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特許7197715画像処理装置、システム、画像処理方法およびプログラム
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  • 特許-画像処理装置、システム、画像処理方法およびプログラム 図1
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  • 特許-画像処理装置、システム、画像処理方法およびプログラム 図4A
  • 特許-画像処理装置、システム、画像処理方法およびプログラム 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】画像処理装置、システム、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221220BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20221220BHJP
【FI】
H04N5/232 290
G06T7/20
H04N5/232 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021541371
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032342
(87)【国際公開番号】W WO2021033250
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長沼 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】林 正和
(72)【発明者】
【氏名】栗原 洋輔
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0098082(US,A1)
【文献】特表2017-535999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G06T 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期的なスキャンによって撮像された画像に与えられた第1のタイムスタンプ、前記画像の1または複数のピクセルにおける光の強度変化に応じて生成されたイベント信号、および前記イベント信号に与えられ前記第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプに基づいて、前記画像における被写体の動きを推定する動き推定部と、
前記動きに基づいて逆フィルタを生成する逆フィルタ生成部と、
前記逆フィルタを前記画像に適用するフィルタ適用部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記第1のタイムスタンプは、前記スキャンの開始または終了の少なくともいずれかを示すタイムスタンプを含み、
前記動き推定部は、前記スキャンの開始から終了までの時間に含まれる前記第2のタイムスタンプを有する前記イベント信号に基づいて前記画像における被写体の動きを推定する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記動き推定部は、前記画像において被写体の動きが発生した動き領域を推定し、
前記逆フィルタ生成部は、前記動き領域に限定的に作用する前記逆フィルタを生成する、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記動き推定部は、前記画像における被写体の動きを示す動きベクトルを推定し、
前記逆フィルタ生成部は、前記動きベクトルを打ち消す前記逆フィルタを生成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
同期的なスキャンによって画像を撮像し、前記画像に第1のタイムスタンプを与える第1のビジョンセンサと、
前記画像の1または複数のピクセルに対応付けられるセンサを含み、前記センサが光の強度変化を検出したときにイベント信号を生成し、前記イベント信号に前記第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプを与える第2のビジョンセンサと、
前記第1のタイムスタンプ、前記イベント信号、および前記第2のタイムスタンプに基づいて前記画像における被写体の動きを推定する動き推定部、
前記動きに基づいて逆フィルタを生成する逆フィルタ生成部、および
前記逆フィルタを前記画像に適用するフィルタ適用部
を備える画像処理装置と
を含むシステム。
【請求項6】
同期的なスキャンによって画像を撮像し、前記画像に第1のタイムスタンプを与えるステップと、
前記画像の1または複数のピクセルに対応付けられるセンサが前記画像の1または複数のピクセルにおいて光の強度変化を検出したときに、検出した光の強度変化に応じてイベント信号を生成し、前記イベント信号に前記第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプを与えるステップと、
前記第1のタイムスタンプ、前記イベント信号、および前記第2のタイムスタンプに基づいて前記画像における被写体の動きを推定するステップと、
前記動きに基づいて逆フィルタを生成するステップと、
前記逆フィルタを前記画像に適用するステップと
を含む画像処理方法。
【請求項7】
同期的なスキャンによって撮像された画像に与えられた第1のタイムスタンプ、前記画像の1または複数のピクセルにおける光の強度変化に応じて生成されたイベント信号、および前記イベント信号に与えられ前記第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプに基づいて、前記画像における被写体の動きを推定する機能と、
前記動きに基づいて逆フィルタを生成する機能と、
前記逆フィルタを前記画像に適用する機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、システム、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
入射する光の強度変化を検出したピクセルが時間非同期的に信号を生成する、イベント駆動型のビジョンセンサが知られている。イベント駆動型のビジョンセンサは、所定の周期ごとに全ピクセルをスキャンするフレーム型ビジョンセンサ、具体的にはCCDやCMOSなどのイメージセンサに比べて、低電力で高速に動作可能である点で有利である。このようなイベント駆動型のビジョンセンサに関する技術は、例えば特許文献1および特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-535098号公報
【文献】特開2018-85725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、イベント駆動型のビジョンセンサについては、上記のような利点は知られているものの、他の装置、例えばフレーム型ビジョンセンサと組み合わせた利用方法については、まだ十分に提案されているとは言いがたい。
【0005】
そこで、本発明は、イベント駆動型のビジョンセンサをフレーム型ビジョンセンサと組み合わせて用いることによって有利な効果を得ることができる画像処理装置、システム、画像処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある観点によれば、同期的なスキャンによって撮像された画像に与えられた第1のタイムスタンプ、画像の1または複数のピクセルにおける光の強度変化に応じて生成されたイベント信号、およびイベント信号に与えられ第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプに基づいて、画像における被写体の動きを推定する動き推定部と、動きに基づいて逆フィルタを生成する逆フィルタ生成部と、逆フィルタを画像に適用するフィルタ適用部とを備える画像処理装置が提供される。
【0007】
本発明の別の観点によれば、同期的なスキャンによって画像を撮像し、画像に第1のタイムスタンプを与える第1のビジョンセンサと、画像の1または複数のピクセルに対応付けられるセンサを含み、センサが光の強度変化を検出したときにイベント信号を生成し、イベント信号に第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプを与える第2のビジョンセンサとを備える撮像装置が提供される。
【0008】
本発明のさらに別の観点によれば、同期的なスキャンによって画像を撮像し、画像に第1のタイムスタンプを与える第1のビジョンセンサと、画像の1または複数のピクセルに対応付けられるセンサを含み、センサが光の強度変化を検出したときにイベント信号を生成し、イベント信号に第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプを与える第2のビジョンセンサと、第1のタイムスタンプ、イベント信号、および第2のタイムスタンプに基づいて画像における被写体の動きを推定する動き推定部、動きに基づいて逆フィルタを生成する逆フィルタ生成部、および逆フィルタを画像に適用するフィルタ適用部を備える画像処理装置とを含むシステムが提供される。
【0009】
本発明のさらに別の観点によれば、同期的なスキャンによって画像を撮像し、画像に第1のタイムスタンプを与えるステップと、画像の1または複数のピクセルに対応付けられるセンサを含み、センサが光の強度変化を検出したときにイベント信号を生成し、イベント信号に第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプを与えるステップと、第1のタイムスタンプ、イベント信号、および第2のタイムスタンプに基づいて画像における被写体の動きを推定するステップと、動きに基づいて逆フィルタを生成するステップと、逆フィルタを画像に適用するステップとを含む画像処理方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の観点によれば、同期的なスキャンによって撮像された画像に与えられた第1のタイムスタンプ、画像の1または複数のピクセルにおける光の強度変化に応じて生成されたイベント信号、およびイベント信号に与えられ第1のタイムスタンプに同期する第2のタイムスタンプに基づいて、画像における被写体の動きを推定する機能と、動きに基づいて逆フィルタを生成する機能と、逆フィルタを画像に適用する機能とをコンピュータに実現させるためのプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの概略的な構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態におけるカメラ・センサ間のキャリブレーションについて概略的に説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態における画像とイベント信号とのマッチングの例について説明するための図である。
図4A】本発明の一実施形態におけるイベント信号に基づく動きの推定および逆フィルタについて説明するための図である。
図4B】本発明の一実施形態におけるイベント信号に基づく動きの推定および逆フィルタについて説明するための図である。
図4C】本発明の一実施形態におけるイベント信号に基づく動きの推定および逆フィルタについて説明するための図である。
図4D】本発明の一実施形態におけるイベント信号に基づく動きの推定および逆フィルタについて説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態に係る画像処理方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るシステムの概略的な構成を示すブロック図である。図1に示されるように、システム10は、RGBカメラ100と、EDS(Event Driven Sensor)200と、画像処理装置300とを含む。
【0014】
RGBカメラ100は、同期的なスキャンによって画像を撮像する第1のビジョンセンサの例であり、イメージセンサ110と、イメージセンサ110に接続される処理回路120とを含む。イメージセンサ110は、例えば所定の周期で、またはユーザー操作に応じた所定のタイミングで全ピクセルを同期的にスキャンすることによってRGB画像101を撮像する。処理回路120は、例えばRGB画像101を保存および伝送に適した形式に変換する。また、処理回路120は、RGB画像101にタイムスタンプ102を与える。例えば、処理回路120は、RGB画像101に、イメージセンサ110によるスキャンの開始または終了の少なくともいずれかを示すタイムスタンプ102を与える。例えば静止画像の場合、スキャンの開始から終了までの時間は露光時間とも呼ばれる。
【0015】
EDS200は、センサが光の強度変化を検出したときにイベント信号を生成する第2のビジョンセンサの例であり、センサアレイを構成するセンサ210と、センサ210に接続される処理回路220とを含む。センサ210は、受光素子を含み、入射する光の強度変化、より具体的には輝度変化を検出したときにイベント信号201を生成する。入射する光の強度変化を検出しなかったセンサ210はイベント信号201を生成しないため、EDS200においてイベント信号201は時間非同期的に生成される。処理回路220を経て出力されるイベント信号201は、センサ210の識別情報(例えばピクセルの位置)と、輝度変化の極性(上昇または低下)と、タイムスタンプ202とを含む。
【0016】
ここで、本実施形態において、RGB画像101に与えられるタイムスタンプ102と、イベント信号201に与えられるタイムスタンプ202とは同期している。具体的には、例えば、EDS200でタイムスタンプ202を生成するために用いられる時刻情報をRGBカメラ100に提供することによって、タイムスタンプ102をタイムスタンプ202に同期させることができる。あるいは、タイムスタンプ102,202を生成するための時刻情報がRGBカメラ100とEDS200とでそれぞれ独立している場合、特定のイベント(例えば、画像全体にわたる被写体の変化)が発生した時刻を基準にしてタイムスタンプのオフセット量を算出することによって、事後的にタイムスタンプ102とタイムスタンプ202とを同期させることができる。
【0017】
また、本実施形態では、事前に実行されるRGBカメラ100とEDS200とのキャリブレーション手順によって、EDS200のセンサ210がRGB画像101の1または複数のピクセルに対応付けられ、イベント信号201はRGB画像101の1または複数のピクセルにおける光の強度変化に応じて生成される。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態におけるカメラ・センサ間のキャリブレーションについて概略的に説明するための図である。図示された例では、RGBカメラ100とEDS200とで共通の校正パターン21を撮像し(EDS200の場合、例えば光源22を用いて校正パターン21の領域全体を明滅させることによって校正パターンを撮像できる)、RGBカメラ100およびEDS200のぞれぞれの内部パラメータおよび外部パラメータからカメラ・センサ間の対応パラメータを算出することによって、RGB画像101の1または複数のピクセルにセンサ210を対応付けることができる。例えば、上記のようなタイムスタンプの同期およびキャリブレーション手順が予め実施されたRGBカメラ100およびEDS200を組み合わせた撮像装置が提供されてもよい。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態における画像とイベント信号とのマッチングの例について説明するための図である。図示された例では、RGBカメラ100で撮像されたRGB画像101と、RGB画像101のスキャンに対応する時間にEDS200から出力されたイベント信号201をピクセルの位置に配置したものとが示されている。上記で図2を参照して説明したようなカメラ・センサ間の対応パラメータを予め算出しておくことによって、図3に示されるようにRGB画像101の1または複数のピクセルにイベント信号201を対応付ける、つまりRGB画像101にイベント信号201を重ね合わせることが可能になる。
【0020】
再び図1を参照して、画像処理装置300は、例えば通信インターフェース、プロセッサ、およびメモリを有するコンピュータによって実装され、プロセッサがメモリに格納された、または通信インターフェースを介して受信されたプログラムに従って動作することによって実現される動き推定部310、逆フィルタ生成部320、およびフィルタ適用部330の機能を含む。以下、各部の機能についてさらに説明する。
【0021】
動き推定部310は、RGB画像101に与えられたタイムスタンプ102、イベント信号201、およびイベント信号201に与えられたタイムスタンプ202に基づいて、RGB画像101における被写体の動きを推定する。RGB画像101の被写体が動いた場合、例えば被写体のエッジ部分で発生する光の強度変化、具体的には輝度変化がイベント信号201によって検出される。つまり、本実施形態において、動き推定部310はRGB画像101そのものを参照しなくても、イベント信号201に基づいて、RGB画像101における被写体の動きを推定することができる。動き推定部310は、例えば後述する例のように、イベント信号201によって輝度変化が発生したことが示されるピクセルの時系列での位置変化から、RGB画像101において被写体の動きが発生した動き領域、およびRGB画像101における被写体の動きを示す動きベクトルを推定することができる。
【0022】
具体的には、例えば、動き推定部310は、RGB画像101を撮像するためのスキャンの開始から終了までの時間に含まれるタイムスタンプ202を有するイベント信号201に基づいて動きを推定する。ここで、スキャンの開始から終了までの時間は、例えばRGB画像101に与えられた2つのタイムスタンプによって特定される。あるいは、RGB画像101にスキャンの開始または終了のいずれかを示すタイムスタンプしか与えられない場合であっても、スキャンの継続時間が既知であれば、スキャンの開始から終了までの時間を特定することができる。後述するように、例えばスキャンの開始から終了までの時間に発生した被写体の動きに基づいて生成した逆フィルタを適用することによって、被写体の動きによってRGB画像101に発生しているボケの影響を低減することができる。
【0023】
逆フィルタ生成部320は、動き推定部310が推定したRGB画像101における被写体の動きに基づいて逆フィルタ321を生成する。ここで、逆フィルタは、被写体の動きによってRGB画像101に生じた本来の被写体の像からの変化(フィルタ)とは逆の変化(フィルタ)を生じさせることによってRGB画像101を本来の被写体の像に近づけることを意図したフィルタである。フィルタ適用部330は、逆フィルタ321をRGB画像101に適用して出力画像331を得る。後述するように、フィルタ適用部330は、逆フィルタ321の適用によってRGB画像101に生じた変化を補償する(例えば、空白領域を背景を引き伸ばすことによって埋める)ためのフィルタを、別途RGB画像101に適用してもよい。
【0024】
図4A図4Dは、本発明の一実施形態におけるイベント信号に基づく動きの推定および逆フィルタについて説明するための図である。図示された例では、RGB画像101において被写体objが捉えられている。イメージセンサ110によるスキャンの間に被写体objが移動したため、図4Aに示すようにRGB画像101ではボケが発生して被写体objの像が引き伸ばされている。一方、図4Bに示すように、イベント信号201は、RGB画像101のスキャンの開始直後にはピクセル群Pでイベントが発生しており、それが徐々に移動して(ピクセル群P,…,Pn-1)、スキャンの終了直前にはピクセル群Pでイベントが発生していたことを示している。
【0025】
この場合、動き推定部310は、図4Cに示すように、RGB画像101における動き領域Rおよび動きベクトルVを推定する。例えば動き領域Rはスキャンの開始から終了までの間にイベントが発生したピクセル群P,P,・・・,Pn-1,Pを包含する領域(ボケが発生して引き伸ばされた被写体objの像に対応する)であり、動きベクトルVは動きの始点に対応するピクセル群Pの各ピクセルを動きの終点に対応するピクセル群Pの各ピクセルに移動させるベクトルである。上述の通り、RGB画像101の1または複数のピクセルにイベント信号201を生成するセンサ210が対応付けられているため、動き推定部310は動き領域Rおよび動きベクトルVを推定するためにRGB画像101そのものを参照しなくてもよい。
【0026】
上記のような動き領域Rおよび動きベクトルVが推定された場合、逆フィルタ生成部320は、RGB画像101に適用することによって図4Dに示すような出力画像331が得られる逆フィルタ321を生成する。図示された例において、逆フィルタ321は、動き領域R内のピクセルについて限定的に作用して動きベクトルVを打ち消す。具体的には、逆フィルタ321は、動き領域R内のピクセルを動きベクトルVの逆ベクトル-Vに係数kを乗じたベクトル-kVだけ移動させる。係数kは、例えば動きベクトルVの始点(ピクセル群P)では0、終点(ピクセル群P)では1になるように漸増する。出力画像331では、引き伸ばされた被写体objの像が本来の大きさに圧縮され、被写体objの動きによって生じたボケの影響が低減されている。
【0027】
以上で説明したような本発明の一実施形態では、画像処理装置300の動き推定部310が、RGB画像101における被写体の動きをイベント信号201から推定する。イベント信号201はRGB画像101の1または複数のピクセルで光の強度変化が検出された場合にのみ生成されるため、例えば時間的に連続する複数のRGB画像101のピクセル同士を比較して動きを推定する場合に比べて処理を高速化することができる。また、逆フィルタ生成部320が生成する逆フィルタ321はRGB画像101の動き領域Rに限定的に作用するため、例えば動き領域R以外の領域を含むRGB画像101の全体にフィルタを適用する場合に比べてアーティファクトの発生を抑制できる。
【0028】
なお、上記の例で説明されたシステム10は、単一の装置内で実装されてもよいし、複数の装置に分散して実装されてもよい。例えば、RGBカメラ100で取得されるRGB画像101とEDS200で取得されるイベント信号201とが、タイムスタンプ102,202とともにメモリに保存され、後処理として画像処理装置300による動きの推定、逆フィルタ321の生成、および逆フィルタ321の適用が実行されてもよい。あるいは、RGB画像101およびイベント信号201が取得されたときに画像処理装置300における逆フィルタ321の生成までの処理が実行され、逆フィルタ321がRGB画像101とともに保存されてもよい。この場合、RGB画像101の表示時に、例えばユーザーの操作に従って逆フィルタ321をRGB画像101に適用して出力画像331が生成されてもよい。
【0029】
また、上記で図4Dに示された例では、ボケが発生して引き伸ばされた被写体objの像を動きベクトルVの始点側に圧縮する逆フィルタ321が生成されたが、他の例では、被写体objの像を動きベクトルVの終点側、または中間点に圧縮する逆フィルタ321が生成されてもよい。また、イベント信号201に基づいて生成される逆フィルタ321は上記の例には限られず、例えば被写体の動きによって生じたボケの影響を低減するためのフィルタとして知られている各種のフィルタを利用することができる。これらの場合においても、例えば動き推定部310がRGB画像101の動き領域Rを推定し、逆フィルタ生成部320が動き領域Rに限定的に作用する逆フィルタ321を生成することによって、例えばRGB画像101の全体にフィルタを適用する場合に比べてアーティファクトの発生を抑制できる。
【0030】
図5は、本発明の一実施形態に係る画像処理方法の例を示すフローチャートである。図示された例では、RGBカメラ100がRGB画像101を撮像し(ステップS101)、それと同時にEDS200がイベント信号201を生成する(ステップS102)。なお、イベント信号201を生成するステップS102は、RGB画像101の1または複数のピクセルに対応付けられるセンサ210が光の強度変化を検出した場合にのみ実行される。RGB画像101にはタイムスタンプ102が与えられ(ステップS103)、イベント信号にはタイムスタンプ202が与えられる(ステップS104)。
【0031】
次に、画像処理装置300での処理が実行される。まず、動き推定部310が、RGB画像101のタイムスタンプ102、イベント信号201、およびイベント信号201のタイムスタンプ202に基づいてRGB画像101における被写体の動きを推定する(ステップS105)。次に、逆フィルタ生成部320が推定された動きに基づいて逆フィルタ321を生成し(ステップS106)、フィルタ適用部330がRGB画像101に逆フィルタ321を適用する(ステップS107)。以上のような処理によって、例えば被写体の動きによってRGB画像101に発生しているボケの影響を低減した出力画像331を得ることができる。
【0032】
以上、添付図面を参照しながら本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0033】
10…システム、100…RGBカメラ、101…RGB画像、102…タイムスタンプ、110…イメージセンサ、120…処理回路、201…イベント信号、202…タイムスタンプ、210…センサ、220…処理回路、300…画像処理装置、310…動き推定部、320…逆フィルタ生成部、321…逆フィルタ、330…フィルタ適用部、331…出力画像。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5