコンピュータによってソフトウェア的に構成されていてもよいし、電気回路を用いてハードウェア的に構成されていてもよい。
【0065】
本実施形態では、異常判定部22は、加熱制御部8とは独立して設けられて前述の制御盤内に配置される構成を説明するけれども、この通りでなくてもよい。例えば、異常判定部22は、加熱制御部8と同一の安全プログラマブルコントローラまたはコンピュータ等を用いて形成されていてもよい。
【0066】
異常判定部22は、A/D変換部26と、断線判定部27と、劣化判定部28と、を有している。
【0067】
A/D変換部26は、各電流検出素子25R,25T,25Sから出力されたアナログ信号である電流検出信号を、デジタル信号に変換し、断線判定部27および劣化判定部28へ出力する。
【0068】
断線判定部27は、二次側電流経路12における断線の有無、特に、M座ヒータ18Mにおける断線の有無と、T座ヒータ18Tにおける断線の有無と、を判定するために設けられている。また、劣化判定部28は、二次側電流経路12における配線の劣化の有無、特に、M座ヒータ18Mにおける配線の劣化の有無と、T座ヒータ18Tにおける配線の劣化の有無と、を判定するために設けられている。
【0069】
断線判定部27は、大電流回路6に異常が生じていないときにおける一次側電流経路10のスイッチング素子13R,13T,13Sの電流値と、各電流検出素子25R,25T,25Sで検出された電流検出値cR,cT,cSとの偏差に基づいて、断線の有無を判定する。同様に、劣化判定部28は、大電流回路6に異常が生じていないときにおける一次側電流経路10のスイッチング素子13R,13T,13Sの電流値と、各電流検出素子25R,25T,25Sで検出された電流検出値cR,cT,cSとの偏差に基づいて、劣化の有無を判定する。
【0070】
上記の「異常が生じていない場合」とは、例えば、熱処理装置1が設計仕様の通りの動作をしている場合をいう。また、断線判定部27および劣化判定部28は、電流検出値cR,cT,cSを個別に認識するように構成されている。すなわち、断線判定部27および劣化判定部28は、電流検出値cR,cT,cSを単なる三つの数値として認識するのではなく、各相線14R,14T,14Sに紐付けられた数値として認識する。
【0071】
断線判定部27は、本実施形態では、三つの電流検出素子25R,25T,25Sで検出された三つの電流検出値cR,cT,cSのうちの最大値と最小値との比を用いて、ヒータ18M,18Tのそれぞれについて、断線が生じているか否かを判定する。ここで、断線判定部27による断線判定の方法を説明する。
【0072】
図2(A)~図2(D)は、それぞれ、三つの電流検出素子25R,25T,25Sで検出される電流検出値cR,cT,cSについて説明するための模式的なグラフである。より具体的には、図2(A)は、異常が生じていない正常時における大電流回路6の駆動時の電流検出値cR,cT,cSを示している。図2(B)は、M座ヒータ18Mが断線したときにおける大電流回路6の駆動時の電流検出値cR,cT,cSを示している。図2(C)は、T座ヒータ18Tが断線したときにおける大電流回路6の駆動時の電流検出値cR,cT,cSを示している。図2(D)は、正常時(異常が生じていないとき)、M座ヒータ18Mの断線時、および、T座ヒータ18Tの断線時のそれぞれにおける、各電流検出値cR,cT,cSのうちの最大値と最小値との比を示している。
【0073】
図2(A)~図2(D)のそれぞれにおいて、横軸は、大電流回路6(ヒータユニット7)の定格出力を100%としたときの、大電流回路6の出力比を示している。また、縦軸は、各電流検出値cR,cT,cSを示している。なお、縦軸の係数αは、定数であり、大電流回路6の一次側電流経路10における電流値に応じた値である。
【0074】
図1および図2(A)を参照して、熱処理装置1の正常動作時には、大電流回路6の各電流検出値cR,cT,cSは、どの出力においても、実質的に同じ値を示す。
【0075】
次に、M座ヒータ18Mの断線時について説明する。
【0076】
M座ヒータ18Mの断線時、図1および図2(B)に示すように、電流検出値cR,cT,cSのうち、S相線14S(V相端子16V)における電流検出値cSが最も高く、電流検出値cSよりも低い電流検出値cTが検出され、さらに、電流検出値cTよりも低い電流検出値cRが検出される。これは、一次側コイル15M,15Tのうち断線したM座ヒータ18Mへ電力供給するための一次側コイル15Mが、当該一次側コイル15Mの両端の端子16U,16WにおいてR相線14R、T相線14Tと接続されているためである。これらR相線14R、T相線14Tには、M座ヒータ18Mで電力が消費されないことにより、相対的に低い電流が流れる。一方、一次側コイル15M,15Tのうち断線していないT座ヒータ18Tへ電力供給するための一次側コイル15TのV相端子16Vに接続されたS相線14Sには、T座ヒータ18Tで電力が消費されることにより、相対的に高い電流が流れる。すなわち、断線していないヒータ18T用の一次側コイル15Tに接続されたスイッチング素子13Sにおける電流検出値cSが相対的に高く、断線したヒータ18M用の一次側コイル15Mに接続されたスイッチング素子13R,13Tにおける電流検出値cR,cTが相対的に低くなる。このとき、三つの電流検出素子25R,25T,25Sで検出された三つの電流検出値cR,cT,cSのうちの最大値cSと最小値cRの比cR/cSが、断線判定部27で算出される。そして、断線判定部27は、この比cR/cSを用いて、ヒータ18Mに断線が生じているか否かを判定する。具体的には、図1図2(B)および図2(D)を参照して、比cR/cSが所定のしきい値ThM1未満であり、且つ、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最大である場合、断線判定部27は、ヒータ18Mが断線していると判定する。一方、比cR/cSが所定のしきい値ThM1未満であるけれども、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最大ではない場合、または、比cR/cSが所定のしきい値ThM1以上である場合、断線判定部27は、ヒータ18Mは断線していないと判定する。
【0077】
次に、T座ヒータ18Tの断線時について説明する。
【0078】
T座ヒータ18Tの断線時、図1および図2(C)に示すように、電流検出値cR,cT,cSのうち、R相線14R(U相端子16U)における電流検出値cRが最も高く、電流検出値cRと実質的に同じ電流値ではあるけれども電流検出値cRよりも低い電流検出値cTが検出され、さらに、電流検出値cTよりも格段に低い電流検出値cSが検出される。これは、一次側コイル15M,15Tのうち断線したT座ヒータ18Tへ電力供給するための一次側コイル15Tが、当該一次側コイル15TのV相端子16VにおいてS相線14Sと接続されているためである。このS相線14Sには、T座ヒータ18Tで電力が消費されないことにより、相対的に低い電流が流れる。一方、一次側コイル15M,15Tのうち断線していないM座ヒータ18Mへ電力供給するための一次側コイル15MのU,W相端子16U,16Wに接続されたR,T相線14R,14Tには、M座ヒータ18Mで電力が消費されることにより、相対的に高い電流が流れる。すなわち、断線していないヒータ18M用の一次側コイル15Mに接続されたスイッチング素子13Rにおける電流検出値cRが相対的に高く、断線したヒータ18T用の一次側コイル15Tに接続されたスイッチング素子13Sにおける電流検出値cSが相対的に低くなる。このとき、三つの電流検出素子25R,25T,25Sで検出された三つの電流検出値cR,cT,cSのうちの最大値cRと最小値cSの比cS/cRを用いて、ヒータ18Mに断線が生じているか否かを判定する。具体的には、図1図2(C)および図2(D)を参照して、比cS/cRが所定のしきい値ThT1未満であり、且つ、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最小である場合、断線判定部27は、ヒータ18Tが断線していると判定する。一方、比cR/cSが所定のしきい値ThT1未満であるけれども、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最小ではない場合、または、比cR/cSが所定のしきい値ThT1以上である場合、断線判定部27は、ヒータ18Tは断線していないと判定する。
【0079】
以上が、断線判定部27の構成である。次に、劣化判定部28の構成を説明する。
【0080】
劣化判定部28は、三つの電流検出素子25R,25T,25Sで検出された三つの電流検出値cR,cT,cSのそれぞれについて、異常が検出されていないときからの低下度合いを基に、ヒータ18M,18T(M座側電流経路19MおよびT座側電流経路19T)に劣化が生じているか否かを判定する。
【0081】
次に、M座ヒータ18Mの劣化時について説明する。
【0082】
図1および図2(B)を参照して、M座ヒータ18Mの劣化時にはM座ヒータ18Mの断線時と同様に、電流検出値cR,cT,cSのうち、S相線14S(V相端子16V)における電流検出値cSが最も高く、電流検出値cSよりも低い電流検出値cTが検出され、さらに、電流検出値cTよりも低い電流検出値cRが検出される。なお、図2(B)は、M座ヒータ18Mの断線時について示しているけれども、M座ヒータ18Mの劣化時においても、各電流検出値cR,cT,cSは、M座ヒータ18Mの断線時と同様の傾向(各電流検出値cR,cT,cSの大小関係)が成立する。すなわち、劣化していないヒータ18T用の一次側コイル15Tに接続されたスイッチング素子13Sにおける電流検出値cSが相対的に高く、劣化したヒータ18M用の一次側コイル15Mに接続されたスイッチング素子13R,13Tにおける電流検出値cR,cTが相対的に低くなる。ここで、三つの電流検出素子25R,25T,25Sで検出された三つの電流検出値cR,cT,cSのうち、劣化してないヒータ18Tへ電力供給するための一次側コイル15TのV相端子16Vに接続されたS相線14Sの電流検出値cSが、相対的に大電流値である。また、劣化したヒータ18Mへ電力供給するための一次側コイル15MのU相端子16UおよびW相端子16Wに接続されたR相線14R、T相線14Tの電流検出値cR,cTの平均値(cR+cT)/2が、相対的に小電流値である。この場合に、これらの比{(cR+cT)/2}/cSが、劣化判定部28で算出される。そして、劣化判定部28は、この比{(cR+cT)/2}/cSを用いて、ヒータ18Mが劣化しているか否かを判定する。具体的には、比{(cR+cT)/2}/cSが所定のしきい値ThM2未満であり、且つ、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最大である場合、劣化判定部28は、ヒータ18Mが劣化していると判定する。一方、比{(cR+cT)/2}/cSが所定のしきい値ThM2未満であるけれども、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最小ではない場合、または、比{(cR+cT)/2}/cSが所定のしきい値ThM2以上である場合、劣化判定部28は、ヒータ18Mは劣化していないと判定する。
【0083】
次に、T座ヒータ18Tの劣化時について説明する。
【0084】
図1および図2(C)を参照して、T座ヒータ18Tの劣化時にはT座ヒータ18Tの断線時と同様に、電流検出値cR,cT,cSのうち、R相線14R(U相端子16U)における電流検出値cRが最も高く、電流検出値cRと実質的に同じ電流値ではあるけれども電流検出値cRよりも低い電流検出値cTが検出され、さらに、電流検出値cTよりも格段に低い電流検出値cSが検出される。なお、図2(C)は、T座ヒータ18Tの断線時について示しているけれども、T座ヒータ18Tの劣化時においても、各電流検出値cR,cT,cSは、T座ヒータ18Tの断線時と同様の傾向(各電流検出値cR,cT,cSの大小関係)が成立する。すなわち、劣化していないヒータ18M用の一次側コイル15Mに接続されたスイッチング素子13R,13Tおける電流検出値cR,cTが相対的に高く、劣化したヒータ18T用の一次側コイル15Tに接続されたスイッチング素子13Sにおける電流検出値cSが相対的に低くなる。ここで、三つの電流検出素子25R,25T,25Sで検出された三つの電流検出値cR,cT,cSのうち、劣化してないヒータ18Mへ電力供給するための一次側コイル15MのU相端子16UおよびW相端子16Wに接続されたR相線14RおよびT相線14Tの電流検出値cR,cTの平均値(cR+cT)/2が、相対的に大電流値である。また、劣化したヒータ18Tへ電力供給するための一次側コイル15TのV相端子16Vに接続されたS相線14Sの電流検出値cSが、相対的に小電流値である。この場合に、これらの比cS/{(cR+cT)/2}が、劣化判定部28で算出される。そして、劣化判定部28は、この比cS/{(cR+cT)/2}を用いて、ヒータ18Tが劣化しているか否かを判定する。具体的には、比cS/{(cR+cT)/2}が所定のしきい値ThT2未満であり、且つ、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最小である場合、劣化判定部28は、ヒータ18Tが劣化していると判定する。一方、比cS/{(cR+cT)/2}が所定のしきい値ThT2未満であるけれども、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最小ではない場合、または、比cS/{(cR+cT)/2}が所定のしきい値ThT2以上である場合、劣化判定部28は、ヒータ18Tは劣化していないと判定する。
【0085】
以上の構成によって断線判定および劣化判定が行われた結果を示す信号は、各判定部27,28から表示部23へ出力される。表示部23は、例えば、液晶表示部を有する表示装置であり、異常判定部22での判定結果を示すように構成されている。M座ヒータ18Mが断線しているとの検出結果が断線判定部27から表示部23へ出力された場合、表示部23は、「M座ヒータが断線しています。」と表示する。同様に、T座ヒータ18Tが断線しているとの検出結果が断線判定部27から表示部23へ出力された場合、表示部23は、「T座ヒータが断線しています。」と表示する。
【0086】
また、M座ヒータ18Mが劣化しているとの検出結果が劣化判定部28から表示部23へ出力された場合、表示部23は、「M座ヒータが劣化しています。」と表示する。同様に、T座ヒータ18Tが劣化しているとの検出結果が劣化判定部28から表示部23へ出力された場合、表示部23は、「T座ヒータが劣化しています。」と表示する。
【0087】
なお、本実施形態では、異常判定部22の判定結果が表示部23に出力される形態を例に説明しているけれども、この通りでなくてもよい。例えば、異常判定部22の判定結果が加熱制御部8へ出力され、この結果に応じて加熱制御部8が大電流回路6を制御してもよい。この場合、例えば、加熱制御部8は、断線または劣化を検出されたヒータ18M,18Tへの通電を停止するように、スイッチング部9の動作を制御する。
【0088】
次に、上述した異常判定部22における異常判定の流れの一例を説明する。
【0089】
図3は、異常判定部22の断線判定部27における断線判定の流れの一例を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、フローチャートを参照しながら説明する場合は、フローチャート以外の図を適宜参照しながら説明する。
【0090】
図3を参照して、断線判定部27は、まず、電流検出素子25R,25T,25Sから電流検出値cR,cT,cSを読込む(ステップS11)。
【0091】
次に、断線判定部27は、電流検出値cR,cT,cSのうちM座ヒータ18Mが断線しているときにおける最小値cRと最大値cSとの比cR/cSを算出する(ステップS12)。比cR/cSがしきい値ThM1未満である場合(ステップS12でYES)、断線判定部27は、電流検出値cR,cT,cSのなかで電流検出値cSが最大であるか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13でYESの場合、断線判定部27は、M座ヒータ18Mが断線していると判定する(ステップS14)。この場合、断線判定部27は、続いてヒータ18Tの断線判定(ステップS16~S19)を行う。
【0092】
一方、比cR/cSが所定のしきい値ThM1未満である(ステップS12でYES)けれども、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最大ではない場合(ステップS13でNO)、または、比cR/cSが所定のしきい値ThM1以上である場合(ステップS12でNO)、断線判定部27は、ヒータ18Mは断線していないと判定する(ステップS15)。この場合、断線判定部27は、続いてヒータ18Tの断線判定(ステップS16~S19)を行う。
【0093】
ステップS16では、断線判定部27は、電流検出値cR,cT,cSのうちT座ヒータ18Tが断線しているときにおける最小値cSと最大値Rとの比cS/cRを算出する。比cS/cRがしきい値ThT1未満である場合(ステップS16でYES)、断線判定部27は、電流検出値cR,cT,cSのなかで電流検出値cSが最小であるか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17でYESの場合、断線判定部27は、T座ヒータ18Tが断線していると判定する(ステップS18)。
【0094】
一方、比cR/cSが所定のしきい値ThT1未満である(ステップS16でYES)けれども、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最小ではない場合(ステップS17でNO)、または、比cR/cSが所定のしきい値ThT1以上である場合(ステップS16でNO)、断線判定部27は、ヒータ18Tは断線していないと判定する(ステップS19)。
【0095】
以上が、断線判定部27における断線判定の流れの一例である。次に、劣化判定部28における劣化判定の流れの一例を説明する。
【0096】
図4は、異常判定部22の劣化判定部28における劣化判定の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
【0097】
図4を参照して、劣化判定部28は、まず、電流検出素子25R,25T,25Sから電流検出値cR,cT,cSを読込む(ステップS21)。
【0098】
次に、劣化判定部28は、電流検出値cR,cT,cSのうちM座ヒータ18Mが劣化しているときに大きく低下する電流検出値cT,cRの平均値(cR+cT)/2と、これらの電流検出値cT,cRのそれぞれよりも大きい電流検出値cSとの比{(cR+cT)/2}/cSを算出する(ステップS22)。比{(cR+cT)/2}/cSがしきい値ThM2未満である場合(ステップS22でYES)、劣化判定部28は、電流検出値cR,cT,cSのなかで電流検出値cSが最大であるか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23でYESの場合、劣化判定部28は、M座ヒータ18Mが劣化していると判定する(ステップS24)。この場合、劣化判定部28は、続いてT座ヒータ18Tの劣化判定(ステップS26~S29)を行う。
【0099】
一方、比{(cR+cT)/2}/cSが所定のしきい値ThM2未満である(ステップS22でYES)けれども、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最大ではない場合(ステップS23でNO)、または、比{(cR+cT)/2}/cSが所定のしきい値ThM2以上である場合(ステップS22でNO)、劣化判定部28は、M座ヒータ18Mは劣化していないと判定する(ステップS25)。この場合、劣化判定部28は、続いてヒータ18Tの劣化判定(ステップS26~S29)を行う。
【0100】
次に、劣化判定部28は、電流検出値cR,cT,cSのうちT座ヒータ18Tが劣化しているときに大きく低下するcSと、この電流検出値cSよりも大きい電流検出値cR,cTの平均値(cR+cT)/2との比cS/{(cR+cT)/2}を算出する(ステップS26)。比cS/{(cR+cT)/2}がしきい値ThT2未満である場合(ステップS26でYES)、劣化判定部28は、電流検出値cR,cT,cSのなかで電流検出値cSが最小であるか否かを判定する(ステップS27)。ステップS27でYESの場合、劣化判定部28は、T座ヒータ18Tが劣化していると判定する(ステップS28)。
【0101】
一方、比cS/{(cR+cT)/2}が所定のしきい値ThT2未満である(ステップS26でYES)けれども、電流検出値cR,cT,cSの中で電流検出値cSが最小ではない場合(ステップS27でNO)、または、比cS/{(cR+cT)/2}が所定のしきい値ThM2以上である場合(ステップS26でNO)、劣化判定部28は、ヒータ18Tは劣化していないと判定する(ステップS29)。
【0102】
以上が、劣化判定部28における劣化判定の流れの一例である。
【0103】
以上説明したように、本実施形態によると、トランス11で電圧が降圧される前の一次側電流経路10、すなわち、トランス11で電流が増幅される前の一次側電流経路10での電流値を、電流検出値cR,cT,cSとして電流検出部21が検出する。これにより、電流検出部21が検出する電流検出値cR,cT,cSは、ヒータ18M,18Tで消費される電力の電流値である二次側電流経路12の電流値よりも小さい。よって、電流検出部21は、比較的小さな電流を検出することが可能な構成であればよく、小型且つコスト安価な構成で済む。これにより、大電流が流れるヒータ18M,18Tの異常をより小型な構成でコスト安価に検出できる異常検出装置4を実現できる。
【0104】
また、本実施形態によると、異常検出装置4を、スイッチング部9とともに制御盤(図示せず)内に収容できるので、熱処理装置1全体をコンパクトにできる。
【0105】
さらに、スイッチング部9に隣接するように電流検出部21を設置することで、異常検出装置4を大電流回路6に後付けすること(大電流回路6の設置後に異常検出装置4を設置すること)も容易にできる。その上、スイッチング部9に隣接するように電流検出部21を設置する簡易な工程で異常検出装置4を大電流回路6に設置できるので、異常検出装置4の設置工事にかかる工数が少なくて済む。これにより、異常検出装置4の設置費用が安く済む。
【0106】
また、異常検出装置4を用いることで、ヒータ18M,18Tの交換のタイミングをより明確に把握することができるので、熱処理装置1のさらなる安定稼働を実現できる。
【0107】
また、本実施形態によると、異常判定部22は、大電流回路6に異常が生じていないときにおける一次側電流経路10の電流値と、電流検出値cR,cT,cSとの偏差に基づいて異常の有無を判定する。この構成によると、トランス11の一次側電流経路10の電流検出値cR,cT,cSの変化を通じてトランス11の二次側電流経路12における異常の発生を検出できる。
【0108】
また、本実施形態によると、三組のスイッチング素子13R,13T,13Sのそれぞれに対応して電流検出素子25R,25T,25Sが設けられる。これにより、より精度よく、トランス11の二次側電流経路12における異常を検出できる。また、三つの電流検出素子25R,25T,25Sは、何れも、比較的小さな電流を検出できればよいので、コスト安価な構成で済む。これにより、複数(三つ)の電流検出素子25R,25T,25Sが用いられる場合でも、異常検出装置4のコストをより低減できる。
【0109】
また、本実施形態によると、断線判定部27は、三つの電流検出値cR,cT,cSの最大値と最小値との比を用いて、ヒータ18M,18Tに断線が生じているか否かを判定する。この構成によると、断線判定部27は、三つの電流検出値cR,cT,cSの最大値と最小値との比を用いることで、簡易な演算によってヒータ18M,18Tの断線の有無を判定できる。
【0110】
また、本実施形態によると、断線判定部27は、比cR/cSがしきい値ThM1未満である場合、ヒータ18Mに断線が生じていると判定し、比cS/cRがしきい値ThT1未満である場合、ヒータ18Tに断線が生じていると判定する。この構成によると、ヒータ18M,18Tに電流が流れていない場合、三つの電流検出値cR,cT,cSの最大値と最小値との比(cR/cS;cS/cR)が所定のしきい値ThM1,ThT1未満となる。よって、このような比の低下を基に、断線判定部27は、ヒータ18M,18Tに断線が生じていると判定できる。
【0111】
また、本実施形態によると、劣化判定部28は、三つの電流検出値cR,cT,cSについて、異常が検出されていないときからの低下度合いを基にヒータ18M,18Tに劣化が生じているか否かを判定する。この構成によると、ヒータ18M,18T(電流経路19M,19T)に劣化が生じている場合、異常が検出されていないときからの対応する電流検出値cR,cT,cSの低下度合いが所定量を超える。よって、このような電流検出値cR,cT,cSの低下を基に、劣化判定部28は、ヒータ18M,18Tに劣化が生じていると判定できる。
【0112】
また、本実施形態によると、異常判定部22は、ヒータ18Mおよびヒータ18Tのそれぞれにおける異常の有無を判定する。この構成によると、トランス11の二次側に設けられた二つのヒータ18M,18Tのそれぞれについて、異常判定部22は、個別に異常判定を行うことができる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0114】
(1)上述の実施形態では、断線判定部27が、ヒータ18Mの断線判定において電流検出値cR,cT,cSのうちS相の電流検出値cSが最大値であるか否かを判定する(ステップS13)とともに、ヒータ18Tの断線判定において電流検出値cR,cT,cSのうちS相の電流検出値cSが最小値であるか否かを判定する(ステップS17)形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、断線判定部27は、電流検出値cR,cT,cSのなかから最大値cmaxと最小値cminを抽出し、単にこれら最大値cmaxと最小値xminとの比に基づいて断線判定が行われてもよい。このような断線判定の一例を、より具体的に説明する。
【0115】
図5は、異常判定部22の断線判定部27における断線判定の流れの変形例を説明するためのフローチャートである。
【0116】
図5を参照して、断線判定部27は、まず、電流検出素子25R,25T,25Sから電流検出値cR,cT,cSを読込む(ステップS31)。
【0117】
次に、断線判定部27は、電流検出値cR,cT,cSのなかから最大値cmaxと最小値cminを抽出する(ステップS32)。
【0118】
例えばM座ヒータ18MおよびT座ヒータ18Tの何れにも異常が生じていない正常時、図2(A)に示すように、電流検出値cR,cT,cSは、概ね同じ値を示している。この場合、ノイズの混入等のその時々の状況に応じて、電流検出値cR,cT,cSのなかから最大値cmaxと最小値cminが抽出される。
【0119】
また、M座ヒータ18Mが断線している場合、図2(B)に示すように、結果的に電流検出値cSが最大値cmaxとなり、電流検出値cRが最小値cminとなる。また、T座ヒータ18Tが断線している場合、図2(C)に示すように、結果的に電流検出値cRが最大値cmaxとなり、電流検出値cSが最小値cminとなる。
【0120】
次に、断線判定部27は、最大値cmaxと最小値cminとの比、すなわち、cmin/cmaxがしきい値ThM1未満であるか否かを判定する(ステップS33)。cmin/cmax≧ThM1である場合、すなわち、図2(D)に示すように、cmin/cmaxがしきい値ThM1線以上の範囲にあるとき、断線判定部27は、ヒータ18M,18Tが断線していないと判定する(ステップS34)。
【0121】
一方、cmin/cmax<ThM1である場合(ステップS33でYES)、すなわち、cmin/cmaxが図2(D)のしきい値ThM1線未満の範囲にあるとき、断線判定部27は、cmin/cmaxがしきい値ThT1以上であるか否か(cmin/cmaxが図2(D)のThM1線とThT1線の間にあるか否か)を判定する(ステップS35)。cmin/cmaxがしきい値ThT1以上である場合(cmin/cmaxが図2(D)のThM1線とThT1線の間にある場合、ステップS35でYES)、断線判定部27は、M座ヒータ18Mが断線していると判定する(ステップS36)。
【0122】
一方、cmin/cmaxがしきい値ThT1未満である場合(cmin/cmaxが図2(D)のThT1線の下側にある場合、ステップS35でNO)、断線判定部27は、T座ヒータ18Tが断線していると判定する(ステップS37)。
【0123】
以上説明した図5に示す変形例であれば、断線判定部27は、電流検出値cR,cT,cSを個別に認識する必要がなく、これら三つの電流検出値cR,cT,cSのなかから2つの値を最大値cmaxと最小値cminとして抽出する。これにより、電流検出値cR,cT,cSのうちS相の電流検出値cSが最大値または最小値であるか否かを判定するステップ(図3のステップS13,S17)を設ける必要がなく、断線判定部27は、より簡易な演算で断線判定できる。
【0124】
(2)また、上述の実施形態では、三相交流電源が用いられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、二相交流電源を電源として用いてもよい。この場合、スイッチング部は、二組のスイッチング素子を有する。また、異常検出装置の電流検出部は、二組のスイッチング素子に対応する二つの電流検出部を有する。
【0125】
(3)また、上述の実施形態では、負荷としての二つのヒータに大電流が流される形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、負荷として、ヒータ以外の電気機器が用いられてもよいし、負荷に流れる電流は1000Aを超える大きな値でなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、大電流回路の異常検出装置、および、大電流回路装置として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 熱処理装置(大電流回路装置)
4 異常検出装置
5 交流電源
6 大電流回路
9 スイッチング部
10 一次側電流経路(スイッチング部とトランスの一次側との間の電流経路)
11 トランス
13R,13T,13S スイッチング素子
17M 二次側コイル(第一系統)
17T 二次側コイル(第二系統)
18M M座ヒータ(負荷、第一負荷)
18T T座ヒータ(負荷、第二負荷)
21 電流検出部
22 異常判定部
25R,25T,25S 電流検出素子
27 断線判定部
28 劣化判定部
cR,cT,cS 電流検出値
ThM1,ThT1 しきい値
図1
図2
図3
図4
図5