(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】画像処理システムおよび画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20221221BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H04N1/387
G06T5/00 720
(21)【出願番号】P 2018247122
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】樫本 陽介
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-039525(JP,A)
【文献】特開2007-174037(JP,A)
【文献】特開平05-347698(JP,A)
【文献】特開2006-350680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/38 - 1/393
G06T 1/00 - 1/40
3/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マークが付与された画像としてのマーク付与画像から、前記マーク
の部分の画像と、前記マーク以外の記載部分の画像としての非マーク部分画像とを色に基づいて抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された、前記マーク
の部分の画像としての
色抽出マーク画像において前記マーク以外の記載部分によって生じた途切れを穴埋めした穴埋め済みマーク画像を、前記色抽出マーク画像と、前記非マーク部分画像とに基づいて、画像の膨張および収縮と、画像の論理和と、画像の論理積とを使用して生成する穴埋め済みマーク画像生成部と、
前記穴埋め済みマーク画像のうち、前記色抽出マーク画像の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、不要な領域が除去された前記マーク
の部分の画像としての不要領域除去済みマーク画像を生成する不要領域除去済みマーク画像生成部と
を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記画像抽出部は、前記非マーク部分画像として、罫線部分の画像としての罫線画像と、文字部分の画像としての文字画像とを抽出し、
前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記色抽出マーク画像と、前記罫線画像および前記文字画像のうち一方の画像との論理和の画像としての第1の論理和画像を生成し、
前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記色抽出マーク画像を、前記一方の画像に応じた量で膨張および収縮させた第1の膨張収縮済みマーク画像を生成し、
前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記第1の論理和画像と、前記第1の膨張収縮済みマーク画像との論理積の画像としての第1の穴埋め済みマーク画像を生成し、
前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記第1の穴埋め済みマーク画像と、前記罫線画像および前記文字画像のうち前記一方の画像ではない他方の画像との論理和の画像としての第2の論理和画像を生成し、
前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記第1の穴埋め済みマーク画像を、前記他方の画像に応じた量で膨張および収縮させた第2の膨張収縮済みマーク画像を生成し、
前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記第2の論理和画像と、前記第2の膨張収縮済みマーク画像との論理積の画像としての第2の穴埋め済みマーク画像を前記穴埋め済みマーク画像として生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
マークが付与された画像としてのマーク付与画像から、前記マーク
の部分の画像と、前記マーク以外の記載部分の画像としての非マーク部分画像とを色に基づいて抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部によって抽出された、前記マーク
の部分の画像としての
色抽出マーク画像において前記マーク以外の記載部分によって生じた途切れを穴埋めした穴埋め済みマーク画像を、前記色抽出マーク画像と、前記非マーク部分画像とに基づいて、画像の膨張および収縮と、画像の論理和と、画像の論理積とを使用して生成する穴埋め済みマーク画像生成部と、
前記穴埋め済みマーク画像のうち、前記色抽出マーク画像の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、不要な領域が除去された前記マーク
の部分の画像としての不要領域除去済みマーク画像を生成する不要領域除去済みマーク画像生成部と
をコンピューターに実現させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マークが付与されたマーク付与画像からマークを抽出する画像処理システムおよび画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マークが付与されたマーク付与画像からマークを抽出する画像処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
白色などの淡色の部分の上だけでなく黒色などの濃色の文字の上にも半透明のマークが付与されたマーク付与画像から、例えば色相、明度および彩度の少なくとも1つに基づいてマークが抽出される場合、マークのうち、濃色の文字の上に付与された部分が抽出されず、マークに途切れが生じることがある。
【0004】
特許文献1に記載された画像処理システムは、マークが付与された画像としてのマーク付与画像から、マーク部分の画像と、マーク以外の記載部分としての文字の画像とを抽出し、マーク部分の画像と、文字の画像との論理和の画像としての論理和画像を生成し、マーク部分の画像を、文字の画像に応じた量、すなわち、文字の幅に応じた量で膨張および収縮させた画像としての膨張収縮済みマーク画像を生成し、論理和画像と、膨張収縮済みマーク画像との論理積の画像としての穴埋め済みマーク画像を生成する。
【0005】
特許文献1に記載された画像処理システムは、マーク部分の画像を、文字の幅に応じた量で膨張および収縮させた画像を生成することによって、マークに生じる途切れを穴埋めすることができる。
【0006】
また、特許文献1に記載された画像処理システムは、マーク部分の画像と、文字の画像との論理和の画像としての論理和画像と、膨張収縮済みマーク画像との論理積の画像としての穴埋め済みマーク画像を生成するので、マーク付与画像においてマーク同士が近接している場合に、近接しているマーク同士の間の隙間を途切れとして穴埋めしたとしても、最終的に、近接しているマーク同士の間の隙間を適切に隙間として処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の特許文献1に記載された画像処理システムにおいては、マーク付与画像においてマーク同士が近接している場合に、近接しているマーク同士の間の隙間に文字が存在するとき、この文字が穴埋め済みマーク画像に含まれてしまう可能性があるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、マークが付与されたマーク付与画像からのマークの抽出の精度を向上することができる画像処理システムおよび画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像処理システムは、マークが付与された画像としてのマーク付与画像から、前記マーク部分の画像と、前記マーク以外の記載部分の画像としての非マーク部分画像とを色に基づいて抽出する画像抽出部と、前記画像抽出部によって抽出された、前記マーク部分の画像としての前記色抽出マーク画像において前記マーク以外の記載部分によって生じた途切れを穴埋めした穴埋め済みマーク画像を、前記色抽出マーク画像と、前記非マーク部分画像とに基づいて、画像の膨張および収縮と、画像の論理和と、画像の論理積とを使用して生成する穴埋め済みマーク画像生成部と、前記穴埋め済みマーク画像のうち、前記色抽出マーク画像の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、不要な領域が除去された前記マーク部分の画像としての不要領域除去済みマーク画像を生成する不要領域除去済みマーク画像生成部とを備えることを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明の画像処理システムは、穴埋め済みマーク画像のうち、色抽出マーク画像の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、不要な領域が除去されたマーク部分の画像としての不要領域除去済みマーク画像を生成するので、マーク付与画像においてマーク同士が近接している場合に、近接しているマーク同士の間の隙間に罫線や文字などの記載部分が存在するとき、この記載部分が不要領域除去済みマーク画像に含まれてしまう可能性を低減することができる。したがって、本発明の画像処理システムは、マーク付与画像からのマークの抽出の精度を向上することができる。
【0012】
本発明の画像処理システムにおいて、前記画像抽出部は、前記非マーク部分画像として、罫線部分の画像としての罫線画像と、文字部分の画像としての文字画像とを抽出し、前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記色抽出マーク画像と、前記罫線画像および前記文字画像のうち一方の画像との論理和の画像としての第1の論理和画像を生成し、前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記色抽出マーク画像を、前記一方の画像に応じた量で膨張および収縮させた第1の膨張収縮済みマーク画像を生成し、前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記第1の論理和画像と、前記第1の膨張収縮済みマーク画像との論理積の画像としての第1の穴埋め済みマーク画像を生成し、前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記第1の穴埋め済みマーク画像と、前記罫線画像および前記文字画像のうち前記一方の画像ではない他方の画像との論理和の画像としての第2の論理和画像を生成し、前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記第1の穴埋め済みマーク画像を、前記他方の画像に応じた量で膨張および収縮させた第2の膨張収縮済みマーク画像を生成し、前記穴埋め済みマーク画像生成部は、前記第2の論理和画像と、前記第2の膨張収縮済みマーク画像との論理積の画像としての第2の穴埋め済みマーク画像を前記穴埋め済みマーク画像として生成しても良い。
【0013】
この構成により、本発明の画像処理システムは、マークに対する影響が互いに異なる、罫線と、文字とを区別して処理するので、マーク付与画像からのマークの抽出の精度を向上することができる。
【0014】
本発明の画像処理プログラムは、マークが付与された画像としてのマーク付与画像から、前記マーク部分の画像と、前記マーク以外の記載部分の画像としての非マーク部分画像とを色に基づいて抽出する画像抽出部と、前記画像抽出部によって抽出された、前記マーク部分の画像としての前記色抽出マーク画像において前記マーク以外の記載部分によって生じた途切れを穴埋めした穴埋め済みマーク画像を、前記色抽出マーク画像と、前記非マーク部分画像とに基づいて、画像の膨張および収縮と、画像の論理和と、画像の論理積とを使用して生成する穴埋め済みマーク画像生成部と、前記穴埋め済みマーク画像のうち、前記色抽出マーク画像の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、不要な領域が除去された前記マーク部分の画像としての不要領域除去済みマーク画像を生成する不要領域除去済みマーク画像生成部とをコンピューターに実現させることを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明の画像処理プログラムを実行するコンピューターは、穴埋め済みマーク画像のうち、色抽出マーク画像の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、不要な領域が除去されたマーク部分の画像としての不要領域除去済みマーク画像を生成するので、マーク付与画像においてマーク同士が近接している場合に、近接しているマーク同士の間の隙間に罫線や文字などの記載部分が存在するとき、この記載部分が不要領域除去済みマーク画像に含まれてしまう可能性を低減することができる。したがって、本発明の画像処理プログラムを実行するコンピューターは、マーク付与画像からのマークの抽出の精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像処理システムおよび画像処理プログラムは、マークが付与されたマーク付与画像からのマークの抽出の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るMFPのブロック図である。
【
図2】
図1に示すMFPの動作のフローチャートである。
【
図3】
図2に示す動作において取得されるマーク付与画像の一例を示す図である。
【
図4】(a)
図3に示すマーク付与画像から色に基づいて抽出される色抽出マーク画像を示す図である。 (b)
図3に示すマーク付与画像から抽出される非マーク部分画像を示す図である。
【
図5】(a)
図4(b)に示す非マーク部分画像から抽出される罫線画像を示す図である。 (b)
図4(b)に示す非マーク部分画像から抽出される文字画像を示す図である。
【
図6】
図5(a)に示す罫線の一例を示す図である。
【
図7】
図4(a)に示す色抽出マーク画像を膨張および収縮させた第1の膨張収縮済みマーク画像を示す図である。
【
図8】(a)
図4(a)に示す色抽出マーク画像と、罫線画像との論理和の画像である第1の論理和画像を示す図である。 (b)
図4(a)に示す色抽出マーク画像において罫線によって生じた途切れを穴埋めした第1の穴埋め済みマーク画像を示す図である。
【
図9】
図8(b)に示す第1の穴埋め済みマーク画像を膨張および収縮させた第2の膨張収縮済みマーク画像を示す図である。
【
図10】(a)文字画像と、
図8(b)に示す第1の穴埋め済みマーク画像との論理和の画像である第2の論理和画像を示す図である。 (b)
図4(a)に示す色抽出マーク画像において文字によって生じた途切れを穴埋めした第2の穴埋め済みマーク画像を示す図である。
【
図11】
図10(b)に示す第2の穴埋め済みマーク画像から生成される不要領域除去済みマーク画像を示す図である。
【
図12】
図2に示す例とは異なる例での、
図1に示すMFPの動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本発明の一実施の形態に係る画像処理システムとしてのMFP(Multifunction Peripheral)の構成について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るMFP10のブロック図である。
【0021】
図1に示すように、MFP10は、種々の操作が入力される例えばボタンなどの入力デバイスである操作部11と、種々の情報を表示する例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部12と、用紙などの記録媒体に画像を印刷する印刷デバイスであるプリンター13と、原稿から画像を読み取る読取デバイスであるスキャナー14と、図示していない外部のファクシミリ装置と公衆電話回線などの通信回線経由でファックス通信を行うファックスデバイスであるファックス通信部15と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部16と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部17と、MFP10全体を制御する制御部18とを備えている。
【0022】
記憶部17は、マークが付与されたマーク付与画像からマークを抽出するための画像処理プログラム17aを記憶している。画像処理プログラム17aは、例えば、MFP10の製造段階でMFP10にインストールされていても良いし、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの外部記憶媒体からMFP10に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からMFP10に追加でインストールされても良い。
【0023】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるメモリーとしてのRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、記憶部17またはROMに記憶されているプログラムを実行する。MFP10は、コンピューターを構成している。
【0024】
制御部18は、画像処理プログラム17aを実行することによって、マーク付与画像から、マーク部分の画像と、マーク以外の記載部分の画像としての非マーク部分画像とを色に基づいて抽出する画像抽出部18aと、画像抽出部18aによって抽出された、マーク部分の画像としての色抽出マーク画像においてマーク以外の記載部分によって生じた途切れを穴埋めした穴埋め済みマーク画像を、色抽出マーク画像と、非マーク部分画像とに基づいて、画像の膨張および収縮と、画像の論理和と、画像の論理積とを使用して生成する穴埋め済みマーク画像生成部18bと、穴埋め済みマーク画像のうち、色抽出マーク画像の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、不要な領域が除去されたマーク部分の画像としての不要領域除去済みマーク画像を生成する不要領域除去済みマーク画像生成部18cとを実現する。
【0025】
次に、MFP10の動作について説明する。
【0026】
【0027】
制御部18は、文書に付与されたマークに応じた特定の処理の実行が操作部11または通信部16を介して指示されると、画像処理プログラム17aを実行することによって、
図2に示す動作を実行する。なお、この文書は、例えば、蛍光ペンなどのマーカーによってマークが付与されたものである。
【0028】
図2に示すように、制御部18は、例えば、文書がスキャナー14にセットされている場合に、この文書をスキャナー14によって読み取ることによって、マーク付与画像を取得する(S101)。なお、マーク付与画像の取得方法は、スキャナー14によって文書を読み取る方法以外の方法でも良い。
【0029】
図3は、
図2に示す動作において取得されるマーク付与画像の一例を示す図である。
【0030】
図3に示すマーク付与画像30は、白色などの淡色の部分の上だけでなく黒色などの濃色の罫線31や文字32の上にも半透明のマーク33が付与された画像である。以下、S101において取得されたマーク付与画像が
図3に示すマーク付与画像30であるものとして説明する。
【0031】
図4(a)は、マーク付与画像30から色に基づいて抽出される色抽出マーク画像41を示す図である。
図4(b)は、マーク付与画像30から抽出される非マーク部分画像42を示す図である。
【0032】
図2に示すように、画像抽出部18aは、S101の処理の後、マーク付与画像30から、例えば色相、明度および彩度の少なくとも1つなど、色に基づいて、
図4(a)に示す色抽出マーク画像41と、
図4(b)に示す非マーク部分画像42とを抽出する(S102)。ここで、色抽出マーク画像41は、マーク付与画像30に付与されたマーク33のうち、罫線31や文字32など、マーク33以外の記載部分に重なる部分を除いた部分である。非マーク部分画像42には、罫線31と、文字32とが含まれている。
【0033】
図5(a)は、非マーク部分画像42から抽出される、罫線31部分の画像(以下「罫線画像」という。)43を示す図である。
図5(b)は、非マーク部分画像42から抽出される、文字32部分の画像(以下「文字画像」という。)44を示す図である。
【0034】
図2に示すように、画像抽出部18aは、S102の処理の後、非マーク部分画像42から、
図5(a)に示す罫線画像43と、
図5(b)に示す文字画像44とを抽出する(S103)。罫線を含む画像から罫線を抽出する方法としては、公知の任意の方法が採用されることが可能である。同様に、文字を含む画像から文字を抽出する方法としては、公知の任意の方法が採用されることが可能である。例えば、マーク付与画像30に含まれる可能性がある文字の最大のサイズが、例えば72ポイントなど、特定のサイズとして想定される場合、この最大のサイズで描かれる文字に含まれる可能性がある線の最大の長さが特定されるので、この最大の長さより長い線を、画像抽出部18aは、罫線31として抽出しても良い。
【0035】
【0036】
図2に示すように、穴埋め済みマーク画像生成部18bは、S103の処理の後、罫線31によって生じたマーク33の途切れを穴埋めするための、色抽出マーク画像41の膨張の量を決定するために、矢印30aで示すマーク33の延在方向における罫線31の幅31aを、S103において抽出した罫線画像43から罫線31毎に取得する(S104)。なお、罫線31は、矢印30aで示す方向に直交する矢印30bで示す方向に常に延在しているとは限らない。例えば、罫線31は、
図6に示すように、矢印30bで示す方向から傾いた方向に延在している場合もある。したがって、穴埋め済みマーク画像生成部18bは、罫線31の延在方向に直交する方向における幅31bと、矢印30bで示す方向に対する罫線31の傾き31cとを罫線画像43から取得し、これらの情報から、矢印30aで示す方向における罫線31の幅31aを取得しても良い。
【0037】
図7は、色抽出マーク画像41を膨張および収縮させた画像(以下「第1の膨張収縮済みマーク画像」という。)45を示す図である。
【0038】
図2に示すように、穴埋め済みマーク画像生成部18bは、S104の処理の後、罫線31によって生じた途切れを穴埋めするために、S104において取得した矢印30aで示す方向における罫線31の幅31aに応じた量で矢印30aで示す方向に色抽出マーク画像41を膨張させて(S105)、S105において膨張させた画像をS105における矢印30aで示す方向の膨張の量と同一の量で矢印30aで示す方向に収縮させることによって、
図7に示す第1の膨張収縮済みマーク画像45を生成する(S106)。ここで、穴埋め済みマーク画像生成部18bは、罫線画像43に複数の罫線31が含まれる場合には、罫線画像43に含まれる全ての罫線31の、矢印30aで示す方向における、最大の幅に応じた量で矢印30aで示す方向に、色抽出マーク画像41を膨張および収縮させても良いし、罫線31毎に、この罫線31の矢印30aで示す方向における幅31aに応じた量で矢印30aで示す方向に、色抽出マーク画像41のうち、この罫線31の近傍の箇所に相当する箇所を膨張および収縮させても良い。
【0039】
図8(a)は、色抽出マーク画像41と、罫線画像43との論理和の画像(以下「第1の論理和画像」という。)46を示す図である。
図8(b)は、色抽出マーク画像41において罫線31によって生じた途切れを穴埋めした画像(以下「第1の穴埋め済みマーク画像」という。)47を示す図である。
【0040】
マーク付与画像30においてマーク33同士が近接している場合、第1の膨張収縮済みマーク画像45は、罫線31によって生じたマーク33の途切れだけでなく、マーク付与画像30において単にマーク33同士が近接していた部分も穴埋めされている可能性がある。したがって、穴埋め済みマーク画像生成部18bは、罫線31によって生じたマーク33の途切れ以外の部分の穴埋めを第1の膨張収縮済みマーク画像45から除去するために、
図2に示すように、S106の処理の後、S102において抽出した色抽出マーク画像41と、S103において抽出した罫線画像43との論理和の画像である、
図8(a)に示す第1の論理和画像46を生成し(S107)、S106において生成した第1の膨張収縮済みマーク画像45と、S107において生成した第1の論理和画像46との論理積の画像である、
図8(b)に示す第1の穴埋め済みマーク画像47を生成する(S108)。
【0041】
穴埋め済みマーク画像生成部18bは、S108の処理の後、文字32によって生じたマーク33の途切れを穴埋めするための、第1の穴埋め済みマーク画像47の膨張の量を決定するために、矢印30aで示す方向における文字32の幅と、矢印30bで示す方向における文字32の高さとを、S103において抽出した文字画像44から文字32毎に取得する(S109)。
【0042】
図9は、第1の穴埋め済みマーク画像47を膨張および収縮させた画像(以下「第2の膨張収縮済みマーク画像」という。)48を示す図である。
【0043】
図2に示すように、穴埋め済みマーク画像生成部18bは、S109の処理の後、文字32によって生じた途切れを穴埋めするために、S109において取得した矢印30aで示す方向における文字32の幅に応じた量で矢印30aで示す方向に、S109において取得した矢印30bで示す方向における文字32の高さに応じた量で矢印30bで示す方向に、それぞれ、第1の穴埋め済みマーク画像47を膨張させて(S110)、S110において膨張させた画像を、S110における矢印30aで示す方向の膨張の量と同一の量で矢印30aで示す方向に、S110における矢印30bで示す方向の膨張の量と同一の量で矢印30bで示す方向に、それぞれ、収縮させることによって、
図9に示す第2の膨張収縮済みマーク画像48を生成する(S111)。ここで、穴埋め済みマーク画像生成部18bは、文字画像44に複数の文字32が含まれる場合には、文字画像44に含まれる全ての文字32の、矢印30aで示す方向における、最大の幅に応じた量で矢印30aで示す方向に、文字画像44に含まれる全ての文字32の、矢印30bで示す方向における、最大の高さに応じた量で矢印30bで示す方向に、それぞれ、第1の穴埋め済みマーク画像47を膨張および収縮させても良いし、文字32毎に、この文字32の矢印30aで示す方向における幅に応じた量で矢印30aで示す方向に、この文字32の矢印30bで示す方向における高さに応じた量で矢印30bで示す方向に、それぞれ、第1の穴埋め済みマーク画像47のうち、この文字32の近傍の箇所に相当する箇所を膨張および収縮させても良い。
【0044】
図10(a)は、文字画像44と、第1の穴埋め済みマーク画像47との論理和の画像(以下「第2の論理和画像」という。)49を示す図である。
図10(b)は、マーク付与画像30において文字32によって生じた途切れを穴埋めした画像(以下「第2の穴埋め済みマーク画像」という。)50を示す図である。
【0045】
マーク付与画像30においてマーク33同士が近接している場合、第2の膨張収縮済みマーク画像48は、文字32によって生じたマーク33の途切れだけでなく、マーク付与画像30において単にマーク33同士が近接していた部分も穴埋めされている可能性がある。したがって、穴埋め済みマーク画像生成部18bは、文字32によって生じたマーク33の途切れ以外の部分の穴埋めを第2の膨張収縮済みマーク画像48から除去するために、
図2に示すように、S111の処理の後、S103において抽出した文字画像44と、S108において抽出した第1の穴埋め済みマーク画像47との論理和の画像である、
図10(a)に示す第2の論理和画像49を生成し(S112)、S111において生成した第2の膨張収縮済みマーク画像48と、S112において生成した第2の論理和画像49との論理積の画像である、
図10(b)に示す第2の穴埋め済みマーク画像50を生成する(S113)。
【0046】
図11は、第2の穴埋め済みマーク画像50から生成される不要領域除去済みマーク画像60を示す図である。
【0047】
マーク付与画像30においてマーク33と、文字32とが近接している場合、第2の穴埋め済みマーク画像50は、文字32が残っている可能性がある。例えば、
図10(b)に示す第2の穴埋め済みマーク画像50においては、文字「T」が残っている。したがって、不要領域除去済みマーク画像生成部18cは、
図2に示すように、S113の処理の後、S113において生成した第2の穴埋め済みマーク画像50のうち、S102において抽出した色抽出マーク画像41の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、
図11に示す不要領域除去済みマーク画像60を生成する(S114)。
【0048】
制御部18は、S114の処理の後、S114において生成した不要領域除去済みマーク画像60によって示されるマーク33に応じた特定の処理を実行して(S115)、
図2に示す動作を終了する。ここで、特定の処理とは、例えば、マーク付与画像30からのマーク33の除去、マーク付与画像30に対するマーク33部分の墨塗り、マーク付与画像30においてマーク33で囲まれた部分の文字32の抽出などである。
【0049】
以上に説明したように、MFP10は、第2の穴埋め済みマーク画像50のうち、色抽出マーク画像41の領域と全く重複しない連続領域を除去することによって、不要な領域が除去されたマーク33部分の画像としての不要領域除去済みマーク画像60を生成する(S114)ので、マーク付与画像30においてマーク33同士が近接している場合に、近接しているマーク33同士の間の隙間に罫線や文字などの記載部分が存在するとき、この記載部分が不要領域除去済みマーク画像60に含まれてしまう可能性を低減することができる。したがって、MFP10は、マーク付与画像30からのマーク33の抽出の精度を向上することができる。
【0050】
MFP10は、マーク33に対する影響が互いに異なる、罫線と、文字とを区別して処理する(S104~S113)ので、マーク付与画像30からのマーク33の抽出の精度を向上することができる。
【0051】
MFP10は、本実施の形態において、S110における膨張の量と、S111における収縮の量とに関して、矢印30aで示す方向における膨張や収縮の量を矢印30aで示す方向における文字32の幅に応じたものとし、矢印30bで示す方向における膨張や収縮の量を矢印30bで示す方向における文字32の高さに応じたものとしている。しかしながら、MFP10は、S110における膨張の量と、S111における収縮の量とに関して、膨張や収縮の方向に関わらず、矢印30aで示す方向における文字32の幅と、矢印30bで示す方向における文字32の高さとのうち、大きい方に応じたものを膨張や収縮の量としても良い。
【0052】
文字は、罫線とは異なり、1つの文字に複数のマーク33がかかる場合が少ないと考えられる。したがって、文字は、罫線とは異なり、適切な量以上の量で画像の膨張および収縮が行われたとしても、S112~S114の処理によって不要な部分が適切に除去される可能性が高いと考えられる。そこで、MFP10は、
図2に示す動作に代えて、
図12に示す動作を実行しても良い。
図12に示す動作は、
図2に示す動作においてS109の処理に代えてS129の処理を実行したものと同一である。穴埋め済みマーク画像生成部18bは、S129において、矢印30aで示す方向における文字32の幅、および、矢印30bで示す方向における文字32の高さとして、例えば72ポイントなど、マーク付与画像30に含まれる可能性がある最大のサイズの文字の幅および高さを取得する。
図12に示す動作は、
図2に示す動作と比較して、文字画像44から文字32の幅および高さを文字32毎に取得する必要がなく、固定値である幅および高さを常に取得するので、制御部18の処理負担を軽くすることができる。
【0053】
MFP10は、本実施の形態において、罫線に起因するマーク33の途切れの穴埋めを、文字に起因するマーク33の途切れの穴埋めより先に処理する。しかしながら、MFP10は、文字に起因するマーク33の途切れの穴埋めを、罫線に起因するマーク33の途切れの穴埋めより先に処理しても良い。
【0054】
MFP10は、本実施の形態において、罫線に起因するマーク33の途切れの穴埋めと、文字に起因するマーク33の途切れの穴埋めとを別々に処理する。しかしながら、MFP10は、罫線と、文字とを区別せずに、マーク33の途切れの穴埋めを実行しても良い。
【0055】
MFP10は、本実施の形態において、マーク付与画像から抽出される、マーク33以外の記載部分として、文字および罫線を採用している。しかしながら、本発明の画像処理システムは、マーク付与画像から抽出される、マーク33以外の記載部分として、文字および罫線のいずれか1つのみを採用しても良い。また、本発明の画像処理システムは、マーク付与画像から抽出される、マーク33以外の記載部分として、文字および罫線の少なくとも1つに代えて、または、文字および罫線に加えて、例えば図など、文字および罫線のいずれでもない記載部分を採用しても良い。
【0056】
本発明の画像処理システムは、本実施の形態においてMFPであるが、プリンター専用機など、MFP以外の画像形成装置でも良いし、PC(Personal Computer)など、画像形成装置以外のコンピューターでも良い。本発明の画像処理システムは、1台のコンピューターによって構成されても良いし、複数台のコンピューターによって構成されても良い。
【符号の説明】
【0057】
10 MFP(画像処理システム、コンピューター)
17a 画像処理プログラム
18a 画像抽出部
18b 穴埋め済みマーク画像生成部
18c 不要領域除去済みマーク画像生成部
30 マーク付与画像
31 罫線(記載部分)
32 文字(記載部分)
33 マーク
41 色抽出マーク画像
42 非マーク部分画像
43 罫線画像
44 文字画像
45 第1の膨張収縮済みマーク画像
46 第1の論理和画像
47 第1の穴埋め済みマーク画像
48 第2の膨張収縮済みマーク画像
49 第2の論理和画像
50 第2の穴埋め済みマーク画像(穴埋め済みマーク画像)
60 不要領域除去済みマーク画像