(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】舷梯設備
(51)【国際特許分類】
B63B 27/14 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B63B27/14 104B
(21)【出願番号】P 2021155704
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏 幸伸
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-44993(JP,A)
【文献】実開昭48-81592(JP,U)
【文献】実開平2-87696(JP,U)
【文献】実開昭62-129391(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0096851(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110450912(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 27/14
B63B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の甲板に対して垂直に立った格納姿勢と水平に倒した使用姿勢との間で揺動可能に取付けられた上部踊り場と、該上部踊り場に連結された舷梯とを含んで構成された舷梯装置と、
前記舷梯を、船舶の甲板に対して垂直に立った格納姿勢と水平に倒した展開準備位置の間で回転可能に保持するダビットと、
前記上部踊り場を前記甲板に対し回転可能に取付ける第1の支軸、および前記ダビットを前記甲板に対し回転可能に取付ける第2の支軸と、
前記第1の支軸と前記第2の支軸とを同期して回転するよう連結する連結軸とを備え、
前記第1の支軸と前記連結軸の一端との間、および前記第2の支軸と前記連結軸の他端との間の2カ所に自在継手が介装されている
ことを特徴とする舷梯設備
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舷梯設備に関する。さらに詳しくは、本発明は、船舶に人が乗下船するときに使用する舷梯設備に関する。
【背景技術】
【0002】
舷梯は、不使用時には船の甲板上に格納しておき、人の乗下船に使用するときは船側に張り出し、船と岸壁や通船、タグボート等(以下、岸壁等という)の間に渡し掛けるように使用される。このような舷梯の従来技術の一例に特許文献1がある。
【0003】
特許文献1に示されるような舷梯装置の基本構造を
図5および
図6に基づき説明する。
舷梯装置100は、上部踊り場101と舷梯102を備えている。上部踊り場101は、支軸103を介して船の甲板110上で回転可能に取付けられている。舷梯102は上部踊り場101に対し傾斜可能に取付けられると共に、舷梯102の略中間部位はダビット104に支持されるようになっている。
ダビット104は支軸105を介して船の甲板110上で回転可能に取付けられている。
【0004】
舷梯102は、不使用時には
図5に示すように、甲板110上で垂直に立てられ、格納用支柱111に預けて保持される。使用時には
図6に示すように、舷梯102を水平に倒すよう展開し、さらに舷梯102を斜めに傾斜させ、舷梯102の先端を岸壁等に接地させる。
このように、舷梯装置100を使用するときも格納するときも、舷梯102を垂直な格納姿勢と水平な展開姿勢との間で回転させる必要がある。この場合、上部踊り場101と舷梯102を支持するダビット104とは同期して回転させる必要があるため、上部踊り場101の支軸103とダビット104の支軸105は連結軸106で互いに連結されている。
【0005】
ところで、連結軸106は長尺のパイプであるため撓みが生ずるので、その途中を支えるため軸支持金具107で支持されている。
しかるに、連結軸106を軸支持金具107で支持した部分では、金属同士が直接接触するので発錆を解消できない。また、航海中の船体振動に伴う異音が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、発錆や異音発生等の不具合が生じない舷梯設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の舷梯設備は、船舶の甲板に対して垂直に立った格納姿勢と水平に倒した使用姿勢との間で揺動可能に取付けられた上部踊り場と、該上部踊り場に連結された舷梯とを含んで構成された舷梯装置と、前記舷梯を、船舶の甲板に対して垂直に立った格納姿勢と水平に倒した展開準備位置の間で回転可能に保持するダビットと、前記上部踊り場を前記甲板に対し回転可能に取付ける第1の支軸、および前記ダビットを前記甲板に対し回転可能に取付ける第2の支軸と、前記第1の支軸と前記第2の支軸とを同期して回転するよう連結する連結軸とを備え、前記第1の支軸と前記連結軸の一端との間、および前記第2の支軸と前記連結軸の他端との間の2カ所に自在継手が介装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)舷梯を使用状態にしたり格納する際に、連結軸の撓みを自在継手が吸収するので、上部踊り場を回転可能に支持する第1の支軸とダビットを回転可能に支持する第2の支軸を円滑に同期回転させることができる。しかも、連結軸は甲板に固定した金物とは接触しないので、錆の発生も異音の発生も生じない。
b)連結軸の両端に自在継手があると、連結軸に撓みを発生させるモーメントはゼロになるので、上部踊り場とダビットの揺動を円滑にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る舷梯装置Aの格納状態を示す側面図である。
【
図2】
図1の舷梯装置10の展開状態を示す平面図である。
【
図3】
図1の舷梯装置10の使用状態を示す側面図である。
【
図5】従来の舷梯装置の格納状態を示す側面図である。
【
図6】従来の舷梯装置の展開状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1~
図3に基づき、本発明の一実施形態に係る舷梯設備Aを説明する。
舷梯設備Aを構成する舷梯装置10は船体側踊り場1と舷梯2とからなる。この舷梯装置10は
図1に示すように、甲板110上に垂直な姿勢にされた格納状態と、
図2に示す船側に沿った位置で水平に展開された使用状態との間で回転する。すなわち、垂直面内で約90°回転する。
【0012】
また、
図3に示すように、使用状態において舷梯2は斜めに傾斜して、舷梯2の先端は岸壁等に接触させられる。この使用状態で人の乗下船に使用される。人の乗下船が終われば、
図2に示すように、舷梯2は水平な姿勢に戻され、さらに
図1に示すように垂直な姿勢に戻されて格納状態となる。
【0013】
船体側踊り場1は、その基端部に支軸3(特許請求の範囲にいう第1の支軸)を備えており、支軸3は甲板110上のブラケットで支持され、垂直面内で回転可能となっている。
図1は船体側踊り場1の垂直姿勢を示し、
図2は水平姿勢を示している。
【0014】
舷梯2は、長尺の舷梯本体2aと、その一端の上部踊り場2bと、その他端の下部踊り場2cとからなる。
上部踊り場2bは船体側踊り場1に対して連結されている。また、上部踊り場2bと舷梯本体2aとの間は垂直面内で回転可能に連結されている。
下部踊り場2cは舷梯本体2aに対し、垂直面内で回転可能に連結されている。
【0015】
ダビット4の基部は支軸5で垂直面内で回転可能に支持されている。支軸5(特許請求の範囲にいう第2の支軸)は適宜のブラケットで甲板110上に取付けられている。
【0016】
船体側踊り場1の支軸3とダビット4の支軸5との間は連結軸6で連結されている。ただし、直接連結するのではなく自在継手20,30を介して連結されている。
船体側踊り場1の支軸3と連結軸6の一端は第1の自在継手20を介して連結され、ダビット4の支軸5と連結軸6の他端とは第2の自在継手30を介して連結されている。
【0017】
自在継手20,30は、とくに制限なくあらゆる種類の自在継手を用いることができる。
図4には2個の継手21,21を十字軸22で結合した十字形の自在継手を示しているが、これに限られず、種々の構造、機能の継手を用いることができる。
また、自在継手には等速形と不等速形とがあるが、本発明においては両方とも使用可能である。
【0018】
図3に示すように、舷梯2の上げ下げはウインチ装置で行われる。ウインチ装置の構成は任意であり、公知のものをとくに制限なく利用できる。
図2には甲板上に設置したウインチ41を示しているが、この代わりにダビット4に付設したウインチを用いてもよい。ウインチ41から巻き出されるワイヤロープ44は適宜の場所に取付けたシーブ43を介して、舷梯本体2aの適所に連結される。ワイヤロープをガイドするシーブは、甲板上に立てたピラーに取付けたもの、
図3に示すような門形架構43に取付けたもの、上部甲板の張出し部の裏面に取付けたものなどを、とくに制限なく用いることができる。
【0019】
図1に示すように、舷梯2を垂直に立てている格納状態から使用状態にするには、
図2に示すウインチ41からワイヤロープ44(
図3に図示)を巻き出す。すると、ダビット4が垂直姿勢(
図1の状態)から外方下向きに回転していって、
図2に示すように舷梯2が水平状態となる。さらに、ウインチ41がワイヤロープ44を巻き出すと、
図3に示すように、舷梯2は斜め下向きに延びた状態となる。この
図3の状態は、舷梯2を岸壁等に接地しようとしている状態である。
使用状態から格納状態にするには、ウインチ41を用いてワイヤロープ44を巻き上げると舷梯2を水平にすることができ、さらにワイヤロープ44を巻き取ると
図1に示すように舷梯2を垂直姿勢にすることができる。この垂直姿勢において、舷梯2を数本の格納用支柱111に預けて格納することができる。
【0020】
舷梯2を使用状態にしたり格納状態にする際に、船体側踊り場1および舷梯2を垂直姿勢と水平姿勢との間で90°回転させることになる。この場合、支軸3と支軸5は連結軸6で連結されているので、同期して回転する。このため、船体側踊り場1とダビット4の回転も同期するので、船体側踊り場1と舷梯2とはやはり同期して回転し、ねじれ等が生じないので、舷梯の格納・展開を円滑に行える。
【0021】
そして、連結軸6の両端に自在継手20,30があると、連絡軸6に撓みを発生させるモーメントはゼロになる。このため、従来技術で必要としていた軸支持金具107は不要となる。そして、連結軸6は自在継手20,30を介して支軸3と支軸5に回転トルクを伝えるので、船体側踊り場1とダビット4の回転を円滑にすることができる。
しかも、連結軸6は甲板に固定した軸支持金具107等の金物とは接触しないので、錆の発生も異音の発生も生じない。
【0022】
つぎに、本発明の他の実施形態を説明する。
本発明において、自在継手は、第1の支軸3と連結軸6の一端との間、または第2の支軸5と連結軸6の他端との間のいずれか1カ所に介装されたものであってもよい。
この実施形態では、自在継手の数が連絡軸6の一端に介装されたもの1個に減るので構造が簡易になり、それでも連結軸6の撓みを発生させるモーメントはある程度減少できるので、船体側踊り場1とダビット4の同期回転を円滑にできる。
【0023】
本発明において、自在継手は、連結軸6を2分して、その間に介装されたものであってもよい。
この実施形態では、自在継手の数が連結軸6の途中に介装されたもの1個に減るので構造が簡易になり、それでも連結軸6の撓みを発生させるモーメントはある程度減少できるので、船体側踊り場1とダビット4の同期回転を円滑にできる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の舷梯設備は、およそ船舶であるなら、あらゆる種類の船舶に応用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 船体側踊り場
2 舷梯
3 支軸
4 ダビット
5 支軸
6 連結軸
10 舷梯装置
20 自在継手
30 自在継手
【要約】
【課題】発錆や異音発生等の不具合が生じない舷梯設備を提供する。
【解決手段】船舶の甲板に対して垂直に立った格納姿勢と水平に倒した使用姿勢との間で揺動可能に取付けられた船体側踊り場1と、船体側踊り場1に連結された舷梯2とからなる舷梯装置10と、舷梯2を、船舶の甲板に対して垂直に立った格納姿勢と水平に倒した展開準備位置の間で回転可能に保持するダビット4と、船体側踊り場1を甲板に対し回転可能に取付ける第1の支軸3、およびダビット4を甲板に対し回転可能に取付ける第2の支軸5からなる。支軸3と連結軸6の一端との間に自在継手20が介装され、支軸5と連結軸6の他端との間に自在継手30が介装されている。自在継手20,30が連結軸6の撓みを吸収するので、船体側踊り場1の支軸3とダビット4の支軸5を円滑に同期回転させることができ、連結軸6は甲板に固定した金物とは接触しないので、錆の発生も異音の発生も生じない。
【選択図】
図1