(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】無線タグシステム及び無線タグ
(51)【国際特許分類】
H04B 5/02 20060101AFI20221221BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20221221BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H04B5/02
H04B1/59
G06K19/07 230
(21)【出願番号】P 2021022361
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2022-04-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「電波資源拡大のための研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】三次 仁
(72)【発明者】
【氏名】坂部 遥輝
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-135581(JP,A)
【文献】PEBAY-PEYROULA, Florian et al.,A true full-duplex communication between HF contactless reader and card,2011 IEEE International Conference on RFID-Technologies and Applications,IEEE,2011年09月15日,pages 473-478
【文献】CHAN, Pak et al.,Full duplex reflection amplifier tag,IET Microwaves, Antennas & Propagation [online],www.ietdl.org,2013年04月01日,Vol.7, Issue 6,pages 415 - 420,[検索日2021.03.30], インターネット<URL:https://doi.org/10.1049/iet-map.2012.0441>
【文献】LIU, Wanchun et al.,Full-Duplex Backscatter Interference Networks Based on Time-Hopping Spread Spectrum,IEEE Transactions on Wireless Communications,IEEE,2017年04月27日,Vol.17, Issue.7,pages 4361 - 4377
【文献】SEIRAN Khaledian et al.,Two-Way Backscatter Communication Tag Using a Reflection Amplifier ,IEEE Microwave and Wireless Components Letters,IEEE,2019年05月24日,Vol.29, Issue 6,pages 421 - 423
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/02
H04B 1/59
G06K 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグ通信装置と、
前記無線タグ通信装置に対してバックスキャッタ方式
且つサブキャリア方式にて応答信号を送信するパッシブ型の無線タグと、
を備える無線タグシステムであって、
前記無線タグは、
アンテナと、
前記アンテナに接続されて、前記応答信号を送信する際にON/OFF制御されるRFスイッチと、
前記RFスイッチに対して所定の制御信号を出力することで前記応答信号が前記アンテナを介して送信されるように前記RFスイッチをON/OFF制御する制御回路と、
前記アンテナ及び前記RFスイッチを介して前記無線タグ通信装置から所定のコマンドとして受信した受信電波から信号成分を検波する検波回路と、
前記検波回路によって検波された前記信号成分を、前記所定の制御信号によって前記RFスイッチがON状態に制御されるタイミング
のみでサンプリングするサンプリング回路と、
を備え、
前記ON状態の時間間隔は、前記受信電波の転送レートに対して十分に短くなるように設定され、
前記制御回路は、前記サンプリング回路のサンプリング結果に応じて前記所定のコマンドを識別することを特徴とする無線タグシステム。
【請求項2】
無線タグ通信装置に対してバックスキャッタ方式
且つサブキャリア方式にて応答信号を送信するパッシブ型の無線タグであって、
アンテナと、
前記アンテナに接続されて、前記応答信号を送信する際にON/OFF制御されるRFスイッチと、
前記RFスイッチに対して所定の制御信号を出力することで前記応答信号が前記アンテナを介して送信されるように前記RFスイッチをON/OFF制御する制御回路と、
前記アンテナ及び前記RFスイッチを介して前記無線タグ通信装置から所定のコマンドとして受信した電波から信号成分を検波する検波回路と、
前記検波回路によって検波された前記信号成分を、前記所定の制御信号によって前記RFスイッチがON状態に制御されるタイミング
のみでサンプリングするサンプリング回路と、
を備え、
前記ON状態の時間間隔は、前記受信電波の転送レートに対して十分に短くなるように設定され、
前記制御回路は、前記サンプリング回路のサンプリング結果に応じて前記所定のコマンドを識別することを特徴とする無線タグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグシステム及び無線タグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RFタグなどの無線タグと無線タグリーダや無線タグリーダライタなどの無線タグ通信装置とが双方向無線通信を実施する無線タグシステムにおいて、パッシブ型の無線タグは、無線タグ通信装置から受信した無変調波から動作電力を得ることで、内部電源無しで動作するように構成されている。このように構成されるパッシブ型の無線タグでは、無線タグ通信装置に応答信号を送信する方式として、無線タグ通信装置からの無変調波に対して、RFスイッチ(タグ変復調回路)のON状態(整合状態)とOFF状態(オープン状態あるいはショート状態)とを繰り返すことで上記無変調波から離調した位置に反射成分を配置させるバックスキャッタ方式且つサブキャリア方式を採用することができる。
【0003】
このようなバックスキャッタ方式且つサブキャリア方式を採用する無線タグシステムに関する技術として、例えば、下記非特許文献1に開示される無線タグシステムが知られている。この無線タグシステムでは、無線タグ通信装置から無線タグ方向をダウンリンク、無線タグから無線タグ通信装置方向をアップリンク(リターンリンク)とするとき、サブキャリア方式を用いることで、アップリンク周波数をダウンリンク周波数から周波数的に離調させ、アップリンク周波数成分を無線タグ内のアナログローパスフィルタ(LPF)で抑圧することで、アップリンク伝送中にダウンリンクの受信を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】P.Chan and V.Fusco, “Full duplex reflection amplifier tag,” IET Microwaves, antennas & Propagation, vol. 7, no. 6, pp. 415-420, 2013. doi: 10.1049/iet-map.2012.0441
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、複数のパッシブ型無線タグにそれぞれセンサ機能を持たせて各無線タグからセンサデータ(検出結果)を順次受信するセンサデータストリーミングが採用されつつある。このようなセンサデータストリーミングでは、ストリーミングを開始した各無線タグの一部に対して、送信停止やリセット等を指示すべき状況等を想定することができる。
【0006】
しかしながら、バックスキャッタ方式の無線タグは、無線タグ通信装置への応答中にコマンドを受信しようとすると、RFスイッチのON/OFFの影響で復調した波形が変化してしまうため、受信したコマンドを識別できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、無線タグ通信装置への応答中であっても受信した所定のコマンドを識別可能なパッシブ型の無線タグの構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
無線タグ通信装置(10)と、
前記無線タグ通信装置に対してバックスキャッタ方式且つサブキャリア方式にて応答信号を送信するパッシブ型の無線タグ(20)と、
を備える無線タグシステム(1)であって、
前記無線タグは、
アンテナ(21)と、
前記アンテナに接続されて、前記応答信号を送信する際にON/OFF制御されるRFスイッチ(22)と、
前記RFスイッチに対して所定の制御信号を出力することで前記応答信号が前記アンテナを介して送信されるように前記RFスイッチをON/OFF制御する制御回路(28)と、
前記アンテナ及び前記RFスイッチを介して前記無線タグ通信装置から所定のコマンドとして受信した受信電波から信号成分を検波する検波回路(23)と、
前記検波回路によって検波された前記信号成分を、前記所定の制御信号によって前記RFスイッチがON状態に制御されるタイミングのみでサンプリングするサンプリング回路(26)と、
を備え、
前記ON状態の時間間隔は、前記受信電波の転送レートに対して十分に短くなるように設定され、
前記制御回路は、前記サンプリング回路のサンプリング結果に応じて前記所定のコマンドを識別することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
無線タグ通信装置(10)に対してバックスキャッタ方式且つサブキャリア方式にて応答信号を送信するパッシブ型の無線タグ(20)であって、
アンテナ(21)と、
前記アンテナに接続されて、前記応答信号を送信する際にON/OFF制御されるRFスイッチ(22)と、
前記RFスイッチに対して所定の制御信号を出力することで前記応答信号が前記アンテナを介して送信されるように前記RFスイッチをON/OFF制御する制御回路(28)と、
前記アンテナ及び前記RFスイッチを介して前記無線タグ通信装置から所定のコマンドとして受信した電波から信号成分を検波する検波回路(23)と、
前記検波回路によって検波された前記信号成分を、前記所定の制御信号によって前記RFスイッチがON状態に制御されるタイミングのみでサンプリングするサンプリング回路(26)と、
を備え、
前記ON状態の時間間隔は、前記受信電波の転送レートに対して十分に短くなるように設定され、
前記制御回路は、前記サンプリング回路のサンプリング結果に応じて前記所定のコマンドを識別することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1,2の発明では、無線タグの制御回路により、RFスイッチに対して所定の制御信号が出力されることで応答信号がアンテナを介して送信されるようにRFスイッチがON/OFF制御される。そして、アンテナ及びRFスイッチを介して無線タグ通信装置から所定のコマンドとして受信した受信電波から検波回路により信号成分が検波されると、この検波された信号成分が、上記所定の制御信号によってRFスイッチがON状態に制御されるタイミングのみでサンプリング回路によりサンプリングされる。応答信号はサブキャリア信号にデジタルデータを排他的論理和で重畳して生成されるため、RFスイッチのON/OFF状態は一定で繰り返すわけではない。その際、ON状態の時間間隔は、受信電波の転送レートに対して十分に短くなるように設定されており、制御回路によって、サンプリング回路のサンプリング結果に応じて上記所定のコマンドが識別される。
【0011】
このように、サンプリング回路にてサンプリングされた信号成分は、RFスイッチがON状態に制御されるタイミングのみでサンプリングされているため、サンプリング結果に応じて復調される波形がRFスイッチのON/OFFの影響で大きく変化することもない。このため、無線タグ通信装置から受信した所定のコマンドを上述のように復調される波形に基づいて十分正確に識別することができる。特に、ON状態の時間間隔は、受信電波の転送レートに対して十分に短くなるように設定されるため、受信電波における1つの値に対して複数個所でサンプリングされるので、サンプリング漏れを抑制することができる。したがって、無線タグ通信装置への応答中であっても受信したコマンドを識別可能なパッシブ型の無線タグを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る無線タグシステム及び無線タグの概要を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態における無線タグのステートモデルを示す説明図である。
【
図3】
図1の無線タグ通信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4(A)は、RFスイッチが常時ON状態に受信されるダウンリンク電波の受信波形を例示する図であり、
図4(B)は、
図4(A)の受信波形の周波数分布を示す図である。
【
図5】
図5(A)は、RFスイッチがON/OFF制御されている状態で受信されるダウンリンク電波の受信波形を例示する図であり、
図5(B)は、
図5(A)の受信波形の周波数分布を示す図である。
【
図6】RFスイッチのON/OFF制御とサンプリング回路によるサンプリングタイミングとの関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の無線タグシステム及び無線タグを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示す無線タグシステム1は、RFタグなどの無線タグ20と無線タグリーダや無線タグリーダライタなどの無線タグ通信装置10とが双方向無線通信を実施するためのシステムとして構成されている。具体的には、無線タグシステム1は、それぞれ所定のデータを検出するセンサ機能を備えた複数の無線タグ20を管理対象とし、各無線タグ20からそれぞれ送信されるセンサデータ(検出結果)を無線タグ通信装置10にて順次受信するセンサデータストリーミングを行うように構成されている。本実施形態では、無線タグ通信装置10から無線タグ20への無線通信方向をダウンリンク、無線タグ20から無線タグ通信装置10への無線通信方向をアップリンク(リターンリンク)ともいう。なお、
図1では、便宜上、管理対象となる複数の無線タグ20のうちの1つを機能ブロックによって図示している。
【0014】
本実施形態に係る無線タグ20は、パッシブ型の無線タグであって、無線タグ通信装置10から受信した無変調波から動作電力を得ることで、内部電源無しで動作するように構成されている。この無線タグ20では、無線タグ通信装置10に応答信号を送信する方式として、無線タグ通信装置10からの無変調波に対して、RFスイッチ22のON状態(整合状態)とOFF状態(オープン状態)とを繰り返すとともに、その繰り返しの整数倍の区間で送信すべきデジタル情報を排他的論理和によって重畳することで上記無変調波から離調した位置に反射成分を配置させるバックスキャッタ方式且つサブキャリア方式が採用されている。
【0015】
特に、本実施形態では、上述したセンサデータストリーミングを実現するため、無線タグ20は、
図2のステートモデルにて示すように、従来のステートモデルに対して、ストリームステートの導入とそのストリームステートでのストリーム開始及びストリーム停止とを実現可能に構成される。
【0016】
このため、無線タグ20は、
図1に示すように、アンテナ21と、RFスイッチ22と、検波回路23と、電源回路24と、アナログフィルタ25と、サンプリング回路26と、キュー27と、制御回路28と、メモリ29と、センサ回路30とを備えるように構成されている。
【0017】
RFスイッチ22は、アンテナ21に接続されてタグ変復調回路として機能するもので、応答信号を送信する際に制御回路28による制御によってON/OFF制御されることで、アンテナ反射率をON制御時に整合状態に切り替えてOFF制御時にオープン状態に切り替えるためのスイッチとして構成されている。整合状態では、無線タグ通信装置10からの電波エネルギーが検波回路23に効率良く伝達されるためにアップリンク電波を構成する反射が小さくなり、オープン状態では、アップリンク電波を構成する反射が大きくなるので、このような反射大小によってアップリンクのデジタル回線を実現することができる。オープン状態をショート状態で置き換える実装も可能であるが、その場合でも、整合状態との反射率の違いによってデジタル回線を実現する原理は同一である。
【0018】
検波回路23は、アンテナ21及びRFスイッチ22を介して受信したダウンリンク電波の包絡線検波によって搬送波成分を除去する回路として機能するように構成されている。
【0019】
電源回路24は、アンテナ21及びRFスイッチ22を介して無線タグ通信装置10から受信したダウンリンク電波(無変調波)を整流、平滑、昇圧して動作電力を生成し、制御回路28やセンサ回路30等に供給するように構成されている。
【0020】
アナログフィルタ25は、検波回路23によって搬送波成分が除去された電波からダウンリンク電波の信号成分だけを取り出すことで、不要帯域のノイズを除去するように構成されている。なお、後述するストリーミングステートでは、ダウンリンクの帯域幅をサブキャリア周波数より十分低くする必要があるため、制御回路28により制御されることで、ストリーミングステートとそれ以外のステートとでは異なる帯域のノイズを除去するようにフィルタを構成してもよい。
【0021】
サンプリング回路26は、制御回路28により制御されて、RFスイッチ22がON/OFF制御される際に、アナログフィルタ25によって取り出された信号成分を後述する所定のタイミングでサンプリング(間引き)する回路として機能するように構成されている。
【0022】
キュー27は、RFスイッチ22のON/OFFタイミングがアップリンクのデジタルデータ伝送速度によって生じる、サンプリング処理とデジタル処理との間での時間ずれを吸収する回路として機能するように構成されている。
【0023】
制御回路28は、無線タグ20のステートモデルを管理するための回路であって、キュー27を介して取得したダウンリンク電波の信号成分、すなわち、無線タグ通信装置10から受信した所定のコマンドに応じた処理を行うように構成されている。この制御回路28は、無線タグ通信装置10に対する応答信号としてアップリンク電波を送信する際に、その応答信号に応じて出力した所定の制御信号によってRFスイッチ22をON/OFF制御するように構成されている。
【0024】
特に、本実施形態に係る制御回路28では、アップリンク電波送信時にダウンリンク電波を受信可能とするため、すなわち、無線タグ通信装置10への応答中であってもこの無線タグ通信装置10から受信したコマンドを識別可能とするため、RFスイッチ22がON状態に制御されるタイミングに合わせてサンプリング回路26によりサンプリングされたデータを用いてダウンリンク電波の復調・復号を行う送受信処理がなされる。そして、サンプリング回路26でのサンプリング漏れを抑制するため、RFスイッチ22のON状態の時間間隔(ON/OFF間隔)は、ダウンリンク電波(受信電波)の転送レートに対して十分に短くなるように設定される。この送受信処理については後述する。
【0025】
メモリ29は、ROM,EEPROM等の各種半導体メモリによって構成されており、制御プログラムや無線タグ20を識別するための識別情報(タグID)、センサ回路30にて検出されたデータ、無線タグ20の用途に応じたデータなどが記憶されている。
【0026】
センサ回路30は、無線タグ20が設置された部位に関するひずみを検出するための回路であって、制御回路28により制御されて、検出結果となるセンサデータがメモリ29に記憶されるように構成されている。
【0027】
次に、各無線タグ20からセンサデータ(検出結果)を受信する無線タグ通信装置10の構成について、
図3を参照して説明する。
無線タグ通信装置10は、
図3に示すように、制御部11、記憶部12、通信処理部13、アンテナ14及び外部インタフェース15等を備えている。制御部11は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、半導体メモリ等からなる記憶部12とともに情報処理装置を構成している。
【0028】
通信処理部13は、
図3に示すように、送信回路13a、受信回路13b等を備えている。送信回路13aは、例えば、キャリア発振器、符号化部、変調部及び増幅器等によって構成されている。キャリア発振器は、所定周波数のキャリア(搬送波)を出力しており、符号化部は、制御部11に接続され、制御部11より出力される送信データを符号化して変調部に出力している。変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)及び符号化部からの送信データが入力されるものであり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。また、増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を設定された増幅率で増幅しており、その増幅信号がダウンリンク電波信号(送信信号)としてアンテナ14に出力されるようになっている。
【0029】
アンテナ14には、受信回路13bの入力端子が接続されており、アンテナ14によって受信された無線タグ20からの応答波に相当するアップリンク電波信号(受信信号)は、受信回路13bに入力されるようになっている。受信回路13bは、例えば、増幅器、復調部等によって構成されており、アンテナ14によって受信された信号を増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調している。更に、その復調された信号波形に相当する信号を受信データとして制御部11に出力している。
【0030】
外部インタフェース15は、管理サーバ等の外部機器との間でのデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部11と協働して通信処理を行う構成をなしている。
【0031】
次に、無線タグ通信装置10への応答中であっても受信したコマンドを識別可能とするために、制御回路28にてなされる送受信処理について説明する。
【0032】
バックスキャッタ方式の従来の無線タグは、無線タグ通信装置からの無変調波に対して、RFスイッチのON状態とOFF状態とを繰り返すことで生成したアップリンク電波を応答信号として送信する。このアップリンク電波の送信時にダウンリンク電波を受信しようとすると、RFスイッチのON/OFFの影響で復調した波形が変化してしまう。
【0033】
具体的には、例えば、常時ON状態に制御されたRFスイッチを介して受信したダウンリンク電波が
図4(A)に示すように復調される場合、そのダウンリンク電波をON/OFF制御されたRFスイッチを介して受信すると、
図5(A)に示すように、RFスイッチのON/OFFの影響のために復調した受信波形が
図4(A)の受信波形に対して変化する。
図5(A)の受信波形の周波数分布を示す
図5(B)と
図4(A)の受信波形の周波数分布を示す
図4(B)との比較結果から、RFスイッチのON/OFFの影響のために、サブキャリア周波数帯で鏡像ができていることがわかる。
【0034】
そこで、本実施形態では、制御回路28にてなされる送受信処理において、
図6に示すように、上記所定の制御信号に応じてRFスイッチ22がON状態(整合状態)に制御されるタイミングに合わせて、サンプリング回路26によるサンプリングが行われ(
図6の符号S参照)、このサンプリングされたデータ(サンプリング結果)をキュー27を用いて時間平滑化した後、ダウンリンク電波の復調・復号が行われる。
【0035】
このため、
図1に示すように、制御回路28からRFスイッチ22に対して出力された所定の制御信号と同等の信号がサンプリング回路26に入力されることで、サンプリング回路26では、この信号から認識されるRFスイッチ22のON状態のタイミングでアナログフィルタ25によって取り出された信号成分がサンプリング(間引き)される。
【0036】
このように、RFスイッチ22のON状態のタイミングで信号成分がサンプリングされるので、RFスイッチ22のON/OFF制御タイミングがアップリンクのデジタル信号に応じて時間的に前後されている間でも、そのON/OFF制御の影響を実質的に受けることなくダウンリンク電波の復調・復号を行うことができる。
【0037】
特に、本実施形態では、RFスイッチ22のON/OFF間隔(
図6の符号ΔT参照)は、ダウンリンク電波(受信電波)の転送レートに対して十分に短くなるように設定される。これにより、ダウンリンク電波における1つの値に対して複数個所でサンプリングされるため、サンプリング漏れが抑制される。
【0038】
このように構成されることで、各無線タグ20は、無線タグ通信装置10から所定のコマンドに応じてセンサデータをそれぞれ無線タグ通信装置10に送信するセンサデータストリーミングステートにおいて、上記送信中に無線タグ通信装置10から別のコマンドを受信することができる。例えば、無線タグ通信装置10によって、センサデータ送信中の各無線タグ20のうちの一部のみに対して送信停止指示のコマンドが送信されると、指示対象の無線タグ20では、RFスイッチ22がON状態に制御されるタイミングに合わせたサンプリング結果から上述した送信停止指示のコマンドを受信することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る無線タグシステム1では、無線タグ20の制御回路28により、RFスイッチ22に対して所定の制御信号が出力されることで応答信号がアンテナ21を介して送信されるようにRFスイッチ22がON/OFF制御される。そして、アンテナ21及びRFスイッチ22を介して無線タグ通信装置10から所定のコマンドとして受信した受信電波から検波回路23により信号成分が検波されると、この検波された信号成分が、上記所定の制御信号によってRFスイッチ22がON状態に制御されるタイミングに合わせてサンプリング回路26によりサンプリングされる。応答信号はサブキャリア信号にデジタルデータを排他的論理和で重畳して生成されるため、RFスイッチ22のON/OFF状態は一定で繰り返すわけではない。その際、ON状態の時間間隔は、受信電波の転送レートに対して十分に短くなるように設定されており、制御回路28によって、サンプリング回路26のサンプリング結果に応じて上記所定のコマンドが識別される。
【0040】
このように、サンプリング回路26にてサンプリングされた信号成分は、RFスイッチ22がON状態に制御されるタイミングに合わせてサンプリングされているため、サンプリング結果に応じて復調される波形がRFスイッチ22のON/OFFの影響で大きく変化することもない。このため、無線タグ通信装置10から受信した所定のコマンドを上述のように復調される波形に基づいて十分正確に識別することができる。特に、ON状態の時間間隔は、受信電波の転送レートに対して十分に短くなるように設定されるため、受信電波における1つの値に対して複数個所でサンプリングされるので、サンプリング漏れを抑制することができる。したがって、無線タグ通信装置10への応答中であっても受信したコマンドを識別可能なパッシブ型の無線タグ20を実現することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)センサ回路30は、ひずみを検出するための回路として構成されることに限らず、例えば、温度を検出するための回路として構成されてもよい。また、各無線タグ20に設けられるセンサ回路30は、全てひずみを検出するための回路として構成されることに限らず、例えば、一部の無線タグ20に設けられるセンサ回路30がひずみを検出するための回路として構成され、残部の無線タグ20に設けられるセンサ回路30が温度を検出するための回路として構成されてもよい。
【0042】
(2)センサデータ送信中の無線タグ20に対して送信されるコマンドとして、上述した送信停止指示のコマンドが採用されることに限らず、例えば、無線タグ20自身の処理に関するモードを変更するためのコマンドであってもよいし、無線タグ20をリセットするためのコマンドであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…無線タグシステム
10…無線タグ通信装置
20…無線タグ
21…アンテナ
22…RFスイッチ
23…検波回路
24…電源回路
25…アナログフィルタ
26…サンプリング回路
27…キュー
28…制御回路
29…メモリ
30…センサ回路