(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】燃料電池または電気分解装置のためのディストリビュータ構造体
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20221220BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/0223 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/0271 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20221220BHJP
C25B 11/03 20210101ALI20221220BHJP
C25B 11/036 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0213
H01M8/0221
H01M8/0223
H01M8/0228
H01M8/0271
H01M8/10 101
C25B11/03
C25B11/036
(21)【出願番号】P 2021529282
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2019082830
(87)【国際公開番号】W WO2020109436
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】102018220464.0
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】レルンベッヒャー,ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ナイドハルト,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ハギマシ,ラスツロ
(72)【発明者】
【氏名】ウース,ヤン ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】エイフェルト,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】グローセ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ハルシュカ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アイゼマン,アヒム
(72)【発明者】
【氏名】クノイレ,フリードリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ショヘンバウアー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルト,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,アルネ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ザイツ,ライナー
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-507052(JP,A)
【文献】特表2017-525109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
C25B 11/00-11/097
C25B 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの
プロトンまたは水酸化物に対して伝導性の高分子膜(16)と協働するチャネル構造(48)を有する燃料電池または電気分解装置の積層構成(10)のための
バイポーラプレートであるディストリビュータ構造体(12、20
)において、導電特性を有するプラスチック部品(40)として形成されてい
て、
前記プラスチック部品(40)は、前記高分子膜(16)の方を向いた側(54)にチャネル構造(48)を有し、
前記チャネル構造(48)は複数の円錐形の先端(56)を有することを特徴とする、ディストリビュータ構造体(12、20)。
【請求項2】
浴槽状に形成される支持体
である分離板(42)に挿入部品として収容されていることを特徴とする、請求項1に記載のディストリビュータ構造体(12、20)。
【請求項3】
前記プラスチック部品(40)は、グラファイト・プラスチック・材料混合物から射出成形されている、または前記プラスチック部品(40)はプラスチック材料から射出成形され、前記プラスチック部品に導電性コーティング(38)が施されていることを特徴とする、請求項1に記載のディストリビュータ構造体(12、20)。
【請求項4】
前記チャネル構造(48)は、高分子膜(16)の下面(50)または高分子膜(16)の上面(52)に接触する複数の小さい接点(60)を有することを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載のディストリビュータ構造体(12、20)。
【請求項5】
前記プラスチック部品(40)が載置面(44)を有し、これにより前記プラスチック部品
が分離板(42)上に収容されていることを特徴とする、請求項
2に記載のディストリビュータ構造体(12、20)。
【請求項6】
前記接点(60)は、0.1mm
2~1mm
2の接触面積(32)を有することを特徴とする、請求項
4に記載のディストリビュータ構造体(12、20)。
【請求項7】
プラスチック部品(40)は、前記プラスチック部品を前記高分子膜(16)に対して密封する少なくとも1つの取り囲むシール(64)を有することを特徴とする、請求項1に記載のディストリビュータ構造体(12、20)。
【請求項8】
前記接点(60)は、滴形(58)または円錐形に形成されていることを特徴とする、請求項
4に記載のディストリビュータ構造体(12、20)。
【請求項9】
プロトンまたは水酸化物に対して伝導性の高分子膜(16)を有する燃料電池の前記積層構成(10)における請求項1~
8のいずれか1項に記載のディストリビュータ構造体(12、20)の使用。
【請求項10】
プロトンまたは水酸化物に対して伝導性の高分子膜(16)を有する電気分解装置の前記積層構成(10)における請求項1~
8のいずれか1項に記載のディストリビュータ構造体(12、20)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池または電気分解装置のためのディストリビュータ構造体、ならびにディストリビュータ構造体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池および電気分解装置は電気化学エネルギー変換器である。エネルギーを取得するために、燃料電池では水素(H2)と酸素(O2)が水(H2O)と電気エネルギーと熱に変換される。これに対して電気分解装置では、水が電流の助けによりH2とO2に分解される。高分子電解質燃料電池では120℃未満の作動温度が支配的である。高分子電解質燃料電池の構成は、基本構造に関して電気分解装置と同じである。しかし電気分解装置は冷却路を使用しない。PEM燃料電池(高分子電解質燃料電池)は実質的に5つのコンポーネントを有している。プロトン伝導高分子膜は、微多孔質に形成されるグラファイト紙またはグラファイト織物からなる2つのガス拡散層間に埋設されている。膜または2つのガス拡散層が触媒材料との接触面においてコーティングされている。ガス拡散層の外側には両側にバイポーラプレートがある。積層もしくはこの構成の繰り返し単位はスタックとも呼ばれる。
【0003】
用いられるバイポーラプレートは種々の機能を担い、ディストリビュータ構造体としても用いられる。バイポーラプレートは、活性面にわたって反応ガスを均一に分配し、電子をガス拡散層から最寄りのセルに伝導する。液体水、または反応生成物として生じる水蒸気、ならびにセルからの生成ガスは排出される。さらに熱が触媒層から冷却剤へ導出される。微多孔質の、典型的には適当なコーティングによって疎液性に形成されるガス拡散層は、膜への媒体の細かな分配および供給、あるいは膜からバイポーラプレートの構造への生成水の導出を担う。
【0004】
圧力損失を伴う作動媒体の分配とそれほど高くないコストを保証するために、バイポーラプレートは、典型的には約0.1mm厚さの金属板にチャネル構造を刻設することによって製造される。その際、チャネル幅およびウェブ幅、あるいは一般に構造サイズは1~2mmのオーダである。
【0005】
特許文献1は、PEM燃料電池もしくはPEM電気分解装置のためのバイポーラプレートを開示する。バイポーラプレートの形状は実質的に円錐形であり、円錐の底面は、任意のn個の角数または円形からなり得、外周面は直線であってもよいし、内に、外に、あるいは内および外に湾曲してもよい。流路は、外周面に沿って直線または螺旋状に任意の数および横断面形状で配置することができる。電気供給および電気導出は、バイポーラプレート自体を介して、あるいはこれに代えて金属の供給線または導出線を介して行われる。
【0006】
特許文献2は、PEM電気分解装置のためのバイポーラプレートを開示する。バイポーラプレートは、まず一領域と中央領域を包囲する縁領域とを有する。バイポーラプレートは、例えば表側と裏側としての各プレート面である向かい合う2つの側を有する。その際、中央領域と縁領域とは向かい合う2つの側間にプレートの全部分を含む。
【0007】
特許文献3は、電気化学反応器のためのバイポーラプレートが組み込まれたフレームを開示する。同様に熱可塑性高分子を含む型枠の形の、熱可塑変形可能な炭素高分子複合材料からなる1つまたは複数の電気伝導性のバイポーラプレートが、フレームとプレートとから唯一の部材とする形状結合的および力結合的ならびに/あるいは少なくとも液密の接続が生じるように、射出成形により包囲されるか、加圧により包囲される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102004039115号明細書
【文献】国際公開第2009/033648号
【文献】独国特許出願公開第102012024753号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、少なくとも1つの高分子膜と協働するチャネル構造を有する燃料電池または電気分解装置の積層構成のためのディストリビュータ構造体、特にバイポーラプレートが提案される。ディストリビュータ構造体は、電気伝導特性を有する射出成形部品として形成されている。この射出成形部品は、任意の形状ジオメトリで製作することができ、かつ最小限の数の接点で高分子膜の片側に触れるチャネル構造を備える。
【0010】
本発明により提案されるディストリビュータ構造体は帯状に形成される支持体へのインサート部品として形成されるのが好ましく、これは、特に分離板に収容されている。
【0011】
本発明により提案される解決策にさらに従えば、ディストリビュータ構造体が射出成形部品として形成され、グラファイト・プラスチック材料混合物から射出成形部品として射出成形されてもよいし、または射出成形部品がプラスチック材料から射出成形されてもよく、この射出成形部品に導電性コーティングが施される。
【0012】
射出成形部品として形成される本発明により提案されるディストリビュータ構造体は、ディストリビュータ構造体の、高分子膜の方を向いた側にチャネル構造を有する。チャネル構造はフローフィールド(Flowfield)とも呼ばれ、個々の直立する先端も有し得る。
【0013】
本発明により提案されるディストリビュータ構造体では、チャネル構造は、高分子膜の下面または高分子膜の上面と接触する複数の小さい接点を備える。これらの接点は非常に小さく形成される接触面を介して高分子膜に触れ、それにより発生するプロセス水がより良好に運び出され得る。接点は、0.1mm2~1mm2のオーダの面積を有する。最近用いられるディストリビュータ構造体では、特に最近使用されるバイポーラプレートでは、チャネル構造は同時に接触部をなし、1mmの幅を有している。変形成形法(Umformverfahren)により製造される最近製造されるチャネル構造は、このように小さく形成される接触面をなし得ない。
【0014】
本発明により提案されるディストリビュータ構造体の展開形態では、射出成形部品が載置面(Auflageflaeche)を有し、この載置面により射出成形部品が支持体の、特に分離板の底上に収容されている。分離板は、射出成形部品が十分に密でない場合に冷却液流に対して確実な密封をなす。さらに、分離板はさらに別の金属板と材料結合的に接合、特に溶接され得るので、電気抵抗を低減する機能を有する。これに代えて、アセンブリ全体を射出成形部品として設計すること、および第2アセンブリを接続工程により射出成形部品につなぐことが可能である。
【0015】
本発明により提案される、射出成形部品として形成されるディストリビュータ構造体では、射出成形部品を高分子膜に対して密封する取り囲むシールがディストリビュータ構造体に射出成形により取り付けられる。シールを異なった部材に、例えば分離板に、または射出成形部品に取り付けることが可能である。2成分射出成形法の範囲で、この作業工程においてすでにシールを一緒に射出成形して取り付けることができる。射出成形部品に2成分射出成形法でシールを作製することの他に、用いられる分離板にシールを取り付けることも当然可能である。
【0016】
バイポーラプレートの別の実施形態では、接点が最適化される流れジオメトリ、例えば滴状に形成される。接点を滴形に形成する他に、接点を別のジオメトリで形成すること、例えば円錐形に形成することも可能である。
【0017】
本発明は、さらに、プロトンまたは水酸化物に対して伝導性の高分子膜を有する燃料電池の積層構成内でのディストリビュータ構造体の使用に関する。
【0018】
さらに、本発明は、プロトンまたは水酸化物に対して伝導性の高分子膜を有する電気分解装置の積層構成における先行請求項のいずれか1項に記載のディストリビュータ構造体の使用に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により提案されるプラスチック射出成形部品として形成されるディストリビュータ構造体、特にバイポーラプレートは様々に射出成形することができる。射出成形による形状付与によって、小さい載置点(Auflagepunkt)が得られるように射出成形部品のチャネル構造を最適化することができ、それによりプロセス水による閉塞を回避することができ、さらに圧力損失を著しく低下させることができることから電力密度が高められる。
【0020】
小さい載置点によって、燃料電池であれ電気分解装置であれ、積層構成の作動中にプロセス水がたまり得る領域が低減される。プロセス水のたまりは、燃料電池内であれ電気分解装置内であれ、高分子膜の活性面に、それに伴い積層構成の全効率に悪影響を及ぼす。
【0021】
さらに、プラスチック射出成形の方法によってチャネル構造の流れ設計(Stroemungsdesign)を最適に形づくることができる。
【0022】
ディストリビュータ構造体を最適に形づくることによって、少ない圧力損失が期待できる。例えば、製造方法によって、本発明により提案されるディストリビュータ構造体を全部そろったプラスチック部材として形成することができ、このプラスチック部材にシールを、例えば一緒に射出成形して取り付けることができ、それによりさらなる作業工程を省略することができる。電気伝導性が小さすぎる場合、相応の表面コーティングによってこの特性を最適化することができる。
【0023】
チャネル構造間の接点を最小限にすることによって、高分子膜が載置点を十分に具備する、もしくは電気抵抗を過度に上昇させない範囲で高分子膜との接点の数、すなわち接触の数を低減することができる。接点の数は、高分子膜における横導管(Querleitung)によって決まる。さらに、チャネル構造の先端、すなわち高分子膜との射出成形部品の小さい接点が、流れが最適な輪郭に形成され得ることが有利である。小さい接点の流れが最適な輪郭は、例えば滴形であり、例えばカソード経路にこの滴形で小さい接点が形成され得る。それによって燃料電池であれ電気分解装置であれ、圧力損失を最小化することができ、積層構成の全効率を著しく向上させることができる。
【0024】
電気伝導性は射出成型部品の材料によって実現され、材料は、例えば充填剤を添加することにより電気伝導性にすることができる。例えば、射出成型部品がグラファイト・プラスチック材料コンパウンド(Kunststoffmaterial Compound)から形成されてもよい。電気抵抗が高すぎる場合には、プラスチック材料が追加的または金属材料でのみコーティングされてもよい。
【0025】
本発明により提案されるディストリビュータ構造体、特にバイポーラプレートでは、チャネル構造をプラスチックコンパウンドとして、インサート部品として、さらに全部そろったバイポーラプレートとして製造することができる。
【0026】
全体として見ると、本発明により提案される、特にバイポーラプレートとして形成されるディストリビュータ構造体は水の放出を著しく改善し、かつ流れ損失を最適化するための設計自由な(gestaltungsfrei)空間の可能性を開く。部材がプラスチックコンパウンドであるため、耐食性が著しく改善される。さらに、特に2成分射出成形により、または相応に長持ちするコンパウンドによりシール機能を部材に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】燃料電池または電気分解装置の積層構成の原理概略図である。
【
図2】射出成形インサート部品として製作されたディストリビュータ構造体、例えばバイポーラプレートの図である。
【
図3】ディストリビュータ構造体、特にシールが一体成形された射出成形部材としてのバイポーラプレートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面をもとにして本発明を詳しく説明する。
【0029】
図1の図示から燃料電池または電気分解装置内で用いる積層構成10の概略図が見て取れる。
【0030】
図1における図示による積層構成10は、第1ディストリビュータ構造体12、特にバイポーラプレートと第1ガス拡散層14とを備えている。積層構成10内の第1ガス拡散層14の下方に高分子膜16がある。さらに、積層構成10は、第2ガス拡散層18と第2ディストリビュータ構造体20、特に第2バイポーラプレートとを備えている。燃料電池の範囲内および電気分解装置の範囲内で用いることができるこの積層構成10は実質的にこれらの5つの層からなる。燃料電池ではエネルギーを取得するために水素H2と酸素O2が水H2O、電気エネルギー、および熱に変換されるのに対して、電気分解装置内では水が電流の助けによりH2とO2に分解される。
【0031】
図1は、積層構成10を繰り返してスタックを作成することができる積層構成10を示す。
【0032】
図1による図示からさらに、想定される分離線(Trennlinie)36が見て取れ、5つの上記のコンポーネントからなる積層構成10がこの分離線の上方にある。
【0033】
図1がさらに示すように、第1ディストリビュータ構造体12内にO2のための流路26と、例えばH2Oなどの冷却媒体のための冷却路とが形成されている。これと同様に、第2ディストリビュータ構造体20、特に第2バイポーラプレートにおける想定される積層境界(Stapelgrenze)36の上方の積層構成10の下端にガス状のH2のための流路28と、例えばH2Oなどの冷却媒体を収容するための流路30とがある。積層構成10は、ここに完全には示されていない別のガス拡散設備(Gasdiffusionsanlage)23および別の高分子膜24を有する別の積層構成の別のディストリビュータ構造体22上の接触面32に沿って収容されていることを念のため言及しておく。異なる媒体のための流路26、28、30は壁面34によって画定されている。
【0034】
図2による図示からプラスチック部品として製作されたディストリビュータ構造体20の一実施変形形態が見て取れる。
【0035】
図2が示すように、この実施変形形態では第1ディストリビュータ構造体12または第2ディストリビュータ構造体20がプラスチック部品40として製作されている。プラスチック部品40は、グラファイト・プラスチック材料・コンパウンド混合物から射出成形され、プラスチック成分組成によってすでに導電特性を有するものであり得る。他方、プラスチック部品40をプラスチック材料から製作すること、および続いてこのプラスチック部品を電気伝導性の、例えば金属のコーティング38で覆うことも可能である。
【0036】
図2に示されるプラスチック部品40は、実質的に浴槽形状(Wannenform)を有する支持体、例えば分離板42上に収容されている。プラスチック部品40は、その載置面44でこの支持体の、特に分離板42の底46上に収容されているか、または単にこの板に挿入されている。
【0037】
プラスチック部品40は、チャネル構造48を有するか、またはチャネル構造48のチャネルに代わるフローフィールドを有する。プラスチック部品40の、高分子膜16の方を向いた側54に形成されているチャネル構造48は複数の円錐形の先端56を有し、これらの先端の端には小さい接点60がある。チャネル構造48の小さい接点60は、0.1mm
2~1mm
2であり得る接触面積30を有し、それにより高分子膜16の下面50との面接触が形成され得る。プラスチック部品40におけるチャネル構造48の個々の、例えば円錐形に形成される先端56に、
図4に大きく拡大した図示で示唆される電気伝導性コーティング38でコーティングすることもできる。
【0038】
プラスチック部品40のチャネル構造48は、このチャネル構造の、高分子膜16の方に向いた側54で高分子膜16の下面50に接触する。高分子膜16の上面は参照符号52で識別される。チャネル構造48の先端56は、最低限に抑えられた数の小さい接点60へと延びる。小さい接点60は、0.1mm2~1mm2のオーダである接触面積を有することが好ましい。小さい接点60の数および大きさによって、積層構成10の運転中にプロセス水がたまり得る領域が低減される。この領域は、それが燃料電池において用いられるものであれ、電気分解装置において使用されるものであれ、高分子膜16の活性面を低減し、それに伴い積層構成10の全効率を低下させる。この低下は、とりわけ活性面の低減に起因する。
【0039】
小さい接点60の数は、高分子膜16が十分な載置点を具備し、電気抵抗が過度に大きくならない範囲内で低減することができる。チャネル構造48の先端56の小さい接点60は、例えば流れが最適な構造、例えば滴形58のカソード経路に形成することができる。それによって、積層構成10における圧力損失を低減することができ、それに伴い燃料電池においてであれ電気分解装置においてであれ、積層構成10の全効率を著しく向上させることができる。
【0040】
図2による図示から、特に分離板42として形成される支持体の底46の下方に生成水のための流路30があることがさらに見て取れる。
図2は、特に分離板42として形成される支持体が
図2に示された第2ディストリビュータ構造体20、特にバイポーラプレートの接触面32に置かれていることをさらに示す。
【0041】
図3による図示には、ディストリビュータ構造体12、20として、特にバイポーラプレートとして用いられるプラスチック部品40の別の実施可能性が示されている。
【0042】
図3に示されるプラスチック部品40の実施可能性では、プラスチック部品が、例えば取り囲んで形成されるシール64を備え、このシールは、プラスチック40の製造時にこのプラスチック部品に例えば射出成形により取り付けることができる。
【0043】
チャネル構造48は、個々の、例えば円錐形に形成される先端56を備え、これらの先端の端には小さい接点60が形成されている。小さい接点60の数は、最小限の小さい接点60が存在する一方で、高分子膜16がプラスチック部品40と接触するための載置点をなお十分に有するように量定されている。さらに、
図3による図示にはシール66が示されている。特に分離板42として形成される支持体の底46の各側にあるシール66により、支持体がその下に位置するディストリビュータ構造体12、20、特にバイポーラプレートに対して密封されている。特に分離板42として形成される支持体は、分離板42として形成される支持体の下に配置された第2ディストリビュータ構造体20、特にバイポーラプレートの個々の接触面32に置かれている。この接触面において、発生する生成水のための流路30が延びている。
【0044】
図3による図示において示される取り囲むシール64、もしくは第1または第2ディストリビュータ構造体12、20、特にバイポーラプレートに対するシール66は、2成分射出成形法で、プラスチック部品40の製造時に直接製造することができ、それにより取り囲むシール64、もしくは第1または第2ディストリビュータ構造体12、20、特にバイポーラプレートに対するシール66を製造する別の作業工程が不要になる。
【0045】
プラスチック部品40に関して、その電気伝導性は、選択されるグラファイトおよびプラスチックとの材料混合物によって生成され、この場合、電気伝導性は、グラファイトを加えて混合することによって達成される。電気抵抗が高すぎる場合には、プラスチック材料が、要求される電気抵抗に応じて追加的または金属でのみコーティングされ得る。
【0046】
図4による大きく拡大された図示から、プラスチック部品40が、任意に連続する例えば円錐形の先端56によって実質的に与えられるチャネル構造48を有することが見て取れる。
図4による大きく拡大された図示で示されるように、プラスチック部品40の、高分子膜16の方を向いた側54、特にチャネル構造48の先端56には、電気抵抗に影響を及ぼすために電気伝導性コーティング38、特に金属コーティングが施され得る。高分子膜16は下面50および上面52を有し、高分子膜16の下面50はプラスチック部品40の、高分子膜の方を向いた側54に向いている。
【0047】
図5および
図6は、ディストリビュータ構造体12、20、22、特にバイポーラプレートの詳細を示す。例えば
図5から見て取れるように、チャネル構造48は、実質的に互いに平行に延在する複数のチャネルから形成され得る。さらに、チャネル構造48はネップ状の(noppenfoermig)隆起62を備えることができ、同様に
図5に模式的に示唆される。
図6による切断して示される図示から、ここに大きく拡大した図で示される、小さい接点60が流体技術的に特に有利な滴形状58を有することがわかる。
図5および
図6に示されるディストリビュータ構造体12、20、22の面と比較して、チャネル構造48とネップ62と滴形状58の接点60とが大きく拡大した描写で示されている。
【0048】
本発明は、本明細書中に記載される実施例、およびその中で強調される態様に限定されない。むしろ、請求項によって記載される範囲内で当業者が通常行う範囲の多数の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 積層構成
12、20、22 ディストリビュータ構造体
16 高分子膜
26、28、30 流路
32 接触面
34 壁面
38 コーティング
40 プラスチック部品
42 分離板
44 載置面
46 底
48 チャネル構造
50 下面
52 上面
54 プラスチック部品40の、高分子膜の方を向いた側
56 先端
58 滴形状
60 接点
62 ネップ、ネップ状隆起
64、66 シール