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特許7197684マイクロナノスケールロボット、医療器具および埋め込み可能デバイスの遠隔制御のためのハイブリッド電磁デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】マイクロナノスケールロボット、医療器具および埋め込み可能デバイスの遠隔制御のためのハイブリッド電磁デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/00 20160101AFI20221220BHJP
   A61B 5/07 20060101ALI20221220BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20221220BHJP
   B82Y 25/00 20110101ALI20221220BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20221220BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61B34/00
A61B5/07
B81B3/00
B82Y25/00
B82Y5/00
A61M37/00 550
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021510276
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019030345
(87)【国際公開番号】W WO2019213362
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】62/666,536
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520426173
【氏名又は名称】キセリョフ、アレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】シュピゲルマッハー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オレン、エラン
(72)【発明者】
【氏名】スローミン、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】コーヘン、ナダヴ
(72)【発明者】
【氏名】ペレグ、アミテイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン クリーフ、イーライ
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-103091(JP,A)
【文献】特開2005-81147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/53640(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-779(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/333143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61B 5/07
B81B 3/00
B82Y 25/00
B82Y 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロスケールデバイスの遠隔制御のための電磁制御システムであって、少なくとも1つのU字形コイルを備え、前記少なくとも1つのU字形コイルが、単一の閉鎖電気回路を形成するためにエンドツーエンドで隣接する実質的にまっすぐな8つのセグメントを含み、
4つのセグメントの第1のセットが、相互に平行であり、その2つのサブセットが、2つの反平行電流を各々担持し、
その2つのセグメントの第2のセットが、相互に平行であり、2つの反平行電流を担持し、前記第1のセットと直交し、
その2つのセグメントの第3のセットが、相互に平行であり、2つの反平行電流を担持し、前記第1のセットおよび第2のセットと直交する、電磁制御システム。
【請求項2】
マイクロスケールデバイスを遠隔制御するための電磁制御システムであって、
U字形コイルを含む動作領域内で磁場を生成する第1のサブシステムと、
前記マイクロスケールデバイスの場所を追跡するように適合された撮像システムと、
前記撮像システムから入力を受信し、前記U字形コイルにエネルギーを伝達し、前記磁場における前記マイクロスケールデバイスの移動を方向付けるように適合されたインターフェイスと、を備え、
前記U字形コイルが、単一の閉鎖電気回路を形成するためにエンドツーエンドで隣接する実質的にまっすぐな8つのセグメントを含み、
4つのセグメントの第1のセットが、相互に平行であり、その2つのサブセットが、2つの反平行電流を各々担持し、
その2つのセグメントの第2のセットが、相互に平行であり、2つの反平行電流を担持し、前記第1のセットと直交しており、
その2つのセグメントの第3のセットが、相互に平行であり、2つの反平行電流を担持し、前記第1のセットおよび第2のセットと直交する、電磁制御システム。
【請求項3】
ハルバッハアレイをさらに含む、請求項1または2に記載の電磁制御システム。
【請求項4】
ヘルムホルツコイルまたはマクスウェルコイルをさらに含む、請求項1または2に記載の電磁制御システム。
【請求項5】
2セットのコイルをさらに備え、前記2セットのコイルの各々が平面構成にある、請求項1または2に記載の電磁制御システム。
【請求項6】
複数の前記U字形コイルを備える、請求項1または2に記載の電磁制御システム。
【請求項7】
前記U字形コイルが、患者の身体を少なくとも部分的に取り囲むように適合される、請求項1または2に記載の電磁制御システム。
【請求項8】
1nm~10mmの寸法を有する少なくとも1つのマイクロスケールデバイスをさらに備え、
前記少なくとも1つのマイクロスケールデバイスが、磁気モーメントを有し、患者の身体に埋め込まれるように適合される、請求項1または2に記載の電磁制御システム。
【請求項9】
前記マイクロスケールデバイスが、
マイクロスケールロボットまたはナノスケールロボット、
医療器具、
埋め込み可能デバイス、
スマートピル、および
マイクロポンプ、からなる群から選択され、
前記マイクロスケールデバイスが、患者の体内を移動するように動作可能であり、
前記マイクロスケールデバイスが、実質的に10 -7 Nm/T~10 -4 Nm/Tの範囲の磁気モーメントを有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記マイクロスケールデバイスへの遠隔電力伝達のために適合され、
誘導結合コイル、
共振誘導システム、および
磁気動的回転結合システム、からなる群から選択された、前記マイクロスケールデバイス内の内部素子をさらに備え、
前記内部素子が、磁場生成デバイスから送信された前記エネルギーを受信するように適合される、請求項2に記載のシステム。
【請求項11】
患者の体内の前記マイクロスケールデバイスとのデータ通信のために適合され、前記マイクロスケールデバイス上の無線周波数識別集積回路をさらに含み、前記無線周波数識別集積回路が、前記マイクロスケールデバイスの状態に関する情報を送信するように適合される、請求項2に記載のシステム。
【請求項12】
前記マイクロスケールデバイスが、前記マイクロスケールデバイス上のそれぞれの直交軸に従って配向される3つのマイクロコンポーネントを備える磁場センサを包含する、請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
マイクロコンポーネントが、
ホールセンサ、
コイル、
誘導結合コイル、
共振誘導システム、および
磁気動的回転結合システム、からなる群から選択される、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁制御デバイスの分野である。
【背景技術】
【0002】
人間体内の医療デバイス(本明細書では「内部デバイス」と示される)の遠隔制御は、治療ペイロードの送達、診断、または外科処置を含む様々な目的に有用であることができる。内部デバイスは、限定されないが、マイクロまたはナノスケールのロボット、医療器具、埋め込み可能デバイス、「スマートピル」、マイクロポンプなどを含む。内部デバイスを遠隔制御するための電磁機構は、文献および実際に周知であり、体外の電磁デバイス(本明細書では「外部デバイス」と示される)を使用して、内部デバイスの運動を制御し、内部デバイスと通信し(アップリンクおよびダウンリンク通信)、内部デバイスにエネルギーを伝達し、内部デバイスを追跡し、他の種類の機能性を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の実施形態の目的は、軽量で可動部品をほとんどまたはまったく有さず、電力の消費がわずかであり、多様な電磁場構成を生成し、治療および/または診断機能を提供し、治療薬の送達および撮像モジュールを含む他の治療法と統合された方法で稼働し、電源、ノイズ、および温度の観点から医療安全規制を順守するようなシステムの設計に付随する課題に対処することである。本発明による実施形態は、外部制御システムを提供し、以下の種類の機能性を可能にする。
【0004】
回転磁界、永久磁界、またはこれらの組み合わせの生成を介した内部デバイスの運動の遠隔制御であって、以下に説明するように迅速にカスタマイズおよび修正されることができる特定の磁場パラメータによる。
【0005】
高度な3D軌道を介した推進、時間分解(高速、段階的)ストップアンドゴー運動、磁場勾配の生成を介した内部デバイスの前後運動を含むナビゲーションを含む遠隔制御であって、以下を達成するためにカスタマイズされた特定の磁場パラメータによる。
【0006】
本明細書に開示されている内部デバイスコンポーネントの機械的作動のための任意の磁場の生成を介した内部デバイス動作の遠隔制御。
【0007】
内部デバイスコンポーネントおよびエフェクト撮像を制御するためのそれぞれのモジュールとの統合。
【0008】
内部デバイスの遠隔により制御されたエネルギー伝達、エネルギー貯蔵、および/または変換および推進。
【0009】
内部デバイスからの標的治療剤の、遠隔して制御された放出。
【0010】
標的内の標的宛先への遠隔による複合体ナビゲーション、およびそれに続く内部デバイスの一般収集ポイントへの格納。
【0011】
内部デバイス(アップリンク/ダウンリンク)とのデータ通信。
【0012】
内部デバイスを特定するための同時または分離電磁追跡。
【0013】
医療撮像装置、麻酔チューブ、外科用機器へのアクセスなど、関連する医療処置で使用される補助デバイスとの互換性。
【0014】
患者への滑らかなアクセスおよび操作上の安全性を含む、患者および医師のための処置の容易さ。
【0015】
遠隔制御ステーションを介したデータ監視、ロギング、および制御。
【0016】
本発明の一実施形態は、マイクロスケールデバイスを遠隔制御するための電磁制御システムを提供し、前記制御システムは、動作領域内で磁場を生成する第1のサブシステムであって、前記動作領域に近接するが完全に封入されない2つ以上の磁場生成デバイスを備え、重なり合う磁束線を生成する磁場生成デバイスが、三次元で組み合わせられた磁場ベクトルを生成する、第1のサブシステムと、マイクロスケールデバイスの場所を追跡するように適合された撮像システムと、画像システムから入力を受信し、コイルにエネルギーを伝達し、磁場内のマイクロスケールデバイスの移動を方向付けるように適合されたインターフェイスと、を含む。
【0017】
一実施形態では、本発明は、マイクロスケールデバイスを遠隔制御するための電磁制御システムを提供し、前記制御システムは、動作領域内で磁場を生成する第1のサブシステムであって、前記動作領域に近接するが完全に封入されない2つ以上の磁場生成デバイスを備え、重なり合う磁束線を生成する磁場生成デバイスが、三次元で組み合わせられた磁場ベクトルを生成する、第1のサブシステムと、マイクロスケールデバイスの場所を追跡するように適合された撮像システムと、画像システムから入力を受信し、コイルにエネルギーを伝達し、磁場内のマイクロスケールデバイスの移動を方向付けるように適合されたインターフェイスと、を備える。
【0018】
一実施形態では、本発明は、マイクロスケールデバイスを遠隔制御するための電磁制御システムを提供し、制御システムは、x、yおよびz軸を有する動作領域のx-y平面内で磁場を生成し、前記z軸の周りに配向される永久磁石のハルバッハアレイを含む、第1のサブシステムと、z軸の周囲のソレノイドコイルと、マイクロスケールデバイスの場所を追跡するように適合された撮像システムと、撮像システムから入力を受信し、コイルにエネルギーを伝達して、磁場におけるマイクロスケールデバイスの移動を方向付けるように適合されるインターフェイスと、を備える。
【0019】
一実施形態では、本発明は、マイクロスケールデバイスを遠隔制御するための電磁制御システムを提供し、制御システムは、動作領域で磁場を生成し、U字形コイルを備える、第1のサブシステムと、マイクロスケールデバイスの場所を追跡するように適合された撮像システムと、撮像システムから入力を受信し、コイルにエネルギーを伝達して、磁場におけるマイクロスケールデバイスの移動を方向付けるように適合されたインターフェイスと、を備える。
【0020】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の電磁システムと、1nm~10mmの寸法を有し、磁気モーメントを有し、体内に埋め込むように適合される少なくとも1つのマイクロスケールデバイスとを備えるシステムを提供する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、患者の体内でデバイスの移動を方向付ける方法を提供し、本明細書に記載の電磁システムと、1nm~10mmの寸法を有し、磁気モーメントを有し、体内に埋め込むように適合される少なくとも1つのマイクロスケールデバイスとを設けることと、前記マイクロスケールデバイスに前記電磁制御システムによって生成された磁場を適用して、前記磁場における前記マイクロスケールデバイスの移動を方向付けることと、を含む。
【0022】
本明細書における用語「患者の身体」は、検査、分析、診断、および/または治療的処置中の実体を表し、生きているか否かにかかわらず、人間の体、臓器、組織、およびその検体を含む動物の体、臓器、組織、およびその標本を含むが、これらに限定されない。
【0023】
本願は、これらの機能を有するシステムのいくつかの実施形態を包含し、そのいくつかは、電磁機構、ならびに音響または光学機構に依存するハイブリッド外部デバイスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分において特に指摘され、明瞭に特許請求される。しかしながら、本発明は、構成および操作方法の両方に関して、その目的、特徴、および利点に加え、添付の図面と共に読まれる場合、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【0025】
図1A】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図1B】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図2A】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図2B】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図3】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図4】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図5】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図6A】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図6B】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図6C】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図6D】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図6E】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図6F】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図6G】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図6H】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図7A】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図7B】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図7C】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図7D】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図7E】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図7F】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図8A】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図8B】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図8C】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図8D】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図8E】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図8F】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図9】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図10】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図11A】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図11B】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図12】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図13】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図14】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図15】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図16】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図17】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図18】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図19】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図20】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図21】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図22】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図23】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図24】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
図25】本出願に記載される本発明の実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、数々の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者には、これらの具体的な詳細なしに本発明を実施することができることが理解されるであろう。他の事例では、周知の方法、手順、および/またはコンポーネントは、本発明を不明瞭にしないように詳細に説明されていない。
【0027】
一実施形態では、本発明は、大きな作業空間に磁場を提供し、運動制御のために使用される、コイルベースのシステムである。
【0028】
本実施形態では、コイルは、長さ最大50cmおよび直径最大120cmの円筒形、円錐形または代替の動作領域(処理容積)において、50ガウス~1,500ガウスの範囲の磁場、および典型的には最大500ガウスの連続した絶対磁場の生成を可能にする方法で設計され、生成された磁場は、回転するか、固定されるか、パルスを発するか、任意の解析形態で時変するか、または3D空間における勾配および0.5Hz~60Hzの間隔での典型的な回転周波数であり得る。
【0029】
システムの動作領域は、人間または大きな動物の場合など、患者の体型に基づく。
【0030】
本発明の一実施形態では、制御システムは、磁場振幅を変更させて、内部デバイスの(マイクロ)メカニカルコンポーネントの運動を駆動させ、均質かつ異種のマトリックスにおいて前進、後退、停止、および複雑な3D運動を生成する。
【0031】
前述の設計は、内部デバイスの信頼性、再現性、高忠実度推進を可能にする電磁界線を生じさせる。
【0032】
前述の設計は、磁場勾配をもたらし得る。例えば、10~4Nm/Tの磁気モーメントを有する素子を使用することによって、1cm以上の体積全体にわたって、およそ50mT/mの典型的な勾配を有する磁場を適用し、マイクロニュートンを超える典型的な力を提供することを可能にする。典型的な構成は、より簡易な磁場整流および制御のために大量の線形勾配を確保するためのマクスウェルコイルが挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、マクスウェルコイルまたはその組み合わせは、3対のヘルムホルツコイルおよび/またはヘルムホルツコイルおよび固定磁石の組み合わせを含むセットアップの一部である。
【0033】
前述の磁場勾配は、内部デバイスによるデバイスの場所の検知に対応するために、三次元空間の1対1の関数であることができ、1mT/m以上の勾配を正確に検出する内蔵磁気勾配センサを利用し、Dabsch,A.,et alの「MEMS cantilever based magnetic field gradient sensor」に例示されているMEMSカンチレバーデバイスを含む多様なマイクロメカニカルデバイスによって実証されるが、これに限定されない。結果として生じる位置は、以下に記載の方法を使用して外部デバイスに戻ることができ、内部デバイスの場所の追跡機構としての役割を果たす。さらに、記載された磁場勾配は、電磁界感受性材料によって媒介される治療負荷の制御放出に適用され得る。
【0034】
本発明の実施形態では、ヘルムホルツ構成が適用される。具体的には、少なくとも1対のコイル、および典型的には3対のコイルは、電圧および電流供給に従って磁場を生成する(図1A)。前述のコイルは、各コイル対が回転磁場を作り出すための極として機能するように順序付けられる。2つのコイル対は、その平面内に回転磁場を作り出し、それによって、垂直ベクトル内の線形力および運動に変換される回転運動を誘発する。3つのコイル対システムは、概して、3D空間における任意の方向を指すことができ、任意の方向における回転場の生成はまっすぐである。関連する実施形態では、前述のコイルトポロジは、操作上の開口部およびエンジニアリングの利便性に対応するための、円形、正方形、および代替幾何学形状を含む。
【0035】
本発明の実施形態では、コイルシステムは、高伝導性金属で作られ、その非限定的な例は、銅、アルミニウム、および/またはそれらの合金を含み、それによって重量に対する高い伝導率を呈する。関連する実施形態は、カーボンナノチューブ(CNT)ワイヤ、銀、および金を利用する。コイルは、典型的には、エポキシ接着剤、シリコーンなどによって例示される樹脂を使用して共に保持される多数のワイヤで作られる。前記のワイヤは、短絡を防止するために絶縁または積層される。典型的なシステムは、100Kg~500Kgであり、その重量のほとんどが金属コイルおよびコイルの輪郭/トポロジー成分にある。
【0036】
様々な実施形態では、機械的構造は、磁場に起因する重力およびそれらの間に与える力に耐えるために、特定の3Dトポロジー構成でコイルを留め付ける。構造的コンポーネントは、アルミニウムなどの非強磁性金属のコンポーネントであるが、関連する実施形態では、一部または全体の高密度プラスチック、セラミック、炭素繊維複合材料などである。
【0037】
特定の実施形態では、システムは、過熱を防止し、ワイヤ内のより高い電流密度が標的動作磁場を増加させることを可能にするために冷却される。冷却は、蒸留水、グリコール、誘電性流体(フッ素、PAO)を含むがこれらに限定されない熱伝導性液体によって、コイルのワイヤの中に、周囲に、またはそれらの間にそれらを流して放熱を除去することによって行われる。関連する実施形態では、冷却は、ワイヤの中に、周囲に、またはそれらの間に空気または他のガス流を生成することによって行われる。特定の実施形態では、冷却ダクトは、ワイヤの周囲の自由体積であり、対流を介したより良好な熱伝導および分散のためのリブ状の幾何学形状を有する(図1B)。いくつかの実施形態では、ワイヤ、ダクト、または前述のエポキシ樹脂などの他の材料は、熱グリースまたは同様の熱結合材料を介して、ヒートシンク材料と熱連通する。結果としてダクトの外部表面に生じる温度は、通常、安全要件および規制を満たすために40℃以下である。
【0038】
システムの典型的なサイズは、作成された開口を通した患者またはベッドに横たわっている患者の導入に対応するように、直径40cm~60cm有する最小セットのコイルを含む。より大きなコイル対の典型的な直径は、80cm~120cmであり、ここで寸法は、周囲の冷却ダクトを含むコイルサイズを指す。結果として得られた重量で特定されたサイズは、病室または臨床空間内への輸送および設置を容易にする。
【0039】
様々な実施形態では、コイル平面は、地面または重力ベクトルに垂直または平行であり、関連する実施形態では、システムは、重力の方向に対して角度をもって設定され、それによって、患者の身体断面の長い寸法に対してより収容可能な開口を提供する。
【0040】
前述のコイル構成への電力供給は、典型的には、インバータ、コンバータ、または整流器によって提供され、50V~100Vの特性値を有する様々なレベルの交流(AC)または直流(DC)電流を供給し、ピーク消費時にコイル当たり5kW~7kWの特性電力を消費すると同時に、コイル間の中心体積において約500ガウスの磁場を生成する。電源は、電気的要件を考慮するように、追加のコンデンサを含んでもよく、または含まなくてもよい。好ましい実施形態では、電源コンデンサバンクは、コイルの一部またはすべてに直列に接続され、共振を使用して所望の周波数を通過させる。コンデンサバンクは、その有効キャパシタンスを変化させるように変動する。特性入力電気周波数は、0Hz~50Hzであり、内部デバイスの運動と同期している。しかしながら、場合によっては、より高い周波数を使用することができ、例えば100Hzを使用して、さらなる機械的運動を誘導し、および/または高いスリップ(電気回転速度と機械回転速度との間の相違)で移動させる。電源は、所望の磁場、回転速度、または勾配のために必要な電流を計算するように、以前のデータを使用するコンピュータシステムによって制御される。
【0041】
本発明の実施形態では、デバイスは、磁気出力の較正、リアルタイム補正および検証のために、単一または多数の磁場センサと組み合わせて使用される。センサは、電気部品に対する制御を提供するように、別個に設定することができるか、または前述のコンピュータシステムに接続することができる。
【0042】
重量を制限するため、動作容積により良い較正された磁場を提供するため、または特定の設計上の考慮事項に対応するため、追加の実施形態は、代替のコイル構成を利用する。非限定的な例では、構造的くぼみが3Dセットアップに追加され、より小さな外部コイルの形態因子を可能にする。前述のくぼみは、外部ダクトを考慮した場合のコイル幅に比例した曲率半径を示す(図2B図3)。くぼみは、例えば20cm×20cm×20cmの体積にわたる中央磁場強度の最大5%の均一性などの、患者の体内の堅固な運動制御に十分である、中央体積中の磁場の均一性を許容可能なレベルまで維持するように制限される。
【0043】
代替の実施形態では、コイルは絡み合い、コイル間のより大きな交点を作り出す。この場合、3つのコイル対構成の6つのコイルはすべて同じ直径を有する(図2A図2Bを参照)。別の代替の実施形態では、6つのコイルのうち4つのみが同じ直径を有する(図3を参照)。この場合、冷却ダクトは、コイル間で(単一の接続体積)共有することができる。
【0044】
本発明の実施形態は、単純な組み立ておよび分解を可能にする留め具(ボルトなど)と接続された多数のモジュール部品のセットからのデバイスの組み立てを提供する。関連する実施形態では、コイルは組み立て後に移動しない。他の実施形態では、患者および/または患者のベッドを基準にしたコイルの向きは、方位角、傾斜、またはその両方における1または2自由度を可能にするジンバルベアリング上でコイルを動かすことによって調整される。代替的には、患者のベッドを同様の方法でジンバリングして、コイルシステムに対する患者の向きの変更を可能にすることができる。
【0045】
いくつかの構成では、コイルのいくつかは、ヒンジに接続され、これにより、患者がそれらの間の中央操作体積に容易に挿入されることを可能にするような方法でコイルを移動させることが可能になる。
【0046】
他の実施形態は、患者の身体の有無にかかわらず、内側に押し込んで、ホイールまたはその他の部分を折り畳むかまたはトラックに嵌合させることによって中央の操作領域に挿入され、さもなければ患者の身体を動かす必要がないようにするベッドを含む。さらなる実施形態では、ベッドおよび電磁デバイスは、外部撮像システムおよび電磁デバイスに接続され得る中央制御システムによって制御される機械的マニピュレータまたはモータを使用して、3Dで互いに関連して任意に移動可能である。特定の実施形態では、電磁デバイスは、電磁デバイスによって生成される電界が十分に強い患者の体内の特定の単位体積(「焦点領域」)において、患者の体内の内部デバイスの運動を制御する。内部デバイスが移動するにつれて、内部デバイスは焦点領域の外側に移動し得る。したがって、撮像システム(例えば、超音波、X線、または他の撮像様式)を使用して内部デバイスを撮像し、次いで、焦点領域が内部デバイスの移動中の場所に従うように、患者の身体に関連して電磁デバイスの場所を調整する必要がある。このプロセス全体を通して、電磁デバイスによって生成される信号は、組織を介した内部デバイスの適切な移動を保証するように連続的に制御される。
【0047】
特定の実施形態は、本明細書に記載のヘルムホルツコイルに加えて、より均一な磁場または磁場勾配を作り出すために、マクスウェルコイルなどの他のコイルを設ける。関連する実施形態では、多数のコイル対は、それらのうちのいくつかが任意の所与の瞬間に活性であり、磁場の所望の空間分布を作り出すように使用される。コイルは、患者のベッドの周囲に位置付けられ、特定の生物学的マトリックス、組織、または器官における特定の軌跡に続く治療用粒子の送達を含むがこれらに限定されない特定の操作ニーズに対応するようなモジュール式である。関連する実施形態は、強磁性コアを使用して、生成された磁場を患者の身体により近い点に導き、焦点を合わせる。
【0048】
特定の実施形態は、低温超伝導材料を利用して、より高い磁束密度およびより強い磁場を提供する。このような超電導体は、典型的には、1テスラ程度のピーク磁場、ならびに液体窒素または液体ヘリウム冷却と連動する。
【0049】
前述の実施形態はまた、およそKHz以上の高周波場を含み、マトリックス、組織、または器官の局所粘度特性を非対称に変更することによって、または材料特性を変更して、抵抗の少ない運動を可能にすることによって、粒子加熱および温熱様効果を誘導し、強化された推進力を誘導する。
【0050】
特定の実施形態では、単一の細いコイルのみを使用して、人体対称軸(z軸として定義される)に平行な磁場成分を生成する(図4)。これは、磁場の強度が中央領域(焦点領域として定義)で最大であるため、合理的である。焦点ポイントに可動の内部デバイスが存在する場合、z軸に沿って移動するにつれ、内部デバイスの運動を追うためにz軸に沿って焦点ポイントを移動させる必要がある場合がある。関連する実施形態では、このことは、患者または電磁デバイスをこの軸に沿って互いに関連してシフトさせることによって実施される。2つの大きなコイルの代わりに、z軸に単一の細いコイルを使用することで、システムの重量、冷却、および電力要件を最小限に抑えることが可能になる。
【0051】
特定の実施形態では、標準的なヘルムホルツ/マクスウェルコイルの代わりに、またはそれに加えて、もしくはz軸の単一の細いコイルに加えて、x軸、y軸、またはz軸において焦点磁気ビームを使用して、システムの重量を最小限に抑えながら、患者の体内の小さな焦点領域のみで強い磁場を生成する(図5)。
【0052】
特定の実施形態では、他の磁場焦点合わせ構造体を、電磁デバイスと患者の身体との間に位置させ、内部デバイスが患者の体内に配置されるターゲット焦点領域に向かって磁場線を焦点する。磁場焦点合わせ構造は、患者の体に向けられた細い先端を有するフェライト円錐または台形構造、ならびに他の材料およびトポロジーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
別の実施形態は、コイルベースのシステムを提供し、電磁的手段を使用して、内部デバイスへの遠隔電力伝達を可能にする。関連する実施形態は、本明細書に記載されるような誘導運動能力に加えて、ナノまたはマイクロロボットもしくはインプラントなどの内部デバイスへの遠隔電力伝達のためのコイルシステムを提供する。これらの実施形態は、誘導結合コイルシステム、共鳴誘導システム、磁気動的回転結合システムなどの内部要素と連動して稼働する。内部素子は、生成された磁場介して外部コイルシステムによって、磁場の変化(準静的、非放射的)によって、または無線周波数出射放射を通して、伝送されるエネルギーを受ける。
【0054】
コイルは、内部デバイスによって捕捉されるエネルギーを伝送するために、MHz~GHz周波数の様々な磁場を印加する。他の実施形態では、最大100Hzの周波数を有する回転磁場が適用され、電気エネルギー、推進、またはエネルギー貯蔵に変換される機械的運動を誘導する。
【0055】
追加の実施形態は、前述の低周波、中間周波数、および高周波、ならびに記載された磁場を調節することを提供する。これは、一般に、インピーダンスマッチングを提供する追加の電源電子コンポーネント(コンデンサ、コイル、またはトランジスタスイッチなど)と組み合わせて使用される。関連する実施形態では、エネルギー伝達は、動作中にコイルを使用するときに、連続的であるか、一気にであるか、または一定期間にわたって半連続的である。いくつかの実施形態では、該構成は、前述の構成と同一であるか、またはコイルおよび/または永久磁石の追加のセットに基づく。関連する実施形態では、エネルギー伝達は、温熱療法様作用を誘導し、電熱作用を利用して電圧を誘導することにより、磁気ナノ粒子(MNP)などのコンポーネントを加熱することを介して達成される。
【0056】
別の実施形態は、電磁的手段を使用して内部デバイスとのアップリンク/ダウンリンク通信を有するコイルベースのシステムを提供する。このコイルベースのシステムは、磁気誘導推進および/または磁気エネルギー伝達に加えてデータ伝達を提供するか、または内部デバイスとの通信のために別個に使用され得る。この機能性に対応するために、内部デバイスは、情報転送のための受信コンポーネントおよび/または送信コンポーネントを具備する。非限定的な例では、内部デバイスは、患者の体内の運動の間にデータを収集し、デバイス位置を報告し、および/またはデバイス状態についてフィードバックを提供する無線周波数識別集積回路(RFID IC)を有する。外部信号によって命令されると、装置は治療物質を放出し、機械的運動、加熱、または自己破壊を行うことができる。デジタルおよび/またはアナログRFベースのプロトコルを使用することができる。
【0057】
様々な実施形態によれば、情報を送信することは、本明細書に先に説明したものと同じコイル構成を介して、または追加のコイルもしくは固定磁石によって達成される。また、上述の推進から切り離されたスタンドアロン方式で、または同じ磁場信号で送信される追加情報を変調することによって使用されることもできる。情報伝達は、ナノ/マイクロロボット、スマートピル、インプラント、マイクロインプラント、カテーテル、およびその他の画像または治療機器と直接使用される。すべてのデバイスは、別々に動作し、および/またはナノ/マイクロロボットと並行して動作する。
【0058】
本明細書に記載される磁気システムの目標は、患者の身体(動作領域として定義される)内の任意の点で磁場を生成すると同時に、適用可能な撮像デバイス(超音波、X線など)を使用して、患者のバイタルサインを監視し、体内のデバイスを追跡するために、処置中に患者の身体に容易にアクセスすることを可能にすることである。同時に、システムは実用的な冷却ソリューションを提供し、重量と消費電力の制限に準拠する。大柄な男性患者のサイズを想定すると、動作領域は50cm×50cm×50cm以上であってもよい。
【0059】
本発明の実施形態によるシステムは、重量-電力-アクセス-サイズ-冷却要件を満たすが、一方で従来のコイルベースのシステム(例えば、患者の身体を囲む3対の直交ヘルムホルツコイルを使用する)は、高温になり過剰な熱を放散し、広範囲の冷却を必要とする。さらに、従来のシステムは非常に重い(重量は1トン以上)。参考のために、市販のMRIシステムは、しばしば液体窒素冷却を必要とし、また、トン以上と同程度の重量も必要とし、それらを、1階を上回る任意の場所か、または補強構造を必要とする標準的な建物の場所に設置するための能力が著しく制限される。本発明の実施形態によるシステムは、数百キログラム以下の単一の重量で提言された重量を有し、実用的な解決策のために理想的である。
【実施例
【0060】
拡張現実テーブル
【0061】
本実施形態は、コイルによって生成される磁場の線が、コイルの外側に延在する閉ループを形成するという事実を利用する。したがって、本システムは、動作領域の近くに位置するが、動作領域を包囲していない2つ以上のコイルで構成される。コイルは、動作領域のサブセクションと直交する。異なるコイルの磁束線は、重ね合わせの原理に基づいて組み合わされた磁場ベクトルを生成し、より強力またはより良好に制御された磁場ベクトルを有する動作領域内に焦点領域(または多数の焦点領域)を効果的に作成する。コイル内の電流を独立して制御することにより、回転場、電界勾配、他の時間変動パルスの生成を含む、動作領域の多様な場所で生成される磁場を任意に制御することが可能である。図6A図6Bは、平行なコイル10個が、平面間に配置される動作領域と直交する2平面(各平面に5つのコイル)に位置するようなセットアップの例の図を示す。このセットアップを変更することは、例えば、さらなるコイルを追加すること、動作領域を基準としてコイルの各平面の向きを変更すること、またはコイルを非平面構成に配置すること(例えば、動作領域に同心円状に面すること)によって可能である。さらに、コイルの内部にコアを追加して、磁場を増大させること(図7A図7Bの例)、またはコイルの外部にヨークを追加して、磁場を再度増大させること(図8A図8Bの例)も可能である。コイル、コア、およびヨークの構成は、磁場分布をより良好に制御するために、空間で変更することができる。この設定では、図6Bで特定された変数d、eps、D、Sを定義する。
【0062】
S=100mm、eps=0.5の場合、図6C図6D図6E図6Fは、有限要素シミュレーションの結果を示し、コイルの一部をシャットダウンし、異なる方向に異なるレベルの電流を印加することを含む、コイルの各々を独立して制御することによって、操作領域の中央の焦点で任意の3D方向に目的の磁場ベクトルを正確に生成する能力が実証されている。
【0063】
図6G図6Hは、パラメータ(変数)Sを200(より良好な拡散コイル)に増加させることにより、磁場の大きさを>25%まで増加させることが可能であることを示す。
【0064】
図7C図7D図7E図7Fは、SAE1010スチールコアの追加を使用して、磁場を4~5倍増幅する能力を示す。
【0065】
図8C図8Dは、コアに加えて半径(S+D)10mmのSAE1010スチールヨークを追加することを使用して、磁場を約30%増加させる能力を示す(図8D図7Dと比較する)。
【0066】
図8E図8Fは、パラメータ(変数)S=200mm、より高い電流、ヨークおよびコアを有するシステムを有する焦点領域における100ガウスのフィールドを実証する。
【0067】
後者の副次的に最適な構成は、動作領域の様々なエリアで制御可能な任意の磁場ベクトルの生成を可能にしながら、24kWの熱を生成し、市販のコンパクトな水冷を可能にする。さらに、このようなシステムは重量効率が高く、特定の重量の最適化なしに重量約250kgを有し、上記の制限に照らして医療現場の実用的なソリューションとなる。
【0068】
また、このシステムでは、内部デバイスの遠隔電力伝達、通信、または推進のために必要に応じて、任意の方向/振幅の制御可能な磁場を生成することが可能である。
【0069】
複合ハルバッハコイルシステム
【0070】
2つのサブシステムが存在し、第1のものは、x-y平面に磁場を生成し、第2のものは、z方向に磁場を生成する。
【0071】
第1のサブシステムは、同一の円形のロッド様永久磁石の2つの分散型ハルバッハアレイ(z軸の周囲)で構成される。第2のサブシステムは、上記の永久磁石アレイを包むZ軸の周囲に巻かれたソレノイドコイルである。
【0072】
両方のサブシステムは、薄い円筒形(z軸の周囲)強磁性シェルによってさらに増強され得る。
【0073】
上記の第1のシステムに組み込まれた磁石は、それらの軸を中心に同期的に回転するように構成される。
【0074】
ロッド様の永久磁石の数およびそれらのサイズは、フィールド強度またはシステムサイズを変更するために調整されることができる。
【0075】
磁石はロッド様である必要はなく、必要に応じて異なる幾何学形状を有していてもよい。
【0076】
このようなロッド様磁石の多数の同心円層は、システム内に置かれて(ロッドの1つの層が別の層上にある)、振幅をより大きく制御し、より均一なフィールドを生成して、さらに強いフィールドを生成することができる。
【0077】
図面は、48個のロッド様磁石の単一層について、そのようなシステムの代表例を示す。
【0078】
x-y平面に磁場を生成するサブシステム
【0079】
図9は、ヨークの役割を果たす薄い強磁性シェルに囲まれた48個の環状に分散され、半径方向に磁化された同一の永久磁石ロッドの単層アレイとして実装されるサブシステムの非限定的な例を示す。各ロッドは、その軸を中心に回転するように構成されている(例えば、小さなステッピングモータによって駆動される)。磁石は、対でグループ化される(図10)。
【0080】
最大磁場を生成するために、結合された磁石は同方向に配向され(図11A)、ゼロフィールドを生成するために、それらは逆方向に配向される(図11B)。カップルの平均磁化ベクトルは、ハルバッハアプローチごとに分布する。
【0081】
図12は、最大Y方向磁場を生成する磁石の方位を示す。
【0082】
図13は、より小さな規模のy方向磁場を生成するための磁石配向の例を示す。各カップル内のロッドは、公称方向に対して傾斜している。x-y平面内の磁場を、一定の回転速度、例えば20Hzで回転させるために、すべてのロッドを、例えば、直接駆動ステッピングモータを使用することによって容易に実施される角速度20Hz=1,200rpmで回転させる。ロッドは、個別に駆動されてもよく、または(例えば、ベルトによって)共に機械的に接続されてもよい。
【0083】
図14は、本発明の実施形態によるシステム全体を示し、図9に示される第1のサブシステムおよび同心ソレノイドに基づく第2のサブシステムを含む。z磁場を強化するために、強磁性のシェル様ヨークを使用する。このシステムでは、z軸コイル内の電流は、必要に応じて変調され、広い周波数範囲(Hz~GHz)で固定フィールド、勾配、または任意の他の時間変動パルスを生成する。これにより、前述された要件ごとに、遠隔電力伝達または内部デバイスとの通信のために、z軸を使用することが可能になる。
【0084】
目的は、内部デバイス内のセンサ機構と、z軸フィールドコンポーネントとの適切な空間アライメントを確保することである。例えば、このようなコンポーネントは、磁束の変化をピックアップし、それらを(エネルギー変換のために)電圧に変換するためのマイクロホールセンサ(通信センサ)またはマイクロコイルであり得る。このマイクロコンポーネントがz軸と直交している場合、z軸コイルによって送信された信号は検出されない。したがって、関連する実施形態によれば、3つのそのようなマイクロコンポーネント(例えば、ホールセンサまたはマイクロコイル)は、内部デバイス内で互いに直交して置かれ、内部デバイス内の信号統合/合計回路に接続される。したがって、磁場のz成分に対する内部デバイスの向きに関わらず、z成分全体が、その上のz成分の各投影に従って、3つのマイクロコンポーネントによって集合的にピックアップされる。その後、すべてのマイクロコンポーネントの相互作用は、内部デバイスによって、さらなる処理のために、損失なしに集約される。
【0085】
図15は、動作領域の直径600mmの開口部を有するシミュレートされたシステムであり、長さは200mmである。直径21mmの磁石ロッドは、グレードN50M製である。ヨークシェルは、3mmの1020スチール製である。コイルは、充填係数0.45のAlワイヤで巻かれている。ロッドをグループ化して最大規模を生成するように配向するときの作業体積内のシミュレートされたベクトル場(図12に示すように)を、図16に示す。
【0086】
図17は、作業体積と座標のフィールド振幅の依存関係を示す。
【0087】
最終的な特徴と結論
【0088】
作業体積内のコイルからファイルされたシミュレーションの結果を図18に示す。
【0089】
図19は、3つの座標軸xyzに対する規模分布を示す。
【0090】
図9から図19までのシステムは、以下の特性を有する。
【0091】
【表1】
【0092】
これらの特性は、市販の水冷システムの使用を再度可能にし、システムの寸法および重量は、通常のオフィス内での設置を可能にし、これを臨床環境で有効なソリューションとさせ、前述の制限に準拠する。
【0093】
U字形コイルシステム
【0094】
図20図22は、本明細書でU字形コイルシステムとして表されるものを例示する。人間サイズの臨床システムの特定の重量、サイズ、および電力要件に準拠するために、標準的なヘルムホルツコイルアプローチ(3対の直交コイル)は、より少ない空間を占有し、より少ない熱を生成すると同時に、患者への良好なアクセスを提供し、患者の体内の焦点領域で十分に強い磁場を生成するように変更されなければならない。本発明の特定の実施形態によれば、1つ、2つ、または3つのヘルムホルツコイル対が、図20に概略的に示され、以下に説明されるように、特殊形状のコイル(本明細書ではU字形コイルとして示される)によって置き換えられる。本発明のこれらの実施形態によるU字形コイルは、図20のz軸方向の磁場を最大化する。図20は、U字形コイルが、単一の閉鎖電気回路を形成するためにエンドツーエンドに隣接する実質的にまっすぐな8つのセグメントを含むことを示す。
【0095】
その4つのセグメントの第1のセットは、(z軸において)相互に平行であり、その2つのサブセットは、2つの反平行電流を各々担持する。
【0096】
その2つのセグメントの第2のセットは、(x軸において)相互に平行であり、2つの反平行電流を担持し、前記第1のセットと直交する。
【0097】
その2つのセグメントの第3のセットは、(y軸において)相互に平行であり、2つの反平行電流を担持し、第1のセットおよび第2のセットと直交する。
【0098】
U字形コイルは、通常のコイルのものと同様の方法で、多重回転巻線を含むことができることが理解される。
【0099】
図21は、代表的な実施形態における人間サイズのU字形コイルの寸法を示す。図22は、特定の焦点面におけるz軸(図20に定義される)に沿った高い磁場安定性を実証するFEAシミュレーションの結果を示す。
【0100】
そのようなシステムの利点は、人間の患者に適した動作領域において強力な磁場を生成する能力であり、一方でシステム全体はよりコンパクトであり、重量が少なく、より少ない熱を生成する。図23は、このようなセットアップの例を示し、U字形コイルは、ヘルムホルツコイルの対よりもはるかに少ないスペースを取り(参照のために図2A図2B、3を参照)、患者の身体の周りに収まっている。
【0101】
図23に示されるように、異なるコイルおよびシステムコンポーネントは、患者がベッド上に位置付けられた後に(患者が事前に組み立てられたシステム内に摺動する代わりに)自動的にその位置に摺動することによって、患者の身体の周りで動作する前に組み立てる必要がある場合がある。図23の構成では、一対のヘルムホルツコイル(例えば、図1A)は、単一のU字形コイルによって置き換えられる。関連する実施形態では、一対のヘルムホルツコイルは、患者の身体の周囲の単一のコイルによって置き換えられ、患者の対称軸に沿ったシステムに対する患者の身体位置のシフト、そしてひいては患者の体内の焦点領域のシフトを可能にする。したがって、この構成は、U字形コイル、単一の丸いソレノイドコイル(患者の身体の周囲)、およびヘルムホルツコイル(患者の身体の上下)のペアの3種類のコイルを有する。
【0102】
該設計は、システム内の他のコイルのためにさらに利用されることができる。図24は、3つのヘルムホルツコイル対のうちの2つがU字形コイルに置き換えられ、重量、サイズ、および発熱のさらなる減少を可能にする別の実施形態を示す。
【0103】
さらなる実施形態は、患者の身体の周囲に適するようにコイル形状を変更することを提供し、半円形形状、または患者の身体を(上述の実施形態のように、三辺の代わりに)四辺に囲む形状の使用を含む他のトポロジーを提供する。いくつかのそのような形状および電流の方向の非限定的な例を図25に示す。
【0104】
図面に例示されるコイルベースのシステムの別の実施形態は、上述し、図面に図示されるように、遠隔運動制御/遠隔電力伝達/アップリンクおよびダウンリンク通信、またはこれらの任意の組み合わせに加えて、動作領域の磁気共鳴撮像(MRI撮像)を提供する。
【0105】
関連する実施形態は、代替の強磁場勾配を導入し、結果として生じる測定可能な核ラーモア周波数を監視して、それらを異なる材料の3D画像にして分析することによって、撮像のためのNMR効果をさらに利用する。別の関連する実施形態は、追加の強力な永久磁石を含み、前述したようにコイルシステムを使用して、必要な摂動を作成する。代替の実施形態では、コイルシステムは、強い磁場および必要な動揺を誘導する。さらなる実施形態は、結果として生じる画像のアライメントを可能にするために、参照のための追加のマーカと併せて使用される。いくつかの実施形態では、コイルシステムは、既存のMRIデバイスに組み込まれ、永久磁石または超伝導コイルのそのインフラストラクチャを使用する。
【0106】
別の実施形態は、機能性(例えば、上述され、図面に図示されている実施形態)の一部のみのための電磁機構を含むハイブリッドシステムを備えると同時に、他の機能性が、他の機構(超音波、光学など)を使用して提供される。
【0107】
さらなる実施形態では、コイルシステムは、推進、撮像、通信、および安全の多数の代替手段を増強、改善、または可能にするための増設モジュールとして使用される。関連する実施形態は、スレッドデバイスと共に使用され、スレッドは、データ転送、電力転送、内部デバイスを位置付ける手段として、安全性を延長する手段として、またはこれらの組み合わせとして使用される。他の実施形態では、コイルシステムは、上記の特徴を提供するために使用され、一方で、動力伝達または推進誘導の一部または全部、例えばマイクロキャビテーション誘導運動、またはマイクロプロペラを使用した機械的運動などは、超音波デバイスを介して実行される。
【0108】
他の通信手段を、上述のデバイス、例えば超音波通信、光通信と平行して、それらに加えて、またはそれらの代わりに使用することができ、具体的には、いくつかのNIR周波数、スレッド通信などの、水および脂質中での吸収が低い波長を利用することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25