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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】光ファイバ固定構造及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20221220BHJP
   H01S 3/067 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
G02B6/255
H01S3/067
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021550551
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034662
(87)【国際公開番号】W WO2021070567
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019185278
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020024236
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮吉
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直行
(72)【発明者】
【氏名】中里 弘人
(72)【発明者】
【氏名】及川 靖
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 明理
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103606805(CN,A)
【文献】特開2019-045853(JP,A)
【文献】特開平07-209542(JP,A)
【文献】特開平11-014860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0235171(US,A1)
【文献】国際公開第2016/056659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/02
G02B 6/24-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
G02B 6/46-6/54
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部の被覆を除去することにより第1の被覆除去区間が形成された第1の光ファイバと、
端部の被覆を除去することにより第2の被覆除去区間が形成され、上記第2の被覆除去区間の端部が上記第1の被覆除去区間の端部と光学的に結合する第2の光ファイバと、
一対の側壁及び底壁を有する溝が一方の主面から内部に向かって形成された補強部材と、
上記第1の被覆除去区間の一部を上記一対の側壁及び上記底壁に固定する第1樹脂部材と、
上記第2の被覆除去区間の一部を上記一対の側壁及び上記底壁に固定する第2樹脂部材と、を備え、
上記溝のうち上記底壁を含む部分である底部の横断面形状は、上記底壁から遠ざかるにしたがって上記一対の側壁同士の間隔が拡大される台形状である、
ことを特徴とする光ファイバ固定構造。
【請求項2】
上記一対の側壁同士の間隔は、上記底壁から遠ざかるにしたがって拡大されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ固定構造。
【請求項3】
上記一方の主面の法線と、上記一対の側壁の各々とのなす角をそれぞれ第1傾斜角及び第2傾斜角として、
上記第1傾斜角と上記第2傾斜角との和は、0度よりも大きく、且つ、45度以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ固定構造。
【請求項4】
上記第1の被覆除去区間及び上記第2の被覆除去区間は、上記一対の側壁及び上記底壁の各々から離間しており、
上記第1の被覆除去区間と、上記一対の側壁及び上記底壁の各々との間には、上記第1樹脂部材が介在し、
上記第2の被覆除去区間と、上記一対の側壁及び上記底壁の各々との間には、上記第2樹脂部材が介在している
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の光ファイバ固定構造。
【請求項5】
上記第1樹脂部材の界面のうち上記底壁に対向する界面は、上記第1樹脂部材を構成する樹脂材料と気相との界面であ
上記第2樹脂部材の界面のうち上記底壁に対向する界面は、上記第2樹脂部材を構成する樹脂材料と気相との界面である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の光ファイバ固定構造。
【請求項6】
上記第1樹脂部材及び上記第2樹脂部材を構成する樹脂材料は、熱硬化型樹脂である、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の光ファイバ固定構造。
【請求項7】
上記第1樹脂部材の屈折率は、上記第1の被覆除去区間における最外殻構造の屈折率未満であ
上記第2樹脂部材の屈折率は、上記第2の被覆除去区間における最外殻構造の屈折率未満である、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の光ファイバ固定構造。
【請求項8】
コアと、前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記コアの周囲を覆うクラッドと、前記クラッドの周囲を覆う第1被覆とをそれぞれ含む複数の第1の光ファイバであって、各第1の光ファイバにおける端部の第1被覆を除去することにより第1の被覆除去部が形成された複数の第1の光ファイバと、
コアと、前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記コアの周囲を覆うクラッドと、前記クラッドの周囲を覆う第2被覆とを含む少なくとも1つの第2の光ファイバであって、端部の第2被覆を除去することにより第2の被覆除去部が形成された少なくとも1つの第2の光ファイバと、
前記第1の被覆除去部と前記第2の被覆除去部と前記第1被覆の一部と前記第2被覆の一部とを内部に収容するファイバ溝が第1の表面に長手方向に沿って延びるように形成された補強部材と、
前記複数の第1の光ファイバの前記第1被覆を上記補強部材の前記ファイバ溝内に固定する第1の固定樹脂と、
前記少なくとも1つの第2の光ファイバの前記第2覆を前記補強部材の前記ファイバ溝内に固定する第2の固定樹脂と
を備え、
前記第1の被覆除去部の少なくとも一部は、前記第1の固定樹脂より露出しており、
前記第2の被覆除去部の少なくとも一部は、前記第2の固定樹脂より露出しており、
前記ファイバ溝は、前記補強部材の前記第1の表面から所定の深さに底面を有し、
前記複数の第1の光ファイバの前記第1覆が前記第1の固定樹脂によって固定される部分、又は、前記少なくとも1つの第2の光ファイバの前記第2被覆が第2の固定樹脂によって固定される部分の前記補強部材の断面において、前記ファイバ溝の前記底面の幅は、前記複数の第1の光ファイバのすべての前記第1被覆を包含する最小の円の直径よりも大きく、前記補強部材の前記第1の表面における前記ファイバ溝の間口の幅は、前記ファイバ溝の前記底面の幅よりも大きい、
光ファイバ固定構造。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の光ファイバ固定構造を備えている、
ことを特徴とするレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを補強部材に固定する光ファイバ固定構造に関し、また、このような光ファイバ固定構造を備えたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを補強部材に固定する固定構造が広く用いられている。例えば、特許文献1には、接着剤で光ファイバを耐熱補強材本体(上述した「補強部材」に相当)に固定する補強構造(上述した「固定構造」に相当)が開示されている。この固定構造は、端面同士を突き合わせて融着した光ファイバと、耐熱補強材本体と、を備えている。光ファイバの融着点近傍には、被覆を除去して石英ガラス部を露出させた被覆除去区間が設けられている。耐熱補強材本体は、一方の主面にV字溝が形成された直方体状の部材である。光ファイバは、このV字溝内に配置されており、このV字溝内に充填された接着剤によって耐熱補強部材本体に固定されている。
【0003】
なお、特許文献1に記載の補強構造は、クラッドモードストリッパとしても利用することができる。この場合、光ファイバとして石英ガラス製のクラッドとコアを備える光ファイバを使用し、融着点を含まない光ファイバの被覆除去区間を、光ファイバのクラッドよりも屈折率の高い高屈折率樹脂部材を用いてV字溝に固定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開特許公報「特開平7-209542号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
V字溝内に光ファイバを配置して、樹脂部材を用いて光ファイバをV字溝に固定する構成には、矩形溝内に光ファイバを配置して、樹脂部材を用いて光ファイバを矩形溝に固定する構成と比較して、光ファイバにかかる応力を抑制することができるという利点がある。
【0006】
光ファイバにかかる応力は、光ファイバから出射されるビームのビーム品質を低下させる原因になり得る。したがって、光ファイバにかかる応力は、少ないことが好ましい。
【0007】
その一方で、補強部材にV字溝を形成した場合、一対の主面同士の間隔、すなわち補強部材の厚さが矩形溝の場合と比較して厚くなりやすいという問題がある。
【0008】
図7は、V字溝に関して、側壁の成す角(溝の頂角)θと、溝の幅に対する溝の深さの比との関係を示すグラフである。例えば、側壁の成す角θが45度である場合、溝の幅に対する溝の深さの比は約2.4になる。これは、溝を形成する補強部材の厚みを、溝の幅の約2.4倍よりも大きくする必要があることを意味する。
【0009】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、補強部材の厚みを従来よりも薄くすることが可能な光ファイバ固定構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る光ファイバ固定構造は、一部区間の被覆を除去することにより被覆除去区間が形成された光ファイバと、一対の側壁及び底壁を有する溝が一方の主面から内部に向かって形成された補強部材と、上記被覆除去区間を上記一対の側壁及び上記底壁に固定する樹脂部材と、を備え、上記溝のうち上記底壁を含む部分である底部の横断面形状は、上記底壁から遠ざかるにしたがって上記一対の側壁同士の間隔が拡大される台形状である、ように構成されている。
【0011】
本発明の一態様に係る光ファイバ固定構造は、コアと、上記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記コアの周囲を覆うクラッドと、上記クラッドの周囲を覆う被覆とをそれぞれ含む複数の第1の光ファイバと、コアと、上記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記コアの周囲を覆うクラッドと、上記クラッドの周囲を覆う被覆とを含む少なくとも1つの第2の光ファイバと、上記複数の第1の光ファイバの上記被覆が除去された被覆除去部と上記少なくとも1つの第2の光ファイバの上記被覆が除去された被覆除去部とを内部に収容するファイバ溝が第1の表面に長手方向に沿って延びるように形成された補強部材と、上記複数の第1の光ファイバの上記被覆と前記少なくとも1つの第2の光ファイバの上記被覆とを上記補強部材の上記ファイバ溝内に固定する固定樹脂とを備える。上記ファイバ溝は、上記補強部材の上記第1の表面から所定の深さに底面を有する。上記複数の第1の光ファイバの上記被覆又は上記少なくとも1つの第2の光ファイバの上記被覆が上記固定樹脂によって固定される部分の上記補強部材の断面において、上記ファイバ溝の上記底面の幅は、上記複数の第1の光ファイバのすべての上記被覆を包含する最小の円の直径よりも大きい。上記補強部材の上記第1の表面における上記ファイバ溝の間口の幅は、上記ファイバ溝の上記底面の幅よりも大きい。上記ファイバ溝の上記底面の幅は、上記最小の円の直径の2.5倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。また、上記ファイバ溝の上記間口の幅は、上記ファイバ溝の上記底面の幅の1.5倍以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係るレーザ装置は、本発明の一態様に係る光ファイバ固定構造を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、補強部材の厚みを従来よりも薄くすることが可能な光ファイバ固定構造を実現することができる。また、本発明の一態様によれば、装置内において補強部材が占有するスペースを小さくすることが可能なレーザ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ固定構造の平面図である。(b)及び(c)の各々は、それぞれ、(a)に示した光ファイバ固定構造の縦断面図及び横断面図である。
図2図1に示した光ファイバ固定構造の第1の実施例(溝の側壁の傾斜角の和を30度に設定)において、溝に注入する樹脂材料の濡れ広がり方を示す上面写真(上段)及び断面図である。
図3図1に示した光ファイバ固定構造の第2の実施例(溝の側壁の傾斜角の和を60度に設定)において、溝に注入する樹脂材料の濡れ広がり方を示す上面写真(上段)及び断面図である。
図4図1に示した光ファイバ固定構造の実施例群及び比較例群の各々に関し、光ファイバを配置する溝の側壁の成す角θと、ビーム品質(M増加量)との関係を示すグラフである。
図5図1に示した光ファイバ固定構造の変形例の縦断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るファイバレーザのブロック図である。
図7】従来の光ファイバ固定構造に関し、光ファイバを配置する溝の側壁の成す角θと、溝の幅に対する溝の深さの比との関係を示すグラフである。
図8】本発明の第3の実施形態に係る光コンバイナを模式的に示す平面図である。
図9図8に示した光コンバイナのA-A線断面図である。
図10図8に示した光コンバイナのB-B線断面図である。
図11図8に示した光コンバイナのC-C線断面図である。
図12図8に示した光コンバイナの補強部材を長手方向に垂直な平面で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ固定構造1について、図1を参照して説明する。図1の(a)は、光ファイバ固定構造1の平面図である。図1の(b)及び(c)の各々は、それぞれ、光ファイバ固定構造1の縦断面図及び横断面図である。図1の(a)に示した直線AA’は、光ファイバ2a,2bの中心軸と一致する直線である。図1の(a)に示した直線BB’は、光ファイバ2a,2bの中心軸に対して直交し、且つ、補強部材3の主面31に対して平行な直線である。なお、光ファイバ2a,2bの中心軸及び主面31については、後述する。
【0016】
<光ファイバ固定構造1の構成>
光ファイバ固定構造1は、光ファイバの融着点を含む被覆除去区間を補強部材に固定する固定構造であり、図1に示すように、光ファイバ2a,2bと、補強部材3と、第1樹脂部材4a,4bと、第2樹脂部材5a,5b部材と、を備えている。
【0017】
(光ファイバ2a,2b)
光ファイバ2aは、コア21aと、クラッド22aと、被覆23aとを備えたシングルクラッドファイバである。光ファイバ2bは、コア21bと、クラッド22bと、被覆23bとを備えたシングルクラッドファイバである。光ファイバ2aと光ファイバ2bとは、同一に構成されている。したがって、本実施形態では、光ファイバ2aを例にして、光ファイバ2a,2bについて説明し、光ファイバ2bの説明を省略する。
【0018】
本実施形態の光ファイバ2aにおいて、コア21a及びクラッド22aは、石英を主成分とするガラス製である。コア21a及びクラッド22aの少なくとも何れか一方には、ドーパントを適宜添加されている。これは、コア21aの屈折率がクラッド22aの屈折率を上回るようにするためである。また、クラッド22aは、コア21aの外側面を覆っている。
【0019】
また、本実施形態の光ファイバ2aにおいて、被覆23aは、樹脂製である。被覆23aは、クラッド22aの外側面を覆っている。
【0020】
図1の(a)及び(b)に示すように、光ファイバ2a,2bの端面近傍において、被覆23a,23bは、除去されている。したがって、光ファイバ2a,2bの端面近傍においては、クラッド22a,22bが露出している。そのうえで、光ファイバ2aの端面と、光ファイバ2bの端面とは、コア21aとコア21bとが光学的に結合し、且つ、クラッド22aとクラッド22bとが光学的に結合するように、融着されている。その結果、光ファイバ2aと光ファイバ2bとの界面には、融着点Pが形成されている。このように融着された光ファイバ2a及び光ファイバ2bにおいて、融着点Pの近傍の被覆23a,23bが除去された区間を被覆除去区間Iと称する(図1の(a),(b)参照)。
【0021】
(補強部材3)
本実施形態において、補強部材3は、互いに対向する一対の主面を有する直方体状のブロックをベースにしている。補強部材3の一対の主面のうち一方の主面である主面31には、一対の側壁321,322と、主面31に平行又は略平行である底壁323とを有する溝32が、主面31から補強部材3の内部に向かって形成されている。溝32の横断面形状は、図1の(c)に示すように、底壁323から遠ざかるにしたがって、側壁321と側壁322との間隔(一対の壁同士の間隔)が拡大される台形状である。図1の(c)に示した向きに光ファイバ固定構造1を配置した場合、台形状の上底をなす主面31に形成された開口部の幅は、台形状の下底をなす底壁323の幅を上回る。
【0022】
なお、本発明の一態様においては、溝32のうち、少なくとも底壁323を含む部分である底部の横断面形状が台形状であればよい。
【0023】
本実施形態において、補強部材3は、不透明材料の一例であるアルミナ製である。アルミナは、熱伝導性が良く、線膨張係数が小さく、加工性が良いため、補強部材3の材料として好適である。
【0024】
光ファイバ2a,2bの被覆除去区間Iは、溝32の内部に、底壁323に対して平行又は略平行になるように、且つ、側壁321,322及び底壁323から離間するように載置されている(図1の(b)及び(c)参照)。
【0025】
横断面図において、主面31又は底壁323の法線と側壁321とのなす角を傾斜角θと称し、主面31又は底壁323の法線と側壁322とのなす角を傾斜角θと称する(図1の(c)参照)。傾斜角θ,θは、第1の傾斜角及び第2の傾斜角の一例である。本実施形態においては、傾斜角θ,θとして、θ=θ=15度を採用している。したがって、主面31に形成された開口部であって溝32に対応する開口部を底辺とし、側壁321,322を含む線分を残りの二辺とする仮想的な三角形33は、二等辺三角形である。その頂角θは、傾斜角θと傾斜角θとの和と等しく、本実施形態においてはθ=30度である。ただし、傾斜角θ,θは、15度に限定されず、互いに異なっていてもよい。換言すれば、仮想的な三角形33は、二等辺三角形でなくてもよい。なお、傾斜角θと傾斜角θとの和及び頂角θは、90度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましい。
【0026】
(第1樹脂部材4a,4b)
第1樹脂部材4a,4bの各々は、図1の(c)に示すように、被覆除去区間Iを側壁321,322及び底壁323に対して固定する樹脂部材の一態様である。第1樹脂部材4a,4bは、被覆除去区間Iが側壁321,322及び底壁323から離間した状態で載置されている溝32の内部に、液体状の樹脂材料を注入し、その樹脂材料を硬化させることによって形成される。溝32の内部に注入された樹脂材料は、離間している被覆除去区間Iと側壁321,322及び底壁323の各々との間に介在した状態で硬化する。したがって、第1樹脂部材4a,4bの各々は、被覆除去区間Iと側壁321,322及び底壁323の各々との間に介在している。
【0027】
本実施形態において、第1樹脂部材4aと第1樹脂部材4bとは、同一に構成されている。したがって、本実施形態では、第1樹脂部材4aを例にして、第1樹脂部材4a,4bについて説明し、第1樹脂部材4bの説明を省略する。
【0028】
第1樹脂部材4aの四方を取り囲む界面のうち、底壁323に対向する界面である界面41aは、主面31に形成された開口部において露出している。したがって、界面41aは、第1樹脂部材4aを構成する樹脂材料と、気相(本実施形態では大気AT)との界面である(図1の(c)参照)。
【0029】
第1樹脂部材4aを構成する樹脂材料は、硬化前には流動性を有し、なんらかの処理を施すことによって硬化する樹脂材料であれば如何なる樹脂材料であってもよい。本実施形態においては、第1樹脂部材4aを構成する樹脂材料として熱硬化型樹脂を用いている。第1樹脂部材4aを構成する樹脂材料の例としては、熱硬化型樹脂のほかに紫外線硬化型樹脂及び二液混合硬化型樹脂が挙げられる。なお、二液混合硬化型樹脂は、主剤と硬化剤とにより構成されており、主剤と硬化剤とを混合することにより硬化する樹脂の総称である。
【0030】
なお、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料の粘度であって、硬化前(すなわち加熱される前)の粘度は、限定されるものではないが、例えば、5000mPa・s以下であることが好ましい。
【0031】
第1樹脂部材4a,4bは、少なくとも被覆除去区間Iの一部を側壁321,322及び底壁323に固定する位置に形成されていればよい。しかし、図1の(a)及び(b)に示すように、被覆除去区間Iの一部に加えて被覆23a,23bの一部を側壁321,322及び底壁323に固定する位置に形成されていてもよい。これにより、被覆23a,23bが存在する区間(以下、「被覆区間」とも記載する)と被覆除去区間Iとの境界が第1樹脂部材4a,4bに覆わることになるので、以下のメリットが得られる。すなわち、被覆23a,23bの端面においては、被覆23a,23bの内層が露出している。このため、被覆23a,23bの端面から浸入した水分が被覆23a,23bの内部に浸透し、被覆23a,23bを構成する樹脂の特性を変化させるという問題が生じ得る。しかしながら、被覆区間と被覆除去区間Iとの境界を第1樹脂部材4a,4bで覆えば、被覆23a,23bの端面から水分が浸入することを抑制できるので、このような問題が生じ難くなる。また、光ファイバ2a,2bのクラッド22a,22bを導波された光は、被覆除去区間Iの端部において集中的に漏洩する。このため、被覆除去区間Iの端部において局所的な温度上昇が生じるという問題が生じ得る。しかしながら、被覆区間と被覆除去区間Iとの境界を第1樹脂部材4a,4bで覆えば、被覆除去区間Iの端部における熱伝導性が上がるので、このような問題が生じ難くなる。
【0032】
第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料の屈折率は、光ファイバ固定構造1の用途に応じて適宜選択することができる。本実施形態において、光ファイバ固定構造1は、被覆除去区間Iを溝32に対して固定する機能のみを有し、後述するクラッドモードストリッパとしての機能は、有さない。この場合、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料の屈折率は、樹脂材料を硬化させた状態において、被覆除去区間Iにおける最外殻構造であるクラッド22a,22bを構成するガラス材料の屈折率未満であることが好ましい。
【0033】
なお、本実施形態においては、樹脂部材の一態様として、2つに分割された第1樹脂部材4a,4bを用いている。しかし、樹脂部材の一態様は、これに限定されず、例えば、図5に示すように、1つの樹脂部材4Aを用いてもよいし、3つ以上の樹脂部材を用いてもよい。
【0034】
(第2樹脂部材5a,5b)
第2樹脂部材5a,5bの各々は、それぞれ、被覆23a及び被覆23bの各々を側壁321,322及び底壁323に対して固定する。第2樹脂部材5a,5bは、被覆23a,23bが側壁321,322及び底壁323から離間した状態で載置されている溝32の内部に、液体状の樹脂材料を注入し、その樹脂材料を硬化させることによって形成される。第2樹脂部材5a,5bを構成する樹脂材料は、限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0035】
<光ファイバ固定構造1のまとめ>
上述したように構成された光ファイバ固定構造1において、溝32のうち底壁323を含む底部の横断面形状は、底壁323から遠ざかるにしたがって側壁321,322同士の間隔が拡大される台形状になるように構成されている。
【0036】
溝32のうち少なくとも底部の横断面形状が、特許文献1の図1に記載された補強構造のようにV字型ではなく、台形状であることによって、補強部材3の厚さTを従来よりも薄くすることができる。従来の補強部材においては、その厚さは、図1の(c)に示した仮想的な三角形33の高さHを上回る。したがって、補強部材3は、従来と比較して、その厚さTを少なくとも差分Δの分だけ薄くすることができる。
【0037】
なお、本発明の一態様において、溝32の断面形状は、溝32うち底壁323を含む底部において台形状であればよく、底部以外の領域においては、必ずしも台形状であることを要さない。例えば、溝32の一態様において、側壁321,322の少なくとも何れかのうち底壁323から離れた領域には、側壁321,322の少なくとも何れかから突出した突起が形成されていてもよい。
【0038】
また、側壁321,322同士の間隔は、底壁323から遠ざかるにしたがって拡大されていることが好ましい。換言すれば、溝32の横断面形状は、溝32の全領域に亘って台形状又は略台形状であることが好ましい。この構成によれば、第1樹脂部材4a,4bが被覆除去区間Iに及ぼし得る応力を溝32の外部に逃がしやすい。なお、台形状とは図1に示した溝32のように、傾斜角θ及び傾斜角θが一定である形状を意味する。一方、略台形状とは、台形状のように2つの脚に対応する側壁321,322を有する形状であって、傾斜角θ及び傾斜角θの少なくとも何れか一方が、一定ではない形状を意味する。
【0039】
したがって、光ファイバ固定構造1は、従来と比較して、光ファイバ2a又は光ファイバ2bの融着点Pと逆側の端部から出射されるビームのビーム品質を同程度に保つことができる。
【0040】
また、上述したように、傾斜角θと傾斜角θとの和は、0度よりも大きく、且つ、90度以下であることが好ましく、0度よりも大きく、且つ、45°以下であることが更に好ましい。
【0041】
この構成によれば、第1樹脂部材4a,4bを形成する樹脂材料を溝32の内部に注入するときに、上記和が90度を上回る場合と比較して、上記樹脂材料を溝32の外部に漏れ出させることなく上記樹脂材料を注入することが容易である。
【0042】
なお、傾斜角θと傾斜角θとの和は、45度以下であることがより好ましい。この構成によれば、上記樹脂材料を溝32の外部に漏れ出させることなく上記樹脂材料を注入することが更に容易である。また、溝32の長手方向に対して上記樹脂材料が濡れ広がる範囲を調整することが容易になる。
【0043】
また、光ファイバ固定構造1において、被覆除去区間Iは、側壁321,322及び底壁323の各々から離間しており、これらの間には、第1樹脂部材4a,4bが介在していることが好ましい。
【0044】
被覆除去区間Iが側壁321,322及び底壁323の少なくとも何れかと接触している場合、被覆除去区間Iを側壁321,322及び底壁323に固定するまでの期間中に、被覆除去区間Iの外側面が傷つく可能性がある。被覆除去区間Iの外側面に形成された傷は、被覆除去区間Iの強度を低下させる可能性があり、光ファイバ2a,2bにおける伝送不良の原因になり得る。光ファイバ固定構造1によれば、被覆除去区間Iが溝32の何れの部分とも接しない。そのため、光ファイバ固定構造1は、補強部材3に固定された被覆除去区間Iの信頼性、換言すれば、光ファイバ2a,2bの信頼性を高めることができる。
【0045】
また、界面41a,41bは、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料と気相との界面であることが好ましい。
【0046】
この構成によれば、溝32の内部に設けられた第1樹脂部材4a,4bは、密閉されておらず、上記気相(例えば大気)に対して開放されている。そのため、外部環境の温度変化に起因して第1樹脂部材4a,4bの体積が膨張又は収縮する場合に、第1樹脂部材4a,4bが密閉されている場合と比較して、第1樹脂部材4a,4bの体積の変化は、外部からの制約を受けない。したがって、光ファイバ固定構造1は、外部環境の温度変化に起因して生じた応力を溝32の外部に逃がしやすい。したがって、光ファイバ固定構造1は、外部環境の温度変化に起因して生じ得る上記ビーム品質の低下を抑制することができる。
【0047】
また、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料は、熱硬化型樹脂であることが好ましい。
【0048】
熱硬化型樹脂は、紫外線硬化樹脂又は二液混合硬化型樹脂と比べて、様々な特性を有する多様な製品が市場に流通している樹脂材料である。したがって、上記の構成によれば、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料として、各種要求を満たす樹脂材料を市場から調達することが容易になる。なお、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料に対する要求としては、例えば、以下の要求が挙げられる。すなわち、第1樹脂部材4a,4bは、石英を主成分とする光ファイバ2a,2bを覆うものであることから、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料には、屈折率が1.4を下回る低屈折率性が要求される場合がある。また、第1樹脂部材4a,4bには、光ファイバ2a,2bから漏洩したパワーの大きい光が入射し得ることから、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料には、光ファイバ2a,2bを導波される光の波長に対する透明度が高く、且つ、耐熱性に優れていることが要求される場合がある。また、第1樹脂部材4a,4bの体積変化に起因して光ファイバ2a,2bに作用する側圧を低減するために、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料には、低ヤング率であることが要求される場合がある。
【0049】
また、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料の粘度であって、硬化前の粘度は、5000mPa・s以下であることが好ましい。
【0050】
この構成によれば、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料における硬化前の粘度が5000mPa・sを上回っている場合と比較して、光ファイバ2a,2bが配置された溝32の内部に樹脂材料(硬化前の液体の樹脂材料)を注入することが容易になる。
【0051】
<実施例>
図1に示した光ファイバ固定構造1の実施例について、図2図4を参照して説明する。
【0052】
図2は、光ファイバ固定構造1の第1の実施例において、溝に注入する樹脂材料の濡れ広がり方を示す上面写真(上段)及び断面図である。第1の実施例は、傾斜角θ,θとして、θ=θ=15度を採用している。すなわち、頂角θとして、θ=30度を採用している。
【0053】
図3は、光ファイバ固定構造1の第2の実施例において、溝に注入する樹脂材料の濡れ広がり方を示す上面写真(上段)及び断面図である。第2の実施例は、傾斜角θ,θとして、θ=θ=30度を採用している。すなわち、頂角θとして、θ=60度を採用している。
【0054】
図4は、光ファイバ固定構造1の実施例群及び比較例群の各々に関し、傾斜角θ,θの和(すなわち頂角θ)と、ビーム品質(M増加量)との関係を示すグラフである。光ファイバ固定構造1の実施例群においては、傾斜角θ,θの和を10度以上90度以下の範囲内において変化させた。光ファイバ固定構造の比較例群においては、補強部材の一方の主面に形成された溝であって光ファイバを収容する溝として、傾斜角θ,θがθ=θ=0度であって、横断面形状が矩形である溝を用いている。
【0055】
図2及び図3は、第1樹脂部材4a,4bの樹脂材料として、硬化前の粘度が5000[mPa・s]の熱硬化樹脂を用いた第1の実施例及び第2の実施例を用いて、傾斜角θ,θとの和が樹脂材料の濡れ広がり方に与える影響を確認した実験結果である。第1の実施例においては、傾斜角θと傾斜角θとの和を45度よりも小さい30度に設定している。このため、溝32の長手方向に対して樹脂材料が濡れ広がる範囲が小さくなり、その結果、被覆23aの端部を樹脂材料で覆うことができた。一方、図3に示した第2の実施例においては、傾斜角θと傾斜角θとの和を45度よりも大きい60度に設定している。このため、溝32の長手方向に対して樹脂材料が濡れ広がる範囲が大きくなり、その結果、被覆23aの端部を樹脂材料で覆うことができていない。
【0056】
また、図4を参照すれば、実施例群の各光ファイバ固定構造1は、比較例群の各光ファイバ固定構造と比較して、ビーム品質が良好になることが分かった。
【0057】
(変形例)
図1に示した光ファイバ固定構造1の変形例である光ファイバ固定構造1Aについて、図5を参照して説明する。図5は、光ファイバ固定構造1における図1の(b)に対応する図面であり、光ファイバ固定構造1Aの縦断面図である。上述した光ファイバ固定構造1が、光ファイバの被覆除去区間のうち、融着点を含む被覆除去区間を補強部材に固定する固定構造であるのに対して、本変形例に係る光ファイバ固定構造1Aは、光ファイバの被覆除去区間のうち、融着点を含まない被覆除去区間を補強部材に固定する固定構造である。
【0058】
光ファイバ固定構造1Aは、(1)光ファイバ固定構造1が備えていた光ファイバ2a,2bの代わりに光ファイバ2Aを備え、且つ、(2)光ファイバ固定構造1が備えていた第1樹脂部材4a,4bの代わりに第1樹脂部材4Aを備えている。したがって、本変形例では、光ファイバ固定構造1Aを構成する各部材のうち、光ファイバ2A及び第1樹脂部材4Aについて説明し、それら以外の部材については、その説明を省略する。なお、光ファイバ固定構造1Aを構成する各部材のうち、光ファイバ2A及び第1樹脂部材4A以外の部材については、光ファイバ固定構造1を構成する各部材と同じ符号を付している。
【0059】
なお、光ファイバ固定構造1Aにおいては、光ファイバ2Aを補強部材3の溝32に固定するための第1樹脂部材4Aとして、被覆除去区間Iにおける光ファイバ2Aの最外殻構造(後述する内側クラッド221A)よりも屈折率の高い樹脂を用いている。このため、光ファイバ固定構造1Aは、被覆除去区間Iを側壁321,322及び底壁323に固定しつつ、内側クラッド221Aを伝搬するモードであるクラッドモード光を、内側クラッド221Aの外部へ漏れ出させることによって、クラッドモードストリッパとして機能する。
【0060】
(光ファイバ2A)
光ファイバ2Aは、コア21Aと、クラッド22Aと、被覆23とを備えている。クラッド22Aは、コア21Aの側面を覆う内側クラッド221Aと、内側クラッド221Aの外側面を覆う外側クラッド222Aとにより構成されている。すなわち、光ファイバ2Aは、ダブルクラッドファイバである。
【0061】
光ファイバ2Aにおいて、コア21A及び内側クラッド221Aは、石英を主成分とするガラス製である。コア21A及び内側クラッド221Aのうち少なくとも何れか1つには、ドーパントを適宜添加されている。これは、コア21Aの屈折率を内側クラッド221Aの屈折率よりも高くするためである。また、本変形例の光ファイバ2Aにおいて、外側クラッド222A及び被覆23Aは、樹脂製である。外側クラッド222Aの樹脂材料としては、内側クラッド221Aよりも屈折率の低い樹脂材料が選択されている。
【0062】
図5に示すように、光ファイバ2Aの一部区間である被覆除去区間Iにおいて、外側クラッド222A及び被覆23Aは、除去されている。したがって、被覆除去区間Iにおいては、内側クラッド221Aが露出している。
【0063】
(第1樹脂部材4A)
第1樹脂部材4Aは、図5に示すように、被覆除去区間Iを溝32の側壁321,322及び底壁323に対して固定する樹脂部材の一態様である。第1樹脂部材4Aは、第1樹脂部材4a,4bの場合と同様に、被覆除去区間Iが側壁321,322及び底壁323から離間した状態で載置されている溝32の内部に、液体状の樹脂材料を注入し、その樹脂材料を硬化させることによって形成される。
【0064】
すなわち、光ファイバ固定構造1の製造方法は、被覆除去区間Iを溝32の内部に、被覆除去区間Iが側壁321,322及び底壁323から離間した状態で載置する載置工程と、被覆除去区間Iが載置されている溝32の内部に液体状の樹脂材料を注入する注入工程と、溝32の内部に注入された樹脂材料を硬化させる硬化工程と、を含んでいる。
【0065】
溝32の内部に注入された樹脂材料は、離間している被覆除去区間Iと側壁321,322及び底壁323の各々との間に介在した状態で硬化する。したがって、第1樹脂部材4Aは、被覆除去区間Iと側壁321,322及び底壁323の各々との間に介在している。
【0066】
なお、本変形例において、第1樹脂部材4Aは、被覆除去区間Iの全区間に亘って、内側クラッド221Aの外側面を覆っている。
【0067】
第1樹脂部材4Aは、第1樹脂部材4aと第1樹脂部材4bと比較して、樹脂材料を硬化させた状態における屈折率が異なる。より詳しくは、樹脂材料を硬化させた状態において、第1樹脂部材4Aを構成する樹脂材料は、その屈折率が、被覆除去区間Iにおける最外殻構造である内側クラッド221Aを構成するガラス材料の屈折率以上となるように構成されている。
【0068】
この構成によれば、光ファイバ固定構造1Aは、クラッドモードストリッパとして機能する。したがって、光ファイバ固定構造1Aは、従来と比較して、光ファイバから出射されるビームのビーム品質を同程度に保ちつつ、補強部材の厚さを抑制可能なクラッドモードストリッパを提供することができる。
【0069】
第1樹脂部材4Aを構成する樹脂材料は、上述した屈折率における差異を除いて、第1樹脂部材4a,4bを構成する樹脂材料と同様に構成されている。
【0070】
第1樹脂部材4Aの四方を取り囲む界面のうち、底壁323に対向する界面である界面41Aは、主面31に形成された開口部において露出している。したがって、界面41Aは、第1樹脂部材4Aを構成する樹脂材料と、気相(本変形例では大気AT)との界面である。
【0071】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係るファイバレーザFL(レーザ装置の一例)について、図6を参照して説明する。図6は、ファイバレーザFLのブロック図である。
【0072】
ファイバレーザFLは、図6に示すように、光コンバイナ10a,10bと、ゲインファイバ13と、種光源14と、励起光源群15a,15bと、デリバリファイバ16a,16bと、を備えている。ファイバレーザFLは、MOPA(Master Oscillator - Power Amplifier)型のレーザである。すなわち、種光源14は、主発振(Master Oscillator:MO)部として機能し、光コンバイナ10a,10b、ゲインファイバ13、励起光源群15a,15bは、パワー増幅(Power Amplifier:PA)部として機能する。
【0073】
光コンバイナ10a,10bは、同一に構成されている。光コンバイナ10a,10bは、図6に示すように、7本の第1の光ファイバ111a~117a,111b~117bの束である光ファイバ束11a,11bと、第2の光ファイバ12a,12bと、を備えている。
【0074】
本実施形態において、第2の光ファイバ12a,12bは、ダブルクラッドファイバである。第2の光ファイバ12a,12bのゲインファイバ13側(ゲインファイバ13については、後述する)の端面には、ダブルクラッドファイバであるゲインファイバ13の一方の端面が融着されている。したがって、第2の光ファイバ12a,12bとゲインファイバ13との界面には、それぞれ、融着点P1a,P1bが形成されている。
【0075】
第1の光ファイバ111a~116a,111b~116bの各々は、それぞれ、後述する励起光源15a1~15a6,15b1~15b6に対応する光ファイバである。第1の光ファイバ111a~116a,111b~116bの各々は、同一に構成されている。したがって、本実施形態では、第1の光ファイバ111aを例にして、第1の光ファイバ111a~116a,111b~116bについて説明し、第1の光ファイバ112a~116a,111b~116bの説明を省略する。
【0076】
第1の光ファイバ111aの励起光源15a1側の端面は、励起光源15a1に光学的に結合されている。したがって、第1の光ファイバ111aは、励起光源15a1が生成した励起光を導波する。
【0077】
第1の光ファイバ117aは、その一方の端面が、後述する種光源14に光学的に結合されたデリバリファイバ16aの端面に融着されている。したがって、第1の光ファイバ117aとデリバリファイバ16aとの界面には、融着点P2aが形成されている。その結果、第1の光ファイバ117aは、種光源14が生成した種光を導波する。
【0078】
第1の光ファイバ117bは、その一方の端面が後述するデリバリファイバ16bの端面に融着されている。したがって、第1の光ファイバ117bとデリバリファイバ16bとの界面には、融着点P2bが形成されている。第1の光ファイバ117bは、ゲインファイバ13が増幅したハイパワーなレーザ光を導波する。
【0079】
光コンバイナ10a,10bにおいて、(1)第1の光ファイバ117a,117bの第2の光ファイバ12a,12b側の端面は、第2の光ファイバ12a,12bのコアに融着されており、(2)第1の光ファイバ111a~116a,111b~116bの第2の光ファイバ12a,12b側の端面は、第2の光ファイバ12a,12bの内側クラッドに融着されている。したがって、種光源14が生成した種光は、第2の光ファイバ12aのコアを導波し、励起光源15a1~15a6の各々が生成した励起光は、第2の光ファイバ12aの内側クラッドを導波する。また、ゲインファイバ13が増幅したハイパワーなレーザ光は、第2の光ファイバ12bのコアを導波し、励起光源15b1~15b6の各々が生成した励起光は、第2の光ファイバ12bの内側クラッドを導波する。
【0080】
ゲインファイバ13は、励起光のエネルギーを用いて種光を増幅し、ハイパワーなレーザ光を生成する機能を有する増幅用の光ファイバである。本実施形態においては、ゲインファイバ13として、コアに希土類元素が添加されたダブルクラッドファイバを用いている。ただし、ゲインファイバ13は、ダブルクラッドファイバに限定されない。すなわち、レーザ光を導波する導波路(コアに相当)と、励起光を導波する導波路(クラッドに相当)と、を備えた光ファイバであれば、ゲインファイバ13として用いることができる。また、本実施形態においては、コアに添加する希土類元素として、イッテルビウムを用いている。ただし、コアに添加する希土類元素は、イッテルビウムに限定されない。例えば、ツリウム、セリウム、ネオジウム、ユーロピウム、エルビウムなど、イッテルビウム以外の希土類元素をコアに添加してもよい。
【0081】
主発振部である種光源14は、後述するゲインファイバ13が増幅する種光を生成するレーザ光源である。種光源14として採用するレーザ光源の態様は、限定されるものではなく、例えば、共振器型のファイバレーザであってもよいし、半導体レーザ、固体レーザ、液体レーザ、及び気体レーザの何れかであればよい。
【0082】
励起光源群15a,15bの各々は、それぞれ、励起光源15a1~15a6及び励起光源15b1~15b6により構成されている。励起光源15a1~15a6及び励起光源15b1~15b6は、ゲインファイバ13に供給する励起光を生成する。励起光源15a1~15a6及び励起光源15b1~15b6として採用するレーザ光源は、ゲインファイバ13のコアに添加された希土類元素を反転分布状態に遷移させることが可能な光を生成可能なレーザ光源であれば限定されるものではなく、例えば、その態様は、共振器型のファイバレーザであってもよいし、半導体レーザ、固体レーザ、液体レーザ、及び気体レーザの何れかであればよい。本実施形態では、励起光源15a1~15a6及び励起光源15b1~15b6を構成するレーザ光源の態様として、半導体レーザを採用している。
【0083】
本実施形態において、デリバリファイバ16a,16bとして、フューモードファイバを用いている。ただし、デリバリファイバ16a,16bは、フューモードファイバに限定されない。すなわち、種光源14から出力された種光及びゲインファイバ13で増幅された出力光を導波可能な光ファイバであれば、シングルモードファイバ又はフューモードファイバ以外のマルチモードファイバであっても、デリバリファイバ16a,16bとして用いることが可能である。なお、フューモードファイバとは、マルチモードファイバ(導波モードの数が2以上の光ファイバ)のうち、導波モードの数が25以下の光ファイバのことを指す。
【0084】
種光源14には、デリバリファイバ16aの一方の端部が接続されている。デリバリファイバ16aの他方の端部には、光コンバイナ10aの第1の光ファイバ117aが接続されている。励起光源群15aの励起光源15a1~15a6の各々には、それぞれ、光コンバイナ10aの第1の光ファイバ111a~116aが接続されている。光コンバイナ10aの第2の光ファイバ12aには、ゲインファイバ13の一方の端部が融着されている。
【0085】
また、デリバリファイバ16bの一方の端部には、図6には図示しない出力ヘッドが接続されている。デリバリファイバ16bの他方の端部には、光コンバイナ10bの第1の光ファイバ117bが接続されている。励起光源群15bの励起光源15b1~15b6の各々には、それぞれ、光コンバイナ10bの第1の光ファイバ111b~116bが接続されている。光コンバイナ10bの第2の光ファイバ12bには、ゲインファイバ13の一方の端部が融着されている。
【0086】
光コンバイナ10a,10bの第1の光ファイバ111a~116a及び第1の光ファイバ111b~116bは、励起光源側のポートとして機能する。光コンバイナ10aの第1の光ファイバ117aは、種光源側のポートとして機能する。光コンバイナ10bの第1の光ファイバ117bは、出力ヘッド側のポートとして機能する。光コンバイナ10a,10bの第2の光ファイバ12a,12bは、ゲインファイバ側のポートとして機能する。
【0087】
なお、本実施形態において、ファイバレーザFLは、励起光源群15aと励起光源群15bとを備えた双方向励起型のファイバレーザとして実現されているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、ファイバレーザFLは、励起光源群15aのみを備えた片方向励起型のファイバレーザとして実現することもできるし、励起光源群15bのみを備えた片方向励起型のファイバレーザとして実現することもできる。
【0088】
また、複数のファイバレーザFLを備えたファイバレーザシステムも本発明の範疇に含まれる。各ファイバレーザFLが生成するレーザ光を合波することによって、該ファイバレーザシステムは、ファイバレーザFLよりもハイパワーなレーザ光を生成することができる。
【0089】
(光ファイバ固定構造1及び光ファイバ固定構造1Aの適用)
上述したファイバレーザFLは、図6に示すように、融着点P1a,P1b,P2a,P2bを含んでいる。
【0090】
融着点P1a,P1b,P2aの各々の構造としては、図1に示した光ファイバ固定構造1の一変形例である光ファイバ固定構造であって、光ファイバ2a,2bの各々としてシングルクラッドファイバの代わりにダブルクラッドファイバを用いた光ファイバ固定構造を好適に用いることができる。この構成によれば、従来と比較して、補強部材の厚さを薄くすることができる。さらに、この構成によれば、各融着点P1a,P1b,P2aの下流側の光ファイバから出射されるビームのビーム品質を、従来の構成と同程度に保つことができる。したがって、ファイバレーザFLは、生成するレーザ光のビーム品質を従来の構成と同程度に保ちつつ、装置内において補強部材が占有するスペースを小さくすることができる。
【0091】
また、融着点P2bの構造としては、図5に示した光ファイバ固定構造1Aの変形例であって、以下に説明する変形例を好適に用いることができる。光ファイバ固定構造1Aの変形例は、光ファイバ固定構造1Aをベースにして、光ファイバ固定構造1Aが備えている光ファイバ2Aを、図1に示した光ファイバ固定構造1のように2本の光ファイバに置換したものである。なお、光ファイバ固定構造1においては、光ファイバ2a,2bの各々としてシングルクラッドファイバを用いていた。しかし、光ファイバ固定構造1Aの変形例においては、光ファイバ2a,2bに対応する2本の光ファイバとしてダブルクラッドファイバを用いている。以上のように、光ファイバ固定構造1Aの変形例の被覆除去区間Iには、光ファイバ固定構造1における融着点Pに対応する融着点P2bが形成されている。
【0092】
この構成によれば、従来と比較して、補強部材の厚さを薄くすることができる。さらに、この構成によれば、デリバリファイバ16bから出射されるハイパワーなレーザ光のビーム品質を、従来の構成と同程度に保つことができる。したがって、ファイバレーザFLは、生成するレーザ光のビーム品質を従来の構成と同程度に保ちつつ、装置内において補強部材が占有するスペースを小さくすることができる。特に、光ファイバ固定構造1Aは、上述したようにクラッドモードストリッパとして機能するため、融着点P2bの構造として光ファイバ固定構造1を用いた場合と比較して、ハイパワーなレーザ光のビーム品質を高めることができる。
【0093】
なお、ハイパワーなレーザ光において、ビーム品質よりもパワーを優先する場合には、融着点P2bの構造として光ファイバ固定構造1を用いることもできる。また、光コンバイナ10a,10bについても光ファイバ固定構造1を好適に用いることができる。
【0094】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態に係る光コンバイナ101の実施形態について図8から図12を参照して詳細に説明する。図8から図12において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図8から図12においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。光コンバイナ101は、光ファイバ固定構造の一態様である。
【0095】
図8は、光コンバイナ101を模式的に示す平面図であり、図9は、光コンバイナ101のA-A線断面図であり、図10は、光コンバイナ101のB-B線断面図であり、図11は、光コンバイナのC-C線断面図である。なお、A-A線、B-B線、及びC-C線の各々は、図8に図示されている。図8から図11に示すように、光コンバイナ101は、複数の光ファイバ104(第1の光ファイバ)を束ねてバンドル化した第1の光ファイバユニット110と、単一の光ファイバ5(第2の光ファイバ)から構成される第2の光ファイバユニット120と、第1の光ファイバユニット110及び第2の光ファイバユニット120を外力や衝撃、振動から保護する補強部材130とを含んでいる。なお、本実施形態における第2の光ファイバユニット120は単一の光ファイバ5を含むものであるが、第2の光ファイバユニット120が複数の光ファイバを含んでいてもよい。
【0096】
図10に示すように、本実施形態における第1の光ファイバユニット110は7本の光ファイバ104から構成されており、それぞれの光ファイバ104は、コア(図示せず)と、コアの周囲を覆うクラッド142と、クラッド142の周囲を覆う被覆143とを含んでいる。クラッド142の屈折率はコアの屈折率よりも低くなっており、コアの内部を光が伝搬するようになっている。被覆143は例えば樹脂から形成される。それぞれの光ファイバ104の端部においては、長手方向(X方向)の一定の長さにわたって被覆143の一部が除去されており、クラッド142が露出した被覆除去部145が形成されている(図8及び図9参照)。
【0097】
図11に示すように、第2の光ファイバユニット120を構成する光ファイバ5は、コア151と、コア151の周囲を覆うクラッド152と、クラッド152の周囲を覆う被覆153とを含んでいる。クラッド152の屈折率はコア151の屈折率よりも低くなっており、コア151の内部を光が伝搬するようになっている。被覆153は例えば樹脂から形成される。光ファイバ5の端部においては、長手方向(X方向)の一定の長さにわたって被覆153の一部が除去されており、クラッド152が露出した被覆除去部155が形成されている(図8及び図9参照)。
【0098】
第1の光ファイバユニット110の光ファイバ104の被覆除去部145と第2の光ファイバユニット120の光ファイバ5の被覆除去部155とは融着接続部170において互いに融着接続されている。すなわち、第1の光ファイバユニット110の複数の光ファイバ104のコアと第2の光ファイバユニット120の光ファイバ5のコア151とが光学的に結合するように被覆除去部145,155が互いに融着接続されている。これにより、第1の光ファイバユニット110の複数の光ファイバ104のコアを伝搬する光が第2の光ファイバユニット120の光ファイバ5のコア151に導入されるようになっている。
【0099】
図8から図11に示すように、補強部材130は、上面131(第1の表面)と、下面132(第2の表面)と、上面131と下面132とを接続する2つの側面133とを有している。上面131、下面132、及び側面133はいずれも長手方向に延びている。補強部材130の上面131には、長手方向に沿って延びるファイバ溝160が形成されており、このファイバ溝160の内部には、上述した第1の光ファイバユニット110及び第2の光ファイバユニット120が融着接続部170で互いに融着接続された状態で収容されている。この補強部材130は、例えばネオセラム(商標)や石英などのガラス材料から形成することができる。なお、補強部材130の上面131には、ファイバ溝160の防塵のために蓋部(図示せず)が配置される。このように、光ファイバ104,105の特に外力の影響を受けやすい被覆除去部145,155及び融着接続部170が補強部材130のファイバ溝160に収容されているため、これらの部分が外力や衝撃、振動から保護される。
【0100】
図8及び図9に示すように、第1の光ファイバユニット110の光ファイバ104は、ファイバ溝160のX方向の一端部に配置された固定樹脂181によってファイバ溝160内に固定されている。この固定樹脂181は、図10に示すように、それぞれの光ファイバ104の被覆143の全外周を包囲している。また、図8及び図9に示すように、第2の光ファイバユニット120の光ファイバ5は、ファイバ溝160のX方向の他端部に配置された固定樹脂182によってファイバ溝160内に固定されている。この固定樹脂182は、図11に示すように、光ファイバ5の被覆153の全外周を包囲している。これらの固定樹脂181,182としては例えばUV硬化型樹脂を用いることができる。
【0101】
第1の光ファイバユニット110の光ファイバ104の被覆除去部145と被覆143との境界部分には、被覆除去部145の一部(クラッド142の一部)及び被覆143の一部を覆う屈折率調整樹脂191が配置されている。同様に、第2の光ファイバユニット120の光ファイバ5の被覆除去部155と被覆153との境界部分には、被覆除去部155の一部(クラッド152の一部)及び被覆153の一部を覆う屈折率調整樹脂192が配置されている。
【0102】
光ファイバ104のコアを伝搬する光がクラッド142に漏れ出て、さらにクラッド142から漏れ出ると、漏れ出た光が被覆除去部145に付着した異物や被覆143に吸収され発熱するおそれがある。また、光ファイバ5のコア151を伝搬する光がクラッド152に漏れ出て、さらにクラッド152から漏れ出ると、漏れ出た光が被覆除去部155に付着した異物や被覆153に吸収され発熱するおそれがある。このため、本実施形態では、クラッド142,152からそれぞれ屈折率調整樹脂191,192に漏れ出る光の量を屈折率調整樹脂191,192の屈折率を調整することで制御するようになっている。なお、このような屈折率調整樹脂191,192は必ずしも必要とされるものではない。
【0103】
図12は、補強部材130を長手方向に垂直な平面(YZ平面)で切断したときの断面図である。図12に示すように、補強部材130のファイバ溝160は、断面形状が略台形状の溝として形成されており、Y方向に沿った幅がWBである底面161と、底面161から上面131に向かって傾斜して延びる一対の側壁162とを有している。底面161は、補強部材130の上面131から-Z方向に所定の深さDの位置にある。一対の側壁162は、底面161から+Z方向に向かって次第に側壁162間の距離が大きくなるような形状となっており、上面131におけるファイバ溝160の間口のY方向に沿った幅WFは、底面161の幅WBよりも大きく、例えばWBの1.5倍以下となっている。
【0104】
底面161の幅WBは、第1の光ファイバユニット110のすべての光ファイバ104の被覆143を包含する最小の円C(図10参照)の直径d1(以下、被覆包含径d1ということがある)よりも大きくなっている。この底面161の幅WBは、例えば、d1の2.5倍以下とすることができる。また、底面161の幅WBは、第2の光ファイバユニット120の光ファイバ5の被覆153の外径d2よりも大きくなっている。この底面161の幅WBは、例えば、d2の2.5倍以下とすることができる。この底面161の幅WBは、d1及びd2の2倍以下であることが好ましく、d1及びd2の1.9倍以下であることがより好ましく、d1及びd2の1.5倍以下であることがさらに好ましい。なお、d1とd2は等しくてもよく、あるいは互いに異なっていてもよい。
【0105】
本実施形態では、補強部材130のファイバ溝160の側壁162が底面161から+Z方向に向かって次第に側壁162間の距離が大きくなるような形状となっており、ファイバ溝160の間口の幅WFが底面161の幅WBよりも大きくなっているため、補強部材130のファイバ溝160の断面が台形状となる。したがって、補強部材130のファイバ溝160の断面形状がV字状である場合と比べて補強部材130の厚さを薄くすることができる。また、ファイバ溝160内に必要とされる固定樹脂181,182の量も少なくすることができ、温度変化や湿度変化により固定樹脂181,182が膨張したり収縮したりした場合に、光ファイバ104,105に作用する応力を低減することができる。
【0106】
また、例えば、ファイバ溝160の底面161の幅WBを、光ファイバ104の被覆143の被覆包含径d1の2.5倍以下及び光ファイバ5の被覆153の外径d2の2.5倍以下とし、ファイバ溝160の間口の幅WFを、この底面161の幅WBの1.5倍以下とした場合には、光ファイバ104,105の周囲に存在する固定樹脂181,182の量を少なく維持することができる。このため、温度変化や湿度変化により固定樹脂181,182が膨張したり収縮したりした際に光ファイバ104,105に作用する応力を低減することができ、これに伴う光学特性の悪化を抑制することができる。
【0107】
また、補強部材130の側面133からファイバ溝160の上面131における縁部までの距離WC図12参照)は、ファイバ溝160の底面161から下面132までの距離Lの0.75倍以上であることが好ましい。固定樹脂181,182の膨張や収縮によりファイバ溝160の両側に位置する補強部材130の部分30Aの変位量が大きくなると、ファイバ溝160に収容される光ファイバ104,105に作用する応力のバランスが不均一となる。そのような場合には、光ファイバを伝搬するレーザビームの広がりの指標である光学特性M2が悪化してしまう(大きくなってしまう)。上述のように、距離WCを距離Lの0.75倍以上とすることで、補強部材130の剛性が増すため、ファイバ溝160の両側に位置する補強部材130の部分30Aの変位量を小さくすることができる。したがって、ファイバ溝160に収容される光ファイバ104,105に作用する応力の不均一を低減することができ、ビームの光学特性の悪化を抑制することができる。
【0108】
本実施形態では、ファイバ溝160の底面161の幅WBが、光ファイバ104の被覆143の被覆包含径d1及び光ファイバ5の被覆153の外径d2のいずれよりも大きいため、ファイバ溝160の側壁162間の距離が光ファイバ104の被覆143の被覆包含径d1及び光ファイバ5の被覆153の外径d2のいずれよりも大きくなる。したがって、光ファイバ104,105をファイバ溝160内に配置する際に、光ファイバ104,105がファイバ溝160の側壁162に接触しにくくなり、補強部材130の熱膨張が光ファイバ104,105に直接与える影響を低減することができる。
【0109】
第1の光ファイバユニット110を構成する光ファイバ104の数及び第2の光ファイバユニット120を構成する光ファイバ5の数は図示のものに限られるものではなく、適宜変更できることは言うまでもない。また、上述した実施形態では、補強部材130のファイバ溝160の側壁162が底面161から+Z方向に向かって次第に側壁162間の距離が大きくなるような形状となっているが、ファイバ溝160の間口の幅WFが底面161の幅WBよりも大きくなっていれば、ファイバ溝160の側壁162はどのような形状を有していてもよい。
【0110】
なお、本明細書において使用した用語「上面」、「下面」、「底面」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、光コンバイナの相対的な位置関係によって変化するものである。
【0111】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る光ファイバ固定構造は、一部区間の被覆を除去することにより被覆除去区間が形成された光ファイバと、一対の側壁及び底壁を有する溝が一方の主面から内部に向かって形成された補強部材と、上記被覆除去区間を上記一対の側壁及び上記底壁に固定する樹脂部材と、を備え、上記溝のうち上記底壁を含む部分である底部の横断面形状は、上記底壁から遠ざかるにしたがって上記一対の側壁同士の間隔が拡大される台形状である、ように構成されている。
【0112】
上記の構成によれば、光ファイバが固定される溝のうち、少なくとも底部の横断面形状が台形状である。このため、光ファイバが固定される溝の断面形状がV字型である構成(以下、「従来の構成」と記載)に比べて、補強部材の厚さを薄くすることができる。また、従来の構成に比べて、樹脂部材の量を少なくすることができる。
【0113】
また、本発明の第2の態様に係る光ファイバ固定構造は、上述した第1の態様において、上記一対の側壁同士の間隔は、上記底壁から遠ざかるにしたがって拡大されている、ように構成されている。
【0114】
上記の構成によれば、光ファイバが固定される溝の一対の側壁の間隔は、底壁から遠ざかるにしたがって拡大されている。このため、従来の構成と同様、樹脂部材が光ファイバの被覆除去区間に及ぼし得る応力を溝の外部に逃がしやすい。したがって、光ファイバから出射されるビームの品質を、従来の構成と同等に保つことができる。
【0115】
また、本発明の第3の態様に係る光ファイバ固定構造は、上述した第1の態様又は第2の態様において、上記一方の主面の法線と、上記一対の側壁の各々とのなす角をそれぞれ第1傾斜角及び第2傾斜角として、上記第1傾斜角と上記第2傾斜角との和は、0度よりも大きく、且つ、45度以下である、ように構成されている。
【0116】
上記の構成によれば、樹脂部材を形成する樹脂材料を溝内に注入するときに、上記和が45度を上回る場合と比較して、上記樹脂材料を溝の外部に漏れ出させることなく上記樹脂材料を注入することが容易である。また、溝の長手方向に対して上記樹脂材料が濡れ広がる範囲を調整することが容易になる。
【0117】
また、本発明の第4の態様に係る光ファイバ固定構造は、上述した第1の態様~第3の態様の何れかにおいて、上記被覆除去区間は、上記一対の側壁及び上記底壁の各々から離間しており、上記被覆除去区間と、上記一対の側壁及び上記底壁の各々との間には、上記樹脂部材が介在している、ように構成されている。
【0118】
上記被覆除去区間が上記一対の側壁及び上記底壁の少なくとも何れかから離間していない場合、すなわち、接触している場合、上記被覆除去区間を上記一対の側壁及び上記底壁に固定するまでの期間中に、上記被覆除去区間の外側面が傷つく可能性がある。上記被覆除去区間の側面に形成された傷は、上記被覆除去区間の強度を低下させる可能性があり、上記光ファイバにおける伝送不良の原因になり得る。上記の構成によれば、上記被覆除去区間が上記溝の何れの部分にも接しない。そのため、第4の態様に係る光ファイバ固定構造は、補強部材に固定された被覆除去区間の信頼性、換言すれば、光ファイバの信頼性を高めることができる。
【0119】
また、本発明の第5の態様に係る光ファイバ固定構造は、上述した第1の態様~第4の態様の何れかにおいて、上記樹脂部材の界面のうち上記底壁に対向する界面は、上記樹脂部材を構成する樹脂材料と気相との界面である、ように構成されている。
【0120】
上記の構成によれば、上記溝の内部に設けられた樹脂部材は、密閉されておらず、上記気相(例えば大気)に対して開放されている。そのため、外部環境の温度変化に起因して上記樹脂部材の体積が膨張又は収縮する場合に、上記樹脂部材の体積の変化は、樹脂部材が密閉されている場合と比較して、外部からの制約を受けない。したがって、本光ファイバ固定構造は、外部環境の温度変化に起因して生じた応力を溝の外部に逃がしやすい。したがって、第5の態様に係る光ファイバ固定構造は、外部環境の温度変化に起因して生じ得る上記ビーム品質の低下を抑制することができる。
【0121】
また、本発明の第6の態様に係る光ファイバ固定構造は、上述した第1の態様~第5の態様の何れかにおいて、上記樹脂部材を構成する樹脂材料は、熱硬化型樹脂である、ように構成されている。
【0122】
第6の態様に係る光ファイバ固定構造のように、上記樹脂材料としては、熱硬化型樹脂が好適である。
【0123】
また、本発明の第7の態様に係る光ファイバ固定構造は、上述した第1の態様~第6の態様の何れかにおいて、上記樹脂部材の屈折率は、上記被覆除去区間における最外殻構造の屈折率未満である、ように構成されている。
【0124】
上記の構成によれば、被覆除去区間における光ファイバから樹脂部材への光の漏洩を抑制することができる。このため、樹脂部材が発熱したり劣化したりすることを抑制することができる。
【0125】
本発明の第8の態様によれば、光学特性が劣化しにくい光コンバイナ(光ファイバ固定構造)が提供される。この光コンバイナは、コアと、上記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記コアの周囲を覆うクラッドと、上記クラッドの周囲を覆う被覆とをそれぞれ含む複数の第1の光ファイバと、コアと、上記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記コアの周囲を覆うクラッドと、上記クラッドの周囲を覆う被覆とを含む少なくとも1つの第2の光ファイバと、上記複数の第1の光ファイバの上記被覆が除去された被覆除去部と上記少なくとも1つの第2の光ファイバの上記被覆が除去された被覆除去部とを内部に収容するファイバ溝が第1の表面に長手方向に沿って延びるように形成された補強部材と、上記複数の第1の光ファイバの上記被覆と前記少なくとも1つの第2の光ファイバの上記被覆とを上記補強部材の上記ファイバ溝内に固定する固定樹脂とを備える。上記ファイバ溝は、上記補強部材の上記第1の表面から所定の深さに底面を有する。上記複数の第1の光ファイバの上記被覆又は上記少なくとも1つの第2の光ファイバの上記被覆が上記固定樹脂によって固定される部分の上記補強部材の断面において、上記ファイバ溝の上記底面の幅は、上記複数の第1の光ファイバのすべての上記被覆を包含する最小の円の直径よりも大きい。上記補強部材の上記第1の表面における上記ファイバ溝の間口の幅は、上記ファイバ溝の上記底面の幅よりも大きい。上記ファイバ溝の上記底面の幅は、上記最小の円の直径の2.5倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。また、上記ファイバ溝の上記間口の幅は、上記ファイバ溝の上記底面の幅の1.5倍以下であることが好ましい。
【0126】
このような構成の光コンバイナによれば、複数の第1の光ファイバの被覆又は少なくとも1つの第2の光ファイバの被覆が固定樹脂によって固定される補強部材のファイバ溝の断面が台形状となるため、ファイバ溝の断面形状がV字状である場合と比べて補強部材の厚さを薄くすることができる。また、ファイバ溝内に必要とされる固定樹脂の量も少なくすることができ、温度変化や湿度変化により固定樹脂が膨張したり収縮したりした場合に、光ファイバに作用する応力を低減することができる。なお、本明細書において、「幅」は、長手方向と深さ方向の双方に垂直な方向に沿って測定したときの距離を意味するものとする。
【0127】
上記補強部材は、上記第1の表面の反対側に位置する第2の表面と、上記第1の表面と上記第2の表面と接続する側面とを含んでいてもよい。この場合において、上記複数の第1の光ファイバの上記被覆又は上記少なくとも1つの第2の光ファイバの上記被覆が上記固定樹脂によって固定される部分の上記補強部材の断面において、上記補強部材の上記側面から上記ファイバ溝の上記第1の表面における縁部までの距離は、上記ファイバ溝の上記底面から上記第2の表面までの距離の0.75倍以上であることが好ましい。このように、補強部材の側面からファイバ溝の第1の表面における縁部までの距離をファイバ溝の底面から第2の表面までの距離の0.75倍以上とすることで、補強部材の剛性が増すため、ファイバ溝の両側に位置する補強部材の部分の変位量を小さくすることができる。したがって、ファイバ溝に収容される光ファイバに作用する応力の不均一を低減することができ、ビームの光学特性の悪化を抑制することができる。
【0128】
上記の課題を解決するために、本発明の第9の態様に係るレーザ装置は、上述した第1の態様~第8の態様の何れかに係る光ファイバ固定構造を備えている。
【0129】
上述したように、第1~第8の態様の何れかに係る光ファイバ固定構造によれば、従来の構成と比べて、補強部材の厚さを薄くすることができる。したがって、第9の態様に係るレーザ装置によれば、装置内において補強部材が占有するスペースを小さくすることができる。
【0130】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1,1A 光ファイバ固定構造
2a,2b 光ファイバ
21a,21b コア
22a,22b,22Aa,22Ab クラッド
221a,221b 内側クラッド(被覆除去区間における最外殻構造)
222a,222b 外側クラッド
23a,23b 被覆
I 被覆除去区間
3 補強部材
31 主面
32 溝
321,322 側壁(一対の側壁)
323 底壁
θ,θ 第1傾斜角,第2傾斜角
4a,4b,4A 第1樹脂部材(樹脂部材)
41a,41b,41A 界面
5a,5b 第2樹脂部材
P,P1a,P1b,P2a,P2b 融着点
FL ファイバレーザ
101 光コンバイナ(光ファイバ固定構造)
104,105 光ファイバ(第1の光ファイバ,第2の光ファイバ)
110 第1の光ファイバユニット
120 第2の光ファイバユニット
130 補強部材
131 上面(第1の表面)
132 下面(第2の表面)
133 側面
142,152 クラッド
143,153 被覆
145,155 被覆除去部
151 コア
160 ファイバ溝
161 底面
162 側壁
170 融着接続部
181,182 固定樹脂
191,192 屈折率調整樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12