(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/06 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G01N15/06 E
(21)【出願番号】P 2022516429
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2021039491
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 秀久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】林 慶一
(72)【発明者】
【氏名】山下 智雄
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-503236(JP,A)
【文献】特開2016-055240(JP,A)
【文献】特開2004-340804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0166391(US,A1)
【文献】国際公開第89/11092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流路を流れる液体中の固形物の濃度を測定可能な測定装置であって、
前記流路を流れる液体の流速を測定する第1の流速測定部と、
前記流
路から液体
を案内
する案内管と、
前記案内管を流れる液体の流速を測定する第2の流速測定部と、
前記案内管を流れる液体に含まれる粒子数を測定する粒子測定部と、
前記流路から前記案内管に流入する液体の量を調節する調節部と、
前記調節部によって前記第2の流速測定部で測定される流速が前記第1の流速測定部で測定される流速と等しくなるようにした状態で、前記粒子測定部によって測定された粒子数と前記第2の流速測定部で測定された流速とに基づいて前記所定の流路内の固形物の濃度を測定する濃度測定ユニットと、を備
えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記案内管が開口部を有し、当該開口部が、前記流路を流れる液体の流通方向に対向して開口する姿勢で設置可能に構成されている請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記案内管が、前記流路を流れる液体の流通方向が鉛直方向下向きまたは上向きの箇所に設置されている請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記調節部が、前記案内管を流通す
る液体の流量を調節可能な調節
弁、および、前記案内管を流通する
液体を付勢可能な付勢装置
、から選択される少なくとも一つを制御する請求項
1~3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記案内管の中途から前記
案内管の開口部に向けて洗浄媒体を供給可能な洗浄媒体供給装置をさらに備える請求項1~4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記
案内管の開口部が、前記流路における、前記流路を流れ
る液体の主流が形成される部分に開口する姿勢で設置可能に構成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
所定の流路を流れる液体
の流速を測定する第1の流速測定部と、
前記流路から液体を案内する案内管と、
前記案内管を流れる液体の流速を測定する第2の流速測定部と、
前記案内管を流れる液体に含まれる粒子数を測定する粒子測定部と、
前記流路から前記案内管に流入する液体の量を調節する調節部と、を備える測定装置における液体中の固形物の濃度測定方法であって、
前記第1の流速測定部および前記第2の流速測定部で流速を測定する流速測定ステップと、
前記調節部によって前記第2の流速測定部で測定される流速が前記第1の流速測定部で測定される流速と等しくなるように調節する調節ステップと、
前記調節ステップによって前記案内管を流れる液体の流速が調節された状態で、前記粒子測定部によって測定された粒子数と前記第2の流速測定部で測定された流速とに基づいて前記所定の流路内の固形物の濃度を測定する
濃度測定ステップと、を含む測定方法。
【請求項8】
前記案内管が開口部を有し、当該開口部が、前記流路を流れる液体の流通方向に対向して開口する姿勢で設置されている請求項7に記載の測定方法。
【請求項9】
前記案内管
が、前記流路を流れる前記液体の流通方向が鉛直方向下向きまたは上向きの箇所に設置
されている請求項7
または8に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の流路を流れる液体中の固形物の濃度を測定可能な測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体などの被塗装物を塗装する場合、被塗装物に対して塗料を付着させる前に、被塗装物の表面に付着している油分を取り除く脱脂処理が行われることが一般的である。脱脂処理の方法としては、塩基性処理液などの脱脂液に被塗装物を浸漬する浸漬式と、被塗装物に脱脂液を噴霧する噴霧式と、が代表的である。いずれの方式においても、脱脂液を循環させる装置(配管、ポンプなど)が設けられており、脱脂液を循環させて繰り返し用いる場合が多い。
【0003】
脱脂液を繰り返し用いる上で、脱脂液の汚染が問題となる。特に、被塗装物に付着した鉄粉が、脱脂液によって洗い流されて被塗装物から離脱して脱脂槽に残留するため、複数の被塗装物の脱脂を繰り返すうちに脱脂液中の鉄粉の濃度が次第に上昇していく。脱脂液に含まれる鉄粉が被塗装物の表面に付着して次工程以降に持ち込まれると、塗装後の製品表面に突起(ブツ)を生じる不具合の原因となりうるため、脱脂液中の鉄粉を除去する技術が従来検討されている。
【0004】
たとえば、特開2002-322571号公報(特許文献1)に開示された塗装前処理装置には、ディッピング槽に満たされる脱脂兼化成処理液から不純物を除去するフィルタが設けられている。また、特開平11-61469号公報(特許文献2)に開示された前処理洗浄装置では、車体に吹き付けられた洗浄液が溜まる溜め槽と、溜め槽の洗浄液を受け取って異物等を取り除いて浄化した後、浄化済みの液を洗浄液として送り出す異物除去回路と、が設けられている。
【0005】
なお、脱脂工程における鉄粉の他の固形物についても、同様の事象が問題となる場合がある。かかる固形物としては、脱脂工程における糸くず、化成工程における化成スラッジ、電着工程における鉄粉などが例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-322571号公報
【文献】特開平11-61469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2の技術では、脱脂液に含まれる異物を除去することについては考慮されていたが、脱脂液に含まれる異物(鉄粉)の濃度を特定することは考慮されていなかった。たとえば、脱脂液を定期的にサンプリングして手作業で鉄粉の濃度を測定する方法が従来使用されてはいるが、この方法では鉄粉の濃度を連続的に、または高い頻度で測定することが難しかった。そのため、脱脂液から異物を除去する処理を行うべき時期の特定が難しかった。
【0008】
なお、鉄粉などの固形物の濃度を測定する装置自体は公知であるので、
図6に示すように、測定装置9の開口部91を脱脂液Lの流路に開口させて常設すれば、循環する脱脂液Lの一部を濃度測定ユニット2に導くことができ、脱脂液L中の固形物の濃度を連続的に測定できる。しかし、
図6の方法では、流路の壁面付近を流通する脱脂液Lにおける固形物の濃度が脱脂液L全体の平均的な固形物の濃度を十分に代表しない場合があるため、正確な濃度測定が難しい場合があった。そのため、脱脂液Lの固形物の濃度を正確に測定できない場合があった。
【0009】
そこで、固形物の濃度を正確に測定しうる測定装置および測定方法の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る測定装置は、所定の流路を流れる液体中の固形物の濃度を測定可能な測定装置であって、前記流路を流れる液体の流速を測定する第1の流速測定部と、前記流路から液体を案内する案内管と、前記案内管を流れる液体の流速を測定する第2の流速測定部と、前記案内管を流れる液体に含まれる粒子数を測定する粒子測定部と、前記流路から前記案内管に流入する液体の量を調節する調節部と、前記調節部によって前記第2の流速測定部で測定される流速が前記第1の流速測定部で測定される流速と等しくなるようにした状態で、前記粒子測定部によって測定された粒子数と前記第2の流速測定部で測定された流速とに基づいて前記所定の流路内の固形物の濃度を測定する濃度測定ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る測定方法は、所定の流路を流れる液体の流速を測定する第1の流速測定部と、前記流路から液体を案内する案内管と、前記案内管を流れる液体の流速を測定する第2の流速測定部と、前記案内管を流れる液体に含まれる粒子数を測定する粒子測定部と、前記流路から前記案内管に流入する液体の量を調節する調節部と、を備える測定装置における液体中の固形物の濃度測定方法であって、前記第1の流速測定部および前記第2の流速測定部で流速を測定する流速測定ステップと、前記調節部によって前記第2の流速測定部で測定される流速が前記第1の流速測定部で測定される流速と等しくなるように調節する調節ステップと、前記調節ステップによって前記案内管を流れる液体の流速が調節された状態で、前記粒子測定部によって測定された粒子数と前記第2の流速測定部で測定された流速とに基づいて前記所定の流路内の固形物の濃度を測定する濃度測定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
これらの構成によれば、固形物の濃度とともに、試料の流量を特定できる。また、比較的入手しやすい装置の組合せによって濃度測定ユニットを構成できる。さらに、流入流速と管内流速とが等しくなるので、開口部から流入する液体における固形物の濃度と、流路を流れる流体中の固形物の濃度とが一致しやすい。これによって、流体中の固形物の濃度をより正確に測定しうる。
【0026】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態に係る測定装置が適用される脱脂槽の構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る測定装置の構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る測定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】変形例に係る測定装置の構成を示す図である。
【
図5】測定装置の設置箇所の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る測定装置および測定方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る測定装置を、塗装設備の脱脂槽100において使用される脱脂液Lについて、鉄粉(固形物の例である。)の濃度を測定するために使用される測定装置1、および測定装置1を用いた鉄粉の濃度の測定方法に適用した例について説明する。
【0029】
〔脱脂槽の構成および機能〕
まず、本実施形態に係る測定装置1を説明する前提として、測定装置1が適用される脱脂槽100の構成および機能について説明する。脱脂槽100は、脱脂槽100に貯留された脱脂液Lに被塗装物(車体など)を浸漬して、塗装を施す前の被塗装物の表面に付着した油分を化学的に除去する装置である。脱脂槽100は、主槽101、補助槽102、ノズル装置103、給液路104、およびポンプ105を備える(
図1)。なお、脱脂液Lとしては、たとえばアルカリ性洗浄剤などが使用されうる。
【0030】
主槽101は、脱脂液Lを貯留してある槽である。主槽101に貯留されている脱脂液Lに被塗装物が浸漬されて脱脂が行われるのであって、主槽101は、いわば脱脂槽100の中核をなす部分である。補助槽102は、主槽101から溢れた脱脂液Lが流入する槽である。補助槽102の底部には給液路104が接続されており、補助槽102に流入した脱脂液Lは、給液路104を介してノズル装置103に供給される。なお、給液路104の中途には脱脂液Lを付勢するポンプ105が設けられている。ノズル装置103は、主槽101内に設けられており、主槽101に対して脱脂液Lを供給できる。
【0031】
以上の構成により、脱脂槽100では、主槽101、補助槽102、給液路104(ポンプ105)、およびノズル装置103、の順に脱脂液Lが流通し、再び主槽101に戻る循環経路が形成されている。これによって、脱脂槽100では、脱脂液Lを循環させながら、順次流入する被塗装物の脱脂を繰り返すことができる。
【0032】
上記のように脱脂が行われる中で、被塗装物の表面に付着した鉄粉が、脱脂液Lによって洗い流される。その結果、脱脂液Lに鉄粉が混入することになる。そして、脱脂槽100では脱脂液Lが循環しており、脱脂液Lを積極的に入れ替えるわけではないので、複数の被塗装物の脱脂を繰り返すうちに脱脂液L中の鉄粉の濃度が次第に上昇していく。脱脂液Lに含まれる鉄粉は、被塗装物の表面に付着して次工程以降に持ち込まれるおそれがあるため、脱脂液L中の鉄粉の濃度の上昇は好ましくない。そこで、本実施形態に係る測定装置1を用いて脱脂液L中の鉄粉の濃度を測定するとともに、当該濃度が所定の基準を上回る場合には脱脂槽100の洗浄を行う。
【0033】
〔測定装置の構成〕
次に、本実施形態に係る測定装置1の構成について説明する。本実施形態に係る測定装置1は、試料中の鉄粉の濃度を測定可能な濃度測定ユニット2と、案内管3と、調節弁4と、ポンプ5(付勢装置の例である。)と、流速計6と、圧縮空気供給装置7(洗浄媒体供給装置の例である。)と、制御装置8と、を備える(
図2、
図3)。本実施形態では、測定装置1が、脱脂槽100の給液路104(所定の流路の例である。)に設けられており、給液路104を流れる脱脂液L(液体の例である。)中の鉄粉の濃度を測定可能に構成されている例について説明する。
【0034】
濃度測定ユニット2は、流入する液体試料に含まれる鉄粉の濃度を測定可能なユニットである。本実施形態に係る濃度測定ユニット2は、試料中の粒子数を測定可能な粒子計測器21と、試料の流量を測定可能な流量計22と、演算装置23と、を有する。なお、濃度測定ユニット2の二次側配管24が給液路104に接続されており、測定後の試料は給液路104に戻る。
【0035】
〔測定装置の構成〕
次に、本実施形態に係る測定装置1の構成について説明する。本実施形態に係る測定装置1は、試料中の鉄粉の濃度を測定可能な濃度測定ユニット2
(粒子測定部の例である。)と、案内管3と、調節弁4
(調節部の例である。)と、ポンプ5(
調節部の例であり、付勢装置の例である。)と、流速計6
(第1の流速測定部の例である。)と、圧縮空気供給装置7(洗浄媒体供給装置の例である。)と、制御装置8と、を備える(
図2、
図3)。本実施形態では、測定装置1が、脱脂槽100の給液路104(所定の流路の例である。)に設けられており、給液路104を流れる脱脂液L(液体の例である。)中の鉄粉の濃度を測定可能に構成されている例について説明する。
【0036】
濃度測定ユニット2は、流入する液体試料に含まれる鉄粉の濃度を測定可能なユニットである。本実施形態に係る濃度測定ユニット2は、試料中の粒子数を測定可能な粒子計測器21と、試料の流量を測定可能な流量計22(第2の流速測定部の例である。)と、演算装置23と、を有する。なお、濃度測定ユニット2の二次側配管24が給液路104に接続されており、測定後の試料は給液路104に戻る。
【0037】
案内管3は、液体を試料として濃度測定ユニット2に案内可能な管体である。案内管3の一端部分には開口部31が設けられており、当該開口部31から流入した液体(脱脂液L)が、案内管3を流通して濃度測定ユニット2に案内される。また、案内管3の中途に調節弁4およびポンプ5が設けられているとともに、案内管3から分岐する形で圧縮空気供給装置7が設けられている。
【0038】
本実施形態に係る開口部31は、案内管3の一端部分を構成する採取管32の側面に設けられた開口である。採取管32は、給液路104を構成する管体104aの側面に挿入されうるように構成されており、その寸法は、採取管32を管体104aの側面に挿入したときに、開口部31を給液路104の中央部分に配置できる寸法にしてある。ここで、給液路104の中央部分とは、給液路104のうち壁面(管体104aの実体部分)から十分に離間した領域を意味し、より詳細には、給液路104を流れる脱脂液Lの主流(粘性の影響を実質的に受けない部分)が形成される部分をいう。
【0039】
管体104aの側面に挿入された採取管32を適宜回転させることによって、開口部31の開口方向を、給液路104を流れる脱脂液Lの流通方向に対向させることができる。なお、
図2に示すように、採取管32は、給液路104(管体104a)が鉛直方向に沿って設けられている箇所(
図1に破線IIで示した箇所)に設置されており、この箇所では脱脂液Lが上向きに流れている。したがって、開口部31は下向きに開口している。このように、開口部31が脱脂液Lの流通方向(上向き)に対向して(下向きに)開口していることによって、給液路104を流れる脱脂液Lの一部が開口部31に流入し、当該脱脂液Lを濃度測定ユニット2に案内できる。
【0040】
給液路104において、採取管32を設置する箇所は、給液路104を流れる脱脂液Lの流速の、給液路104方向における偏りが十分に小さい箇所とすることが好ましい。たとえば、給液路104の入口や屈曲部などの流速が変化しうる箇所より下流側で、かつ流速が変化しうる箇所からの距離が給液路104の内径の10倍以上である箇所に、採取管32を設置することが好ましい。
【0041】
調節弁4は、案内管3を流通する試料(脱脂液L)の流量を調節可能な弁である。調節弁4の開度は、調節弁4に入力される電気信号に従って決定され、かかる電気信号は制御装置8から発信される。調節弁4として、かかる機能を有する調節弁として公知のものを使用できる。なお、調節弁4は、常に開放および開度調節されていてもよいし、間欠的に開放されて開放時のみ開度調節されてもよい。前者の場合は、固形分濃度の測定が連続的に実施される運用になり、後者の場合は固形分濃度の測定が間欠的に実施される運用になる。
【0042】
ポンプ5は、案内管3を流通する試料(脱脂液L)を付勢可能なポンプである。ポンプ5の出力は、ポンプ5に入力される電気信号に従って決定され、かかる電気信号は制御装置8から発信される。ポンプ5として、かかる機能を有するポンプとして公知のものを使用できる。
【0043】
圧縮空気供給装置7は、案内管3の中途から開口部31に向けて圧縮空気(洗浄媒体の例である。)を供給できるように構成されており、たとえばエアーコンプレッサ71と制御弁72との組合せとして実装されている。制御弁72を開放すると、開口部31に向けて圧縮空気が流れる。すなわち、圧縮空気が案内管3を逆流して開口部31から吐出されることになる。これによって、開口部31に付着した異物(鉄粉など)を除去できるので、開口部31の詰まりを防止できる。なお、制御弁72を開放する前に調節弁4を閉鎖しておくことが好ましい。
【0044】
制御弁72の開閉は、任意の方法によって制御されうる。たとえば、制御装置8が制御弁72の開閉を制御する機能を実行する方法、制御弁72の開閉がタイマー制御されるように構成する方法、調節弁4の開度が所定の設定値に達したときに制御弁72を開放する方法、および、ポンプ5の出力を制御するインバータ出力周波数が所定の設定値に達したときに制御弁72を開放する方法、などが採用されうる。
【0045】
流速計6は、給液路104を流れる液体(脱脂液L)の流速である管内流速を測定可能な流速計である。より詳細には、流速計は、給液路104の中央部分における脱脂液Lの流速を測定できるように構成および配置されている。なお、給液路104の中央部分の定義は上記と同様である。
【0046】
制御装置8は、CPUおよび記憶媒体を備える公知の計算機(たとえばPLC)として実装されており、流入流速特定機能および流入流速制御機能を実行可能である。流入流速特定機能は、流量計22の指示値に基づいて開口部31に流入する液体(脱脂液L)の流速である流入流速を特定する機能である。具体的には、流量計22の指示値(mL/分単位)と、あらかじめ記憶媒体に記憶させてある開口部31の開口面積(cm2単位)と、に基づいて流入流速(m/秒単位)を特定する。
【0047】
流入流速制御機能は、流入流速と管内流速とが等しくなるように、調節弁4の開度またはポンプ5の出力を制御する機能である。このような制御を行うことによって、流入流速と管内流速とが等しくなるので、開口部31から流入する試料(脱脂液L)における鉄粉の濃度と、給液路104を流れる脱脂液L中の鉄粉の濃度とが一致しやすく、濃度測定の精度が向上しうる。反対に、流入流速と管内流速とに差がある場合、両者の鉄粉の濃度が乖離する場合がある。たとえば、流入流速が管内流速より速い場合、開口部31の正面から流入する脱脂液Lに加えて、その周囲を流通する脱脂液Lも開口部31に吸引されることになるが、このとき、脱脂液Lに比べて密度が高い鉄粉は、脱脂液Lに比べて開口部31に吸引されにくい。そのため、給液路104を流れる脱脂液Lに比べて、脱脂液Lの割合が大きい(すなわち鉄粉濃度が低い)流体が開口部31に流入することになる。この場合、給液路104を流れる脱脂液L中の本来の鉄粉の濃度より低い測定値が得られる。
【0048】
なお、演算装置23と制御装置8とは、別個に設けられていてもよいし、同一であってもよい。すなわち、たとえば単一のPLCが、濃度特定機能(演算装置23としての機能)、ならびに、流入流速特定機能および流入流速制御機能(制御装置8としての機能)を実行可能に構成されていてもよい。
【0049】
〔測定方法〕
続いて、本実施形態に測定装置1を用いて、脱脂液Lの鉄粉の濃度を測定する方法について説明する。
【0050】
まず、案内管3を、開口部31が脱脂液Lの流通方向(上向き)に対向して(下向きに)開口する姿勢で、給液路104に設置する。また、案内管3の他端部分を、濃度測定ユニット2(流量計22)に接続する。なお、案内管3の中途には調節弁4およびポンプ5を設けてあり、案内管3から分岐する形で圧縮空気供給装置7を設けてある。加えて、給液路104に流速計6を設置してある。
【0051】
測定装置1の各部を上記のように設置すると、開口部31から案内管3に流入させた脱脂液Lを、案内管3を流通させて濃度測定ユニット2に案内でき、これによって、脱脂液L中の鉄粉の濃度を測定できる。このとき、制御装置8に流入流速特定機能および流入流速制御機能を実行させ、開口部31に流入する液体(脱脂液L)の流速である流入流速を特定するとともに、給液路104を流れる液体(脱脂液L)の流速である管内流速(流速計6の指示値である。)と流入流速とが一致するように、調節弁4の開度およびポンプ5の出力を制御する。
【0052】
また、前述のように、開口部31が脱脂液Lの流通方向(上向き)に対向して(下向きに)開口するように、案内管3を設置してあるので、給液路104の幅方向にわたって脱脂液L中の鉄粉の濃度が実質的に均一である。そのため、案内管3から流入する脱脂液Lは、給液路104を流入する脱脂液L全体の鉄粉の濃度を代表する試料として適切である。このように、案内管3を、給液路104を流れる脱脂液Lの流通方向が鉛直方向下向きまたは上向きの箇所に設置することが好ましい。
【0053】
なお、圧縮空気供給装置7を適宜使用して(制御弁72を適宜開放して)、開口部31に向けて圧縮空気を流すと、開口部31に付着した異物(鉄粉など)を除去でき、開口部31の詰まりを防止できるため好適である。このような動作は、人為的な判断に基づく任意のタイミングで行ってもよいし、粒子計測器21および流量計22の指示値などに基づいて必要と判断されるタイミングで行ってもよいし、所定の時間間隔ごとに定期的に行ってもよい。
【0054】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る測定装置および測定方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。なお、図面を参照して変形例を説明する場合は、上記の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。
【0055】
上記の実施形態では、開口部31が、案内管3の一端部分を構成する採取管32の側面に設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る測定装置において、開口部は、流路を流れる流体の流通方向に対向して開口する姿勢で設置可能である限りにおいて限定されない。たとえば、
図4に示す変形例では、案内管3の一端部分を構成する部材として、上記の実施形態の採取管32に替えて、開放末端33(開口部の例である。)を有する屈曲管34を用いている。この変形例では、開放末端33を、給液路104を流れる脱脂液Lの流通方向に対向して開口させることができる。
【0056】
上記の実施形態では、採取管32が、給液路104(管体104a)が鉛直方向に沿って設けられている箇所(
図1に破線IIで示した箇所)に設置されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る測定装置において、開口部が流路を流れる液体の流通方向に対向して開口する姿勢で設置できる限りにおいて、案内管の設置箇所は限定されない。たとえば、
図5に示す変形例では、上記の実施形態に係る測定装置1を、補助槽102の底部開口102aの直上(
図1に破線Vで示した箇所)に設置している。この変形例では、補助槽102の側面から採取管32を挿入して、開口部31が上向きになるようにしてある。これによって、底部開口102a(給液路104に接続されている。)に流入する脱脂液Lの下向きの流れと対向するように開口部31を配置できる。
【0057】
これまで、開口部が下向きに開口している例(
図2、
図4)および上向きに開口している例(
図5)について説明したが、本発明において、開口部が開口する向きは上向きおよび下向きに限定されず、流路を流れる液体の流通方向に対向する方向として適宜設定される。すなわち、開口部が開口する向きは、本発明に係る測定装置を設置する箇所における液体の流通方向に依存する。たとえば、液体の流通方向が水平方向である場合は、開口部が開口する向きは、当該水平方向に対向する水平方向に設定される。
【0058】
上記の実施形態では、濃度測定ユニット2の二次側配管24が給液路104に接続されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る測定装置において、濃度測定ユニットの二次側配管の接続先は限定されない。また、濃度測定ユニットの二次側配管を液体の循環系に接続する場合、その位置は限定されない。たとえば、
図2の実施形態では開口部31より下流側に二次側配管24が接続されており、
図5の変形例では開口部31より上流側に二次側配管24が接続されている。
【0059】
上記の実施形態では、開口部31を給液路104の中央部分に配置できる構成を例として説明した。しかし、本発明において、開口部と流路との相対位置は限定されない。たとえば、ある程度の測定誤差が許容されるプロセスにおいては、開口部を給液路の壁面付近境界層が形成される部分に設けてもよい。
【0060】
上記の実施形態では、圧縮空気供給装置7が設けられており、開口部31に圧縮空気を供給して開口部31を洗浄できる構成を例として説明した。しかし、本発明において、洗浄媒体供給装置の有無は任意である。また、洗浄媒体供給装置を設ける場合、洗浄媒体は圧縮空気に限定されず、たとえば流路を流れる液体と同じ種類の液体、水などであってもよい。なお、洗浄媒体供給装置の構成は、使用される洗浄媒体に応じて適宜選択されうる。
【0061】
上記の実施形態では、濃度測定ユニット2が粒子計測器21、流量計22、および演算装置23を有する構成を例として説明した。しかし、本発明に係る測定装置において、濃度測定ユニットの仕様は、試料中の固形物の濃度を測定可能である限りにおいて特に限定されない。たとえば、上記の実施形態のように式(1)を用いて試料中の固形物の濃度C(個/mL単位)を特定する装置に替えて、試料中の固形物の濃度Cを指示値として出力可能な装置が使用されてもよい。
【0062】
上記の実施形態では、流入流速制御機能として、流入流速と管内流速とが等しくなるように、調節弁4の開度またはポンプ5の出力を制御する機能を実行可能である構成を例として説明した。しかし、本発明に係る測定装置は、流入流速制御機能を実行できなくてもよい。この場合、流入流速は、管内流速に依存して成り行きで決まる流速になり、より具体的には、流入流速が管内流速より低くなる傾向がある。このとき、固形物の濃度の測定値は、実際に流路を流通している液体における固形物の濃度より高くなる傾向にある。このことから、固形物の濃度をより正確に測定しうる点で、流入流速制御機能を実行できることが好ましくはあるが、要求される測定精度によっては、当該機能を省略してもよい。また、流入流速制御機能を実行可能な構成において、制御対象となる構成要素は、流入流速の制御が可能である限りにおいて限定されない。たとえば、上記の構成に替えて、ポンプ5を省略した構成とし、制御対象の候補を調節弁の開度のみとしてもよい。
【0063】
上記の実施形態では、管内流速を測定する流速計6が設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る測定装置は、流速計を備えていなくてもよい。たとえば、上記のように、流入流速制御機能を省略する場合は、管内流速を測定する必要がないので、流速計を省略しうる。また、流入流速制御機能を実行可能とする場合であっても、流速計を設けるかわりに、他のパラメータに係る実測値に基づいて管内流速を特定してもよい。管内流速に換算可能なパラメータとしては、流路を流れる液体の流量や、開口部近傍における動圧などが例示される。この場合、換算対象とするパラメータを測定可能な測定器が設置される。
【0064】
なお、開口部近傍における動圧が測定される場合、流入流速制御機能の実施形態として、動圧が閾値以下になるように付勢装置が制御されうる。したがって、この態様の本発明は、開口部における動圧を測定可能な圧力計と、制御装置と、案内管を流通する試料を付勢可能な付勢装置と、をさらに備え、制御装置が、圧力計の指示値に基づいて付勢装置の出力を制御する流入流速制御機能を実行可能でありうる。
【0065】
本発明は、本発明に係る測定装置および測定方法によって特定される液体中の固形物の濃度を判断材料として、さらなる動作を実行する装置や設備などと組み合わせて使用されることを妨げない。たとえば、上記の実施形態において、固形物除去装置を有する副流路を給液路104と別に設けておき、測定された固形物の濃度が所定の閾値を超えた場合に、脱脂液Lが給液路104に替えて副流路を流通するように構成してもよい。この場合の固形物除去装置としては、フィルタ式やサイクロン式などの公知の装置を使用できる。なお、副流路の下流側出口は、たとえば補助槽102に設けられうる。
【0066】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、たとえば、塗装設備の諸工程において使用される流体について、固形物の濃度を測定する際に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 :測定装置
2 :濃度測定ユニット
21 :粒子計測器
22 :流量計
23 :演算装置
3 :案内管
31 :開口部
32 :採取管
33 :開放末端(変形例)
34 :屈曲管(変形例)
4 :調節弁
5 :ポンプ
6 :流速計
7 :洗浄媒体供給装置
71 :エアーコンプレッサ
72 :制御弁
8 :制御装置
9 :従来技術の測定装置
91 :従来技術の測定装置の開口部
100 :脱脂槽
101 :主槽
102 :補助槽
102a :補助槽の底部開口
103 :ノズル装置
104 :給液路
104a :管体
105 :ポンプ
L :脱脂液
【要約】
所定の流路(104)を流れる液体(L)中の固形物の濃度を測定可能な測定装置(1)であって、固形物の濃度を測定可能な濃度測定ユニット(2)と、流路(104)に開口する開口部(31)を有し、当該開口部(31)から流入した液体を試料として濃度測定ユニット(2)に案内可能な案内管(3)と、を備え、開口部(31)が、流路(104)を流れる液体の流通方向に対向して開口する姿勢で設置可能に構成されている。