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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電子蒸気吸入器
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20221220BHJP
【FI】
A24F40/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022033574
(22)【出願日】2022-03-04
(62)【分割の表示】P 2020115704の分割
【原出願日】2015-06-05
(65)【公開番号】P2022084705
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】1411488.8
(32)【優先日】2014-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】JT INTERNATIONAL S.A.
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ギル、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンコ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ブルヴィニク、ルボス
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0060853(US,A1)
【文献】特表平08-511175(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19854005(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0024834(US,A1)
【文献】特開2012-135299(JP,A)
【文献】米国特許第02104266(US,A)
【文献】特表昭62-501050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088045(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0277764(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0293888(US,A1)
【文献】特表2009-502136(JP,A)
【文献】特表2013-519382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F40/00-47/00
A61M15/00
A61M15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端を有する筐体と、
前記筐体内に位置するチャンバと、
前記チャンバに取り外し可能に受容され得る使い捨て物品であって、風味放出媒体と誘導加熱可能要素とを含み、前記風味放出媒体が通気性材料で取り囲まれ、前記使い捨て物品の遠位端がセルロース繊維で形成され、前記使い捨て物品が前記チャンバ内に受容されたときに、前記風味放出媒体と前記誘導加熱可能要素が、前記チャンバと直接の接触を防止するように、前記使い捨て物品内に収容される、使い捨て物品と、
筐体内に存在する誘導加熱装置であって、前記誘導加熱装置は、前記誘導加熱可能要素を誘導加熱し、それによって前記風味放出媒体を加熱するように前記チャンバを囲む、誘導加熱装置と、を有する電子蒸気吸入器。
【請求項2】
請求項1に記載された電子蒸気吸入器において、
前記通気性材料は、セルロース繊維、紙、綿、又は絹を含む、電子蒸気吸入器。
【請求項3】
請求項1に記載された電子蒸気吸入器において、
空気流入口であって、ユーザによる吸入の間、空気が前記空気流入口を通って前記筐体に入り、前記使い捨て物品を通ってユーザの口に向かって近位に移動する前に前記チャンバ内に受容された前記使い捨て物品の前記遠位端に入る空気流路を辿るように配置された空気流入口を有する、電子蒸気吸入器。
【請求項4】
請求項1に記載された電子蒸気吸入器において、
前記チャンバが、前記筐体の近位端に配置される、電子蒸気吸入器。
【請求項5】
請求項1に記載された電子蒸気吸入器において、
前記誘導加熱装置が、誘導コイルを有する、電子蒸気吸入器。
【請求項6】
請求項5に記載された電子蒸気吸入器において、
前記誘導コイルが、前記チャンバの周りに延びる、電子蒸気吸入器。
【請求項7】
請求項1に記載された電子蒸気吸入器において、
前記筐体の近位端のマウスピースをさらに有する、電子蒸気吸入器。
【請求項8】
請求項1に記載された電子蒸気吸入器において、
前記使い捨て物品の内部を実質的に所定の温度に維持するために前記誘導加熱装置に通電するように構成された制御装置を有する、電子蒸気吸入器。
【請求項9】
請求項3に記載された電子蒸気吸入器において、
前記空気流路に沿って配置された温度センサをさらに有する、電子蒸気吸入器。
【請求項10】
請求項9に記載された電子蒸気吸入器において、
前記温度センサが、熱電対、抵抗温度検出器、またはサーミスタである、電子蒸気吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して電子蒸気吸入器に関し、より詳細には、電子蒸気吸入器とともに用いるための風味放出媒体を含むカプセルに関し、風味放出媒体は、ユーザによる吸入用の蒸気を生成するために加熱され得る。
【背景技術】
【0002】
たばこ、葉巻およびパイプなどの従来の喫煙具に替わって用いられ得る(電子たばこ、e-たばこおよびパーソナルヴェポライザとしても知られる)電子蒸気吸入器の使用は、ますます人気となり広まっている。通常は電池式である電子蒸気吸入器は、ユーザによって吸入され得るニコチンを含む蒸気を生成するために、ニコチンを含む液体を加熱および霧化する。蒸気は、肺にニコチンを運ぶためにマウスピースを通して吸入され、ユーザにより吐き出される蒸気は、従来の喫煙具の煙の外見をおおまかに模倣する。蒸気の吸入は、従来の喫煙に類似した身体的感覚を生み出すが、二酸化炭素およびタールなどの有害な化学物質は、燃焼がないことから、製造されたり吸入されたりしない。
【0003】
現在、様々な電子蒸気吸入器が市販されているが、これらは全て、本開示が克服しようとする欠点を有する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の第1の態様によれば、電子蒸気吸入器用のカプセルが提供され、カプセルは、風味放出媒体を収容するためのシェルと、
シェル内部に配置され、風味放出媒体を加熱するように構成される誘導加熱可能要素と
を備え、シェルの少なくとも一部は通気性材料を含む。
【0005】
本開示の第2の態様によれば、電子蒸気吸入器が提供され、電子蒸気吸入器は、
近位端および遠位端を有する筐体と、
筐体の近位端のマウスピースと、
筐体内に配置される、本開示の第1の態様によるカプセルと、
誘導加熱可能要素を誘導的に加熱し、それにより風味放出媒体を加熱するように構成される誘導加熱装置と
を備える。
【0006】
カプセルは、風味放出媒体を電子蒸気吸入器内に装着するために、ユーザにとって好都合な方法を提供し、ユーザが風味放出媒体を直接的に操作する必要性を回避するので、漏出および廃棄の可能性を減少させる。風味放出媒体は、あらかじめ製造されたカプセルを形成するために製造中にシェル内に投入されるので、その完全性、安全性および品質も保証され得る。風味放出媒体の正確な投与も保証され得る。
【0007】
風味放出媒体に近接して、および少なくともその一部と接触して、誘導加熱可能要素をシェル内に配置することにより、風味放出媒体は、誘導磁場の存在下で迅速かつ効率的に加熱され、これは比較的低い所要電力で素早い加熱応答をもたらす。カプセルは可動部をまったく有さず、発熱要素は、シェルに含まれる使い捨ての物品である。発熱要素は、カプセルが交換されるたびに新しくされるので使い切られることがなく、それゆえ経時的な性能の低下がない。これは、たとえば、吸入器のハウジングに、所定の使用量の後に使い切られるか故障する抵抗発熱体を有する既存の電子蒸気吸入器と対比されるべきである。故障時には、電子蒸気吸入器は全体的に廃棄されるか、新しいものと交換される必要がある場合がある。
【0008】
通気性材料は、ユーザがマウスピースを通して吸入するときに、周囲空気がシェル内に流入し、シェルを貫通して流れることを可能にし、空気流がシェルを通して均一に分配されることを確実にする。これは、加熱された風味放出媒体からの風味および香りの放出を最大限にするので、ユーザに対する魅力が向上した蒸気を生成する。
【0009】
風味放出媒体は、ユーザによる吸入用の蒸気を放出するために加熱され得る任意の材料であってもよい。風味放出媒体は、タバコまたはタバコ材料であってもよく、プロピレングリコールなどの蒸気形成媒体が浸透されてもよい。風味放出媒体は、しかしながら、タバコに限定されず、あらゆる風味放出媒体が用いられ得る。風味放出媒体は、微細な欠片もしくはペレット、または繊維状を含む、任意の適切な形状を取り得る。
【0010】
カプセルは、典型的には一度のみ使用する使い捨ての物品である。これは、それゆえ、充分な風味および香りが風味放出媒体から放出されなくなると、電子蒸気吸入器から容易に損傷を受けることなく取り外され得る。風味放出媒体をあらかじめ充填されている新たなカプセルが、その場所にたやすく挿入され得る。
【0011】
シェルは、ベース領域および側壁領域を含んでもよい。ベース領域は、通気性材料で形成されてもよい。側壁領域は、通気性材料で形成されてもよい。ベース領域および側壁領域は、一体成形されてもよい。空気の均一な流れは、通気性のベース領域および/または側壁領域を通してシェル内に提供されるので、加熱された風味放出媒体にわたる均一な空気流を確実にする。
【0012】
シェルは、通気性材料で形成されてもよい蓋を含んでもよい。蓋は、シェルを閉鎖するために側壁領域の上部周縁部に密着(seal)され得る。加熱された空気または蒸気は、ゆえに通気性の蓋を通ってシェルを出てもよい。加熱空気が通気性の蓋を通ってシェルを出る場合、加熱空気は、典型的には、電子蒸気吸入器を通るにつれて冷えて、凝結して、蒸気を形成する。どちらの場合でも、許容可能な風味および香りを有する蒸気が、ユーザによる吸入のためにマウスピースに運ばれる。
【0013】
通気性材料は、電気絶縁性かつ非磁性の材料であることが好都合である。この材料の本質的な特性は、空気が材料を貫通して流れるための高い通気性、高温への抵抗および低コストを含む。適切な材料の例としては、セルロース繊維、紙、綿および絹が挙げられる。このリストは網羅的なものではなく、当業者であれば、多くの他の通気性材料が用いられ得るということを容易に理解するだろう。通気性材料は、フィルタとしても作用し得る。
【0014】
蓋は、たとえば、加熱された空気または蒸気用のシェルからの空気流出口を提供するために、貫通可能であってもよい。
【0015】
カプセルは、複数の誘導加熱可能要素を含んでもよい。誘導加熱可能要素の数は、風味放出媒体の最適な加熱をもたらすように選択され得る。誘導加熱可能要素は、ベース領域と蓋との間で離間されてもよい。誘導加熱可能要素は、一定の間隔で離間されてもよい。誘導加熱可能要素の間隔は、誘導加熱可能要素および風味放出媒体がベース領域と蓋との間で交互に配置されるように、実質的に風味放出媒体用の複数の隣接領域を画定する。
【0016】
1つまたはそれぞれの誘導加熱可能要素は、その断面形状がシェルの断面形状と略一致するように形成されてもよい。シェルは、たとえば、断面が略円形であってもよく、1つまたはそれぞれの誘導加熱可能要素は、シェル内に同軸配置されてもよい略円形の円盤を含んでもよい。
【0017】
1つまたはそれぞれの誘導加熱可能要素は、1つまたは複数の開口を含んでもよい。これは、空気が1つまたはそれぞれの誘導加熱可能要素を貫通して流れることを可能にし得るので、シェルを通る空気流を向上させ、ゆえに、加熱された風味放出媒体を通る空気流を向上させる。
【0018】
電子蒸気吸入器の筐体は、カプセルが取り外し可能に配置されるチャンバを含んでもよい。チャンバは、外部環境からは熱的に隔離されてもよい。チャンバは、筐体の遠位端と近位端との間の任意の適切な位置にあってもよい。いくつかの実施形態において、チャンバは近位端に位置し得る。他の実施形態において、チャンバは遠位端に位置し得る。後者の場合、シェルの内容物が誘導加熱装置の動作中に加熱されるにつれて筐体の外側表面の温度が少し上昇しても、この温度の上昇は、マウスピースがある筐体の近位端では発生しない。
【0019】
誘導加熱装置は、誘導コイルを備えてもよい。誘導コイルは、チャンバの周りに延びてもよい。
【0020】
筐体は、空気流入口を含んでもよく、空気が、その空気流入口を通して、チャンバ内に流入し、通気性材料を通してシェル内に流入することが可能である。複数の空気流入口が設けられ得る。筐体は、1つまたはそれぞれの空気流入口を通る空気流、ひいては通気性材料を通してシェル内に入る空気流を変更するために、空気流制御機構が取り付けられてもよい。これは、ユーザが、マウスピースを通した吸入中に、加熱された風味放出媒体から放出される風味および香りの量に影響を及ぼすことを可能にする場合がある。
【0021】
電子蒸気吸入器は、シェル内の温度を測定するために温度センサを含んでもよい。温度センサは、シェル、たとえば蓋を貫通できるが、これは厳密に必要なものではない。たとえば、熱電対、抵抗温度検出器またはサーミスタなど、任意の適切な温度センサが使用され得る。
【0022】
温度センサは、加熱された空気または蒸気がシェルからマウスピースへと流れることを可能にするための空気流出口としても作用し得る中空の通路を含み得る。
【0023】
電子蒸気吸入器は、シェル内で略一定の所定の温度を維持するために、誘導加熱装置を活性化(energise)するように構成されてもよい制御装置を含んでもよい。制御装置は、温度センサによって測定された温度に基づき誘導加熱装置を活性化するように構成され得るので、閉ループフィードバックの制御装置を生み出す。しかしながら、温度制御は、シェル内の温度を測定するために温度センサを用いなくてももたらされ得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示によるカプセルを含む電子蒸気吸入器の概略断面図である。
図2図1に示す電子蒸気吸入器の遠位端およびカプセルの拡大図である。
図3図1および図2に示すカプセルを通した概略側面図である。
図4図2のA-A線に沿った断面図である。
図5】代替的な実施形態の、図2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の実施形態は、以下に例示のみを目的として、添付の図面を参照して説明される。
【0026】
電子蒸気吸入器10は、近位端14および遠位端16を有する略細長い筐体12を備え
る。電子蒸気吸入器10は、近位端14にマウスピース18を含み、これを通してユーザは、風味放出媒体40を加熱することにより生じる蒸気を吸入することができる。電子蒸気吸入器10は、マイクロプロセッサ(図示せず)の形態の制御装置20と、たとえば、誘導的に再充電可能であり得る1つまたは複数のバッテリの形態の動力源22とを含む。
【0027】
筐体12は、カプセル26が取り外し可能に挿入され得るチャンバ24を含む。図面において、チャンバ24は、筐体12の遠位端16に位置するが、これは厳密に必要であるわけではなく、近位端14と遠位端16との間の任意の適切な位置にあってもよい。図示される実施形態において、チャンバ24は、取り外し可能な部品として形成され、筐体12の遠位端16から取り外すことによってアクセスされる。代替的な実施形態において、チャンバ24は、取り外し可能ではなく筐体12に形成されてもよく、チャンバ24は、単にアクセスカバーまたはキャップを取り外すことによってアクセスされてもよい。どちらにしても、カプセル26はチャンバ24内に容易に挿入され、またはチャンバ24から容易に取り外され得る。
【0028】
図3および図4において最もよく見えるカプセル26は、図示される実施形態においては略円形の断面を有するシェル28を備える。シェル28は、一体成形され得るベース30および側壁32を備える。側壁32は、シェル28の上部34に開口36を画定する上部周縁部33を有する。図示される実施形態において、シェル28の直径は、シェル28が略円錐台形状を有するように、ベース壁30から上部34へと次第に増加する。この直径は、しかしながら、シェル28が略円筒状を有するように略一定であってもよい。
【0029】
カプセル26は、たとえば適切な接着剤を用いてまたは他の任意の適切な方法で、側壁32の上部周縁部33の周りでシェル28の上部34に密着される蓋38を備える。図1~4に示す実施形態において、ベース30および側壁32は、両方とも通気性材料で形成されるので、周囲空気がシェル28内に流入することを可能にする。蓋38も通気性材料で形成されているので、加熱された空気または蒸気がシェル28を出て、導管15に沿ってマウスピース18へと流れることを可能にする。通気性材料は、典型的にはセルロース繊維を含むが、本明細書ですでに説明したように、もちろん他の材料も用いられ得る。
【0030】
シェル28は、側壁32の上部周縁部33の周りでシェル28の上部34に蓋38が密着される前に、風味放出媒体40で充填される。風味放出媒体40は、電子蒸気吸入器10のマウスピース18を通したユーザによる吸入用の蒸気を生成するために加熱され得るように、典型的には、プロピレングリコールなどの蒸気形成媒体が浸透されてもよいタバコまたはタバコ材料を含む。タバコまたはタバコ材料が使用される場合、電子蒸気吸入器10は、電子たばことして用いられ得る。しかしながら、本明細書ですでに説明したように、タバコ以外の材料も使用され得る。
【0031】
カプセル26は、シェル28内で、ベース30と蓋38との間で大まかには等しい距離だけ離間されている複数の誘導加熱可能要素42を含む。誘導加熱可能要素42は、誘導磁場の存在下で温度上昇する任意の適切な物質を含む。
【0032】
図示される実施形態において、誘導加熱可能要素42は、その断面がシェル28の略円形の断面と略一致する略円形の円盤形状(図4参照)である。誘導加熱可能要素42は、しかしながら、任意の適切な形状を取ることができる。図4からわかるように、円形の誘導加熱可能要素42の周縁部とシェル28内の側壁32との間を空気が流れることができるように、円形の誘導加熱可能要素42の直径は、円形のシェル28の直径よりも小さい。
【0033】
誘導加熱可能要素42は、風味放出媒体40の少なくとも一部と接触する。結果として
、誘導加熱可能要素42が誘導磁場の存在下で加熱されると、風味放出媒体40は、シェル28にわたって迅速および均一に加熱される傾向がある。結果として、加熱されたシェル28の温度は全体を通して略均一である。
【0034】
電子蒸気吸入器10は、動力源22により通電され得る誘導コイル52を備える誘導加熱装置50を含む。当業者により理解されるように、誘導コイル52が通電されると、磁場が形成され、これは誘導加熱可能要素42に渦電流を生じさせるので、誘導加熱可能要素42を加熱する。この熱はその後、たとえば、伝導、放射および対流によって、誘導加熱可能要素42から風味放出媒体40へと伝達される。
【0035】
誘導加熱装置50の動作は、風味放出媒体40を、風味放出媒体40からの風味および香りの放出に対して最適化された略一定の温度でシェル28内に維持するために、制御装置20によって制御される。
【0036】
図1および図2に示される実施形態において、電子蒸気吸入器10は、カプセル26がチャンバ24内にあるときに、蓋38を貫通してシェル28内へと延びる温度センサ44を含む。温度センサ44は、シェル28内の温度を測定し、制御装置20は、温度センサ44によって測定された温度に基づき誘導加熱装置50の動作を制御する。
【0037】
ユーザが蒸気を吸入するために電子蒸気吸入器10を使用することを望む場合、ユーザは、最初に、たとえば筐体12の遠位端16からチャンバ24を(たとえば、ねじを緩めることにより)取り外すことによって、チャンバ24へのアクセスを得る必要がある場合がある。ユーザはその後、あらかじめ製造されているカプセル26をチャンバ24内に配置する。あらかじめ製造されているカプセル26は、典型的には、個別に購入できるパックで供給され、風味放出媒体40および誘導加熱可能要素42は、カプセル26の製造中に提供されるので、すでに各カプセル26に含まれる。カプセル26をチャンバ24内に装着することは、それゆえ、ユーザにとって非常に単純な工程である。
【0038】
ユーザはその後、たとえば筐体12の遠位端16にチャンバ24を(たとえば、筐体12上にねじ込み戻すことにより)再び取り付けることによって、チャンバ24を閉鎖する。チャンバ24の筐体12への取り付けの間、温度センサ44は蓋38を貫通する。そして、電子蒸気吸入器10は、ユーザによって使える状態へとスイッチを入れられ得るので、風味放出媒体40が燃焼されることなく加熱されるように、上述のように、誘導コイル52に通電し、誘導加熱可能要素42および風味放出媒体40を加熱する。
【0039】
ユーザがマウスピース18を覆うように口をあてて吸入すると、周囲空気は、空気流入口54を通してチャンバ24内に引き込まれる。周囲空気は、上述のように通気性材料で形成されているベース30および側壁32を通してシェル28に入る。この空気流は、線56によって概略的に示されている。空気はシェル28を通って流れるにつれて加熱され、適切な香りおよび風味を有する加熱空気は、線58によって示されるように、通気性の蓋38を通ってシェル28の外に流れる。加熱空気は、導管15に沿って流れるにつれて、冷えて凝結して、マウスピース18を通してユーザにより吸入され得る蒸気を形成する。制御装置20は、マウスピース18での最適な蒸気温度が個人の選択の問題であることから、ユーザが所望の蒸気吸入温度を選択することを可能にするために、温度選択装置を含むことができる。
【0040】
吸入中、および周囲空気がシェル28内におよびシェル28を通って流れるときに、誘導コイル52は、シェル28内で略一定の温度を維持するために必要に応じて通電され得ることが理解される。これは結果として、マウスピース18を通してユーザにより吸入される蒸気の温度が略一定であることを確実にする。
【0041】
マウスピース18に供給される蒸気の風味および香りが、ユーザが受け入れられないと考えるレベルに達すると、チャンバ24は、たとえば、これを筐体12の遠位端16から取り外すことによってアクセスされ得る。使用済みのカプセル26はその後取り出されて廃棄され、電子蒸気吸入器10を使用準備が完了した状態にするためにチャンバ24が上述のように遠位端16に再び装備される前に、新たなカプセル26がチャンバ24に配置され得る。
【0042】
図5は、電子蒸気吸入器60の代替的な実施形態を示す。電子蒸気吸入器60は、図1図2および図4に示す電子蒸気吸入器10と多くの共通の特徴部を共有し、対応する特徴部は、それゆえ対応する参照符号により示される。
【0043】
電子蒸気吸入器60は、中空の通路46を有する変更された温度センサ62を用い、加熱された空気または蒸気は、中空の通路46を通してシェル28の外へと流れ、導管15に沿ってマウスピース18へと達する。それゆえ、この代替的な実施形態においては、蓋38が通気性材料を含むことは厳密に必要というわけではない。温度センサ62を収容するために、誘導加熱可能要素42はそれぞれ、中央の隙間64を含む。これらの隙間は、シェル28を通る空気流を向上させる傾向もある。
【0044】
先行する段落で例示的な実施形態を説明したが、これらの実施形態には、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく様々な変更が行われてもよいことが理解されるべきである。ゆえに、特許請求の範囲の広さおよび範囲は、上述の例示的な実施形態に限定されるべきではない。特許請求の範囲および図面を含む、本明細書に開示されるそれぞれの特徴は、はっきりと記載しない限りは、同一、同等または同様の目的を果たす代替的な特徴に取って代わられてもよい。
【0045】
たとえば、シェル28のベース30および側壁32の両方が通気性材料で形成されることは必ずしも必要ではなく、どちらか一方のみが通気性材料で形成されても充分である。この場合、空気がベース30と上部34との間でシェル28を通って流れ、それにより風味放出媒体40のほぼ全てに曝露されるように、ベース30が通気性材料で形成されることが好ましい場合がある。
【0046】
実際には上述のように複数の誘導加熱可能要素42を用いることが望ましい場合があるが、風味放出媒体40の必要な加熱を達成するために、単一の誘導加熱可能要素42が使用され得る。
【0047】
文脈が明確に要求しない限りは、明細書および特許請求の範囲にわたって、「備える」、「備えている」などの語は、排他的または網羅的な意味とは対照的に包含的な意味で解釈されるべきであり、すなわち、「含んでいるが、これに限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【0048】
その全ての可能な変形例における上述の特徴の任意の組み合わせは、本明細書に示さない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限りは、本発明に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5