(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】校正機能付pH検出器、pH測定装置及びpH測定装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/38 20060101AFI20221221BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20221221BHJP
G01N 27/403 20060101ALI20221221BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20221221BHJP
G01N 27/27 20060101ALI20221221BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G01N27/38 311
G01N27/26 371B
G01N27/26 381A
G01N27/403 371A
G01N27/28 341A
G01N27/27 B
G01N27/416 353Z
(21)【出願番号】P 2019032939
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 浩
(72)【発明者】
【氏名】森川 範広
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-25754(JP,U)
【文献】特開2006-322736(JP,A)
【文献】特開昭57-132053(JP,A)
【文献】特開平6-242058(JP,A)
【文献】特開平7-260736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液に浸漬されるpH複合電極と、前記pH複合電極を上昇させて空気中に保持した状態とした後、下降させて試料液に浸漬した状態に戻す昇降装置と、内面が円柱状とされ、前記pH複合電極が空気中に保持された状態において、前記pH複合電極を包囲する筒状の洗浄校正槽と、標準液及び洗浄水を噴射する噴射装置とを備える校正機能付pH検出器であって、
前記噴射装置は、前記pH複合電極が空気中に保持された状態において、前記pH複合電極に向けて標準液を噴射する噴出孔又はノズルを有していると共に、前記pH複合電極が空気中に保持された状態において、洗浄水を前記pH複合電極に向けて斜め下方から噴射する噴出孔又はノズル、及び洗浄水を前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射する噴出孔又はノズルを有し、
前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射する噴出孔又はノズルは、噴出させた洗浄水が前記洗浄校正槽内を旋回しながら上昇した後、前記pH複合電極の側面を洗い流しながら流下するように形成されていることを特徴とする校正機能付pH検出器。
【請求項2】
さらに、前記pH複合電極を保護する保護板を備え、前記pH複合電極及び前記保護板は、互いの相対的位置を一定に保った状態で、前記昇降装置によって、共に昇降するようになっており、
前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射する噴出孔又はノズルは、噴出させた洗浄水が前記保護板に衝突してから、前記洗浄校正槽内を旋回しながら上昇するようになっている、請求項1に記載の校正機能付pH検出器。
【請求項3】
前記pH複合電極は、電極本体と、前記電極本体の下端面から少なくとも一部が突出するように設けられたガラス電極ボディ、比較電極ボディ及び温度センサと、前記ガラス電極ボディの下端面から突出して設けられたガラス膜と、前記比較電極ボディの下端面から露出するように設けられた液絡部を有する、請求項1又は2に記載の校正機能付pH検出器。
【請求項4】
前記ガラス電極ボディは前記ガラス膜と共に前記電極本体に着脱自在とされており、前記比較電極ボディは前記液絡部と共に前記電極本体に着脱自在とされている、請求項3に記載の校正機能付pH検出器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の校正機能付pH検出器と、前記校正機能付pH検出器における前記pH複合電極で得られる電位差及び温度が入力される指示変換装置とを備えることを特徴とするpH測定装置。
【請求項6】
試料液に浸漬されるpH複合電極と、前記pH複合電極を上昇させて空気中に保持した状態とした後、下降させて試料液に浸漬した状態に戻す昇降装置と、内面が円柱状とされ、前記pH複合電極が空気中に保持された状態において、前記pH複合電極を包囲する筒状の洗浄校正槽と、前記pH複合電極で得られる電位差及び温度情報が入力される指示変換装置を備えるpH測定装置の校正方法であって、
前記pH複合電極を空気中に保持した状態として、洗浄水を前記pH複合電極に向けて斜め下方から噴射すると共に、洗浄水を前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射することにより、前記洗浄校正槽内を旋回させながら上昇させた後、前記pH複合電極の側面を洗い流すように流下させ、
その後、前記pH複合電極を空気中に保持した状態のまま、前記pH複合電極に向けて標準液を噴射して、前記pH複合電極から得られる電位差及び温度を、前記指示変換装置が検量線情報として取得することを特徴とするpH測定装置の校正方法。
【請求項7】
前記pH測定装置は、さらに、前記pH複合電極を保護する保護板を備え、前記pH複合電極及び前記保護板は、互いの相対的位置を一定に保った状態で、前記昇降装置によって、共に昇降するようになっており、
洗浄水を前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射する際、噴出させた洗浄水を前記保護板に衝突させてから、前記洗浄校正槽内を旋回させながら上昇させる、請求項6に記載のpH測定装置の校正方法。
【請求項8】
前記pH複合電極は、電極本体と、前記電極本体の下端面から少なくとも一部が突出するように設けられたガラス電極ボディ、比較電極ボディ及び温度センサと、前記ガラス電極ボディの下端面から突出して設けられたガラス膜と、前記比較電極ボディの下端面から露出するように設けられた液絡部を有する、請求項6又は7に記載のpH測定装置の校正方法。
【請求項9】
前記ガラス電極ボディは前記ガラス膜と共に前記電極本体に着脱自在とされており、前記比較電極ボディは前記液絡部と共に前記電極本体に着脱自在とされている、請求項8に記載のpH測定装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、校正機能付pH検出器、pH測定装置及びpH測定装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、標準液による校正を自動化した工業用pH計が用いられている。このような校正機能付pH計では、電極を、試料液が混入しない状態で標準液に接触させる必要があり、種々の手法が採用されている。
例えば、特許文献1では、試料液から引き上げて空気中に保持した電極に向けて標準液を噴射して、電極を校正する方法が提案されている。
特許文献1の方法は、電極を試料液から引き上げるだけで標準液校正が可能であり、装置構造やシーケンス動作を非常に簡易なものとすることができる。
【0003】
特許文献1の方法には、直径15mm程度の電極本体の下端面に、ガラス電極のガラス膜と比較電極の液絡部等が各々露出して配置されたpH複合電極が使用されてきた。
一方、消耗品であるガラス電極と比較電極とをチップ化して交換可能としたpH複合電極も知られている(特許文献2)。
特許文献2のようなチップ化したpH複合電極の場合、電極本体の直径は25~35mm程度と大きめとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-322736号公報
【文献】特開平7-260736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
標準液による校正は、pH複合電極から得られる電位差が安定してから検量線情報として取得しなければならない。しかし、特許文献2のような電極本体の直径が大きいpH複合電極の場合、特許文献1の方法で標準液校正を行おうとすると電位差が安定するまでに非常に時間がかかる場合があり、欠測時間(測定できない時間)が長くなるなどの不都合が生じていた。
特に測定対象である試料液がpH測定装置を設置する環境温度よりも高い場合、とりわけ、pH測定装置内に収容された標準液や洗浄水と試料液との温度差が30℃以上である場合には、電位差が安定するまでに長い時間を要し、場合によっては、正確な標準液校正を行うことが困難となることもあった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、チップ化したpH複合電極のように電極本体の直径が大きい場合にも、正確な標準液校正を迅速に行うことが可能な校正機能付pH検出器、pH測定装置及びpH測定装置の校正方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は、以下の構成を採用した。
[1]試料液に浸漬されるpH複合電極と、前記pH複合電極を上昇させて空気中に保持した状態とした後、下降させて試料液に浸漬した状態に戻す昇降装置と、内面が円柱状とされ、前記pH複合電極が空気中に保持された状態において、前記pH複合電極を包囲する筒状の洗浄校正槽と、標準液及び洗浄水を噴射する噴射装置とを備える校正機能付pH検出器であって、
前記噴射装置は、前記pH複合電極が空気中に保持された状態において、前記pH複合電極に向けて標準液を噴射する噴出孔又はノズルを有していると共に、前記pH複合電極が空気中に保持された状態において、洗浄水を前記pH複合電極に向けて斜め下方から噴射する噴出孔又はノズル、及び洗浄水を前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射する噴出孔又はノズルを有し、
前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射する噴出孔又はノズルは、噴出させた洗浄水が前記洗浄校正槽内を旋回しながら上昇した後、前記pH複合電極の側面を洗い流しながら流下するように形成されていることを特徴とする校正機能付pH検出器。
[2]さらに、前記pH複合電極を保護する保護板を備え、前記pH複合電極及び前記保護板は、互いの相対的位置を一定に保った状態で、前記昇降装置によって、共に昇降するようになっており、
前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射する噴出孔又はノズルは、噴出させた洗浄水が前記保護板に衝突してから、前記洗浄校正槽内を旋回しながら上昇するようになっている、[1]に記載の校正機能付pH検出器。
[3]前記pH複合電極は、電極本体と、前記電極本体の下端面から少なくとも一部が突出するように設けられたガラス電極ボディ、比較電極ボディ及び温度センサと、前記ガラス電極ボディの下端面から突出して設けられたガラス膜と、前記比較電極ボディの下端面から露出するように設けられた液絡部を有する、[1]又は[2]に記載の校正機能付pH検出器。
[4]前記ガラス電極ボディは前記ガラス膜と共に前記電極本体に着脱自在とされており、前記比較電極ボディは前記液絡部と共に前記電極本体に着脱自在とされている、[3]に記載の校正機能付pH検出器。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の校正機能付pH検出器と、前記校正機能付pH検出器における前記pH複合電極で得られる電位差及び温度が入力される指示変換装置とを備えることを特徴とするpH測定装置。
[6]試料液に浸漬されるpH複合電極と、前記pH複合電極を上昇させて空気中に保持した状態とした後、下降させて試料液に浸漬した状態に戻す昇降装置と、内面が円柱状とされ、前記pH複合電極が空気中に保持された状態において、前記pH複合電極を包囲する筒状の洗浄校正槽と、前記pH複合電極で得られる電位差及び温度情報が入力される指示変換装置を備えるpH測定装置の校正方法であって、
前記pH複合電極を空気中に保持した状態として、洗浄水を前記pH複合電極に向けて斜め下方から噴射すると共に、洗浄水を前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射することにより、前記洗浄校正槽内を旋回させながら上昇させた後、前記pH複合電極の側面を洗い流すように流下させ、
その後、前記pH複合電極を空気中に保持した状態のまま、前記pH複合電極に向けて標準液を噴射して、前記pH複合電極から得られる電位差及び温度を、前記指示変換装置が検量線情報として取得することを特徴とするpH測定装置の校正方法。
[7]前記pH測定装置は、さらに、前記pH複合電極を保護する保護板を備え、前記pH複合電極及び前記保護板は、互いの相対的位置を一定に保った状態で、前記昇降装置によって、共に昇降するようになっており、
洗浄水を前記洗浄校正槽の内面に向けて斜め下方から噴射する際、噴出させた洗浄水を前記保護板に衝突させてから、前記洗浄校正槽内を旋回させながら上昇させる、[6]に記載のpH測定装置の校正方法。
[8]前記pH複合電極は、電極本体と、前記電極本体の下端面から少なくとも一部が突出するように設けられたガラス電極ボディ、比較電極ボディ及び温度センサと、前記ガラス電極ボディの下端面から突出して設けられたガラス膜と、前記比較電極ボディの下端面から露出するように設けられた液絡部を有する、[6]又は[7]に記載のpH測定装置の校正方法。
[9]前記ガラス電極ボディは前記ガラス膜と共に前記電極本体に着脱自在とされており、前記比較電極ボディは前記液絡部と共に前記電極本体に着脱自在とされている、[8]に記載のpH測定装置の校正方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、チップ化したpH複合電極のように電極本体の直径が大きい場合に迅速な標準液校正が困難である原因が、pH複合電極の電位差等に影響を与える温度が安定しないためであることを見いだした。
すなわち、電極本体の直径が大きいと全体の熱容量が大きいため、試料液からpH複合電極を引き上げた後、温度センサとガラス膜の温度が相違したり、標準液校正の途中で温度が変化したりする不都合が生じていることを見いだした。
【0009】
本発明の校正機能付pH検出器、pH測定装置及びpH測定装置の校正方法によれば、標準液校正に先立つ洗浄時に洗浄水を利用してpH複合電極を効率的に冷却できる。
そのため、電極本体の直径が大きい場合にも、標準液校正を行う際は、pH複合電極の温度が安定しており、正確な標準液校正を迅速に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る校正機能付pH検出器の全体構成図である。
【
図2】
図1のpH複合電極周辺を拡大した斜視図である。
【
図5】噴射装置の噴出部及び取付部と洗浄校正槽50との関係を示す図である。
【
図6】上昇時における標準液噴出孔とpH複合電極の主として上下の位置関係を説明する図である。
【
図7】上昇時における標準液噴出孔とpH複合電極30の主として水平方向の位置関係を説明する図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る校正機能付pH検出器の全体構成図である。
【
図10】pH複合電極に向けて標準液を噴射している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[校正機能付pH検出器]
図1に示すように、本実施形態の校正機能付pH検出器1は、pH複合電極30とpH複合電極30を昇降させる昇降装置45(要部のみ図示)と洗浄校正槽50と噴射装置70とで概略構成されている。校正機能付pH検出器1は、試料液Wの中に、そのまま浸漬させて使用されるものである。
なお、本明細書において、下端面とは、使用時において、周面の最も低い部分で囲まれた面を意味する。
【0012】
図1の例では、pH複合電極30は、電極ホルダ41の下端に取り付けられている。pH複合電極30のリード線43は電極ホルダ41の頂部から導出されており、図示を省略する指示変換装置に接続されるようになっている。また、電極ホルダ41の下端側には、pH複合電極30を保護する保護板42が固定されている。
洗浄校正槽50は、内面50bが円柱状とされた円筒状とされている。洗浄校正槽50は、pH複合電極30が昇降装置45により上昇して空気中に保持された状態において、pH複合電極30を包囲する位置に配置されている。
噴射装置70は洗浄校正槽50に取り付けられている。
【0013】
昇降装置45としては、例えば、エアシリンダーを用いることができる。昇降装置45は、試料液に浸漬した状態のpH複合電極30を上昇させて空気中に保持した状態とした後、下降させて試料液に浸漬した状態に戻すようになっている。
図1では、昇降装置45による下降時の状態を実線で、昇降装置45による上昇時の状態を破線で、各々示している。
【0014】
電極ホルダ41は、昇降装置45の把持部46により把持されており、昇降装置45により昇降するようになっている。そして、pH複合電極30及び保護板42は、互いの相対的位置を一定に保った状態で、昇降装置45が電極ホルダ41を昇降させるのに伴い、共に昇降するようになっている。
【0015】
図1に実線で示すように、下降時には、pH複合電極30が試料液Wの中に浸漬され、試料液WのpHに応じた電位差を発生すると共に、温度を測定するようになっている。
一方、上昇時には、pH複合電極30が洗浄校正槽50で囲まれた空気中に保持された状態となり、校正又は洗浄を行えるようになっている。
【0016】
図2に示すように、pH複合電極30は、電極本体31と、電極本体31の下端面31aから突出するように設けられたガラス電極ボディ11と比較電極ボディ21と、ガラス電極ボディ11の下端面11aから突出して設けられたガラス膜18と、比較電極ボディ21の下端面21aから露出するように設けられた液絡部28を有している。また、電極本体31の下端面31aには、温度センサ38が設けられている。
保護板42は、そのpH複合電極30側が、pH複合電極30の電極本体31の周面からほぼ等距離となるように、円弧状に形成されている。また、保護板42には、試料液の流通を妨げないよう、流通穴42aが形成されている。
【0017】
図3に示すように、本実施形態のpH複合電極30はチップ電極式である。すなわち、電極本体31にガラス電極チップ10と比較電極チップ20が、各々着脱自在に取り付けられ、さらに温度センサ38が取り付けられて構成されている。
電極本体31の直径は20~40mmであることが好ましく、25~35mmであることがより好ましい。電極本体31の直径が好ましい範囲の下限値以上であることにより、ガラス電極チップ10、比較電極チップ20、温度センサ38を電極本体31の下端面31aに無理なく配置できる。また、電極本体31の直径が好ましい範囲の上限値以下であることにより、校正機能付pH検出器1全体が過大とならない。
【0018】
電極本体31には、ガラス電極チップ10を下端側から挿入するためのガラス電極ボディ挿入孔32が形成されており、ガラス電極ボディ挿入孔32の下端付近には、図示を省略する雌ねじが形成されている。
また、電極本体31の下端側から突出する比較電極ボディ取付部33が設けられている。比較電極ボディ取付部33は、外側に雄ねじ35が設けられた筒状体である。また、電極本体31には、比較電極ボディ取付部33の内部と連通する内部液収容部34が設けられている。
【0019】
ガラス電極チップ10は、ガラス電極ボディ11と、ガラス電極ボディ11の下端面11aから垂下するように突出して設けられたガラス膜18とガラス電極ボディ11の上端側に設けられた電極端子14を有している。ガラス電極ボディ11とガラス膜18と電極端子14とは、何れも水平断面が何れの箇所においても略円形で、互いに同軸とされている。
なお、ガラス膜18はガラス管19の下端に設けられている。ガラス管19は、ガラス電極ボディ11にほぼ全体が収納され、下端付近のわずかな部分のみが、ガラス電極ボディ11の下端面11aから突出している。
【0020】
また、ガラス電極ボディ11は、電極本体31の下端面31aから突出する有底円筒状のつまみ部12と電極本体31のガラス電極ボディ挿入孔32に挿入される内挿部13とから構成されている。つまみ部12と内挿部13とは、何れも水平断面が何れの箇所においても略円形で、互いに同軸とされている。
つまみ部12の底部には、開口部12aが形成されており、下端にガラス膜18が設けられたガラス管19が、この開口部12aを液密に貫通している。
【0021】
内挿部13には雄ねじ15が設けられ、ガラス電極ボディ挿入孔32内に設けられた雌ねじと螺合するようになっている。また、内挿部13のつまみ部12側にはパッキン16か装着されている。つまみ部12の周面は、手でつまんで回しやすいように、周方向に凹凸が繰り返す凹凸面とされている。
すなわち、本実施形態では、ガラス電極チップ10の一部であるガラス電極ボディ11の内、つまみ部12の部分が電極本体31の下端面31aから突出しており、つまみ部12の下端面がガラス電極ボディ11の下端面11aとなっている。
【0022】
つまみ部12の直径は5~15mmであることが好ましく、8~15mmであることがより好ましい。
つまみ部12の直径が好ましい範囲の下限値以上であることにより、ガラス膜18を有するガラス電極チップ10を無理なく製造できる。また、電極本体31に対して着脱する際の取り扱いが容易である。
また、つまみ部12の直径が好ましい範囲の上限値以下であることにより、pH複合電極30全体が過大とならない。また、電極本体31に対して着脱する際の取り扱いが容易である。
【0023】
また、比較電極チップ20は有底円筒状の比較電極ボディ21と比較電極ボディ21の中心軸に沿って比較電極ボディ21の下端面21aを貫通するように設けられた液絡部28で構成されている。すなわち、液絡部28は、比較電極ボディ21の下端面21aから露出するように設けられている。
液絡部28の下端は、下端面21aと同一平面上にあっても、下端面21aの下方に多少突出していてもよい。
【0024】
比較電極ボディ21の周面は、手でつまんで回しやすいように、周方向に凹凸が繰り返す凹凸面とされている。また、比較電極ボディ21の内周面には、図示を書略する雌ねじが形成されており、比較電極ボディ取付部33に設けられた雄ねじ35と螺合するようになっている。
すなわち、本実施形態では、比較電極チップ20の一部である比較電極ボディ21の全体が電極本体31の下端面31aから突出している。
【0025】
比較電極ボディ21の直径は3~15mmであることが好ましく、8~15mmであることがより好ましい。
比較電極ボディ21の直径が好ましい範囲の下限値以上であることにより、比較電極ボディ21を有する比較電極チップ20を無理なく製造できる。また、電極本体31に対して着脱する際の取り扱いが容易である。
また、比較電極ボディ21の直径が好ましい範囲の上限値以下であることにより、pH複合電極30全体が過大とならない。また、電極本体31に対して着脱する際の取り扱いが容易である。
【0026】
図4は、噴射装置70を、洗浄校正槽50に取り付けられた際に洗浄校正槽50の内側となる方向から見た斜視図である。
図4に示すように、噴射装置70は、一体に形成された噴出部73及び取付部74と、取付部74に接続された第1標準液入口管71a、第2標準液入口管71b、洗浄水入口管72a及び洗浄薬液入口管72bとで概略構成されている。
図5に示すように、噴出部73及び取付部74は、噴出部73が洗浄校正槽50に形成された開口50aに噴出部73の
図4における手前側の表面(以下「内側表面」という場合がある。)が洗浄校正槽50の内面50bとほぼ連続する曲面となるようにはめ込まれ、取付部74が洗浄校正槽50の外周側に配置されるようにして洗浄校正槽50に取り付けられている。
【0027】
図4に示すように、第1標準液入口管71a及び第2標準液入口管71bは、取付部74の、
図4において左右両側となる位置に接続されている。第1標準液入口管71a、及び第2標準液入口管71bには、各々に異なる標準液、例えばpH7標準液とpH4標準液の送液管が接続されるようになっている。
洗浄水入口管72aは、取付部74の、
図4において右側背面となる位置に接続されている。洗浄水入口管72aには、洗浄水の送液管が接続されるようになっている。
洗浄薬液入口管72bは、取付部74の、
図4において左側背面となる位置に接続されている。洗浄薬液入口管72bには、洗浄薬液の送液管が接続されるようになっている。
【0028】
図5に示すように、取付部74の内部から噴出部73の内部にわたって、標準液噴出孔73a、第1洗浄水噴出孔73b、第2洗浄水噴出孔73c、及び洗浄薬液噴出孔73dが形成され、各々の終端は噴出部73の内側表面において開口している。
取付部74の内部には、標準液流路74aと洗浄水流路74bと洗浄薬液流路74cが形成されている。
【0029】
図6は、校正時(上昇時)における標準液噴出孔73aとpH複合電極30の上下の位置関係を説明する図であり、噴出部73及び取付部74については、標準液噴出孔73aを含む鉛直面における断面として示している。
図7は、校正時(上昇時)における標準液噴出孔73aとpH複合電極30の水平方向の位置関係を説明する図であり、標準液流路74aを通る水平断面から上方を見た図として示している。
【0030】
図5、
図6に示すように、標準液流路74aは略直線状かつ水平に形成されている。その両端には各々第1標準液入口管71a、第2標準液入口管71bが接続されるようになっている。
標準液噴出孔73aは、始端が標準液流路74aの途中に接続され、終端が噴出部73の内側表面に開口するように、取付部74の内部から噴出部73の内側表面にかけて形成されている。
【0031】
標準液噴出孔73aは、
図6に示すように、水平面に対して、θの角度を持って斜め下方から斜め上方に向かうように形成されている。また、
図6、
図7に示すように、標準液噴出孔73aは、斜め上方に向かう延長線上に比較電極ボディ21の下端面21aが位置するように形成されている。
すなわち、標準液は、第1標準液入口管71a又は第2標準液入口管71bから導入され、標準液流路74aを経由して、標準液噴出孔73aから噴出し、比較電極ボディ21の下端面21aに至るようになっている。
【0032】
図5、
図6に示すように、洗浄水流路74bは略直線状かつ水平に形成されている。その始端には洗浄水入口管72aが、終端には第1洗浄水噴出孔73b及び第2洗浄水噴出孔73cが接続されるようになっている。
第1洗浄水噴出孔73b及び第2洗浄水噴出孔73cは、各々の始端が洗浄水流路74bの終端に分岐状に接続され、各々の終端が噴出部73の内側表面に開口するように、取付部74の内部から噴出部73の内側表面にかけて形成されている。
【0033】
第1洗浄水噴出孔73bは、
図6に示すように、斜め下方から斜め上方に向かうように形成されている。また、第1洗浄水噴出孔73bは、斜め上方に向かう延長線上にpH複合電極30の下端のほぼ中央が位置するように、好ましくは、ガラス電極ボディ11の下端面11aと比較電極ボディ21の下端面21aの間隙が位置するように、形成されている。
すなわち、洗浄水入口管72aから導入された洗浄水の一部は、洗浄水流路74bを経由して、第1洗浄水噴出孔73bから噴出し、pH複合電極30の下端のほぼ中央、好ましくは、ガラス電極ボディ11の下端面11aと比較電極ボディ21の下端面21aの間隙に至るようになっている。
【0034】
第2洗浄水噴出孔73cも、斜め下方から斜め上方に向かうように形成されており、
図4、
図5に示すように、その終端は、第1洗浄水噴出孔73bの図示右側とされている。
その結果、第2洗浄水噴出孔73cは、斜め上方に向かう延長線上に洗浄校正槽50の内面50bが位置するようになっている。
すなわち、洗浄水入口管72aから導入された洗浄水の一部は、洗浄水流路74bを経由して、第2洗浄水噴出孔73cから噴出し、洗浄校正槽50の内面50bに斜め下方から至り、内面50bの内側を旋回しながら上昇した後、pH複合電極30の側面を流下するようになっている。
【0035】
第2洗浄水噴出孔73cは、水平面に対して、30゜以上の角度で斜め上方に向かうように形成されることが好ましく、40~60゜の角度で斜め上方に向かうように形成されることがより好ましい。
第2洗浄水噴出孔73cが、水平面に対して好ましい角度で形成されることにより、洗浄水を、内面50bの内側を旋回しながら適度な高さまで上昇させた後に、流下させることができる。
【0036】
また、洗浄校正槽50の内面50bと電極本体31の外周との距離は、5~25mmであることが好ましく、5~15mmであることがより好ましい。内面50bと電極本体31の外周との距離が好ましい値であることにより、内面50bの内側を旋回しながら上昇し、その後流下する洗浄水により、pH複合電極30を充分に冷却すると共に洗浄をすることができる。
【0037】
保護板42は、第2洗浄水噴出孔73cから噴出された洗浄水が衝突する位置に配置されることが好ましい。その場合、洗浄水の軌道を保護板42で修正してから、内面50bの内側を旋回させることができる。
本実施形態の場合、保護板42は、その電極本体31側の凹面に、第2洗浄水噴出孔73cから噴出された洗浄水が衝突するように配置されることが好ましい。
保護板42の位置が適切でなく、例えば保護板42の洗浄校正槽50側の凸面に、第2洗浄水噴出孔73cから噴出された洗浄水が衝突するようになっている場合は、保護板42を適切な位置まで回転させてから固定し直すことにより、容易に適切な位置に調整できる。
【0038】
保護板42に洗浄水を衝突させる場合、保護板42の電極本体31側と電極本体31の外周との距離は、5~15mmであることが好ましく、5~10mmであることがより好ましい。保護板42の電極本体31側と電極本体31の外周との距離が好ましい値であることにより、装置全体の大きさを過大とすることなく、旋回しながら上昇し、その後流下する洗浄水により、pH複合電極30を充分に冷却し、かつ洗浄をすることができる。
【0039】
洗浄薬液流路74cは、
図5に示すように略直線状かつ水平に形成されている。その始端には洗浄薬液入口管72bが、終端には洗浄薬液噴出孔73dが接続されるようになっている。
洗浄薬液噴出孔73dは、始端が洗浄薬液流路の終端に接続され、終端が噴出部73の内側表面に開口するように、取付部74の内部から噴出部73の内側表面にかけて形成されている。
【0040】
洗浄薬液噴出孔73dも、第1洗浄水噴出孔73bと同様に、斜め下方から斜め上方に向かうように形成されている。また、洗浄薬液噴出孔73dも、第1洗浄水噴出孔73bと同様に、斜め上方に向かう延長線上にpH複合電極30の下端のほぼ中央が位置するように、好ましくは、ガラス電極ボディ11の下端面11aと比較電極ボディ21の下端面21aの間隙が位置するように、形成されている。
すなわち、洗浄薬液は、洗浄薬液入口管72bから導入され、洗浄薬液流路74cを経由して、洗浄薬液噴出孔73dから噴出し、pH複合電極30の下端のほぼ中央、好ましくは、ガラス電極ボディ11の下端面11aと比較電極ボディ21の下端面21aの間隙に至るようになっている。
【0041】
本実施形態では、標準液噴出孔73aから比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に向けて、水平ではなく斜めに標準液を噴射することにより、昇降装置45により上昇したpH複合電極30の高さ位置が多少ずれても、比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に向けて標準液を噴射できるようになっている。
また、斜め上方からではなく、比較電極ボディ21のガラス電極ボディ11と反対側に向けて斜め下方から標準液を噴射することにより、比較電極ボディ21に達した標準液が、そのまま比較電極ボディ21から落下してしまうことなく、ガラス電極ボディ11側に移れるようになっている。
標準液噴出孔73aから、比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に向けて噴射する角度θは、水平面に対して60°以下が好ましく、15~45°がより好ましい。例えば30°とすることができる。
【0042】
図6に示すように、本実施形態では、比較電極ボディ21の下端面21aとガラス電極ボディ11の下端面11aとは同じ高さとされている。比較電極ボディ21の下端面21aはガラス電極ボディ11の下端面11aよりやや上であってもよい。
比較電極ボディ21の下端面21aが、ガラス電極ボディ11の下端面11aと同じ高さか、同じ高さよりやや上となることにより、比較電極ボディ21に達した標準液が、ガラス電極ボディ11側に移り、その後ガラス膜18に達することが可能となっている。
【0043】
ガラス電極ボディ11の下端面11aと比較電極ボディ21の下端面21aとの高低差は10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。同じ高さであることが特に好ましい。ガラス電極ボディ11の下端面11aと比較電極ボディ21の下端面21aの高低差が小さいことにより、比較電極ボディ21とガラス膜18との間の標準液が途切れにくくなる。
【0044】
図7に示すように、標準液噴出孔73aは、ガラス電極ボディ11のつまみ部12と比較電極ボディ21の双方と交差する鉛直面に沿って、比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に向けてガラス電極ボディ11と反対側から標準液を噴射できるように形成されている。
比較電極ボディ21に斜め下方向から達した標準液は、落下する際にも真下ではなく斜め下方向に落下するため、比較電極ボディ21からガラス電極ボディ11側に移れるようになっている。
【0045】
標準液噴出孔73aは、ガラス膜18と液絡部28の双方と交差する鉛直面に沿って、例えば
図6の矢印m又は矢印nを含む
図6紙面と直交する方向に沿って、比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に向けてガラス電極ボディ11と反対側から標準液を噴射できるように形成されていることが好ましい。
これにより、標準液が液絡部28とガラス膜18の双方を濡らしながら通過しやすくなる。
【0046】
pH複合電極30は、通常ガラス電極ボディ11と比較電極ボディ21の双方の中心軸を鉛直方向として使用される。この場合、標準液噴出孔73aは、ガラス電極ボディ11と比較電極ボディ21の双方の中心軸を含む鉛直面に沿って、すなわち、
図6の矢印kを含む
図7の紙面と直交する方向に沿って、噴射できるように形成されていることが特に好ましい。
なお、この場合、ガラス電極ボディ11と比較電極ボディ21の双方の中心軸を含む面は鉛直面である。
【0047】
図7に示すように、ガラス電極ボディ11と比較電極ボディ21とは近接して配置されている。具体的には、ガラス電極ボディ11の下端面11aと比較電極ボディ21の下端面21aとの間隙に標準液の液滴を保持可能な程度に近接して配置されている。
具体的にどの程度近ければ液滴を保持できるか否かは、ガラス電極ボディ11と比較電極ボディ21の各々の直径、側面の凹凸形状、側面の疎水性、親水性の程度にもよるが、下端面11aと下端面21aとが最も近接した部分の間隙dは3mm以下であることが好ましく、1~2mmであることがより好ましい。
【0048】
図8は、他の実施形態に係る校正機能付pH検出器2である。
図8において、
図1と同一の構成部材については、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。校正機能付pH検出器2は、流通セル60に取り付けられて使用されるものである。
校正機能付pH検出器2の洗浄校正槽50は、内面50bが円柱状とされた円筒状の槽本体51と槽本体51の下端側に取り付けられた槽側フランジ52とで構成されている。
流通セル60は流入口61aと流出口61bとを有するセル本体61と、セル本体61上端側に設けられたセル側フランジ62とで構成されている。
洗浄校正槽50は槽側フランジ52をセル側フランジ62に固定することにより、流通セル60と液密に接合されている。
【0049】
図8に示すように、下降時には、pH複合電極30が流通セル60内に挿入され、流入口61aから流出口61bへと流通セル60内を流通する試料液の中に浸漬され、試料液のpHに応じた電位差を発生すると共に、温度を測定するようになっている。
一方上昇時には、pH複合電極30が洗浄校正槽50で囲まれた空気中に保持された状態となり、校正又は洗浄を行えるようになっている。
【0050】
校正時(上昇時)には、洗浄校正槽50内に試料液が入り込まないようにする必要がある。また、セル本体61内への試料液に、洗浄水や標準液が混入することを避けるべき場合もある。また、試料液の流速が速い場合などは、風圧で液滴が振動して不安定となることを避ける必要がある。
このような問題に対処する方法としては、セル本体61内への試料液の流入流出を止める方法、洗浄校正槽50と流通セル60内とを遮断する遮蔽物を用いる方法、これらの方法の併用が挙げられる。
遮蔽物を用いる方法としては、例えば、特開平9-21777号に記載の方法、特開2007-101419号に記載の方法が挙げられる。
その他は、pH複合電極30の構成、校正時(上昇時)における噴射装置70とpH複合電極30と洗浄校正槽50の位置関係を含めて、校正機能付pH検出器1と同様である。
【0051】
上記各実施形態では、電極本体31に対して着脱自在なガラス電極チップ10と比較電極チップ20とを用いた構成としたが、ガラス電極ボディと比較電極ボディとは、各々電極本体31に固定されていてもよい。
また、薬液を噴出するための洗浄薬液噴出孔73d、洗浄薬液入口管72b、及び洗浄薬液流路74cは省略してもよい。
また、標準液噴出孔73aは複数設けて、pH複合電極30の複数箇所に噴射できるようにしてもよい。
また、第2洗浄水噴出孔73cを複数設けて、洗浄水が、直接洗浄校正槽50の内面50bに向かうと共に、別途の洗浄水が、保護板42に衝突してから、洗浄校正槽50の内面50bに向かうようにしてもよい。
また、各実施形態では、標準液及び洗浄水を噴射するために、噴出部73において開口する噴出孔を用いたが、噴出孔ではなく、噴出ノズルを使用してもよい。
【0052】
[pH測定装置]
本実施形態のpH測定装置は、本発明の校正機能付pH検出器と図示を省略する指示変換装置を備えている。校正機能付pH検出器としては、例えば、上記校正機能付pH検出器1又は校正機能付pH検出器2を使用できる。
指示変換装置は、pH複合電極30から入力される電位差を温度補償した上でpHに変換するようになっている。また、校正時に、pH複合電極30から入力される電位差及び温度を取得して、電位差をpHに変換するために必要な検量線情報を得るようになっている。
指示変換装置は、本発明の校正機能付pH検出器における昇降装置45や噴射装置70等を制御する制御部を備えていることが好ましい。
【0053】
本実施形態のpH測定装置は、常時は測定モードとされており、予め決められたスケジュールに従い、又は、使用者による操作に従い、校正モードに切り替えられるようになっている。また、予め決められたスケジュールに従い、又は、使用者による操作に従い、洗浄モードに切り替えられるようになっていてもよい。
【0054】
測定モードでは、測定対象である試料液のpHに応じてpH複合電極30から得られる電位差及び温度を連続的に取得し、得られる電位差を校正モードで取得した検量線情報に基づきpHに変換するようになっている。
電位差をpHに変換するにあたっては、通常温度センサ38で取得した温度情報に基づく温度補償が行われる。
【0055】
また、校正モードでは、pH複合電極30を洗浄した後、pH複合電極から得られる電位差とpHとの関係を示す検量線情報を修正ないしは作成すべく、標準液のpHに応じてpH複合電極から得られる電位差及び温度を検量線情報として取得する標準液校正を行うようになっている。
なお、洗浄モードではpH複合電極30の洗浄を行うが、標準液校正は行わない。
【0056】
校正モード及び洗浄モードでは、昇降装置45で電極ホルダ41を上昇させ、pH複合電極30を洗浄校正槽50で囲まれた空気中に保持した状態で、pH複合電極30の洗浄を行う。
洗浄は、まず、第1洗浄水噴出孔73b、第2洗浄水噴出孔73cから洗浄水を噴出させて洗浄水による洗浄を行う。その後、洗浄薬液噴出孔73dから薬液を噴出させて薬液による洗浄を行い、次いで第1洗浄水噴出孔73b、第2洗浄水噴出孔73cから洗浄水を噴出させて洗浄水による洗浄を行う。なお、薬液による洗浄は省略して、洗浄水のみで洗浄してもよい。
また、校正モードでは、必要に応じて、標準液校正を行った後に、pH複合電極30を空気中に保持したまま、再度pH複合電極30の洗浄を行ってもよい。なお、標準液校正を行った後の洗浄においては、薬液による洗浄は行わず、洗浄水のみによる洗浄を行うことが好ましい。
【0057】
図9に示すように、第1洗浄水噴出孔73bから噴出された洗浄水の噴射流W1は、pH複合電極30の下端側、好ましくは、ガラス電極ボディ11の下端面11aと比較電極ボディ21の下端面21aの間隙付近にあたるので、間隙周辺にあるガラス膜18、液絡部28等を洗浄できる。また、測定対象である試料液が高温であっても、ガラス膜18、液絡部28等を速やかに常温付近まで冷却することができる。
【0058】
一方、第2洗浄水噴出孔73cから噴出された洗浄水の噴射流W2は、洗浄校正槽50の内面50bにあたり、洗浄校正槽50内を旋回しながら上昇した後、pH複合電極30の側面を洗い流すように流下する。
また、噴射流W2を洗浄校正槽50の内面50bに向かう途中で保護板42に衝突させた場合には、保護板42によって、噴射流W2の軌道は、旋回により適した軌道に修正される。洗浄校正槽50の内面50bとの距離は、昇降時等に変動する可能性があるが、pH複合電極30と保護板42は、pH複合電極30と常に一定の相対的位置を保っている。そのため、保護板42に衝突させることによって、より精密な噴射流W2の軌道制御が可能となる。
【0059】
第2洗浄水噴出孔73cから噴出された洗浄水がpH複合電極30の側面を洗い流すように流下することにより、測定対象である試料液が高温であっても、電極本体31を速やかに常温付近まで冷却することができる。そのため、電極本体31に挿入されているガラス電極チップ10全体、電極本体31の内部液収容部34に収容された内部液、及び温度センサ38等の温度も早期に安定しやすい。
また、洗浄水が洗浄校正槽全体に行き渡り、保護板42や洗浄校正槽50の汚れを落す副次的効果も得られる。
【0060】
噴射流W1の線速度は、5~20m/秒であることが好ましく、10~20m/秒であることがより好ましい。噴射流S2の線速度が好ましい下限値以上であれば、第1洗浄水噴出孔73bから、ガラス膜18や液絡部28に洗浄水を到達させやすい。
噴射流W1の線速度が好ましい上限値以下であれば、ガラス膜18等が水圧で破損することを防止できる。
【0061】
噴射流W1の流量は、3~8L/分であることが好ましく、5~8L/分であることがより好ましい。噴射流S2の流量が好ましい下限値以上であれば、ガラス膜18及び液絡部28の洗浄効果及び冷却効果が高くなる。
噴射流W1の流量が好ましい上限値以下であれば、ガラス膜18等が水圧で破損することを防止できる。
【0062】
噴射流W2の線速度は、5~20m/秒であることが好ましく、10~20m/秒であることがより好ましい。噴射流W2の線速度が好ましい下限値以上であれば、充分上の方まで噴射流W2を旋回させ、流下する際に冷却可能な電極本体31の範囲を充分にとりやすい。
噴射流W2の線速度が好ましい上限値以下であれば、洗浄校正槽50の上方から洗浄水が飛散して、無駄に消費されにくくなる。
【0063】
噴射流W2の流量は、3~8L/分であることが好ましく、5~8L/分であることがより好ましい。噴射流W2の流量が好ましい下限値以上であれば、電極本体31を充分に冷却できる。
噴射流W2の流量が好ましい上限値以下であれば、洗浄水が無駄に消費されにくくなる。
【0064】
校正モードにおいて、pH複合電極30を洗浄した後には、pH複合電極30を洗浄校正槽50で囲まれた空気中に保持した状態を維持したまま、洗浄水に代えて、標準液の噴射を行い、標準液校正を行う。
本実施形態の校正方法では、標準液校正に先立ち、噴射流W1及び噴射流W2で迅速にpH複合電極30を冷却できるので、標準液校正を行う際は、pH複合電極30の温度も安定している。そのため、正確な標準液校正を迅速に行うことが可能である。
【0065】
通常、標準液校正は、2点校正として行われる。すなわち、第1標準液入口管71aから導入される第1標準液(例えばpH7標準液)をpH複合電極30に噴射して検量線情報を取得した後、第2標準液入口管71bから導入される第2標準液(例えばpH4標準液)をpH複合電極30に噴射して検量線情報を取得する2液校正が行われる。しかし、本発明の校正方法は2点校正に限定されず、1種類の標準液のみを用いた1点校正であってもよい。
【0066】
何れの標準液を用いる場合にも、標準液は、標準液噴出孔73aから噴出させる。すると、
図8に示すように、噴射流S1が比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に到達し、液絡部28を覆いながら、図示右側に移動し、比較電極ボディ21の下端面21aとガラス電極ボディ11の下端面11aとの間に液滴S2が形成される。噴射が継続され液滴S2が成長すると、その一部は、ガラス膜18の側面に沿って流れ落ちて滴端S3となる。噴射が継続され滴端S3が成長すると落下するが、液滴S2に標準液を一時的に蓄えることで、噴射が継続されている間、ガラス膜18表面に途切れることなく安定して標準液を供給できる。その結果、液絡部28からガラス膜18までを、標準液が連続して覆った状態とすることができる。また、液滴S2に標準液を一時的に蓄えることで、噴射が中断されても、短時間の中断であれば、液絡部28からガラス膜18までを、標準液が連続して覆った状態を維持できる。
【0067】
この間、噴射流S1と液滴S2との間は、液絡部28を覆う標準液で電気的な導通状態が保たれ、液滴S2と滴端S3との間も、ガラス膜18の側面を覆う標準液で電気的な導通状態が保たれている。
そのため、ガラス膜18と液絡部28とが、標準液を介して電気的な導通状態となるため、標準液によってpH複合電極30から得られる電位差を検量線情報として指示変換装置が取得することにより、標準液校正を行うことができる。
【0068】
噴射流S1の線速度は、1.5~2.5m/秒であることが好ましく、1.7~2m/秒であることがより好ましい。噴射流S1の線速度が好ましい下限値以上であれば、標準液噴出孔73aから、比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に標準液を到達させやすい。
噴射流S1の線速度が好ましい上限値以下であれば、標準液の使用量を抑制することができる。
【0069】
噴射流S1の流量は、70~150mL/分であることが好ましく、80~120mL/分であることがより好ましい。噴射流S1の流量が好ましい下限値以上であれば、標準液噴出孔73aから、比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に標準液を到達させやすい。
噴射流S1の流量が好ましい上限値以下であれば、標準液の使用量を抑制することができる。
【0070】
取得した電位差については、通常温度センサ38で取得した温度情報に基づく温度補償が行われる。また、標準液のpHも温度により変化するので、取得した電位差と関係づける標準液のpHについても、温度センサ38で取得した温度情報に基づき、適切な値とすることが好ましい。
【0071】
なお、本実施形態の標準液校正は、比較電極ボディ21の下端面21aの周縁近傍に供給する噴射流S1のみで、ガラス膜18と液絡部28の間の電気的導通を得る方法としたが、本発明における洗浄後の標準液校正の具体的方法に特に限定はない。
例えば、ガラス膜18に向かう噴射流と液絡部28に向かう噴射流を同時に供給し、両噴射流が接続することにより、ガラス膜18と液絡部28の間の電気的導通を得るようにしてもよい。
【0072】
また、試料液の温度が変動する場合には、洗浄開始直前の試料液温度に基づき、洗浄時間を変えるシーケンスを組み込んでもよい。すなわち、洗浄開始直前の試料液温度が、標準液の温度よりかなり高い場合には洗浄水による洗浄時間を長くし、洗浄開始直前の試料液温度が、標準液の温度に近い場合は洗浄水による洗浄時間を短くするようなシーケンスを組み込んでもよい。これにより、pH複合電極30の冷却を効率的に行なうことができる。
【符号の説明】
【0073】
1…校正機能付pH検出器、2…校正機能付pH検出器、
10…ガラス電極チップ、11…ガラス電極ボディ、11a…下端面、12…つまみ部、13…内挿部、14…電極端子、18…ガラス膜、
20…比較電極チップ、21…比較電極ボディ、21a…下端面、28…液絡部、
30…pH複合電極、31…電極本体、38…温度センサ、42…保護板、
45…昇降装置、50…洗浄校正槽、60…流通セル、70…噴射装置、73…噴出部、
73a…標準液噴出孔、73b…第1洗浄水噴出孔、73c…第2洗浄水噴出孔、
73d…洗浄薬液噴出孔