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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】マイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/80 20060101AFI20221220BHJP
   A01N 25/28 20060101ALI20221220BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20221220BHJP
   A01N 47/12 20060101ALI20221220BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20221220BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221220BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A01N43/80 102
A01N25/28
A01N43/653 G
A01N47/12 Z
A01P1/00
A01P3/00
A01P7/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021535137
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085237
(87)【国際公開番号】W WO2020126967
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】18213638.2
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・ウーア
(72)【発明者】
【氏名】カトリン・モヴス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・セイムズ
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0099793(US,A1)
【文献】特表2017-507952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)カプセル物質としての少なくとも1種のメラミン-ホルムアルデヒドポリマー、並びに
b)殺生物剤として、少なくとも以下のもの
b1)2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT、及び
b2)プロピコナゾール及び/又は3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、
を含む、マイクロカプセルであって、
OITの、プロピコナゾール及び/又はIPBCの合計量に対する重量比が、5:1から1:5までであることを特徴とする、
マイクロカプセル。
【請求項2】
カプセル物質a)の、成分b)の殺生物剤に対する重量比が、1:4から4:1までであることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
カプセル物質a)の、成分b)の殺生物剤に対する重量比が、1:4から1:1.5までであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
成分b)の殺生物剤として、少なくともb1)OIT及びb2)プロピコナゾールを含む、請求項1~3の少なくとも1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
前記成分b)の殺生物剤が、99重量%を超える程度で、OIT及びプロピコナゾールからなることを特徴とする、請求項1~4の少なくとも1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
成分b)の殺生物剤として、少なくともb1)OIT及びb2)IPBCを含む、請求項1~3の少なくとも1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
前記成分b)の殺生物剤が、99重量%を超える程度で、OIT及びIPBCからなることを特徴とする、請求項1~3、又は6の少なくとも1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
前記マイクロカプセルが、0.3~100μmの体積平均粒径を有することを特徴とする、請求項1~3の少なくとも1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
前記カプセル物質がさらに、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、シアナミド樹脂及びジシアナミド樹脂、アニリン樹脂、スルホンアミド樹脂、又はそれらの樹脂の混合物を含むことを特徴とする、請求項1~8の少なくとも1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
少なくとも1種の保護コロイドを含むことを特徴とする、請求項1~8の少なくとも1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを製造するための方法であって、
少なくとも次の工程:
a)メラミン-ホルムアルデヒドポリマーを含むマイクロカプセル化物質を成分b)の殺生物剤の上に析出させる工程、及び次いで
b)形成された前記殺生物剤含有マイクロカプセルを、工程a)における析出温度よりは、少なくとも5℃高い温度で処理する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを含む、殺生物性薬剤。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の前記マイクロカプセルの、殺生物性薬剤としての使用又は殺生物性薬剤中での使用。
【請求項14】
請求項12に記載の殺生物性薬剤、又は請求項1~10のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを含む、産業材料。
【請求項15】
産業材料を保護するための、請求項1~10のいずれか1項に記載のマイクロカプセル、又は請求項12に記載の前記殺生物性薬剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の特定の殺生物剤及び少なくとも1種のメラミン-ホルムアルデヒドポリマーを含むマイクロカプセル、それらを製造するための方法、並びに産業材料を保護するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル化した殺生物剤の手段により、微生物の攻撃から産業材料、たとえばシーリングコンパウンドを保護することは、従来技術からも既に公知である。
【0003】
(特許文献1)((特許文献2))には、殺生物剤として特定のイソチアゾリノン、たとえば、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)を含むシーリングコンパウンドが記載されているが、その殺生物剤は、樹脂からなるマイクロ粒子の中に組みこまれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/080963号
【文献】独国特許出願公開第102006061890A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイクロ粒子のOITの浸出挙動に関しては、依然として改良の余地が残っている。したがって、本発明の目的は、OITの浸出挙動を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
OITを、プロピコナゾール及び/又は3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)に対して特定の混合比とすると、マイクロ粒子のOITの浸出挙動を明らかに低下させることが可能であることが、今や見出された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
したがって、本発明は、
a)カプセル物質としての少なくとも1種のメラミン-ホルムアルデヒドポリマー、並びに
b)殺生物剤としての、以下のものの少なくとも1種、
b1)OIT、及び
b2)プロピコナゾール及び/又は3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、
を含む、マイクロカプセルであって、
OITの、プロピコナゾール及び/又はIPBCの合計量に対する重量比が、5:1から1:5まで、好ましくは1:1から1:5まで、特には1:1.5から1:3までであることを特徴とする、マイクロカプセルを提供する。
【0008】
マイクロカプセル
本発明におけるマイクロカプセルは、好ましくは、0.3~100μmの体積平均粒径を有することを特徴とする。本発明におけるマイクロカプセルが、5~80μmの体積平均粒径を有するのが好ましい。特に好ましくは、本発明におけるマイクロカプセルが、レーザー回折法により体積加重分布として求めたD90値(これについては、実施例のところで説明する)が、好ましくは60μm未満であることをさらに特徴とする。
【0009】
そのマイクロ粒子が、球の形状を有するのが好ましい。前記形状は、小さな表面積で大きな体積を持つ点で有利であり、その結果、小さな濡れ面積を有する水にぶつかる(strike)こととなる。
【0010】
カプセル物質a)
「メラミン-ホルムアルデヒドポリマー」という用語は、好ましくは、適切な条件下で、メラミンをホルムアルデヒドと重縮合させた樹脂を意味すると理解されたい。それらを調製するには、一般的には、メラミンを、過剰モルのホルムアルデヒドと反応させる。
【0011】
本発明におけるマイクロカプセルのマイクロカプセル化物質には、さらにそれに加えて、さらなるアミノプラスト樹脂を含んでいてもよい。アミノプラスト樹脂は、一般的には、カルボニル化合物と、NH基を含む化合物との重縮合反応生成物を意味すると理解されたい。たとえば、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-尿素-ホルムアルデヒド樹脂、又はメラミン-フェノール-ホルムアルデヒド樹脂などである。これに関連して、水混和性があり、高いないしは極めて高い反応性を特に示すメラミン-ホルムアルデヒド樹脂は、特に興味深い。特に好ましいのは、アルキル化されたトリ-若しくはテトラ-エーテルであり、極めて特に好ましいのは、メチル化されたトリ-若しくはテトラ-エーテルである。メラミン-ホルムアルデヒドポリマーに添加することが可能な、さらなる有望なアミノプラスト樹脂は、たとえば、NH基を含む化合物及びアセトアルデヒド又はグリオキサールのアミノプラスト樹脂である。さらには、ウレタン樹脂、シアナミド樹脂及びジシアナミド樹脂、アニリン樹脂、スルホンアミド樹脂、又はそれらの樹脂の混合物を添加することも可能である。それらの樹脂及びそれらの製造方法は、当業者には公知である。
【0012】
好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒドポリマーに、カプセル物質の全重量を基準にして50重量%までの他のアミノプラスト樹脂を添加することもできる。しかしながら、そのカプセル物質が、少なくとも95重量%のメラミン-ホルムアルデヒドポリマーを含むのが好ましく、少なくとも99重量%のメラミン-ホルムアルデヒドポリマーを含めば、特に好ましい。
【0013】
マイクロ粒子の中に成分b)の殺生物剤が取り込まれているために、産業材料たとえば、コーティング組成物の中で使用される場合には、それが、極めて徐々にしか放出されない。さらには、その産業材料が、殺生物的に活性なまま留まるが、その理由は、その活性成分がその物質の中に留まり、そのために、前記活性成分が、相応に低い濃度でしか消費されないことが可能であるからである。実使用時には、その殺生物剤が、抑制された方式でのみ放出される。
【0014】
カプセル物質a)の、成分b)の殺生物剤に対する重量比は、1:4から4:1までであるのが好ましい。
【0015】
本発明における方法の一つの好ましい実施態様においては、殺生物剤b)に対して、カプセル物質a)を不足当量的に(substoichiometrically)使用した場合には、その浸出挙動がさらに改良される可能性があることが見出された。カプセル壁物質の量を減らせば、より高い放出速度、従ってより不十分な浸出挙動が予想されるところであるが、本発明における方法の特に好ましい実施態様においては、カプセル物質a)の、成分b)の殺生物剤に対する重量比が、1:4から1:1.5まで、特には1:4から1:2までである。
【0016】
カプセル壁のための物質の使用量が少ないにも関わらず、この実施態様では、抑制されたOITの放出を観察することができた。
【0017】
殺生物剤b)
国際公開第2008/080963号には、原理的には、OITに加えてさらなる活性成分を広い範囲で併用することが可能であるとの記載があるが、しかしながら、可能な活性成分は、特定の適用領域における、所望される作用機構の観点に基づいてのみ選択される。本発明においては、プロピコナゾール及び/又はIPBCの総計に対して当量的又は不足当量的な量でOITを使用、好ましくは、OITの、プロピコナゾール及び/又はIPBCの総計に対する重量比が5:1から1:5まで、好ましくは1:1から1:5まで、特には1:1.5から1:3までの量で使用すると、浸出挙動において、極めて好ましい効果が得られる。
【0018】
一つの好ましい実施態様においては、使用される成分b)の殺生物剤には、少なくともb1)OIT及びb2)プロピコナゾールが、好ましくはIPBCなしで含まれ、特には、その成分b)の殺生物剤が、99重量%を超える程度、特には100重量%の程度で、OIT及びプロピコナゾールからなる。
【0019】
同様に好ましい実施態様においては、使用される成分b)の殺生物剤には、少なくともb1)OIT及びb2)IPBCが、好ましくはプロピコナゾールなしで含まれ、特には、その成分b)の殺生物剤が、99重量%を超える程度、特には100重量%の程度で、OIT及びIPBCからなる。
【0020】
さらなる添加剤c)
本発明におけるマイクロカプセルは、追加として、さらなる成分を含んでいてもよい。それらが、以下のものであれば好ましい:保護コロイド、特には、成分a)とは異なる水溶性ポリマー、極めて特に好ましくは、ポリアクリレート、部分加水分解したポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテル(tylose)、たとえばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、タンパク質、アラビアゴム、アルギネート、ペクチン、ゼラチン、又は提示したそれらの化合物の混合物。それらの保護コロイドは、マイクロカプセルを基準にして、0.2~5重量%の量で存在させるのが好ましい。これに関連して、存在させる保護コロイドは、カプセルの内側、カプセル壁の中、又はカプセル壁の外側に位置させることができる。使用される保護コロイドが、ポリアクリレート、又はアラビアゴムとポリアクリレートとの混合物であれば、特に好ましい。
【0021】
製造方法
本発明にはさらに、本発明におけるマイクロカプセルを製造するための方法が包含されるが、それは、少なくとも次の工程が含まれることを特徴とする:
a)メラミン-ホルムアルデヒドポリマーを含むマイクロカプセル化物質を成分b)の殺生物剤の上に析出させる工程、及び次いで
b)形成されたその殺生物剤含有マイクロカプセルを、工程a)における析出温度よりは、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、特には少なくとも20℃高い温度で処理する工程。
【0022】
工程a)
本発明におけるマイクロカプセルを製造するための方法においては、たとえば、水の中、又は水とは混和性のない溶媒の中で、成分b)の殺生物剤を使用し、次いでそれを分散させることが可能である。本発明におけるマイクロカプセルを製造する際に、成分b)の殺生物剤の水性のサスペンション又はエマルションを使用するのが好ましい。
【0023】
好ましくは、これに関連して、成分b1)及びb2)の殺生物剤を最初に、特には、たとえば先に記述したような少なくとも1種の成分c)の保護コロイド、好ましくはポリアクリレート、及び場合によっては、アラビアゴムのようなさらなる保護コロイドと共に、水含有仕込み物の中に仕込む。前記仕込み物は、50~85℃、特には55~75℃の温度に調節するのが好ましい。
【0024】
成分a)を添加するより前に、その仕込み物を、20℃の標準条件下で測定して、0~6.99、好ましくは1.0~4.0、特に好ましくは2.50~3.50、極めて特に好ましくは2.80~3.20の範囲に入るpHに調節しておくのが好ましい。
【0025】
pHは、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、又はクエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、それらの酸性塩又は混合物など、無機酸及び有機酸のいずれを用いて調節してもよい。
【0026】
次いで、たとえばその水溶液の形態にある、メラミン-ホルムアルデヒドポリマーを含むマイクロカプセル化物質を、殺生物剤の上に析出させる目的で、前記仕込み物に添加する。その添加は、30分~24時間の時間をかけて実施するのが好ましい。
【0027】
そのマイクロカプセル化物質は、特には20~85重量%の固形分含量を有する、水溶液の形態で添加するのが好ましい。そのような溶液のpHが、7~11であれば好ましい。
【0028】
その方法には、メラミン-ホルムアルデヒドポリマーを使用することが含まれ、それが、pHの変化で式(I)の化合物の上に析出し、次いで加熱処理され、それによりマイクロカプセルを形成する。それらのメラミン-ホルムアルデヒドポリマーは、たとえばSaduren(登録商標)(BASF AG)、Maprenal(登録商標)(Ineos Melamines)、Resimene(登録商標)(Ineos Melamines)、Cymel(登録商標)(Allnex)、Madurit(登録商標)(Ineos Melamines)、Quecodur(登録商標)(Thor GmbH)として市場で入手可能であるし、或いは、たとえば国際公開第2008/000797A2号に記載されている公知の方法によって、メラミンとホルムアルデヒドとから調製することもまた可能である。
【0029】
さらには、当業者に公知の助剤、たとえば、保護コロイドを、そのメラミン-ホルムアルデヒドポリマーに添加することもできる。
【0030】
メラミン-ホルムアルデヒドポリマーを添加するより前に、十分に完全な混合と高い剪断力の手段を用いて、エマルションを生成させておくのが好ましい。十分に高い剪断力を発生させるためには、ローター・ステーターシステムたとえば、Ultraturrax、Dispermix、Dispermat、超音波、高圧分散器、軸方向流通(axial flow-through)を有するノズルユニット、又は当業者には公知の同様のシステムが、一般的に使用される。
【0031】
好ましくは保護コロイドc)の存在下での、成分b)の殺生物剤の分散体、特にはサスペンション又はエマルションに対する、メラミン-ホルムアルデヒドポリマーの添加は、たとえば、一度に実施してもよいし、或いは、少なくとも1分の時間をかけて、好ましくは30分~24時間の時間をかけて、特に好ましくは1~24時間の時間をかけて、そして極めて特に好ましくは少なくとも2~6時間の時間をかけて実施してもよい。
【0032】
本発明におけるマイクロカプセルを製造するための本発明における方法においては、好適に使用される剪断力を、ポリマー添加の過程で低減するのが好ましい。いかなる科学的理論にも拘束されることを望むものではないが、エマルションを保持するのに好ましい高い剪断力は、十分に厚いポリマー層の形成を妨げると考えられる。その低減を実施した場合、選択されたローター・ステーターシステムに依存して、どの程度までそれが実施されるかが変化する。
【0033】
本発明におけるマイクロカプセルを製造するための本発明における方法においては、そのメラミン-ホルムアルデヒドポリマーの析出温度は、広い範囲で変化させることができる。好ましくは、その析出を、40~87℃、好ましくは59~85℃の範囲内、特に好ましくは69~83℃の範囲内の温度で実施する。
【0034】
別な方法として、好ましくは水の中に溶解させたメラミン-ホルムアルデヒドポリマーを最初に仕込み物に添加し、その後ではじめて、酸性のpHに設定することによって、成分b)の殺生物剤の表面の上への析出を実現させる。
【0035】
成分b)の殺生物剤の上にマイクロカプセル化物質を析出させるのに好適な条件は、いくつかの予備的な実験で、あまり苦労することなく実験的に決めることができる。
【0036】
工程b)
本発明におけるマイクロカプセルを製造するための本発明における方法においては、それに続けて、加熱処理を実施する。いかなる科学的理論にも拘束されることを望むものではないが、まだ架橋されていないか又はまだ重合されていない基が、加熱処理によって架橋又は重合されると考えられる。メラミン-ホルムアルデヒドポリマーを析出させた後での、その析出させたメラミン-ホルムアルデヒドポリマーの処理は、その析出温度よりも、低温、又は同温、又は高温で実施することができる。撹拌しながら、その処理を実施するのが好ましい。また別な実施態様においては、本発明におけるマイクロカプセルを、化学的に処理することも可能である。
【0037】
さらには、本発明におけるマイクロカプセルの加熱処理は、97℃よりも低温、好ましくは50~95℃、特には70~95℃、極めて特に好ましくは80~90℃で実施するのが好ましい。
【0038】
加熱後処理にかける好ましい時間に関しては、その温度に依存して変化する。たとえば、1~48時間、好ましくは4~24時間、好ましくは8~20時間、それを続けることができる。
【0039】
本発明におけるマイクロカプセルを製造するための本発明における方法においては、成分b)の殺生物剤及びメラミン-ホルムアルデヒドポリマーのサスペンション又はエマルションを、場合によっては助剤、たとえば保護コロイド、又はそうでなければさらなるアミノプラスト樹脂と共に最初に仕込むことも、同様に考えられ、それを加熱して析出温度とし、次いで0~6.99の上述のpHに設定するだけで、樹脂が沈殿する。
【0040】
本発明におけるマイクロカプセルを製造するための本発明における方法は、各種所望の圧力で実施することができる。本発明におけるマイクロカプセルを製造するための本発明における方法を、周囲圧力で実施するのが好ましい。
【0041】
本発明におけるマイクロカプセルは、たとえば、当業者には公知の方法で、助剤、調製ずみの(in-can)防腐剤、及び増粘剤を添加することによって、後処理なしで、サスペンションに転換させることが可能である。これに関連して、そのようにして得られる水性配合物のpHを、pH7~10、好ましくは8~9に調節するのが好ましい。
【0042】
また別な実施態様においては、本発明におけるマイクロカプセルを、製造後に、たとえば濾過によって単離し、室温又は穏やかに加熱することによって乾燥させることも可能である。しかしながら、噴霧乾燥又は凍結乾燥によって、マイクロカプセル化物質を乾燥及び単離させるということもまた可能である。本発明におけるマイクロカプセルを、濾過によって分離してから乾燥させるのが好ましい。
【0043】
本発明におけるマイクロカプセルは、殺生物性、特には殺真菌性の薬剤の中又はそのような薬剤として、使用するのに特に適する。したがって、本発明にはさらに、本発明におけるマイクロカプセルを含む殺生物性薬剤、さらには殺生物性薬剤として又は殺生物性薬剤の中における、本発明によるマイクロカプセルの使用もまた包含される。
【0044】
本発明におけるマイクロカプセルは、真菌に対する、高い効能及び広範な活性スペクトルの点で優れている。
【0045】
例として、以下の属の微生物が挙げられる:
アルテルナリア属(Alternaria sp.)、たとえばA・テヌイス(A.tenuis)、
アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、たとえば、A・ニガー(A.niger)、A・ウスツス(A.ustus)、
カエトミウム属(Chaetomium sp.)、たとえばC・グロボスム(C.globosum)、
コニオフォラ属(Coniophora sp.)、たとえばC・プエタナ(C.puetana)、
レンチヌス属(Lentinus sp.)、たとえばL・トリグリヌス(L.tigrinus)、
ペニシリウム属(Penicillium sp.)、たとえばP・グラウクム(P.glaucum)、P・シトリヌム(P.citrinum)、P・ブレビカウレ(P.brevicaule)、
ポリポルス属(Polyporus sp.)、たとえばP・ベルシコロル(P.versicolor)、
オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)、たとえばA・プルランス(A.pullulans)、
スクレロフォーマ属(Sclerophoma sp.)、たとえばS・ピティオフィラ(S.pityophila)、
トリコデルマ属(Trichoderma sp.)、たとえばT・ビリデ(T.viride)、
クラドスポリウム属(Cladosporium sp.)、たとえばC・ヘルバルム(C.herbarum)、
スタキボトリス属(Stachybotrys sp.)、たとえばS・カルタルム(S.chartarum)、
ペシロミセス属(Paecilomyces sp.)、たとえばP・バリオティイ(P.variotii)、
ゲオトリクム属(Geotrichum sp.)、たとえばG・カンジドゥム(G.candidum)、
フザリウム属(Fusarium sp.)、たとえば、F・ソラニ(F.solani)。
【0046】
本発明における殺生物性薬剤は、各種所望の配合物の中で、たとえば分散体、粉体、又は顆粒の形態で存在させることができる。
【0047】
原理的には、好ましいタイプの剤形は本質的に、目的とする用途と、それに必要とされる物理的性質とに依存する。しかしながら、これらのことは公知であるので、当業者は通常、いくつかの実験で、好ましいタイプの剤形を確認する。
【0048】
それらの配合物にはさらに追加として、たとえば以下のような物質を含んでいてよい:安定剤、調製ずみの防腐剤、及びさらなる殺生物剤、たとえば殺真菌剤、殺藻剤、殺虫剤、ダニ駆除剤、線虫駆除剤、ラジサイド(radicide)、及び除草剤、又はそれらの混合物、好ましくは殺真菌剤又は殺藻剤又はそれらの混合物、極めて特に好ましくは殺藻剤。
【0049】
殺生物性薬剤には、本発明によるマイクロカプセルに加えて、場合によっては各種の助剤をさらに含むこともできる。以下に列記する助剤においては、それぞれの場合において、互いに独立して、それらが存在しないという可能性もある。可能な添加物としては、たとえば、以下のものが挙げられる:
・ 界面活性物質、たとえば、界面活性剤。界面活性剤は、たとえば、ノニオン性、カチオン性及び両性の界面活性剤としてよいが、アニオン性界面活性剤であるのが好ましい。アニオン性界面活性剤はたとえば、以下のものである:アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアリールスルホネート、アルキルスクシネート、アルキルスルホスクシネート、N-アルコイルサルコシネート、アシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルエーテルカルボキシレート、アルファ-オレフィンスルホネート、特には、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、たとえば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びアンモニウム及びトリエタノールアミン塩。アルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルホスフェート及びアルキルエーテルカルボキシレートは、それぞれの場合において、1~10個の間のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド単位、好ましくは1~3個のエチレンオキシド単位を有することができる。好適な例としては、以下のものが挙げられる:ナトリウムラウリルスルフェート、アンモニウムラウリルスルフェート、ナトリウムラウリルエーテルスルフェート、アンモニウムラウリルエーテルスルフェート、ナトリウムラウリルサルコシネート、ナトリウムオレイルスクシネート、アンモニウムラウリルスルホスクシネート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、トリエタノールアミンドデシルベンゼンスルホネート。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、たとえば0.01~10重量%、好ましくは0.2~8重量%、特に好ましくは0.3~5重量%、極めて特に好ましくは0.5~3重量%の界面活性物質を含むことができる。
・ 消泡剤。使用される消泡剤は、一般的に、表面活性剤溶液中にほんのわずかしか溶解しない界面活性物質である。好ましい消泡剤は、天然油脂から誘導されたもの、石油誘導体、又はシリコーン流体である。
・ 濡れ剤、たとえば以下のもの:芳香族スルホン酸、たとえばリグノ-、フェノール-、ナフタレン-及びジブチルナフタレン-スルホン酸、及び脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩、アルキル-及びアルキル-アリールスルホネート、アルキル、ラウリルエーテル、及び脂肪族アルコールのスルフェート、及びスルフェート化ヘキサ-、ヘプタ-、及びオクタ-デカノールの塩、又は脂肪族アルコールグリコールエーテル、スルホン化ナフタレン及びその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチル-、オクチル-若しくはノニル-フェノール、アルキルフェノール-若しくはトリブチルフェニル-ポリグリコールエーテル、トリス-ステリルフェニルエーテルエトキシレート、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル若しくはポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグノ亜硫酸パルプ廃液、又はメチルセルロース。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、たとえば0.01~8重量%、好ましくは0.2~6重量%、特に好ましくは0.3~5重量%、極めて特に好ましくは0.5~3重量%の濡れ剤を含むことができる。
・ 乳化剤、たとえば以下のもの:鎖長C10~C20の直鎖状脂肪族カルボン酸のナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩、ヒドロキシオクタデカンスルホン酸ナトリウム、鎖長C10~C20のヒドロキシ脂肪酸のナトリウム、カリウム、及びアンモニウム塩並びにそれらのスルフェート化又はアセチル化反応生成物、アルキルスルフェート、さらにはトリエタノールアミン塩、アルキル-(C10~C20)-スルホネート、アルキル-(C10~C20)-アリールスルホネート、塩化ジメチルジアルキル-(C~C18)-アンモニウム、アシル、アルキル、オレイル、及びアルキルアリールオキシエチラート及びそれらの硫酸化反応生成物、スルホコハク酸と鎖長C~C16の脂肪族飽和一価アルコールとのエステルのアルカリ金属塩、スルホコハク酸の、鎖長C10~C12の一価脂肪族アルコールのポリエチレングリコールエーテルとの4-エステル(二ナトリウム塩)、スルホコハク酸のポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルとの4-エステル(二ナトリウム塩)、スルホコハク酸のビス-シクロヘキシルエステル(ナトリウム塩)、リグノスルホン酸及びそれのカルシウム、マグネシウム、ナトリウム及びアンモニウム塩、20個のエチレンオキシド基を含むポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、樹脂酸、水素化及び脱水素化樹脂酸及びそのアルカリ金属塩、ドデシル化ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、並びにエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの(エチレンオキシドの最小含量が10重量%の)コポリマー。使用するのに好適な乳化剤は以下のものである:ナトリウムラウリルスルフェート、ナトリウムラウリルエーテルスルフェート、エトキシル化(3エチレンオキシド基);オレイルアルコールのポリエチレングリコール(4~20)エーテル、及びノニルフェノールのポリエテンオキシド(4~14)エーテル。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、たとえば0.01~15重量%、好ましくは0.02~8重量%、特に好ましくは0.05~6重量%、極めて特に好ましくは0.1~5重量%の乳化剤を含むことができる。
・ 分散剤、たとえば、アルキルフェノールポリグリコールエーテル。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、たとえば0.01~15重量%、好ましくは0.02~8重量%、特に好ましくは0.05~6重量%、極めて特に好ましくは0.1~5重量%の分散剤を含むことができる。
・ 安定剤、たとえば、セルロース及びセルロース誘導体。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、たとえば0.01~6重量%、好ましくは0.01~3重量%、特に好ましくは0.01~2重量%、極めて特に好ましくは0.01~1重量%の安定剤を含むことができる。
・ 安定剤、たとえば、抗酸化剤、ラジカル捕捉剤、又はUV吸収剤。
・ 接着剤又は保護コロイド、たとえば、カルボキシメチルセルロース、天然及び合成の粉状体、粒状若しくはラテックス様のポリマー、たとえば、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、及び天然リン脂質、たとえばケファリン及びレシチン、及び合成リン脂質、及びパラフィンオイル。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、たとえば0.01~8重量%、好ましくは0.05~4重量%、特に好ましくは0.2~3重量%、極めて特に好ましくは0.2~2重量%の接着剤を含むことができる。
・ 展着剤、たとえば、イソプロピルミリステート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、たとえば0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、特に好ましくは0.1~5重量%、極めて特に好ましくは0.1~2重量%の展着剤を含むことができる。
・ 芳香剤及び染料、たとえば、無機顔料、たとえば酸化鉄、酸化チタン、プルシアンブルー、並びに有機染料、たとえば、アリザリン、アゾ及びメタロフタロシアニン染料、並びにトレース量の養分、たとえば、鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデン、及び亜鉛の塩。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、それぞれの場合において、0.001~4重量%、好ましくは0.01~1重量%、特に好ましくは0.01~0.8重量%の芳香剤及び染料を含むことができる。
・ 緩衝剤物質、緩衝系又はpH調節剤。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、それぞれの場合において、たとえば0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%の緩衝剤物質、緩衝系又はpH調節剤を含むことができる。
・ 増粘剤、たとえば、多糖類、キサンタンゴム、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸マグネシウム、ヘテロ多糖類、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、又はポリアクリル酸、好ましくはキサンタンゴム。
・ 制塵剤、たとえば、ポリグリコール、及びポリグリコールエーテル。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、それぞれの場合において、たとえば0.01~2重量%、好ましくは0.05~1重量%、特に好ましくは0.1~0.5重量%の制塵剤を含むことができる。
・ 流動剤又は剥離剤としては、たとえば、高度に分散されたシリカ、又は脂肪酸のMg塩を使用することも可能である。固形物の流動性を改良する目的で、本発明における殺生物性薬剤には、この場合、それぞれの場合において、0.01~5重量%、好ましくは0.05~3重量%、特に好ましくは0.1~2重量%の流動剤を含むことができる。
・ 調製ずみの防腐剤(in-can preservative)は、たとえば、殺生物剤、殺菌剤、及び殺真菌剤である。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、それぞれの場合において、たとえば0.01~2重量%、好ましくは0.05~1重量%の調製ずみの防腐剤を含むことができる。
・ 凍結防止剤は、たとえば、尿素、尿素誘導体、及びグリコールである。本発明における殺生物性薬剤には、この場合、それぞれの場合において、たとえば0.01~10重量%、好ましくは0.5~5重量%の凍結防止剤を含むことができる。
【0050】
殺生物性薬剤の中における上述の助剤を合計した含量は、たとえば0.001~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、特に好ましくは0.1~10重量%である。
【0051】
好適な殺生物性薬剤には、固形状配合物、たとえば粉体の混合物又は水分散性の顆粒(WG)が含まれる。マイクロカプセルに加えて、それらには、たとえば以下の固形の助剤がさらに含まれていてもよい:天然の石粉たとえば、カオリン、粘土鉱物、タルク、大理石、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、若しくは珪藻土、又は合成の無機物質たとえば、高分散シリカ、酸化アルミニウム、及びケイ酸塩、又はそれらの混合物。
【0052】
したがって、本発明によれば、第一には、製品を得るために使用される活性成分の量を減らし、そして第二には、かなり長期間にわたって、機能を継続させることが可能となる。
【0053】
固形状配合物は、自体公知の方法、たとえば本発明におけるマイクロカプセルを固形の助剤と密に混合することにより、得ることができる。さらには、液体状配合物を乾燥、たとえば噴霧乾燥させることによって固体状配合物を得ることも可能である。
【0054】
好ましい固体状配合物には、たとえば10~100重量%、好ましくは15~98重量%の本発明におけるマイクロカプセルが含まれる。
【0055】
同様に好ましい殺生物性薬剤としては、液体状配合物たとえば分散体が挙げられるが、それらは、ゲル又はペーストの形態で存在させてもよい。
【0056】
好ましい液体状配合物が水性分散体であるのが好ましい。
【0057】
液体状配合物、たとえば特に分散体は、それ自体公知の方法で、マイクロカプセルを単離することなく、たとえば一般的な配合助剤を添加することによって製造することができる。これに関連して、そのようにして得られる水性配合物のpHを、pH7~10、好ましくは8~9に調節するのが好ましい。別な方法として、たとえば、自体公知の方法で、撹拌機を使用して、マイクロカプセル化させた活性成分と、液体状配合物の中に存在させようとするさらなる物質とを相互に密に混合することにより、それらを製造することも可能である。
【0058】
液体状配合物には、一般的には2~95重量%、好ましくは5~75重量%、極めて特に好ましくは5~50重量%の本発明によるマイクロカプセルが含まれる。それらが、pH7~10のpHを有していれば、同様に好ましい。
【0059】
本発明はさらに、産業材料を保護するための、本発明におけるマイクロカプセル又は本発明における殺生物性薬剤の使用、さらには、本発明における殺生物性薬剤又は本発明におけるマイクロカプセルを含む産業材料も提供する。
【0060】
産業材料の例としては、以下のものが挙げられる:建築材料、木材、エンジニアードウッド、木材-プラスチック複合材料、シーリングコンパウンド、ジョイントシール、プラスチック、フィルム、石板、織物たとえば、防水シート及びテント、織物複合材料、コーティング組成物、たとえば、ペイント、壁用ペイント、外壁ペイント、外部用ペイント、内部用ペイント、エマルション、シリケートペイント、ニス剤、コンクリート、セメント、モルタル若しくはセッコウ、好ましくはシリケート-接着された鉱物質、樹脂-接着若しくはシリコーン-樹脂-接着されたセッコウ、合成樹脂セッコウ、木材コーティング、木材うわぐすり、コンクリートコーティング、屋根タイルコーティング、シーリングコンパウンド、又は織物のコーティング。
【0061】
本発明におけるコーティング組成物のさらなる応用は、建築産業のみならず、医薬産業、織物産業、ゴム産業、シーラント産業、農業、及び実験室技術にも見出される。
【0062】
発明のメリットは、優れた浸出挙動を示す本発明におけるマイクロカプセルに見ることができるが、その理由は、浸出挙動が抑制されると同時に、好ましいことには、カプセル物質のために使用される原料が少なくてすむからである。したがって、本発明において可能なことは、コーティング組成物を保護するために使用される物質量が少ないこと、及びかなり長期間にわたって機能が達成されることの両方である。
【0063】
以下の実施例により、本発明を説明する。
【0064】
実施例
一般的事項
OITを含むマイクロカプセルのための浸出試験手順:
(100gを基準にして)500ppmのOITを含む配合物の量を、100mLのねじ蓋式のガラス容器の中に秤込み、水をつぎ足して100gとした。ねじ蓋式のガラス容器蓋を閉め、20℃、250回転/分のサークラーシェーカー上でサンプルを振盪させた。24時間後に、ピペットを使用して1mLのサンプルを採取し、反応容器へ移した。サンプルを、14000回転/分で6分間の遠心分離にかけ、上澄みを、高速液体クロマトグラフィーの手段により分析した。
【0065】
マイクロカプセルの製造:
マイクロカプセルは、インペラー撹拌機(400~600rpm)を備えた1000mLのフラットフランジポット、及びUltraturrax(乳化のためには16,000~16,200rpm、次いでMaprenalの添加開始時には、0rpm)の中で製造する。
【0066】
以下の実施例においては、次の物質を使用した:
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1~7
手順:
実施例1~7のための活性成分のカプセル(各種のPropi/OIT比、活性成分:樹脂=2.4:1)を以下のようにして製造する:
【0069】
最初に、アラビアゴムの溶液、Coadis(登録商標)BR3の溶液、及び水を、Silfoam(登録商標)SRE消泡剤と共に仕込む。クエン酸溶液(50重量%)を添加することによって、pHを2.99に調節する。その後で、その混合物を加熱して60℃とするが、その間に活性成分のプロピコナゾール及びOITを添加し、Ultraturraxを用いて乳化させる。その混合物が60℃に達したら、Maprenal(登録商標)の水溶液(1:1)を、滴下により、2~3時間かけて添加する。滴下により、Maprenal(登録商標)の水溶液の10%が添加されたら、混合物をインペラー撹拌機を用いて撹拌する。添加が完了したら、混合物を加熱して90℃とし、一夜撹拌する。
【0070】
配合:
冷却して室温としてから、水酸化ナトリウム溶液(50重量%)を添加することによって、pHを調節してpH8とする。0.2%のSoprophor(登録商標)S25、0.2%のPreventol(登録商標)BM5、5%の尿素、及びRhodopol-G(登録商標)を添加すると、均一配合物が得られる。
【0071】
比較例A(OITのみ、活性成分:樹脂=2.4:1):最初に、アラビアゴムの溶液、Coadis(登録商標)BR3の溶液、及び水を、Silfoam(登録商標)SRE消泡剤と共に仕込む。クエン酸溶液(50重量%)を添加することによって、pHを2.99に調節する。その混合物を、1Lのフラットフランジビーカーに移し、60℃までの加熱を開始する。OITを添加し、Ultraturraxを用いて乳化させる。60℃に達したら、Maprenal(登録商標)の水溶液(1:1)を、滴下により、2~3時間かけて添加する。滴下により、Maprenal(登録商標)の水溶液の10%が添加されたら、混合物をインペラー撹拌機を用いて撹拌する。添加が完了したら、混合物を加熱して90℃とし、一夜撹拌する。
【0072】
配合:
冷却して室温としてから、水酸化ナトリウム溶液(50重量%)を添加することによって、pHを調節してpH8とする。0.2%のSoprophor(登録商標)S25、0.2%のPreventol(登録商標)BM5、5%の尿素、及びRhodopol-G(登録商標)を添加すると、均一配合物が得られる。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
実施例8~9のための活性成分のカプセル(各種のIPBC/OIT比、活性成分:樹脂=2.4:1)を以下のようにして製造する:
最初に、アラビアゴムの溶液、Coadis(登録商標)BR3の溶液、及び水を、Silfoam(登録商標)SRE消泡剤と共に仕込む。クエン酸溶液(50重量%)を添加することによって、pHを2.99に調節する。その混合物を加熱して、70℃とする。70℃に達したら、IPBC及びOITを添加し、Ultraturraxを使用し、10,600rpmで乳化させる。その後で、Maprenal(登録商標)の水溶液(1:1)を、滴下により、2~3時間かけて添加する。滴下により、Maprenal(登録商標)の水溶液の10%が添加されたら、はじめて、その混合物を、インペラー撹拌機を用いて撹拌する。添加が完了したら、その混合物を加熱して80℃とし、一夜撹拌する。
【0076】
配合:
冷却して室温としてから、水酸化ナトリウム溶液(50重量%)を添加することによって、pHを調節してpH8とする。0.2%のSoprophor(登録商標)S25、0.2%のPreventol(登録商標)BM5、5%の尿素、及びRhodopol-G(登録商標)を添加すると、均一配合物が得られる。
【0077】
【表4】
【0078】
実施例10:樹脂の増量(Propi/OIT=2:1、樹脂:活性成分=1:1)
以下の物質を使用して、次の実施例におけるマイクロカプセルを調製した。
【0079】
【表5】
【0080】
手順:
最初に、アラビアゴムの溶液、Coadis(登録商標)BR3の溶液、及び水を、Silfoam(登録商標)SRE消泡剤と共に仕込む。クエン酸溶液(50重量%)を添加することによって、pHを2.99に調節する。その後で、OITを添加し、Ultraturrax(16,200rpm)を用いて乳化させる。その混合物を加熱して、60℃とする。プロピコナゾールを添加してから、Maprenal(登録商標)の水溶液(1:1)を、滴下により、2~3時間かけて添加する。滴下により、Maprenal(登録商標)の水溶液の10%が添加されたら、混合物をインペラー撹拌機(500rpm)を用いて撹拌する。添加が完了したら、混合物を加熱して90℃とし、一夜撹拌する。
【0081】
配合:冷却して室温としてから、水酸化ナトリウム溶液(50重量%)を添加することによって、pHを調節してpH8とする。0.2%のSoprophor(登録商標)S25、0.2%のPreventol(登録商標)BM5、5%の尿素、及びRhodopol-G(登録商標)を添加すると、均一配合物が得られる。
【0082】
【表6】
【0083】
結果及び結論:
OITカプセルとPropi/OITカプセルの比較:
上述の方法を使用することによって、活性成分の放出を遅らせる、OITカプセルを製造することが可能であった(比較例A)。驚くべきことには、プロピコナゾールを添加することによって、OITの放出を何倍も遅らせることが可能となった(実施例1~7)。ここで、この効果を特に高めるような、プロピコナゾール対OITの好適な比率が存在するということが見出された。プロピコナゾールの比率をさらに高くすると、そのカプセルは、再び、OITを放出しやすくなってしまう。
【0084】
壁物質対活性成分の変動:
国際公開第2008/080963号には、壁物質対OITの唯一の比率として、1:1の比率が記載されている。当業者は、(壁物質対活性成分の比率が1:1よりも高い)より多くの壁物質を使用すると、樹脂層がより厚くなり、壁物質が少ない場合(壁物質対活性成分の比率が、1:2.4)よりも密なカプセルが得られると予想するであろう。驚くべきことには、そのようなことが起きない。プロピコナゾール/OITのカプセル化での、実施例4と10とから分かるように、より多くの樹脂を使用したカプセルは、樹脂がより少ないものよりも、OITの保持率が低い。