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特許7197647高周波基体、高周波パッケージおよび高周波モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】高周波基体、高周波パッケージおよび高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20221220BHJP
   H01S 5/02216 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
H01L23/12 301L
H01S5/02216
H01L23/12 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021123461
(22)【出願日】2021-07-28
(62)【分割の表示】P 2017247851の分割
【原出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2021184482
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 俊彦
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017574(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/192687(WO,A1)
【文献】特開2012-060533(JP,A)
【文献】特開2015-211096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/54
H01L23/00-23/04
H01L23/06-23/26
H01P 5/00- 5/22
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、側面と、前記上面および前記側面に交差して位置する第1切欠き部と、該第1切欠き部と間を空けて位置するとともに前記上面および前記側面に交差して位置する第2切欠き部と、を有する絶縁基体と、
前記上面に、前記第1切欠き部および前記第2切欠き部と隣り合って位置する第1金属層と、
前記上面に、前記第1金属層と間を空けて位置する第2金属層と、を備えており、
前記第1切欠き部は、前記上面と交差する第1側面と、該第1側面と接続する第1底面と、を有し、
前記第2切欠き部は、前記上面と交差する第2側面と、該第2側面と接続する第2底面と、を有しており、
前記第2金属層は、前記上面から前記第2側面に連続して位置しており、
前記絶縁基体は、平面視において、前記第2切欠き部の端部のうち前記絶縁基体の前記側面とは反対側の端部に、前記第2切欠き部と連続した凹部を更に有している、高周波基体。
【請求項2】
平面視において、前記凹部の幅は、前記第2切欠き部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の高周波基体。
【請求項3】
前記第2金属層は、前記上面から前記第2側面および前記第2底面にかけて位置している、請求項1または2に記載の高周波基体。
【請求項4】
前記絶縁基体は、複数の絶縁層が積層された積層体であり、
前記第2底面の少なくとも一部は、前記絶縁層が露出している、請求項1~3のいずれか1つに記載の高周波基体。
【請求項5】
前記絶縁基体は、複数の絶縁層が積層された積層体であり、
前記凹部は、前記第2側面と連続する凹部側面と、前記第2底面と連続する凹部底面と、を有しており、
前記凹部底面の少なくとも一部は、前記絶縁層が露出している、請求項1~4のいずれか1つに記載の高周波基体。
【請求項6】
前記第1金属層は、平面視において、前記絶縁基体の前記上面における前記側面側の端部まで位置し、
前記上面に位置する前記第2金属層の外縁の少なくとも一部は、平面視において、前記絶縁基体の前記上面における前記側面側の端部と重なって位置している、請求項1~のいずれか1つに記載の高周波基体。
【請求項7】
前記上面に、前記第1切欠き部、2つの前記第2切欠き部、前記第2切欠き部と連続した前記凹部、2つの前記第1金属層と、前記第2金属層とを有しており、
平面視において、
2つの前記第1金属層が、前記第1切欠き部を挟んで位置しており、
2つの前記第2切欠き部が、2つの前記第1金属層および前記第1切欠き部を挟んで位置していることを特徴する請求項1~のいずれか1つに記載の高周波基体。
【請求項8】
前記第1金属層は、差動線路であり、前記第2金属層はグランドであることを特徴する請求項に記載の高周波基体。
【請求項9】
前記第1金属層は、接続部材が接続される端子部と、該端子部と連続した線路部とを有しており、
前記第1金属層が延びる方向と交差する断面視において、前記端子部の幅は、前記線路部の幅以上であることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の高周波基体。
【請求項10】
基板と、
前記基板に位置する枠体と、
前記枠体に固定された請求項1~のいずれか1つに記載の高周波基体とを備えていることを特徴とする高周波パッケージ。
【請求項11】
請求項10に記載の高周波パッケージと、
前記基板に実装された、前記高周波パッケージの前記高周波基体と電気的に接続された半導体素子と、
前記枠体の上端に接合された、前記半導体素子を覆うとともに前記高周波パッケージの内部を覆った蓋体とを備えていることを特徴とする高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波基体、高周波基体を用いた高周波パッケージ、および高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の普及により、無線通信機器では、より高速化、大容量の情報を伝送するために高周波化がすすめられている。そのなかでも、高周波基体が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-311682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、誘電体基板に信号を伝送する第1線路導体および第2線路導体が設けられている。第1線路導体と第2線路導体とは、並行に延びている。しかしながら、特許文献1の技術では、第1線路導体と第2線路導体との間におけるインピーダンスの値が低くなり、高周波の信号の伝送において損失が大きくなる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態にかかる高周波基体は、絶縁基体と、第1金属層と、第2金属層とを備えている。絶縁基体は、上面と、側面と、上面および側面に交差して位置する第1切欠き部と、第1切欠き部と間を空けて位置するとともに上面および側面に交差して位置する第2切欠き部と、を有する。第1金属層は、上面に第1切欠き部および第2切欠き部に隣り合って位置している。第2金属層は、上面に、第1金属層と間を空けて位置している。第1切欠き部は、上面と交差する第1側面と、該第1側面と接続する第1底面と、を有し、第2切欠き部は、上面と交差する第2側面と、該第2側面と接続する第2底面と、を有している。第2金属層は、上面から第2側面に連続して位置しており、絶縁基体は、平面視において、第2切欠き部の端部のうち絶縁基体の側面とは反対側の端部に、第2
切欠き部と連続した凹部を有している。
【0006】
本発明の一実施形態にかかる高周波パッケージは、基板と、前記基板の上面に接合された、貫通孔を有する枠体と、前記枠体の前記貫通孔に固定された上述の高周波基体とを備えている。
【0007】
本発明の一実施形態にかかる高周波モジュールは、上述の高周波パッケージと、上述の高周波パッケージに収納され、前記高周波基体と電気的に接続される半導体素子と、前記枠体の上端に接合された、前記半導体素子を覆うとともに前記高周波パッケージの内部を覆った蓋体とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る高周波基体は、上記のような構成であることによって、周波数特性を向上させることができる。また、高周波の信号を良好な条件で伝送することができる高周波パッケージおよび高周波モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの上面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの下面斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る高周波基体の平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る高周波基体の斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る高周波基体の側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る高周波基体(接続部材無し)の斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る高周波基体の断面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る高周波基体の斜視図である。
図10】本発明の一実施形態に係る高周波モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る高周波基体について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<高周波基体の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの上面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの下面斜視図である。図4は、本発明の一実施形態に係る高周波基体の平面図である。図5は、本発明の一実施形態に係る高周波基体の斜視図である。図6は、本発明の一実施形態に係る高周波基体の側面図である。図7は、本発明の一実施形態に係る高周波基体(接続部材無し)の斜視図である。図8は、本発明の一実施形態に係る高周波基体の断面図である。図9は、本発明の他の実施形態に係る高周波基体の斜視図である。これらの図において、高周波パッケージ2は、高周波基体1を備えている。高周波基体1は、絶縁基体10、第1金属層21および第2金属層22を備えている。
【0012】
絶縁基体10は、複数の誘電体からなる複数の絶縁層が積層されてなる。絶縁基体10は、たとえば平面視において、矩形状やコの字形(矩形の1辺が無い形状)であり、大きさが4mm×8mm~25mm×50mmで、高さが1mm~10mmである。絶縁基体10を構成する絶縁層の各層は、誘電体材料からなる。誘電体材料としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体または窒化珪素質焼結体のようなセラミック材料、またはガラスセラミック材料を用いることができる。
【0013】
絶縁基体10の上面には、最表に位置する絶縁層(以下、最上層の絶縁層とする)を貫通するとともに、平面視における絶縁基体10の外縁の1辺に開口した第1切欠き部11と、第2切欠き部12とが位置している。絶縁基体10の端部は、平面視において、この各切欠き部が開口している外縁と重なる位置のことをいう。第1切欠き部11と第2切欠き部12とは間を空けて位置している。第1切欠き部11および第2切欠き部12とは同じ方向に延びている。また、第2切欠き部12は、第1切欠き部11よりも外側に位置している。第1切欠き部11および第2切欠き部12は、平面視において、たとえば矩形状であり、大きさが0.2mm×1mm~2mm×10mmである。第1切欠き部11および第2切欠き部12は、平面視において、楕円形状、正方形状、角部が丸い矩形状であってもよい。また、第1切欠き部11および第2切欠き部12は、断面視において、たとえば矩形状であり、絶縁基体10の上面に平行な方向の長さは0.2mm~2mmであり、絶縁基体10の上面に垂直な方向の長さ、即ち、第1切欠き部11および第2切欠き部12の深さは、0.2mm~2mmである。第1切欠き部11および第2切欠き部12は、断面視において、テーパ状、逆テーパ状および階段形状であってもよい。第1切欠き部11および第2切欠き部12は、空気あるいは樹脂材料やガラス材料等からなる誘電体材料で満たされており、絶縁基体10よりも誘電率が低くなっているのがよい。
【0014】
絶縁基体10のうち、複数の絶縁層の間に位置する絶縁層の上面で、平面視において、第1切欠き部11および第2切欠き部12と重なる位置の周囲ならびに第1金属層21および第2金属層22と重なる位置には、複数の接地導体が位置していてもよく、貫通導体
等で上下の接地導体が電気的に接続されている。
【0015】
絶縁基体10には接地導体が設けられていてもよい。具体的には、内部の接地導体または下面接地導体層は、たとえば最表層の絶縁層(最上層と反対側。以下、最下層の絶縁層とする)の上面または下面の全体に設けられてよい。また、内部の接地導体は、たとえば、タングステン、モリブデンおよびマンガンなどの金属材料から成っている。また、下面接地導体層は、たとえば、タングステン、モリブデンおよびマンガンなどの金属材料からなり、表面にニッケルめっきや金めっきが施されて成っている。
【0016】
図1および図2に示すように、絶縁基体10の上面、つまり最上層の絶縁層の上面には、第1切欠き部11と第2切欠き部12と隣接した、第1金属層21が設けられている。第1金属層21は、たとえば、金、銀、銅、ニッケル、タングステン、モリブデンおよびマンガンなどの金属材料から成り、絶縁層の表面にメタライズ層やめっき層等の形態で同時焼成されたり、金属めっきされてなるものでもよい。また、第1金属層21は、幅が0.05mm~2mmで、長さが、1mm~20mmである。第1金属層21は、高周波(例えば10~60GHz)の信号を伝送する。このとき、第1金属層21は、複数位置していてもよい。第1金属層21が複数ある場合には、第1金属層21同士の間に第1切欠き部11が位置しており、複数の第1金属層21を間に挟んで第2切欠き部12が位置するのがよい。
【0017】
また、第1金属層21は、リード端子等の接続部材40が接合される端子部31と、信号が伝送される線路部32とを有している。この端子部31は、たとえば、平面視において、長さが0.2mm~10mmで、幅が0.1mm~2mmであり、線路部32は、長さが1mm~20mmで、幅が0.05mm~2mmである。また、端子部31および線路部32の厚みは、0.01mm~0.1mmである。
【0018】
また、絶縁基体10の上面、つまり最上層の絶縁層の上面には、第1金属層21と間を空けて、第1金属層21と並行に延びている箇所を有している、第2金属層22が設けられている。第2金属層22は、たとえば、金、銀、銅、ニッケル、タングステン、モリブデンおよびマンガンなどの金属材料から成り、最上層の絶縁層の表面にメタライズ層やめっき層等の形態で同時焼成されたり、金属めっきされてなるものでもよい。第2金属層22は、接地導体と接続される。また、第2金属層22は第1金属層21と間を空けるとともに、第1金属層21の線路部32に沿って位置しているため、信号配線としての第1金属層21をコプレーナ構造とすることができる。コプレーナ構造とすることで、高周波の信号を円滑に伝達することができる。
【0019】
第2金属層22は、絶縁基体10の上面、つまり最上層の絶縁層の上面のみでなく、第2切欠き部12の側面および下面にも位置している。このとき、絶縁基体10の上面から連続して位置している。
【0020】
絶縁基体10の上面には、平面視において、絶縁基体10の内側に、第2切欠き部12と連続した凹部13が位置している。凹部13の表面には、第2金属層22は位置していない。つまり、凹部13と重なる位置においては、絶縁基体10の表面が露出している。また、凹部13は、平面視において、例えば、半円状である。他にも、矩形状、半楕円状等であってもよい。凹部13は、深さが0.2mm~2mmであり、例えば平面視において半円状であれば半径が0.1mm~2mmである。このとき、凹部13は、第2切欠き部12と同じ深さであってよい。同じ深さであると、加工が容易にしやすくなる。
【0021】
本発明の実施形態に係る高周波基体1は、第1金属層21と第2金属層22との間に第2切欠き部12および凹部13があることによって空間が形成され、第1金属層21と第
2金属層22との間の誘電率を小さくすることができる。このため、第1金属層21と第2金属層22との間を狭くすることによって静電容量が大きくなり、このとき凹部13があることによって静電容量を小さくすることができる。このため、静電容量が大きくなることに伴って所望の値より小さくなりやすくなる特性インピーダンスを大きくしやすくすることができる。ひいては、所望の特性インピーダンスに制御することができる。その結果、高周波基体1は、第1金属層21と第2金属層22との間の特性インピーダンスを所望の値に整合しやすくすることができ、高周波特性を向上することができる。また、凹部13があることによって、第1金属層21と第2金属層22の電気的な接触を低減させることができる。
【0022】
本発明の他の実施形態に係る高周波基体1において、凹部13は、平面視において、第2切欠き部の開口よりも幅が細くなっている。このことによって、端子部31および線路部32と第2金属層22との空間距離を調整することにより、端子部31および線路部32と第2金属層22間の誘電率を均一に保ちやすく、特性インピーダンスを所望の値に整合しやすくすることができる。
【0023】
本発明の他の実施形態に係る高周波基体1において、凹部13は、線路部32と並行に位置していてもよい。このことによって、線路部32と第2金属層22との間で生じるインピーダンスを大きくしやすくすることができる。
【0024】
本発明の他の実施形態に係る高周波基体1において、第1金属層21は、絶縁基体10の端部よりも内側に位置していてもよい。つまり、端子部31の端は、絶縁基体10の端部、つまり平面視において、絶縁基体10の外縁よりも内側に位置しており、絶縁基体10の外縁と重ならない。また、第2金属層22は、絶縁基体10の端部と重なって位置していてもよい。つまり、平面視において、絶縁基体10の外縁と重なっている。第2金属層22が、高周波基体1の端まで位置していることによって、第2金属層22がグランドとしてより有効に機能することができる。
【0025】
本発明の他の実施形態に係る高周波基体1において、第1金属層21は複数位置していてもよい。このとき、図8に示すように、断面視において、順番に、第2金属層22、第1金属層21、第1金属層21および第2金属層22に並んでいるのがよい。つまり、GSSG構造(差動線路構造)をとっている。このとき、第2金属層22と第1金属層21との間には、第2切欠き部12および凹部13が位置している。つまり、第1金属層21のそれぞれの片端に、第2切欠き部12および第2切欠き部12と連続して位置した凹部13を挟んで第2金属層22が位置している。また、第1金属層21同士の間には、第1切欠き部11が位置している。このとき、第1金属層21は、差動線路として信号を伝送することができる。第2金属層22は、グランドである。
【0026】
本発明の他の実施形態に係る高周波基体1において、凹部13の中心は、平面視において、第2切欠き部12の中心よりも第1切欠き部11側に位置している。このことによって、第2金属層22と第1金属層21との電気的な接触を低減させることができる。
【0027】
本発明の他の実施形態に係る高周波基体1において、第1金属層21の上面および第2金属層22の上面には、それぞれに対して互いに並行に位置した接続部材40をさらに備えていてもよい。接続部材40は、例えばリード端子等である。接続部材40は、接合材等を用いて絶縁基体10に接合される。
【0028】
また、側面に溝部50が位置しており、溝部50の表面にメタライズ層が形成されていてもよい。メタライズ層は、たとえばタングステン、モリブデン、マンガン、ニッケルまたは金等から成る。メタライズ層があることによって、第1切欠き部11、第2切欠き部
12および凹部13からなる大気中の層と絶縁基体10からなる誘電体材料との境界部における電界の広がりを抑制することができるとともに、第1金属層21同士の間に生じるクロストークや共振を抑制することができ、高周波基体1の周波数特性を向上することができる。
【0029】
内部の接地導体は、接続導体等を介して、接地導体と電気的に接続されている。さらに、複数の絶縁層の上下面を貫通するように設けたビア等を介して、各層の上面に設けられた接地導体は、電気的に接続されていてもよい。
【0030】
<高周波基体の製造方法>
絶縁基体10は、たとえば複数の絶縁層が酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、次のようにして製作される。まず、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素等の原料粉末に適当な有機バインダおよび溶剤等を添加混合してスラリーを作製する。次に、スラリーをドクターブレード法等の成形法でシート状に成形することにより複数枚のセラミックグリーンシートを作製する。このとき、一番上方に位置するグリーンシートの一部に第1切欠き部11および第2切欠き部12となる貫通孔ならびに凹部13になる切欠きが形成されている。
【0031】
その後、上記のセラミックグリーンシートを積層して、圧着する。最後にこの積層されたセラミックグリーンシートを還元雰囲気中において約1600℃の温度で焼成するとともに、切断加工や打ち抜き加工により適当な形状とすることによって所望の形状からなる絶縁基体10を作製することができる。
【0032】
第1金属層21、第2金属層22および各層の上面に設けられる接地導体や下面の接地導体層は、たとえば、タングステンやモリブデン、マンガン等の高融点の金属からなるメタライズ層からなる場合であれば、次のようにして形成することができる。すなわち、まず高融点の金属の粉末を有機溶剤およびバインダとともによく混ざるように練って作製した金属ペーストを、絶縁層の上面や下面となるセラミックグリーンシートの所定部位にスクリーン印刷等の方法で印刷する。その後、これらの金属ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを積層するとともに圧着し、同時焼成する。以上の工程によって、絶縁基体10の上面や内部、つまり絶縁層の間にメタライズ層が第1金属層21、第2金属層22および各層の上面に設けられる接地導体や下面の接地導体層として被着される。また、第1金属層21、第2金属層22および各層の上面に設けられる接地導体や下面の接地導体層は、表面にニッケルめっきや金めっきを設けてもよい。これにより、それぞれの金属層の表面における、ろう材やはんだ等の接合材の濡れ性を向上することができ、基板4やコンデンサの接合性を向上することができるとともに、耐腐食性や耐候性を向上することができる。
【0033】
ビアは、たとえば複数の絶縁層となるセラミックグリーンシートに貫通孔を設けておいて、貫通孔内に導体、各層の上面に設けられた接地導体および最下層の絶縁層の下面に設けられた下面の接地導体層を形成するのと同様の金属ペーストを充填し、それぞれのセラミックグリーンシートを積層するとともに圧着し、同時焼成することによって設けることができる。貫通孔は、たとえば金属ピンを用いた機械的な打ち抜き加工、またはレーザ光を用いた加工等の孔あけ加工によって形成することができる。金属ペーストの貫通孔への充填の際には、真空吸引等の手段を併用して金属ペーストの充填を容易なものとする。
【0034】
<高周波パッケージの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの上面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る高周波パッケージの下面斜視図である。これらの図において、高周波パッケージ2は、
基板4、枠体5および本発明の実施形態に係る高周波基体1を備えている。
【0035】
基板4は、平面視において、矩形状である。また、平面視における大きさが5mm×10mm~50mm×50mmで、高さが0.3mm~20mmである。
【0036】
基板4の上面を取り囲むように、枠体5が設けられている。枠体5は、平面視において矩形状であり、大きさが5mm×10mm~50mm×50mmで、高さが2mm~15mmである。また、厚みは0.5mm~2mmである。
【0037】
基板4、枠体5は、たとえば、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンまたはタングステンのような金属、あるいはこれらの金属の合金、たとえば銅-タングステン合金、銅-モリブデン合金、鉄-ニッケル-コバルト合金などを用いることができる。このような金属材料のインゴットに圧延加工法、打ち抜き加工法のような金属加工法を施すことによって、基板4を構成する金属部材を作製することができる。
【0038】
枠体5の側壁部には貫通孔51が設けられている。貫通孔51には、上記に記載した高周波基体1や高周波パッケージ2の内側と外側とを電気的に接続する、酸化アルミニウム質焼結体からなる絶縁端子が挿入固定されている。つまり、高周波パッケージ2において、高周波基体1は、入出力端子の役割を果たす。
【0039】
<高周波モジュールの構成>
図10に示すように、本発明の一実施形態に係る高周波モジュール3の斜視図を、を示している。この図において、高周波モジュール3は、本発明の実施形態に係る高周波パッケージ2、半導体素子6および蓋体7を備えている。
【0040】
半導体素子6は、たとえばレーザーダイオード(LD)である。半導体素子6は、フォトダイオード(PD)等であってもよい。LDの場合には、枠体5に高周波基体1や絶縁端子を取り付ける貫通孔51以外に、貫通孔を設けて光ファイバを取り付けてもよい。
【0041】
蓋体7は、枠体5の上端に、高周波パッケージ2の内部を覆うように接合される。蓋体7は、平面視において、矩形状であり、大きさが5mm×10mm~50mm×50mmで、高さが0.5mm~2mmである。蓋体7は、たとえば、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンまたはタングステンのような金属、あるいはこれらの金属の合金、たとえば銅-タングステン合金、銅-モリブデン合金、鉄-ニッケル-コバルト合金などを用いることができる。このような金属材料のインゴットに圧延加工法、打ち抜き加工法のような金属加工法を施すことによって、蓋体7を構成する金属部材を作製することができる。
【0042】
以上、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更等が可能である。さらに、特許請求の範囲に属する変更等は全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0043】
1 高周波基体
2 高周波パッケージ
3 高周波モジュール
4 基板
5 枠体
6 半導体素子
7 蓋体
10 絶縁基体
11 第1切欠き部
12 第2切欠き部
13 凹部
21 第1金属層
22 第2金属層
31 端子部
32 線路部
40 接続部材
50 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10