(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】室内殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20221220BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20221220BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20221220BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20221220BHJP
B60R 15/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61L9/20
E04H1/12 301
A61L2/10
B66B7/00 F
B60R15/04
(21)【出願番号】P 2022102323
(22)【出願日】2022-06-27
【審査請求日】2022-07-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 「創造おおいた」 NO.254、第13頁、令和4年6月1日、公益財団法人大分県産業創造機構発行の「経営革新計画承認企業の紹介 いくつものかたち株式会社 テーマ:保有特許を活用した非接触型表面殺菌装置の開発」と題する記事にて発表。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520263796
【氏名又は名称】いくつものかたち株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513276547
【氏名又は名称】木原 倫文
(74)【代理人】
【識別番号】100108545
【氏名又は名称】井上 元廣
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】木原 倫文
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130131(JP,A)
【文献】特開平11-003616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0175475(US,A1)
【文献】特開平06-063107(JP,A)
【文献】特開平09-082284(JP,A)
【文献】特開2017-023305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0032589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/08-10、9/18-20
B01J 19/08-12
B66B 7/00
E04H 1/00-14
F21S 2/00
F24F 8/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設置されるエレベーターやトイレ
の室内、乗物内に設置されるトイ
レの室内であって、その設置場所との関係から、構造上、十分な換気を行うことが難しく、しかも、複数の人が昼夜に関係なく出入りすることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルス、壁面に付着する細菌やウイルスが長時間に亘って残留し易い室内の空間のうち、人の身長より高い位置にあり、天井面にまで及ぶ上方部空間と、前記上方部空間の下方に連なり、床面にまで及ぶ下方部空間とに、紫外線をそれぞれ照射して、前記室内を殺菌する室内殺菌装置が、
前記上方部空間に、
前記上方部空間の全域及び
前記上方部空間に面する全壁面に及ぶようにして、紫外線を照射する上部紫外線照射ユニットと、
前記上部紫外線照射ユニットの下方にこれと一体に備えられ、前記下方部空間に、
前記下方部空間の全域及び
前記下方部空間に面する全壁面に及ぶようにして、紫外線を照射する下部紫外線照射ユニットと、
これら両紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記上方部空間には、常に紫外線を照射し、前記下方部空間には、前記室内の人・動物の存在・非存在を検知して、存在する場合には紫外線を照射せず、存在しない場合には紫外線を照射するように、前記両紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御するようにされ
、かつ、
前記上部紫外線照射ユニットは、
前記上部紫外線照射ユニットのランプ室に、紫外線を照射する細長い紫外線ランプを1本、横置きにして備え、
前記ランプ室の平面視長方形状の開口の2つの長辺のうちの一方の長辺が、正面視して、前記紫外線ランプを隠す高さ位置に形成されていて、
これにより、前記紫外線ランプが、前記ランプ室の前記開口を通して、前方上半方位に紫外線を照射することができるようにされており、また、
前記下部紫外線照射ユニットは、
前記下部紫外線照射ユニットのランプ室に、紫外線を照射する細長い紫外線ランプを2本、横置き並列にして備え、しかも、2本のうちの1本の前記紫外線ランプは、前記ランプ室内の前方上方に、残りの1本の前記紫外線ランプは、前記ランプ室内の後方下方に、互いに位置を上下・前後にずらせて、配置され、
前記ランプ室の平面視長方形状の開口の2つの長辺のうちの一方の長辺が、正面視して、前記1本の前記紫外線ランプの高さ位置よりも高い高さ位置に、また、その他方の長辺が、正面視して、前記残りの1本の前記紫外線ランプの高さ位置よりも低い高さ位置に、互いに大きく離間してそれぞれ形成されていて、
これにより、前記2本の前記紫外線ランプが、前記ランプ室の前記開口を通して、前方全方位に紫外線を照射することができるようにされている
ことを特徴とする室内殺菌装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記室内の人・動物の存在・非存在を検知する人・動物センサーに加えて、前記室内の明るさを検知する照度センサーを備え、
前記人・動物センサーが、前記室内の人・動物の非存在を検知するとともに、前記照度センサーが、前記室内の照明の消灯を検知した時のみ、前記下部紫外線照射ユニットが、前記下方部空間に紫外線を照射するように、前記下部紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御することを特徴とする請求項1に記載の室内殺菌装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記照度センサーにタイマーを組み合わせ、
前記照度センサーが前記室内の消灯を検知してから一定時間後に、前記下部紫外線照射ユニットが前記下方部空間に紫外線を照射するために備える紫外線ランプをオンする機能を備えていることを特徴とする請求項2に記載の室内殺菌装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記室のドアの閉を確認するドアセンサーを更に備え、
前記ドアセンサーが、前記室のドアの閉を確認した時のみ、前記両紫外線照射ユニットが、紫外線を照射するように、前記両紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の室内殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、室内殺菌装置に関し、特に室内が、建物内に設置されるエレベーターやトイレの室内、乗物内に設置されるトイレの室内であって、その設置場所との関係から、構造上、十分な換気を行うことが難しく、しかも、複数の人が昼夜に関係なく出入りすることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルス、壁面に付着する細菌やウイルスが長時間に亘って残留し易く、このため、細菌やウイルスに人が感染する機会が一段と増大することが懸念される室内を確実に殺菌して、時間差感染をも防止し、そのような機会を大きく低減することができる室内殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅やオフィスなどの複合ビル、公共施設、病院、介護施設など様々な建物においては、様々な人が出入りするので、外部から細菌やウイルスが持ち込まれることが多く、加えて、これらの建物は、複数の部屋(室)に区分されており、このような部屋は、一定の広さに仕切られているので、侵入した細菌やウイルスが残留し易い構造になっている。
【0003】
よって、このような建物においては、広い共用空間はもちろんのこと、上述のような仕切られた部屋では特に、そこにおける人の滞在時間も長いので、このような細菌やウイルスに人が感染して、健康を害することが大いに懸念される。また、このようにして健康を害した人が、保有している細菌やウイルスを飛沫と一緒に咳やくしゃみによって吐き出して、室内に細菌やウイルスを更に増やしてしまうこともある。
このため、細菌やウイルスによる人の健康への悪影響を軽減するために、室内の衛生面の改善が強く求められる。特に、建物が病院や介護施設である場合には、病人や老人などのように、抵抗力の弱い人が多いので、そのような要求は更に強い。
【0004】
また、特に、これらの建物内に設けられるエレベーターやトイレについてみると、それらの室内は、それらの設置場所との関係から、構造上、十分な換気を行うことが難しい状況にある場合が多く、しかも、複数の人が昼夜に関係なく出入りするので、これらの室内の空気中に浮遊する細菌やウイルス、室内の壁面(天井面、床面、側壁面など)や室内にある操作盤、手摺りなどの表面(以下、これら壁面や表面を総称して「壁面」という場合がある。)に付着する細菌やウイルスが、長時間に亘ってとりわけ残留し易くなり、このため、このようにして残留した細菌やウイルスに人が感染して、健康を害する可能性が一段と高まることが懸念される。
同様のことは、建物とは異なるが、新幹線や高速バスなどの乗物内のトイレの室内についても、いえることである。
【0005】
このように、室内にいる人は、室内の空気中に浮遊する細菌やウイルスを吸ったり、細菌やウイルスが付着している壁面に手で触れたり、他人が保有している細菌やウイルスが咳やくしゃみによって飛沫と一緒に吐き出されて、この飛沫を吸ったりすることによって、細菌やウイルスに感染する。このようなルートによる感染は、一般に、それぞれ空気感染、接触感染、飛沫感染と呼ばれている。
【0006】
そして、この室内が、特に前記した建物内に設けられるエレベーターやトイレの室内、乗物内のトイレの室内である場合には、その室内の空気中に浮遊していたり、その室内の壁面に付着していたりする細菌やウイルスは、前記のような理由から、人がその室内に入る時よりも少し前の時間からそこに存在していて、そこに残留している細菌やウイルスである可能性が高い。よって、この場合に、室内に入った人が感染する感染は、過去のある時点から少し時間差を置いて現在にまで残留している細菌やウイルスへの感染であり、この意味で、これらの感染を、通常の空気感染や接触感染とは区別して、「時間差感染」と呼ぶことができる。
この時間差感染には、その定義から、それが、空気感染のルートによる感染である場合と、接触感染のルートによる感染である場合とがある。このような時間差感染に対しては、感染防止上、特別の配慮がなされ、特別の対策が講じられる必要があるものと考えられる。
【0007】
次に、この時間差感染について、より具体的に、詳しく説明する。
一般に、エレベーターの室内は、前記のとおり、十分な換気を行うことが難しい状況にある場合が多く、このため、室内には人が居なくても、以前に室内に居た一人もしくは複数の人が持っていた細菌やウイルスが空気中に浮遊し、また、壁面に付着して残っている。人は、このような状況にあるエレベーターに乗り、そこの空気を吸い、壁面に手を触れることになる。
人が手を触れる壁面は、触れる度に、毎回、アルコール消毒などをすることはできない。
【0008】
エレベーターの籠(室)についてみれば、その籠が上下に移動する区画をなすエレベーターシャフト(又はエレベーターピット)は、火事の場合の延焼を避けるために、防火区画として構成されており、窓や通気孔がなく、壁で囲われていて、隣接する部屋や外気と遮断されて、空気の出入り(換気)ができない構造になっている。このため、空気は、エレベーター室内やエレベーターシャフト内に溜まったままになっており、エレベーターのドアが開いても、一方向であるので、空気の流れは生じない。室の天井に換気扇が設置されていても、エレベーターシャフトが密閉されているので、空気の逃げ場がなく、換気扇からも空気は抜けない。このような状況は、人がエレベーターを使用すればするほど、深刻化する。
【0009】
よって、誰も乗っていないので、密にならないと感じるものの、細菌やウイルスを含んだ空気が残っており、また、細菌やウイルスが付着した壁面がそのままの状態で残っているので、密と同じ状態にある。人は存在していないが、細菌やウイルスは残存したままになっており、これらを含んだ少し前の時間の空気や、これらが付着した少し前の時間の壁面が、そのままの状態で残ったまま、今に繋がっている。
【0010】
そこで、このようなエレベーターに人が乗ることは、細菌やウイルスが浮遊している空気の中に入ることになり、また、これらが付着している壁面に触れる危険に曝されることになり、時間が経過しても、これらに感染することになる。すなわち、時間差感染の発現である。乗る瞬間には、人が存在しないが、感染する媒体を含んだ空気や、感染する媒体が付着した壁面が残っているので、これらが原因となって、感染してしまうのである。
【0011】
2020年1月から始まった、新型コロナウィルスへの人の感染の世界的流行(パンデミック)は、それから2年6か月を経た今日に到っても、未だ収束する気配がない。
このような状況を考えると、その撲滅のためには、従来の感染の捉え方を広げて、前記のような時間差感染の考え方をも取り入れて、それに対応した新たな対策を講ずることが、1つの有力な手段となり得るものと考えられる。
【0012】
従来、前記のような各種建物の室内や乗物内に存在する細菌やウイルスに人が感染するのを防止して、人の健康への悪影響を軽減するための手段として、種々の提案がなされている。それらの中で、波長が253ナノメートル近辺にある殺菌線と呼ばれる紫外線(UV-C)を照射して、室内の細菌やウイルスを殺菌しようとするものがある(例えば、特許文献1~4参照)。
【0013】
しかしながら、これらの文献に記載されたものは、いずれも、室内空間の一部分の空気中に浮遊する細菌やウイルスを殺菌するに止まる(文献1、4)か、室内の内壁面に付着する細菌やウイルスまで殺菌するものとはなってない(文献1、2)か、乗物内の空間それ自体を殺菌するものであって、その内部に設けられるトイレなどの室内の空間を殺菌することまで開示するものではない(文献3)。
特に、文献4に記載される発明は、本願の発明者により創案されたものであるが、これとても、室内の空間全域の空気中に浮遊する細菌やウイルス、室内に面する、側壁面や天井面も含めた、全壁面に付着する細菌やウイルスまで殺菌するものではなく、いずれの文献に記載のものも、前記した時間差感染をも考慮した、完全な室内殺菌対策が講じられたものとはなっていない。
【0014】
これらの細菌やウイルスの多くを殺菌できず、紫外線の照射が届く一部空間や一部壁面のみを殺菌するのに止まるのであれば、室内の衛生状態を高く維持することはできず、人の健康への悪影響の懸念が依然として残る。
殊に、今日では、室内に入る少し前の時間から室内の空気中や壁面などに存在していたこれらの菌をも考慮して、これを確実に殺菌することが、時間差感染を防いで、室内の衛生状態を格段に向上させ、人の健康の維持を確実にするために不可欠となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2006-231007号公報
【文献】特開2022-027368号公報
【文献】特開2022-013489号公報
【文献】特許第6931230号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本願の発明は、従来の室内殺菌装置が有する前記のような問題点を解決して、特に室内が、建物内に設置されるエレベーターやトイレの室内、乗物内に設置されるトイレの室内であって、その設置場所との関係から、構造上、十分な換気を行うことが難しく、しかも、複数の人が昼夜に関係なく出入りすることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルス、壁面に付着する細菌やウイルスが長時間に亘って残留し易く、このため、細菌やウイルスに人が感染する機会が一段と増大することが懸念される室内に存在する細菌やウイルスを、人が室内に入る少し前の時間から存在していた細菌やウイルスを含めて、確実に殺菌することができ、これにより、室内の衛生状態を格段に向上させ、通常の空気感染、接触感染、飛沫感染のみならず、時間差感染をも防止して、そのような機会を大きく低減することができ、加えて、人・動物に有害な紫外線による危害を及ぼすこともない、室内殺菌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記のような課題は、本願の特許請求の範囲の各請求項に記載された次のような発明により解決される。
すなわち、その請求項1に記載された発明は、建物内に設置されるエレベーターやトイレの室内、乗物内に設置されるトイレの室内であって、その設置場所との関係から、構造上、十分な換気を行うことが難しく、しかも、複数の人が昼夜に関係なく出入りすることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルス、壁面に付着する細菌やウイルスが長時間に亘って残留し易い室内の空間のうち、人の身長より高い位置にあり、天井面にまで及ぶ上方部空間と、前記上方部空間の下方に連なり、床面にまで及ぶ下方部空間とに、紫外線をそれぞれ照射して、前記室内を殺菌する室内殺菌装置が、前記上方部空間に、前記上方部空間の全域及び前記上方部空間に面する全壁面に及ぶようにして、紫外線を照射する上部紫外線照射ユニットと、前記上部紫外線照射ユニットの下方にこれと一体に備えられ、前記下方部空間に、前記下方部空間の全域及び前記下方部空間に面する全壁面に及ぶようにして、紫外線を照射する下部紫外線照射ユニットと、これら両紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記上方部空間には、常に紫外線を照射し、前記下方部空間には、前記室内の人・動物の存在・非存在を検知して、存在する場合には紫外線を照射せず、存在しない場合には紫外線を照射するように、前記両紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御するようにされ、かつ、前記上部紫外線照射ユニットは、前記上部紫外線照射ユニットのランプ室に、紫外線を照射する細長い紫外線ランプを1本、横置きにして備え、前記ランプ室の平面視長方形状の開口の2つの長辺のうちの一方の長辺が、正面視して、前記紫外線ランプを隠す高さ位置に形成されていて、これにより、前記紫外線ランプが、前記ランプ室の前記開口を通して、前方上半方位に紫外線を照射することができるようにされており、また、前記下部紫外線照射ユニットは、前記下部紫外線照射ユニットのランプ室に、紫外線を照射する細長い紫外線ランプを2本、横置き並列にして備え、しかも、2本のうちの1本の前記紫外線ランプは、前記ランプ室内の前方上方に、残りの1本の前記紫外線ランプは、前記ランプ室内の後方下方に、互いに位置を上下・前後にずらせて、配置され、前記ランプ室の平面視長方形状の開口の2つの長辺のうちの一方の長辺が、正面視して、前記1本の前記紫外線ランプの高さ位置よりも高い高さ位置に、また、その他方の長辺が、正面視して、前記残りの1本の前記紫外線ランプの高さ位置よりも低い高さ位置に、互いに大きく離間してそれぞれ形成されていて、これにより、前記2本の前記紫外線ランプが、前記ランプ室の前記開口を通して、前方全方位に紫外線を照射することができるようにされていることを特徴とする室内殺菌装置である。
【0018】
また、その請求項2に記載された発明は、前記制御部は、前記室内の人・動物の存在・非存在を検知する人・動物センサーに加えて、前記室内の明るさを検知する照度センサーを備え、前記人・動物センサーが、前記室内の人・動物の非存在を検知するとともに、前記照度センサーが、前記室内の照明の消灯を検知した時のみ、前記下部紫外線照射ユニットが、前記下方部空間に紫外線を照射するように、前記下部紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御することを特徴とする請求項1に記載の室内殺菌装置である。
【0019】
また、その請求項3に記載された発明は、前記制御部は、前記照度センサーにタイマーを組み合わせ、前記照度センサーが前記室内の消灯を検知してから一定時間後に、前記下部紫外線照射ユニットが前記下方部空間に紫外線を照射するために備える紫外線ランプをオンする機能を備えていることを特徴とする請求項2に記載の室内殺菌装置である。
【0020】
さらに、その請求項4に記載された発明は、前記制御部は、前記室のドアの閉を確認するドアセンサーを更に備え、前記ドアセンサーが、前記室のドアの閉を確認した時のみ、前記両紫外線照射ユニットが、紫外線を照射するように、前記両紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の室内殺菌装置である。
【発明の効果】
【0021】
本願の発明は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
(請求項1に係る発明が奏する効果)
建物内や乗物内に設置されるエレベーターやトイレの室内のように、その設置場所との関係から、構造上、十分な換気を行うことが難しく、しかも、複数の人が昼夜に関係なく出入りすることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルス、壁面に付着する細菌やウイルスが長時間に亘って残留し易い室内であっても、その室内の空間のうち、人の身長より高い位置にある上方部空間と、該上方部空間の下方に連なる下方部空間とのいずれにも、それらの空間の全域及びそれらの空間に面する全壁面に及ぶようにして、上部紫外線照射ユニットと下部紫外線照射ユニットとにより、紫外線がそれぞれ照射される。そして、その紫外線の照射は、制御部により、上方部空間には、常に紫外線を照射し、下方部空間には、室内の人・動物の存在・非存在を検知して、存在する場合には紫外線を照射せず、存在しない場合には紫外線を照射するように、制御されるので、室内の上方部空間と下方部空間の全域の空気中に浮遊する細菌やウイルス、これらの空間に面する全壁面に付着する細菌やウイルスを漏れなく殺菌することができる。
よって、エレベーターなどで、その室内空間全域の殺菌のみならず、人の手が触れる壁面や、操作盤、手摺りなどの表面をも殺菌することができるようになり、アルコール消毒や拭き取りなどの作業の手間を省くことができる。
【0022】
また、両紫外線照射ユニットによる紫外線の照射は、制御部により、上方部空間には、室内に人・動物が存在するか否かに関わらず、常に紫外線を照射し、下方部空間であっても、室内に人・動物が存在しなければ、紫外線を照射するように制御されるので、室内の空間全域の空気中に浮遊する細菌やウイルス、これらの空間に面する全ての壁面に付着する細菌やウイルスを短時間で殺菌することができる。
【0023】
そして、これらの効果の結果として、人が室内に入る少し前の時間から存在していた細菌やウイルスを含めて、室内に存在している細菌やウイルスを確実に殺菌することができるようになり、通常の空気感染、接触感染、飛沫感染のみならず、時間差感染をも防止して、室内の衛生状態を格段に向上させ、細菌やウイルスに人が感染する機会を大きく低減することができる。
加えて、室内の下方部空間に人・動物が存在すれば、下部紫外線照射ユニットが該下方部空間に有害な紫外線を照射することはないので、人・動物に危害を及ぼすこともない。
【0024】
また、その上部紫外線照射ユニットは、その上部紫外線照射ユニットのランプ室に、紫外線を照射する細長い紫外線ランプを1本、横置きにして備え、そのランプ室の平面視長方形状の開口の2つの長辺のうちの一方の長辺が、正面視して、紫外線ランプを隠す高さ位置に形成されているので、紫外線ランプが、そのランプ室の開口を通して、前方上半方位に紫外線を照射することができるようになり、紫外線の照射を前方上半方位に限るとしても、従来、紫外線の照射を特定の方向に向けるために用いられていた絞り部材などの特別の手段を用いる必要がない。
【0025】
さらに、その下部紫外線照射ユニットは、その下部紫外線照射ユニットのランプ室に、紫外線を照射する細長い紫外線ランプを2本、横置き並列にして備え、しかも、2本のうちの1本の紫外線ランプは、そのランプ室内の前方上方に、残りの1本の紫外線ランプは、そのランプ室内の後方下方に、互いに位置を上下・前後にずらせて、配置され、そのランプ室の平面視長方形状の開口の2つの長辺のうちの一方の長辺が、正面視して、前記1本の紫外線ランプの高さ位置よりも高い高さ位置に、また、その他方の長辺が、正面視して、前記残りの1本の紫外線ランプの高さ位置よりも低い高さ位置に、互いに大きく離間してそれぞれ形成されているので、2本の紫外線ランプが、そのランプ室の開口を通して、前方全方位に紫外線を照射することができるようになるとともに、2本の紫外線ランプのうちの1本が玉切れしても、残りの1本が前方全方位への紫外線の照射を続けるので、紫外線照射能力は半減するとしても、玉切れした紫外線ランプを交換する間でも、室内の下方部空間の全域及び該下方部空間に面する全壁面への紫外線照射と殺菌を続行することができ、室内の衛生状態が大きく損なわれることもない。
【0026】
(請求項2に係る発明が奏する効果)
また、その制御部は、室内の人・動物の存在・非存在を検知する人・動物センサーに加えて、室内の明るさを検知する照度センサーを備えていて、人・動物センサーが、室内の人・動物の非存在を検知するとともに、照度センサーが、室内の照明の消灯を検知した時のみ、下部紫外線照射ユニットが、下方部空間に紫外線を照射するように、下部紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御するようにされており、エレベーターなどでは、一般に、人が乗っていなくて静止している時は、室内の照明が消えているので、これら2つのセンサーの検知結果を前記のように組み合わせて制御することにより、誤って人・動物に紫外線が照射されるのを確実に回避することができ、人・動物に危害を及ぼす虞が確実に防がれる。
【0027】
(請求項3に係る発明が奏する効果)
また、その制御部は、照度センサーにタイマーを組み合わせ、照度センサーが室内の消灯を検知してから一定時間後に、下部紫外線照射ユニットが下方部空間に紫外線を照射するために備える紫外線ランプをオンするようにする機能を備えているので、照度センサーが室内の消灯を検知してから一定時間内に、室内の照明が瞬いた時などに、紫外線ランプがオンするのを防ぐことができ、この一定時間の間に、室内に人・動物が残っていたとしても、誤って人・動物に紫外線が照射されるのを確実に回避することができ、人・動物に危害を及ぼす虞が一層確実に防がれる。
【0028】
(請求項4に係る発明が奏する効果)
さらに、その制御部は、室のドアの閉を確認するドアセンサーを更に備えていて、該ドアセンサーが、該室のドアの閉を確認した時のみ、両紫外線照射ユニットが、紫外線を照射するように、両紫外線照射ユニットによる紫外線の照射を制御するので、本願の発明の室内殺菌装置を特にトイレに設置する場合、多くのトイレの扉が自動開閉式になっていないという現状にあっても、ドアが開いた状態で、紫外線がトイレの外に照射されるのを防止することができ、室外に居る人も含めて、人・動物に危害を及ぼす虞が一層確実に防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本願の発明の一実施例の室内殺菌装置が設置された室内に人が居て、室内の上方部空間にのみ紫外線が照射されている状態を示す、室の右側断面図である。
【
図2】同室内殺菌装置が設置された室内に人が居なくて、室内の全域(上方部空間と下方部空間)に紫外線が照射されている状態を示す、
図1と同様の図である。
【
図5】同室内殺菌装置が備える上部紫外線照射ユニットと下部紫外線照射ユニットとから、紫外線がそれぞれ照射される状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施例1)
次に、本願の発明の第1の実施例(実施例1)の室内殺菌装置を、図面を参照して、詳細に説明する。
本実施例1の室内殺菌装置(以下、「本装置」と略称する場合がある。)は、特に建物内に設置されるエレベーターやトイレの室内、新幹線や高速バスのような大型の乗物内に設置されるトイレの室内を殺菌するために、好適に使用される。
このような室内にあっては、その設置場所との関係から、構造上、十分な換気を行うことが難しい場合が多く、しかも、複数の人が昼夜に関係なく出入りすることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルス、壁面に付着する細菌やウイルスが長時間に亘って残留し易い。このため、室内に入る人は、このようにして残留した細菌やウイルスを多く含む細菌やウイルスに感染することになり、いわゆる時間差感染が発生する可能性が高くなって、感染の機会が一段と増大することが懸念される。
以下では、特に室内が、建物内に設置されるエレベーターの室内である場合を例に採って、その実施の態様を詳細に説明する。
【0031】
(装置の全体構成)
先ず、本装置の全体構成のあらましを、
図1~
図4に基づいて説明する。
図1及び
図2に示されるように、エレベーターの室(この室は、「籠」とも呼ばれる。)1の内部(室内)7には、本実施例1の室内殺菌装置20が、その取付け部23(
図4参照)を室1の後壁3の内面上方部に固定して取り付けて、設けられている。
室内殺菌装置20は、室内7の空間のうち、人の身長より高い位置にあり、天井面4にまで及ぶ上方部空間7aと、上方部空間7aの下方に連なり、床面5にまで及ぶ下方部空間7bとに、紫外線をそれぞれ照射して、室内7を殺菌することができる。
上方部空間7aの下面8は、略水平面をなしており、床面5より210cmの高さ位置にある。前記した「人の身長より高い位置」とは、この高さ位置を指している。
紫外線には、紫外線(UV-C)が使用されるが、簡略化して「紫外線」と記している。
【0032】
このような室内殺菌装置20は、上部紫外線照射ユニット21と、下部紫外線照射ユニット22と、これら両紫外線照射ユニット21、22による紫外線の照射を制御する制御部25(
図3、
図4参照)とを備えている。
上部紫外線照射ユニット21は、上方部空間7aに、該
上方部空間
7aの全域及び該
上方部空間
7aに面する全壁面に及ぶようにして、紫外線を照射する。
また、下部紫外線照射ユニット22は、上部紫外線照射ユニット21の下方にこれと一体に設けられていて、下方部空間7bに、該
下方部空間
7bの全域及び該
下方部空間
7bに面する全壁面に及ぶようにして、紫外線を照射する。
【0033】
(制御部の作用)
制御部25の作用は、次のとおりである。
制御部25は、上方部空間7aに、常時、紫外線を照射するように、上部紫外線照射ユニット21による紫外線の照射を制御する。
また、制御部25は、下方部空間7bに、室内7に人・動物が存在する場合には、紫外線を照射せず、存在しない場合には、紫外線を照射するように、下部紫外線照射ユニット22による紫外線の照射を制御する。
ここで、室内7の人・動物の存在・非存在は、人・動物センサー26(
図3、
図4参照)で検知される。この人・動物センサー26は、室内殺菌装置20の前カバー24の向かって右下方部であって、下部紫外線照射ユニット22の側方位置に、2個設けられている。そのうちの1個は、やや斜め下方に向けて、残りの1個は、やや下方に向けて、それぞれ設けられている。
【0034】
図1、
図2を参照して、具体的に説明すると、
図1の場合には、室内7に人11が居るので、下部紫外線照射ユニット22からの紫外線は、下方部空間7bに照射されていない。
これに対して、
図2の場合には、室内7に人11も動物も居ないので、下部紫外線照射ユニット22からの紫外線は、下方部空間7bに照射されている。
さらに、
図1、
図2の両方の場合には、室内7に人11や動物が居る居ないに関わらず、常時、上部紫外線照射ユニット21からの紫外線が、上方部空間7aに照射されている。
このように制御することにより、有害な紫外線が人・動物に危害を及ぼすことも避けられる。
【0035】
(紫外線照射の態様)
次に、両紫外線照射ユニット21、22が、制御部25により制御されながら、上方部空間7a、下方部空間7bに紫外線をそれぞれ照射する場合の照射の態様について説明する。
上部紫外線照射ユニット21が上方部空間7aに紫外線を照射する場合には、上部紫外線照射ユニット21は、その前方上半方位に向けて、紫外線を照射することになる。
また、下部紫外線照射ユニット22が下方部空間7bに紫外線を照射する場合には、下部紫外線照射ユニット22は、その前方全方位に向けて、紫外線を照射することになる。
いずれの場合も、それらの紫外線照射は、当該空間7a、7bの全域及び当該空間7a、7bに面する全壁面に及ぶようにして、行われる。
【0036】
ここで、「当該空間7a、7bに面する全壁面」とは、その空間が上方部空間7aである場合には、天井面4、前壁2の内面の一部、後壁3の内面の一部、両側壁(符号なし)の内面の一部を含んでいる。なお、換気扇が設けられる場合には、その表面も含まれる。
また、その空間が下方部空間7bである場合には、床面5、前壁2の内面の残部、前壁2に取り付けられる扉6の内面、後壁3の内面の残部、両側壁(符号なし)の内面の残部を含むほか、エレベーターの備品である操作ボタンなどの操作盤9や、手摺り10などの表面をも含んでいる。
よって、両紫外線照射ユニット21、22は、それぞれが担う紫外線の照射領域の広狭や備品の状況に応じて、対応する照射・殺菌能力を持つものとして製作される。そして、このようにして、室内7の、室内殺菌装置20による殺菌の完全が図られている。
【0037】
(室内殺菌装置の構造)
次に、室内殺菌装置20の構造を、
図3~
図5を参照して、詳細に説明する。
前記のとおり、室内殺菌装置20は、その上部に上部紫外線照射ユニット21を、その下部に下部紫外線照射ユニット22を、一体に備えている。そして、その内部に、制御部25を内蔵している。以下、制御部25を除いて、各別に説明する。
【0038】
(上部紫外線照射ユニット)
上部紫外線照射ユニット21は、上方部空間7aに紫外線を照射する機能を担う。
上方部空間7aは、その底面が略水平面8をなすので、その紫外線照射の下方限界が、この水平面8に沿うようにして、上部紫外線照射ユニット21が製作されることになる。
そのために、上部紫外線照射ユニット21は、そのランプ室33に、紫外線を照射する細長い紫外線ランプ30を1本、横置きにして備え、そのランプ室33の平面視長方形状の開口34の2つの長辺のうちの一方の長辺34aが、正面視して紫外線ランプ30を丁度隠す高さ位置に形成されている。
【0039】
このようにすることによって、紫外線ランプ30からランプ室開口34を通して照射される紫外線は、
図1、
図2及び
図5に示されるように、上部紫外線照射ユニット21の前方上半方位に向けて照射されて、その下方限界が、上方部空間7aの下面をなす水平面8に略沿うようになる。よって、紫外線の照射方向を前方上半方位に限るとしても、従来、紫外線の照射方向を定めるために用いられていた絞り部材のような手段(特許文献4参照)は、特に必要とされない。
【0040】
図5においては、紫外線ランプ30から照射される紫外線が、ランプから直接照射される直射紫外線と、反射板31により反射されて照射される反射紫外線とに分けて描かれている。これら両種の紫外線が合わさって、
図1及び
図2に示されるような、上方部空間7aの全域に及ぶ紫外線束となる。
【0041】
(下部紫外線照射ユニット)
下部紫外線照射ユニット22は、下方部空間7bに紫外線を照射する機能を担う。
下方部空間7bは、上方部空間7aの数倍以上の容積を有するので、下部紫外線照射ユニット22の紫外線照射能力は、上部紫外線照射ユニット21のそれに比して、相当に大きくされなければならない。本実施例1においては、紫外線ランプ30を2本備えることとし、これらの紫外線ランプ30から照射される紫外線が、下部紫外線照射ユニット22の前方全方位に広がるようにされている。
【0042】
そのために、下部紫外線照射ユニット22は、そのランプ室35に、紫外線を照射する細長い紫外線ランプ30を2本、横置き並列にして備え、しかも、2本のうちの1本の紫外線ランプ30は、ランプ室35内の前方上方に、残りの1本の紫外線ランプ30は、その後方下方の奥まった個所に、互いに上下・前後に位置をずらせて、配置されている。
ここで、ランプ室35は、その平面視長方形状のランプ室開口36の2つの長辺のうちの一方の長辺36aが、正面視して、前記1本の紫外線ランプ30の高さ位置よりも高い高さ位置に、また、その他方の長辺36bが、正面視して、前記残りの1本の紫外線ランプ30の高さ位置よりも低い高さ位置に、互いに大きく口を開けるように離間して、それぞれ形成されている。
【0043】
このようにすることによって、2つの紫外線ランプ30からランプ室開口36を通して照射される紫外線は、
図2及び
図5に示されるように、下部紫外線照射ユニット22の前方全方位に向けて照射されるようになる。その上方限界は、特に設定されておらず、上方に向かう紫外線は、上部紫外線照射ユニット21から照射される紫外線と衝突・混合するが、そこの室内(上方部空間7a)をより強力に殺菌することになるので、問題はない。
【0044】
図5においては、2本の紫外線ランプ30から照射される紫外線が、それらのランプから直接照射される直射紫外線と、反射板32により反射されて照射される反射紫外線とに分けて描かれている。これら両種の紫外線が合わさって、
図2に示されるような、下方部空間7bの全域に及ぶ紫外線束となる。
【0045】
なお、下部紫外線照射ユニット22においても、上部紫外線照射ユニット21で使用された紫外線ランプ30と同じ紫外線ランプ30が使用されるものとしたが、これに限られるものではなく、紫外線照射能力が異なるものの複数本が組み合わせ用いられても良い。
【0046】
(保護バー)
前カバー24から平面視長方形状に打ち抜き形成される、上部紫外線照射ユニット21、下部紫外線照射ユニット22の各ランプ室開口34、36には、
図3に示されるように、複数本の細長い保護バー29が、水平方向に伸び、また、側面視円弧状に並ぶようにして配列されて、設けられている。これらの保護バー29は、人身及びユニットの保護のためのものであり、ステンレス製である。
【0047】
なお、以上の説明において、室内殺菌装置20の前カバー24は、その中央の平板部分と、その上方の湾曲した板部分と、その下方の湾曲した板部分とが、一体として、1枚の板からなるものとされたが、これに限られず、これら3つの板部分が、分割されて連結されてなるものとされても良い。この場合には、ランプ室開口34、36は、その上方の湾曲した板部分からなる上部カバーや、その下方の湾曲した板部分からなる下部カバーに、打ち抜きなどの方法により、それぞれ形成されることになる。ランプ室開口34、36の製作には、各種の方法があり得る。
【0048】
(実施例1の効果)
本実施例1の室内殺菌装置20は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
室内7の上方部空間7aと下方部空間7bの全域の空気中に浮遊する細菌やウイルス、これらの空間7a、7bに面する全壁面に付着する細菌やウイルスを漏れなく殺菌することができる。これにより、エレベーターの室内空間7a、7b全域の殺菌のみならず、人の手が触れる壁面や、操作盤9、手摺り10などの表面をも殺菌することができるようになり、アルコール消毒や拭き取りなどの作業の手間を省くことができる。
【0049】
また、両紫外線照射ユニット21、22による紫外線の照射は、制御部25により、上方部空間7aには、室内7に人11や動物が存在するか否かに関わらず、常に紫外線を照射し、下方部空間7bであっても、室内7に人11や動物が存在しなければ、紫外線を照射するように制御されるので、室内空間7a、7b全域の空気中に浮遊する細菌やウイルス、これらの空間7a、7bに面する全ての壁面に付着する細菌やウイルスを短時間で殺菌することができる。
【0050】
そして、これらの効果の結果として、人11が室内7に入る少し前の時間から存在していた細菌やウイルスを含めて、室内7に存在している細菌やウイルスを確実に殺菌することができるようになり、通常の空気感染、接触感染、飛沫感染のみならず、時間差感染をも防止して、室内7の衛生状態を格段に向上させ、細菌やウイルスに人が感染する機会を大きく低減することができる。
加えて、室内7の下方部空間7bに人11や動物が存在すれば、下部紫外線照射ユニット22が該下方部空間7bに人・動物に有害な紫外線を照射することはないので、人・動物に危害を及ぼすこともない。
【0051】
また、特に上部紫外線照射ユニット21、下部紫外線照射ユニット22は、それぞれ前記のように構成されているので、次のような効果を奏することもできる。
上部紫外線照射ユニット21は、それが備える1本の紫外線ランプ30が、前方上半方位に向けて紫外線を照射するのでありながら、従来、紫外線の照射方向を絞るために用いられていた絞り部材などの特別の手段を用いる必要がない。
【0052】
また、下部紫外線照射ユニット22は、制御部25が備える各種センサー(後述)への反応で、その紫外線ランプ30のスイッチが頻繁に入り切りし、紫外線ランプ30にかかる電圧の変化が大きくなり、これが大きな負荷となるので、ランプの寿命が短くなり、玉切れする可能性が増大するが、2本の紫外線ランプ30が同時に玉切れする確率は少なく、どちらかが玉切れする確率は高くなるものの、それらのうちの1本が玉切れしても、残りの1本が、前方全方位への紫外線の照射を続けるので、紫外線照射能力は半減するが、玉切れした紫外線ランプ30を交換する間でも、室内7の下方部空間7bの全域及び該下方部空間7bに面する全壁面への紫外線照射と殺菌を続行することができ、室内7の衛生状態が大きく損なわれることはない。
【0053】
(実施例2)
次に、本願の発明の第2の実施例(実施例2)の室内殺菌装置20を、図面を参照して、詳細に説明する。
本実施例2の室内殺菌装置20は、その制御部25が、室内7の人11や動物の存在・非存在を検知する人・動物センサー26に加えて、室内7の明るさを検知する照度センサー27(
図3、
図4参照)を備えている。
そして、その制御部25は、人・動物センサー26が、室内7の人11や動物の非存在を検知するとともに、この照度センサー27が、室内7の照明の消灯を検知した時のみ、下部紫外線照射ユニット22が、下方部空間7bに紫外線を照射するように、下部紫外線照射ユニット22による紫外線の照射を制御する。
【0054】
(実施例2の効果)
本実施例2の室内殺菌装置20は、前記のように構成されているので、エレベーターなどでは、一般に、人が乗っていなくて静止している時は、室内7の照明が消えており、これら2つのセンサー26、27の検知結果を前記のように組み合わせて下部紫外線照射ユニット22を制御することにより、誤って人・動物に紫外線が照射されるのを確実に回避することができ、人・動物に危害を及ぼす虞が確実に防がれる。
但し、エレベーターが窓を備える場合には、日中は明るいので、照度センサー27を下部紫外線照射ユニット22による紫外線照射の制御に用いることはできない。
【0055】
(実施例3)
次に、本願の発明の第3の実施例(実施例3)の室内殺菌装置20を、図面を参照して、詳細に説明する。
本実施例3の室内殺菌装置20は、実施例2の制御部25が、照度センサー27にタイマーを組み合わせ、照度センサー27が室内7の消灯を検知してから一定時間後に、下部紫外線照射ユニット22が下方部空間7bに紫外線を照射するために備える紫外線ランプ30をオンする機能を備えるようにされる。
【0056】
(実施例3の効果)
本実施例3の室内殺菌装置20は、前記のように構成されているので、照度センサー27が室内7の消灯を検知してから一定時間内に、室内7の照明が瞬いた時などに、紫外線ランプ30がオンするのを防ぐことができ、この一定時間内に、室内7に人11や動物が残っていたとしても、誤って人・動物に紫外線が照射されるのを確実に回避することができ、人・動物に危害を及ぼす虞が一層確実に防がれる。
【0057】
(実施例4)
次に、本願の発明の第4の実施例(実施例4)の室内殺菌装置を、図面を参照して、詳細に説明する。
本実施例4の室内殺菌装置20は、その制御部25が、さらに、室1のドア6の閉を確認するドアセンサー28(
図3参照)を備える。
そして、制御部25は、ドアセンサー28がドア6の閉を確認した時のみ、両紫外線照射ユニット21、22が紫外線を照射するように、両紫外線照射ユニット21、22による紫外線の照射を制御する。
【0058】
(実施例4の効果)
本実施例4の室内殺菌装置20は、前記のように構成されているので、ドア6が開いた状態で、紫外線が室1の外に照射されるのを防止することができ、室外に居る人も含めて、人・動物に危害を及ぼす虞が一層確実に防がれる。
【0059】
(他の応用例)
なお、本願の発明の室内殺菌装置は、以上の実施例1~4に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、実施例1~4において、室内7は、エレベーターの室内とされたが、これに限定されず、建物内や乗物内に設置されるトイレの室内とされても良い。トイレの室内も、状況がエレベーターの室内と大きく異ならない場合が多いことは、前記のとおりである。
特に、前記した実施例4の効果は、室内7が、このようなトイレの室内とされる場合に、顕著に発揮される。その理由は、多くのトイレは、そのドアが自動開閉式になっていないという現状にあって、人が室内から出ても、必ずドアが閉じられることにはならず、ドアが開かれたままに放置されることが少なからずあるからである。
【0061】
室内7は、また、以上に述べたエレベーターの室内(実施例1~4)やトイレの室内にも限られず、同じような状況に置かれる室内であれば、本願の発明の室内殺菌装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…エレベーターの室(籠)、2…前壁、3…後壁、4…天井面、5…床面、6…扉(ドア)、7…室内、7a…上方部空間、7b…下方部空間、8…下面、9…操作盤、10…手摺り、11…人、20…室内殺菌装置、21…上部紫外線照射ユニット、22…下部紫外線照射ユニット、23…取付け部、24…前カバー、25…制御部、26…人・動物センサー、27…照度センサー、28…ドアセンサー、29…細長バー、30…紫外線ランプ、31、32…反射板、33…ランプ室、34…ランプ室開口、34a…長辺、35…ランプ室、36…ランプ室開口、36a、36b…長辺。
【要約】 (修正有)
【課題】室内の空気中に浮遊したり、壁面に付着する細菌やウイルスを、人が室内に入る少し前から存在していたそれらを含めて、確実に殺菌して、時間差感染を防止し、人が細菌やウイルスに感染する機会を大きく低減することができる室内殺菌装置を提供する。
【解決手段】室内殺菌装置20が上下部紫外線照射ユニット21、22と制御部25とを備え、上部紫外線照射ユニット21は室内7の人の身長より高い位置にある上方部空間7aの全域及び空間に面する全壁面に及ぶように紫外線を照射し、下部紫外線照射ユニット22は同様に下方部空間7bに紫外線を照射し、制御部は上方部空間には常に紫外線を照射し、下方部空間には室内の人・動物の存在・非存在を検知して、存在する場合には紫外線を照射せず、存在しない場合には紫外線を照射するように、紫外線照射ユニット制御する。
【選択図】
図1