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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】透明断熱フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/01 20060101AFI20221220BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20221220BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20221220BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20221220BHJP
【FI】
B32B15/01 E
B32B7/027
G02B1/14
G02B1/11
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021151925
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2022173038
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】202110492551.4
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520384910
【氏名又は名称】カンブリオス フィルム ソリューションズ(シアメン) コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cambrios Film Solutions (Xiamen) Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】シャオ ジョンチン
(72)【発明者】
【氏名】リエン シウチェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン コーシン
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104110(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074527(WO,A1)
【文献】特開2014-026071(JP,A)
【文献】特開2014-019273(JP,A)
【文献】特開2022-076358(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109239990(CN,A)
【文献】特開2016-028880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0047885(US,A1)
【文献】特開2017-032790(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102602076(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 1/11
G02B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明断熱フィルムであって、
第1の表面及び第2の表面を含むベース層と、
ハードコート層と、
銀ナノワイヤ層と、
内表面及び外表面を含み、銀ナノワイヤ層を保護する保護層と、を備え、
前記ハードコート層及び前記銀ナノワイヤ層は、前記ベース層の前記第1の表面と前記保護層の前記内表面との間に配置され、前記ベース層の前記第2の表面の温度がT1(℃)、前記保護層の前記外表面の温度がT2(℃)、T1とT2との間の温度差(T1-T2)が△Tであり、T1=50~100℃で前記ベース層及び前記保護層が熱平衡に達したとき、△T=0.15T1~0.35T1であり、
前記透明断熱フィルムの透明度は85~99%、前記透明断熱フィルムのヘイズは0.5~2.5%、及び波長550nmにおける反射率は0.5~2%であり、
前記ベース層の前記第1の表面上に前記ハードコート層が配置され、前記ハードコート層上に前記銀ナノワイヤ層が配置され、前記銀ナノワイヤ層上に前記保護層が配置される、
透明断熱フィルム。
【請求項2】
前記銀ナノワイヤ層の表面抵抗は10~150 opsである、請求項1に記載の透明断熱フィルム。
【請求項3】
接着面及びタッチ面を含む反射防止フィルムをさらに備え、前記反射防止フィルムは、前記反射防止フィルムの前記接着面を介して前記保護層の前記外表面に取り付けられている、請求項1又は2に記載の透明断熱フィルム。
【請求項4】
透明断熱フィルムであって、
第1の表面及び第2の表面を含むベース層と、
ハードコート層と、
銀ナノワイヤ層と、
内表面及び外表面を含み、銀ナノワイヤ層を保護する保護層と、
接着面及びタッチ面を含む反射防止フィルムと、を備え、
前記保護層の前記内表面は前記銀ナノワイヤ層に対向しており、
前記ハードコート層及び前記銀ナノワイヤ層は、前記ベース層の前記第1の表面と前記保護層の前記内表面との間に配置され、前記反射防止フィルムは、前記反射防止フィルムの前記接着面を介して前記保護層の前記外表面に取り付けられており、前記ベース層の前記第2の表面の温度がT3(℃)、前記反射防止フィルムの前記タッチ面の温度がT4(℃)、T3とT4との温度差(T3-T4)が△Tであり、T3=50~100℃で前記ベース層及び前記反射防止フィルムが熱平衡に達したとき、△T=0.12T3~0.32T3であり、
前記透明断熱フィルムの透明度は85~99%、前記透明断熱フィルムのヘイズは0.5~2.5%、及び波長550nmにおける反射率は0.5~2%であり、
前記ベース層の前記第1の表面上に前記ハードコート層が配置され、前記ハードコート層上に前記銀ナノワイヤ層が配置され、前記銀ナノワイヤ層上に前記保護層が配置される、
透明断熱フィルム。
【請求項5】
前記銀ナノワイヤ層の表面抵抗は、10~40 opsである、請求項に記載の透明断熱フィルム。
【請求項6】
前記反射防止フィルムは、互いに積層された高屈折層及び低屈折層を含む、請求項4又は5に記載の透明断熱フィルム。
【請求項7】
前記透明断熱フィルムの硬度が2H以上である、請求項に記載の透明断熱フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明断熱フィルムに関するものであり、特にタッチパネル用の透明断熱フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の普及に伴い、電子機器の外観の軽量化、薄型化が求められている。しかしながら、これらの薄型化された電子機器の放熱は困難になるため、これらの電子機器の表面温度は、特に大型で薄型のディスプレイパネルの場合に著しく上昇する。このため、大規模集積回路の設計や電子機器のパッケージングの過程において、放熱問題は依然として緊急の課題である。
【0003】
このような高発熱の電子製品の放熱問題を解決するために、ユーザが電子製品に触れたときの過熱などの問題を回避するために、製品の表面に断熱フィルムを備えている製品がほとんどである。現在、電子機器の表面上には熱伝導率の高い金属製のヒートシンクが設置されていることが多く、熱伝導性金属として銀、銅、アルミニウムなどが一般的に使用されている。しかし、より優れた放熱性や断熱効果が求められる場合には、熱伝導性金属の量を増やす必要がある。ディスプレイパネルの光学特性が影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第109853794号明細書
【文献】中国特許出願公開第106977985号明細書
【文献】中国特許出願公開第111471299号明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示は、第1の表面及び第2の表面を含むベース層と、ハードコート層と、銀ナノワイヤ層と、内表面及び外表面を含む保護層と、を備える、新規な透明断熱フィルムを提供する。ハードコート層及び銀ナノワイヤ層は、ベース層の第1の表面と保護層記内表面との間に配置される。ベース層の第2の表面の温度がT1(℃)、保護層の外表面の温度がT2(℃)、T1とT2との温度差(T1-T2)が△Tである。T1=50~100℃でベース層及び保護層の両方が熱平衡に達したとき、△T=0.15T1~0.35T1である。
【0006】
本開示の一実施形態では、透明断熱フィルムの透明度は85~99%、透明断熱フィルムのヘイズは0.5~2.5%、波長550nmにおける反射率は0.5~2%である。
【0007】
本開示の一実施形態では、銀ナノワイヤ層の表面抵抗は10~150 opsである。
【0008】
本開示の一実施形態では、ベース層の第2の表面と保護層の外表面との両方が熱平衡に達するのに必要な時間が5分未満である。
【0009】
本開示の一実施形態では、ベース層の第1の表面上にハードコート層が配置され、ハードコート層上に銀ナノワイヤ層が配置され、銀ナノワイヤ層上に保護層が配置される。
【0010】
本開示の一実施形態では、透明断熱フィルムは、接着面及びタッチ面を含む反射防止フィルムをさらに備え、反射防止フィルムは、反射防止フィルムの接着面を介して保護層の外表面に取り付けられている。
【0011】
本開示は、第1の表面及び第2の表面を含むベース層と、ハードコート層と、銀ナノワイヤ層と、内表面及び外表面を含む保護層と、接着面及びタッチ面を含む反射防止フィルムと、を備える、別の新規な透明断熱フィルムを提供する。保護層の内表面は、銀ナノワイヤ層に対向している。ハードコート層及び銀ナノワイヤ層は、ベース層の第1の表面と保護層の内表面との間に配置され、反射防止フィルムは、接着面を介して保護層の外表面に取り付けられている。ベース層の第2の表面の温度がT3(℃)、反射防止フィルムのタッチ面の温度がT4(℃)、T3とT4との温度差(T3-T4)が△Tである。T3=50~100℃でベース層及び反射防止フィルムが熱平衡に達したとき、△T=0.12T3~0.32T3である。
【0012】
本開示の一実施形態では、銀ナノワイヤ層の表面抵抗は、10~40 opsである。
【0013】
本開示の一実施形態では、ベース層の第1の表面上にハードコート層が配置され、ハードコート層上に銀ナノワイヤ層が配置され、銀ナノワイヤ層上に保護層が配置される。
【0014】
本開示の一実施形態では、反射防止フィルムは、互いに積層された高屈折層及び低屈折層を含む。
【0015】
本開示の一実施形態では、高屈折層の屈折率は1.6~1.7であり、低屈折層の屈折率は1.3~1.4である。
【0016】
本開示の一実施形態では、透明断熱フィルムの硬度が2H以上である。
【0017】
本明細書における用語「上」は、本明細書において、構成要素間の相対位置を説明するために使用され得ることに留意されたい。例えば、第2の要素「上」に配置された第1の要素は、第1の要素が第2の要素と直接接触して形成される実施形態を含み、第1の要素と第2の要素との間に追加の構成要素が形成されてもよい実施形態も含み得る。
【0018】
さらに、本明細書中の用語「熱平衡」は、透明断熱フィルムの各層間の温度勾配に変化がない状態を表すために用いることができる。例えば、本開示では、ベース層の第2の表面がある温度に一定時間加熱された後、保護層の外表面とベース層の第2の表面との間の温度差が同じままである場合、ベース層と保護層は熱平衡に達する。
【発明の効果】
【0019】
本開示において、断熱材として機能する透明断熱フィルムの銀ナノワイヤ層は、優れた放熱・断熱効果、優れた光学特性、及び高硬度を有する。また、高温高湿環境下でも、銀ナノワイヤの損傷を防ぎ、保存安定性を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の第1の実施形態の透明断熱フィルムの断面図である。
図2】本開示の第2の実施形態の透明断熱フィルムの断面図である。
図3】本開示の第2の実施形態の透明断熱フィルムの安定性試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本開示の第1の実施形態の透明断熱フィルム1000の断面図は図1に示されており、透明断熱フィルム1000は、ベース層1、ハードコート層2、銀ナノワイヤ層3、及び保護層4を備える。ベース層1は、第1の表面11と第2の表面12とを有する。ベース層1の厚さは40~100μmとすることができ、また、ベース層1は、ガラス、サファイア、アクリル(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(Polyimide)、セルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)、及び他の透明材料から作ることができるが、本開示はこれらに限定されない。
【0022】
ハードコート層2は、ベース層1の第1の表面11上に形成されている。ハードコート層2の厚さは0.5~2.0μmとすることができ、また、ハードコート層2は、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の硬化性樹脂を含む硬化膜によって形成することができるが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0023】
銀ナノワイヤ層3はハードコート層2上に形成され、銀ナノワイヤ層3の表面抵抗は10~150 ops(ohm per square, Ω/□)とすることができる。
【0024】
保護層4は、銀ナノワイヤ層3上に形成され、銀ナノワイヤ層3を保護する。保護層4は、内表面41及び外表面42を有し、内表面41は、銀ナノワイヤ層3に対向して接触する。保護層4の厚さは40~100nmとすることができ、また、保護層4は当該技術分野で知られている保護フィルム用の材料、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン(PU)、セロファン、ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体(COP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はこれらの混合物などとすることができる。
【0025】
本開示の第2の実施形態の透明断熱フィルム2000の断面図は図2に示されており、透明断熱フィルム2000は、ベース層1、ハードコート層2、銀ナノワイヤ層3、保護層4、及び反射防止フィルム5を備える。
【0026】
本開示の第2の実施形態では、ベース層1、ハードコート層2、銀ナノワイヤ層3及び保護層4は、第1の実施形態で説明したものと同様であるが、反射防止フィルム5が保護層4の外表面42上に配置されている。
【0027】
反射防止フィルム5は、接着面51及びタッチ面52を有し、接着面51は保護層4の外表面42に取り付けられている。反射防止フィルム5は、高屈折層53と低屈折層54との積層構造であってもよく、高屈折層53の屈折率は1.6~1.7とすることができ、高屈折層53の厚さは50~100nmとすることができる。低屈折層54の屈折率は1.3~1.4とすることができ、低屈折層54の厚さは100~200nmとすることができる。高屈折層53及び低屈折層54は、透明断熱フィルム2000の光学特性を調整するために配置される。
【実施例
【0028】
[透明断熱フィルムの光学特性と断熱効果の評価]
まず、ベース層、ハードコート層、及び銀ナノワイヤ層が順次積層された積層構造体を準備し、銀ナノワイヤの量が異なるために表面抵抗が<10、15、20、150 opsである銀ナノワイヤ層を実施例1~実施例4としてそれぞれ準備する。ベース層、ハードコート層、高屈折層、低屈折層が順次積層された積層構造体を比較例1として準備する。本評価では、実施例1~実施例4及び比較例1の積層構造の透明度、ヘイズ及び反射率を試験する。また、実施例1~4及び比較例1のベース層の第2の表面を50℃(T1)に設定した恒温加熱板に取り付けて、断熱効果の評価方法を実施する。熱平衡後、実施例1~実施例4の銀ナノワイヤ層及び比較例1の低屈折層の露出面の温度(T2)を熱撮像装置(赤外線(IR)カメラ)で測定する。断熱効果は、2つの面の温度差(△T)から評価する。評価結果を表1に示す。銀ナノワイヤ層の表面抵抗が10 ops未満である場合、銀ナノワイヤ層中の銀ナノワイヤの量は、透明断熱フィルムの視認性に影響を及ぼし得ることに留意されたい。反対に、銀ナノワイヤ層の表面抵抗が150 ops超の場合、断熱効果は非効率的である。
【0029】
【表1】
【0030】
透明断熱フィルムの断熱効果及び視認性の要求を満たすため、銀ナノワイヤ層の表面抵抗は、好ましくは15~150 ops、より好ましくは15~50 ops、最も好ましくは15~25 opsであり、その結果、透明度85~99%、ヘイズ0.5~2.5%、及び反射率(550nm)0.5~2%を含む光学特性が達成され得る。
【0031】
次に、25 opsの銀ナノワイヤ層を有する透明断熱フィルムを実施例5として準備する。そのベース層の第2の表面は、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、及び110℃(加熱板温度T1)に加熱され、一方、銀ナノワイヤ層の露出温度(T2)は、熱平衡に達した後に測定される。断熱効果を評価するために温度差△Tを算出し、その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表1~2に示す結果によると、加熱板温度T1と、銀ナノワイヤ層を有する透明断熱フィルムに基づく温度差△Tとの間には、△T(℃)=0.15T1~0.35T1の関係がある。
【0034】
以上の評価結果によると、銀ナノワイヤを有する透明断熱フィルムは、優れた断熱効果を有する。また、熱平衡に達するのに必要な時間が非常に短く、2つの面の間の温度差は5分間で一定に保たれる。また、銀ナノワイヤ層中の銀ナノワイヤの量(表面抵抗)によって、2つの面の間の温度差を7.7~16℃に調整することができる。すなわち、透明断熱フィルムのベース層の第2の表面の温度を50℃に上昇させると、透明断熱フィルムの他方の面の温度を34~42.3℃に維持することができる。ベース層の第2の表面の温度が60~110℃に上昇しても、透明断熱フィルムの2つの面の温度差を17.3~37.7℃にできる。これに対して、比較例1の銀ナノワイヤ層を有しない透明断熱フィルムの2つの面の温度差は0.4℃に過ぎず、断熱効果が低い。さらに、実施例1~実施例4の透明断熱フィルムは、透明度が87.6~92.9%、ヘイズが4%未満、反射率が3%未満という優れた光学特性を有する。
【0035】
次に、ベース層、ハードコート層、銀ナノワイヤ層、保護層及び反射防止層が順次積層された透明断熱フィルムを準備する。反射防止層は、高屈折層と低屈折層とを含み、高屈折層の屈折率は1.628であり、低屈折層の屈折率は1.380である。表面抵抗が10、20、40 opsの銀ナノワイヤ層を有する透明断熱フィルムを実施例6~実施例8としてそれぞれ準備する。上記比較例1も比較のために準備する。実施例6~実施例8及び前述の比較例1の光学特性及び断熱効果についても上記と同様の方法で評価する。すなわち、ベース層の第2の表面を50℃(T3(℃)、加熱板の温度)に加熱して、熱平衡に達した後の反射防止フィルムのタッチ面の温度T4(℃)を測定することによって、その断熱効果を評価する。評価結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3に示す結果によると、実施例6~実施例8の反射防止層を備える透明断熱フィルムは、2つの面の温度差が6.2~15.7℃と優れた断熱効果を示す。このため、ユーザがタッチパネルを操作して透明断熱フィルムのタッチ面に触れても、熱を感じることがない。また、光学特性がさらに向上し、透明度が91.1~95.5%であり、ヘイズが2.18%未満であり、反射率が2%未満である。
【0038】
透明断熱フィルムの断熱効果の要件を満たすために、透明断熱フィルムを備える銀ナノワイヤ層の表面抵抗は、好ましくは10~40 ops、より好ましくは10~25 ops、最も好ましくは20~25 opsである。同時に、透明断熱フィルムの光学的視認性の要件である、透明度85~99%、ヘイズ0.5~2.5%、波長550nmにおける反射率0.5~2%も達成される。
【0039】
断熱効果評価の実施例9として、表面抵抗25 opsの銀ナノワイヤを備える透明断熱フィルムを準備する。上記と同様の方法で断熱効果を評価する。すなわち、ベース層の第2の表面を50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃(T3(℃)、加熱板の温度)に加熱して、熱平衡に達した後の反射防止フィルムのタッチ面の温度T4(℃)を測定することによって、その断熱効果を評価する。
評価結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
表3~表4に示す結果によると、加熱板温度T3と、銀ナノワイヤ層を有する透明断熱フィルムに基づく温度差△Tとの間には、△T(℃)=0.12T3~0.32T3の関係がある。
【0042】
次に、屈折率の異なる高屈折層及び低屈折層を用いて、透明断熱フィルムの反射膜の断熱効果及び光学特性を最適化する。実施例10~実施例13の高屈折膜及び低屈折膜の屈折率及び銀ナノワイヤ層の表面抵抗を表5に示す。上記の方法により、光学特性及び断熱効果を評価する。結果を表5に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
この結果によると、屈折率の異なる低屈折層と高屈折層とを備える実施例10~実施例13の透明断熱フィルムは、いずれも優れた断熱効果及び光学特性を示し、実施例13が最も優れた断熱効果及び光学特性を示す。実施例13の透明断熱フィルムは、低屈折層の屈折率が1.383、高屈折層の屈折率が1.677、及び銀ナノワイヤ層の表面抵抗が25 opsのとき、透明度が93.8%、ヘイズが1.14%、反射率が0.73%、及び温度差が13.2℃である。
【0045】
ベース層、ハードコート層、銀ナノワイヤ層、保護層及び反射防止フィルムが順次積層された透明断熱フィルムを実施例14及び実施例15として準備し、高屈折層の屈折率は1.677、低屈折層の屈折率は1.383、銀ナノワイヤ層の表面抵抗はそれぞれ25 ops及び40 opsである。断熱効果と光学特性の評価にもかかわらず、高温高湿環境における85℃と湿度85%での銀ナノワイヤ層の硬度、耐擦傷性、及び安定性も試験する。評価結果を表6及び図3に示す。
【0046】
【表6】
【0047】
表6及び図3に示す評価結果によると、実施例14及び実施例15の透明断熱フィルムは、優れた断熱効果及び光学特性を有する。さらに、実施例14及び実施例15の透明断熱フィルムは、高硬度であり、耐擦傷性が高い。高温高湿環境下では、85℃、湿度85%の高温高湿環境下における銀ナノワイヤ層の硬度、耐擦傷性、安定性の試験結果に基づき、反射防止フィルムは銀ナノワイヤ層の損傷を防止し、銀ナノワイヤ層の保存安定性を効果的に向上させることができる。
【0048】
上記の開示は、その詳細な技術的内容及び発明的特徴に関する。当業者は、その特徴から逸脱することなく、記載された開示の開示及び提案に基づいて様々な修正及び置換を進めることができる。それにもかかわらず、そのような変更及び置換は、上記の説明において完全には開示されていないが、それらは実質的に、添付の特許請求の範囲に包含されている。
【符号の説明】
【0049】
1 ベース層
2 ハードコート層
3 銀ナノワイヤ層
4 保護層
5 反射防止フィルム
11 第1の表面
12 第2の表面
25 表面抵抗
41 内表面
42 外表面
51 接着面
52 タッチ面
53 高屈折層
54 低屈折層
1000、2000 透明断熱フィルム
図1
図2
図3