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  • 特許-管継手および管継手の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】管継手および管継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/06 20060101AFI20221221BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20221221BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20221221BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20221221BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20221221BHJP
   F16L 11/06 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16L47/06
C08F214/18
B29C45/26
B29C45/00
B29C33/42
F16L11/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022027029
(22)【出願日】2022-02-24
(65)【公開番号】P2022132164
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2021031086
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 早登
(72)【発明者】
【氏名】井坂 忠晴
(72)【発明者】
【氏名】善家 佑美
(72)【発明者】
【氏名】山本 有香里
(72)【発明者】
【氏名】山口 安行
(72)【発明者】
【氏名】濱田 博之
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-238960(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056203(WO,A1)
【文献】特開平04-357398(JP,A)
【文献】特開2018-020468(JP,A)
【文献】特開2002-003514(JP,A)
【文献】特開2018-123882(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113864(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/032613(WO,A1)
【文献】特開2018-150967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
C08F 214/18
C08F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の中空部を備える管継手であって、
前記管継手の肉厚が最も大きい箇所の肉厚が、2~7mmであり、
前記中空部の軸方向の長さ(L)と、前記中空部の直径(D)との比率(L/D)が、5以下であり、
前記管継手が、テトラフルオロエチレン単位およびフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位を含有する共重合体を含有しており、
前記共重合体のフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.8~6.0質量%であり、前記共重合体の372℃におけるメルトフローレートが、4.0g/10分以上11.0g/10分未満であり、前記共重合体の官能基数が50個以下である
管継手。
【請求項2】
前記中空部の軸方向の長さ(L)が、20mm以上である請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記共重合体の前記フルオロ(アルキルビニルエーテル)単位が、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位である請求項1または2に記載の管継手。
【請求項4】
前記共重合体の前記フルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、3.5~5.5質量%である請求項1~3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
前記共重合体の372℃におけるメルトフローレートが、5.0~9.0g/10分である請求項1~4のいずれかに記載の管継手。
【請求項6】
前記共重合体の融点が、295~315℃である請求項1~5のいずれかに記載の管継手。
【請求項7】
射出成形体である請求項1~6のいずれかに記載の管継手。
【請求項8】
金型のキャビティ内に円柱状のコア材を挿入し、
前記金型のキャビティ内に射出成形機から溶融した共重合体を充填し、
溶融した前記共重合体を冷却して、固化させ、
前記コア材を管継手の軸方向に沿って引き抜くとともに、前記金型から前記管継手を取り出す管継手の製造方法であって、
前記コア材を引き抜くことにより形成される前記管継手の中空部の軸方向の長さ(L)と、前記中空部の直径(D)との比率(L/D)が、5以下であり、
前記管継手の肉厚が最も大きい箇所の肉厚が、2~7mmであり、
前記共重合体が、テトラフルオロエチレン単位およびフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位を含有する共重合体であり、
前記共重合体のフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.8~6.0質量%であり、前記共重合体の372℃におけるメルトフローレートが、4.0g/10分以上11.0g/10分未満であり、前記共重合体の官能基数が50個以下であ
管継手の製造方法。
【請求項9】
前記コア材の長さが、前記管継手の中空部の軸方向の長さ(L)と同一である請求項8に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管継手および管継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体により形成される管継手が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、共重合体(A)からなり、メルトフローレートが0.1~50g/10分である耐オゾン性物品用成形材料であって、上記共重合体(A)は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテルとからなる共重合体であり、パーフルオロビニルエーテル単位を3.5質量%以上含み、融点が295℃以上であり、不安定末端基が上記共重合体(A)中の炭素数1×10個あたり50個以下である耐オゾン性物品用成形材料を成形することにより、半導体製造装置用継ぎ手を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2003/048214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、肉厚および長さが大きい場合であっても、容易に製造することができ、中空部および外観のいずれもが美麗であり、高温高圧の流体に対する耐変形性に優れる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、円筒状の中空部を備える管継手であって、前記管継手の肉厚が最も大きい箇所の肉厚が、2~7mmであり、前記中空部の軸方向の長さ(L)と、前記中空部の直径(D)との比率(L/D)が、5以下であり、前記管継手が、テトラフルオロエチレン単位およびフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位を含有する共重合体を含有しており、前記共重合体のフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.8~6.0質量%であり、前記共重合体の372℃におけるメルトフローレートが、4.0g/10分以上11.0g/10分未満であり、前記共重合体の官能基数が50個以下である管継手が提供される。
【0007】
前記中空部の軸方向の長さ(L)が、20mm以上であることが好ましい。
前記共重合体の前記フルオロ(アルキルビニルエーテル)単位が、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位であることが好ましい。
前記共重合体の前記フルオロ(アルキルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、3.5~5.5質量%であることが好ましい。
前記共重合体の372℃におけるメルトフローレートが、5.0~9.0g/10分であることが好ましい。
前記共重合体の融点が、295~315℃であることが好ましい。
本開示の管継手は、射出成形体であることが好ましい。
【0008】
また、本開示の管継手の製造方法は、金型のキャビティ内に円柱状のコア材を挿入し、前記金型のキャビティ内に射出成形機から溶融した共重合体を充填し、溶融した前記共重合体を冷却して、固化させ、前記コア材を管継手の軸方向に沿って引き抜くとともに、前記金型から前記管継手を取り出す管継手の製造方法であって、前記コア材を引き抜くことにより形成される前記管継手の中空部の軸方向の長さ(L)と、前記中空部の直径(D)との比率(L/D)が、5以下であり、前記管継手の肉厚が最も大きい箇所の肉厚が、2~7mmである管継手の製造方法が提供される。
【0009】
前記コア材の長さが、前記管継手の中空部の軸方向の長さ(L)と同一であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、肉厚および長さが大きい場合であっても、容易に製造することができ、中空部および外観のいずれもが美麗であり、高温高圧の流体に対する耐変形性に優れる管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の管継手の一実施形態を示す平面図、断面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本開示の管継手は、円筒状の中空部を備えており、管継手の肉厚が最も大きい箇所の肉厚が、2~7mmである。
【0014】
このような肉厚の大きな管継手は、通常、中空部を形成するためのコア材を用いて、共重合体を射出成形することにより製造される。肉厚の大きな管継手を射出成形により製造しようとすると、ヒケ、ボイドなどの成形不良が発生しやすいことから、成形不良を抑制するために、保持圧力(2次圧力)を高くする必要がある。しかし、保持圧力を高くすると、バリという別の成形不良が発生したり、コア材の円滑な引き抜きが困難になり、中空部(管継手の内面)に傷がついたりする問題がある。一方で、これらの問題を解決しようとすると、コア材の引き抜き自体が困難になったり、荒れやフローマークなどの成形不良が発生したりする。
【0015】
また、管継手の肉厚を大きくするとともに、管継手の長さを大きくしようとすると、さらなる問題が生じる。すなわち、管継手の長さ(管継手の中空部の軸方向の長さ(L))を大きくする場合、コア材を引き抜く長さも大きくなり、コア材が引き抜きにくくなることから、管継手の径(管継手の中空部の直径(D)(管継手の内径))を大きくする必要がある。管継手の中空部の直径(D)が大きくなると、少しの割合で管継手が変形しただけでも、管継手の全体の形状が大きく変化してしまう。
【0016】
したがって、肉厚および長さが大きい場合であっても、中空部および外観のいずれもが美麗であり、高温高圧の流体に対する耐変形性に優れており、コア材を円滑に引き抜くことができることによって生産性にも優れる管継手が求められる。
【0017】
本開示の管継手は、円筒状の中空部を備えており、管継手の肉厚が最も大きい箇所の肉厚が、2~7mmであるとともに、中空部の軸方向の長さ(L)と、中空部の直径(D)との比率(L/D)が、5以下である。さらに、本開示の管継手は、テトラフルオロエチレン(TFE)単位およびフルオロ(アルキルビニルエーテル)(FAVE)単位を含有する共重合体を含有しており、該共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数が適切に調整されている。したがって、本開示の管継手は、肉厚および長さが大きい場合であっても、容易に製造することができ、中空部および外観のいずれもが美麗であり、高温高圧の流体に対する耐変形性に優れている。
【0018】
本開示の管継手の一実施形態を図1に示す。図1に示す管継手は、T型継手であり、肉厚(T)および直径(D)を有している。
【0019】
管継手の肉厚が最も大きい箇所の肉厚は、2~7mmであり、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは3mm以下である。本開示の管継手は、肉厚が比較的大きいことから、剛性および耐衝撃性に優れている。
【0020】
図1に示す管継手においては、肉厚が均一であるが、管継手の肉厚が最も大きい箇所の肉厚が2~7mmの範囲内となるように厚みを変化させてもよい。一実施形態においては、管継手の全体の肉厚を2~7mmの範囲内とすることもできる。管継手の全体の肉厚は、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは3mm以下である。
【0021】
図1に示す管継手は、軸方向の異なる2の中空部を有しており、2の中空部は、軸方向の長さも異なっている。本開示では、管継手が2以上の軸方向の異なる中空部を有する場合は、最も大きい長さを有する中空部の軸方向の長さを、「管継手の中空部の軸方向の長さ(L)」として定義する。
【0022】
本開示の管継手の中空部の軸方向の長さ(L)と、中空部の直径(D)との比率(L/D)は、5以下であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下であり、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは1以上である。比率(L/D)が大きすぎると、射出成形時にコア材が引き抜きにくくなり、高い生産性で管継手を製造することが困難となる。本開示の管継手は、高温高圧の流体に対する耐変形性に優れていることから、寸法が変化しにくい。したがって、長さ(L)に対して、比較的大きな直径(D)を有してるにもかかわらず、高温高圧の流体が流れた場合でも、配管と管継手の接続部分からの流体の漏洩を確実に防止することができる。
【0023】
本開示の管継手の中空部の軸方向の長さ(L)は、好ましくは20mm以上であり、より好ましくは25mm以上であり、さらに好ましくは30mm以上であり、特に好ましくは35mm以上であり、最も好ましくは40mm以上である。また、本開示の管継手の中空部の軸方向の長さ(L)は、好ましくは80mm以下であり、より好ましくは70mm以下であり、さらに好ましくは60mm以下であり、特に好ましくは50mm以下である。本開示の管継手は、長さを大きくした場合であっても、射出成形時にコア材を円滑に引き抜くことができ、高い生産性で製造することもできる。本開示の管継手は長さに大きな制約がないので、本開示の管継手を用いることによって、配管の設計自由度を高めることができる。
【0024】
本開示の管継手は、テトラフルオロエチレン(TFE)単位およびフルオロ(アルキルビニルエーテル)(FAVE)単位を含有する共重合体を含有する。この共重合体は、溶融加工性のフッ素樹脂である。溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
【0025】
上記FAVE単位を構成するFAVEとしては、一般式(1):
CF=CFO(CFCFYO)-(CFCFCFO)-Rf (1)
(式中、YはFまたはCFを表し、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0~5の整数を表し、qは0~5の整数を表す。)で表される単量体、および、一般式(2):
CFX=CXOCFOR (2)
(式中、Xは、同一または異なり、H、FまたはCFを表し、Rは、直鎖または分岐した、H、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1~2個含んでいてもよい炭素数が1~6のフルオロアルキル基、若しくは、H、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1~2個含んでいてもよい炭素数が5または6の環状フルオロアルキル基を表す。)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0026】
なかでも、上記FAVEとしては、一般式(1)で表される単量体が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PEVEおよびPPVEからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、PPVEが特に好ましい。
【0027】
共重合体のFAVE単位の含有量は、全単量体単位に対して、2.8~6.0質量%である。共重合体のFAVE単位の含有量は、より好ましくは3.0質量%以上であり、さらに好ましくは3.2質量%以上であり、尚さらに好ましくは3.3質量%以上であり、特に好ましく3.4質量%以上であり、最も好ましくは3.5質量%以上であり、より好ましくは5.8質量%以下であり、さらに好ましくは5.7質量%以下であり、尚さらに好ましくは5.6質量%以下であり、特に好ましくは5.5質量%以下である。共重合体のFAVE単位の含有量が多すぎると、射出成形時にバリが発生したり、コア材を引き抜く際に中空部(管継手の内面)に傷がついたりする。共重合体のFAVE単位の含有量が少なすぎると、コア材の引き抜き自体が困難になったり、高温高圧の流体に対する優れた耐変形性が得られなかったりする。
【0028】
共重合体のTFE単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは94.0~97.2質量%であり、より好ましくは94.2質量%以上であり、さらに好ましくは94.3質量%以上であり、尚さらに好ましくは94.4質量%以上であり、特に好ましくは94.5質量%以上であり、より好ましくは97.0質量%以下であり、さらに好ましくは96.8質量%以下であり、尚さらに好ましくは96.7質量%以下であり、特に好ましくは96.6質量%以下であり、最も好ましくは96.5質量%以下である。共重合体のTFE単位の含有量が少なすぎると、射出成形時にバリが発生したり、コア材を引き抜く際に中空部(管継手の内面)に傷がついたりするおそれがある。共重合体のTFE単位の含有量が多すぎると、コア材の引き抜き自体が困難になったり、高温高圧の流体に対する優れた耐変形性が得られなかったりするおそれがある。
【0029】
本開示において、共重合体中の各単量体単位の含有量は、19F-NMR法により測定する。
【0030】
共重合体は、TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位を含有することもできる。この場合、TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体単位の含有量は、共重合体の全単量体単位に対して、好ましくは0~3.2質量%であり、より好ましくは0.05~1.0質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.3質量%である。
【0031】
TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、CZ=CZ(CF(式中、Z、ZおよびZは、同一または異なって、HまたはFを表し、Zは、H、FまたはClを表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、および、CF=CF-OCH-Rf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。なかでも、HFPが好ましい。
【0032】
共重合体としては、TFE単位およびFAVE単位のみからなる共重合体、および、TFE/HFP/FAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFE単位およびFAVE単位のみからなる共重合体がより好ましい。
【0033】
共重合体のメルトフローレート(MFR)は、4.0g/10分以上、11.0g/10分未満である。共重合体のMFRは、好ましくは4.5g/10分以上であり、より好ましくは5.0g/10分以上であり、好ましくは10.5g/10分以下であり、より好ましくは10.0g/10分以下であり、さらに好ましくは9.5g/10分以下であり、特に好ましくは9.0g/10分以下である。共重合体のMFRが低すぎると、荒れやフローマークなどの成形不良が発生する。共重合体のMFRが高すぎると、バリが発生したり、コア材を引き抜く際に中空部(管継手の内面)に傷がついたりする。また、高温高圧の流体に対する優れた耐変形性を得ることができない。
【0034】
本開示において、共重合体の主鎖炭素数10個当たりの官能基数は、50個以下であり、好ましくは40個以下であり、より好ましくは30個以下であり、さらに好ましくは20個以下であり、尚さらに好ましくは15個以下であり、特に好ましくは10個以下であり、最も好ましくは6個未満である。共重合体の官能基数が多すぎると、荒れやフローマークなどの成形不良が発生し、また、高温高圧の流体に対する優れた耐変形性を得ることができない。
【0035】
上記官能基の種類の同定および官能基数の測定には、赤外分光分析法を用いることができる。
【0036】
官能基数については、具体的には、以下の方法で測定する。まず、上記共重合体をコールドプレスにより成形して、厚さ0.25~0.30mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、上記共重合体の赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、上記共重合体における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出する。
【0037】
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0038】
参考までに、いくつかの官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表1に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
【表1】
【0039】
-CHCFH、-CHCOF、-CHCOOH、-CHCOOCH、-CHCONHの吸収周波数は、それぞれ表中に示す、-CFH、-COF、-COOH freeと-COOH bonded、-COOCH、-CONHの吸収周波数から数十カイザー(cm-1)低くなる。
【0040】
たとえば、-COFの官能基数とは、-CFCOFに起因する吸収周波数1883cm-1の吸収ピークから求めた官能基数と、-CHCOFに起因する吸収周波数1840cm-1の吸収ピークから求めた官能基数との合計である。
【0041】
官能基は、共重合体の主鎖末端または側鎖末端に存在する官能基、および、主鎖中または側鎖中に存在する官能基である。官能基数は、-CF=CF、-CFH、-COF、-COOH、-COOCH、-CONHおよび-CHOHの合計数であってよい。
【0042】
上記官能基は、たとえば、共重合体を製造する際に用いた連鎖移動剤や重合開始剤によって、共重合体に導入される。たとえば、連鎖移動剤としてアルコールを使用する、あるいは重合開始剤として-CHOHの構造を有する過酸化物を使用した場合、共重合体の主鎖末端に-CHOHが導入される。また、官能基を有する単量体を重合することによって、上記官能基が共重合体の側鎖末端に導入される。
【0043】
このような官能基を有する共重合体を、フッ素化処理することによって、上記範囲内の官能基数を有する共重合体を得ることができる。すなわち、本開示の管継手に含まれる共重合体は、フッ素化処理されたものであることが好ましい。本開示の管継手に含まれる共重合体は、-CF末端基を有することも好ましい。
【0044】
共重合体の融点は、好ましくは295~315℃であり、より好ましくは300℃以上であり、さらに好ましくは301℃以上であり、特に好ましくは、302℃以上であり、より好ましくは310℃以下であり、さらに好ましくは305℃以下である。融点が上記範囲内にあることにより、管継手の肉厚および長さが大きい場合であっても、管継手を一層容易に製造することができ、管継手の中空部および外観のいずれもが一層美麗となり、管継手が高温高圧の流体に対する耐変形性に一層優れるものとなる。
【0045】
本開示において、融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて測定できる。
【0046】
本開示の管継手は、充填剤、可塑剤、加工助剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤、脱フッ化水素剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0047】
充填剤としては、たとえば、シリカ、カオリン、クレー、有機化クレー、タルク、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、架橋ポリスチレン、チタン酸カリウム、カーボン、チッ化ホウ素、カーボンナノチューブ、ガラス繊維等が挙げられる。導電剤としてはカーボンブラック等があげられる。可塑剤としては、ジオクチルフタル酸、ペンタエリスリトール等があげられる。加工助剤としては、カルナバワックス、スルホン化合物、低分子量ポリエチレン、フッ素系助剤等があげられる。脱フッ化水素剤としては有機オニウム、アミジン類等があげられる。
【0048】
上記その他の成分として、上記した共重合体以外のその他のポリマーを用いてもよい。その他のポリマーとしては、上記した共重合体以外のフッ素樹脂、フッ素ゴム、非フッ素化ポリマーなどが挙げられる。
【0049】
本開示の管継手が含有する共重合体は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合などの重合方法により、製造することができる。重合方法としては、乳化重合または懸濁重合が好ましい。これらの重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、共重合体の組成や量に応じて適宜設定することができる。
【0050】
重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0051】
油溶性ラジカル重合開始剤は公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえば、
ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類;
t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類;
ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類;
などが代表的なものとしてあげられる。
【0052】
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、[(RfCOO)-](Rfは、パーフルオロアルキル基、ω-ハイドロパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基)で表されるジアシルパーオキサイドが挙げられる。
【0053】
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、たとえば、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロプロピオニル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどが挙げられる。
【0054】
水溶性ラジカル重合開始剤は公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイドなどの有機過酸化物、t-ブチルパーマレート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0055】
重合においては、界面活性剤、連鎖移動剤、および、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0056】
界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、たとえば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4~20の直鎖または分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。界面活性剤の添加量(対重合水)は、好ましくは50~5000ppmである。
【0057】
連鎖移動剤としては、たとえば、エタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。連鎖移動剤の添加量は、用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01~20質量%の範囲で使用される。
【0058】
溶媒としては、水や、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
【0059】
懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;CFCFHCFHCFCFCF、CFHCFCFCFCFH、CFCFCFCFCFCFCFH等のハイドロフルオロアルカン類;CHOC、CHOCCFCFCHOCHF、CFCHFCFOCH、CHFCFOCHF、(CFCHCFOCH、CFCFCHOCHCHF、CFCHFCFOCHCF等のハイドロフルオロエーテル類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性および経済性の面から、水性媒体に対して10~100質量%が好ましい。
【0060】
重合温度としては特に限定されず、0~100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量および蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0~9.8MPaGであってよい。
【0061】
重合反応により共重合体を含む水性分散液が得られる場合は、水性分散液中に含まれる共重合体を凝析させ、洗浄し、乾燥することにより、共重合体を回収できる。また、重合反応により共重合体がスラリーとして得られる場合は、反応容器からスラリーを取り出し、洗浄し、乾燥することにより、共重合体を回収できる。乾燥することによりパウダーの形状で共重合体を回収できる。
【0062】
重合により得られた共重合体を、ペレットに成形してもよい。ペレットに成形する成形方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、単軸押出機、二軸押出機、タンデム押出機を用いて共重合体を溶融押出しし、所定長さに切断してペレット状に成形する方法などが挙げられる。溶融押出しする際の押出温度は、共重合体の溶融粘度や製造方法により変える必要があり、好ましくは共重合体の融点+20℃~共重合体の融点+140℃である。共重合体の切断方法は、特に限定は無く、ストランドカット方式、ホットカット方式、アンダーウオーターカット方式、シートカット方式などの従来公知の方法を採用できる。得られたペレットを、加熱することにより、ペレット中の揮発分を除去してもよい(脱気処理)。得られたペレットを、30~200℃の温水、100~200℃の水蒸気、または、40~200℃の温風と接触させて処理してもよい。
【0063】
重合により得られた共重合体を、フッ素化処理してもよい。フッ素化処理は、フッ素化処理されていない共重合体とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。フッ素化処理により、共重合体の-COOH、-COOCH、-CHOH、-COF、-CF=CF、-CONHなどの熱的に不安定な官能基、および、熱的に比較的安定な-CFHなどの官能基を、熱的に極めて安定な-CFに変換することができる。結果として、共重合体の-COOH、-COOCH、-CHOH、-COF、-CF=CF、-CONH、および、-CFHの合計数(官能基数)を容易に上述した範囲に調整できる。
【0064】
フッ素含有化合物としては特に限定されないが、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源が挙げられる。上記フッ素ラジカル源としては、Fガス、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、フッ化ハロゲン(たとえばIF、ClF)などが挙げられる。
【0065】
ガスなどのフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、安全性の面から不活性ガスと混合し、5~50質量%に希釈して使用することが好ましく、15~30質量%に希釈して使用することがより好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、経済的な面より窒素ガスが好ましい。
【0066】
フッ素化処理の条件は、特に限定されず、溶融させた状態の共重合体とフッ素含有化合物とを接触させてもよいが、通常、共重合体の融点以下、好ましくは20~240℃、より好ましくは100~220℃の温度下で行うことができる。上記フッ素化処理は、一般に1~30時間、好ましくは5~25時間行う。フッ素化処理は、フッ素化処理されていない共重合体をフッ素ガス(Fガス)と接触させるものが好ましい。
【0067】
本開示の管継手は、たとえば、金型のキャビティ内に円柱状のコア材を挿入し、金型のキャビティ内に射出成形機から溶融した共重合体を充填し、溶融した共重合体を冷却して、固化させ、コア材を管継手の軸方向に沿って引き抜くとともに、金型から管継手を取り出す方法により製造することができる。
【0068】
上記の製造方法は、FAVE単位の含有量、MFRおよび官能基数が適切に調整された共重合体を射出成形するものであることから、肉厚および長さが大きい管継手を製造する場合であっても、中空部に傷をつけることなく円滑にコア材を引き抜くことができ、荒れやフローマークなどの成形不良も観られない管継手を、高い生産性で製造することができる。しかも、得られる管継手(射出成形体)は、高温高圧の流体に対する耐変形性に優れている。
【0069】
上記の製造方法においては、管継手の中空部の軸方向の長さ(L)と同じ長さを有するコア材を用いることができる。コア材は、1本であってもよいし、複数本であってもよい。軸方向の長さ(L)が大きい中空部を形成する場合は、離型時に長さが大きいコア材を引き抜く必要が生じるが、上記の製造方法は、FAVE単位の含有量、MFRおよび官能基数が適切に調整された共重合体を射出成形するものであることから、中空部に傷をつけることなく円滑にコア材を引き抜くことができる。
【0070】
本開示の管継手は、中空部(管継手の内面)が円滑であり、耐薬品性および耐熱性
にも優れていることから、薬液を流通させるための配管として好適に利用できる。
【0071】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0072】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0074】
(単量体単位の含有量)
各単量体単位の含有量は、NMR分析装置(たとえば、ブルカーバイオスピン社製、AVANCE300 高温プローブ)により測定した。
【0075】
(メルトフローレート(MFR))
ASTM D1238に従って、メルトインデクサーG-01(東洋精機製作所社製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2.1mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を求めた。
【0076】
(融点)
示差走査熱量計(商品名:X-DSC7000、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、昇温速度10℃/分で200℃から350℃までの1度目の昇温を行い、続けて、冷却速度10℃/分で350℃から200℃まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で200℃から350℃までの2度目の昇温を行い、2度目の昇温過程で生ずる溶融曲線ピークから融点を求めた。
【0077】
(官能基数)
共重合体のペレットを、コールドプレスにより成形して、厚さ0.25~0.30mmのフィルムを作製した。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析装置〔FT-IR(Spectrum One、パーキンエルマー社製)〕により40回スキャンし、分析して赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得た。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って試料における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出した。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
参考までに、本開示における官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表2に示す。モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
【0078】
【表2】
【0079】
合成例1
174L容積のオートクレーブに純水51.8Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン40.9kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)0.54kg、メタノール5.10kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン(TFE)を0.64MPaまで圧入した後、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.051kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.020kg追加投入した。TFEの追加投入量が40.9kgに達したところで重合を終了させた。未反応のTFEを放出して、オートクレーブ内を大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して41.1kgの粉末を得た。
【0080】
得られた粉末を、スクリュー押出機(商品名:PCM46、池貝社製)により360℃にて溶融押出して、TFE/PPVE共重合体のペレットを得た。得られたペレットを用いて上記した方法によりPPVE含有量を測定した。
【0081】
得られたペレットを、真空振動式反応装置 VVD-30(大川原製作所社製)に入れ、210℃に昇温した。真空引き後、Nガスで20体積%に希釈したFガスを大気圧まで導入した。Fガス導入時から0.5時間後、いったん真空引きし、再度Fガスを導入した。さらにその0.5時間後、再度真空引きし、再度Fガスを導入した。以降、上記Fガス導入及び真空引きの操作を1時間に1回行い続け、210℃の温度下で10時間反応を行った。反応終了後、反応器内をNガスに十分に置換して、フッ素化反応を終了した。フッ素化したペレットを用いて、上記した方法により、各種物性を測定した。
【0082】
合成例2
PPVEを3.47kg、メタノールを3.28kg、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.026kg、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.071kg追加投入に変更し、乾燥粉末43.8kgを得た以外は、合成例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
【0083】
合成例3
PPVEを2.69kg、メタノールを0.10kg、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.026kg、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.057kg追加投入に変更し、乾燥粉末43.2kgを得た以外は、合成例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
【0084】
合成例4
PPVEを2.69kg、メタノールを2.48kg、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.057kg追加投入に変更し、乾燥粉末43.2kgを得た以外は、合成例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
【0085】
合成例5
PPVEを2.75kg、メタノールを0.88kg、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.058kg追加投入に変更し、乾燥粉末43.3kgを得た以外は、合成例1と同様にして、フッ素化していないペレットを得た。
【0086】
合成例6
PPVEを1.49kg、メタノールを1.65kg、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.036kg追加投入に変更し、乾燥粉末42.4kgを得た以外は、合成例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
【0087】
合成例7
PPVEを2.11kg、メタノールを1.28kg、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.047kg追加投入、真空振動式反応装置の昇温温度を170℃、反応を170℃の温度下で5時間に変更し、乾燥粉末42.8kgを得た以外は、合成例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
【0088】
合成例8
PPVEを2.75kg、メタノールを0.60kg、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.058kg追加投入に変更し、乾燥粉末43.3kgを得た以外は、合成例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
【0089】
合成例で得られたペレットを用いて、上記した方法により、各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
表3中の「<6」との記載は、官能基数が6個未満であることを意味する。
【0092】
上記で得られたペレットを用いて、以下の方法により、管継手を作製した。得られた管継手の評価を行った。結果を表4に示す。
【0093】
(管継手(1)の作製)(参照例)
射出成形機(住友重機械工業社製、SE50EV-A)を使用し、シリンダ温度を400℃、金型温度を220℃とし、射出速度を5mm/sとして、ペレットを射出成形することにより、円筒状射出成形体(内径Φ1.5cm(中空部の直径(D)=15mm)、外径Φ1.9cm、厚み2mm、管の軸方向長さ10.5cm(軸方向の長さ(L)=105mm))を作製した。可動側の金型に、取り外し可能な、直径Φ1.5cm、高さ10.5cmのコア材が取り付けてある。
【0094】
以下の基準により、離型性を評価した。
○:円筒状射出成形体をコア材から引き抜くことができた
×:円筒状射出成形体をコア材から引き抜くことができなかった
【0095】
(管継手(2)の作製)
射出成形機(住友重機械工業社製、SE50EV-A)を使用し、シリンダ温度を400℃、金型温度を220℃とし、射出速度を5mm/sとして、ペレットを射出成形することにより、円筒状射出成形体(内径Φ1.5cm(中空部の直径(D)=15mm)、外径Φ1.9cm、厚み2mm、管の軸方向長さ4.5cm(軸方向の長さ(L)=45mm))を作製した。キャビティには、可動側の金型に取り外し可能な、直径Φ1.5cm、高さ4.5cmのコアが取り付けてある。
【0096】
以下の評価には、管継手(2)を用いた。
【0097】
(外観評価(バリ))
管継手(2)の中空部の端部(コアと金型の界面となる部位)を目視で観察し、以下の基準により評価した。
○:バリが観られる
×:バリが観らない
【0098】
(外観評価(中空部))
管継手(2)の中空部(内面)を目視で観察し、以下の基準により評価した。
○:中空部に傷が観られない
×:中空部に傷が観られる
【0099】
(離型性評価)
上記した方法に従って、管継手(2)の作製を20回繰り返し、以下の基準により評価した。
○:全ての作製において、コア材を引き抜くことができた
×:1回以上の作製において、コア材を引き抜くことができないことがあった
【0100】
(外観評価(ゲート部))
管継手(2)の金型のゲート部に対応する継手の位置(図1に示す位置A)の周辺の内壁の荒れを目視で確認し、以下の基準により評価した。
○:表面荒れあり
×:表面荒れなし
【0101】
(外観評価(フローマーク))
管継手(2)の外観を以下の基準により評価した。
○:表面全体が平滑であり、成形体全体にフローマークも観られない
×:表面に荒れが観られたり、フローマークが観られたりする
【0102】
(引張クリープ試験)
日立ハイテクサイエンス社製TMA-7100を用いて引張クリープ歪を測定した。管継手(2)から幅1mm、長さ20mmのサンプルを作製した。サンプルを治具間距離10mmで測定治具に装着した。サンプルに対して、断面荷重が2.41N/mmになるように荷重を負荷し、240℃に放置し、試験開始後70分の時点から試験開始後300分の時点までのサンプルの長さの変位(mm)を測定し、初期のサンプル長(10mm)に対する長さの変位(mm)の割合(引張クリープ歪(%))を算出した。240℃、300分間の条件で測定する引張クリープ歪(%)が小さい射出成形体は、非常に高温の環境中で引張荷重が負荷されても伸びにくく、高温高圧の流体に対する耐変形性に優れている。
【0103】
【表4】
【0104】
肉厚が大きい管継手を作製しようとすると、ヒケ、ボイドなどの成形不良が発生しやすくなる。したがって、肉厚が大きい管継手を作製するためには、射出成形時の保持圧力(2次圧力)を高くする必要がある。表4の結果が示すとおり、射出成形時の保持圧力を高くすると、バリが発生したり、コア材を引き抜く際に中空部(管継手の内面)に傷がついたりする(比較例1および4)。一方で、これらの成形不良を解消しようとすると、コア材の引き抜き自体が困難になったり(比較例2)、荒れやフローマークなどの成形不良が発生したりする(比較例3および5)。
【0105】
また、中空部の直径(D)に対する中空部の軸方向の長さ(L)の比率が大きすぎると、コア材の引き抜きが困難になる(参照例)。したがって、中空部の軸方向の長さ(L)が大きい管継手を作製するためには、中空部の直径(D)を大きくする必要がある。中空部の直径(D)を大きくすると、少しの割合で管継手が変形しただけでも、管継手の全体の形状が大きく変化してしまうので、高温高圧の流体に対する優れた耐変形性が求められる。しかしながら、従来の管継手は、必ずしも十分な耐変形性を有していないという問題がある(比較例2、4および5)。
【0106】
これに対して、本開示の管継手は、その製造の際にコア材を円滑に引き抜くことができるので、製造が容易である(実験例1~3)。さらに、本開示の管継手は、肉厚および長さが大きい場合であっても、中空部および外観のいずれもが美麗であり、高温高圧の流体に対する優れた耐変形性を有している(実験例1~3)。
図1