(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】保守管理装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
(21)【出願番号】P 2022109493
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2022015337の分割
【原出願日】2017-03-30
【審査請求日】2022-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星川 和美
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-235921(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153598(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033283(WO,A1)
【文献】特開2009-88570(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196002(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/004760(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/068673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に部品を装着する部品装着機における交換要素であり
前記部品を供給するフィーダの検査として前記
フィーダの良否判定を行う検査装置と、
前記検査装置による
複数回に亘る検査の結果を複数の前記
フィーダの識別情報ごとに、それぞれ関連付けた統計情報を記憶する情報管理部と
、を備え、
前記情報管理部に記憶された前記統計情報に基づいて前記フィーダに対する処分の種別を設定する保守管理装置。
【請求項2】
前記保守管理装置は、前記フィーダを洗浄または調整するフィーダ保守装置をさらに備え、
前記フィーダ保守装置は、前記処分の種別として設定される前記フィーダを対象とした洗浄または調整について、洗浄または調整の種類、組み合わせ、および実行回数の少なくとも一つを前記統計情報に基づいて設定される、請求項1に記載の保守管理装置。
【請求項3】
回路基板に部品を装着する部品装着機における交換要素であり
前記部品を供給するフィーダの検査として前記
フィーダの良否判定を行う検査装置と、
前記検査装置による
複数回に亘る検査の結果を複数の前記
フィーダの識別情報ごとに、それぞれ関連付けた統計情報を記憶する情報管理部と
、を備え、
前記情報管理部に記憶された前記統計情報に、前記フィーダを対象として過去に実行された保守の種別を付加する保守管理装置。
【請求項4】
前記フィーダを対象として過去に実行された保守の種別には、前記フィーダの洗浄または調整の種類、組み合わせ、および実行回数の少なくとも一つが含まれる、請求項3に記載の保守管理装置。
【請求項5】
回路基板に部品を装着する部品装着機における交換要素であ
り前記部品を吸着する吸着ノズルの検査として前記
吸着ノズルの良否判定を行う検査装置と、
前記検査装置による
複数回に亘る検査の結果を複数の前記
吸着ノズルの識別情報ごとに、それぞれ関連付けた統計情報を記憶する情報管理部と
、を備え、
前記情報管理部に記憶された前記統計情報に、前記吸着ノズルを対象として過去に実行された洗浄の情報を付加し、前記統計情報に基づいて前記吸着ノズルについて前記部品装着機による装着処理への使用の許否を判断する保守管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、保守管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品装着機に用いられる吸着ノズルなどの交換要素は、特許文献1に開示されているように、適正な性能維持などを目的として、検査装置により検査される。交換要素は、検査の結果によっては洗浄や修理などの保守を実行される。これにより、部品装着機による装着処理における交換要素に起因する装着エラーの発生が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、保守を実行された交換要素は、新規の交換要素と比較すると性能が低下しやすかったり、保守が十分でなく再度の装着エラーの要因となったりすることがある。部品装着機による装着処理には、装着エラーの発生をより確実に防止し、生産効率の低下を抑制することが求められている。
本明細書は、検査装置による検査の結果を統計情報として管理して、生産効率の維持を図る保守に利用可能とする生産管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する保守管理装置は、回路基板に部品を装着する部品装着機における交換要素であり前記部品を供給するフィーダの検査として前記フィーダの良否判定を行う検査装置と、前記検査装置による複数回に亘る検査の結果を複数の前記フィーダの識別情報ごとに、それぞれ関連付けた統計情報を記憶する情報管理部と、を備え、前記情報管理部に記憶された前記統計情報に基づいて前記フィーダに対する処分の種別を設定する。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によると、例えばオペレータは、統計情報に基づく通知を受けて、検査対象の情報を取得することができる。この統計情報は、検査対象の性能水準や、装着エラーの要因を特定する際における検査対象の性能水準の変化傾向を把握するための解析に利用できる有用な情報である。従来では、検査ユニットによる測定値が単に蓄積されるのみで、当該蓄積された情報から例えば個々の検査対象の劣化状態などの傾向を把握することは困難であった。これに対して、上記のような構成によると、通知により注意喚起されて、当該検査対象が不良となる前に保守の対象とするなどの施策が可能となる。結果として、生産効率の維持を図るように保守を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における部品装着機の構成および保守管理装置の機能ブロックを示す説明図である。
【
図2】部品装着機で使用される吸着ノズルを示す斜視図である。
【
図3】ノズルクリーナの外観および機能ブロックを示す説明図である。
【
図4】吸着ノズルを対象とした各種検査の結果と当該検査の結果が吸着ノズルの識別情報に関連付けられた統計情報とを示す図である。
【
図6】部品装着機で使用される装着ヘッドの外観および機能ブロックを示す説明図である。
【
図7】ヘッドクリーナの外観および機能ブロックを示す説明図である。
【
図8】装着ヘッドを対象とした各種検査の結果と当該検査の結果が装着ヘッドの識別情報に関連付けられた統計情報とを示す図である。
【
図9】部品装着機で使用されるテープフィーダを示す側面図である。
【
図10】フィーダ保守装置の外観および機能ブロックを示す説明図である。
【
図11】テープフィーダを対象とした各種検査の結果と当該検査の結果がテープフィーダの識別情報に関連付けられた統計情報とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態
1-1.保守管理装置の概要
保守管理装置は、種々の基板製品を生産する生産ラインを構成する部品装着機における交換要素を管理の対象とする。上記の生産ラインは、部品装着機などの生産装置において回路基板(以下、単に「基板」と称する)Bdを順に搬送しつつ、生産装置ごとに装着処理などの生産処理を実行して基板製品を生産する。また、複数の生産装置のそれぞれは、互いに通信可能に、且つホストコンピュータ(以下、「ホストPC」と称する)と通信可能にそれぞれ接続されている。
【0009】
1-2.部品装着機10の構成
部品装着機10は、
図1に示すように、基板搬送装置11、部品供給装置12、部品移載装置13、ノズルステーション14、部品カメラ15、および基板カメラ16を備える。基板搬送装置11は、ベルトコンベアなどにより構成され、基板Bdを搬送方向へと順次搬送する。基板搬送装置11は、部品装着機10の機内に基板Bdを搬入するとともに、機内の所定位置に基板Bdを位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による部品の装着処理が終了した後に、基板Bdを部品装着機10の機外に搬出する。
【0010】
部品供給装置12は、基板Bdに装着される部品を供給する。部品供給装置12は、X軸方向に並んで配置された複数のスロット121を有する。複数のスロット121には、フィーダ90が交換可能にそれぞれセットされる。フィーダ90は、多数の部品が収納されたキャリアテープ95(
図9を参照)を送り移動させて、フィーダ90の先端側に位置する供給位置において部品を採取可能に供給するテープフィーダである。フィーダ90の構成については後述する。
【0011】
部品移載装置13は、ヘッド駆動装置131および移動台132を備える。ヘッド駆動装置131は、直動機構により移動台132をX軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されている。移動台132には、図示しないクランプ部材により装着ヘッド80が交換可能に固定される。装着ヘッド80は、部品供給装置12により供給される部品を採取して基板Bdの所定の装着位置に装着する。
【0012】
装着ヘッド80には、1または複数の吸着ノズル70が着脱可能に設けられる。本実施形態において、装着ヘッド80は、複数の吸着ノズル70をZ軸に平行なR軸を中心とする円周上に保持するロータリ式である。吸着ノズル70および装着ヘッド80の構成については後述する。ノズルステーション14は、複数の吸着ノズル70をノズル軸73が下方に向けられた姿勢で保持する。ノズルステーション14は、部品装着機10の基台に着脱可能に設置される。
【0013】
部品カメラ15、および基板カメラ16は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ15、および基板カメラ16は、外部入力される制御信号に基づいて撮像を行う。部品カメラ15、および基板カメラ16は、撮像により取得した画像データを送出する。
【0014】
部品カメラ15は、光軸がZ軸方向の上向きとなるように部品装着機10の基台に固定されている。部品カメラ15は、吸着ノズル70に保持された部品を下方から撮像可能に構成されている。基板カメラ16は、光軸がZ軸方向の下向きとなるように部品移載装置13の移動台132に設けられる。基板カメラ16は、基板Bdを上方から撮像可能に構成されている。
【0015】
装着制御装置17は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。装着制御装置17は、基板Bdに部品を装着する装着処理において、部品装着機10に複数設けられた各種センサから出力される情報、画像処理などによる認識処理の結果を入力する。そして、装着制御装置17は、制御プログラムや予め設定されている規定の装着条件などに基づいて、部品移載装置13へと制御信号を送出する。これにより、装着ヘッド80に支持された吸着ノズル70の位置および回転角度が制御される。
【0016】
1-3.保守管理装置20の概要および構成
上記のような構成からなる部品装着機10における交換要素は、部品装着機10による装着処理において装着エラーが発生しないように、適正に性能維持がなされる必要がある。部品装着機10における交換要素は、部品装着機10に交換可能にセット等されるものである。具体的に、交換要素には、吸着ノズル70、装着ヘッド80、およびフィーダ90が含まれる。
【0017】
その他に、複数の吸着ノズル70を保持するノズルステーション14、装着ヘッド80に交換可能に保持されるノズルツール82(
図6を参照)、当該ノズルツールを保持するツールステーション(図示しない)を交換要素としてもよい。なお、これらの交換要素は、オペレータの作業により交換させる他に、部品装着機10や外部装置により自動的に交換されることがある。保守管理装置20は、吸着ノズル70などの交換要素の状態を統計的に把握することにより、装着エラーの発生を未然に防止し、生産効率の維持を図るものである。
【0018】
保守管理装置20は、
図1に示すように、記憶装置21、情報管理部22、ノズルクリーナ30、ヘッドクリーナ40、およびフィーダ保守装置50を備える。本実施形態において、記憶装置21および情報管理部22は、生産ラインの動作状況を監視するとともに生産ラインを統括管理するホストPCに組み込まれている。記憶装置21は、ハードディスクやフラッシュメモリなどにより構成される。記憶装置21には、交換要素の検査の結果(MiN,MiH,MiF)や、検査の結果に基づいて生成された統計情報(MsN,MsH,MsF)、生産ラインにおける生産計画などの情報が記憶されている。
【0019】
情報管理部22は、検査の対象とされた複数の交換要素の識別情報ごとに、検査装置による複数回に亘る検査の結果をそれぞれ関連付けた統計情報(MsN,MsH,MsF)を記憶装置21に記憶する。情報管理部22による統計情報の更新処理については後述する。交換要素を対象とした検査は、本実施形態において、交換要素の種別ごとに異なる複数の検査装置によって実行される。具体的には、検査装置は、ノズルクリーナ30、ヘッドクリーナ40、およびフィーダ保守装置50に組み込まれた検査ユニット32,42,52(
図3、
図7、
図10を参照)である。
【0020】
1-4.吸着ノズル70の構成
吸着ノズル70は、
図2に示すように、筒状に形成された胴体軸71を有する。胴体軸71は、装着ヘッド80に保持される本体部として機能する。胴体軸71の軸方向の一端側(
図2の下側)には、円盤状のフランジ72が形成されている。吸着ノズル70は、胴体軸71から軸方向に延伸する管状に形成されたノズル軸73を有する。胴体軸71およびノズル軸73は、吸着ノズル70における負圧流路を形成する。ノズル軸73は、胴体軸71を介して供給される負圧により、先端部に接触する部品を保持する。
【0021】
また、ノズル軸73は、胴体軸71に対して軸方向に伸縮可能に構成される。より詳細には、ノズル軸73は、図示しない弾性部材により胴体軸71から進出する方向に付勢されている。胴体軸71およびノズル軸73により構成される吸着ノズル70の伸縮部は、ノズル軸73の先端部に胴体軸71側への荷重を加えられた場合に、胴体軸71に対してノズル軸73が摺動し、上記の弾性部材による弾性力に抗して収縮する。また、フランジ72の上面には、識別コード74が付されている。識別コード74には、吸着ノズル70の識別情報(ID)や種別などの固有情報が含まれる。
【0022】
1-5.ノズルクリーナ30の構成
ノズルクリーナ30は、
図1に示すように、部品装着機10に対する外部装置である。ノズルクリーナ30は、本実施形態において、複数の吸着ノズル70の保持した状態にあるノズルステーション14を搬入されて、当該吸着ノズル70を対象とした洗浄、検査、および保管を行うノズル管理装置である。
【0023】
また、ノズルクリーナ30は、保管されている吸着ノズル70を要求に応じてノズルステーション14に移載して、部品装着機10の段取り替えを支援する機能を有する。ノズルクリーナ30は、
図3に示すように、洗浄ユニット31と、検査ユニット32と、ノズルストッカー33と、ノズル移動装置34と、制御装置35と、排出ボックス36とを備える。
【0024】
洗浄ユニット31は、吸着ノズル70の負圧流路および伸縮部を洗浄する。より詳細には、洗浄ユニット31は、図示しない洗浄庫において吸着ノズル70の洗浄および乾燥を行う。洗浄ユニット31は、洗浄処理において、例えば吸着ノズル70の内部に高圧の洗浄流体(エア、洗浄液)を流通させて、また吸着ノズル70の外面に高圧のエアまたは水などの洗浄液を噴射して洗浄する。また、洗浄ユニット31は、洗浄処理を実行された吸着ノズル70を図示しないブロー装置により水分を吹き飛ばして乾燥させる乾燥処理を実行する。
【0025】
検査ユニット32は、ノズルクリーナ30において吸着ノズル70を対象とした各種の検査を行う検査装置である。本実施形態において、検査ユニット32による検査の項目には、
図4の表1に示すように、吸着ノズル70の外形、負圧流路の流量、および伸縮部の摺動抵抗が含まれる。より詳細には、検査ユニット32は、例えばノズル移動装置34に保持された吸着ノズル70を図示しないカメラにより撮像し、当該撮像により取得した画像データに基づいて吸着ノズル70の外形を検査する。これにより、吸着ノズル70の歪み、欠損、付着物の有無などが確認される。
【0026】
また、検査ユニット32は、図示しないロードセルを用いて、吸着ノズル70のノズル軸73が胴体軸71の内部に向かって摺動した際の荷重を検出する。ロードセルによる測定値が規定値よりも大きい吸着ノズル70は、摺動部の汚れなどの要因によって摺動抵抗が大きくなっていることが想定される。なお、検査ユニット32は、各種の検査ごとに良否判定するとともに、良否判定の結果における良否の程度を記録する。また、検査ユニット32は、洗浄ユニット31により洗浄された吸着ノズル70を対象として適宜種別の検査を行い、再度の良否判定を行うことがある。
【0027】
具体的には、検査ユニット32は、
図4の表1に示すように、検査対象である吸着ノズル70の識別情報(ID:Nx511,Nx512,・・)ごとに、検査日時(d1:h1,d2:h1,・・)と、各検査項目の測定値を記録する。例えば、吸着ノズル70の外形の測定値(Sa20,Sa19,・・)は、理想の外形に対する変形の度合いを示す。検査ユニット32は、測定値と合否の基準に基づいて、各検査項目の合否(○,NG)を記録する。つまり、それぞれの測定値は、各種の検査項目における良否判定の結果における良否の程度を示す。
【0028】
ノズルストッカー33は、複数の吸着ノズルを収納可能に構成された収納庫である。ノズルストッカー33は、図示しない保管パレットに吸着ノズル70を移載されて、複数の保管パレットごとに異なる保管位置に保管パレットを収容する。本実施形態において、ノズルストッカー33には、オペレータが吸着ノズル70を取り出し可能な一般領域331と、所定の権限を有する管理者のみが吸着ノズル70を取り出し可能な管理領域332とが設けられている。
【0029】
ノズルストッカー33の一般領域331は、オペレータがノズルクリーナ30の扉を開けることによって、保管パレットへのアクセスが可能な領域である。これに対して、ノズルストッカー33の管理領域332は、例えば管理者が有する鍵により解錠可能な鍵付きの扉により保管パレットへのアクセスが制限された領域である。これにより、ノズルストッカー33は、管理領域332に保管された吸着ノズル70を、オペレータが自由に取り出せないように管理可能に構成されている。
【0030】
ノズル移動装置34は、洗浄ユニット31、検査ユニット32、ノズルストッカー33、ノズルステーション14の設置位置、排出ボックス36との間で吸着ノズル70を移動させる。ノズル移動装置34は、図示しない保持チャックにより吸着ノズル70を1本ずつ把持し、3次元方向に吸着ノズル70を移動させる機構を備える。これにより、吸着ノズル70は、洗浄や検査、保管に応じたパレットと、ノズルステーション14との間で適宜移載される。
【0031】
さらに、ノズル移動装置34は、保管パレットをノズルストッカー33の一般領域331または管理領域332に移動させる機構を備える。また、ノズル移動装置34には、吸着ノズル70の識別コード74やノズルステーション14に付された識別コードなどを読み取り可能なコードリーダ(図示しない)が設けられている。
【0032】
制御装置35は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成されるコントローラである。制御装置35は、外部装置であるホストコンピュータと通信可能に接続され、各種の情報を共有可能に構成されている。制御装置35は、各種の洗浄処理、各種の検査処理、吸着ノズル70の移載を含む保管処理を制御する。排出ボックス36は、例えば検査ユニット32による検査結果に基づいて不良と判定された吸着ノズル70を溜め置きする。排出ボックス36は、複数の空間に区画されており、例えば不良要因ごとの仕分けに利用される。
【0033】
1-6.保守管理装置20による保守管理処理
上記の保守管理装置20の情報管理部22は、
図1に示すように、複数の交換要素(吸着ノズル70など)の識別情報ごとに、検査装置(検査ユニット32など)による複数回に亘る検査の結果をそれぞれ関連付けた統計情報などを記憶する。以下では、説明を簡易にするために、本実施形態における「交換要素」が「吸着ノズル70」であるものとして説明する。
【0034】
情報管理部22は、検査ユニット32により複数の吸着ノズル70が検査されて、検査の結果MiN(
図4の表1を参照)が取得または更新された場合に、吸着ノズル70の統計情報MsNを生成または更新する。これにより、統計情報MsNには、
図4の表2に示すように、吸着ノズル70の識別情報(Nx511,Nx512,・・)の検査項目(外形、流量、摺動抵抗)ごとに、複数回に亘る検査の結果を統計的に示している。このように統計情報MsNは、交換要素である吸着ノズル70の性能水準を示すものとして、種々の判断や解析に利用することができる。
【0035】
本実施形態において、情報管理部22は、吸着ノズル70に対する良否判定の実行回数と合格回数との割合を示す合格率を吸着ノズル70の識別情報に関連付けて統計情報MsNとして記憶する。ノズルクリーナ30に保管されている吸着ノズル70には、良否判定によって不合格とされた後に、例えば洗浄ユニット31により所定の洗浄処理を実行されて再度の良否判定において合格と判定されることがある。
【0036】
また、保管されている吸着ノズル70には、良否判定の結果によって不合格とされた後に、例えばオペレータによる修復を経て使用を許諾されたものが含まれ得る。上記のような吸着ノズル70は、現状としては装着処理への使用を許諾されているが、過去に何らかの要因によって不良と判定された実績を記録される。吸着ノズル70は、合格率が低下すると、不良の要因によっては以降の検査において不良と判定される蓋然性が高くなり、換言すると装着処理に使用された場合に装着エラーの要因になり得るものと考えられる。
【0037】
そこで、情報管理部22は、吸着ノズル70の検査項目ごとの合格率に基づいて、その吸着ノズル70について装着処理への使用の許否を判断する。例えば、ある検査項目についての合格率が閾値を下回った吸着ノズル70を装着処理の使用から除外することによって、装着エラーの発生を未然に防止できる。また、不要な洗浄処理の実行を防止できるので、管理コストを低減できる。
【0038】
また、本実施形態において、情報管理部22は、吸着ノズル70に対する良否判定の結果における良否の程度に基づいて、吸着ノズル70の基準状態に対する現在状態の回復割合を示す回復率を吸着ノズル70の識別情報に関連付けて統計情報MsNとして記憶する。吸着ノズル70などの交換要素は、例えば装着処理に使用されるごとに洗浄処理や調整処理を実行されて適正な性能維持が図られている。しかしながら、洗浄などのメンテナンスを実行されても、性能が完全に回復しない場合がある。
【0039】
ここで、上記の「基準状態」とは、吸着ノズル70などの交換要素における初期または理想の性能を発揮する状態を示す。つまり、検査項目が吸着ノズル70の外形であれば、基準状態は、吸着ノズル70の理想的な外形に相当する。また、検査項目が吸着ノズル70の負圧流路の流量であれば、基準状態は、仕様上の流量または新規入荷したときの流量に相当する。そして、回復率は、吸着ノズル70に対する洗浄等のメンテナンスによって、吸着ノズル70の現在状態がどの程度まで基準状態に回復しているのかを示す。
【0040】
吸着ノズル70は、回復率が低下すると、不良の要因によっては以降の洗浄等のメンテナンスを行っても基準状態に近付くほどの回復が見込めなくなる蓋然性が高くなり、換言すると装着処理に使用された場合に装着エラーの要因になり得るものと考えられる。そこで、情報管理部22は、吸着ノズル70の検査項目ごとの回復率に基づいて、その吸着ノズル70について装着処理への使用の許否を判断する。例えば、ある検査項目についての回復率が閾値を下回った吸着ノズル70を装着処理の使用から除外することによって、装着エラーの発生を未然に防止できる。また、不要な洗浄処理の実行を防止できるので、管理コストを低減できる。
【0041】
上記の保守管理装置20による保守管理処理について、
図5を参照して説明する。保守管理処理は、例えば複数の吸着ノズル70がノズルステーション14に保持された状態でノズルクリーナ30に搬入されたときに実行される。ここでは、ノズルクリーナ30において、搬入された吸着ノズル70に対して洗浄等の保守を実行する運転モードが選択されているものとする。保守管理装置20は、メンテナンス工程(ステップ10(以下、「ステップ」を「S」と表記する))として、先ず識別情報を取得する(S11)。
【0042】
詳細には、情報管理部22は、ノズルクリーナ30が吸着ノズル70の識別コード74をコードリーダにより読み取ることによって、ノズルクリーナ30から識別情報を取得する。次に、情報管理部22は、読み取った識別情報に関連付けられた過去の検査の結果を示す統計情報MsNに基づいて、吸着ノズル70を対象とした洗浄の種類、組み合わせ、および実行回数を設定する(S12)。具体的には、その吸着ノズル70の合格率や回復率が規定値より低い場合には、洗浄流体にオイルミストを設定し、回復率等に応じたオイルミストの流量、洗浄時間、洗浄回数が設定される。
【0043】
続いて、ノズルクリーナ30は、S12にて設定された保守を実行する(S13)。これにより、吸着ノズル70は、統計情報MsNに基づいた洗浄等の保守を実行される。なお、ノズルクリーナ30は、搬入されたノズルステーション14に保持された複数の吸着ノズル70のそれぞれに保守の種別等が設定されて(S12)、これらを対応するパレットに仕分けした後にまとめて対応する洗浄等の保守を実行するようにしてもよい(S13)。
【0044】
続いて、保守管理装置20は、検査工程に移行する(S20)。ノズルクリーナ30の検査ユニット32は、コードリーダにより識別コード74を読み取って、検査対象の吸着ノズル70の識別情報を取得する(S21)。そして、検査ユニット32は、予め定められている検査項目(外形、流量、摺動抵抗)についての各種の検査処理を実行する(S22)。これにより、検査ユニット32が検査項目ごとの測定値を記録するとともに、当該測定値と合否の基準に基づいて各検査項目の合否(○,NG)を判定する。
【0045】
吸着ノズル70の各種検査の結果MiNは、測定値および判定の結果が追記されて更新される。これに伴い、吸着ノズル70の統計情報MsNも同様に更新される。具体的には、現在値としての「最新結果」、「合格率」、および「回復率」が更新される。さらに、最近N回の検査結果のみを統計化した測定値の「平均値」および「傾向」、全数の検査結果を統計化した測定値の「平均値」および「傾向」が更新される。
【0046】
上記の「平均値」は、測定値を平均化した値である。また、上記の「傾向」は、測定値の変化度合いを示す値である。具体的には、情報管理部22は、例えば3以上の測定値を最小自乗法で近似した直線の傾きを上記の「傾向」として算出してもよいし、3以上の測定値を曲線近似して最後の測定値における接線の傾きを上記の「傾向」として算出してもよい。
【0047】
保守管理装置20は、吸着ノズル70の検査項目の合否等に基づいて、吸着ノズル70に対する処分の種別(収納、再洗浄、修復、廃棄など)を設定する(S23)。具体的には、保守管理装置20は、吸着ノズル70が全ての検査項目について合格している場合には、次回以降の装着処理に使用可能に収納するよう処分を設定する(S23)。保守管理装置20は、当該吸着ノズル70がノズルストッカー33の一般領域331に収納されるように、対応するパレットに吸着ノズル70を移載させる(S24)。
【0048】
一方で、吸着ノズル70が全ての検査項目について合格していない場合には、保守管理装置20は、吸着ノズル70に対して、洗浄ユニット31による再度の洗浄、超音波洗浄機による洗浄、オペレータによる修復、廃棄などの処分の種別を、合格率等に基づいて設定する(S23)。具体的には、保守管理装置20は、伸縮部の摺動抵抗が不合格であり、回復率が閾値まで所定値以内である場合には、洗浄流体をオイルミストに変更して再度の洗浄処理を実行し、または超音波洗浄機による洗浄を行うように処分の種別を設定する。
【0049】
これに対して、保守管理装置20は、吸着ノズル70の外形に欠損が発見した場合や、不合格となった検査項目の回復率が閾値まで所定値以上に差がある場合には、オペレータによる修復させるように、または廃棄ボックスへ吸着ノズル70を移動させるように処分の種別を設定する。さらに、保守管理装置20は、例えば不合格となった検査項目の合格率が合否判定用の閾値とは異なる第二閾値より低い場合には、当該吸着ノズル70がノズルストッカー33の管理領域332に収納されるように、対応するパレットに吸着ノズル70を移載させる(S24)。
【0050】
このように、保守管理装置20は、管理領域332に所定の吸着ノズル70を収納することによって、当該吸着ノズル70が誤って持ち出されるなどして以降の装着処理に使用されることを制限する。上記のように、保守管理装置20は、ノズル移動装置34により吸着ノズル70を検査ユニット32からノズルストッカー33に移動させる際に、吸着ノズル70に係る統計情報MsNに基づいて一般領域331または管理領域332を切り換える。このように、統計情報MsNに基づいて、見かけでは不良との判断が困難であるなど潜在的な不良の要因を有する吸着ノズル70を所定の権限の下で管理できる。よって、オペレータの誤認によって不良の吸着ノズル70が以降の装着処理に使用されることを防止できる。
【0051】
続いて、保守管理装置20は、S23にて吸着ノズル70が不良であって廃棄(管理領域332への収納を含む)すると判定し且つ吸着ノズル70に代替可能な種別の在庫数が所定値未満であるか否か判定する(S25)。吸着ノズル70は、吸着対象の部品種に応じて多様な種別に区分され、種別によっては互いに代替可能である。また、吸着ノズル70は、洗浄等のメンテナンスを施されてもある程度の劣化が進むと廃棄される。そうすると、吸着ノズル70の廃棄数が一定値に達した場合でも、以降の装着処理に必要な数量を確保する必要がある。
【0052】
そこで、保守管理装置20は、吸着ノズル70に代替可能の種別の在庫数が所定値未満である場合に(S25:Yes)、吸着ノズル70の不足に関する情報を送信する(S26)。具体的には、保守管理装置20は、例えばオペレータや代替可能な種別の吸着ノズル70を保管する近隣の倉庫に対して、不足する吸着ノズル70の種別、および数量を含む情報を送信する。これにより、不足情報に対応して倉庫から吸着ノズル70が払い出され、オペレータに対して当該倉庫に吸着ノズル70を受け取るように案内される。また、上記の不足に関する情報を利用して、不足する種別の吸着ノズル70を自動的に発注してもよい。
【0053】
続いて、保守管理装置20は、吸着ノズル70が全ての検査項目について合格しているか、または廃棄対象の吸着ノズル70に代替可能な種別の在庫数が所定値以上である場合(S25:No)、若しくはS26にて不足に関する情報を送信した後に、情報管理部22は、統計情報MsNにおける吸着ノズル70の検査の結果が一定の基準を満たすか否かを判定する(S27)。上記の「一定の基準」は、検査結果として通知を行うか否かの基準であり、検査項目に係る測定値の合否の基準とは別にオペレータや管理者により任意に設定される。
【0054】
具体的には、一定の基準として、測定値が想定範囲を大幅に下回ったことを示す値、測定値は合格であるが合格率や回復率が悪化していることを示す値、廃棄対象の吸着ノズル70がノズルストッカー33の管理領域332に収納されるように判定されたことを示す値が、それぞれの検査項目ごとに設定され得る。情報管理部22は、統計情報MsNにおける吸着ノズル70の検査の結果が一定の基準を満たさない場合に(S27:No)、吸着ノズル70の識別情報および統計情報MsNのうち対応する部分をオペレータに通知する(S28)。
【0055】
これにより、オペレータは、検査項目に係る測定値の合否判定の他に、統計情報MsNに基づく通知を受けて、当該吸着ノズル70の情報を取得することができる。従来では、検査ユニット32による測定値が単に蓄積されるのみで、当該蓄積された情報から例えば個々の吸着ノズル70の劣化状態などの傾向を把握することは困難であった。これに対して、上記のような構成によると、オペレータは、通知により注意喚起されて、当該吸着ノズル70が不良となる前に保守の対象とするなどの施策が可能となる。
【0056】
保守管理装置20は、上記のようにメンテナンス工程(S10)および検査工程(S20)を実行して保守管理処理を終了する。また、S23にて洗浄等のメンテナンスを再度実行するように処分が設定された吸着ノズル70は、洗浄ユニット31により洗浄されるとともに検査ユニット32により再度の良否判定がなされる。保守管理装置20は、このような再度の検査の結果をさらに入力し、統計情報MsNを更新させる。そして、上記と同様に保守管理処理を実行する。
【0057】
上記のように、保守管理装置20は、保守管理処理において洗浄等の保守を実行する運転モードが選択されて、メンテナンス工程(S10)および検査工程(S20)を順に実行する構成とした。これに対して、保守管理装置20は、保守管理処理において各種の検査項目(外形、流量、摺動抵抗など)のうち少なくとも一つに係る検査処理を実行した後に、検査結果の合否等に基づいて処分の種別(収納、洗浄、修復、廃棄など)を設定し、必要に応じてメンテナンス工程(S10)を実行してもよい。
【0058】
2.実施形態の第一変形態様
2-1.第一変形態様の概要
実施形態において、保守管理装置20が対象とする部品装着機10の交換要素が吸着ノズル70である構成を例示して説明した。これに対して、保守管理装置20が対象とする部品装着機10の交換要素は、装着ヘッド80であってもよい。以下では、「交換要素」が「装着ヘッド80」である第一変形態様について説明する。
【0059】
2-2.装着ヘッド80の構成
装着ヘッド80は、
図6に示すように、部品移載装置13の移動台132にクランプされるヘッド本体81を有する。ヘッド本体81には、ノズルツール82、ツール駆動装置83、およびエア供給装置84が設けられている。ノズルツール82は、R軸と同心の円周上において周方向に等間隔に複数の吸着ノズル70を、Z軸方向に摺動可能に且つθ軸周りに回転可能に保持する。装着ヘッド80には、ノズルツール82を着脱可能なタイプと、一体的に固定されたタイプとがある。なお、上記のθ軸は、R軸に並行で且つそれぞれの吸着ノズル70の軸心を通る吸着ノズル70の自転軸である。
【0060】
ツール駆動装置83は、モータや減速装置、直動機構などにより構成され、吸着ノズル70のθ軸周りに角度決めするとともにZ軸方向に位置決めする。ツール駆動装置83は、R軸駆動部831、θ軸駆動部832、およびZ軸駆動部833を備える。R軸駆動部831は、ヘッド本体81に対してノズルツール82をR軸周りに回転させる。θ軸駆動部832は、複数の吸着ノズル70のそれぞれをθ軸周りに回転させる。Z軸駆動部833は、複数の吸着ノズル70のうちヘッド本体81における規定位置に割り出された1つをZ軸方向に昇降させる。
【0061】
エア供給装置84は、図示しないエアポンプにより負圧または正圧を発生させて、装着ヘッド80の内部に形成されたエア流路を介して吸着ノズル70に負圧または正圧を供給する。エア供給装置84は、負圧流路841、正圧流路842、およびバルブ843を備える。負圧流路841は、吸着ノズル70に負圧を供給する際に使用されるエア流路である。正圧流路842は、吸着ノズル70に正圧を供給する際に使用されるエア流路である。バルブ843は、例えばステッピングモータ(図示しない)により動作し、エア流路における負圧の供給、正圧の供給、および遮断を切り換える。
【0062】
2-3.ヘッドクリーナ40の構成
ヘッドクリーナ40は、
図1に示すように、部品装着機10に対する外部装置である。ヘッドクリーナ40は、本実施形態において、装着ヘッド80を搬入されて、当該装着ヘッド80を対象とした洗浄、および検査を行うヘッド管理装置である。ヘッドクリーナ40は、クランプ機構により装着ヘッド80が取り付けられると、装着ヘッド80のツール駆動装置83を動作させ、またエア供給装置84のエア流路にエア等を流通させることが可能な状態となる。
【0063】
ヘッドクリーナ40は、
図7に示すように、洗浄ユニット41と、検査ユニット42と、制御装置43とを備える。洗浄ユニット41は、装着ヘッド80におけるエア供給装置84の負圧流路841および正圧流路842を洗浄する。詳細には、洗浄ユニット41は、洗浄処理において、装着ヘッド80のエア流路に正圧エアまたはオイルミストからなる洗浄流体を供給する。また、洗浄ユニット41は、洗浄処理において、洗浄流体を供給しながらツール駆動装置83やエア供給装置84を適宜動作させる。
【0064】
具体的には、洗浄ユニット41は、洗浄流体を供給した状態でツール駆動装置83のZ軸駆動部833を動作させて吸着ノズル70を保持するノズル軸を昇降させたり、エア供給装置84のバルブ843を動作させて洗浄流体の流通経路を切り換えたりする。なお、洗浄処理において供給される洗浄流体の種別や、供給量、供給時におけるツール駆動装置83やエア供給装置84の動作については、洗浄種別によって適宜設定される。
【0065】
検査ユニット42は、ヘッドクリーナ40において装着ヘッド80を対象とした各種の検査を行う検査装置である。本実施形態において、検査ユニット42による検査の項目には、
図8の表1に示すように、装着ヘッド80の駆動部(R軸駆動部831、θ軸駆動部832、Z軸駆動部833)の駆動負荷、負圧流路841の流量、正圧流路842の流量が含まれる。詳細には、検査ユニット42は、例えば装着ヘッド80の駆動部に対して規定の動作を行うように指令し、当該動作の所要時間に基づいて駆動部の駆動負荷を検査する。これにより、駆動部の汚れの度合いなどが確認される。
【0066】
また、検査ユニット42は、装着ヘッド80のエア流路に負圧または正圧を供給して、図示しない流量測定センサにより負圧流路841および正圧流路842におけるエアの流量を測定する。検査ユニット42は、検査処理において、負圧または正圧を供給した状態でノズルツール82をR軸周りに回転させたり、吸着ノズル70を保持するノズル軸をθ軸周りに回転させたりZ軸方向に昇降させたりして、種々の状態における流量が適正であるかを検査する。装着ヘッド80のエア流路における流量が低下している場合には、エア流路に汚れがあったり、可動部の潤滑性が低下していたりすることが想定される。
【0067】
なお、検査ユニット42は、各種の検査ごとに良否判定するとともに、良否判定の結果における良否の程度を記録する。また、検査ユニット42は、洗浄ユニット41により洗浄された装着ヘッド80を対象として適宜種別の検査を行い、再度の良否判定を行うことがある。具体的には、検査ユニット42は、
図8の表1に示すように、検査対象である装着ヘッド80の識別情報(ID:Hx621,Hx622,・・)ごとに、検査日時(d4:h1,d5:h1,・・)と、各検査項目の測定値を記録する。
【0068】
例えば、装着ヘッド80の駆動部の駆動負荷の測定値(DAa30,DAa29,・・)は、R軸駆動部831などの駆動負荷を示す。駆動部の駆動負荷には、R軸駆動部831の他に、図示しないθ軸駆動部832やZ軸駆動部833の駆動負荷が含まれている。検査ユニット42は、測定値と合否の基準に基づいて、各検査項目の合否(○,NG)を記録する。つまり、それぞれの測定値は、各種の検査項目における良否判定の結果における良否の程度を示す。
【0069】
制御装置43は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成されるコントローラである。制御装置43は、外部装置であるホストPCと通信可能に接続され、各種の情報を共有可能に構成されている。制御装置43は、各種の洗浄処理、および各種の検査処理を制御する。また、制御装置43は、装着ヘッド80と通信することにより、装着ヘッド80に記憶された識別情報(ID)を取得する。
【0070】
2-4.保守管理装置20による保守管理処理
上記のように、「交換要素」が「装着ヘッド80」である場合に、情報管理部22は、検査ユニット42により装着ヘッド80が検査されて、検査の結果MiH(
図8の表1を参照)が取得または更新された場合に、装着ヘッド80の統計情報MsHを生成または更新する。これにより、統計情報MsHには、
図8の表2に示すように、装着ヘッド80の識別情報(Hx621,Hx622,・・)の検査項目(駆動負荷、負圧流量、正圧流量)ごとに、複数回に亘る検査の結果を統計的に示している。
【0071】
本変形態様において、情報管理部22は、装着ヘッド80に対する良否判定の実行回数と合格回数との割合を示す合格率を装着ヘッド80の識別情報に関連付けて統計情報MsHとして記憶する。ヘッドクリーナ40に搬入されている装着ヘッド80は、良否判定によって不合格とされた後に、例えば洗浄ユニット41により所定の洗浄処理を実行されて、再度の良否判定において合格と判定されることがある。
【0072】
なお、装着ヘッド80の統計情報MsHにおける合格率、回復率、最近N回の平均値および傾向、全数の平均値および傾向については、実施形態にて例示した吸着ノズル70の統計情報MsHに対応するため詳細な説明を省略する。また、上記の保守管理装置20による保守管理処理についても同様に、実施形態にて吸着ノズル70を交換要素として例示した態様と実質的に同一であるため詳細な説明を省略する。以下では、相違点のみについて説明する。
【0073】
ここで、実施形態における保守管理処理の検査工程(S20)では、交換要素である吸着ノズル70に対する処分の種別を設定し(S23)、その後に吸着ノズル70を対応するパレットに移載させた(S24)。これに対して、装着ヘッド80を対象とするヘッドクリーナ40は、装着ヘッド80を保管する保管庫を有しないため、上記の交換要素の移載処理(S24)は省略される。
【0074】
また、S23にて設定される処分の種別には、交換要素である装着ヘッド80の修復として、装着ヘッド80を構成する交換部品の交換を伴う修復が含まれ得る。そのため、S25では、保守管理装置20は、S23にて統計情報MsHに基づいて装着ヘッド80を修復すると判定し且つ修復に必要な交換部品の在庫数が所定値未満であるか否かを判定する(S25)。そして、在庫数が所定値未満である場合には(S25:Yes)、保守管理装置20は、交換部品の不足に関する情報を送信する(S26)。また、上記の不足に関する情報を利用して、不足する交換部品を自動的に発注してもよい。
【0075】
3.実施形態の第二変形態様
3-1.第二変形態様の概要
実施形態において、保守管理装置20が対象とする部品装着機10の交換要素が吸着ノズル70である構成を例示して説明した。これに対して、保守管理装置20が対象とする部品装着機10の交換要素は、フィーダ90であってもよい。以下では、「交換要素」が「フィーダ90」である第二変形態様について説明する。
【0076】
3-2.フィーダ90の構成
フィーダ90は、
図9に示すように、フィーダ本体91と、駆動装置92と、テープセンサ93を備える。フィーダ本体91は、部品供給装置12のスロット121にセットされる。フィーダ本体91には、挿入されたキャリアテープ(以下、単に「テープ」と称する)95を支持するレールが形成される。駆動装置92は、部品を採取可能に供給するフィーダ本体91の前部側に配置される。駆動装置92は、フィーダ本体91の下方に設けられた複数のスプロケットを有する。
【0077】
複数のスプロケットのそれぞれは、テープ95に設けられた係合穴に係合する。駆動装置92は、図示しない駆動源としてのステッピングモータを回転させて、複数のスプロケットを所定方向に所定量だけ回転させる。これにより、フィーダ90は、フィーダ本体91のレールに沿ってテープ95を送り移動可能に構成される。
【0078】
テープセンサ93は、本変形態様において、テープ95の接合部を検出する。フィーダ90には、複数のテープ95のテープ端同士を接合することにより、部品切れに伴う部品の供給の中断を防止するタイプがある。上記のように、テープ端同士を接合するスプライシング処理には、例えば金属の接合部材が用いられる。テープセンサ93は、検出部が静電容量の変化を検出することにより、フィーダ本体91のレール上における所定位置を接合部材(即ち、テープ95の接合部)が通過したことを検出する。
【0079】
なお、フィーダ90には、フィーダ本体91の後部に位置するテープ95の挿入部にテープ95が挿入されるとテープ95を部品の取出部側に送り移動させて、テープ95をオートローディングするタイプがある。このようなオートローディングタイプの場合には、挿入部に近いレールの下方に上記の駆動装置92と同様の駆動装置が設けられる。また、オートローディングタイプの場合には、テープセンサ93は、テープ95の有無やテープ端の検出に用いられ得る。
【0080】
3-3.フィーダ保守装置50の構成
フィーダ保守装置50は、
図1に示すように、部品装着機10に対する外部装置である。フィーダ保守装置50は、本変形態様において、カバーを外された状態のフィーダ90を搬入されて、当該フィーダ90を対象とした洗浄、調整、および検査を行う。フィーダ保守装置50は、フィーダ90が搬入されると、フィーダ90の駆動装置92を動作させ、またテープセンサ93の検出値を取得可能な状態となる。フィーダ保守装置50は、洗浄ユニット51と、検査ユニット52と、調整ユニット53と、制御装置54とを備える。
【0081】
洗浄ユニット51は、フィーダ90の駆動装置92およびテープセンサ93の検出部を洗浄する。詳細には、洗浄ユニット51は、洗浄処理において、エアを駆動装置92のスプロケットなどを吹き付けて、ほこりなどの異物を除去する。洗浄の対象には、駆動装置92のスプロケットの他に、スプロケットに駆動源の回転力を伝達するギヤなどの伝達機構、テープ95の送り移動を補助するローラ(図示しない)が含まれる。また、洗浄ユニット51は、洗浄処理において、洗浄液を駆動装置92におけるギヤの噛合部位に噴霧し、噛合部位に付着した古い潤滑剤を除去する。なお、洗浄処理において用いる洗浄流体(エア、洗浄液)の種別や、供給量、洗浄箇所については、洗浄種別によって適宜設定される。
【0082】
検査ユニット52は、フィーダ保守装置50においてフィーダ90を対象とした各種の検査を行う検査装置である。本変形態様において、検査ユニット52による検査の項目には、
図11の表1に示すように、フィーダ90の駆動装置92の動作精度、駆動装置92の駆動負荷、およびテープセンサ93の検出感度が含まれる。詳細には、検査ユニット52は、例えばフィーダ90の駆動装置92を動作させて、実際にテープ95や検査用のマスターテープが送り移動された量や、当該動作に要したトルクに基づいて、駆動装置92の動作精度や駆動負荷を検出する。これにより、駆動装置92の汚れの度合いや潤滑性などが確認される。
【0083】
また、検査ユニット52は、テープセンサ93に金属の被検体を検出させることにより、テープセンサ93の検出感度を測定する。これにより、テープセンサ93が正常にテープ95の接合部を検出できない場合には、テープセンサ93の検知部に汚れが付着していることが想定される。
【0084】
なお、検査ユニット52は、各種の検査ごとに良否判定するとともに、良否判定の結果における良否の程度を記録する。また、検査ユニット52は、洗浄ユニット51により洗浄されたフィーダ90、または後述する調整ユニット53により調整されたフィーダ90を対象として適宜種別の検査を行い、再度の良否判定を行うことがある。具体的には、検査ユニット52は、
図11の表1に示すように、検査対象であるフィーダ90の識別情報(ID:Fx841,Fx842,・・)ごとに、検査日時(d7:h1,d8:h1,・・)と、各検査項目の測定値を記録する。
【0085】
例えば、フィーダ90の駆動装置92の動作精度の測定値(Ca15,Ca14,・・)は、駆動装置92における駆動源の動作量に対する実際のテープ95の移動量のずれを示す。検査ユニット52は、測定値と合否の基準に基づいて、各検査項目の合否(○,NG)を記録する。つまり、それぞれの測定値は、各種の検査項目における良否判定の結果における良否の程度を示す。
【0086】
調整ユニット53は、フィーダ90の駆動装置92などを調整する。詳細には、調整ユニット53は、調整処理において、駆動装置92のスプロケットを一定量だけ回転させてテープ95を正確にピッチ送りさせるために、フィーダ本体91に対するスプロケットの角度に応じた駆動源への指令動作量の補正値を算出する。また、調整ユニット53は、調整処理において、潤滑剤を駆動装置92におけるギヤの噛合部位に供給する。なお、調整処理において用いる潤滑剤の種別や、供給量、供給箇所については、調整種別によって適宜設定される。
【0087】
制御装置54は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成されるコントローラである。制御装置54は、外部装置であるホストPCと通信可能に接続され、各種の情報を共有可能に構成されている。制御装置54は、各種の洗浄処理、および各種の検査処理を制御する。また、制御装置54は、フィーダ90と通信することにより、フィーダ90に記憶された識別情報(ID)を取得する。
【0088】
3-4.保守管理装置20による保守管理処理
上記のように、「交換要素」が「フィーダ90」である場合に、情報管理部22は、検査ユニット52によりフィーダ90が検査されて、検査の結果MiF(
図11の表1を参照)が取得または更新された場合に、フィーダ90の統計情報MsFを生成または更新する。これにより、統計情報MsFには、
図11の表2に示すように、フィーダ90の識別情報(Fx841,Fx842,・・)の検査項目(動作精度、駆動負荷、検出感度)ごとに、複数回に亘る検査の結果を統計的に示している。
【0089】
本変形態様において、情報管理部22は、フィーダ90に対する良否判定の実行回数と合格回数との割合を示す合格率をフィーダ90の識別情報に関連付けて統計情報MsFとして記憶する。フィーダ保守装置50に搬入されているフィーダ90は、良否判定によって不合格とされた後に、例えば洗浄ユニット51により所定の洗浄処理を実行されて、または調整ユニット53により所定の調整処理を実行されて、再度の良否判定において合格と判定されることがある。
【0090】
なお、フィーダ90の統計情報MsFにおける合格率、回復率、最近N回の平均値および傾向、全数の平均値および傾向については、実施形態にて例示した吸着ノズル70の統計情報MsFに対応するため詳細な説明を省略する。また、上記の保守管理装置20による保守管理処理についても同様に、実施形態の第一変形態様にて装着ヘッド80を交換要素として例示した態様と実質的に同一であるため詳細な説明を省略する。
【0091】
4.その他の変形態様
実施形態、第一変形態様、および第二変形態様において、保守管理装置20は、ホストPCに情報管理部22を組み込まれた構成とした。これに対して、情報管理部22は、検査装置(検査ユニット32,42,52)を備える装置(30,40,50)に組み込まれる構成としてもよい。そして、各装置に情報管理部22が組み込まれた構成において、それぞれが連携して一つの保守管理装置20を構成してもよいし、それぞれが独立して稼働してもよい。
【0092】
また、検査装置(検査ユニット32,42,52)は、部品装着機などの生産装置に少なくとも一部の機能が組み込まれる構成としてもよい。例えば、装着ヘッド80にエア流路における空気圧を測定する圧力センサが設けられている場合に、保守管理装置20は、圧力センサを用いて負圧流路841および正圧流路842におけるエアの流量を測定してもよい。また、保守管理装置20は、部品カメラ15や基板カメラ16を用いて吸着ノズル70を撮像し、撮像により取得された画像データに基づいて吸着ノズル70の外形を検査してもよい。さらに、例えば吸着ノズル70により部品を基板に装着する際の押圧力を適正にするために部品装着機の機内に校正用のロードセルが設けられている場合には、保守管理装置20は、当該ロードセルを用いて吸着ノズル70の摺動抵抗を測定してもよい。
【0093】
さらに、洗浄ユニット31,41,51は、部品装着機などの生産装置に少なくとも一部の機能が組み込まれる構成としてもよい。例えば、部品装着機の装着ヘッド80には正圧のエアが供給されている場合に、保守管理装置20は、このエアを洗浄流体として装着ヘッド80および装着ヘッド80に保持された状態の吸着ノズル70に供給し、装着ヘッド80に形成されたエア流路や吸着ノズル70の負圧流路を洗浄してもよい。上記のような生産装置における検査処理や洗浄処理は、連続する生産処理(例えば、部品装着機による装着処理)の間に適宜実行され得る。また、生産装置における検査処理や洗浄処理を既存の設備を兼用でき、設備コストの低減を図ることができる。なお、専用の検査ユニットや洗浄ユニットが生産装置に設けられる構成としてもよい。
【0094】
また、保守管理装置20が対象とする交換要素は、実施形態では吸着ノズル70であり、第一変形態様では装着ヘッド80であり、第二変形態様ではフィーダ90であるものとした。これに対して、保守管理装置20は、実施形態にて述べたように、部品装着機10に交換可能にセット等されるものであり検査対象となる部材であれば、上記の他に、ノズルステーション14やノズルツール82、ツールステーション、装着ヘッド80以外の作業ヘッド(検査ヘッド、接着剤塗布ヘッド)を交換要素としてもよい。
【0095】
また、実施形態等では、統計情報(MsN,MsH,MsF)には、合格率、回復率、平均値、および傾向が含まれるものとした。これに対して、統計情報(MsN,MsH,MsF)には、さらに交換要素の識別情報に関連付けられる情報であれば、種々の情報を付加することができる。具体的には、上記の交換要素が装着処理にて使用された際の装着条件(移動速度、使用回数、使用頻度など)、交換要素の管理状態や供給主、交換要素を部品装着機10にセットしたオペレータや時期、過去に実行された保守の種別、保守を行った作業者などを示す情報が想定される。
【0096】
上記のような情報を統計情報(MsN,MsH,MsF)に付加することにより、例えば何らかの不良が発生した場合に、同様の不良が発生した交換要素と共通する情報に基づく不良の要因の割り出しを補助できる。これにより、不良の要因が割り出されると、装着条件の変更等をすることにより、装着エラーの発生を防止できる。このように、保守管理装置20は、種々の情報を統計的に管理することにより保守の管理性を向上できる。結果として、装着エラーの発生を未然に防止して、生産効率の維持を図ることができる。
【0097】
5.実施形態および変形態様の構成による効果
上記の保守管理装置20は、基板Bdに部品を装着する部品装着機10における交換要素(吸着ノズル70、装着ヘッド80、フィーダ90など)を対象として、交換要素を検査する検査装置(検査ユニット32,42,52など)と、検査の対象とされた複数の交換要素の識別情報ごとに、検査装置による複数回に亘る検査の結果をそれぞれ関連付けた統計情報MsN,MsH,MsFを記憶する情報管理部22と、を備える。
【0098】
このような構成によると、検査ユニット32による検査の結果は、対応する交換要素(吸着ノズル70、装着ヘッド80、フィーダ90など)の識別情報(ID)に関連付けられて、統計情報MsN,MsH,MsFとして記憶される。このような統計情報MsN,MsH,MsFは、交換要素の性能水準や、装着エラーの要因を特定する際における交換要素の性能水準の変化傾向を把握するための解析に利用できる有用な情報である。例えば、ある交換要素の性能水準の変化傾向が把握されると、当該交換要素を装着処理に使用してもよいか否かの判断材料とすることができる。結果として、生産効率の維持を図るように保守を管理することができる。
【符号の説明】
【0099】
10:部品装着機、 20:保守管理装置、 21:記憶装置、 22:情報管理部、 30:ノズルクリーナ、 31:洗浄ユニット、 32:検査ユニット(検査装置)、 33:ノズルストッカー(収納庫)、 331:一般領域、 332:管理領域、 34:ノズル移動装置(移動装置)、 35:制御装置、 36:排出ボックス、 40:ヘッドクリーナ、 41:洗浄ユニット、 42:検査ユニット(検査装置)、 43:制御装置、 50:フィーダ保守装置、 51:洗浄ユニット、 52:検査ユニット(検査装置)、 53:調整ユニット、 54:制御装置、 70:吸着ノズル(交換要素)、 71:胴体軸、 72:フランジ、 73:ノズル軸、 74:識別コード、 80:装着ヘッド(交換要素)、 81:ヘッド本体、 82:ノズルツール、 83:ツール駆動装置、 831:R軸駆動部、 832:θ軸駆動部、 833:Z軸駆動部、 84:エア供給装置、 841:負圧流路、 842:正圧流路、 843:バルブ、 90:テープフィーダ(交換要素)、 91:フィーダ本体、 92:駆動装置、 93:テープセンサ、 95:キャリアテープ