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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】試薬管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20221220BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01N35/00 C
G01N35/02 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021550672
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020035944
(87)【国際公開番号】W WO2021065652
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019180787
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】川辺 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 康介
(72)【発明者】
【氏名】飯島 由実
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-209207(JP,A)
【文献】特開2003-315345(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105247(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬を供給する試薬供給部とを備え、
前記試薬供給部から供給される試薬を検体と反応させてその反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得る自動分析装置であって、
装置各部の動作を制御する制御部と、
前記試薬供給部に架設されている前記試薬に関連する試薬関連情報を入出力するための試薬関連情報入出力部と、
前記試薬を収容した試薬容器の前記自動分析装置に対する取り込み及び/又は取り出しを検出するための試薬容器検出部と、
前記試薬容器検出部によって前記自動分析装置に対する取り込みが検出された前記試薬及び/又は試薬容器から前記試薬関連情報を読み取る試薬関連情報読み取り部と、
を備え、
前記試薬関連情報が前記試薬の使用に関する使用状況情報を含み、
前記制御部は、別個の他の自動分析装置から取り込まれた使用中の試薬容器に関して、前記試薬関連情報読み取り部により読み取られる前記試薬関連情報と前記試薬関連情報入出力部に前記他の自動分析装置の前記試薬関連情報入出力部から入力される前記試薬関連情報とを比較し、この比較結果が一致するときに、前記使用中の試薬容器が前記他の自動分析装置で使用されていた試薬容器であると判定して、前記試薬の継続使用を許可するように前記試薬供給部の動作を制御するとともに、前記比較結果が一致しないときに前記試薬の継続使用を許可しないように前記試薬供給部の動作を制御することによって、前記他の自動分析装置との間での同じ試薬容器の共用を可能にすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記試薬関連情報入出力部は、記憶媒体を用いて前記試薬関連情報を入出力することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記試薬関連情報入出力部は、遠隔通信によって前記試薬関連情報を入出力することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記試薬関連情報入出力部は、手動入力される信号に基づいて或いは前記自動分析装置及び/又は前記試薬供給部の作動状態に応じて自動で前記試薬関連情報を出力することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記試薬関連情報が前記試薬及び/又は前記試薬容器を識別するための識別情報を更に含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記使用状況情報が試薬の液面高さ又は測定回数を含むことを特徴とする請求項に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記試薬関連情報読み取り部による前記試薬関連情報の読み取りは、試薬に関する所定の検知情報を含むことを特徴とする請求項に記載の自動分析装置。
【請求項8】
検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬を供給する試薬供給部とを備え、前記試薬供給部から供給される試薬を検体と反応させてその反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得る互いに別個の自動分析装置同士の間で同じ試薬容器を共用するための試薬管理方法であって、
第1の自動分析装置から当該装置で使用していた使用中の試薬に関連する試薬関連情報を所定のタイミングで出力する試薬関連情報出力ステップと、
前記第1の自動分析装置から出力された前記試薬関連情報を第2の自動分析装置に入力する試薬関連情報入力ステップと、
前記使用中の試薬を収容した試薬容器が第2の自動分析装置に取り込まれたことを検出する試薬容器検出ステップと、
前記試薬容器検出ステップによって前記第2の自動分析装置に対する取り込みが検出された使用中の前記試薬及び/又は試薬容器から前記試薬関連情報を読み取る試薬関連情報読み取りステップと、
前記試薬関連情報読み取りステップで読み取られる前記試薬関連情報と前記試薬関連情報入力ステップで入力される前記試薬関連情報とを比較し、その比較結果が一致するときに、前記試薬容器検出ステップで検出された試薬容器が前記第1の自動分析装置で使用されていた試薬容器であると判定して、前記第2の自動分析装置で当該試薬容器の継続使用を許可するように前記試薬供給部の動作を制御するとともに、前記比較結果が一致しないときに前記第2の自動分析装置で前記試薬容器の継続使用を許可しないように前記試薬供給部の動作を制御する制御ステップと、
を含み、
前記試薬関連情報が前記試薬の使用に関する使用状況情報を含む、
ことを特徴とする試薬管理方法。
【請求項9】
前記試薬関連情報出力ステップ及び前記試薬関連情報入力ステップでは記憶媒体を通じて前記試薬関連情報が入出力されることを特徴とする請求項に記載の試薬管理方法。
【請求項10】
前記試薬関連情報出力ステップ及び前記試薬関連情報入力ステップでは遠隔通信によって前記試薬関連情報が入出力されることを特徴とする請求項に記載の試薬管理方法。
【請求項11】
前記試薬関連情報出力ステップでは、手動入力される信号に基づいて或いは前記自動分析装置及び/又は前記試薬供給部の作動状態に応じて自動で前記試薬関連情報が出力されることを特徴とする請求項から10のいずれか一項に記載の試薬管理方法。
【請求項12】
前記試薬関連情報が前記試薬及び/又は前記試薬容器を識別するための識別情報を更に含むことを特徴とする請求項から11のいずれか一項に記載の試薬管理方法。
【請求項13】
前記使用状況情報が試薬の液面高さ又は測定回数を含むことを特徴とする請求項に記載の試薬管理方法。
【請求項14】
前記試薬情報読み取りステップでの前記試薬関連情報の読み取りは、試薬に関する所定の検知情報を含むことを特徴とする請求項13に記載の試薬管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などのサンプル(検体)を種々の試薬と反応させてその反応過程を測定することにより様々な検査項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置、及び、自動分析装置同士の間で試薬を共用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固分析装置や、免疫測定法を用いた分析装置など、血液や尿などの生体サンプルを種々の試薬と反応させてその反応過程を測定することにより様々な検査項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置(以下、装置と略記する場合もある)は、従来から様々な形態のものが知られており、例えば、生体サンプルとしての検体を検体容器から反応容器に分注し、その分注した検体に検査項目に応じた試薬を分注混合させて各種の測定及び分析を行なう(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-135497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような自動分析装置は、試薬を収容した試薬容器ごとに試薬の種々の管理(使用状態の管理、例えば精度管理など)を行なうために、試薬容器に貼付したラベルに表示されるシリアル番号を利用している。例えば試薬の残テスト数管理においてもシリアル番号を用いて試薬容器ごとに試薬使用状況を装置が把握できることから、同一の自動分析装置においては、使用済みの同じシリアル番号の試薬容器を再利用できないようになっているのが一般的である。これは、残テスト数管理だけでなく、試薬残量管理でも同じことであり、したがって、1つの自動分析装置で一度使用した試薬容器の残りの試薬をその装置で再び継続して使用することができない。
【0005】
これに対し、独立した2台の装置間で同一の試薬容器を共用しようとする場合には、試薬の使用を開始した第1の装置から使用途中の試薬容器を第2の装置へ移し替えたときに、第2の装置がその移し替えられた試薬容器を(第2の装置で初めて使用されるシリアル番号の試薬容器であるため)未使用容器として認識して試薬の液量チェックを実施するが、当然ながら当該試薬容器内の液量が未使用の試薬容器と比べて少ないことから、その試薬容器が第2の装置で液量不足と判断されて使用不可とされてしまう。このような事態は、少なくとも2台の同じ装置を使い分けているユーザにとって大変不便である。これは、一方の装置が故障等で使用できなくなったときに、その装置に架設されていた試薬を他方の装置に移設して使用できないからである。また、POCT用の装置などの複数台の装置で一つの試薬を使い回す場合などにおいても使い勝手が悪い。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、独立した複数の装置間で試薬を共用できる自動分析装置及び装置間試薬共用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬を供給する試薬供給部とを備え、前記試薬供給部から供給される試薬を検体と反応させてその反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得る自動分析装置であって、装置各部の動作を制御する制御部と、使用中の試薬を含めて前記試薬供給部に架設されている前記試薬に関連する試薬関連情報を入出力するための試薬関連情報入出力部と、使用中の前記試薬を収容した試薬容器の前記自動分析装置に対する取り込み及び/又は取り出しを検出するための試薬容器検出部と、前記試薬容器検出部によって前記自動分析装置に対する取り込みが検出された使用中の前記試薬及び/又は試薬容器から前記試薬関連情報を読み取る試薬関連情報読み取り部とを備え、前記制御部は、前記試薬関連情報読み取り部により読み取られる前記試薬関連情報と前記試薬関連情報入出力部に入力される前記試薬関連情報とを比較し、その比較結果に基づいて前記試薬供給部の動作を制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬を供給する試薬供給部とを備え、前記試薬供給部から供給される試薬を検体と反応させてその反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得る自動分析装置同士の間で試薬を共用するための方法であって、第1の自動分析装置から当該装置で使用していた使用中の試薬に関連する試薬関連情報を所定のタイミングで出力する試薬関連情報出力ステップと、前記第1の自動分析装置から出力された前記試薬関連情報を第2の自動分析装置に入力する試薬関連情報入力ステップと、前記使用中の試薬を収容した試薬容器が第2の自動分析装置に取り込まれたことを検出する試薬容器検出ステップと、前記試薬容器検出ステップによって前記第2の自動分析装置に対する取り込みが検出された使用中の前記試薬及び/又は試薬容器から前記試薬関連情報を読み取る試薬関連情報読み取りステップと、前記試薬関連情報読み取りステップで読み取られる前記試薬関連情報と前記試薬関連情報入力ステップで入力される前記試薬関連情報とを比較し、その比較結果に基づいて前記第2の自動分析装置の前記試薬供給部の動作を制御する制御ステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
上記構成の自動分析装置及び装置間試薬共用方法によれば、第2の自動分析装置は、第1の自動分析装置で使用を開始した試薬に関連する試薬関連情報を、第1の自動分析装置側から及び第2の自動分析装置側での当該装置自体による読み取りから2段階で取得できるとともに、これらの各段階で取得した試薬関連情報を比較し、その比較結果に基づいて第2の自動分析装置側の試薬供給部の動作を制御する(例えば、試薬関連情報読み取り部により読み取られる試薬関連情報と試薬関連情報入出力部に入力される試薬関連情報とが一致するときに試薬の継続使用を許可するように試薬供給部の動作を制御する)ようにしているため、第1の自動分析装置と第2の自動分析装置との間での試薬の共用を問題なく行なうことができる(第1の自動分析装置で使用していた試薬をそのまま問題なく第2の自動分析装置で継続使用できる)。そのため、大型検査センターのように集中管理によって複数の装置間で試薬情報をやりとりできるような機能が無くても、2つの独立した装置間で試薬を共有することができる。その結果、少なくとも2台の同じ装置を使い分けている場合に、それぞれの装置に同じ検査項目の試薬をセットする必要がなくなり、オンボード時間の制限による試薬の無駄が低減できる。また、複数の装置で一つの試薬ボトルを共用する可能性の高いPOCT用の装置の使い勝手も向上する。これは、特に、同一ロット内の試薬を区別するシリアル番号を用いて試薬容器ごとにその使用状態を管理する試薬のシリアル管理方式において有益である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、独立した複数の装置間で試薬を共用できる自動分析装置及び装置間試薬共用方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る自動分析装置の概略的な全体外観図である。
図2図2の自動分析装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図3図1の自動分析装置の特徴部分の構成を示すブロック図である。
図4】使用中の試薬容器が取り出される第1の自動分析装置の側における試薬共用のための動作を示すフローチャートである。
図5】使用中の試薬容器が取り込まれる第2の自動分析装置の側における試薬共用のための動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態の自動分析装置の概略的な全体外観図、図2図1の自動分析装置の概略的な構成を示すブロック図である。本実施形態の自動分析装置1は、図2に示されるように、検体が分注された反応容器54を保持する反応部40と、試薬を反応容器54に供給する試薬供給部30とを備え、試薬供給部30から反応容器54に供給される試薬を検体と反応させて反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得るものである。
具体的に、本実施形態の自動分析装置1は、筐体100によってその外枠が形成されるとともに、筐体100内の上部に検体処理空間を形成して成る。
【0013】
図2に明確に示されるように、自動分析装置1は、制御ユニット10と、測定ユニット30と、タッチスクリーン190とを備える。
【0014】
制御ユニット10は、自動分析装置1の全体の動作を制御する。制御ユニット10は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)によって構成される。制御ユニット10は、バスライン22を介して互いに接続されたCenTral Processing Unit(CPU)12と、Random Access Memory(RAM)14と、Read Only Memory(ROM)16と、ストレージ18と、通信インターフェース(I/F)20とを備える。CPU12は、各種信号処理等を行なう。RAM14は、CPU12の主記憶装置として機能する。RAM14には、例
えば、Dynamic RAM(DRAM)、Static RAM(SRAM)等が用いられ得る。ROM16は、各種起動プログラム等を記録している。ストレージ18には、例えば、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)等が用いられ得る。ストレージ18には、CPU12で用いられるプログラム、パラメータ等各種情報が記録されている。また、ストレージ18には、測定ユニット30で取得されたデータが記録される。RAM14及びストレージ18は、これに限らず各種記憶装置に置換され得る。制御ユニット10は、通信I/F20を介して外部の機器、例えば測定ユニット30及びタッチスクリーン190との通信を行なう。
【0015】
タッチスクリーン190は、表示装置192とタッチパネル194とを備える。表示装置192は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイ等を含み得る。表示装置192は、制御ユニット10の制御下で、各種画面を表示する。この画面には、自動分析装置1の操作画面、測定結果を示す画面、解析結果を示す画面など、各種画面が含まれ得る。タッチパネル194は、表示装置192の上に設けられている。タッチパネル194は、ユーザからの入力を取得し、得られた入力情報を制御ユニット10へと伝達する。
【0016】
制御ユニット10は、通信I/F20を介して、プリンタ、ハンディコードリーダ、ホストコンピュータなど、他の機器と接続してもよい。
【0017】
測定ユニット30は、制御回路42と、データ処理回路44と、恒温槽52と、反応容器54と、光源62と、散乱光検出器64と、透過光検出器66と、検体容器72と、試薬容器74と、検体プローブ76と、試薬プローブ78とを備える。この場合、反応容器54、散乱光検出器64、及び、透過光検出器66は恒温槽52に設けられる。
【0018】
制御回路42は、制御ユニット10からの指令に基づいて、測定ユニット30の各部の動作を制御する。制御回路42は、図示を省略しているが、データ処理回路44、恒温槽52、光源62、散乱光検出器64、透過光検出器66、検体プローブ76、試薬プローブ78等と接続し、各部の動作を制御する。
【0019】
データ処理回路44は、散乱光検出器64及び透過光検出器66に接続されており、散乱光検出器64及び透過光検出器66から検出結果を取得する。データ処理回路44は、取得した検出結果に対して各種処理を行ない、処理結果を出力する。データ処理回路44が行なう処理には、例えば、散乱光検出器64及び透過光検出器66から出力されるデータの形式を、制御ユニット10で処理できる形式に変換するA/D変換処理等が含まれ得る。
【0020】
制御回路42及びデータ処理回路44は、例えば、CPU、Application Specific IntegraTed Circuit(ASIC)、又はField Programmable Gate Array(FPGA)等を含み得る。制御回路42及びデータ処理回路44は、それぞれ1つの集積回路等で構成されてもよく、或いは、複数の集積回路等が組み合わされて構成されてもよい。また、制御回路42及びデータ処理回路44が1つの集積回路等で構成されてもよい。制御回路42及びデータ処理回路44の動作は、例えば記憶装置や当該回路内の記録領域に記録されたプログラムに従って行なわれ得る。
【0021】
検体容器72には、例えば患者から採血した血液から得られた検体が収容される。試薬容器74には、測定に用いる各種試薬が収容される。検体容器72及び試薬容器74は、それぞれいくつ設けられていてもよい。分析に用いられる試薬は通常複数種類あるので、試薬容器74は一般に複数ある。検体プローブ76は、制御回路42の制御下で、検体容器72に収容された検体を反応容器54に分注する。試薬プローブ78は、制御回路42の制御下で、試薬容器74に収容された試薬を反応容器54に分注する。検体プローブ76及び試薬プローブ78の数もいくつであってもよい。
【0022】
恒温槽52は、制御回路42の制御下で、反応容器54の温度を所定の温度に維持する。反応容器54内では、検体プローブ76によって分注された検体と、試薬プローブ78によって分注された試薬とが混合された混合液が反応する。なお、反応容器54は、いくつあってもよい。
【0023】
光源62は、制御回路42の制御下で、所定の波長の光を照射する。光源62は、測定の条件に応じて、異なる波長を有する光を照射するように構成されていてもよい。したがって、光源62は、複数の光源素子を有していてもよい。光源62から照射された光は、例えば光ファイバによって導かれ、反応容器54に照射される。反応容器54に照射された光は、反応容器54内の混合液の反応過程状態によって、一部は散乱し、一部は透過する。散乱光検出器64は、反応容器54で散乱した光を検出し、例えばその散乱光量を検出する。透過光検出器66は、反応容器54を透過した光を検出し、例えばその透過光量を検出する。データ処理回路44は、散乱光検出器64で検出された散乱光量の情報を処理したり、透過光検出器66で検出された透過光量の情報を処理したりする。散乱光検出器64及び透過光検出器66は、測定条件に応じて何れか一方が動作してもよい。したがって、データ処理回路44は、測定条件に応じて、散乱光検出器64で検出された散乱光量の情報と透過光検出器66で検出された透過光量の情報とのうち何れかを処理してもよい。データ処理回路44は、処理済のデータを制御ユニット10に送信する。なお、図3に示される測定ユニット30は、散乱光検出器64と透過光検出器66との2つを備えているが、どちらか一方のみを備えていてもよい。
【0024】
制御ユニット10は、測定ユニット30から取得したデータに基づいて、各種演算を行なう。この演算には、混合液の反応量の算出、反応量に基づく被検体中の測定目的物質の物質量や活性値の定量演算等が含まれる。これらの演算の一部又は全部を、データ処理回路44が行なってもよい。
【0025】
なお、ここでは、測定ユニット30の動作を制御するPCと、データ演算及び定量演算を行なうPCとが同一の制御ユニット10である場合を示したが、これらは、別体であってもよい。言い換えると、データ演算及び定量演算を行なうPCは、単体として存在し得る。
【0026】
次に、図3図5を参照して、上記構成の2つの自動分析装置同士の間で試薬を共用できるようにする自動分析装置の特徴的な機能部及び試薬管理方法について説明する。
図3には、前述した図1及び図2の構成を備える2つの自動分析装置1A,1Bが、試薬共用のための機能部のみを明示して概略的にブロック図で示されている。ここでは、これらの2つの自動分析装置1A,1B間で1つの試薬容器32を共用する場合について説明する。
【0027】
図示のように、各自動分析装置1A(1B)は、前述した自動分析装置1の各部(図3では、これらの各部をまとめて駆動部85A(85B)として示す)の動作を制御する制御部82A(82B)と、使用中の試薬を含めて試薬供給部30に架設されている試薬に関連する試薬関連情報(自動分析装置1A(1B)側が保持している情報)Iを入出力するための試薬関連情報入出力部81A(81B)と、使用中の試薬を収容した試薬容器32の自動分析装置1A(1B)に対する取り込み及び/又は取り出しを検出するための試薬容器検出部83A(83B)と、試薬容器検出部83A(83B)によって自動分析装置1A(1B)に対する取り込みが検出された使用中の試薬及び/又は試薬容器32から試薬関連情報C(試薬及び/又は試薬容器32側が保持している情報)を読み取る試薬関連情報読み取り部84A(84B)とを備える。この場合、試薬容器検出部83A(83B)及び試薬関連情報読み取り部84A(84B)は、例えば、試薬供給部30の回転テーブル34の回転方向に沿う所定の位置に設けられる。また、試薬関連情報読み取り部84A(84B)は、試薬関連情報Cが例えば試薬容器32に表示又は貼り付けられるバーコードとして存在する場合、バーコードリーダとして構成されていてもよい。
【0028】
ここで、試薬に関連する試薬関連情報I(C)は、試薬及び/又は試薬容器32を識別するための識別情報(検査項目、シリアル番号、使用期限等に関連する情報)、或いは、試薬の使用に関する使用情報(使用状況情報)であってもよい。また、使用情報としては、試薬の液面高さ、使用回数(測定回数)、残量等を挙げることができる。また、使用情報が、試薬の液面高さなど、使用途中の試薬容器を受け入れる装置の側で何らかの検知や測定等の確認を要する情報を含む場合、試薬関連情報読み取り部84A(84B)による試薬関連情報Cの読み取りは、試薬に関する所定の検知情報、例えば液面高さ等を含む。例えば、移し替えられてくる使用途中の試薬容器を受け入れる装置は、試薬吸引プローブを用い、試薬の液面検知を行ない、検知した液面高さから試薬容器内の試薬残量を計算する。装置によって基面に対する試薬吸引プローブの原点高さが微妙に異なるため、液面検知のときには、同じパルス量下降しても基面までの残パルス量が異なる場合があり、試薬容器内の試薬残量の算出に誤差が出る。そのため、その分を補正できる機能を装置側が有していることが好ましい。
【0029】
次に、このような構成(機能部)により、例えば、第1の自動分析装置1Aで使用していた試薬容器32を第2の自動分析装置1Bに移し替えて第2の自動分析装置で継続使用できるようにする方法について図3図5を参照しながら説明する。なお、ここでは、第1の自動分析装置1Aから第2の自動分析装置1Bへ試薬容器32が移し替えられるが、移し替えの方向が逆の場合、すなわち、第2の自動分析装置1Bから第1の自動分析装置1Aへ試薬容器32を移し替える場合においても、方法(動作)の流れは同様である。
【0030】
まず、第1の自動分析装置1Aで使用中の試薬を第2の自動分析装置1Bへ移し替えて使用したい場合(図4のステップS1)には、第1の自動分析装置1Aから使用中の試薬が入った試薬容器32を取り出す(図3も参照)。この試薬容器32の取り出しに伴って、すなわち、試薬容器検出部83Aが試薬容器32の取り出しを検出する(図4のステップS2)と、第1の自動分析装置1Aで使用していた使用中の試薬に関連する試薬関連情報Iが第1の自動分析装置1Aの試薬関連情報入出力部81Aから出力される(図4の試薬関連情報出力ステップS3)。しかしながら、試薬関連情報Iを出力するタイミングはこれに限らない。例えば、第1の自動分析装置1Aの電源シャットダウンのときに自動で試薬関連情報入出力部81Aが試薬関連情報Iを例えば装置1Aに接続された記憶媒体に出力してもよい。これは操作者の失念防止となる。なお、電源シャットダウン前に装置1Aに記憶媒体がセットされていない場合にはその旨を操作者に告知してもよい。或いは、試薬関連情報Iを出力するタイミングとしては、試薬供給部30の試薬保冷庫の蓋を開けて試薬容器32を試薬保冷庫から取り出した後、その取り出した試薬容器32の回転テーブル34上の位置で試薬容器32の再度の情報読み取りが試薬供給部30側で行なえなかったことをトリガとして、試薬関連情報入出力部81Aが試薬関連情報Iを例えば装置1Aに接続された記憶媒体に出力してもよい。また、その旨を表示入力部60のモニタに出力して操作者に注意を促してもよい。若しくは、分析バッチが終了するごとに、又は、セットされた検体に対して設定された検査が全て終了した時点で、自動で試薬容器32の試薬関連情報Iが試薬関連情報入出力部81Aから記憶媒体等に出力されて(書き込まれて)もよい。このように、試薬関連情報入出力部81Aは、自動分析装置1A及び/又は試薬供給部30の作動状態に応じて自動で試薬関連情報Iを出力してもよいが、手動入力される信号に基づいて試薬関連情報Iを出力してもよい。例えば、マニュアル動作により、任意の時点で操作者が自由に試薬関連情報入出力部81Aを介して試薬関連情報Iを記憶媒体等に出力してもよい。
【0031】
このようにして試薬関連情報Iが第1の自動分析装置1Aの試薬関連情報入出力部81Aから出力されると、この試薬関連情報Iは、前述したような記憶媒体(例えば、USBメモリ、SDカードなど)を介して又は遠隔通信(例えば、外部サーバを介したメール配信、Bluetooth(登録商標)など)によって第2の自動分析装置1Bの試薬関連情報入出力部81Bに入力される。また、第1の自動分析装置1Aから取り出された試薬容器32は、その後、第2の自動分析装置1Bの試薬供給部30にセットされる。そのため、第2の自動分析装置1B側では、試薬関連情報Iの入力が試薬関連情報入出力部81Bで確認される(図5の試薬関連情報入力ステップS10)と、試薬容器検出部83Bが試薬容器32の取り込みを検出する(試薬容器検出ステップS11)。
【0032】
試薬関連情報Iが試薬関連情報入出力部81Bに入力されて、試薬容器検出部83Bによって試薬容器32の取り込みが検出されたら、第2の自動分析装置1Bの試薬関連情報読み取り部84Bは、取り込まれた試薬容器32(及び/又は試薬)からそれが保持する試薬関連情報Cを読み取る(試薬関連情報読み取りステップS12)。そして、その後、制御部82Bは、試薬関連情報読み取り部84Bで読み取られた試薬関連情報Cと試薬関連情報入出力部81Bに入力される試薬関連情報Iとを比較し(ステップS13)、その比較結果に基づいて試薬供給部30の動作を制御する(制御ステップS14,S15,S16)。特にこの例において、制御部82Bは、比較結果が一致するときに、試薬容器検出部83Bで検出された試薬容器32が第1の自動分析装置1Bで使用されていた試薬容器32であると判定して、当該試薬容器32の継続使用を許可するように試薬供給部の動作を制御(ステップS16)し、比較結果が一致しない場合には、試薬容器32の継続使用を許可しない(ステップS15)。なお、試薬関連情報I,Cに使用期限の情報が含まれる場合、第2の自動分析装置1B側で読み取った試薬容器32の使用期限が既に過ぎていれば、試薬の取り出しを操作者に促すようにしてもよく、或いは、前記比較結果が一致している場合でも試薬容器32の使用を許可しないようにすることが好ましい。或いは、操作者がこれらのいずれかを選択できるようにしてもよい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2の自動分析装置1Bが、第1の自動分析装置1Aで使用を開始した試薬に関連する試薬関連情報I,Cを、第1の自動分析装置1A側から及び第2の自動分析装置1B側での当該装置自体による読み取りから2段階で取得できるとともに、これらの各段階で取得した試薬関連情報I,Cを比較し、その比較結果に基づいて試薬供給部30の動作を制御する(試薬関連情報読み取り部84Bにより読み取られる試薬関連情報Cと試薬関連情報入出力部81Bに入力される試薬関連情報Iとが一致するときに試薬の継続使用を許可するように試薬供給部30の動作を制御する)ようにしているため、第1の自動分析装置1Aと第2の自動分析装置1Bとの間での試薬の共用を問題なく行なうことができる(第1の自動分析装置1Aで使用していた試薬をそのまま問題なく第2の自動分析装置1Bで継続使用でき、或いは、逆もまた同様である)。そのため、大型検査センターのように集中管理によって複数の装置間で試薬情報をやりとりできるような機能が無くても、2つの独立した装置1A,1B間で試薬を共有することができる。その結果、少なくとも2台の同じ装置1A,1Bを使い分けている場合に、それぞれの装置1A,1Bに同じ検査項目の試薬をセットする必要がなくなり、オンボード時間の制限による試薬の無駄が低減できる。また、複数の装置で一つの試薬ボトルを共用する可能性の高いPOCT用の装置の使い勝手も向上する。これは、特に、同一ロット内の試薬を区別するシリアル番号を用いて試薬容器ごとにその使用状態を管理する試薬のシリアル管理方式において有益である。
【0034】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、識別関連情報の構成形態や自動分析装置の構成形態等は任意に設定できる。また、前述した実施形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B 自動分析装置
30 試薬供給部
32 試薬容器
40 反応部
81A,81B 試薬関連情報入出力部
82A,82B 制御部
83A,83B 試薬容器検出部
84A,84B 試薬関連情報読み取り部
C,I 試薬関連情報
図1
図2
図3
図4
図5