(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】生分解性樹脂粒子、該粒子を含有する生分解性樹脂粒子群、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20221220BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20221220BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08J3/16 CEZ
C08L101/16
A61Q15/00
(21)【出願番号】P 2021507268
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010757
(87)【国際公開番号】W WO2020189485
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2019048606
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019179492
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】本村 隆司
(72)【発明者】
【氏名】西海 健悟
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/156994(WO,A1)
【文献】特開2009-144012(JP,A)
【文献】特開2009-120806(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056908(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/101240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28
99/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08L101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子表面に凹部、および粒子内に中空部を有し、
前記凹部の長径が、樹脂粒子長径に対して5~50%の長さを有し、
前記中空部の長径が、樹脂粒子長径に対して10~50%の長さを有する生分解性樹脂粒子を含む、生分解性樹脂粒子群であって、
生分解性樹脂粒子群に含まれる生分解性樹脂粒子を構成する生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ナイロン4からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であり、
生分解性樹脂粒子群の体積平均粒子径の±50%の範囲内にある長径を有する10個の粒子における凹部の数の平均が0.5~10個であり、
生分解性樹脂粒子群の体積平均粒子径が1~300μmである、
生分解性樹脂粒子群。
【請求項2】
前記凹部の最大深さが、樹脂粒子長径に対して2~50%の長さを有する、請求項1に記載の生分解性樹脂粒子群。
【請求項3】
生分解性樹脂粒子群の中空部の数の平均が0.5~4個であり、前記凹部が樹脂粒子長径に対して5~50%の長径を有し且つ2~50%の最大深さを有する凹部であり、前記中空部が樹脂粒子長径に対して10~50%の長径を有する中空部である、請求項1
又は2に記載の生分解性樹脂粒子群。
【請求項4】
加熱減量が3%以下である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の生分解性樹脂粒子群。
【請求項5】
安息角φ(度)と、体積平均粒子径D(μm)とが下記式を満たす、請求項1~
4のいずれか1項に記載の生分解性樹脂粒子群。
-0.97D+60≦φ≦-0.97D+90
【請求項6】
750℃で30分加熱後の灰分が0.01~3%である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の生分解性樹脂粒子群。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の生分解性樹脂粒子群に含まれる生分解性樹脂粒子であって、
粒子表面に凹部、および粒子内に中空部を有し、
前記凹部の長径が、樹脂粒子長径に対して5~50%の長さを有し、
前記中空部の長径が、樹脂粒子長径に対して10~50%の長さを有し、
体積平均粒子径の±50%の範囲内にある長径を有する10個の粒子における凹部の数の平均が0.5~10個であり、
体積平均粒子径が1~300μmである、
生分解性樹脂粒子。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の生分解性樹脂粒子群又は請求項
7に記載の生分解性樹脂粒子を含む、外用剤。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の生分解性樹脂粒子群又は請求項
7に記載の生分解性樹脂粒子を含む、コーティング材料。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の生分解性樹脂粒子群又は請求項
7に記載の生分解性樹脂粒子を含む、樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の生分解性樹脂粒子群又は請求項
7に記載の生分解性樹脂粒子を含む、ブロッキング防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂粒子、該粒子を含有する生分解性樹脂粒子群、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子は、大きな比表面積及び粒子の構造を利用して、各種材料の改質及び改良に用いられている。主要用途としては、ファンデーション、制汗剤、スクラブ剤等の化粧品用の配合剤、塗料用艶消し剤、レオロジー改質剤、ブロッキング防止剤、滑り性付与剤、光拡散剤、医療用診断検査剤等の各種剤、自動車材料、建築材料等の成形品への添加剤等の用途が挙げられる。樹脂粒子としては、例えば、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリエチレン等が挙げられる。
【0003】
一方、近年の環境問題への関心が高まる中、環境負荷を低減するため、樹脂を使用するあらゆる分野で、非石油原料由来の材料や生分解性の材料を使用することが求められている。例えば、化粧品、塗料等の樹脂粒子が使用される分野でもそのように求められている。
【0004】
これまでの生分解性樹脂粒子の製造方法としては、凍結粉砕に代表される粉砕法(特許文献1)、高温下の溶媒に溶解し、冷却して析出させたり、溶媒に溶解した後に貧溶媒を加えることにより析出させたりする溶媒溶解析出法(特許文献2、3)、樹脂を溶解しない溶媒と多量の乳化剤を用いて高温下で樹脂を乳化する方法(特許文献4)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-2291号公報
【文献】WO2012/105140号公報
【文献】特開2005-2302号公報
【文献】WO2017/195642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、化粧料等の外用剤に用いる場合において、特許文献1の樹脂粒子は球形状ではない、粒子径が細かくならない等の課題があり、肌上での伸びの点で更なる向上が求められる。また特許文献2~4で得られる樹脂粒子は、比較的球形状の粒子が得られているが、肌への付着性、肌上での軽やかな伸びの点で十分ではなく、更なる向上が求められる。
【0007】
本発明の課題は、肌への付着性と肌上での軽やかな伸びに優れた生分解性樹脂粒子、該粒子を含有する生分解性樹脂粒子群、及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の[1]~[6]に関する。
[1]粒子表面に凹部、および粒子内に中空部を有する、生分解性樹脂粒子。
[2][1]に記載の生分解性樹脂粒子を含む、生分解性樹脂粒子群。
[3][1]に記載の生分解性樹脂粒子又は[2]に記載の生分解性樹脂粒子群を含む、外用剤。
[4][1]に記載の生分解性樹脂粒子又は[2]に記載の生分解性樹脂粒子群を含む、コーティング材料。
[5][1]に記載の生分解性樹脂粒子又は[2]に記載の生分解性樹脂粒子群を含む、樹脂組成物。
[6][1]に記載の生分解性樹脂粒子又は[2]に記載の生分解性樹脂粒子群を含む、ブロッキング防止剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、肌への付着性と肌上での軽やかな伸びに優れた生分解性樹脂粒子、該粒子を含有する生分解性樹脂粒子群、及びその用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の生分解性樹脂粒子のTEM写真である。
【
図2】実施例4の生分解性樹脂粒子のTEM写真である。
【
図3】実施例7の生分解性樹脂粒子のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(生分解性樹脂粒子)
本発明の生分解性樹脂粒子(以下、「本発明の樹脂粒子」とも称する)は、粒子表面に少なくとも1つの凹部を有する。凹部を有することで、化粧料等の外用剤に配合した際に、肌への付着性に優れるものとなる。凹部の形状は特に限定されず、球状、楕円状、不定形状等であっても良い。
【0012】
凹部における開口部の長径(凹部径)は、樹脂粒子長径に対して、肌への付着性の観点から、好ましくは5%以上の長さであり、より好ましくは10%以上であり、また、肌上での伸びの観点から、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。凹部径および樹脂粒子長径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。
【0013】
凹部の最大深さは、樹脂粒子長径に対して、肌への付着性の観点から、好ましくは2%以上の長さであり、より好ましくは3%以上であり、また、肌上での軽やかな伸びの観点から、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。凹部最大深さは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。
【0014】
凹部の数は、粒子1個に対して少なくとも1個以上であり、肌上での軽やかな伸びの観点から、樹脂粒子長径に対して5~50%の凹部長径を有する凹部が、好ましくは1~10個であり、より好ましくは1~5個である。更に、樹脂粒子長径に対する凹部径が10~40%且つ凹部の最大深さが3~40%である凹部の数が、好ましくは1~10個であり、より好ましくは1~5個であり、さらに好ましくは1~3個である。
【0015】
本発明の樹脂粒子は、粒子内に少なくとも1つの中空部を有する。粒子表面の凹部と粒子内の中空部とが互いに独立して存在することで、化粧料等の外用剤に配合した際に、肌上での軽やかな伸びを与えることができると推定される。中空部の形状は特に限定されず、球状、楕円状、針状、不定形状等であっても良い。
【0016】
中空部の長径は、樹脂粒子長径に対して、肌上での軽やかな伸びの観点から、好ましくは10%以上であり、また、同様の観点から、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。中空部の長径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。
【0017】
中空部の数は、粒子1個に対して少なくとも1個以上であり、肌上での軽やかな伸びの観点から、樹脂粒子長径に対する中空部の長径が10~50%である中空部の数が、好ましくは1~4個であり、より好ましくは1~3個である。
【0018】
本発明の樹脂粒子としては、生分解性樹脂粒子であれば特に限定されないが、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。生分解性を有するポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート等が挙げられる。生分解性を有するポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン4等が挙げられる。これらの樹脂は、1種のみで使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0019】
ポリヒドロキシアルカノエートの中でも好ましいのは、一般式(1)[-CH(R)-CH2CO-O-](ただし、式中Rは-CnH2n+1で表されるアルキル基であり、nは1~15の整数)で示される繰り返し単位からなるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)重合体又は共重合体である。より具体的には、3-ヒドロキシブチレートと、3-ヒドロキシプロピオネート、3-ヒドロキシバレレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、3-ヒドロキシヘプタノエート、3-ヒドロキシオクタノエート、3-ヒドロキシナノエート、3-ヒドロキシデカノエート、3-ヒドロキシテトラデカノエート、3-ヒドロキシヘキサデカノエート、3-ヒドロキシオクタデカノエート、4-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシバレレート、5-ヒドロキシバレレート、6-ヒドロキシヘキサノエートからなる群から選ばれる、少なくとも1種のモノマーとのコポリマーを使用できる。具体的な(3-ヒドロキシアルカノエート)重合体または共重合体としては、前記3-ヒドロキシアルカノエートのホモポリマー、又はnの異なる2種以上の3-ヒドロキシアルカノエートからなる共重合体、前記ホモポリマー及び前記共重合体の群より選ばれる2種以上をブレンドした混合体が挙げられる。なかでも、n=1の3-ヒドロキシブチレート繰り返し単位、n=2の3-ヒドロキシバレレート繰り返し単位、n=3の3-ヒドロキシヘキサノエート繰り返し単位、n=5の3-ヒドロキシオクタノエート繰り返し単位、n=15の3-ヒドロキシオクタデカノエート繰り返し単位からなる群より構成されるホモポリマー、共重合体及び混合物が好ましく、3-ヒドロキシブチレート繰り返し単位と、3-ヒドロキシバレレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、及び3-ヒドロキシオクタノエートからなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位とからなる共重合体がより好ましい。
【0020】
(生分解性樹脂粒子群)
本発明の生分解性樹脂粒子群(以下、「本発明の樹脂粒子群」とも称する)は、粒子表面に凹部、および中空部を有する生分解性樹脂粒子を含む。本発明の樹脂粒子群における本発明の生分解性樹脂粒子の割合は、特に限定するものではないが、体積平均粒子径の±50%の長径の範囲内にある任意の10個の粒子のTEM写真を撮影した場合、10個中6個以上の粒子に凹部および中空部が存在することが好ましい。また、肌状での軽やかな伸びの観点から、体積平均粒子径の±50%の長径の範囲内にある任意の10個の粒子のTEM写真を撮影した場合における凹部の数の平均は、好ましくは0.5~10個であり、より好ましくは1~5個であり、更に好ましくは1~3個であり、中空部の数の平均は、好ましくは0.5~4個であり、より好ましくは1~3個である。ここで、凹部は樹脂粒子長径に対して5~50%の長径を有し且つ2~50%の最大深さを有する凹部であり、中空部は樹脂粒子長径に対して10~50%の長径を有する中空部である。
【0021】
本発明の樹脂粒子群の体積平均粒子径は、1~300μmが好ましい。化粧料(ファンデーション、制汗剤)等の外用剤に配合した際の触感や、肌状での軽やかな伸びの観点から、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上であり、また、同様の観点から、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、更に好ましくは30μm以下である。一方、スクラブ洗顔料等に配合した際は、汚れ落とし効果の観点から、好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上であり、また、同様の観点から、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは250μm以下である。体積平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
本発明の樹脂粒子群は、安息角をφ(度)、体積平均粒子径をD(μm)とした場合、肌への付着性及び肌上での軽やかな伸びの観点から、下記式を満たすことが好ましい。安息角は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
-0.97D+60≦φ≦-0.97D+90
【0023】
本発明の樹脂粒子群は、750℃で30分加熱後の灰分が、肌への付着性の観点から、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下であり、さらに好ましくは2.0%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下である。また、化粧料等の外用剤に配合した際の触感や、肌状での軽やかな伸びの観点から、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。この範囲内とすることで、粒子のしっとりした感触を損なわずに、肌上での軽やかな伸びを向上させることができる。灰分は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0024】
本発明の樹脂粒子群の円形度は、肌状での軽やかな伸びの観点から、好ましくは0.90以上であり、より好ましくは0.93以上であり、さらに好ましくは0.95以上である。上限値としては、例えば、1.00以下とすることができる。円形度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0025】
本発明の樹脂粒子群は、質量平均分子量(Mw)が、耐薬品性の観点から、好ましくは1万以上であり、より好ましくは3万以上であり、さらに好ましくは5万以上であり、また、環境排出時の良好な生分解性の観点から、好ましくは100万以下であり、より好ましくは70万以下であり、さらに好ましくは50万以下である。質量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0026】
本発明の樹脂粒子群のかさ比重は、肌上への付着性の観点から、好ましくは0.15以上であり、より好ましくは0.20以上であり、さらに好ましくは0.25以上であり、また、肌上での軽やかな伸びの観点から、好ましくは0.60以下であり、より好ましくは0.50以下である。かさ比重は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0027】
本発明の樹脂粒子群の加熱減量は、粒子の触感及び肌上での伸びの観点から、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは0.2%以上であり、また、同様の観点から、好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは2.5%以下であり、さらに好ましくは2.0%以下である。この範囲内とすることで、粒子のしっとりした感触を損なわずに、肌上での軽やかな伸びを向上させることができる。加熱減量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0028】
本発明の樹脂粒子群は、安全性の観点から、ハロゲン系溶剤を含有しないことが好ましい。樹脂粒子製造時や洗浄時にハロゲン系溶剤を用いないことで、ハロゲン系溶剤を含有しない樹脂粒子群を得ることができる。ハロゲン系溶剤としては、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、塩化メチレン、トランス-1,2-ジクロロエタン、シス-1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、クロロホルム、トリクロロエチレン等が挙げられる。ハロゲン系溶剤の非含有確認法については、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0029】
本発明の樹脂粒子群は、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(アルコキシ基の炭素数は1-5個)のうち、少なくとも1つを更に微量含んでも良い。両親媒性を示す上記物質を含むことで親水性物質、親油性物質との馴染みが向上するし、肌への付着性も向上する。上記物質の含有量は、肌上での軽やかな伸びを向上させる観点や、粉体として取り扱うためのハンドリング性の観点から、0.001~2質量%が好ましく、0.005~1質量%がより好ましく、0.005~0.5質量%が更に好ましい。上記物質の含有量は、後述の実施例に記載の方法(3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール量の測定)と同様の方法で測定される。
【0030】
本発明の樹脂粒子の製造方法は、生分解性樹脂を、溶媒、水、分散安定剤の存在下、100℃以上の温度で乳化・分散し、その後、冷却することで生分解性樹脂を粒子として得ることができる。なお、本発明の樹脂粒子群についても同様の方法で得ることができる。
【0031】
溶媒は、水混和性の3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(以下、「特定溶媒」とも称する)を用いることができる。ここで、特定溶媒中のアルコキシ基の炭素数は、溶解性の観点から、1~5であることが好ましい。このようなアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基が挙げられる。プロポキシ基、ブトキシ基及びペンチルオキシ基には、直鎖状だけではなく、取り得る構造異性体も含まれる。好ましいアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。特定溶媒としては、クラレ社製からソルフィットの商品名で市販されている溶媒も使用できる。また、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノールは、例えば、国際公開WO2013/146370号に記載の方法により製造できる。特定溶媒は、生分解性を有し、かつ低皮膚刺激性であるため、通常生分解性樹脂の微粒子化法でよく用いられる皮膚刺激性のある有機溶媒(例えば、キシレン、トルエン、n-メチルピロリドン、クロロホルム、塩化メチレン、ジオキソラン、THF等)を用いることなく、化粧品のような用途で用いる際の残留による悪影響を抑制できる。
【0032】
このような観点から、特定溶媒が溶媒中に占める割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。特定溶媒以外の使用可能溶媒としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤などが挙げられる。
【0033】
溶媒の使用量は、生分解性樹脂100質量部に対して、充分に撹拌混合する観点から、好ましくは100質量部以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは1200質量部以下であり、より好ましくは800質量部以下であり、さらに好ましくは400質量部以下である。
【0034】
分散安定剤としては、第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製;商品名 TCP-10U)等の難水溶性無機化合物等を用いることができる。上記の中でも、分散安定剤を容易に除去できるという点において、第三リン酸カルシウムが好ましい。一方水溶性高分子を用いることは、粒子内部や表面に残存しやすく除去しにくくなるので好ましくない。好ましくない水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類が挙げられる。
【0035】
分散安定剤の生分解性樹脂100質量部に対する添加量は、好ましくは10~90質量部であり、より好ましくは15~80質量部であり、さらに好ましくは18~70質量部である。
【0036】
また、上記の分散安定剤に加えて、アニオン性界面活性剤等の界面活性剤を併用することも可能である。
【0037】
界面活性剤の添加量としては、水100質量部に対して0.01~0.5質量部で使用することができる。
【0038】
水の使用量は、生分解性樹脂100質量部に対して、充分に撹拌混合する観点から、好ましくは100質量部以上であり、より好ましくは150質量部以上であり、さらに好ましくは200質量部以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは2200質量部以下であり、より好ましくは1000質量部以下であり、さらに好ましくは800質量部以下である。
【0039】
加熱撹拌は、微粒子化させる観点から、100℃以上の加熱温度下で行われる。上限値としては、例えば、180℃以下の温度で行うことができる。
【0040】
加熱攪拌時にエマルションを形成させるに十分な剪断力を得るためには、撹拌羽根による液相撹拌法、ホモジナイザーによる混合法、超音波照射法等の通常公知の方法で混合することができる。撹拌の速度及び時間は、生分解性樹脂が溶媒中に均一に分散する様に、適宜選択される。加熱撹拌は、通常、加圧下で行われる。
【0041】
生分解性樹脂を含む溶媒は、加熱撹拌後、冷却される。加熱撹拌時の温度から冷却温度までは緩やかに冷却することが好ましく、具体的には0.5~2.0℃/分の速度で冷却することが好ましい。また、冷却は、撹拌しつつ行うことが好ましい。撹拌速度は、加熱撹拌の撹拌速度と同様の範囲とすることができる。
【0042】
冷却後の溶媒中の生分解性樹脂粒子は、酸を加えて分散安定剤を分解し、ろ過、洗浄、脱水、乾燥を経て、溶媒から取り出される。分散安定剤を分解する際は、加水分解抑制及び肌上での伸びの観点から、強酸とならない様に必要モル数の1.05~1.50倍、より好ましくは1.05~1.20倍の酸を加え、40℃以下で攪拌し、24時間以内、より好ましくは12時間以内にろ過、洗浄することが好ましい。乾燥は、減圧乾燥法やスプレードライ法を用いることができる。
【0043】
乾燥後の生分解性樹脂粒子を分級することで本発明の生分解性樹脂粒子を得ることができる。分級方法としては、風力分級、スクリーン分級などが挙げられる。風力分級とは、空気の流れを利用して粒子を分級する方法をいう。スクリーン分級とは、スクリーン上に生分解性樹脂粒子を供給し、スクリーンを振動させることによって、スクリーン上の生分解性樹脂粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法をいう。
【0044】
分級は、生分解性樹脂粒子が空気中の水分を吸収しないように、除湿された空気の雰囲気下にて行われることが好ましく、具体的には、空気の相対湿度が30%以下の雰囲気下にて行われることが好ましく、空気の相対湿度が20%以下の雰囲気下にて行われることがより好ましい。除湿された空気雰囲気下で分級することで、生分解性樹脂粒子の水分上昇を抑制することができ、加水分解による樹脂劣化を抑制することができる。
【0045】
このようにして得られた生分解性樹脂粒子は、空気中の水分を吸収しないように、製造後は、湿気を透過しにくい包装材料で密封し包装物品として保存しておくことが好ましい。湿気を透過しにくい包装材料としては、水蒸気透過度が50g/m2・24時間以下である包装材料が好ましい。このような包装材料としては、例えば、厚みが50~150μmの低密度ポリエチレンから構成された袋、合成樹脂フィルムの一面に金属膜が蒸着された蒸着フィルムから構成された袋、合成樹脂フィルムの一面に金属フィルムが積層一体化されてなる積層フィルムから構成された袋などが挙げられる。包装材料の透湿度としては水蒸気透過度が50g/m2・24時間以下が好ましく、30g/m2・24時間以下がより好ましい。水蒸気透過度は、温度40℃、相対湿度90%の条件で水蒸気透過率透過率測定装置(米国、モコン(MOCON)社製、「パ-マトラン(登録商標)W3/31)」)を用いてJIS K7129(2000年版)に記載のB法(赤外センサー法)に基づいて測定した。又、2枚の試験片について各々測定を1回ずつ行い、2つの測定値の相加平均値を水蒸気透過率の値とする。湿気を透過しにくい包装材料で保存することで、経時保存中における生分解性樹脂粒子の水分上昇を抑制することができ、加水分解による樹脂劣化を抑制することができる。
【0046】
本発明の樹脂粒子は、例えば、化粧料、医薬部外品等の外用剤、塗料用艶消し剤、粉体塗料等のコーティング材料、レオロジー改質剤、ブロッキング防止剤、滑り性付与剤、光拡散剤、ファインセラミックス焼結成形用助剤、接着剤用充填剤、医療用診断検査剤や、自動車材料、建築材料等の樹脂組成物及びその成形品への添加で使用できる。中でも、化粧料、医薬部外品等の外用剤、塗料用艶消し剤、粉体塗料等のコーティング材料、飲食品等の包装材のブロッキング防止剤に配合されて好適に使用することができる。
【0047】
本発明の樹脂粒子群を含む外用剤として、化粧料に使用する場合の態様について、以下に例示する。
【0048】
化粧料における本発明の樹脂粒子群の含有量は、化粧料の種類に応じて適宜設定できるが、化粧料中、本発明の樹脂粒子群の効果を発揮する観点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、また、生産コスト等の観点から、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0049】
本発明の化粧料としては、特に限定されないが、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤、制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0050】
また、本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤または添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤または添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、粘土鉱物類、防腐・殺菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0051】
前記油脂及びロウ類の具体例としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0052】
前記炭化水素の具体例としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0053】
前記高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の炭素数11以上の脂肪酸が挙げられる。
【0054】
前記高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等の炭素数6以上のアルコールが挙げられる。
【0055】
前記ステロールの具体例としては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
【0056】
前記脂肪酸エステルの具体例としては、リノール酸エチル等のリノール酸エステル;ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル;オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル等のオレイン酸エステル;ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等のジメチルオクタン酸エステル;イソオクタン酸セチル(2-エチルヘキサン酸セチル)等のイソオクタン酸エステル;パルミチン酸デシル等のパルミチン酸エステル;トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0057】
前記金属石鹸の具体例としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0058】
前記保湿剤の具体例としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0059】
前記界面活性剤の具体例としては、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N-アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤;脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0060】
前記高分子化合物の具体例としては、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子(例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子等)、ポリスチレン粒子、シリコーン系粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の樹脂粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0061】
前記色材原料の具体例としては、酸化鉄(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0062】
なお、上記した高分子化合物の粉体原料や色材原料などの粉体原料は、予め表面処理を行ったものも使用することができる。表面処理の方法としては、公知の表面処理技術が利用でき、例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0063】
前記粘土鉱物類の具体例としては、体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分、例えば、タルク、マイカ、セリサイト、チタンセリサイト(酸化チタンで被覆されたセリサイト)、白雲母、バンダービルト社製のVEEGUM(登録商標)等が挙げられる。
【0064】
前記香料の具体例としては、アニスアルデヒド、ベンジルアセテート、ゲラニオール等が挙げられる。
【0065】
前記防腐・殺菌剤の具体例としては、メチルパラペン、エチルパラペン、プロピルパラペン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0066】
前記酸化防止剤の具体例としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。
【0067】
前記紫外線吸収剤の具体例としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸系、パラアミノ安息香酸系、アントラニリック酸系、サルチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0068】
前記特殊配合添加物の具体例としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルムニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂材剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸-L-アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0069】
本発明の樹脂粒子群を含むコーティング材料の態様について、以下に例示する。コーティング材料は、本発明の樹脂粒子群の他、必要に応じて、バインダー樹脂、紫外線硬化樹脂、溶剤等が含まれる。バインダー樹脂としては、有機溶剤又は水に可溶な樹脂もしくは水中に分散できるエマルション型の樹脂を使用できる。
【0070】
本態様において、バインダー樹脂としては、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、生分解性樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0071】
本態様において、紫外線硬化樹脂としては、多価アルコール多官能(メタ)アクリレート等のような多官能(メタ)アクリレート樹脂;ジイソシアネート、多価アルコール、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等から合成されるような多官能ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。このうち、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線硬化性樹脂に光重合開始剤を加えてバインダー樹脂とすることができる。光重合開始剤は、特に限定されない。
【0072】
本態様において、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001-139663号公報等に記載)、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α-アシルオキシムエステル等が挙げられる。
【0073】
これらバインダー樹脂又は紫外線硬化樹脂は、塗装される基材への塗料の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0074】
本態様において上記各成分の含有量は、形成される塗膜の膜厚、樹脂粒子群の平均粒子径及び塗装方法によっても異なる。本発明の樹脂粒子群の添加量は、バインダー樹脂(エマルジョン型の水性樹脂を使用する場合は固形分)と本発明の樹脂粒子群との合計含有量を100質量%とした場合において、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは3~45質量%であり、更に好ましくは5~40質量%である。
【0075】
本態様において、溶剤としては、特に限定されないが、バインダー樹脂又は紫外線硬化樹脂を溶解又は分散できる溶剤を使用することが好ましい。例えば、油系塗料であれば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水系塗料であれば、水、アルコール類等が使用できる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。コーティング材料中の溶剤含有量は、塗料組成物全量に対し、通常20~60質量%程度である。
【0076】
本態様において、コーティング材料には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0077】
本態様において、コーティング材料を使用した塗膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の方法、及び薄層としてフィルム等基材にコーティングするにはコーティングリバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法が挙げられる。塗料組成物は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。また、基材等の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、架塗膜を形成することができる。なお、コーティング材料を使用した塗膜は各種基材にコーティングして使用され、金属、木材、ガラス、プラスチックス等特に限定されない。また、PET、PC、アクリル等の透明基材にコーティングして用いることもできる。
【0078】
本発明の樹脂粒子群を含むブロッキング防止剤の態様について、以下に例示する。本発明の生分解性樹脂粒子は、樹脂フィルムを巻き取ったときなどに、互いに接した樹脂フィルム表面同士が密着して剥がれなくなること(ブロッキング)を防止するために、樹脂フィルムの表面に凹凸を付与するブロッキング防止剤として使用できる。本態様において、ブロッキング防止剤は、本発明の樹脂粒子群の他、必要に応じて、公知の酸化防止剤、流動性調整剤、光安定剤、着色顔料等が含まれていてもよい。
【0079】
本態様において、ブロッキング防止剤における本発明の樹脂粒子群の含有量は、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%であり、更に好ましくは90~100質量%である。
【0080】
本態様において、ブロッキング防止剤を使用できる樹脂フィルムとしては、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、およびトリアセチルセルロース樹脂等の樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0081】
樹脂フィルムにおける本発明の樹脂粒子群の含有量は、形成されるフィルムの厚み、樹脂粒子群の平均粒子径及び成形方法によっても異なる。本発明の樹脂粒子群の含有量は、樹脂フィルム中、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%であり、更に好ましくは0.01~3質量%であり、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0082】
本発明の樹脂粒子群を含む樹脂組成物の態様について、以下に例示する。本態様において、樹脂組成物は、本発明の樹脂粒子群及び基材樹脂が含まれる。基材樹脂としては、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルサルファイド、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA樹脂)、ポリエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0083】
本態様において、樹脂組成物における本発明の樹脂粒子群の含有量は、形成される成形体の厚み、樹脂粒子群の平均粒子径及び成形方法によっても異なる。本発明の樹脂粒子群の含有量は、基材樹脂と本発明の樹脂粒子群との合計含有量を100質量%とした場合において、好ましくは0.1~70質量%であり、より好ましくは0.5~50質量%であり、更に好ましくは1~30質量%である。
【0084】
本態様において、樹脂組成物には、必要に応じて、公知の添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維、難燃剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、体質顔料、着色顔料、金属顔料、染料などを挙げることができる。
【0085】
本態様において、樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、樹脂粒子群と基材樹脂とを機械式粉砕混合方法等のような従来公知の方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて樹脂粒子群と基材樹脂とを混合し撹拌することにより、樹脂組成物を製造できる。
【0086】
本態様において、樹脂組成物を使用した成形体の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、本発明の樹脂粒子群と基材樹脂とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出、射出、ブロー等で成形することにより、自動車材料、建築材料、包装材料等に適した任意の形状の成形体を得ることができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。特記しない限り、例中の部は質量部であり、例中の%は質量%である。
【0088】
<TEM撮影>
エポキシ樹脂に生分解性樹脂粒子を埋設(60℃・24時間)し、ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製「ライカ EM UC7」)を用いて超薄切片(厚み70nm)を作製する。次いで、超薄切片を透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「H-7600」、AMT社製 CCDカメラシステム「ER-B」)にて、加速電圧20kV、倍率500~20000倍で写真撮影を行う。超薄切片作製時の染色剤は四酸化ルテニウムを用いる。
【0089】
<体積平均粒子径の測定>
生分解性樹脂粒子群の体積平均粒子径は、コールターMultisizerTM 3(ベックマン・コールター株式会社製)により測定する。測定は、ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを測定する粒子の大きさによって、適宜選択した上で、実施する。測定用試料としては、生分解性樹脂粒子群0.1gを0.1質量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、生分解性樹脂粒子を10万個測定する。生分解性樹脂粒子群の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0090】
<安息角の測定>
生分解性樹脂粒子群を、水平面上に立てた直径80mm、高さ70mmの円筒状の枠体に緩めに入れる。次に、持ち上げた時にできる円錐状の樹脂粒子の山について、山を正面から見た時の、山の二つの稜線のそれぞれが水平面に対してなす角度を分度器を用いて測定し、その角度の平均値を平均角度とする。これを5回繰り返して行って得られた平均角度の相加平均値を安息角とする。
【0091】
<付着率の測定>
人工皮膚(ビューラックス社製バイオスキンプレート、195mm×130mm)の質量W1を0.1mgの位まで測定する。次に、人工皮膚上に生分解性樹脂粒子群0.2gをのせ、セルスプレッダーを用いて均一に塗布し、粒子群を塗布した人工皮膚の質量W2を測定する。塗布後、人工皮膚に対して10cmの位置から0.05~0.1MPaの圧縮空気を吹きつけ、人工皮膚の質量W3を測定し、下記式から付着率を求める。
付着率(%)=100×(W3-W1)/(W2-W1)
【0092】
<円形度の測定>
フロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA(登録商標)-3000S」、シスメックス社製)を用いて測定する。
具体的な測定方法としては、0.25%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液20mlに、測定対象の生分解性樹脂粒子群0.2gを加え、分散機としてBRANSON社製の超音波分散機「BRANSON SONIFIER 450」(出力400W、周波数20kHz)を用いて超音波を5分間照射して、樹脂粒子群を界面活性剤水溶液中に分散させ、測定用の分散液を調製する。測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用い、上記フロー式粒子像分析装置に使用するシース液としては、パーティクルシース(商品名「PSE-900A」、シスメックス株式会社製)を使用する。上記手順に従い調製した測定用の分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、下記測定条件にて測定する。測定にあたっては、測定開始前に標準ポリマー粒子の懸濁液(例えば、ThermoFisher Scientific社製の「5200A」(標準ポリスチレン粒子をイオン交換水で希釈したもの))を用いて上記フロー式粒子像分析装置の自動焦点調整を行う。なお、円形度は、生分解性樹脂粒子を撮像した画像と同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、生分解性樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。
測定モード:HPFモード
粒子径の測定範囲:0.996~200μm
粒子の円形度の測定範囲:0.5~1.0
粒子の測定個数:1000個
【0093】
<質量平均分子量の測定>
生分解性樹脂粒子群の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した、ポリスチレン(PS)換算質量平均分子量を意味する。具体的には、試料15mgをクロロホルム6mLに溶解させ(浸漬時間:24.0±1.0hr(完全溶解))、(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過した上で次の測定条件にてクロマトグラフを用いて測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の質量平均分子量を求める。
使用装置=東ソー(株)製 「HLC-8320GPC EcoSEC」 ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)
(GPC測定条件)
カラム
サンプル側
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列
リファレンス側
抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列
カラム温度=40℃
移動相=クロロホルム
移動相流量
サンプル側ポンプ=1.0mL/min
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min
検出器=RI検出器 or UV検出器(254nm)
試料濃度=0.25wt%
注入量=50μL
測定時間=26min
サンプリングピッチ=500msec
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」および「STANDARD SH-75」で質量平均分子量が~5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)秤量後クロロホルム30mLに溶解し、Bも(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)秤量後クロロホルム30mLに溶解する。標準ポリスチレン検量線は、作成した各AおよびB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得られ、その検量線を用いて質量平均分子量を算出する。
【0094】
<灰分の測定>
生分解性樹脂粒子群の灰分の測定は、以下の条件で行う。生分解性樹脂粒子群を測定試料として採取し、測定試料の質量(灰化前測定試料の質量)W1を0.1mgの位まで測定する。次いで、30ml容量の磁性ルツボ内に測定試料0.5~1.0gを加え、マイクロウェーブ式マッフル炉(CEM社製Phoenx)750℃で30分間加熱し、測定試料を灰化させ、デシケーター内に放置して冷却する。その後、磁性ルツボ内の灰化後の測定試料(灰化後測定試料)の質量W2を測定し、得られたW1及びW2を下記の式に代入し、灰分を算出する。
灰分(質量%)=100×W2/W1
【0095】
<かさ比重の測定>
生分解性樹脂粒子群のかさ比重は、JISK5101-1991(見かけ密度、静置法)の通りに測定する。
【0096】
<加熱減量の測定>
生分解性樹脂粒子群の加熱減量は下記の方法で測定する。
恒量にした100mlのビーカー(W3)に生分解性樹脂粒子群9~10gを量り取り、試料とビーカーの質量(W1)を0.1mgの位まで読む。採取した試料入りのビーカーを150℃にて3時間に亘って放置した後、ビーカーを取り出し、シリカゲルを入れたデシケーター中で30分静置後の質量(W2)を測定する。測定は室温23℃~27℃の環境下で測定を実施し、下記式に基づいて生分解性樹脂粒子群の加熱減量を算出する。
加熱減量(%)=100×(W1-W2)/(W1-W3)
W1:加熱前の試料とビーカーの総質量(g)
W2:加熱後の試料とビーカーの総質量(g)
W3:ビーカーの質量(g)
【0097】
<ハロゲン系溶剤の非含有確認法>
生分解性樹脂粒子群中のハロゲン系溶剤非含有確認は下記方法で実施する。
生分解性樹脂粒子0.1gを10ml遠沈管に精秤し、メタノール5mlを加えて混合後、15分間超音波抽出を行う。その後、3,500rpmで30分間遠心分離を行い、上澄み液をジーエルサイエンス(株)製GLクロマトディスク非水系0.20μmでろ過することで試料を作成し、以下の装置及び条件で非含有を確認する。
(GC/MS測定条件)
測定装置=日本電子(株)製「JMS-Q1000GCMkII」質量分析計
アジレントテクノロジー(株)製「7890A」ガスクロマトグラフ装置
カラム=Phenomenex製「ZB-1」キャピラリーカラム(1.0μm×0.25mmΦ×60m )
(GCオーブン昇温条件)
初期温度=40℃(3min保持)
第1段階昇温速度=15℃/min(200℃まで)
第2段階昇温速度=25℃/min(250℃まで)
最終温度=250℃(14.33min保持)
測定時間=30min
キャリアーガス=He
He流量=1mL/min
注入口温度=250℃
インターフェイス温度=250℃
検出器電圧=-900V
スプリット比=1/10
イオン源温度=250℃
イオン化電流=300uA
イオン化エネルギー=70eV
検出方法=SCAN法(m/z=20~500)
得られた抽出試料のGC/MSクロマトグラム上において検出された全ピークをライブラリサーチ(NIST Standard Reference Database 1A、NIST/EPA/NIH MASS SPECTRAL LIBRARY (NIST 05) and NIST MASS SPECTRAL SEARCH PROGRAM Version 2.0d)し、ハロゲン系溶剤が検出されないことを確認する。
【0098】
<3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール量の測定>
生分解性樹脂粒子群中の3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール量は下記方法で測定する。生分解性樹脂粒子0.2gを10ml遠沈管に精秤し、メタノール5mlを加えて混合後、15分間超音波抽出を行う。その後、3,500rpmで30分間遠心分離を行う。その後、2mlメスフラスコに内部標準物質として1,000ppmトルエンd8(メタノール溶液)を20μl添加し、上記遠心分離後の上澄み液で定容する。定容した溶液をジーエルサイエンス(株)製GLクロマトディスク非水系0.20μmでろ過することで試料を作成し、以下の装置及び条件で測定する。
(GC/MS測定条件)
測定装置=日本電子(株)製「JMS-Q1000GCMkII」質量分析計
アジレントテクノロジー(株)製「7890A」ガスクロマトグラフ装置
カラム=Phenomenex製「ZB-1」キャピラリーカラム(1.0μm×0.25mmΦ×60m )
(GCオーブン昇温条件)
初期温度=40℃(3min保持)
第1段階昇温速度=15℃/min(200℃まで)
第2段階昇温速度=25℃/min(250℃まで)
最終温度=250℃(6.33min保持)
キャリアーガス=He
He流量=1mL/min
注入口温度=250℃
インターフェイス温度=250℃
検出器電圧=-900V
スプリット比=1/50
イオン源温度=250℃
イオン化電流=300uA
イオン化エネルギー=70eV
検出方法=SIM法(m/z=41,69,91,92,98,100)
得られた抽出試料のGC/MSクロマトグラムのうちの3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール由来ピーク面積を、内部標準物質であるトルエンd8のピーク面積に対する相対面積比として算出し、予め作成しておいた検量線より測定値を求め、生分解性樹脂粒子群中の3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール量とする。
【0099】
実施例1
撹拌翼及び温度計を取り付けた10Lオートクレーブに生分解性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱ケミカル社製BioPBS FZ71PM)を20部、溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)30部、イオン交換水20部、分散安定剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製TCP-10U)35部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.04部を投入し、加熱温度120℃、攪拌回転数400rpmで60分攪拌した。その後、撹拌回転数を維持したまま30℃まで2時間かけて冷却し、懸濁液を得た。得られた懸濁液に20%塩酸を13.6部(必要モル数の1.1倍)加え、10分間攪拌して第三リン酸カルシウムを分解した後、遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子群を分離し、得られた生分解性樹脂粒子群をイオン交換水を用いて洗浄した。塩酸を加えてから洗浄終了までは1時間以内で行った。次に、得られた生分解性樹脂粒子群をイオン交換水50部に分散させ、50℃で3時間加熱攪拌し、30℃まで冷却して生分解性樹脂粒子群を含む水分散体を得た。得られた水分散体を遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子群を分離し、イオン交換水を用いて洗浄した。次に、得られた生分解性樹脂粒子群を60℃、真空度0.05MPaの条件にて20時間に亘って乾燥した。目開き45μmのスクリーンを設置した分級機(東洋ハイテック社製 商品名「ハイボルターNR300」)を用いて相対湿度が20%の空気雰囲気下にて分級し、体積平均粒子径が19μmの生分解性樹脂粒子群を得た。
【0100】
実施例1で得られた生分解性樹脂粒子群から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色して透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像した。TEM写真(
図1)から樹脂粒子長径の23%径で、6%深さの凹部を1つ有していることを確認した。また、TEM写真(
図1)から、樹脂粒子長径に対して10~50%の径を有する中空部を2個確認した。更に、体積平均粒子径の±50%の長径の範囲内にある10個の粒子のTEM写真を撮影し、10個中9個の粒子に凹部および中空部が存在していることを確認した。また、これら10個の粒子の凹部の数の平均及び中空部の数の平均を表2に示す。また、得られた生分解性樹脂粒子群の安息角は63度であり、円形度は0.98、質量平均分子量は9.8万、750℃で30分加熱後の灰分は0.6%、かさ比重は0.39g/ml、加熱減量は0.5%、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールは0.01%であり、ハロゲン系溶剤は検出されなかった。
【0101】
実施例2
10%第三リン酸カルシウム水溶液を30部に、攪拌回転数を250rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径が26μm、質量平均分子量10.0万の生分解性樹脂粒子群を得た。
【0102】
実施例3
ポリブチレンサクシネートを10部に変更した以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径が15μm、質量平均分子量9.7万の生分解性樹脂粒子群を得た。
【0103】
実施例4
撹拌翼及び温度計を取り付けた10Lオートクレーブに生分解性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱ケミカル社製BioPBS FZ71PM)を5部、溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)30部、イオン交換水20部、分散安定剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製TCP-10U)35部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.04部を投入し、加熱温度120℃、攪拌回転数400rpmで60分攪拌した。その後、撹拌回転数を維持したまま30℃まで2時間かけて冷却し、懸濁液を得た。得られた懸濁液に20%塩酸を13.6部(必要モル数の1.1倍)加え、60分間攪拌して第三リン酸カルシウムを分解した後、遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子群を分離し、得られた生分解性樹脂粒子群をイオン交換水を用いて洗浄した。塩酸を加えてから洗浄終了までは2時間以内で行った。次に、得られた生分解性樹脂粒子群を60℃、真空度0.05MPaの条件にて20時間に亘って乾燥した。風力分級機(日清エンジニアリング社製 商品名「ターボクラシファイアTC-15」)を用いて相対湿度25%の雰囲気下で生分解性樹脂粒子の分級を行った。具体的には、生分解性樹脂粒子をローター回転数3500rpm、風量1.5m3/分の条件によって生じた旋回気流に生分解性樹脂粒子を乗せ、旋回気流によって粒子に与えられる遠心力と気流の旋回中心に向かう気流の流れとの相互作用によって粒子径の大きな粒子と小さな粒子にふるい分けることによって大きな粒子を除去し、体積平均粒子径が9μm、質量平均分子量9.5万の生分解性樹脂粒子群を得た。
【0104】
実施例4で得られた生分解性樹脂粒子群から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色して透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像した。TEM写真(
図2)から樹脂粒子長径の33%径で、7%深さの凹部を1つ有していることを確認した。また、TEM写真(
図2)から、樹脂粒子長径に対して10~50%の径を有する中空部を2個確認した。更に、体積平均粒子径の±50%の長径の範囲内にある10個の粒子のTEM写真を撮影し、10個中7個の粒子に凹部および中空部が存在していることを確認した。また、これら10個の粒子の凹部の数の平均及び中空部の数の平均を表2に示す。また、得られた生分解性樹脂粒子群の安息角は74度であり、円形度は0.97、質量平均分子量は9.5万、750℃で30分加熱後の灰分は0.9%、かさ比重は0.29g/ml、加熱減量は2.3%、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールは1.82%であり、ハロゲン系溶剤は検出されなかった。
【0105】
実施例5
ポリブチレンサクシネートをポリブチレンサクシネートアジペート(三菱ケミカル社製BioPBS FD92PM)に変更した以外は、実施例1と同様にして、体積平均粒子径が20μm、質量平均分子量は14.0万の生分解性樹脂粒子群を得た。
【0106】
実施例6
実施例1において、得られた懸濁液に加える20%塩酸を18.6部(必要モル数の1.5倍)、10時間攪拌して第三リン酸カルシウムを分解して12時間以内に洗浄したこと以外は実施例1と同様にして体積平均粒子径が19μm、質量平均分子量9.3万の生分解性樹脂粒子群を得た。
【0107】
実施例7
撹拌翼及び温度計を取り付けた10Lオートクレーブに生分解性樹脂として3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体(カネカ社製 カネカバイオポリマーアオニレックス 品番:X131A)を10部、溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)50部、イオン交換水5部、分散安定剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製TCP-10U)50部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.02部を投入し、加熱温度145℃、攪拌回転数400rpmで60分攪拌した。その後、撹拌回転数を維持したまま30℃まで2時間かけて冷却し、懸濁液を得た。得られた懸濁液に20%塩酸を17.5部(必要モル数の1.1倍)加え、10分間攪拌して第三リン酸カルシウムを分解した後、遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子群を分離し、得られた生分解性樹脂粒子群をイオン交換水を用いて洗浄した。塩酸を加えてから洗浄終了までは1時間以内で行った。次に、得られた生分解性樹脂粒子群をイオン交換水50部に分散させ、50℃で3時間加熱攪拌し、30℃まで冷却して生分解性樹脂粒子群を含む水分散体を得た。得られた水分散体を遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子群を分離し、イオン交換水を用いて洗浄した。次に、得られた生分解性樹脂粒子群を60℃、真空度0.05MPaの条件にて20時間に亘って乾燥した。目開き45μmのスクリーンを設置した分級機(東洋ハイテック社製 商品名「ハイボルターNR300」)を用いて相対湿度が20%の空気雰囲気下にて分級し、体積平均粒子径が19μmの生分解性樹脂粒子群を得た。
【0108】
実施例7で得られた生分解性樹脂粒子群から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色して透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像した。TEM写真(
図3)から樹脂粒子長径の28%径で、12%深さの凹部を1つ有していることを確認した。また、TEM写真(
図3)から、樹脂粒子長径に対して10~50%の径を有する中空部を1個確認した。更に、体積平均粒子径の±50%の長径の範囲内にある10個の粒子のTEM写真を撮影し、10個中7個の粒子に凹部および中空部が存在していることを確認した。また、これら10個の粒子の凹部の数の平均及び中空部の数の平均を表2に示す。また、得られた生分解性樹脂粒子群の安息角は51度であり、円形度は0.98、質量平均分子量は39.1万、750℃で30分加熱後の灰分は0.4%、かさ比重は0.42g/ml、加熱減量は0.5%、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールは0.012%であり、ハロゲン系溶剤は検出されなかった。
【0109】
比較例1
ウレタン樹脂粒子(東色ピグメント社製プラスティックパウダーD-400、体積平均粒子径14μm)を用いて各種測定を行った。
【0110】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート樹脂を粉砕して、体積平均粒子径36μmのポリエチレンテレフタレート粒子群を得たが、円形度は0.83であった。
【0111】
<粉体特性試験>
実施例1~7、比較例1、2の樹脂粒子を皮膚塗布時の感触(付着性、伸び)をパネラー10名によって評価した。尚、判定は感触について良いと答えた人の人数で以下の様に評価した。9~10名を◎、7~8名を○、4~6名を△、3名以下を×として評価した。結果を表2に示す。
【0112】
(パウダーファンデーションの作製)
実施例1~7、比較例1、2の樹脂粒子群15質量部、セリサイト21質量部、白雲母51質量部、赤色酸化鉄0.6質量部、黄色酸化鉄1質量部及び黒色酸化鉄0.1質量部をヘンシェルミキサーを用いて混合して混合物を作製した。一方、2-エチルヘキサン酸セチル10質量部にソルビタンセスキオレエート1質量部及び防腐剤0.2質量部を混合溶解させて溶解物を作製した。上記混合物と上記溶解物とを均一に混合させた後に香料0.1質量部を加えて均一に混合した後に粉砕して篩に通してファンデーション材料を作製した。このファンデーション材料を金皿に圧縮成形してパウダーファンデーションを作製した。10名のパネラーが、得られたパウダーファンデーションを手首に塗り伸ばす行為を行い、肌への付着性、肌上での軽やかな伸びについて次の基準で評価した。結果を表1に示す。尚、表中の数値は10名の試験結果の平均値である。
5:非常に良い
4:良い
3:やや良い
2:あまり良くない
1:良くない
【0113】
【0114】
表1に示すように、表面凹部と中空部を有する実施例1~7の樹脂粒子群を含むパウダーファンデーションでは、凹部も中空部も有さない比較例1、2の樹脂粒子群を含む場合と比較して、肌への付着性、肌上での軽やかな伸びのいずれにおいても優れるものであった。
【0115】
【0116】
(乳液の作製)
ステアリン酸2.5質量部、セチルアルコール1.5質量部、ワセリン5質量部、流動パラフィン10質量部、ポリエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル2質量部を加熱溶解して、実施例1の生分解性樹脂粒子群を10質量部添加・混合し、70℃に保温する(油相)。また、精製水64.5質量部にポリエチレングリコール1500を3質量部、トリエタノールアミン1質量部、香料0.3質量部、防腐剤0.2質量部を加え、加熱溶解し、70℃に保温する(水相)。水相に油相を加え、予備乳化を行い、その後ホモミキサーで均一に乳化し、乳化後かきまぜながら30℃まで冷却させることで化粧乳液を得た。
【0117】
(固形白粉化粧品の作製)
実施例1の生分解性樹脂粒子群40質量部、タルク40質量部、二酸化チタン5.5質量部及び顔料をニーダーでよくかきまぜた(粉末部)。トリエタノールアミン1質量部を50質量部の精製水に加え70℃に保温した(水相)。ステアリン酸1.5質量部、ラノリン5質量部、スクワラン5質量部、ソルビタンセスキオレイン酸エステル2質量部を混合し、加熱溶解して70℃に保温した(油相)。水相に油相を加え、ホモミキサーで均一に乳化し、これを粉末部に加え、ニーダーで練り合わせた後、水分を蒸発させ、粉砕機で粉砕した。更に粉砕物をよくかきまぜながら香料を均一に噴霧し、圧縮成型して固形白粉化粧品を得た。
【0118】
(ルースパウダーの作製)
実施例1の生分解性樹脂粒子群5質量部、タルク74.6質量部、合成金雲母12質量部、ラウリン酸亜鉛5質量部、ラウロイルリシン3質量部、酸化鉄0.4質量部をヘンシェルミキサーで均一混合してルースパウダーを得た。
【0119】
(リキッドファンデーションの作製)
実施例1の生分解性樹脂粒子群5質量部、二酸化チタン11.2質量部、赤色酸化鉄0.3質量部、黄色酸化鉄2.2質量部、黒色酸化鉄0.2質量部をニーダーで混合した(粉末部)。イソノナン酸イソトリデシル5質量部、プロピルパラベン0.25質量部、ジメチコン/PEG-10/15クロスポリマー3.5質量部、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2質量部、シクロペンタシロキサン20.1質量部、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル2質量部、ジステアルジモニウムヘクトライト2質量部を混合し、70℃に加熱溶解した(油相)。精製水40.41質量部にグリセリン5質量部、塩化ナトリウム0.5質量部、デヒドロ酢酸ナトリウム0.12質量部、メチルパラベン0.12質量部、フェノキシエタノール0.1質量部を加え70℃に加熱溶解した(水相)。油相に粉末部を加え、ホモミキサーで粉末を均一に分散させた後、ここに水相を加えてホモミキサーで均一に乳化・分散後、かきまぜながら冷却させてリキッドファンデーションを得た。
【0120】
(プレストパウダーの作製)
実施例1の樹脂粒子群8質量部、タルク60.8質量部、マイカ20質量部、二酸化チタン1.9質量部、赤色酸化鉄0.14質量部、黄色酸化鉄0.8質量部、黒色酸化鉄0.1質量部をヘンシェルミキサーを用いて混合して混合物を作製した(粉末部)。スクワラン4質量部、ラウリン酸亜鉛2質量部、ジイソステアリルマレート2質量部、ブチルパラベン0.1質量部、メチルパラベン0.1質量部、水酸化アルミニウム0.05質量部、トコフェロール0.01質量部を混合し、70℃に加熱溶解した(油相)。粉末部に油相を加えて均一に混合した後に粉砕して篩に通し、圧縮成形してプレストパウダーを作製した。
【0121】
(アイシャドウの作製)
実施例1の生分解性樹脂粒子群5質量部、タルク44.1質量部、マイカ20質量部、二酸化チタン被覆雲母10質量部、ラウロイルリシン8質量部、ラウリン酸亜鉛2質量部、赤色7号0.5質量部、黄色5号0.4質量部をニーダーで混合した(粉末部)。ミネラルオイル6質量部にジメチコン2質量部、セスキオレイン酸ソルビタン2質量部を加え加熱溶解した(油相)。粉末部に油相を加えてニーダーで混練した後、圧縮成型してアイシャドウを得た。
【0122】
(スキンクリームの作製)
グリセリン13質量部、モノステアリン酸デカグリセリル1質量部、モノラウリン酸デカグリセリル0.5質量部、モノステアリン酸グリセリル1質量部、ステアリルアルコール2質量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル3質量部、メドウフォーム油2質量部、ホホバ油2質量部、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)0.1質量部、ジメチコン3質量部、シクロペンタシロキサン3質量部を70℃に加熱溶解した(油相)。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー0.2質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1質量部、エデト酸二ナトリウム0.05質量部、ヒアルロン酸ナトリウム0.01質量部、フェノキシエタノール0.3質量部、1,3-ブチレングリコール4質量部、ピロリドンカルボン酸ナトリウム0.1質量部、精製水63.1質量部を70℃に加熱溶解した(水相)。油相に実施例1の生分解性樹脂粒子群1質量部を加え、ホモミキサーで分散させながら、水相を加えて均一に乳化させた。ここに10%水酸化ナトリウム水溶液0.5質量を加え、ディスパーで攪拌しながら室温まで冷却してスキンクリームを得た。
【0123】
(ボディローションの作製)
実施例1の生分解性樹脂粒子群3質量部、エタノール50質量部、グリチルリチン酸0.1質量部、香料0.5質量部及び精製水46.4質量部をミキサーで十分混合し、ボディローションを得た。
【0124】
(口紅の作製)
実施例1の生分解性樹脂粒子群10質量部、二酸化チタン3質量部、赤色202号0.5質量部、赤色206号2質量部を流動パラフィン15質量部に加えコーラーでよく混合した(顔料部)。赤色223号0.05質量部をブチルステアリン酸エステル11.45質量部に溶解させた(染料部)。セレシン12質量部、ミツロウ8質量部、セチルアルコール5質量部、鯨ロウ4質量部、カルバナロウ1質量部、流動パラフィン6質量部、液体ラノリン20質量部、ソルビタンセスキオレイン酸エステル2質量部及び香料、酸化防止剤を混合し、加熱溶解した後、顔料部と染料部とを加え、ホモミキサーで均一に分散させた。分散後、型に流し込み、急冷してスティック状の口紅を得た。
【0125】
(コーティング材料の作製)
実施例1で得られた生分解性樹脂粒子群2質量部と、市販のアクリル系水性つやあり塗料(カンぺパピオ社製、商品名スーパーヒット)20質量部とを、攪拌脱泡装置を用いて、3分間混合し、1分間脱泡することによって、コーティング材料としての塗料を得た。得られた塗料を、クリアランス50μmのブレードをセットした塗工装置を用いてABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)板上に塗布した後、乾燥することによって塗膜を得た。得られた塗膜をHORIBA社製 GLOSS CHECKER IG-330を用いて測定したグロス(60°)は3であった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の生分解性樹脂粒子は、化粧料、医薬部外品等の外用剤、塗料用艶消し剤、粉体塗料等のコーティング材料、レオロジー改質剤、ブロッキング防止剤、滑り性付与剤、光拡散剤、ファインセラミックス焼結成形用助剤、接着剤用充填剤、医療用診断検査剤や、自動車材料、建築材料等の樹脂組成物及びその成形品への添加で使用できる。中でも、化粧料、医薬部外品等の外用剤、塗料用艶消し剤、粉体塗料等のコーティング材料、飲食品等の包装材のブロッキング防止剤に配合されて好適に使用することができる。