(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】跨座式シート
(51)【国際特許分類】
B62J 1/12 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
B62J1/12 A
(21)【出願番号】P 2018218507
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】内海 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 嘉奈子
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-207848(JP,A)
【文献】実公昭49-025956(JP,Y1)
【文献】実開昭58-070974(JP,U)
【文献】特開昭61-009352(JP,A)
【文献】特開2014-008807(JP,A)
【文献】特開2014-125135(JP,A)
【文献】米国特許第06012755(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/12
B60N 2/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、
シートフレームと、
該シートフレームに着脱可能に取り付けられる着座部と、を備え、
該着座部は、
前記シートフレームに対して着脱可能に取り付けられるシートボトムプレートと、
該シートボトムプレートの裏面に設けられた脚部と、を有し、
該脚部は、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が折り畳まれた折り畳み状態と、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が展開した展開状態と、の間で変形可能であり、
前記シートボトムプレートは、前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに前記シートフレームに取り付けられ
、
前記シートボトムプレートの前記裏面には、前記着座部を前記シートフレームに取り付けた際に前記シートフレームと当接する複数のマウント部材が設けられており、
前記脚部は、前記跨座式シートの幅方向及び前後方向において、複数の前記マウント部材の内側に配置されていることを特徴とする跨座式シート。
【請求項2】
着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、
シートフレームと、
該シートフレームに着脱可能に取り付けられる着座部と、を備え、
該着座部は、
前記シートフレームに対して着脱可能に取り付けられるシートボトムプレートと、
該シートボトムプレートの裏面に設けられた脚部と、を有し、
該脚部は、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が折り畳まれた折り畳み状態と、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が展開した展開状態と、の間で変形可能であり、
前記シートボトムプレートは、前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに前記シートフレームに取り付けられ、
前記着座部は、前記着座部に対して着脱可能なバックフレームを備え、
該バックフレームは、
U字形状の本体部と、
該本体部から曲折して設けられた折り曲げ端部と、を備え、
前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに、前記跨座式シートの上下方向において前記脚部に重なるように前記シートボトムプレートの前記裏面に取り付けられることを特徴とする跨座式シート。
【請求項3】
着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、
シートフレームと、
該シートフレームに着脱可能に取り付けられる着座部と、を備え、
該着座部は、
前記シートフレームに対して着脱可能に取り付けられるシートボトムプレートと、
該シートボトムプレートの裏面に設けられた脚部と、を有し、
該脚部は、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が折り畳まれた折り畳み状態と、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が展開した展開状態と、の間で変形可能であり、
前記シートボトムプレートは、前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに前記シートフレームに取り付けられ、
前記シートボトムプレートの前記裏面に、前記着座部を前記シートフレームに取り付けるためのストライカーが設けられており、
該ストライカーは、前記跨座式シートの前後方向において前記脚部の後方に配置されていることを特徴とする跨座式シート。
【請求項4】
前記脚部は、環状に形成された第1フレーム及び第2フレームを備え、
前記跨座式シートの幅方向において、前記第1フレームは前記第2フレームの外側に配置されており、
前記脚部が前記展開状態にあるときに前記第1フレーム及び前記第2フレームは前記着座部の側面視においてX状に交差することを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の跨座式シート。
【請求項5】
前記第1フレーム及び前記第2フレームは、前記シートボトムプレートの裏面に取り付けられたスライダー部材によって支持されており、
前記スライダー部材は、
前記第1フレームを回動可能に受容する受容部と、
前記第2フレームを回動可能かつスライド可能に受容する溝部と、を備え、
前記第1フレームを回動させつつ、前記第2フレームを回動及びスライドさせることで前記脚部が展開することを特徴とする請求項
4に記載の跨座式シート。
【請求項6】
前記第1フレームには第1切り欠き部が形成されており、
前記第2フレームには第2切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項
5に記載の跨座式シート。
【請求項7】
前記脚部を前記展開状態と前記折り畳み状態との間で変形させる際に、前記第2フレームは、前記第2切り欠き部を前記スライダー部材の前記溝部に沿ってスライドすることを特徴とする請求項
6に記載の跨座式シート。
【請求項8】
前記溝部は、前記シートボトムプレートの前後方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項
5乃至
7のいずれか一項に記載の跨座式シート。
【請求項9】
前記シートボトムプレートは、前記シートボトムプレートの前記裏面から延出する一対のステー部材を備え、
該一対のステー部材は、前記跨座式シートの幅方向において対向する一対の凹部を有し、
前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに、前記一対の凹部に前記バックフレームの前記本体部が受容され、
前記脚部が前記展開状態にあるときに、前記一対の凹部に前記バックフレームの前記折り曲げ端部が受容されることを特徴とする請求項
2に記載の跨座式シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跨座式シートに係り、特に着座部を取り外し可能な跨座式シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車では、自動二輪車用シートが備える着座部の下側に物品収納部やバッテリ、ETC車載器などが設置されており、着座部がシートフレームに対して着脱自在に取り付けられている。例えば、特許文献1には、運転者用のフロントシートの後方に同乗者用のリアシートが設けられており、フロントシート及びリアシートがシートフレームに対して着脱可能な自動二輪車が記載されている。
【0003】
また、アウトドアレジャーでは、折り畳み可能なパイプフレーム製の椅子が利用されている。例えば、特許文献2には、アウトドアレジャー用のアルミ製折り畳み椅子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-262845号公報
【文献】特開2005-279123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動二輪車用シートでは、着座部としてのフロントシート及びリアシートが、シートフレームに着脱可能に構成されているが、取り外したフロントシート及びリアシートを椅子として用いることは想定されていない。
【0006】
また、一般に、自動二輪車は、荷物を収容する空間が限られており、大型の荷物を収容することは困難である。したがって、特許文献2に記載のアウトドアレジャー用のアルミ製折り畳み椅子を自動二輪車に積み込むことは困難であった。
【0007】
近年、アウトドアレジャー志向の高まりから、自動二輪車でアウトドアレジャーに出かけた場合であっても、荷物を増やすことなく、容易に利用することが可能な折り畳み椅子が求められていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートフレームから取り外すことで、椅子としても利用することが可能な着座部を備えた跨座式シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の跨座式シートによれば、着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、シートフレームと、該シートフレームに着脱可能に取り付けられる着座部と、を備え、該着座部は、前記シートフレームに対して着脱可能に取り付けられるシートボトムプレートと、該シートボトムプレートの裏面に設けられた脚部と、を有し、該脚部は、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が折り畳まれた折り畳み状態と、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が展開した展開状態と、の間で変形可能であり、前記シートボトムプレートは、前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに前記シートフレームに取り付けられ、前記シートボトムプレートの前記裏面には、前記着座部を前記シートフレームに取り付けた際に前記シートフレームと当接する複数のマウント部材が設けられており、前記脚部は、前記跨座式シートの幅方向及び前後方向において、複数の前記マウント部材の内側に配置されていることにより解決される。
【0010】
上記のように構成された本発明の跨座式シートでは、着座部をシートフレームから取り外して、折り畳み可能な脚部を展開することで、着座部を椅子として利用することが可能となる。また、脚部を折り畳んだ状態で着座部をシートフレームに取り付けることで、シートフレームにおける限られた空間において、脚部を収容することが可能となる。
また、上記の構成では、シートボトムプレートの裏面において、折り畳み状態にある脚部がシートボトムプレートを支持することになるため、シートボトムプレートが撓むことが抑制され、乗員の乗り心地が向上する。
前記課題は、本発明の跨座式シートによれば、着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、シートフレームと、該シートフレームに着脱可能に取り付けられる着座部と、を備え、該着座部は、前記シートフレームに対して着脱可能に取り付けられるシートボトムプレートと、該シートボトムプレートの裏面に設けられた脚部と、を有し、該脚部は、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が折り畳まれた折り畳み状態と、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が展開した展開状態と、の間で変形可能であり、前記シートボトムプレートは、前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに前記シートフレームに取り付けられ、前記着座部は、前記着座部に対して着脱可能なバックフレームを備え、該バックフレームは、U字形状の本体部と、該本体部から曲折して設けられた折り曲げ端部と、を備え、前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに、前記跨座式シートの上下方向において前記脚部に重なるように前記シートボトムプレートの前記裏面に取り付けられることにより解決される。
上記のように構成された本発明の跨座式シートでは、脚部が折り畳み状態でシートフレームに取り付けられた際に、バックフレームがシートボトムプレートを裏面において支持することで、シートボトムプレートが撓むことが抑制され、乗員の乗り心地が向上する。
前記課題は、本発明の跨座式シートによれば、着座者が跨った状態で着座する跨座式シートであって、シートフレームと、該シートフレームに着脱可能に取り付けられる着座部と、を備え、該着座部は、前記シートフレームに対して着脱可能に取り付けられるシートボトムプレートと、該シートボトムプレートの裏面に設けられた脚部と、を有し、該脚部は、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が折り畳まれた折り畳み状態と、前記シートボトムプレートに対して前記脚部が展開した展開状態と、の間で変形可能であり、前記シートボトムプレートは、前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに前記シートフレームに取り付けられ、前記シートボトムプレートの前記裏面に、前記着座部を前記シートフレームに取り付けるためのストライカーが設けられており、該ストライカーは、前記跨座式シートの前後方向において前記脚部の後方に配置されていることにより解決される。
上記のように構成された本発明の跨座式シートでは、シートボトムプレートの裏面における後方にストライカーが設けられているため、着座部をシートフレームに取り付けたり、取り外したりする作業が容易なものとなる。
【0011】
また、上記の構成において、前記脚部は、環状に形成された第1フレーム及び第2フレームを備え、前記跨座式シートの幅方向において、前記第1フレームは前記第2フレームの外側に配置されており、前記脚部が前記展開状態にあるときに前記第1フレーム及び前記第2フレームは前記着座部の側面視においてX状に交差するとよい。
上記の構成では、脚部が展開状態にあるときに側面視においてX状に交差する環状の第1フレーム及び第2フレームで構成されているため、簡素な構造で剛性を確保することが可能となる。また、第1フレームが第2フレームの外側に配置されているため、脚部をコンパクトに折り畳むことが可能となる。
【0012】
また、上記の構成において、前記第1フレーム及び前記第2フレームは、前記シートボトムプレートの裏面に取り付けられたスライダー部材によって支持されており、前記スライダー部材は、前記第1フレームを回動可能に受容する受容部と、前記第2フレームを回動可能かつスライド可能に受容する溝部と、を備え、前記第1フレームを回動させつつ、前記第2フレームを回動及びスライドさせることで前記脚部が展開するとよい。
上記の構成では、第1フレーム及び第2フレームを回動やスライドさせるという簡単な操作によって、脚部を展開状態と折り畳み状態との間で変形させることが可能となる。
【0013】
また、上記の構成において、前記第1フレームには第1切り欠き部が形成されており、前記第2フレームには第2切り欠き部が形成されているとよい。
上記の構成では、第1フレーム及び第2フレームに切り欠き部が形成されているため、スライダー部材に対して、第1フレーム及び第2フレームを取り付ける際の作業性が向上する。
【0014】
また、上記の構成において、前記脚部を前記展開状態と前記折り畳み状態との間で変形させる際に、前記第2フレームは、前記第2切り欠き部を前記スライダー部材の前記溝部に沿ってスライドするとよい。
上記の構成では、第2フレームを、スライダー部材の溝部に係合した第2切り欠き部をスライドさせるという簡単な操作で脚部を展開状態と折り畳み状態との間で変形させることが可能となる。
【0015】
また、上記の構成において、前記溝部は、前記シートボトムプレートの前後方向に沿って設けられているとよい。
上記の構成では、スライダー部材の溝部がシートボトムプレートの前後方向に沿って設けられているため、シートボトムプレートの裏面の限られた空間を有効に利用することが可能となる。
【0018】
また、上記の構成において、前記シートボトムプレートは、前記シートボトムプレートの前記裏面から延出する一対のステー部材を備え、該一対のステー部材は、前記跨座式シートの幅方向において対向する一対の凹部を有し、前記脚部が前記折り畳み状態にあるときに、前記一対の凹部に前記バックフレームの前記本体部が受容され、前記脚部が前記展開状態にあるときに、前記一対の凹部に前記バックフレームの前記折り曲げ端部が受容されるとよい。
上記の構成では、脚部が折り畳み状態にあるときにバックフレームをシートボトムフレームの裏面に収納するとともに、脚部が展開状態にある時にバックフレームを背凭れとして利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の跨座式シートによれば、着座部をシートフレームから取り外して、折り畳み可能な脚部を展開することで、着座部を椅子として利用することが可能となる。また、脚部を折り畳んだ状態で着座部をシートフレームに取り付けることで、シートフレームにおける限られた空間において、脚部を収容することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、脚部が展開状態にあるときに側面視においてX状に交差する環状の第1フレーム及び第2フレームで構成されているため、簡素な構造で剛性を確保することが可能となる。また、第1フレームが第2フレームの外側に配置されているため、脚部をコンパクトに折り畳むことが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、第1フレーム及び第2フレームを回動やスライドさせるという簡単な操作によって、脚部を展開状態と折り畳み状態との間で変形させることが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、第1フレーム及び第2フレームに切り欠き部が形成されているため、スライダー部材に対して、第1フレーム及び第2フレームを取り付ける際の作業性が向上する。
また、本発明の跨座式シートによれば、第2フレームを、スライダー部材の溝部に係合した第2切り欠き部をスライドさせるという簡単な操作で脚部を展開状態と折り畳み状態との間で変形させることが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、スライダー部材の溝部がシートボトムプレートの前後方向に沿って設けられているため、シートボトムプレートの裏面の限られた空間を有効に利用することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、シートボトムプレートの裏面において、折り畳み状態にある脚部がシートボトムプレートを支持することになるため、シートボトムプレートが撓むことが抑制され、乗員の乗り心地が向上する。
また、本発明の跨座式シートによれば、脚部が折り畳み状態でシートフレームに取り付けられた際に、バックフレームがシートボトムプレートを裏面において支持することで、シートボトムプレートが撓むことが抑制され、乗員の乗り心地が向上する。
また、本発明の跨座式シートによれば、脚部が折り畳み状態にあるときにバックフレームをシートボトムフレームの裏面に収納するとともに、脚部が展開状態にある時にバックフレームを背凭れとして利用することが可能となる。
また、本発明の跨座式シートによれば、シートボトムプレートの裏面における前方にストライカーが設けられているため、着座部をシートフレームに取り付けたり、取り外したりする作業が容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの外観図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの裏面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートが備えるリアシートの裏面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートのリアシートが備えるスライダーの外観図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートのリアシートが備えるスライダーを裏側から見た外観図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートのリアシートが備える脚部が折り畳み状態から展開状態に移行する際の模式的説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートのリアシートが備えるバックフレームの外観図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートが備えるリアシートの裏面図であって、脚部が展開状態にあるときの外観図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートが備えるリアシートを椅子として用いる際の状態を示す外観図である。
【
図10】変形例に係る自動二輪車用シートが備えるリアシートを椅子として用いる際の状態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る跨座式シートとしての自動二輪車用シート1の構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0023】
自動二輪車用シート1は、乗員(着座者、運転者)が跨った状態で着座する鞍上型のシートである。自動二輪車用シート1は、自動二輪車に対して着脱可能に設けられるものであり、以下では自動二輪車から取り外した状態の自動二輪車用シート1について説明する。
【0024】
本明細書における方向を示す用語に関し、
図1のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの前後方向を意味する。「シート幅方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの上下方向と一致する。
【0025】
なお、本実施形態の自動二輪車用シート1では、着座部としてのリアシートRRがシートフレーム2に対して着脱可能に構成されているが、リアシートRRがシートフレーム2に取り付けられた状態で各方向を統一的に定義している。
【0026】
<自動二輪車用シート1の主要構成>
本実施形態に係る自動二輪車用シート1は、
図1及び
図2に示すように、シートの骨組み部分となるシートフレーム2に対して、運転者が跨った状態で着座するフロントシートFRと、同乗者が跨った状態で着座するリアシートRRとが、それぞれ着脱可能に取り付けられて構成されている。リアシートRRは、後述するシートボトムプレート10の上に、不図示のクッション部材を配置した状態で、表皮材により被覆して構成されている。ここで、
図1に示すように、リアシートRRは、シートフレーム2に取り付けられた状態において、シート前後方向の後方に向かうにつれて幅狭となっている。
【0027】
(リアシートRR)
図2及び
図3に示すように、着座部としてのリアシートRRは、シートフレーム2に対して着脱可能に取り付けられるシートボトムプレート10と、シートボトムプレート10の裏面11に設けられた脚部30と、を有している。脚部30は、シートボトムプレート10に対して折り畳まれた折り畳み状態(
図3)と、シートボトムプレート10に対して展開した展開状態(後述する
図8)と、の間で変形可能である。
【0028】
本実施形態のリアシートRRは、シートフレーム2から取り外して、折り畳み状態にある脚部30を、展開状態とすることで、折り畳み可能な椅子として利用することが可能である。脚部30は、展開状態とした場合に、折り畳み可能な椅子の支持脚として機能する支持部材である。
【0029】
図2に示すように、脚部30が折り畳み状態にあるときに、リアシートRRがシートフレーム2に対して取り付けられている。このように、脚部30を折り畳んだ状態でリアシートRRをシートフレーム2に取り付けることで、シートフレーム2における限られた空間において、脚部30を収容することが可能となっている。
【0030】
(シートボトムプレート10)
図3に、表皮材及びクッション部材を取り外した状態のリアシートRRの裏面図を示す。リアシートRRの底板としてのシートボトムプレート10は、シート前後方向の後方に向かうにつれて幅狭となる外形形状を有している。シートボトムプレート10には、その裏面11にリアシートRRをシートフレーム2に取り付けるためのストライカー12が設けられている。ストライカー12は、車体側に設けられた不図示のストライカー係合部と係合する公知の構造を採用することが可能である。
【0031】
図3に示すように、ストライカー12は、シート前後方向において脚部30の後方に配置されている。シートボトムプレート10の裏面11において、脚部30に対してシート前後方向の後方にストライカー12が設けられているため、リアシートRRをシートフレーム2に取り付けたり、取り外したりする作業が容易なものとなる。
【0032】
図3に示すように、シートボトムプレート10は、その裏面11から延出する一対のステー部材13を備えている。一対のステー部材13は、シート幅方向において対向する一対の凹部13aを有している。一対のステー部材13は、ボルト等の締結部材によってシートボトムプレート10の裏面11に固定されている。脚部30が折り畳み状態にあるときに、一対の凹部13aには、
図7に示すバックフレーム40の本体部41が受容される。
【0033】
また、シートボトムプレート10の裏面11には、リアシートRRをシートフレーム2に取り付けた際にシートフレーム2と当接する複数のマウント部材14が設けられている。脚部30は、シート幅方向及びシート前後方向において、複数のマウント部材14の内側に配置されている(換言すると、複数のマウント部材14が脚部の周囲を取り囲むように配置されている)。このような構成によれば、リアシートRRのマウント部材14がシートフレーム2と当接した状態で、折り畳み状態にある脚部30が、シートボトムプレート10を下方から支持することになるため、シートボトムプレート10が撓むことが抑制され、乗員(同乗者)の乗り心地が向上する。
【0034】
(スライダー部材20)
図3に示すように、シートボトムプレート10の裏面11には、ベース部材15を介して、スライダー部材20が取り付けられている。スライダー部材20は、脚部30を構成する第1フレーム31及び第2フレーム35をシートボトムプレート10の裏面11に支持している。ベース部材15及びスライダー部材20は、ボルト等の締結部材によってシートボトムプレート10の裏面11に固定されている。
【0035】
図4及び
図5に示すように、スライダー部材20は、その下面21の後方に、後述するバックフレーム40を係止するための係止部21aを備えている。また、スライダー部材20は、その側面22に(つまり、シート幅方向の面に)、第1フレーム31を回動可能に受容する一対の受容部22aと、第2フレーム35を回動可能かつスライド可能に受容する一対の溝部22bと、を備えている。スライダー部材20の側面22において、一対の受容部22aは、一対の溝部22bよりもシート前後方向における後方に設けられている。
【0036】
図3乃至
図5に示すように、スライダー部材20の溝部22bは、リアシートRRの側面視において、シート前後方向に延在する直線形状のスロットである。スライダー部材20の溝部22bがシートボトムプレート10の前後方向に沿って設けられているため、シートボトムプレート10の裏面11の限られた空間を有効に利用される。
【0037】
また、
図4及び
図5に示すように、スライダー部材20の側面22に形成された一対の溝部22bは、シート幅方向において対向して配置されている。また、
図3に示すように、スライダー部材20の下面21は、折り畳み状態の脚部30の下面と水平面を形成するようになっている。
【0038】
本実施形態では、ステー部材13やスライダー部材20がシートボトムプレート10とは別体に形成されており、着脱可能になっている。したがって、脚部30を共通のユニットとして、異なる車種に応じてステー部材13やスライダー部材20を用意することで、折り畳み可能な脚部30を多車種に流用することが可能である。
【0039】
(脚部30)
図3及び
図6に示すように、脚部30は、環状に形成された第1フレーム31及び第2フレーム35を備え、シート幅方向において、第1フレーム31は第2フレーム35の外側に配置されている。
【0040】
外側に配置された第1フレーム31は、パイプ部材を略矩形形状に折り曲げて形成されている。第1フレーム31は、
図3及び
図6の上図に示す折り畳み状態にあるときに、シート前後方向後方における後方に配置される後端部32と、前方に配置される前端部33とを有し、シート前後方向に延在する一対の側部34が後端部32及び前端部33を連結して形成されている。
図6の上図に示すように、第1フレーム31の後端部32には、第1切り欠き部32aが形成されている。
【0041】
内側に配置された第2フレーム35は、パイプ部材を略矩形形状に折り曲げて形成されている。第2フレーム35は、
図3及び
図6の上図に示す折り畳み状態にあるときに、シート前後方向後方における後方に配置される後端部36と、前方に配置される前端部37とを有し、シート前後方向に延在する一対の側部38が後端部36及び前端部37を連結して形成されている。
図6の上図に示すように、第2フレーム35の後端部36には、第2切り欠き部36aが形成されている。
【0042】
図6に示すように、第1フレーム31及び第2フレーム35は、第1フレーム31の側部34と第2フレーム35の側部38の中央部に形成された孔に回動軸39が挿通されて互いに回動可能に組み合わされている。
【0043】
図3及び後述する
図8に示すように、第1フレーム31の第1切り欠き部32aは、スライダー部材20の側面22に設けられた受容部22aに回動可能に受容されている。また、第2フレーム35の第2切り欠き部36aは、スライダー部材20の側面22に設けられた溝部22bに回動可能かつスライド可能に受容されている。第1フレーム31及び第2フレーム35に切り欠き部32a,36aが形成されているため、スライダー部材20に対して、第1フレーム31及び第2フレーム35を取り付ける際の作業性が向上する。
【0044】
リアシートRRを椅子として用いる場合、リアシートRRをシートフレーム2から取り外し、
図6の上図に示す折り畳み状態にある脚部30を、第1フレーム31を回動させつつ、第2フレーム35を回動及びスライドさせて展開することで、
図6の下図に示す展開状態に変形させる。
【0045】
脚部30を展開状態(
図6の下図及び
図8)と折り畳み状態(
図6の上図及び
図3)との間で変形させる際に、第1フレーム31は、第1切り欠き部32aがスライダー部材20の受容部22aを中心に回動し、第2フレーム35は、全体が回動しつつ第2切り欠き部36aがスライダー部材20の溝部22bに沿って前方にスライドする。このように、第1フレーム31及び第2フレーム35を回動やスライドさせるという簡単な操作によって、脚部30を展開状態と折り畳み状態との間で変形させることが可能である。特に、第2フレーム35を、スライダー部材20の溝部22bに係合した第2切り欠き部36aをスライドさせるという簡単な操作で脚部30を展開状態と折り畳み状態との間で変形させることが可能である。
【0046】
図8に示すように、脚部30が展開状態にあるときに第1フレーム31及び第2フレーム35はリアシートRRの側面視においてX状に交差する。展開状態において、第2フレーム35の後端部36が、スライダー部材20の溝部22bの前端部に当接している。
【0047】
以上のように、脚部30が展開状態にあるときに側面視においてX状に交差する環状の第1フレーム31及び第2フレーム35で構成されているため、簡素な構造で剛性が確保される。また、第1フレーム31が第2フレーム35の外側に配置されているため、脚部30をコンパクトに折り畳むことが可能である。
【0048】
(バックフレーム40)
図3に示すように、リアシートRRは、シートボトムプレート10の裏面11に設けられた一対のステー部材13に対して着脱可能なバックフレーム40を備えている。
図3及び
図7に示すように、バックフレーム40は、U字形状の本体部41と、本体部41から曲折して設けられた折り曲げ端部42と、を備えている。
【0049】
図3に示すように、バックフレーム40は、脚部30が折り畳み状態にあるときに、シート上下方向において脚部30に重なるようにシートボトムプレート10の裏面11に取り付けられている。より詳細には、バックフレーム40は、脚部30が折り畳み状態にあるときに、一対のステー部材13の凹部13aに本体部41の側部が受容されている。さらに、バックフレーム40の本体部41の後端部がスライダー部材20の係止部21aに係止されている。
図2及び
図3に示すように、脚部30が折り畳み状態でシートフレームに取り付けられた際に、バックフレーム40がシートボトムプレート10を、その裏面11において支持することで、シートボトムプレート10が撓むことが抑制され、乗員の乗り心地が向上する。
【0050】
図8に示すように、バックフレーム40は、脚部30が展開状態にあるときに、一対のステー部材13の凹部13aに折り曲げ端部42が受容されている。このとき、バックフレーム40のU字形状の本体部41が上方に位置することとなる。
【0051】
(リアシートRRの椅子としての使用)
図9に、リアシートRRをシートフレーム2から取り外して、脚部30を展開状態とし、椅子として使用する際の外観図を示す。なお、
図9では、リアシートRRの上面に載置されるクッション部材やクッション部材を覆う表皮材は省略して示されている。
図9に示すように、展開状態の脚部30を地面側に向けて配置することで、シートボトムプレート10の上面が上方に向けて配置される。このとき、シートボトムプレート10の上面が略水平となるように脚部30が構成されている。
【0052】
ここで、
図9に示すように、リアシートRRは、シートフレーム2に取り付けられた状態において、シート前後方向の後方に向かうにつれて幅狭となっている。したがって、リアシートRRを椅子として使用する際に、前方となる側が幅狭となり、後方となる側が幅広となるため、着座者が安定した状態で座ることが可能となっている。
【0053】
以上のように、本実施形態の自動二輪車用シート1では、着座部としてのリアシートRRをシートフレーム2から取り外して、折り畳み可能な脚部30を展開することで、リアシートRRを椅子として利用することが可能となる。したがって、自動二輪車でアウトドアレジャーに出かけた場合であっても、追加の荷物を必要とせず、容易に折り畳み椅子を利用することが可能となる。このとき、椅子の後方(シート前後方向における前方)にバックフレーム40のU字形状の本体部41が位置することとなるため、バックフレーム40を椅子の背凭れとして利用することが可能となる。
【0054】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
図10を参照して、変形例に係る自動二輪車用シートが備えるリアシートRRを椅子として用いる際の状態を説明する。
図10に示すように、変形例に係るリアシートRRでは脚部30の第1フレーム31の前端部及び第2フレーム35の前端部37にそれぞれ、滑り止め33a,37aが設けられている。滑り止め33a,37aは、地面に対して摩擦力を生じるようなテープやゴム等で形成されている。
【0055】
また、上記の実施形態では、ベース部材15やスライダー部材20が、シートボトムプレート10とは別体に形成され、ボルト等の締結部材によってシートボトムプレート10の裏面11に固定されていたが、ベース部材15やスライダー部材20をシートボトムプレート10と一体に成形することも可能である。
【0056】
また、上記の実施形態では、ステー部材13が、シートボトムプレート10とは別体に形成され、ボルト等の締結部材によってシートボトムプレート10の裏面11に固定されていたが、ステー部材13をシートボトムプレート10と一体に成形することも可能である。
【0057】
さらに、上記の実施形態では、シートフレーム2に着脱可能に取り付けられる着座部がリアシートRRである例を示したが、着座部としてのフロントシートFRの裏面に折り畳み可能な脚部を設けることも可能である。このとき、リアシートRR及びフロントシートFRの両方を取り外して椅子として用いることも可能である。
【0058】
以上、本実施形態に係る跨座式シートを、主として二輪車に用いられる車両用シートを例に説明した。本実施形態に係る跨座式シートは、二輪車用の車両用シートに限定されるものではなく、例えば、スノーモービル、水上バイク、三輪バギー車又は建機シートに適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 自動二輪車用シート(跨座式シート)
2 シートフレーム
FR フロントシート
RR リアシート(着座部)
10 シートボトムプレート
11 裏面
12 ストライカー
13 ステー部材
13a 凹部
14 マウント部材
15 ベース部材
20 スライダー部材
21 下面
21a 係止部
22 側面
22a 受容部
22b 溝部
30 脚部
31 第1フレーム
32 後端部
32a 第1切り欠き部
33 前端部
33a 滑り止め
34 側部
35 第2フレーム
36 後端部
36a 第2切り欠き部
37 前端部
37a 滑り止め
38 側部
39 回動軸
40 バックフレーム
41 本体部
42 折り曲げ端部