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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
F24F5/00 102C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018242018
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020106154
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 麻実
(72)【発明者】
【氏名】山形 和人
(72)【発明者】
【氏名】野内 義照
(72)【発明者】
【氏名】松岡 弘宗
(72)【発明者】
【氏名】奥村 恭伸
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-190540(JP,A)
【文献】特開2011-004739(JP,A)
【文献】特開昭58-175735(JP,A)
【文献】特開2007-170792(JP,A)
【文献】特開2003-322367(JP,A)
【文献】特開2001-208381(JP,A)
【文献】特開2014-085021(JP,A)
【文献】特開2002-277006(JP,A)
【文献】特開昭58-002540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温調用媒体の冷却および加熱の少なくとも一方を行う熱源(20)と、
上記熱源(20)により冷却または加熱された温調用媒体が流れる伝熱管(46)と、
蓄熱媒体を貯留すると共に上記伝熱管(46)が内部に配置される少なくとも1つの槽(32)とを備え、
上記伝熱管(46)は、該伝熱管(46)を流れる温調用媒体と上記槽(32)内の蓄熱媒体とを熱交換させるように構成され、
上記槽(32)の少なくとも一部は、温調対象空間に露出する伝熱部(35,37,39~41,44,45)が形成されており、
上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)が、少なくとも上記温調対象空間の空気と、上記槽(32)内で冷熱または温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる温調動作を行うように構成され
上記伝熱管(46)は、上記温調対象空間の空気と上記冷熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させることで上記蓄熱媒体の少なくとも一部を凍結させるように構成され、
上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)の少なくとも一部は、透明または半透明の材料から構成されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項において、
上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)は、
透明または半透明の材料から構成された可視部(33)と、
上記可視部(33)よりも厚さ方向の熱抵抗が小さい伝熱促進部(34)とを有する
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
請求項において、
上記伝熱促進部(34)は、透明または半透明の材料から構成され、かつ上記可視部(33)よりも薄い
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項4】
請求項において、
上記伝熱促進部(34)は、上記可視部(33)よりも熱伝導率が高い材料から構成されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
上記伝熱管(46)は、第1管部(49)と、該第1管部(49)よりも上側に位置する第2管部(47,48)とを有し、
上記第1管部(49)の周囲で凍結される上記蓄熱媒体の白濁度よりも、上記第2管部(47,48)の周囲で凍結される上記蓄熱媒体の白濁度の方が高い
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
凍結される上記蓄熱媒体の白濁度を調節するように上記伝熱管(46)の冷却能力を制御する制御部(25)を備える
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
凍結された上記蓄熱媒体に光を照射する光源(50)を備える
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項8】
請求項において、
上記光源(50)は、上記槽(32)の下部に配置され、かつ上方に向かって光を照射する
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
上記温調動作は、上記熱源(20)を停止した状態で上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)が上記温調対象空間の空気と上記冷熱または上記温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる第1動作を含む
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項において、
上記温調動作は、上記熱源(20)により冷却または加熱された温調用媒体が上記伝熱管(46)を流れる状態で上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)が上記温調対象空間の空気と上記冷熱または上記温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる第2動作を含む
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項において、
上記温調動作と異なる所定の時間帯に実行される蓄熱動作を行うように構成され、
上記蓄熱動作では、上記熱源(20)により冷却または加熱された温調用媒体が上記伝熱管(46)を流れ、上記蓄熱媒体に冷熱または温熱が蓄えられる
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項12】
請求項において、
上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備え、
上記ファン(51)は、上記第1動作において駆動される
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項13】
請求項において、
上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備え、
上記ファン(51)は、上記第1動作において停止される
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項14】
請求項10において、
上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備え、
上記ファン(51)は、上記第2動作において駆動される
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項15】
請求項11において、
上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備え、
上記ファン(51)は、上記蓄熱動作において停止される
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項において、
上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備える
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項17】
請求項12~16のいずれか1項において、
上記温調対象空間に連通しかつ上記槽(32)の一部に面する通風路(64)を備え、
上記ファン(51)は、上記通風路(64)を経由して上記温調対象空間へ空気を搬送し、
上記槽(32)のうち上記通風路(64)に面する部分は、上記通風路(64)を流れる空気と、上記槽(32)内で冷熱または温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させるように構成されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項18】
請求項12~17のいずれか1項において、
上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)は、上記ファン(51)の吹出側に配置されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項19】
請求項12~17のいずれか1項において、
上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)は、上記ファン(51)の吸込側に配置されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、製貯氷室を備えた冷却装置が知られている(例えば、特許文献1)。この冷却装置では、製貯氷室内の氷の冷熱によって空気が冷却され、冷却された空気がダクトを介して室内に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-026673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の冷却装置では、製貯氷室が、冷却される空気が流れるダクトの途中に配置されている。このため、製貯氷室内の氷の冷熱を、ダクト内を流れる空気を介してしか利用できない。同様のことが、蓄熱媒体(例えば、氷)の冷熱の利用のみでなく、蓄熱媒体の温熱の利用にも当てはまる。
【0005】
本開示の目的は、蓄熱媒体の冷熱または温熱を温調対象空間で直接的に有効利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、空気調和装置(10)を対象とする。空気調和装置(10)は、温調用媒体の冷却および加熱の少なくとも一方を行う熱源(20)と、上記熱源(20)により冷却または加熱された温調用媒体が流れる伝熱管(46)と、蓄熱媒体を貯留すると共に上記伝熱管(46)が内部に配置される少なくとも1つの槽(32)とを備え、上記伝熱管(46)は、該伝熱管(46)を流れる温調用媒体と上記槽(32)内の蓄熱媒体とを熱交換させるように構成され、上記槽(32)の少なくとも一部は、温調対象空間に露出する伝熱部(35,37,39~41,44,45)が形成されており、上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)が、少なくとも上記温調対象空間の空気と、上記槽(32)内で冷熱または温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる温調動作を行うように構成されている。
【0007】
第1の態様では、熱源(20)により冷却または加熱された温調用媒体が伝熱管(46)の内部を流れる。伝熱管(46)は、内部を流れる温調用媒体と槽(32)内の蓄熱媒体とを熱交換させる。この熱交換により冷熱または温熱を蓄えた蓄熱媒体は、温調対象空間に露出した伝熱部(35,37,39~41,44,45)を介して、少なくとも温調対象空間の空気と熱交換する。温調対象空間の空気は、温度が上がるかまたは下がる。これにより、温調対象空間が温調される。
【0008】
ここで、槽(32)の伝熱部(35,37,39~41,44,45)は、温調対象空間に露出している。このため、槽(32)内の蓄熱媒体の冷熱または温熱を、伝熱部(35,37,39~41,44,45)を介して直接的に、温調対象空間の温調に有効利用できる。
【0009】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記温調動作は、上記熱源(20)を停止した状態で上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)が上記温調対象空間の空気と上記冷熱または上記温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる第1動作を含むことを特徴とする。
【0010】
第2の態様では、空気調和装置(10)が、温調動作の第1動作を行う。第1動作では、冷熱または温熱を蓄えた蓄熱媒体が、伝熱部(35,37,39~41,44,45)を介して、温調対象空間の空気と熱交換する。第1動作では、蓄熱媒体に冷熱または温熱は蓄えられない。
【0011】
本開示の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、上記温調動作は、上記熱源(20)により冷却または加熱された温調用媒体が上記伝熱管(46)を流れる状態で上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)が上記温調対象空間の空気と上記冷熱または上記温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる第2動作を含むことを特徴とする。
【0012】
第3の態様では、空気調和装置(10)が、温調動作の第2動作を行う。第2動作では、冷熱または温熱を蓄えた蓄熱媒体が、伝熱部(35,37,39~41,44,45)を介して、温調対象空間の空気と熱交換する。第2動作では、蓄熱媒体に冷熱または温熱が蓄えられる。
【0013】
本開示の第4の態様は、上記第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、上記温調動作と異なる所定の時間帯に実行される蓄熱動作を行うように構成され、上記蓄熱動作では、上記熱源(20)により冷却または加熱された温調用媒体が上記伝熱管(46)を流れ、上記蓄熱媒体に冷熱または温熱が蓄えられることを特徴とする。
【0014】
第4の態様では、伝熱管(46)を流れる温調用媒体により槽(32)内の蓄熱媒体が冷却または加熱される。これにより、蓄熱媒体に冷熱または温熱が蓄えられる。
【0015】
本開示の第5の態様は、上記第2の態様において、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備え、上記ファン(51)は、上記第1動作において駆動されることを特徴とする。
【0016】
第5の態様では、第1動作において、蓄熱媒体または伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気がファン(51)により温調対象空間へ搬送される。このため、温調対象空間の空気の冷却または加熱をより効率的に行うことができる。
【0017】
本開示の第6の態様は、上記第2の態様において、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備え、上記ファン(51)は、上記第1動作において停止されることを特徴とする。
【0018】
第6の態様では、第1動作において、ファン(51)が停止される。熱源(20)およびファン(51)が停止された状態で、槽(32)内の蓄熱媒体に蓄えられた冷熱または温熱により温調対象空間の空気が冷却または加熱される。このとき、熱源(20)およびファン(51)が停止されるため、空気調和装置(10)における排熱および電力消費が実質的にない。
【0019】
本開示の第7の態様は、上記第3の態様において、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備え、上記ファン(51)は、上記第2動作において駆動されることを特徴とする。
【0020】
第7の態様では、第2動作において、蓄熱媒体または伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気がファン(51)により温調対象空間へ搬送される。このため、温調対象空間の空気の冷却または加熱をより効率的に行うことができる。
【0021】
本開示の第8の態様は、上記第4の態様において、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備え、上記ファン(51)は、上記蓄熱動作において停止されることを特徴とする。
【0022】
第8の態様では、ファン(51)が停止されるので、蓄熱媒体の冷熱または温熱が実質的に利用されない。このため、蓄熱媒体に冷熱または温熱を効率的に蓄えることができる。
【0023】
本開示の第9の態様は、上記第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、上記伝熱管(46)は、上記温調対象空間の空気と上記冷熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させることで上記蓄熱媒体の少なくとも一部を凍結させるように構成され、上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)の少なくとも一部は、透明または半透明の材料から構成されていることを特徴とする。
【0024】
第9の態様では、温調対象空間にいる者が、当該温調対象空間に露出した伝熱部(35,37,39~41,44,45)の少なくとも一部を介して、凍結した蓄熱媒体を視認できる。第8の態様によると、凍結した蓄熱媒体を視認する者に、涼しい印象を与えることができる。
【0025】
本開示の第10の態様は、上記第9の態様において、上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)は、透明または半透明の材料から構成された可視部(33)と、該可視部(33)よりも厚さ方向の熱抵抗が小さい伝熱促進部(34)とを有することを特徴とする。
【0026】
第10の態様では、可視部(33)を介して凍結した蓄熱媒体を視認する者に、涼しい印象を与えることができる。伝熱促進部(34)は、少なくとも温調対象空間の空気の熱を、可視部(33)よりも効率良く、蓄熱媒体に移動させ得る。第11の態様によると、温調対象空間にいる者に、可視部(33)および伝熱促進部(34)の両方によって涼しい印象を与えることができる。
【0027】
本開示の第11の態様は、上記第10の態様において、上記伝熱促進部(34)は、透明または半透明の材料から構成され、かつ上記可視部(33)よりも薄いことを特徴とする。
【0028】
第11の態様では、温調対象空間にいる者は、可視部(33)のみでなく伝熱促進部(34)を介しても、凍結した蓄熱媒体を視認し得る。温調対象空間にいる者に、可視部(33)および伝熱促進部(34)の両方により涼しい印象を与えることができる。
【0029】
本開示の第12の態様は、上記第10の態様において、上記伝熱促進部(34)は、上記可視部(33)よりも熱伝導率が高い材料から構成されていることを特徴とする。
【0030】
第12の態様では、熱伝導率が高い材料で構成された伝熱促進部(34)を介して、少なくとも温調対象空間の空気の熱が蓄熱媒体へ効率的に移動する。温調対象空間にいる者に対して、涼しい印象をより一層与えることができる。
【0031】
本開示の第13の態様は、上記第9~第12の態様のいずれか1つにおいて、上記伝熱管(46)は、第1管部(49)と、該第1管部(49)よりも上側に位置する第2管部(47,48)とを有し、上記第1管部(49)の周囲で凍結される上記蓄熱媒体の白濁度よりも、上記第2管部(47,48)の周囲で凍結される上記蓄熱媒体の白濁度の方が高いことを特徴とする。
【0032】
第13の態様では、相対的に白濁度が高い状態で凍結した第2管部(47,48)の周囲の蓄熱媒体の方が、相対的に白濁度が低い状態で凍結した第1管部(49)の周囲の蓄熱媒体よりも、凍結状態にあることを目視で確認しやすい。このため、第2管部(47,48)の周囲で凍結した蓄熱媒体を視認する者に対して、涼しい印象をより一層与えることができる。
【0033】
本開示の第14の態様は、上記第9~第13の態様のいずれか1つにおいて、凍結される上記蓄熱媒体の白濁度を調節するように上記伝熱管(46)の冷却能力を制御する制御部(25)を備えることを特徴とする。
【0034】
第14の態様では、伝熱管(46)の冷却能力が高いほど、蓄熱媒体の白濁度が高くなる。これを利用して蓄熱媒体の白濁度を調節することにより、凍結した蓄熱媒体を視認する者に対して与える印象をコントロールすることができる。
【0035】
本開示の第15の態様は、上記第9~第14の態様のいずれか1つにおいて、凍結された上記蓄熱媒体に光を照射する光源(50)を備えることを特徴とする。
【0036】
第15の態様では、光源(50)の光によって、凍結した蓄熱媒体をライトアップすることができる。ライトアップされた凍結状態の蓄熱媒体を視認する者に対し、涼しい印象をより一層与えることができる。その涼しい印象は、光源(50)の光の色を調節することで高めることも可能である。
【0037】
本開示の第16の態様は、上記第15の態様において、上記光源(50)は、上記槽(32)の下部に配置され、かつ上方に向かって光を照射することを特徴とする。
【0038】
第16の態様では、光源(50)が槽(32)の下部にあるので、槽(32)を視認する者の視界に光源(50)が入りにくい。このため、ライトアップされた凍結状態の蓄熱媒体を視認する者に対し、涼しい印象をより一層与えることができる。
【0039】
なお、本明細書において、槽(32)の「下部」には、槽(32)の内部空間と、槽(32)の外部空間との両方が含まれる。より具体的に、槽(32)の「下部」には、槽(32)の内部空間のうち当該槽(32)の下端付近の領域と、槽(32)の外部空間のうち当該槽(32)の下端付近の領域との両方が含まれる。
【0040】
本開示の第17の態様は、上記第1~第4、第9~第16の態様のいずれか1つにおいて、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気を上記温調対象空間へ搬送するファン(51)を備えることを特徴とする。
【0041】
第17の態様では、冷却または加熱された空気が、ファン(51)により温調対象空間へ搬送される。このため、温調対象空間の温調をより効率的に行うことができる。
【0042】
本開示の第18の態様は、上記第5~第8、第17の態様のいずれか1つにおいて、上記温調対象空間に連通しかつ上記槽(32)の一部に面する通風路(64)を備え、上記ファン(51)は、上記通風路(64)を経由して上記温調対象空間へ空気を搬送し、上記槽(32)のうち上記通風路(64)に面する部分は、上記通風路(64)を流れる空気と、上記槽(32)内で冷熱または温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させるように構成されていることを特徴とする。
【0043】
第18の態様では、ファン(51)により、空気が通風路(64)を流れる。通風路(64)を流れる空気は、冷熱または温熱を蓄えた蓄熱媒体と熱交換して冷却または加熱される。冷却または加熱された空気は、温調対象空間に搬送される。これにより、温調対象空間が温調される。
【0044】
本開示の第19の態様は、上記第5~第8、第17、第18の態様のいずれか1つにおいて、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)は、上記ファン(51)の吹出側に配置されていることを特徴とする。
【0045】
第19の態様では、ファン(51)から吹き出された風に乗って、蓄熱媒体または伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気が温調対象空間へ搬送される。
【0046】
本開示の第20の態様は、上記第5~第8、第17、第18の態様のいずれか1つにおいて、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39~41,44,45)は、上記ファン(51)の吸込側に配置されていることを特徴とする。
【0047】
第20の態様では、蓄熱媒体または伝熱部(35,37,39~41,44,45)で冷却または加熱された空気が、ファン(51)に吸い込まれた後に温調対象空間へ搬送される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、実施形態1の空気調和装置の構成を概略的に示す冷媒回路図である。
図2図2は、実施形態1の利用側ユニットを示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、実施形態1の変形例1の利用側ユニットを示す断面図である。
図5図5は、実施形態1の変形例2の利用側ユニットを示す断面図である。
図6図6は、実施形態1の変形例3の利用側ユニットを示す断面図である。
図7図7は、実施形態1の変形例4の利用側ユニットを示す断面図である。
図8図8は、実施形態1の変形例5の利用側ユニットを示す斜視図である。
図9図9は、実施形態2の槽を示す斜視図である。
図10図10は、実施形態3の利用側ユニットを示す斜視図である。
図11図11は、実施形態4の空気調和装置の構成を概略的に示す冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態の空気調和装置(10)は、少なくとも温調対象空間の温調を行うためのものである。空気調和装置(10)は、蓄熱媒体に蓄えた冷熱により少なくとも温調対象空間の温調を行う蓄熱式の空気調和装置である。温調対象空間は、例えば室内空間であってもよい。
【0050】
以下、空気調和装置(10)の全体的な構成について説明し、続けて利用側ユニット(30)の構成について詳しく説明する。
【0051】
-空気調和装置の構成-
図1に示すように、空気調和装置(10)は、熱源側ユニット(20)と、利用側ユニット(30)とを備える。熱源側ユニット(20)は、温調対象空間以外の空間に配置される。利用側ユニット(30)は、温調対象空間に配置される。利用側ユニット(30)は、床面または地面に設置されることが好ましい。なお、熱源側ユニット(20)は、温調対象空間に配置されてもよい。熱源側ユニット(20)は、熱源を構成している。
【0052】
熱源側ユニット(20)は、圧縮機(21)と、熱交換器(22)と、膨張弁(23)と、熱源側ファン(24)と、制御部(25)とを備える。利用側ユニット(30)は、槽(32)と、利用側ファン(51)とを備える。空気調和装置(10)では、圧縮機(21)、熱交換器(22)、膨張弁(23)、および槽(32)が、この順に冷媒配管で接続されて冷媒回路(11)を構成している。利用側ファン(51)は、ファンを構成している。冷媒は、温調用媒体の一例であって、例えばR32冷媒であってもよい。
【0053】
圧縮機(21)は、槽(32)から流出した低圧のガス冷媒を圧縮して高圧のガス冷媒を吐出する。圧縮機(21)が吐出した高圧のガス冷媒は、熱交換器(22)に流入する。圧縮機(21)は、例えば回転式圧縮機であってもよい。
【0054】
熱交換器(22)は、内部を流れるガス冷媒と、熱源側ファン(24)によって供給される空気とを熱交換させる。熱交換器(22)では、ガス冷媒から空気に熱が移動する。熱交換器(22)は、例えばフィンアンドチューブ熱交換器であってもよい。
【0055】
膨張弁(23)は、熱交換器(22)から流出した冷媒を減圧する。膨張弁(23)で減圧された冷媒は、槽(32)へ流入する。膨張弁(23)は、例えば開度調節可能な電子膨張弁であってもよい。
【0056】
熱源側ファン(24)は、熱交換器(22)に空気を供給する。熱源側ファン(24)は、例えばプロペラファンであってもよい。
【0057】
制御部(25)は、空気調和装置(10)の各構成要素の動作を制御する。制御部(25)は、例えば、圧縮機(21)、膨張弁(23)、熱源側ファン(24)、および利用側ファン(51)の動作を制御してもよい。制御部(25)は、CPUやメモリなどによって構成される。制御部(25)によると、空気調和装置(10)が、後述する冷却動作および冷蓄熱動作を実行し得る。
【0058】
槽(32)は、伝熱管(46)を流れる冷媒と、内部に貯留された蓄熱媒体とを熱交換させる。槽(32)では、蓄熱媒体から冷媒に熱が移動する。蓄熱媒体は、例えば、水であってもよいし、水と不凍液の混合物であってもよい。蓄熱媒体は、冷却されることによって包接水和物が生成される蓄熱媒体であってもよい。
【0059】
利用側ファン(51)は、槽(32)に空気を供給すると共に、槽(32)で冷却された空気を温調対象空間へ搬送する。利用側ファン(51)は、例えばシロッコファンであってもよい。
【0060】
-利用側ユニットの構成-
図2および図3に示すように、利用側ユニット(30)は、基台(31)と、槽(32)と、利用側ファン(51)とを備える。便宜上、図2における左手前側または図3における左側を「前側」とし、その反対側を「後側」とする。便宜上、「右側」および「左側」は、利用側ユニット(30)を前側から見たときの方向とする。
【0061】
基台(31)は、槽(32)が載置される台である。基台(31)は、中空の概ね直方体状になっている。基台(31)の内部空間には、利用側ファン(51)および複数の光源(50)が収容されている。基台(31)には、その内部空間と温調対象空間とを連通させる吹出口(31a)が形成されている。基台(31)には、その内部空間に空気を吸い込むための吸込口(31b)が形成されている。基台(31)には、各光源(50)の光を通過させるスリット(31c)が形成されている。
【0062】
槽(32)は、少なくとも温調対象空間に冷熱を供給する。槽(32)は、前後方向にやや扁平な中空の概ね直方体状になっている。槽(32)の内部空間は、上方に開放された非密閉空間である。槽(32)の内部空間には、蓄熱媒体が貯留されている。なお、槽(32)の内部空間は、密閉空間であってもよい。
【0063】
槽(32)は、前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、左プレート(40)、および底プレート(42)を備える。前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、左プレート(40)、および底プレート(42)によって、槽(32)の内部空間が区画されている。
【0064】
各プレート(35,37,39,40,42)は、透明な材料で構成されている。透明な材料は、例えばアクリル、ポリカーボネート、塩化ビニール、ガラスであるが、これらに限定されるものではない。なお、各プレート(35,37,39,40,42)のうち任意のものが透明または半透明な材料で構成されていてもよい。
【0065】
各プレート(35,37,39,40,42)は、底プレート(42)を除いて温調対象空間に露出している。底プレート(42)を除く各プレート(35,37,39,40)は、少なくとも温調対象空間の空気の熱を蓄熱媒体に移動させて当該温調対象空間を温調する。換言すると、底プレート(42)を除く各プレート(35,37,39,40)を介して、少なくとも温調対象空間の空気から槽(32)内の蓄熱媒体へ熱が移動して当該温調対象空間が温調される。前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、および左プレート(40)は、温調対象空間にいる者の手が届く位置にあることが好ましい。前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、および左プレート(40)は、伝熱部を構成している。
【0066】
槽(32)は、可視部(33)と、伝熱促進部(34)とを備える。可視部(33)は、後プレート(37)で構成される。伝熱促進部(34)は、前プレート(35)と、右プレート(39)と、左プレート(40)とで構成される。
【0067】
可視部(33)は、これを介して、温調対象空間にいる者が槽(32)内の蓄熱媒体を視認できる部分である。可視部(33)は、後プレート(37)からなる分厚い部分であるため、冷却動作時に霜が付きにくい。
【0068】
伝熱促進部(34)は、可視部(33)よりも、温調対象空間の空気の熱を槽(32)内の蓄熱媒体に移動させやすい部分である。伝熱促進部(34)は、前プレート(35)、右プレート(39)、または左プレート(40)からなる薄い部分である。伝熱促進部(34)は、可視部(33)よりも薄い。伝熱促進部(34)は、可視部(33)よりも厚さ方向の熱抵抗が小さい。
【0069】
槽(32)の内部には、2つの伝熱管(46)が設けられている。各伝熱管(46)の内部では、蓄熱媒体を凍結させる冷媒(温調用媒体)が流れる。なお、伝熱管(46)の数は、任意に変更されてもよい。
【0070】
伝熱管(46)は、4つの直線部(47)と、1つのU字部(48)と、2つの下側U字部(49)とを備える。なお、これらの構成要素(47~49)の数は、任意に変更されてもよい。
【0071】
4つの直線部(47)は、槽(32)内で左右方向に等間隔で並んで設けられている。各直線部(47)は、上下方向に直線状に延びている。最も右側の直線部(47)には、熱交換器(22)から流出して膨張弁(23)を経由した冷媒が流入する。最も左側の直線部(47)から流出する冷媒は、圧縮機(21)へ流入する。各直線部(47)の上下方向長さは、槽(32)の内部空間の上下方向長さの半分以上であることが好ましい。各直線部(47)は、第2管部を構成している。
【0072】
上側U字部(48)は、隣り合う2つの直線部(47)が対になるように、当該隣り合う2つの直線部(47)を互いに連通させる。各上側U字部(48)は、対応する直線部(47)の上側に設けられている。各上側U字部(48)は、対応する直線部(47)の上端と連通している。各上側U字部(48)は、隣り合う直線部(47)の上端同士を互いに連通させる。各上側U字部(48)は、第2管部を構成している。
【0073】
2つの下側U字部(49)は、隣り合う2つの直線部(47)が対になるように、当該隣り合う2つの直線部(47)を互いに連通させる。各下側U字部(49)は、上側U字部(48)によって連通されていない隣り合う直線部(47)を互いに連通させる。各下側U字部(49)は、対応する直線部(47)の下側に設けられている。各下側U字部(49)は、対応する直線部(47)の下端と連通している。各下側U字部(49)は、隣り合う直線部(47)の下端同士を互いに連通させる。各下側U字部(49)は、第1管部を構成している。
【0074】
複数(この例では、4つ)の光源(50)は、基台(31)の内部空間において、各下側U字部(49)の下方に1つずつ設けられている。各光源(50)は、例えば発光色を変えられるLEDであってもよい。なお、各光源(50)は、槽(32)の内部空間における底プレート(42)近傍に設けられていてもよい。ここで述べた光源(50)の数および配置は、単なる例示である。
【0075】
各光源(50)は、上方に向かって光を照射する。各光源(50)は、スリット(31c)を介して、凍結された蓄熱媒体に光を照射する。各光源(50)は、凍結していない蓄熱媒体に光を照射してもよい。
【0076】
利用側ファン(51)は、基台(31)の内部空間に収容されている。利用側ファン(51)が生じる風は、基台(31)の吹出口(31a)を介して上方へ吹き出される。利用側ファン(51)の吹出側には、前プレート(35)が配置されている。利用側ファン(51)は、伝熱部を構成する前プレート(35)に向けて風を送る。
【0077】
-空気調和装置の動作-
次に、空気調和装置(10)の動作について説明する。空気調和装置(10)は、冷却動作と冷蓄熱動作とを互いに異なる時間帯に実行する。いずれの動作をどの時間帯に実行するかは、制御部(25)によって決定される。例えば、空気調和装置(10)は、昼間に冷却動作を実行する一方、夜間に冷蓄熱動作を実行することが考えられる。冷却動作は、温調動作の一例であり、冷蓄熱動作は、蓄熱動作の一例である。
【0078】
〈冷却動作〉
冷却動作は、第1動作と第2動作とを含む。制御部(25)は、第1動作と第2動作とを選択的に実行する。
【0079】
第1動作は、熱源側ユニット(20)を停止した状態で利用側ファン(51)を駆動することにより、少なくとも温調対象空間の空気を冷却する動作である。制御部(25)は、第1動作において、熱源側ユニット(20)の圧縮機(21)および熱源側ファン(24)を停止する。制御部(25)は、第1動作において、利用側ユニット(30)の利用側ファン(51)を駆動または停止する。第1動作では、熱源ユニット(20)が停止されるため、空気調和装置(10)からの排熱が実質的にない。
【0080】
第1動作では、前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、および左プレート(40)を介して、少なくとも温調対象空間の空気から蓄熱媒体へ熱が移動する。これにより、少なくとも温調対象空間の空気が冷却される。なお、温調対象空間の空気に加えて、温調対象空間にある温調対象物が冷却されてもよい。温調対象物は、例えば人体であってもよい。
【0081】
利用側ファン(51)が駆動される場合、温調対象空間の空気の冷却は、当該利用側ファン(51)によって促進される。利用側ファン(51)は、基台(31)の吹出口(31a)から上方に向かって風を送る。この風により、槽(32)の周囲で冷却された空気が温調対象空間で広がる。
【0082】
利用側ファン(51)が停止される場合、空気調和装置(10)の消費電力が実質的にゼロになる。なぜなら、空気調和装置(10)において電力を消費する構成要素(具体的には、圧縮機(21)、熱源側ファン(24)、および利用側ファン(51))が停止されるためである。
【0083】
第2動作は、熱源側ユニット(20)を動作させた状態で利用側ファン(51)を駆動することにより、蓄熱媒体に冷熱を蓄えると共に少なくとも温調対象空間の空気を冷却する動作である。制御部(25)は、第2動作において、熱源側ユニット(20)の圧縮機(21)および熱源側ファン(24)を駆動する。制御部(25)は、第2動作において、利用側ユニット(30)の利用側ファン(51)を駆動する。
【0084】
第2動作において、圧縮機(21)は、高圧のガス冷媒を吐出する。圧縮機(21)が吐出した高圧のガス冷媒は、熱交換器(22)に流入する。熱交換器(22)では、内部を流れるガス冷媒から、熱源側ファン(24)によって供給された空気へ熱が移動する。これにより、冷媒が冷却される。熱交換器(22)から流出した冷媒は、膨張弁(23)により減圧された後、槽(32)に設けられた伝熱管(46)に流入する。槽(32)では、蓄熱媒体から伝熱管(46)内を流れる冷媒へ熱が移動する。これにより、槽(32)内の蓄熱媒体の少なくとも一部が凍結し、当該蓄熱媒体に冷熱が蓄えられる。なお、蓄熱媒体は、冷却されればよく、凍結されなくてもよい。伝熱管(46)から流出した冷媒は、圧縮機(21)に吸入される。このようなサイクルを繰り返すことで、第2動作では、熱源側ユニット(20)が槽(32)内の蓄熱媒体から熱を奪う。熱源側ユニット(20)が奪った熱は、熱交換器(22)で放出される。
【0085】
第2動作において、制御部(25)は、蓄熱媒体を凍結させる場合に、凍結される蓄熱媒体の白濁度を調節するように伝熱管(46)の冷却能力を制御する。具体的に、制御部(25)は、圧縮機(21)の運転容量や膨張弁(23)の開度などを制御することにより、伝熱管(46)を流れる冷媒の温度および流量を調節する。伝熱管(46)を流れる冷媒の温度が低くかつ流量が多いほど、凍結される蓄熱媒体の白濁度は低くなる。伝熱管(46)を流れる冷媒の温度が高くかつ流量が少ないほど、凍結される蓄熱媒体の白濁度は高くなる。ここで、下側U字部(49)の周囲で凍結される蓄熱媒体の白濁度よりも、直線部(47)および上側U字部(48)の周囲で凍結される蓄熱媒体の白濁度の方が高い。
【0086】
〈冷蓄熱動作〉
冷蓄熱動作は、熱源側ユニット(20)を動作させた状態で利用側ファン(51)を停止することにより、蓄熱媒体に冷熱を蓄える動作である。制御部(25)は、冷蓄熱動作において、熱源側ユニット(20)の圧縮機(21)および熱源側ファン(24)を駆動する。制御部(25)は、冷蓄熱動作において、利用側ユニット(30)の利用側ファン(51)を停止する。
【0087】
冷蓄熱動作では、冷却動作の第2動作と同様にして、槽(32)内の蓄熱媒体に冷熱が蓄えられる。
【0088】
-実施形態1の効果-
本実施形態の空気調和装置(10)は、温調用媒体の冷却を行う熱源ユニット(20)と、上記熱源ユニット(20)により冷却された温調用媒体が流れる伝熱管(46)と、蓄熱媒体を貯留すると共に上記伝熱管(46)が内部に配置される槽(32)とを備え、上記伝熱管(46)は、該伝熱管(46)を流れる温調用媒体と上記槽(32)内の蓄熱媒体とを熱交換させるように構成され、上記槽(32)の少なくとも一部は、温調対象空間に露出する伝熱部(35,37,39,40)が形成されており、上記伝熱部(35,37,39,40)が、少なくとも上記温調対象空間の空気と、上記槽(32)内で冷熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる冷却動作を行うように構成されている。したがって、熱源ユニット(20)により冷却された温調用媒体が伝熱管(46)の内部を流れる。伝熱管(46)は、内部を流れる温調用媒体と槽(32)内の蓄熱媒体とを熱交換させる。この熱交換により冷熱を蓄えた蓄熱媒体は、温調対象空間に露出した伝熱部(35,37,39,40)を介して、少なくとも温調対象空間の空気と熱交換する。温調対象空間の空気は、温度が下がる。これにより、温調対象空間が温調される。ここで、槽(32)の伝熱部(35,37,39,40)を構成する前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、および左プレート(40)は、温調対象空間に露出している。このため、槽(32)内の蓄熱媒体の冷熱を、伝熱部(35,37,39,40)を介して直接的に、温調対象空間の温調に有効利用できる。
【0089】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記冷却動作が、上記熱源ユニット(20)を停止した状態で上記伝熱部(35,37,39,40)が上記温調対象空間の空気と上記冷熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる第1動作を含む。したがって、空気調和装置(10)が、冷却動作の第1動作を行う。第1動作では、冷熱を蓄えた蓄熱媒体が、伝熱部(35,37,39,40)を介して、温調対象空間の空気から熱を奪う。第1動作では、蓄熱媒体に冷熱は蓄えられない。
【0090】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記冷却動作が、上記熱源ユニット(20)により冷却された温調用媒体が上記伝熱管(46)を流れる状態で上記伝熱部(35,37,39,40)が上記温調対象空間の空気と上記冷熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる第2動作を含む。したがって、空気調和装置(10)が、冷却動作の第2動作を行う。第2動作では、冷熱を蓄えた蓄熱媒体が、伝熱部(35,37,39,40)を介して、温調対象空間の空気から熱を奪う。第2動作では、蓄熱媒体に冷熱が蓄えられる。
【0091】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記冷却動作と異なる所定の時間帯に実行される冷蓄熱動作を行うように構成され、上記冷蓄熱動作では、上記熱源ユニット(20)により冷却された温調用媒体が上記伝熱管(46)を流れ、上記蓄熱媒体に冷熱が蓄えられる。したがって、伝熱管(46)を流れる温調用媒体により槽(32)内の蓄熱媒体が冷却される。これにより、蓄熱媒体に冷熱が蓄えられる。
【0092】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39,40)で冷却された空気を上記温調対象空間へ搬送する利用側ファン(51)を備え、上記利用側ファン(51)は、上記第1動作において駆動または停止される。したがって、利用側ファン(51)が駆動される場合、第1動作において、伝熱部(35,37,39,40)で冷却された空気が利用側ファン(51)により温調対象空間へ搬送される。このため、温調対象空間の空気の冷却をより効率的に行うことができる。一方、利用側ファン(51)が停止される場合、第1動作において、空気調和装置(10)の消費電力が実質的にゼロになる。なぜなら、空気調和装置(10)において電力を消費する構成要素(具体的には、圧縮機(21)、熱源側ファン(24)、および利用側ファン(51))が停止されるためである。そして、空気調和装置(10)の消費電力が実質的にゼロである状態でも、槽(32)の蓄熱媒体に蓄えられた冷熱によって温調対象空間の空気が冷却され得る。
【0093】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39,40)で冷却された空気を上記温調対象空間へ搬送する利用側ファン(51)を備え、上記利用側ファン(51)は、上記第2動作において駆動される。したがって、第2動作において、蓄熱媒体または伝熱部(35,37,39,40)で冷却された空気が利用側ファン(51)により温調対象空間へ搬送される。このため、温調対象空間の空気の冷却をより効率的に行うことができる。
【0094】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39,40)で冷却された空気を上記温調対象空間へ搬送する利用側ファン(51)を備え、上記利用側ファン(51)は、上記冷蓄熱動作において停止される。したがって、利用側ファン(51)が停止されるので、蓄熱媒体の冷熱が実質的に利用されない。このため、蓄熱媒体に冷熱を効率的に蓄えることができる。
【0095】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記伝熱管(46)が、上記温調対象空間の空気と上記冷熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させることで上記蓄熱媒体の少なくとも一部を凍結させるように構成され、上記伝熱部(35,37,39,40)の少なくとも一部が、透明または半透明の材料から構成されている。したがって、温調対象空間にいる者が、当該温調対象空間に露出した伝熱部(35,37,39,40)の少なくとも一部を介して、凍結した蓄熱媒体を視認できる。本実施形態の空気調和装置(10)によると、凍結した蓄熱媒体を視認する者に、涼しい印象を与えることができる。
【0096】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記伝熱部(35,37,39,40)が、透明または半透明の材料から構成された可視部(33)と、該可視部(33)よりも厚さ方向の熱抵抗が小さい伝熱促進部(34)とを有する。したがって、可視部(33)を介して凍結した蓄熱媒体を視認する者に、涼しい印象を与えることができる。伝熱促進部(34)は、少なくとも温調対象空間の空気の熱を、可視部(33)よりも効率良く、蓄熱媒体に移動させ得る。本実施形態の空気調和装置(10)によると、温調対象空間にいる者に、可視部(33)および伝熱促進部(34)の両方によって涼しい印象を与えることができる。
【0097】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記伝熱促進部(34)が、透明または半透明の材料から構成され、かつ上記可視部(33)よりも薄い。したがって、温調対象空間にいる者は、可視部(33)のみでなく伝熱促進部(34)を介しても、凍結した蓄熱媒体を視認し得る。温調対象空間にいる者に、可視部(33)および伝熱促進部(34)の両方により涼しい印象を与えることができる。
【0098】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記伝熱促進部(34)が、上記可視部(33)よりも熱伝導率が高い材料から構成されている。したがって、熱伝導率が高い材料で構成された伝熱促進部(34)を介して、少なくとも温調対象空間の空気の熱が蓄熱媒体へ効率的に移動する。温調対象空間にいる者に対して、涼しい印象をより一層与えることができる。
【0099】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記伝熱管(46)が、下側U字部(49)と、該下側U字部(49)よりも上側に位置する直線部(47)および上側U治部(48)とを有し、上記下側U字部(49)の周囲で凍結される上記蓄熱媒体の白濁度よりも、上記直線部(47)および上記上側U字部(48)の周囲で凍結される上記蓄熱媒体の白濁度の方が高い。したがって、相対的に白濁度が高い状態で凍結した直線部(47)および上側U字部(48)の周囲の蓄熱媒体の方が、相対的に白濁度が低い状態で凍結した下側U字部(49)の周囲の蓄熱媒体よりも、凍結状態にあることを目視で確認しやすい。このため、直線部(47)および上側U字部(48)の周囲で凍結した蓄熱媒体を視認する者に対して、涼しい印象をより一層与えることができる。
【0100】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、凍結される上記蓄熱媒体の白濁度を調節するように上記伝熱管(46)の冷却能力を制御する制御部(25)を備える。ここで、伝熱管(46)の冷却能力が高いほど、蓄熱媒体の白濁度が高くなる。これを利用して蓄熱媒体の白濁度を調節することにより、凍結した蓄熱媒体を視認する者に対して与える印象をコントロールすることができる。
【0101】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、凍結された上記蓄熱媒体に光を照射する光源(50)を備える。したがって、光源(50)の光によって、凍結した蓄熱媒体をライトアップすることができる。ライトアップされた凍結状態の蓄熱媒体を視認する者に対し、涼しい印象をより一層与えることができる。その涼しい印象は、光源(50)の光の色を調節することで高めることも可能である。
【0102】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記光源(50)が、上記槽(32)の下部に配置され、かつ上方に向かって光を照射する。したがって、光源(50)が槽(32)の下部にあるので、槽(32)を視認する者の視界に光源(50)が入りにくい。このため、ライトアップされた凍結状態の蓄熱媒体を視認する者に対し、涼しい印象をより一層与えることができる。
【0103】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39,40)で冷却された空気を上記温調対象空間へ搬送する利用側ファン(51)を備える。したがって、冷却された空気が、利用側ファン(51)により温調対象空間へ搬送される。このため、温調対象空間の温調をより効率的に行うことができる。
【0104】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記蓄熱媒体または上記伝熱部(35,37,39,40)が、上記利用側ファン(51)の吹出側に配置されている。したがって、利用側ファン(51)から吹き出された風に乗って、蓄熱媒体または伝熱部(35,37,39,40)で冷却された空気が温調対象空間へ搬送される。
【0105】
-実施形態1の変形例1-
実施形態1の変形例1について説明する。本変形例の空気調和装置(10)は、蓋体(60)および壁部材(63)を備える点が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0106】
図4に示すように、利用側ユニット(30)は、槽(32)の上部に設けられた蓋体(60)と、蓋体(60)と基台(31)との間に設けられた壁部材(63)とを備える。
【0107】
蓋体(60)は、下方が開放された概ね直方体状の中空部材である。蓋体(60)は、槽(32)の上面との間に空間を形成するように当該槽(32)を上から覆っている。この蓋体(60)と槽(32)との間に形成された空間は、蓄熱媒体によって冷却された空気が溜まりまたは流れる。
【0108】
蓋体(60)は、矩形状の上板(61)と、この上板(61)の各辺から下方に延びる4つの側板(62)とを有する。各側板(62)には、蓄熱媒体によって冷却された空気を温調対象空間へ送るための開口(62a)が形成されている。なお、図4では、前側および後側の2つの側板(62)のみを図示している。
【0109】
壁部材(63)は、上下に延びる透明な板状部材である。壁部材(63)の上端は、蓋体(60)の前側の側板(62)の下端に接続している。壁部材(63)の下端は、基台(31)の上面の前端部に接続している。壁部材(63)の横断面は、前プレート(35)に向かって開口するU字状になっている。
【0110】
壁部材(63)と前プレート(35)との間には、利用側ファン(51)が吹き出す風が流れる通風路(64)が形成されている。通風路(64)の流入端は、吹出口(31a)に連通している。通風路(64)の流出端は、蓋体(60)と槽(32)の上面との間の空間を介して温調対象空間に連通している。通風路(64)は、槽(32)の前プレート(35)に面している。
【0111】
前プレート(35)は、温調対象空間に露出しておらず、通風路(64)に面している。前プレート(35)は、通風路(64)を流れる空気と、槽(32)内で冷熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる。前プレート(35)は、槽(32)の一部である補助伝熱部を構成している。
【0112】
本変形例の空気調和装置(10)は、上記温調対象空間に連通しかつ上記槽(32)の前プレート(35)に面する通風路(64)を備え、上記利用側ファン(51)が、上記通風路(64)を経由して上記温調対象空間へ空気を搬送し、上記槽(32)の前プレート(35)が、上記通風路(64)を流れる空気と、上記槽(32)内で冷熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させるように構成されている。したがって、利用側ファン(51)により、空気が通風路(64)を流れる。通風路(64)を流れる空気は、冷熱を蓄えた蓄熱媒体と熱交換して冷却される。冷却された空気は、温調対象空間に搬送される。これにより、温調対象空間が温調される。
【0113】
-実施形態1の変形例2-
実施形態1の変形例2について説明する。本変形例の空気調和装置(10)は、利用側ファン(51)の配置が上記実施形態1の変形例1と異なる。以下、上記実施形態1の変形例1と異なる点について主に説明する。
【0114】
図5に示すように、利用側ファン(51)は、基台(31)の内部空間ではなく、蓋体(60)と槽(32)との間の空間に配置されている。換言すると、利用側ファン(51)の吸込側に、蓄熱媒体および伝熱部が配置されている。利用側ファン(51)が駆動されると、空気が通風路(64)を流れる。通風路(64)を流れる空気は、槽(32)内の蓄熱媒体と熱交換して冷却される。冷却された空気は、蓋体(60)の開口(62a)を介して温調対象空間に送られる。
【0115】
-実施形態1の変形例3-
実施形態1の変形例3について説明する。本変形例の空気調和装置(10)は、槽(32)の数が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0116】
図6に示すように、利用側ユニット(30)は、6つの槽(32)を備える。6つの槽(32)は、上下に2つ、左右に3つ並んで配置されている。
【0117】
各槽(32)は、透明な材料で構成された前プレート(35)を備える。前プレート(35)は、可視部(33)を構成している。
【0118】
各槽(32)の後プレート(37)、右プレート(39)、および左プレート(40)は、前プレート(35)を構成する材料よりも熱伝導率が高い材料から構成されている。当該材料は、例えばステンレス、アルミニウム、銅、チタン、ガラス、大理石、セラミックなどの無機系の材料であるが、これらに限定されるものではない。各槽(32)の後プレート(37)、右プレート(39)、および左プレート(40)は、伝熱促進部(34)を構成している。
【0119】
各槽(32)の内部には、伝熱管(46)が設けられている。各槽(32)の伝熱管(46)は、互いに直列に接続されていてもよいし、互いに並列に接続されていてもよい。
【0120】
各槽(32)の下には、光源箱(52)が設けられている。各光源箱(52)には、光源が収容されている。各光源箱(52)の光源の光の色は、任意に設定されてもよい。例えば、上段の3つの槽(32)に対応する光源の光の色が黄色であると共に、下段の3つの槽(32)に対応する光源の光の色が青色であることが考えられる。各槽(32)に対応する光源の光の色が互いに異なることも考えられる。
【0121】
-実施形態1の変形例4-
実施形態1の変形例4について説明する。本変形例の空気調和装置(10)は、槽(32)の構成が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0122】
図7に示すように、槽(32)は、透明な材料で構成された円筒状の側面プレート(44)を備える。側面プレート(44)の厚みは、全周にわたって実質的に一定である。側面プレート(44)および上プレート(41)は、可視部(33)を構成している。
【0123】
槽(32)の下には、光源箱(52)が設けられている。光源箱(52)には、光源が収容されている。
【0124】
伝熱管(46)は、側面プレート(44)の内周面に沿って配置されている。ただし、伝熱管(46)の配置は、これに限られるものではない。
【0125】
-実施形態1の変形例5-
実施形態1の変形例5について説明する。本変形例の空気調和装置(10)は、槽(32)の数が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0126】
図8に示すように、利用側ユニット(30)は、4つの槽(32)を備える。4つの槽(32)は、左右方向に並んで設けられている。
【0127】
各槽(32)は、透明な材料で構成された円筒状の側面プレート(44)を備える。側面プレート(44)の厚みは、全周にわたって実質的に一定である。側面プレート(44)は、可視部(33)を構成している。
【0128】
なお、少なくとも1つの槽(32)の側面プレート(44)は、透明な材料よりも熱伝導率が高い材料で構成されていてもよい。そのような熱伝導率が高い材料で構成された側面プレート(44)は、伝熱促進部(34)を構成する。
【0129】
また、少なくとも1つの槽(32)の側面プレート(44)は、一部が透明な材料で構成され、かつ残部が透明な材料よりも熱伝導率が高い材料で構成されていてもよい。そのような側面プレート(44)において、透明な材料で構成された部分は可視部(33)を構成し、熱伝導率が高い材料で構成された部分は伝熱促進部(34)を構成する。
【0130】
各槽(32)の内部には、伝熱管(46)が設けられている。各槽(32)の伝熱管(46)は、槽(32)の上に設けられた天板(55)を介して、互いに接続されている。
【0131】
4つの槽(32)の下には、共通の光源箱(52)が設けられている。光源箱(52)には、光源が収容されている。
【0132】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の空気調和装置(10)は、槽(32)の構成が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0133】
図9に示すように、槽(32)の前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、左プレート(40)、上プレート(41)、および底プレート(42)は、透明な材料よりも熱伝導率が高い材料、例えば金属材料などの無機系の材料で構成されている。各プレート(35,37,39~42)は、伝熱促進部(34)を構成している。
【0134】
前プレート(35)の上半部には、矩形状の貫通孔(35a)が形成されている。この貫通孔(35a)には、透明な材料で構成された窓プレート(45)が嵌められている。窓プレート(45)は、可視部(33)を構成している。なお、貫通孔(35a)および窓プレート(45)の形状および数は、任意に設定されてもよい。
【0135】
-実施形態2の効果-
本実施形態の空気調和装置(10)によっても、上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0136】
本実施形態の空気調和装置(10)は、上記伝熱促進部(34)が、上記可視部(33)よりも熱伝導率が高い材料から構成されている。したがって、熱伝導率が高い材料で構成された伝熱促進部(34)を介して、少なくとも温調対象空間の空気の熱が蓄熱媒体へ効率的に移動する。温調対象空間にいる者に対して、涼しい印象をより一層与えることができる。
【0137】
《実施形態3》
実施形態3について説明する。本実施形態の空気調和装置(10)は、利用側ユニット(30)の構成が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0138】
図10に示すように、利用側ユニット(30)は、1つの槽(32)と、1つの水熱交換器(53)と、不図示のファンとを備える。
【0139】
水熱交換器(53)は、槽(32)の下に設けられている。水熱交換器(53)の内部には、水伝熱管(54)が設けられている。水伝熱管(54)は、槽(32)の底プレート(42)に形成された2つの連通穴(図示せず)を介して、槽(32)の内部空間に連通している。水熱交換器(53)は、連通穴を介して槽(32)から水伝熱管(54)へ流入した蓄熱媒体と、ファンによって供給される空気とを熱交換させる。ファンによって供給された空気は、水熱交換器(53)で冷却された後、温調対象空間へ搬送される。
【0140】
《実施形態4》
実施形態4について説明する。本実施形態の空気調和装置(10)は、少なくとも温調対象空間の温調を行うためのものである。空気調和装置(10)は、蓄熱媒体に蓄えた温熱により少なくとも温調対象空間の温調を行う蓄熱式の空気調和装置である。温調対象空間は、例えば室内空間であってもよい。
【0141】
-空気調和装置の構成-
図11に示すように、空気調和装置(10)は、熱源側ユニット(20)と、利用側ユニット(30)とを備える。熱源側ユニット(20)は、温調対象空間以外の空間に配置される。利用側ユニット(30)は、温調対象空間に配置される。利用側ユニット(30)は、床面または地面に設置されることが好ましい。利用側ユニット(30)の構成は、上記実施形態1と同様である。なお、熱源側ユニット(20)は、温調対象空間に配置されてもよい。熱源側ユニット(20)は、熱源を構成している。
【0142】
熱源側ユニット(20)は、圧縮機(21)と、熱交換器(22)と、膨張弁(23)と、熱源側ファン(24)と、制御部(25)とを備える。利用側ユニット(30)は、槽(32)と、利用側ファン(51)とを備える。空気調和装置(10)では、圧縮機(21)、槽(32)、膨張弁(23)、および熱交換器(22)が、この順に冷媒配管で接続されて冷媒回路(11)を構成している。利用側ファン(51)は、ファンを構成している。冷媒は、温調用媒体の一例であって、例えばR32冷媒であってもよい。
【0143】
圧縮機(21)は、熱交換器(22)から流出した低圧のガス冷媒を圧縮して高圧のガス冷媒を吐出する。圧縮機(21)が吐出した高圧のガス冷媒は、槽(32)に流入する。圧縮機(21)は、例えば回転式圧縮機であってもよい。
【0144】
熱交換器(22)は、内部を流れる冷媒と、熱源側ファン(24)によって供給される空気とを熱交換させる。熱交換器(22)では、空気から冷媒に熱が移動する。熱交換器(22)は、例えばフィンアンドチューブ熱交換器であってもよい。
【0145】
膨張弁(23)は、槽(32)から流出した冷媒を減圧する。膨張弁(23)で減圧された冷媒は、熱交換器(22)へ流入する。膨張弁(23)は、例えば開度調節可能な電子膨張弁であってもよい。
【0146】
熱源側ファン(24)は、熱交換器(22)に空気を供給する。熱源側ファン(24)は、例えばプロペラファンであってもよい。
【0147】
制御部(25)は、空気調和装置(10)の各構成要素の動作を制御する。制御部(25)は、例えば、圧縮機(21)、膨張弁(23)、熱源側ファン(24)、および利用側ファン(51)の動作を制御してもよい。制御部(25)は、CPUやメモリなどによって構成される。制御部(25)によると、空気調和装置(10)が、後述する加熱動作および温蓄熱動作を実行し得る。
【0148】
槽(32)は、伝熱管(46)を流れるガス冷媒と、内部に貯留された蓄熱媒体とを熱交換させる。槽(32)では、ガス冷媒から蓄熱媒体へ熱が移動する。蓄熱媒体は、例えば、水であってもよいし、水と不凍液の混合物であってもよい。蓄熱媒体は、冷却されることによって包接水和物が生成される蓄熱媒体であってもよい。
【0149】
利用側ファン(51)は、槽(32)に空気を供給すると共に、槽(32)で加熱された空気を温調対象空間へ搬送する。利用側ファン(51)は、例えばシロッコファンであってもよい。
【0150】
-空気調和装置の動作-
次に、空気調和装置(10)の動作について説明する。空気調和装置(10)は、加熱動作と温蓄熱動作とを互いに異なる時間帯に実行する。いずれの動作をどの時間帯に実行するかは、制御部(25)によって決定される。例えば、空気調和装置(10)は、昼間に加熱動作を実行する一方、夜間に温蓄熱動作を実行することが考えられる。加熱動作は、温調動作の一例であり、温蓄熱動作は、蓄熱動作の一例である。
【0151】
〈加熱動作〉
加熱動作は、第1動作と第2動作とを含む。制御部(25)は、第1動作と第2動作とを選択的に実行する。
【0152】
第1動作は、熱源側ユニット(20)を停止した状態で利用側ファン(51)を駆動することにより、少なくとも温調対象空間の空気を加熱する動作である。制御部(25)は、第1動作において、熱源側ユニット(20)の圧縮機(21)および熱源側ファン(24)を停止する。制御部(25)は、第1動作において、利用側ユニット(30)の利用側ファン(51)を駆動または停止する。
【0153】
第1動作では、前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、および左プレート(40)を介して、蓄熱媒体から少なくとも温調対象空間の空気へ熱が移動する。これにより、少なくとも温調対象空間の空気が加熱される。なお、温調対象空間の空気に加えて、温調対象空間にある温調対象物が加熱されてもよい。温調対象物は、例えば人体であってもよい。
【0154】
利用側ファン(51)が駆動される場合、温調対象空間の空気の加熱は、当該利用側ファン(51)によって促進される。利用側ファン(51)は、基台(31)の吹出口(31a)から上方に向かって風を送る。この風により、槽(32)の周囲で加熱された空気が温調対象空間で広がる。
【0155】
利用側ファン(51)が停止される場合、空気調和装置(10)の消費電力が実質的にゼロになる。なぜなら、空気調和装置(10)において電力を消費する構成要素(具体的には、圧縮機(21)、熱源側ファン(24)、および利用側ファン(51))が停止されるためである。
【0156】
第2動作は、熱源側ユニット(20)を動作させた状態で利用側ファン(51)を駆動することにより、蓄熱媒体に温熱を蓄えると共に少なくとも温調対象空間の空気を加熱する動作である。制御部(25)は、第2動作において、熱源側ユニット(20)の圧縮機(21)および熱源側ファン(24)を駆動する。制御部(25)は、第2動作において、利用側ユニット(30)の利用側ファン(51)を駆動する。
【0157】
第2動作において、圧縮機(21)は、高圧のガス冷媒を吐出する。圧縮機(21)が吐出した高圧のガス冷媒は、槽(32)に設けられた伝熱管(46)に流入する。槽(32)では、伝熱管(46)内を流れるガス冷媒から蓄熱媒体へ熱が移動する。これにより、槽(32)内の蓄熱媒体に温熱が蓄えられる。槽(32)から流出した冷媒は、膨張弁(23)により減圧された後、熱交換器(22)に流入する。熱交換器(22)では、熱源側ファン(24)によって供給された空気から、内部を流れる冷媒へ熱が移動する。これにより、冷媒が加熱される。熱交換器(22)から流出した冷媒は、圧縮機(21)に吸入される。このようなサイクルを繰り返すことで、第2動作では、熱源側ユニット(20)が槽(32)内の蓄熱媒体に熱を与える。
【0158】
〈温蓄熱動作〉
温蓄熱動作は、熱源側ユニット(20)を動作させた状態で利用側ファン(51)を停止することにより、蓄熱媒体に温熱を蓄える動作である。制御部(25)は、温蓄熱動作において、熱源側ユニット(20)の圧縮機(21)および熱源側ファン(24)を駆動する。制御部(25)は、温蓄熱動作において、利用側ユニット(30)の利用側ファン(51)を停止する。
【0159】
温蓄熱動作では、加熱動作の第2動作と同様にして、槽(32)内の蓄熱媒体に温熱が蓄えられる。
【0160】
-実施形態4の効果-
本実施形態の空気調和装置(10)によっても、上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0161】
また、本実施形態の空気調和装置(10)は、上記伝熱部(35,37,39,40)が、上記温調対象空間の空気と、上記温熱を蓄えた蓄熱媒体とを熱交換させる加熱動作を行うように構成されている。したがって、温熱を蓄えた蓄熱媒体は、温調対象空間に露出した伝熱部(35,37,39,40)を介して、温調対象空間の空気に熱を与える。温調対象空間の空気は、温度が上がる。
【0162】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0163】
例えば、槽(32)の各プレート(35,37,39~42,44)は、これらのうち任意のものの少なくとも一部が温調対象空間に露出していればよい。この場合、当該露出する部分が、伝熱部を構成する。非限定的な例として、槽(32)が壁面に埋め込まれ、槽(32)の前プレート(35)のみが温調対象空間に露出しているものが考えられる。
【0164】
例えば、槽(32)は、全体が透明な材料よりも熱伝導率が高い材料で構成されていてもよい。当該材料は、例えばステンレス、アルミニウム、銅、チタン、ガラス、大理石、セラミックなどの無機系の材料であるが、これらに限定されるものではない。
【0165】
例えば、槽(32)は、前プレート(35)、後プレート(37)、右プレート(39)、左プレート(40)、上プレート(41)、および底プレート(42)のうち一部が透明な材料で構成され、かつ残部が透明な材料よりも熱伝導率が高い材料で構成されていてもよい。
【0166】
例えば、槽(32)は、各プレート(35,37,39~42,44)のうち任意のものが、透明な材料で構成された第1板状部材と、多数の貫通孔が形成され、透明な材料よりも熱伝導率が高い材料で構成された第2板状部材とを重ね合わせて構成されていてもよい。
【0167】
例えば、利用側ユニット(30)は、槽(32)内の蓄熱媒体が流れる水伝熱管が内蔵された冷却板を備えてもよい。この場合、冷却板は、透明な材料よりも熱伝導率が高い材料、例えば石材や金属材料などの無機系の材料で構成されていることが好ましい。
【0168】
例えば、伝熱管(46)の直線部(47)は、左右方向に延びていてもよい。この場合、光源(50)を槽(32)の右側部および左側部の少なくとも一方に設けることが好ましい。ここで、槽(32)の「右側部」および「左側部」には、槽(32)の内部空間と、槽(32)の外部空間との両方が含まれる。より具体的に、槽(32)の「右側部」には、槽(32)の内部空間のうち当該槽(32)の右側面付近の領域と、槽(32)の外部空間のうち当該槽(32)の右側面付近の領域との両方が含まれる。槽(32)の「左側部」には、槽(32)の内部空間のうち当該槽(32)の左側面付近の領域と、槽(32)の外部空間のうち当該槽(32)の左側面付近の領域との両方が含まれる。
【0169】
例えば、利用側ユニット(30)は、形状または大きさが互いに異なる複数の槽(32)を備えていてもよい。
【0170】
例えば、利用側ユニット(30)は、利用側ファン(51)を備えていなくてもよい。
【0171】
例えば、槽(32)の形状、伝熱管(46)の形状、可視部(33)の形状および配置、ならびに伝熱促進部(34)の形状および配置は、任意に設計されてもよい。
【0172】
例えば、熱源側ユニット(20)は、利用側ユニット(30)の基台(31)内に収容されていてもよい。
【0173】
例えば、制御部(25)は、利用側ユニット(30)に設けられていてもよいし、熱源側ユニット(20)および利用側ユニット(30)の両方に設けられていてもよい。
【0174】
例えば、空気調和装置(10)は、冷却動作および加熱動作の両方を実行できるように構成されていてもよい。この場合、冷媒回路(11)に、例えば四方切換弁が設けられる。
【0175】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0176】
以上説明したように、本開示は、空気調和装置について有用である。
【符号の説明】
【0177】
10 空気調和装置
20 熱源側ユニット(熱源)
25 制御部
32 槽
33 可視部
34 伝熱促進部
35 前プレート(伝熱部)
37 後プレート(伝熱部)
39 右プレート(伝熱部)
40 左プレート(伝熱部)
41 上プレート(伝熱部)
44 側面プレート(伝熱部)
45 窓プレート(伝熱部)
46 伝熱管
47 直線部(第2管部)
48 上側U字部(第2管部)
49 下側U字部(第1管部)
50 光源
51 利用側ファン(ファン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11