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特許7197747セル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】セル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20221220BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20221220BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221220BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20221220BHJP
【FI】
H01M4/86 U
H01M8/2475
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
H01M8/12 102C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022512793
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2021039906
(87)【国際公開番号】W WO2022092235
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020183197
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 大樹
(72)【発明者】
【氏名】原 章洋
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-231918(JP,A)
【文献】特開2005-166314(JP,A)
【文献】特開2004-146334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 8/24
H01M 8/04
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極層と、
第1希土類元素および前記第1希土類元素とは異なる第2希土類元素を含有する燃料極層と、
前記空気極層および前記燃料極層の間に位置し、前記第2希土類元素を含有する固体電解質層と
を備え、
前記燃料極層は、第1部位と、前記第1部位および前記固体電解質層の間に位置し、少なくとも前記第2希土類元素を含有する第2部位とを有し、
前記燃料極層は、電子伝導性および触媒作用を有する第1粒子体と、イオン伝導性を有する第2粒子体とを含み、
前記第2粒子体は、前記第1希土類元素を含有する酸化物である第1粒子と、前記第2希土類元素を含有する酸化物であり、前記第1粒子よりもイオン伝導性が高い第2粒子とを含み、
前記第1粒子体は、前記燃料極層の全体にわたって一様に分布し、
前記第2部位は、前記第2希土類元素の含有率が前記第1希土類元素の含有率よりも大きく、
前記固体電解質層は、ZrおよびCeのうち少なくともいずれかを含むセル。
【請求項2】
空気極層と、
第1希土類元素および前記第1希土類元素とは異なる第2希土類元素を含有する燃料極層と、
前記空気極層および前記燃料極層の間に位置し、前記第2希土類元素を含有する固体電解質層と
を備え、
前記燃料極層は、第1部位と、前記第1部位および前記固体電解質層の間に位置し、少なくとも前記第2希土類元素を含有する第2部位とを有し、
前記燃料極層は、電子伝導性および触媒作用を有する第1粒子体と、イオン伝導性を有する第2粒子体とを含み、
前記第2粒子体は、前記第1希土類元素を含有する酸化物である第1粒子と、前記第2希土類元素を含有する酸化物であり、前記第1粒子よりもイオン伝導性が高い第2粒子とを含み、
前記第1粒子体は、前記燃料極層の全体にわたって一様に分布し、
前記第2部位は、前記第2希土類元素の含有率が前記第1部位よりも大きく、
前記固体電解質層は、ZrおよびCeのうち少なくともいずれかを含むセル。
【請求項3】
前記第1希土類元素の含有率は、前記第1部位の方が前記第2部位よりも大きい
請求項1または2に記載のセル。
【請求項4】
前記第1希土類元素および前記第2希土類元素の含有率の総和に対する前記第1希土類元素の含有率の割合は、前記第1部位の方が前記第2部位よりも大きい
請求項1~のいずれか1つに記載のセル。
【請求項5】
空気極層と、
第1希土類元素および前記第1希土類元素とは異なる第2希土類元素を含有する燃料極層と、
前記空気極層および前記燃料極層の間に位置し、前記第2希土類元素を含有する固体電解質層と
を備え、
前記燃料極層は、前記固体電解質層に接する第1面と、前記固体電解質層の反対側に位置する第2面とを有し、
前記燃料極層は、電子伝導性および触媒作用を有する第1粒子体と、イオン伝導性を有する第2粒子体とを含み、
前記第2粒子体は、前記第1希土類元素を含有する酸化物である第1粒子と、前記第2希土類元素を含有する酸化物であり、前記第1粒子よりもイオン伝導性が高い第2粒子とを含み、
前記第1粒子体は、前記燃料極層の全体にわたって一様に分布し、
前記燃料極層は、前記第2希土類元素の含有率前記第1面から前記第2面にかけて漸減しており、
前記固体電解質層は、ZrおよびCeのうち少なくともいずれかを含むセル。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載のセルを1つ以上備えるセルスタックを有する
セルスタック装置。
【請求項7】
請求項に記載のセルスタック装置と、
前記セルスタック装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項8】
請求項に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルを複数有する燃料電池セルスタック装置が種々提案されている。燃料電池セルは、水素含有ガスなどの燃料ガスと空気などの酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができるセルの1種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-35416号公報
【発明の概要】
【0004】
実施形態の一態様に係るセルは、空気極層と、燃料極層と、固体電解質層とを備える。燃料極層は、第1希土類元素および前記第1希土類元素とは異なる第2希土類元素を含有する。固体電解質層は、前記空気極層および前記燃料極層の間に位置し、前記第2希土類元素を含有する。前記燃料極層は、第1部位と第2部位とを有する。第2部位は、前記第1部位および前記固体電解質層の間に位置し、少なくとも前記第2希土類元素を含有する。
【0005】
また、本開示のセルスタック装置は、上記に記載のセルを1つ以上備えるセルスタックを有する。
【0006】
また、本開示のモジュールは、上記に記載のセルスタック装置と、セルスタック装置を収納する収納容器とを備える。
【0007】
また、本開示のモジュール収容装置は、上記に記載のモジュールと、モジュールの運転を行うための補機と、モジュールおよび補機を収容する外装ケースとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、第1の実施形態に係るセルの一例を示す横断面図である。
図1B図1Bは、第1の実施形態に係るセルの一例を空気極層側からみた側面図である。
図1C図1Cは、第1の実施形態に係るセルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aに示すX-X線の断面図である。
図2C図2Cは、第1の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す上面図である。
図3A図3Aは、燃料極層の概略の一例を示す図である。
図3B図3Bは、図1Aに示す領域R1を拡大した断面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るモジュールの一例を示す外観斜視図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
図6図6は、第2の実施形態に係るセルを概略的に示す断面図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るセルの一例を示す斜視図である。
図8図8は、図7に示すセルの部分断面図である。
図9図9は、図8に示す領域R2を拡大した断面図である。
図10A図10Aは、第3の実施形態に係るセルの一例を示す斜視図である。
図10B図10Bは、図10Aに示すセルの部分断面図である。
図10C図10Cは、図10Bに示す領域R3を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するセル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係、比率などが異なる部分が含まれている場合がある。
【0011】
[第1の実施形態]
<セルの構成>
まず、図1A図1Cを参照しながら、第1の実施形態に係るセルとして、固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。
【0012】
図1Aは、第1の実施形態に係るセル1の一例を示す横断面図であり、図1Bは、第1の実施形態に係るセル1の一例を空気極層側からみた側面図であり、図1Cは、第1の実施形態に係るセル1の一例をインターコネクタ側からみた側面図である。なお、図1A図1Cは、セル1の各構成の一部を拡大して示している。
【0013】
図1A図1Cに示す例において、セル1は中空平板型で、細長い板状である。図1Bに示すように、セル1の全体を側面から見た形状は、たとえば、長さ方向Lの辺の長さが5cm~50cmで、この長さ方向Lに直交する幅方向Wの長さが1cm~10cmの長方形である。このセル1の全体の厚み方向Tの厚さは、たとえば1mm~5mmである。
【0014】
図1Aに示すように、セル1は、導電性の支持基板2と、素子部3と、インターコネクタ4とを備えている。支持基板2は、一対の対向する平坦面n1、n2、およびかかる平坦面n1、n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0015】
素子部3は、支持基板2の平坦面n1上に位置している。かかる素子部3は、燃料極層5と、固体電解質層6と、空気極層8とを有している。また、図1Aに示す例では、セル1の平坦面n2上にインターコネクタ4が位置している。なお、セル1は、固体電解質層6と空気極層8との間に中間層7を備えていてもよい。
【0016】
また、図1Bに示すように、空気極層8はセル1の下端まで延びていない。セル1の下端部では、固体電解質層6のみが平坦面n1の表面に露出している。また、図1Cに示すように、インターコネクタ4がセル1の下端まで延びていてもよい。セル1の下端部では、インターコネクタ4および固体電解質層6が表面に露出している。なお、図1Aに示すように、セル1の一対の円弧状の側面mにおける表面では、固体電解質層6が露出している。インターコネクタ4は、セル1の下端まで延びていなくてもよい。
【0017】
以下、セル1を構成する各構成部材について説明する。
【0018】
支持基板2は、ガスが流れるガス流路2aを内部に有している。図1Aに示す支持基板2の例は、6つのガス流路2aを有している。支持基板2は、ガス透過性を有し、ガス流路2aに流れる燃料ガスを燃料極層5まで透過させる。支持基板2は導電性を有していてもよい。導電性を有する支持基板2は、素子部3で生じた電気をインターコネクタ4に集電する。
【0019】
支持基板2の材料は、たとえば、鉄族金属成分および無機酸化物を含む。鉄族金属成分は、たとえば、Ni(ニッケル)および/またはNiOである。無機酸化物は、たとえば、特定の希土類元素酸化物であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでよい。
【0020】
燃料極層5の材料には、一般的に公知のものを使用することができる。燃料極層5は、多孔質の導電性セラミックス、たとえば希土類元素酸化物が固溶しているZrOなどのイオン伝導性材料と、Niおよび/またはNiOとを含むセラミックスなどを用いてもよい。この希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される複数の希土類元素を含む。希土類元素酸化物が固溶しているZrOを安定化ジルコニアと称する場合もある。安定化ジルコニアは、部分安定化ジルコニアも含む。なお、燃料極層5の詳細については、後述する。
【0021】
固体電解質層6は、電解質であり、燃料極層5と空気極層8との間のイオンの橋渡しをする。同時に、固体電解質層6は、ガス遮断性を有し、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを生じにくくする。
【0022】
固体電解質層6の材料は、たとえば、3モル%~15モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrOなどのイオン伝導性材料であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、La、Nd、GdおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでよい。以下、希土類元素酸化物が固溶した材料を、単に希土類元素が固溶した材料という場合がある。固体電解質層6は、たとえば、Yb、ScまたはGdが固溶したZrOを含んでもよく、La、NdまたはYbが固溶したCeOを含んでもよく、ScまたはYbが固溶したBaZrOを含んでもよく、ScまたはYbが固溶したBaCeOを含んでもよい。固体電解質層6は、第2希土類元素が固溶した材料を含む。換言すれば、固体電解質層6に含まれるイオン伝導性材料に固溶している希土類元素は、第2希土類元素である。
【0023】
空気極層8は、ガス透過性を有している。空気極層8の開気孔率(空隙率)は、たとえば20%~50%、特に30%~50%の範囲であってもよい。
【0024】
空気極層8の材料は、一般的に空気極に用いられるものであれば特に制限はない。空気極層8の材料は、たとえば、いわゆるABO型のペロブスカイト型酸化物などの導電性セラミックスであってもよい。
【0025】
空気極層8の材料は、たとえば、AサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaSr1-xCoFe1-y、LaSr1-xMnO、LaSr1-xFeO、LaSr1-xCoOなどが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0026】
また、素子部3が中間層7を有する場合、中間層7は、拡散抑制層としての機能を有する。中間層7は、空気極層8に含まれるSr(ストロンチウム)がたとえばZrを含有する固体電解質層6に拡散されにくくすることで、かかる固体電解質層6にSrZrOの抵抗層を形成させにくくする。
【0027】
中間層7の材料は、一般的にSrの拡散抑制層に用いられるものであれば特に制限はない。中間層7の材料は、たとえば、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウム(CeO)を含んでもよい。かかる希土類元素としては、たとえば、Gd(ガドリニウム)、Sm(サマリウム)などを用いてもよい。
【0028】
また、インターコネクタ4は、緻密質であり、支持基板2の内部に位置するガス流路2aを流通する燃料ガス、および支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じにくくする。インターコネクタ4は、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していてもよい。
【0029】
インターコネクタ4の材料には、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO系酸化物)を用いてもよい。これらの材料は、導電性を有し、かつ水素含有ガスなどの燃料ガスおよび空気などの酸素含有ガスと接触しても還元も酸化もされにくい。
【0030】
<セルスタック装置の構成>
次に、上述したセル1を用いた本実施形態に係るセルスタック装置10について、図2A図2Cを参照しながら説明する。図2Aは、第1の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す斜視図であり、図2Bは、図2Aに示すX-X線の断面図であり、図2Cは、第1の実施形態に係るセルスタック装置の一例を示す上面図である。
【0031】
図2Aに示すように、セルスタック装置10は、セル1の厚み方向T(図1A参照)に配列(積層)された複数のセル1を有するセルスタック11と、固定部材12とを備える。
【0032】
固定部材12は、固定材13と、支持部材14とを有する。支持部材14は、セル1を支持する。固定材13は、セル1を支持部材14に固定する。また、支持部材14は、支持体15と、ガスタンク16とを有する。支持部材14である支持体15およびガスタンク16は、金属製であり導電性を有している。
【0033】
図2Bに示すように、支持体15は、複数のセル1の下端部が挿入される挿入孔15aを有している。複数のセル1の下端部と挿入孔15aの内壁とは、固定材13で接合されている。
【0034】
ガスタンク16は、挿入孔15aを通じて複数のセル1に反応ガスを供給する開口部と、かかる開口部の周囲に位置する凹溝16aとを有する。支持体15の外周の端部は、ガスタンク16の凹溝16aに充填された接合材21によって、ガスタンク16と接合されている。
【0035】
図2Aに示す例では、支持部材14である支持体15とガスタンク16とで形成される内部空間22に燃料ガスが貯留される。ガスタンク16にはガス流通管20が接続されている。燃料ガスは、このガス流通管20を通してガスタンク16に供給され、ガスタンク16からセル1の内部のガス流路2a(図1A参照)に供給される。ガスタンク16に供給される燃料ガスは、後述する改質器102(図4参照)で生成される。
【0036】
水素リッチな燃料ガスは、原燃料を水蒸気改質などすることによって生成することができる。水蒸気改質により燃料ガスを生成する場合には、燃料ガスは水蒸気を含む。
【0037】
図2Aに示す例では、2列のセルスタック11、2つの支持体15、およびガスタンク16を備えている。2列のセルスタック11は、複数のセル1をそれぞれ有する。各セルスタック11は、各支持体15に固定されている。ガスタンク16は上面に2つの貫通孔を有している。各貫通孔には、各支持体15が配置されている。内部空間22は、1つのガスタンク16と、2つの支持体15とで形成される。
【0038】
挿入孔15aの形状は、たとえば、上面視で長円形状である。挿入孔15aは、たとえば、セル1の配列方向すなわち厚み方向Tの長さが、セルスタック11の両端に位置する2つの端部集電部材17の間の距離よりも大きい。挿入孔15aの幅は、たとえば、セル1の幅方向W(図1A参照)の長さよりも大きい。
【0039】
図2Bに示すように、挿入孔15aの内壁とセル1の下端部との接合部は、固定材13が充填され、固化されている。これにより、挿入孔15aの内壁と複数個のセル1の下端部とがそれぞれ接合・固定され、また、セル1の下端部同士が接合・固定されている。各セル1のガス流路2aは、下端部で支持部材14の内部空間22と連通している。
【0040】
固定材13および接合材21は、ガラスなどの導電性が低いものを用いることができる。固定材13および接合材21の具体的な材料としては、非晶質ガラスなどを用いてもよく、特に結晶化ガラスなどを用いてもよい。
【0041】
結晶化ガラスとしては、たとえば、SiO-CaO系、MgO-B系、La-B-MgO系、La-B-ZnO系、SiO-CaO-ZnO系などの材料のいずれかを用いてもよく、特にSiO-MgO系の材料を用いてもよい。
【0042】
また、図2Bに示すように、複数のセル1のうち隣接するセル1の間には、導電部材18が介在している。導電部材18は、隣接する一方のセル1と他方のセル1とを電気的に直列に接続する。より具体的には、導電部材18は、一方のセル1の燃料極層5と他方のセル1の空気極層8とを接続する。
【0043】
また、図2Bに示すように、複数のセル1の配列方向における最も外側に位置するセル1に、端部集電部材17が電気的に接続されている。端部集電部材17は、セルスタック11の外側に突出する導電部19に接続されている。導電部19は、セル1の発電により生じた電気を集電して外部に引き出す。なお、図2Aでは、端部集電部材17の図示を省略している。
【0044】
また、図2Cに示すように、セルスタック装置10は、2つのセルスタック11A、11Bが直列に接続された一つの電池であってもよい。かかる場合、セルスタック装置10の導電部19は、正極端子19Aと、負極端子19Bと、接続端子19Cとを有していてもよい。
【0045】
正極端子19Aは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の正極であり、セルスタック11Aにおける正極側の端部集電部材17に電気的に接続される。負極端子19Bは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の負極であり、セルスタック11Bにおける負極側の端部集電部材17に電気的に接続される。
【0046】
接続端子19Cは、セルスタック11Aにおける負極側の端部集電部材17と、セルスタック11Bにおける正極側の端部集電部材17とを電気的に接続する。
【0047】
<燃料極層の詳細>
つづいて、第1の実施形態に係る燃料極層5の詳細について、図3A図3Bを参照しながら説明する。図3Aは、燃料極層の概略の一例を示す図である。
【0048】
図3Aに示すように、燃料極層5は、第1粒子体P1と第2粒子体P2とを含む。第1粒子体P1は、電子伝導性および触媒作用を有する。第1粒子体P1は、たとえば、Pt、Ni等である。なお、第1粒子体P1は、0℃における電気伝導度が1.0×10S/m以上であれば、上記したものに限られない。第1粒子体P1は、たとえば、断面視した円相当径の平均が0.1μm~10μm程度の粒子状を有している。第1粒子体P1は、発電状態においてその表面が電子伝導性及び触媒作用を有していれば、内部に酸化物を含んでいてもよい。また、発電していない状態の燃料極層5は、表面が酸化した第1粒子体P1を含んでいてもよい。
【0049】
第2粒子体P2は、イオン伝導性を有し、希土類元素を含有する酸化物である。第2粒子体P2は、たとえば、断面視した円相当径の平均が0.1μm~2μm程度の粒子状(1次粒子)を有している。また、第2粒子体P2は、第1希土類元素を含有する第1粒子51と、第1希土類元素とは異なる第2希土類元素を含有する第2粒子52とを含む。
【0050】
第1粒子体P1および第2粒子体P2(第1粒子51、第2粒子52)は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いた燃料極層5の断面観察により、その存在箇所をそれぞれ確認することができる。また、第1粒子体P1および第2粒子体P2(第1粒子51、第2粒子52)の円相当径は、燃料極層5の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察した結果に基づいてそれぞれ算出することができる。
【0051】
第1粒子51は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される希土類元素を、第1希土類元素として含有する。第1粒子51は、複数の第1希土類元素を含有してもよい。
【0052】
第2粒子52は、固体電解質層6に含有される第2希土類元素を含有する。第2粒子は、たとえば、Nd、Sc、La、GdおよびYbから選択される希土類元素を、第2希土類元素として含有してもよい。第1粒子53は、Nd、Sc、La、GdおよびYbのうち、第2粒子52に含有されない希土類元素を含有してもよい。
【0053】
また、第2粒子52は、第1粒子51よりもイオン伝導性が高い。ここで、第1粒子51および第2粒子52のイオン伝導性は、たとえば、第1粒子51の組成を有する矩形状の焼結体および第2粒子52の組成を有する矩形状の焼結体を作製し、600℃~900℃で四端子法により各焼結体のイオン伝導度を測定することで、それぞれ評価することができる。
【0054】
第1粒子体P1は、燃料極層5の全体にわたって一様に分布している。これに対し、第2粒子体P2は、第1粒子51および第2粒子52が燃料極層5の内部で偏在している。この点につき、図3A図3Bを用いてさらに説明する。
【0055】
図3Bは、図1Aに示す領域R1を拡大した断面図である。図3Bに示すように、燃料極層5は、第1部位5Aおよび第2部位5Bを有している。
【0056】
第1部位5Aは、支持基板2に接するように位置している。第2部位5Bは、第1部位5Aと固体電解質層6との間に位置し、少なくとも第2希土類元素を含有している。第2部位5Bでは、第2希土類元素の含有率が第1希土類元素の含有率よりも大きくてもよい。ここで、第2部位5Bにおける第1希土類元素および第2希土類元素の含有率は、たとえば、EPMAを用いた元素分析により確認できる。具体的には、たとえば素子部3の積層方向の断面を鏡面研磨し、燃料極層5を厚さ方向に二等分し、支持基板2側を第1部位5Aとし、固体電解質層6側を第2部位5Bとする。第2部位5Bとした断面において所定の面積で、第1希土類元素および第2希土類元素をそれぞれ半定量分析することにより、それぞれの含有率を算出することができる。元素分析を行う面積は、たとえば第2部位5Bの厚さ以下の長さを一辺の長さとする四角形の面積としてもよい。また、後述する第1部位5Aにおける各希土類元素の含有率についても、同様に算出することができる。なお、第1希土類元素または第2希土類元素の含有率とは、第2粒子体P2すなわちイオン伝導性材料に含まれる元素のうちO(酸素)を除く元素の合計を分母とし、第1希土類元素または第2希土類元素を分子としたモル比率(原子比率)である。燃料極層5における第1粒子体P1と第2粒子体P2の分布状態が概ね均一であれば、燃料極層5に含まれる元素のうちO(酸素)を除く元素の合計を分母として、第1希土類元素または第2希土類元素を分子としたモル比率(原子比率)を、第1希土類元素または第2希土類元素の含有率とみなしてもよい。
【0057】
このように、第1希土類元素よりも第2希土類元素の含有率が大きい第2部位5Bを有することにより、第1部位5Aよりも固体電解質層6に近い第2部位5Bのイオン伝導度を高くすることができる。このため、第2部位5Bにおける実抵抗を低減することができることから、燃料極層5における分極抵抗が低減される。これにより、セル1の電池性能を向上することができる。
【0058】
また、第1部位5Aは、支持基板2に含まれる希土類元素と同じ希土類元素を含有してもよい。第1部位5Aおよび支持基板2が同じ希土類元素を含有することにより、支持基板2から燃料極層5が剥離しにくくすることができる。このため、セル1の耐久性を高めることができる。また、かかる第1部位5Aを、支持基板2と第2部位5Bとの間に位置させることにより、たとえば支持基板2から第2部位5Bへの元素拡散を抑えることができることから、第2部位5Bのイオン伝導度が低下しにくくすることができる。
【0059】
また、第2部位5Bは、固体電解質層6に含まれる希土類元素と同じ希土類元素を含有してもよい。第2部位5Bおよび固体電解質層6が同じ希土類元素を含有することにより、固体電解質層6から燃料極層5が剥離しにくくすることができる。このため、セル1の耐久性を高めることができる。
【0060】
なお、燃料極層5の第1部位5Aおよび第2部位5Bは、たとえば、EPMAを用いた元素分析により、第1希土類元素よりも第2希土類元素の含有率が大きいと判断される部分を第2部位5Bとし、残りの部分を第1部位5Aとすることにより区分することができる。具体的には、たとえば素子部3の積層方向の断面を鏡面研磨し、EPMAにより各元素をそれぞれ面分析、または積層方向に線分析し、各元素の濃度マッピング、または濃度プロファイルを得る。得られた各元素の濃度マッピング結果または濃度プロファイル結果から、燃料極層5のうち第1希土類元素が第2希土類元素よりも少ない領域を第2部位5Bとし、それ以外を第1部位5Aとする。
【0061】
また、第1希土類元素の含有率が、たとえば、第1部位5Aの方が第2部位5Bよりも大きくなるように燃料極層5を位置させてもよい。これにより、第1部位5Aの熱膨張率を、第2部位5Bの熱膨張率よりも小さくすることができる場合があることから、燃料極層5の変形を抑えることができる。このため、セル1の耐久性を高めることができる。たとえば、Ybが8モル%固溶したZrO(8YbSZ)のイオン伝導度は、Yが8モル%固溶したZrO(8YSZ)のイオン伝導度よりも高い。また、8YSZとNiとがそれぞれ50体積%である多孔質の焼結体の線熱膨脹係数は、1000℃で13.2ppmであり、8YbSZとNiとがそれぞれ50体積%である多孔質の焼結体の線熱膨脹係数は、1000℃で13.4ppmである。すなわち、YSZを含む焼結体の線熱膨脹係数は、YbSZを含む焼結体の線熱膨脹係数より小さい。第1粒子51を、第1希土類元素としてYを含むYSZとし、第2粒子52を、第2希土類元素としてYbを含むYbSZとして第1部位5A、第2部位5Bをそれぞれ構成することで、第2部位5Bのイオン伝導性が高く、第1部位5Aの線熱膨脹係数が小さい燃料極層5とすることができ、電池性能が高く、耐久性の高いセル1とすることができる。
【0062】
また、第1希土類元素および第2希土類元素の含有率の総和に対する第1希土類元素の含有率の割合((第1希土類元素の含有率)/((第1希土類元素の含有率)+(第2希土類元素の含有率)))が、第1部位5Aの方が第2部位5Bよりも大きくなるように燃料極層5を位置させてもよい。これにより、第1部位5Aの熱膨張率を、第2部位5Bの熱膨張率よりも小さくすることができる場合があることから、燃料極層5の変形を抑えることができる。このため、セル1の耐久性を高めることができる。
【0063】
また、第1部位5Aの線熱膨張率が、第2部位5Bの線熱膨張率よりも小さくなるように燃料極層5を位置させてもよい。これにより、燃料極層5の変形を抑えることができることから、セル1の耐久性を高めることができる。ここで、第2部位5Bにおける第1希土類元素および第2希土類元素の含有率は、たとえば、EPMAを用いた元素分析により確認できる。具体的には、素子部3の積層方向の断面を鏡面研磨し、第1部位5Aの断面において所定の面積で、第1希土類元素および第2希土類元素をそれぞれ半定量分析することにより、それぞれ測定することができる。元素分析を行う面積は、たとえば第1部位5Aの厚さ以下の長さを一辺の長さとする四角形の面積としてもよい。
【0064】
なお、燃料極層5は、必ずしも第1部位5Aおよび第2部位5Bを有する必要はなく、たとえば、燃料極層5の内部において第2希土類元素の含有率が段階的に変化してもよい。たとえば、燃料極層5の固体電解質層6に接する面を第1面とし、固体電解質層6の反対側に位置する面を第2面としたとき、燃料極層5は、第2希土類元素の含有率が、第1面から第2面にかけて漸減していてもよい。このように、第2希土類元素の含有率が第1面から第2面にかけて漸減することにより、固体電解質層6から離れた燃料極層5よりも固体電解質層6に近い燃料極層5のイオン伝導度を高くすることができる。このため、固体電解質層6に近い燃料極層5における実抵抗を低減することができることから、燃料極層5における分極抵抗が低減される。これにより、セル1の電池性能を向上することができる。
【0065】
<モジュール>
次に、上述したセルスタック装置10を用いた本開示の実施形態に係るモジュール100について、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係るモジュールを示す外観斜視図である。図4は、収納容器101の一部である前面および後面を取り外し、内部に収納される燃料電池のセルスタック装置10を後方に取り出した状態を示している。
【0066】
図4に示すように、モジュール100は、収納容器101、および収納容器101内に収納されたセルスタック装置10を備えている。また、セルスタック装置10の上方には、改質器102が配置されている。
【0067】
かかる改質器102は、天然ガス、灯油などの原燃料を改質して燃料ガスを生成し、セル1に供給する。原燃料は、原燃料供給管103を通じて改質器102に供給される。なお、改質器102は、水を気化させる気化部102aと、改質部102bとを備えていてもよい。改質部102bは、図示しない改質触媒を備えており、原燃料を燃料ガスに改質する。このような改質器102は、効率の高い改質反応である水蒸気改質を行うことができる。
【0068】
そして、改質器102で生成された燃料ガスは、ガス流通管20、ガスタンク16、および支持部材14を通じて、セル1のガス流路2a(図1A参照)に供給される。
【0069】
また、上述の構成のモジュール100では、ガスの燃焼およびセル1の発電に伴い、通常発電時におけるモジュール100内の温度が500℃~1000℃程度となる。
【0070】
このようなモジュール100においては、上述したように、電池性能が向上されるセルスタック装置10を収納して構成されることにより、電池性能が向上されるモジュール100とすることができる。
【0071】
<モジュール収容装置>
図5は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。本実施形態に係るモジュール収容装置110は、外装ケース111と、図4で示したモジュール100と、図示しない補機と、を備えている。補機は、モジュール100の運転を行う。モジュール100および補機は、外装ケース111内に収容されている。なお、図5においては一部構成を省略して示している。
【0072】
図5に示すモジュール収容装置110の外装ケース111は、支柱112と外装板113とを有する。仕切板114は、外装ケース111内を上下に区画している。外装ケース111内の仕切板114より上側の空間は、モジュール100を収容するモジュール収容室115であり、外装ケース111内の仕切板114より下側の空間は、モジュール100を運転する補機を収容する補機収容室116である。なお、図5では、補機収容室116に収容する補機を省略して示している。
【0073】
また、仕切板114は、補機収容室116の空気をモジュール収容室115側に流すための空気流通口117を有している。モジュール収容室115を構成する外装板113は、モジュール収容室115内の空気を排気するための排気口118を有している。
【0074】
このようなモジュール収容装置110においては、上述したように、電池性能が向上されるモジュール100をモジュール収容室115に備えていることにより、電池性能が向上されるモジュール収容装置110とすることができる。
【0075】
なお、上述の実施形態では、中空平板型の支持基板を用いた場合を例示したが、円筒型の支持基板を用いたセルスタック装置に適用することもできる。
【0076】
[第2の実施形態]
つづいて、第2の実施形態に係るセルおよびセルスタック装置について、図6図9を参照しながら説明する。
【0077】
上述の実施形態では、支持基板の表面に燃料極層、固体電解質層および空気極層を含む素子部が1つのみ設けられたいわゆる「縦縞型」を例示したが、支持基板の表面の互いに離れた複数個所にて素子部がそれぞれ設けられ、隣り合う素子部の間が電気的に接続されたいわゆる「横縞型」のセルを配列した横縞型セルスタック装置に適用することができる。
【0078】
図6は、第2の実施形態に係るセルを概略的に示す断面図である。図6に示すように、セルスタック装置10Aは、燃料ガスを流通させる配管73から複数のセル1Aが長さ方向Lに延びている。セル1Aは、支持基板2上に複数の素子部3を有している。支持基板2の内部には、配管73からのガスが流れるガス流路2aが設けられている。支持基板2上の各素子部3は、後述する接続層8Aにより電気的に接続されている。複数のセル1Aは、導電部材18を介して互いに電気的に接続されている。導電部材18は、各セル1Aがそれぞれ有する素子部3の間に位置しており、隣り合うセル1Aを接続している。
【0079】
図7は、第2の実施形態に係るセルの一例を示す斜視図である。図8は、第2の実施形態に係るセルの一例を示す断面図である。セル1Aは、素子部3と接続部3AとがX軸方向に沿って交互に位置している。
【0080】
セル1Aは、厚さ方向(Z軸方向)の中心を通り且つ支持基板2の主面に平行な面に対して上下対称の形状である。
【0081】
素子部3は、燃料極層5、固体電解質層6、中間層7および空気極層8がこの順に積層されている。空気極層8の表面には、X軸方向に隣り合う素子部3同士を電気的に接続するための接続層8Aが位置している。また、燃料極層5の表面には、電子伝導性を有する燃料極集電部5aが位置している。
【0082】
図9は、図8に示す領域R2を拡大した断面図である。図9に示すように、燃料極層5は、固体電解質層6側から順に第2部位5Bおよび第1部位5Aがそれぞれ位置している。第2部位5Bは、少なくとも第2希土類元素を含有する。
【0083】
固体電解質層6は、第2希土類元素を含有している。また、第2部位5Bは、第2希土類元素の含有率が第1希土類元素の含有率よりも大きくてもよい。これにより、第1部位5Aよりも固体電解質層6に近い第2部位5Bのイオン伝導度を高くすることができる。このため、第2部位5Bにおける実抵抗を低減することができることから、燃料極層5における分極抵抗が低減される。これにより、セル1Aの電池性能を向上することができる。
【0084】
[第3の実施形態]
図10Aは、第3の実施形態に係るセルの一例を示す斜視図である。図10Bは、図10Aに示すセルの部分断面図である。
【0085】
図10Aに示すように、セル1Bは、燃料極層5、固体電解質層6および空気極層8が積層された素子部3Bを有している。素子部3Bは、固体電解質層6が、燃料極層5および空気極層8に挟まれた部位である。複数の平板型セルを積層させたセルスタック装置は、たとえば複数のセル1Bが、互いに隣り合う金属層である導電部材91,92により電気的に接続されている。導電部材91,92は、隣接するセル1B同士を電気的に接続するとともに、燃料極層5または空気極層8にガスを供給するガス流路を有している。
【0086】
図10Bに示すように、平板型セルスタックの燃料ガスの流路98と酸素含有ガスの流路97とを気密に封止する封止材を有している。封止材はセル1Bの固定部材96であり、接合材93およびフレームである支持部材94,95を有する。接合材93は、ガラスであってもよいし、銀ロウなどの金属材料であってもよい。
【0087】
支持部材94は、燃料ガスの流路98と酸素含有ガスの流路97とを区画するいわゆるセパレータであってもよい。支持部材94,95の材料は、例えば導電性の金属であってもよいし、絶縁性のセラミックスであってもよい。接合材93が、絶縁性の例えばガラスであった場合、支持部材94,95は両方が金属であってもよいし、いずれか一方が絶縁性の材料であってもよい。接合材93が、導電性の金属であった場合、支持部材94,95は両方またはいずれか一方が絶縁性の材料であってもよい。支持部材94,95が金属であった場合、支持部材94,95は導電部材92と一体化していてもよい。
【0088】
接合材93、支持部材94,95のうちいずれか1つは絶縁性であり、平板型セルを挟む2つの導電部材91,92を互いに電気的に絶縁している。
【0089】
図10Cは、図10Bに示す領域R3を拡大した断面図である。図10Cに示すように、燃料極層5は、固体電解質層6側から順に第2部位5Bおよび第1部位5Aがそれぞれ位置している。第2部位5Bは、少なくとも第2希土類元素を含有する。
【0090】
固体電解質層6は、第2希土類元素を含有している。また、第2部位5Bは、第2希土類元素の含有率が第1希土類元素の含有率よりも大きくてもよい。これにより、第1部位5Aよりも固体電解質層6に近い第2部位5Bのイオン伝導度を高くすることができる。このため、第2部位5Bにおける実抵抗を低減することができることから、燃料極層5における分極抵抗が低減される。これにより、セル1Bの電池性能を向上することができる。
【0091】
<その他の変形例>
つづいて、実施形態のその他の変形例に係るセルスタック装置について説明する。
【0092】
上記実施形態では、「セル」、「セルスタック装置」、「モジュール」および「モジュール収容装置」の一例として燃料電池セル、燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュールおよび燃料電池装置を示したが、他の例としてはそれぞれ、電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュールおよび電解装置であってもよい。
【0093】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0094】
以上のように、実施形態に係るセル1は、空気極層8と、燃料極層5と、固体電解質層6とを備える。燃料極層5は、第1希土類元素および第1希土類元素とは異なる第2希土類元素を含有する。固体電解質層6は、空気極層8および燃料極層5の間に位置し、第2希土類元素を含有する。燃料極層5は、第1部位5Aと第2部位5Bとを有する。第2部位5Bは、第1部位5Aおよび固体電解質層6の間に位置し、少なくとも第2希土類元素を含有する。これにより、セル1の電池性能を向上することができる。
【0095】
また、実施形態に係るセルスタック装置10は、上記に記載のセル1を1つ以上備えるセルスタック11を有する。これにより、電池性能を向上するセルスタック装置10とすることができる。
【0096】
また、実施形態に係るモジュール100は、上記に記載のセルスタック装置10と、セルスタック装置10を収納する収納容器101とを備える。これにより、電池性能を向上するモジュール100とすることができる。
【0097】
また、実施形態に係るモジュール収容装置110は、上記に記載のモジュール100と、モジュール100の運転を行うための補機と、モジュール100および補機を収容する外装ケースとを備える。これにより。電池性能を向上するモジュール収容装置110とすることができる。
【0098】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 セル
5 燃料極層
5A 第1部位
5B 第2部位
6 固体電解質層
7 中間層
8 空気極層
10 セルスタック装置
11 セルスタック
12 固定部材
13 固定材
14 支持部材
15 支持体
16 ガスタンク
17 端部集電部材
18 導電部材
100 モジュール
110 モジュール収容装置
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C