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特許7197725二次電池用電極、それを備えた二次電池、および二次電池用電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】二次電池用電極、それを備えた二次電池、および二次電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20221220BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20221220BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221220BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221220BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/04 A
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/62 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021561417
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2020043635
(87)【国際公開番号】W WO2021106860
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019213861
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木舩 素成
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087657(WO,A1)
【文献】特開2005-50755(JP,A)
【文献】特開2002-151055(JP,A)
【文献】特開2017-157529(JP,A)
【文献】特表2015-510249(JP,A)
【文献】特開2010-135272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属箔と、前記金属箔上に設けられた合剤層とを備えた二次電池用電極であって、
前記合剤層は、前記金属箔上に設けられた第1合剤層と、前記第1合剤層上に設けられた第2合剤層とを含み、
前記第1合剤層の幅は、前記第2合剤層の幅よりも広く、
前記第1合剤層および前記第2合剤層には、炭素粒子が含有されており、
前記第1合剤層の前記炭素粒子の含有率は、前記第2合剤層の前記炭素粒子の含有率に比べて高く、
前記第1合剤層は、前記第2合剤層に比べて、L*a*b*表色系でのL*値が4以上小さいことを特徴とする二次電池用電極。
【請求項2】
前記第1合剤層の前記炭素粒子の平均粒径は、前記第2合剤層の前記炭素粒子の平均粒径に比べて小さいことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項3】
請求項1に記載の二次電池用電極を正極電極として備えたことを特徴とする二次電池。
【請求項4】
帯状の金属箔上に合剤層が設けられ、前記合剤層は前記金属箔上に設けられる第1合剤層と前記第1合剤層上に設けられる第2合剤層とを含む二次電池用電極の製造方法であって、
前記金属箔上に、炭素粒子を含有する第1合剤スラリーと、前記炭素粒子の含有率が前記第1合剤スラリーよりも4重量パーセント以上高い第2合剤スラリーと、を積層状態に塗工することによって、前記金属箔上に第1合剤スラリー層を形成するとともに、前記第1合剤スラリー層上に前記第1合剤スラリー層の幅よりも狭い幅の第2合剤スラリー層を形成し、
前記第1合剤スラリー層および前記第2合剤スラリー層を乾燥して前記第1合剤層および前記第2合剤層を形成し、
前記金属箔、前記第1合剤層および前記第2合剤層に光を照射して反射された光を検出した画像を画素ごとにL*a*b*表色系で数値化し、L*値の差が4以上になる前記第1合剤層と前記第2合剤層との境界部分を検出して、前記第1合剤層の幅および前記第2合剤層の幅を同時に測定することを特徴とする二次電池用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔の表面に合剤層が設けられた二次電池用電極、それを備えた二次電池、および二次電池用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車(EV)や駆動の一部を電気モータで補助するハイブリッド自動車(HEV)が各自動車メーカーで開発され、その電源として高容量で高出力な二次電池が求められている。このような二次電池としては、正極金属箔の表面に正極合剤層が設けられた正極と、負極金属箔の表面に負極合剤層が設けられた負極とを備えた二次電池が知られている。また、二次電池の特性向上を目的として、正極合剤層や負極合剤層を2種類の合剤層を積層することによって形成した二次電池用電極も知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、集電箔と負極合剤層とを備えたリチウムイオン二次電池用負極であって、負極合剤層は第1負極合剤層および第2負極合剤層を含み、第1負極合剤層は集電箔上に配置され、第2負極合剤層は第1負極合剤層上に配置される、リチウムイオン二次電池用負極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-181539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のように、金属箔の表面に2つの合剤層を積層形成する場合、2つの合剤層の幅が電池特性に影響を及ぼすため、2つの合剤層の幅を全量検査する必要がある。
【0006】
しかしながら、金属箔の表面に2つの合剤層を積層形成する場合、通常、同じ形状で同じサイズの塗工ダイを用いて合剤スラリーが塗工される。これにより、下側(金属箔側)合剤スラリー層は上側合剤スラリー層に覆われた状態になり、乾燥工程後においては、下側(金属箔側)合剤層は上側合剤層に覆われた状態になる。このため、下側合剤層の幅を測定することが困難であるので、下側合剤スラリーを塗工・乾燥して下側合剤層の幅を測定した後で、上側合剤スラリーを塗工・乾燥して上側合剤層の幅を測定する必要がある。すなわち、下側合剤層の幅および上側合剤層の幅を同時に測定することができないので、製造工程が複雑になるという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、金属箔の表面に第1合剤層および第2合剤層が積層形成される場合において、第1合剤層の幅および第2合剤層の幅を同時に測定することが可能な二次電池用電極、それを備えた二次電池、および二次電池用電極の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る二次電池用電極は、帯状の金属箔と、前記金属箔上に設けられた合剤層とを備えた二次電池用電極であって、前記合剤層は、前記金属箔上に設けられた第1合剤層と、前記第1合剤層上に設けられた第2合剤層とを含み、前記第1合剤層の幅は、前記第2合剤層の幅よりも広い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属箔の表面に第1合剤層および第2合剤層が積層形成される場合において、第1合剤層の幅および第2合剤層の幅を同時に測定することが可能な二次電池用電極、それを備えた二次電池、および二次電池用電極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る正極体(二次電池用電極)を備えた角形二次電池の外観斜視図。
図2】本発明の一実施形態に係る正極体を備えた角形二次電池の分解斜視図。
図3図2に示す電極群を一部を展開した状態で示す斜視図。
図4図3の100-100線に沿った断面図。
図5】本発明の一実施形態に係る正極体の平面図。
図6】本発明の一実施形態に係る正極体を作製する工程の一例を示すフロー図。
図7】塗工工程S3、乾燥工程S4および検査工程S5で用いられる塗工乾燥装置の概略構成図。
図8】塗工乾燥装置のダイヘッド周辺の構造を示す図。
図9】塗工乾燥装置のダイヘッドの構造を示す図。
図10】正極箔上に第1正極合剤スラリー層および第2正極合剤スラリー層が形成された状態を模式的に示す断面図。
図11】検査装置周辺を模式的に示す図。
図12】本発明の変形例による検査装置周辺を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による二次電池用電極を備えた二次電池について説明する。
【0012】
図1図3を参照して、本発明の一実施形態による正極体(二次電池用電極)301を備えた角形二次電池20について説明する。ここでは、角形二次電池20をリチウムイオン二次電池に適用する例について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る正極体301を備えた角形二次電池20の外観斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る正極体301を備えた角形二次電池20の分解斜視図である。図3は、図2に示す電極群3を一部を展開した状態で示す斜視図である。図1および図2に示すように、角形二次電池20は、電池ケース1と蓋6を備えている。電池ケース1の内部には、発電体である電極群3が収納され、電池ケース1の上部開口は蓋6によって封止されている。蓋6は、レーザ溶接によって電池ケース1に溶接されており、電池ケース1と蓋6によって電池容器が構成されている。
【0014】
蓋6には、正極外部端子8Aと負極外部端子8Bが設けられている。この正極外部端子8Aと負極外部端子8Bを介して電極群3が充電されると共に、外部負荷に電力が供給される。また、蓋6には、ガス排出弁10が設けられている。ガス排出弁10は、プレス加工によって蓋6を部分的に薄肉化することによって形成されている。電池容器内の圧力が上昇するとガス排出弁10が開裂して電池容器の内部からガスが排出され、電池容器内の圧力が低減されることにより、角形二次電池20の安全性が確保されている。
【0015】
また、蓋6には注液口9が形成されており、この注液口9から電池ケース1内に電解液を注入した後、この注液口9に注液栓11を溶接することによって角形二次電池20を密閉封止している。電解液としては、例えば、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF)等のリチウム塩が溶解された非水電解液を用いることができる。
【0016】
角形二次電池20の電池ケース1の内部には、絶縁ケース2を介して電極群3が収納されている。絶縁ケース2は、例えばポリプロピレン等の絶縁性を有する樹脂からなり、電池ケース1と電極群3とを電気的に絶縁している。
【0017】
図3に示すように、電極群3は、正極体(正極電極)301と負極体(負極電極)302がセパレータ303を介在させて捲回軸L周りで扁平状に捲回された捲回電極群である。電極群3の後述する金属箔露出部である正極箔露出部301cと負極箔露出部302cは図2に示すように、少なくとも一部が平板状とされている。そして、正極箔露出部301cと負極箔露出部302cのそれぞれの平板状とされた部分は、正極集電板4Aの一端と負極集電板4Bの一端にそれぞれ重ね合わされて溶接等によって接続されている。なお、図3は、正極体301及び負極体302の金属箔露出部(正極箔露出部301c、負極箔露出部302c)を平板状にして正極集電板4Aおよび負極集電板4Bに接合する前の状態を示している。電極群3は、その捲回軸L方向が電池ケース1の長手方向に沿うような姿勢で電池ケース1内に挿入されている。
【0018】
正極集電板4Aの他端(上端)と負極集電板4Bの他端(上端)はそれぞれ、正極外部端子8Aと負極外部端子8Bに電気的に接続されている。なお、正極外部端子8Aおよび負極外部端子8Bと蓋6との間にはガスケット5が介在され、正極集電板4Aおよび負極集電板4Bと蓋6との間には絶縁板(図示せず)が介在されている。このガスケット5と絶縁板(図示せず)によって、正極外部端子8A、負極外部端子8B、正極集電板4Aおよび負極集電板4Bは、蓋6から電気的に絶縁されている。
【0019】
また、電池ケース1、蓋6、正極集電板4Aおよび正極外部端子8Aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作製され、負極集電板4Bおよび負極外部端子8Bは、銅または銅合金で作製されている。
【0020】
図3に示すように、電極群3は、セパレータ303を介して正極体301と負極体302を捲回軸L周りで扁平状に捲回して形成される。ここで、正極体301は、アルミニウム箔からなる正極箔(金属箔)301aと、正極箔301aの両面上に形成された正極合剤層301bとを有している。正極箔301aの幅方向(捲回軸L方向)の一方の端部には、正極合剤層301bが設けられず正極箔301aが露出する正極箔露出部301cを有している。また、負極体302は、銅箔からなる負極箔302aと、負極箔302aの両面上に形成された負極合剤層302bとを有している。負極箔302aの幅方向(捲回軸L方向)の他方の端部には、負極合剤層302bが設けられず負極箔302aが露出する負極箔露出部302cが設けられている。そして、正極箔露出部301cと負極箔露出部302cとが捲回軸L方向において互いに反対側に配置された状態で捲回軸L周りに捲回されている。
【0021】
ここで、本実施形態では図4に示すように、各正極合剤層301bは、正極箔301a上に形成された第1正極合剤層(第1合剤層)311と、第1正極合剤層311上に形成された第2正極合剤層(第2合剤層)312とを含んでいる。第1正極合剤層311と第2正極合剤層312とは、互いに異なる特性を有するように構成されている。互いに異なる特性とは、特に限定されるものではないが、例えば、導電率、空隙率などが挙げられる。通常、正極合剤層301bの厚み方向において、第2正極合剤層312の表面付近で正極活物質が最も反応し、正極合剤層301bの表面から離れる(内部に入る)にしたがって正極活物質の反応性が低下する。ここで、例えば、第1正極合剤層311の導電率を第2正極合剤層312の導電率よりも高くすれば、正極合剤層301bの内側においても正極活物質の反応性が高まるので、正極合剤層301bの厚み方向において正極活物質がより均一に反応する。このため、第2正極合剤層312の正極活物質の劣化が抑制され、角形二次電池20の寿命を延ばすことができる。また、例えば、第2正極合剤層312の空隙率を高くすれば、電解液に対する保液性を向上させることができる。
【0022】
本実施形態では、第1正極合剤層311は第2正極合剤層312に比べて高い導電率を有する。また、第1正極合剤層311と第2正極合剤層312とは、CIE(国際照明委員会)が規定するL表色系でのL値の差が4以上になっている。また、第1正極合剤層311は第2正極合剤層312に比べてL表色系でのL値が小さくなっている。すなわち、第1正極合剤層311は第2正極合剤層312に比べて高い黒色度を有している。第1正極合剤層311が第2正極合剤層312に比べて高い導電率および高い黒色度を有する理由については後述する。
【0023】
また、本実施形態では図4および図5に示すように、第1正極合剤層311の幅は、第2正極合剤層312の幅よりも広く形成されている。具体的には、第1正極合剤層311の幅方向の一方の端部は、第2正極合剤層312よりも幅方向の一方側に突出するように形成されている。その一方、第1正極合剤層311の幅方向の他方の端部は、第2正極合剤層312および正極箔301aの他方の端部と面一に形成されている。これにより、第1正極合剤層311の幅は、第1正極合剤層311の一方の端部から第2正極合剤層312の他方の端部までの距離と等しくなるので、第2正極合剤層312の上方から(正極体301の厚み方向から)第1正極合剤層311の幅を測定することが可能である。
【0024】
また、本実施形態では、第1正極合剤層311の一方の端部は表面が第2正極合剤層312に覆われていないため、第1正極合剤層311の一方の端部では第1正極合剤層311が電解液に接触する。このとき、第1正極合剤層311の一方の端部では、第1正極合剤層311の厚み方向において、第1正極合剤層311の表面付近で正極活物質が最も反応し、第1正極合剤層311の表面から離れる(内部に入る)にしたがって正極活物質の反応性が低下する。ここで、第1正極合剤層311は後述するように比較的(例えば第2正極合剤層312と比べて)炭素粒子の含有率が高く導電率が高いので、第1正極合剤層311の内側においても正極活物質の反応性が比較的高くなる。このため、第1正極合剤層311の厚み方向において正極活物質がより均一に反応するので、第1正極合剤層311の正極活物質の劣化を抑制することができる。このように、第1正極合剤層311の露出領域(第2正極合剤層312に覆われていない領域)における正極活物質の劣化を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態では、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312には、後述するように、導電材である炭素粒子が含有されており、第1正極合剤層311の炭素粒子の平均粒径は、第2正極合剤層312の炭素粒子の平均粒径に比べて小さくてもよい。このように構成すれば、第1正極合剤層311の炭素粒子の比表面積が大きくなるので、炭素粒子と正極活物質との間の接触面積が大きくなり電子の授受を効率良く行うことができる。このように、第1正極合剤層311の露出領域における正極活物質の劣化を抑制しながら、炭素粒子と正極活物質との間の電子の授受を効率良く行うことができる。
【0026】
次に、本実施形態の角形二次電池20の製造方法について説明する。
【0027】
本実施形態の角形二次電池20の製造方法は、正極体301を作製する工程と、負極体302を作製する工程とを有する。本実施形態の角形二次電池20の製造方法のその他の工程については、公知の製造方法を用いることができるので、ここでは説明を省略する。
【0028】
正極体301を作製する工程は図6に示すように、第1スラリー作製工程S1と、第2スラリー作製工程S2と、塗工工程S3と、乾燥工程S4と、検査工程S5と、プレス工程S6と、裁断工程S7とを含んでいる。
【0029】
第1スラリー作製工程S1では、正極活物質、導電材である炭素粒子、結着剤と、正極活物質および炭素粒子を分散させる分散溶媒とによって、第1正極合剤層311となる第1正極合剤スラリー(第1合剤スラリー)311aが作製される。正極活物質、炭素粒子、結着剤および分散溶媒の材質は特に限定されるものではないが、例えば、正極活物質としてのニッケルマンガン酸リチウム100重量部に対して、第1の導電材として1~10重量部の鱗片状黒鉛(炭素粒子)と、第2の導電材として1~10重量部の微粉状の炭素粒子と、結着剤として1~10重量部のポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという)とを添加し、さらに、これに分散溶媒としてN-メチルピロリドン(以下、NMPという)を添加し、混練することによって、第1正極合剤スラリー311aが作製される。
【0030】
なお、微粉状の炭素粒子としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックを用いることができる。第1の導電材として用いる黒鉛の平均粒径は、1μm~50μmであり、第2の導電材として用いるカーボンブラックの平均粒径は1nm~500nmである。また、正極活物質としては、ニッケルマンガン酸リチウム以外に、スピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウムや、マンガン酸リチウムの一部を金属元素で置換又はドープしたリチウムマンガン複合酸化物や、層状結晶構造を有するコバルト酸リチウム、チタン酸リチウムまたはこれらの一部を金属元素で置換又はドープしたリチウム-金属複合酸化物などを用いてもよい。
【0031】
第2スラリー作製工程S2は、例えば、第1スラリー作製工程S1と並行して実行することができる。第2スラリー作製工程S2では、正極活物質、導電材である炭素粒子、結着剤と、正極活物質および炭素粒子を分散させる分散溶媒とによって、第2正極合剤層312となる第2正極合剤スラリー(第2合剤スラリー)312aが作製される。正極活物質、炭素粒子、結着剤および分散溶媒の材質は特に限定されるものではないが、例えば第1正極合剤スラリー311aと同じ材料を用いることができる。
【0032】
ここで、本実施形態では、第1正極合剤スラリー311aは、第2正極合剤スラリー312aに比べて、第2の導電材としての炭素粒子の含有率が高くなっている。第2の導電材としての炭素粒子は黒色であるため、炭素粒子を多く含む第1正極合剤スラリー311aは、第2正極合剤スラリー312aに比べて、L表色系でのL値が小さくなる。すなわち、第1正極合剤スラリー311aは、第2正極合剤スラリー312aに比べて、暗く(黒く)見える。上述したように第1正極合剤層311のL値を第2正極合剤層312のL値に比べて4以上小さくするためには、第1正極合剤層311の炭素粒子の含有率を、第2正極合剤層312の炭素粒子の含有率に比べて例えば4重量パーセント以上高くすればよい。また、第1正極合剤層311は、第2正極合剤層312に比べて、炭素粒子の含有率が高くなるため導電率が高くなる。これにより、上述したように、正極合剤層301bの厚み方向において正極活物質がより均一に反応するため、正極合剤層301bの正極活物質の劣化を抑制することができる。
【0033】
また、第1正極合剤スラリー311aを、第2正極合剤スラリー312aに比べて、暗く(黒く)見えるようにする場合、さらに、第1正極合剤スラリー311aの炭素粒子の平均粒径を、第2正極合剤スラリー312aの炭素粒子の平均粒径に比べて小さくしてもよい。炭素粒子の粒径が小さくなると、比表面積が大きくなり光吸収量が多くなる。このため、合剤層がより暗く(黒く)見える。
【0034】
塗工工程S3、乾燥工程S4および検査工程S5は、図7に示す塗工乾燥装置200を用いて実行される。塗工乾燥装置200は、巻出ローラ201、複数の搬送ローラ202、ダイヘッド210、乾燥炉203、検査装置250および巻取ローラ204を備えている。
【0035】
巻出ローラ201は、正極箔301aのロールを支持して回転することによって、ロールから帯状の正極箔301aを巻き出して送り出す。複数の搬送ローラ202は、正極箔301aの搬送路に沿って配置されており、巻出ローラ201から巻き出された正極箔301aを巻取ローラ204まで搬送する。ダイヘッド210は、搬送ローラ202のうちのバックローラ202aに対向配置されているとともに、正極箔301aに対して所定の隙間を有して配置されている。ダイヘッド210は、正極箔301aにスラリーを塗工するためのものである。乾燥炉203は、ダイヘッド210に対して搬送方向(矢印D方向)下流側に配置されている。乾燥炉203内は、所定温度に設定されており、正極箔301a上のスラリーを加熱乾燥する。検査装置250は、乾燥炉203に対して搬送方向下流側に配置されている。検査装置250は、正極箔301a上の第1正極合剤層311の幅および第2正極合剤層312の幅を測定するためのものである。
【0036】
塗工工程S3において、ダイヘッド210によって、正極箔301a上に第1正極合剤スラリー311aおよび第2正極合剤スラリー312aが積層状態で塗工される。本実施形態では、ダイヘッド210は図8および図9に示すように、第1正極合剤スラリー311aおよび第2正極合剤スラリー312aを同時に塗工可能に構成されている。具体的には、ダイヘッド210は、第1ブロック211と、第2ブロック212と、第1ブロック211および第2ブロック212に挟まれたシム213とによって構成されている。
【0037】
第1ブロック211とシム213との間には、第1正極合剤スラリー311aが図示しない供給装置から供給される第1供給部215と、第1供給部215に連通し第1正極合剤スラリー311aを吐出する第1吐出口216とが設けられている。第2ブロック212とシム213との間には、第2正極合剤スラリー312aが図示しない供給装置から供給される第2供給部217と、第2供給部217に連通し第2正極合剤スラリー312aを吐出する第2吐出口218とが設けられている。第1吐出口216および第2吐出口218は、正極箔301aの幅方向に沿って延在している。
【0038】
第1正極合剤スラリー311aおよび第2正極合剤スラリー312aは、それぞれ第1吐出口216および第2吐出口218から吐出され、重ね合わさった状態で正極箔301a上に塗工される。このとき、正極箔301a上に第1正極合剤スラリー層(第1合剤スラリー層)311bが形成され、第1正極合剤スラリー層311b上に第2正極合剤スラリー層(第2合剤スラリー層)312bが形成される。第1正極合剤スラリー層311bは、例えば25μm~50μmの厚みに形成され、第2正極合剤スラリー層312bは、例えば25μm~50μmの厚みに形成される。
【0039】
ここで、第2吐出口218の幅は、第1吐出口216の幅よりも小さく形成されているため、第2正極合剤スラリー層312bは、第1正極合剤スラリー層311bの幅よりも狭い幅で形成される。なお、第1吐出口216および第2吐出口218は、幅方向の中心線が一致するように配置されている。このため、図10に示すように、第1正極合剤スラリー層311bの幅方向両端は、第2正極合剤スラリー層312bの幅方向両端よりも外側に突出した状態で形成される。例えば、第2正極合剤スラリー層312bの幅は、第1正極合剤スラリー層311bの幅よりも1mm以上狭く形成される。そして、第1正極合剤スラリー層311bの幅方向端部は、第2正極合剤スラリー層312bの幅方向端部よりも0.5mm外側に突出するように形成される。これにより、後述する検査工程S5において、第1正極合剤層311の端部および第2正極合剤層312の端部を確実に検出することが可能である。
【0040】
乾燥工程S4において、正極箔301a、第1正極合剤スラリー層311bおよび第2正極合剤スラリー層312bが乾燥炉203内を通過することにより、第1正極合剤スラリー層311bおよび第2正極合剤スラリー層312bが加熱および乾燥され、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312となる。このとき、第1正極合剤層311の炭素粒子の含有率は、10~15質量%であり、第2正極合剤層312の炭素粒子の含有率は6~10質量%であることが好ましい。この場合、正極体301の正極合剤層301bとして必要な性能を発揮しながら、第1正極合剤層311のL値を第2正極合剤層312のL値に比べて4以上小さくすることができる。
【0041】
検査工程S5において、検査装置250によって、正極箔301a上の第1正極合剤層311の幅および第2正極合剤層312の幅が測定される。具体的には、検査装置250は図11に示すように、正極箔301aから所定の間隔を隔てて配置される色差計251および照明装置252を備えている。照明装置252は、例えばハロゲンランプ等によって構成されており、正極箔301aに対して略垂直方向に光を照射する。照明装置252は、色差計251とは別に設けられていてもよいし、色差計251に含まれていてもよい。
【0042】
色差計251は、照明装置252から出射し正極箔301a、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312で反射された光を検出する。また、色差計251は、検出した画像を画素ごとに、L表色系で数値化する。なお、色差計251の分解能は特に限定されるものではないが、色差計251は、正極箔301a、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312の表面において1~2mm×1~2mmの領域を1画素として検出する。
【0043】
本実施形態では、第1正極合剤層311の幅方向両端は、第2正極合剤層312の幅方向両端よりも外側に突出しているので、色差計251によって、第1正極合剤層311の幅方向両端部で反射された光が受光される。さらに、第1正極合剤層311は、第2正極合剤層312に比べてL表色系でのL値が小さい。これにより、正極箔301aと第1正極合剤層311との境界部分、及び第1正極合剤層311と第2正極合剤層312との境界部分では、L値(黒色度)に差があるため、検査装置250によって第1正極合剤層311の両端部、及び第2正極合剤層312の両端部を検出することができる。このため、第1正極合剤層311の幅、及び第2正極合剤層312の幅を同時に測定することができる。
【0044】
また、本実施形態では、第1正極合剤層311と第2正極合剤層312とをL値の差が4以上になるように形成することによって、第1正極合剤層311と第2正極合剤層312との境界部分では、L値の差が十分大きいので、第2正極合剤層312の両端部を精度良く検出することができる。なお、本願発明者が行った実験において、ニッケルマンガン酸リチウム100重量部に対して、8重量部の鱗片状黒鉛と、5重量部の微粉状の炭素粒子とを添加して形成した第1正極合剤層311では、L値のばらつき3σ(標準偏差の3倍)は2未満であり、L値は14~15であった。また、ニッケルマンガン酸リチウム100重量部に対して、7重量部の鱗片状黒鉛と、3重量部の微粉状の炭素粒子とを添加して形成した第2正極合剤層312では、L値のばらつき3σは2未満であり、L値は24~26であった。このように、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312のそれぞれのL値のばらつき3σが2未満であるため、第1正極合剤層311のL値と第2正極合剤層312のL値との差が4以上であれば、第1正極合剤層311と第2正極合剤層312との境界を検出することができる。
【0045】
また、本実施形態では、正極箔301aは、アルミニウム箔によって形成されているため、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312に比べてL値が大きい。そして、第1正極合剤層311は第2正極合剤層312に比べてL値が小さくなるように形成されているので、正極箔301aのL値と第1正極合剤層311のL値との差が大きくなる。これにより、正極箔301aと第1正極合剤層311との境界を容易に精度良く検出することができるので、第1正極合剤層311の幅を容易に精度良く検出することができる。
【0046】
検査装置250を通過した正極箔301aは、巻取ローラ204まで搬送され、巻取ローラ204に巻き取られる。巻取ローラ204で巻き取られたロールは、塗工面が裏表反転する状態で巻出ローラ201にセットされ、上述した塗工工程S3、乾燥工程S4および検査工程S5が再度実行される。これにより、正極箔301aの両面に第1正極合剤層311および第2正極合剤層312が形成される。
【0047】
次に、プレス工程S6において、両面に第1正極合剤層311および第2正極合剤層312が形成された正極箔301aを、ロールプレス機(図示せず)の一対のローラ間に通過させる。ローラは60℃~120℃に加熱されており、正極箔301aの両面に形成された第1正極合剤層311および第2正極合剤層312は、加熱および圧縮される。これにより、第2正極合剤層312、第1正極合剤層311、正極箔301a、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312からなる積層体は、例えば50μm~100μmの厚みに形成される。
【0048】
裁断工程S7において、両面に第1正極合剤層311および第2正極合剤層312が形成された正極箔301aを、幅方向中心で裁断することによって、図5で示した正極体301が得られる。
【0049】
なお、ここでは、図10に示すような裁断工程S7前の第1正極合剤層311の幅および第2正極合剤層312の幅を検査装置250を用いて測定する例について説明したが、図5に示すような裁断工程S7後の第1正極合剤層311の幅および第2正極合剤層312の幅を測定することも可能である。裁断工程S7において、第1正極合剤層311の幅方向の他方の端部は、第2正極合剤層312および正極箔301aと面一に形成される。その一方、第1正極合剤層311の幅方向の一方の端部は、第2正極合剤層312よりも幅方向の一方側に突出するように形成される。これにより、上述したように、第1正極合剤層311の幅は、第1正極合剤層311の一方の端部から第2正極合剤層312の他方の端部までの距離と等しくなる。このため、検査装置250を用いて、第1正極合剤層311の一方の端部と第2正極合剤層312の他方の端部とを検出することによって、第1正極合剤層311の幅を測定することができる。
【0050】
負極体302を作製する工程は、正極体301を作製する工程を簡略化したものである。具体的には、負極体302を作製する工程は、スラリー作製工程と、塗工工程S3と、乾燥工程S4と、検査工程S5と、プレス工程S6と、裁断工程S7とを含んでいる。
【0051】
スラリー作製工程では、負極活物質、結着剤および分散溶媒によって、負極合剤層302bとなる負極合剤スラリーが作製される。負極活物質、結着剤および分散溶媒の材質は特に限定されるものではないが、例えば、負極活物質としての非晶質炭素の粉末100重量部に対して、結着剤として10重量部のPVDFを添加し、さらに、これに分散溶媒としてNMPを添加し、混練することによって、負極合剤スラリーが作製される。
【0052】
なお、負極活物質としては、非晶質炭素以外に、例えば、リチウムイオンを挿入、脱離可能な天然黒鉛、又は、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素粒子、又は、SiやSnなどの化合物(例えば、SiO、TiSi等)、又は、これらの複合材料を用いてもよい。負極活物質の粒子形状は、特に限定されないが、例えば、鱗片状、球状、繊維状、塊状等であってもよい。
【0053】
また、負極活物質として各種黒鉛を用いる場合は、分散溶媒として水を選択することができ、環境負荷を低減することが可能である。水系負極スラリーとしては、例えば天然黒鉛の粉末100重量部に対して、結着剤として1重量部のスチレンブタジエンゴムと、増粘剤として1重量部のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、を添加した負極合剤スラリーが挙げられる。
【0054】
なお、負極体302および正極体301を作製する際の結着剤としてPVDFを用いる例について示したが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン、アクリル系樹脂などの重合体およびこれらの混合体などを用いることができる。
【0055】
塗工工程S3、乾燥工程S4および検査工程S5は、上述した正極体301を作製する工程と同様、塗工乾燥装置200を用いて実行される。
【0056】
ただし、この塗工工程S3では、1種類の負極合剤スラリーだけを塗工するため、吐出口が1つだけ設けられたダイヘッドを用いる。塗工工程S3では、負極合剤スラリーが負極箔302a上に塗工される。
【0057】
乾燥工程S4において、負極箔302aおよび負極合剤スラリー層が乾燥炉203内を通過することにより、負極合剤スラリー層が加熱および乾燥され、負極合剤層302bとなる。
【0058】
検査工程S5において、検査装置250によって、負極箔302a上の負極合剤層302bの幅が測定される。
【0059】
検査装置250を通過した負極箔302aは、巻取ローラ204まで搬送され、巻取ローラ204に巻き取られる。巻取ローラ204で巻き取られたロールは、塗工面が裏表反転する状態で巻出ローラ201にセットされ、上述した塗工工程S3、乾燥工程S4および検査工程S5が再度実行される。これにより、負極箔302aの両面に負極合剤層302bが形成される。
【0060】
その後、正極体301を作製する工程と同様にして、プレス工程S6および裁断工程S7が実行されることによって、図4で示した負極体302が得られる。
【0061】
本実施形態では、上記のように、第1正極合剤層311の幅は、第2正極合剤層312の幅よりも広い。これにより、色差計251によって、第1正極合剤層311の幅方向端部で反射された光、及び第2正極合剤層312の幅方向端部で反射された光を同時に検出することが可能である。また、第1正極合剤層311と第2正極合剤層312とは、炭素粒子の含有率が異なり、L表色系でのL値が異なる。このため、正極箔301aと第1正極合剤層311との境界部分、及び第1正極合剤層311と第2正極合剤層312との境界部分では、L値の差があるため、色差計251を備えた検査装置250によって、第1正極合剤層311の一方の端部および第2正極合剤層312の他方の端部と、第2正極合剤層312の両端部とを検出することが可能である。したがって、第1正極合剤層311の幅と、第2正極合剤層312の幅とを同時に測定することができる。これにより、正極体301の製造工程が複雑になるのを抑制することができる。
【0062】
また、上記のように、正極体301の正極合剤層301bを第1正極合剤層311および第2正極合剤層312の2層構造にするとともに、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312のL値を4以上異ならせる。正極体301では、互いのL値が4以上異なるように第1正極合剤層311および第2正極合剤層312の炭素粒子の含有率を異ならせたとしても、正極体301に必要な性能を容易に発揮することができる。このため、本発明の二次電池用電極を正極体301に容易に適用することができる。
【0063】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態では、第1正極合剤スラリー311aおよび第2正極合剤スラリー312aを塗工する際に、同一のダイヘッド210を用いることによって同時に塗工する例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、第1正極合剤スラリー311aを塗工するためのダイヘッドに対して搬送方向(矢印D方向)下流側に、第2正極合剤スラリー312aを塗工するためのダイヘッドを別途設けることによって、第1正極合剤スラリー311aを塗工した後に第2正極合剤スラリー312aを塗工してもよい。そして、第1正極合剤スラリー311aおよび第2正極合剤スラリー312aを乾燥した後、第1正極合剤層311の幅および第2正極合剤層312の幅を同時に測定してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、第1正極合剤層311のL値を第2正極合剤層312のL値に比べて小さくする例について示したが、本発明はこれに限らず、第1正極合剤層311のL値を第2正極合剤層312のL値に比べて大きくしてもよい。この場合にも、正極箔301aと第1正極合剤層311との境界部分、及び第1正極合剤層311と第2正極合剤層312との境界部分では、L値(黒色度)の差があるため、第1正極合剤層311の幅、及び第2正極合剤層312の幅を同時に測定することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、第1正極合剤層311のL値と第2正極合剤層312のL値とを異ならせるために、炭素粒子の含有率を異ならせ、かつ、炭素粒子の平均粒径を異ならせる例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、第1正極合剤層311の炭素粒子の平均粒径を、第2正極合剤層312の炭素粒子の平均粒径に比べて小さく(または大きく)するだけの場合であっても、第1正極合剤層311のL値は第2正極合剤層312のL値に比べて小さく(または大きく)なる。
【0067】
また、上記実施形態では、第1正極合剤層311の炭素粒子の含有率を異ならせ、かつ、第2正極合剤層312の炭素粒子の平均粒径を異ならせる例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、第1正極合剤層311の炭素粒子の含有率を第2正極合剤層312の炭素粒子の含有率に比べて大きく(または小さく)し、かつ、第1正極合剤層311の厚みを第2正極合剤層312の厚みに比べて大きく(または小さく)してもよい。第1正極合剤層311の厚みを第2正極合剤層312の厚みに比べて大きく(または小さく)した場合、第1正極合剤層311の光吸収量が第2正極合剤層312の光吸収量に比べて多く(または少なく)なるので、第1正極合剤層311のL値は第2正極合剤層312のL値に比べてより小さく(または大きく)なる。
【0068】
また、上記実施形態では、照明装置252から正極箔301aに対して略垂直方向に光を照射し、正極箔301a、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312で反射された光を色差計251によって検出し、L値(黒色度)を用いて、第1正極合剤層311の幅および第2正極合剤層312の幅を測定する例について説明した。この方法では、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312を互いに異なるL値を有するように構成した。しかしながら、本発明はこれに限らず、第1正極合剤層311および第2正極合剤層312が同じL値を有する場合であっても、第1正極合剤層311の幅および第2正極合剤層312の幅を同時に測定することが可能である。
【0069】
具体的には、図12に示した本発明の変形例による検査装置250のように、照明装置252を幅方向両側に配置し、正極箔301aに対して斜め方向から光を照射する。このような照明装置252としては、例えばリング照明装置やバー照明装置などが挙げられる。正極箔301aに対して斜め方向から光を照射することにより、検査領域全体が暗くなる(暗視野検査ともいう)が、第1正極合剤層311の端部および第2正極合剤層312の端部で反射された光が散乱するため、第1正極合剤層311の端部および第2正極合剤層312の端部だけが明るくなる。この光が色差計251によって検出されることによって、第1正極合剤層311の幅および第2正極合剤層312の幅を同時に測定することができる。この方法では、色差計251を用いなくてもよく、検出光を二値化処理することによって第1正極合剤層311の端部および第2正極合剤層312の端部を検出することも可能である。
【0070】
また、上記実施形態では、本発明の二次電池用電極を正極体301に用いる例について示したが、本発明はこれに限らず、負極体302に用いてもよい。ただし、負極体302の負極合剤層302bには、非晶質炭素の粉末、すなわち黒色の粉体が多く含まれるため、負極合剤層302bを第1負極合剤層と第2負極合剤層との2層構造とした場合に、第1負極合剤層と第2負極合剤層とのL値の差が大きくなりにくい。このため、本発明の二次電池用電極を負極体302に用いる場合は、図12に示した方法で測定することが好ましい。
【0071】
また、上記実施形態では、第1正極合剤層311の他方の端部が、第2正極合剤層312および正極箔301aと面一に形成され、第1正極合剤層311の一方の端部が、第2正極合剤層312よりも幅方向の一方側に突出するように形成されたものを二次電池用電極として用いる例について示したが、本発明はこれに限らない。第1正極合剤スラリー層311bの幅方向両端が、第2正極合剤スラリー層312bの幅方向両端よりも外側に突出した状態で形成されたものを二次電池用電極として用いてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、正極体301と負極体302を、セパレータ303を介在させて捲回する例について示したが、本発明はこれに限らず、セパレータ303を介在させて正極体301と負極体302を交互に積層させる二次電池にも適用可能である。
【0073】
また、上記実施形態では、第1正極合剤層311と第2正極合剤層312とが互いに異なる特性を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、第1正極合剤層311と第2正極合剤層312とは、成分および組成比が同じに構成され、同じ特性を有してもよい。この場合、L値の差を用いた方法では第1負極合剤層の幅および第2負極合剤層の幅を同時に測定できないので、図12に示した方法で測定すればよい。
【符号の説明】
【0074】
20:角形二次電池(二次電池)、301:正極体(二次電池用電極)、301a:正極箔(金属箔)、301b:正極合剤層(合剤層)、311:第1正極合剤層(第1合剤層)、311a:第1正極合剤スラリー(第1合剤スラリー)、311b:第1正極合剤スラリー層(第1合剤スラリー層)、312:第2正極合剤層(第2合剤層)、312a:第2正極合剤スラリー(第2合剤スラリー)、312b:第2正極合剤スラリー層(第2合剤スラリー層)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12