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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】鍵盤楽器および鍵盤楽器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20221221BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G10H1/34
G10B3/12 110
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020141624
(22)【出願日】2020-08-25
(62)【分割の表示】P 2018147910の分割
【原出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020190758
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】赤石 明人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 弘和
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-341326(JP,A)
【文献】特開平09-244623(JP,A)
【文献】実開平07-034480(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0025673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 1/00-3/24
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に設けられている力点部と、他端側に設けられている荷重点部と、前記力点部と前記荷重点部との間に設けられている支点部と、をそれぞれ有する複数のハンマー部材と、前記複数のハンマー部材を揺動可能に保持するハンマーホルダと、を有するハンマーユニットと、
前記ハンマーホルダを取り付けるためのユニット載置部と、前記ハンマーホルダを前記ユニット載置部の下面に取り付けた状態において、押鍵操作に応じて前記ハンマー部材の前記荷重点部が上方へ移動した際に前記荷重点部と当接することにより前記複数のハンマー部材の揺動範囲の上限を規制する上限規制部材と、を有する鍵盤シャーシと、
を備えた鍵盤楽器を組み立てる際に、
前記鍵盤シャーシを上下反転させ、
前記複数のハンマー部材を前記ハンマーホルダに取り付けた状態で、前記ハンマーユニットを上下反転させて持ち上げ、
前記複数のハンマー部材それぞれの前記力点部側と前記ハンマーホルダの力点部側接点とを当接させることにより、前記複数のハンマー部材が所定角度以上に垂れ下がることのない所定の保持状態で前記複数のハンマー部材を前記ハンマーホルダに保持させ、
前記所定の保持状態を維持したままで、上下反転している前記鍵盤シャーシの前記上限規制部材に上下反転している前記複数のハンマー部材の前記荷重点部を当接させた後に、上下反転している前記ハンマーホルダを上下反転している前記鍵盤シャーシのユニット載置部に載置させる、
鍵盤楽器の製造方法。
【請求項2】
前記所定の保持状態は、前記複数のハンマー部材それぞれにおける前記支点部と、前記荷重点部の他端と、の間の鍵の前後方向の長さが、前記支点部と、前記上限規制部材における前記支点部側の一端と、の間の前記鍵の前後方向の長さより長い状態である、
請求項1に記載の鍵盤楽器の製造方法。
【請求項3】
前記鍵盤シャーシを上下反転させて組立作業台の載置面上に載置させ、
前記複数のハンマー部材が前記ハンマーホルダに取り付けられた前記ハンマーユニットを上下反転させた状態で、前記ハンマーホルダの端部と前記複数のハンマー部材それぞれの前記荷重点部を前記載置面上に当接させることにより、前記ハンマーホルダを前記載置面上に安定した状態で載置させた後、前記ハンマーユニットを上下反転させたままで持ち上げて、上下反転している前記鍵盤シャーシのユニット載置部に載置させる、
請求項1または2に記載の鍵盤楽器の製造方法。
【請求項4】
前記ハンマーホルダは、前記複数のハンマー部材をそれぞれ保持するための複数の保持片を含み、
前記保持片の上端には複数の突起が設けられており、
前記ハンマーユニットを上下反転させた状態で、前記複数の突起と前記複数のハンマー部材それぞれの前記荷重点部が前記載置面上に当接することで、前記ハンマーホルダを前記載置面上に安定した状態で載置させる、
請求項3に記載の鍵盤楽器の製造方法。
【請求項5】
前記複数のハンマー部材は、少なくとも1つの白鍵用のハンマー部材と、前記少なくとも1つの白鍵用のハンマー部材とは形状が異なる少なくとも1つの黒鍵用のハンマー部材と、を含み、
前記複数の保持片が前記複数のハンマー部材を保持していない状態において、前記複数の保持片が前記少なくとも1つの白鍵用のハンマー部材及び前記少なくとも1つの黒鍵用のハンマー部材のいずれのハンマー部材を保持するかを識別するために、前記複数の保持片は、識別子を有しており、
前記識別子は、前記複数の保持片のうち前記少なくとも1つの白鍵用のハンマー部材を保持している一対の保持片の上端に設けられている前記複数の突起である、
請求項4に記載の鍵盤楽器の製造方法。
【請求項6】
前記ハンマーホルダは、前記ハンマーユニットが前記鍵盤シャーシに組み込まれていない状態において、前記複数のハンマー部材のそれぞれの前記荷重点部側に接する複数の荷重点部側接点を有することにより、前記複数のハンマー部材は、前記ハンマーユニットが前記鍵盤シャーシに組み込まれていない状態において、前記荷重点部側接点の位置から前記力点部側接点の位置までの自由揺動範囲内を揺動し、
前記ハンマーユニットが前記鍵盤シャーシに組み込まれた状態での前記押鍵操作に応じて、前記複数のハンマー部材が前記揺動範囲内を揺動する際に、前記複数のハンマー部材は、前記荷重点部側接点に接しない、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の鍵盤楽器の製造方法。
【請求項7】
一端側に設けられている力点部と、他端側に設けられている荷重点部と、前記力点部と前記荷重点部との間に設けられている支点部と、をそれぞれ有する複数のハンマー部材と、前記複数のハンマー部材を揺動可能に保持するハンマーホルダと、を有するハンマーユニットと、
前記ハンマーホルダを取り付けるためのユニット載置部と、前記ハンマーホルダを前記ユニット載置部の下面に取り付けた状態において、押鍵操作に応じて前記ハンマー部材の前記荷重点部が上方へ移動した際に前記荷重点部と当接することにより前記複数のハンマー部材の揺動範囲の上限を規制する上限規制部材と、を有する鍵盤シャーシと、
を備え、
前記ハンマーホルダは、上下反転させた前記鍵盤シャーシに上下反転させた前記ハンマーユニットを組み込むに、前記複数のハンマー部材のそれぞれの前記力点部側に接する複数の力点部側接点を有し、
前記複数のハンマー部材それぞれの前記力点部側と前記ハンマーホルダの前記力点部側接点とが当接することにより、前記複数のハンマー部材が所定角度以上に垂れ下がることのない所定の保持状態で前記複数のハンマー部材が前記ハンマーホルダに保持され、
前記所定の保持状態を維持したままで、上下反転している前記鍵盤シャーシの前記上限規制部材に上下反転している前記複数のハンマー部材の前記荷重点部を当接させた後に、上下反転している前記ハンマーホルダを上下反転している前記鍵盤シャーシのユニット載置部に載置させた
鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器および鍵盤楽器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、鍵盤シャーシ上に複数の鍵が上下方向に回転可能に取り付けられ、これら複数の鍵それぞれにアクション荷重を付与するための複数のハンマー部材がハンマーホルダによって鍵盤シャーシの下面に取り付けられた構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-34480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような鍵盤楽器は、複数のハンマー部材をそれぞれ軸部によってハンマーホルダに回転可能に取り付けてハンマーユニットを形成し、このハンマーユニットを鍵盤シャーシに取り付ける際に、複数のハンマー部材が各軸部を中心に個別に回転してハンマー部材の錘部側が大きく垂れ下がるため、組立作業性が悪いという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、組立作業性を向上させることができる鍵盤楽器および鍵盤楽器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、一端側に設けられている力点部と、他端側に設けられている荷重点部と、前記力点部と前記荷重点部との間に設けられている支点部と、をそれぞれ有する複数のハンマー部材と、前記複数のハンマー部材を揺動可能に保持するハンマーホルダと、を有するハンマーユニットと、前記ハンマーホルダを取り付けるためのユニット載置部と、前記ハンマーホルダを前記ユニット載置部の下面に取り付けた状態において、押鍵操作に応じて前記ハンマー部材の前記荷重点部が上方へ移動した際に前記荷重点部と当接することにより前記複数のハンマー部材の揺動範囲の上限を規制する上限規制部材と、を有する鍵盤シャーシと、を備えた鍵盤楽器を組み立てる際に、前記鍵盤シャーシを上下反転させ、前記複数のハンマー部材を前記ハンマーホルダに取り付けた状態で、前記ハンマーユニットを上下反転させて持ち上げ、前記複数のハンマー部材それぞれの前記力点部側と前記ハンマーホルダの力点部側接点とを当接させることにより、前記複数のハンマー部材が所定角度以上に垂れ下がることのない所定の保持状態で前記複数のハンマー部材を前記ハンマーホルダに保持させ、前記所定の保持状態を維持したままで、上下反転している前記鍵盤シャーシの前記上限規制部材に上下反転している前記複数のハンマー部材の前記荷重点部を当接させた後に、上下反転している前記ハンマーホルダを上下反転している前記鍵盤シャーシのユニット載置部に載置させる、鍵盤楽器の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、組立作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態を示した断面図である。
図2図1示された鍵盤楽器の白鍵を押鍵した状態を示した断面図である。
図3図1示された鍵盤楽器のハンマーユニットを示した要部の拡大斜視図である。
図4図3に示されたハンマーユニットにおける白鍵のハンマー部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はそのハンマー本体を示した斜視図、(c)はその軸部を示した斜視図である。
図5図3に示されたハンマーユニットにおける黒鍵のハンマー部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はそのハンマー本体を示した斜視図、(c)はその軸部を示した斜視図である。
図6図3に示されたハンマーユニットにおけるハンマーホルダを示した斜視図である。
図7図6に示されたハンマーホルダの断面の示し、(a)は図6のA-A矢視における要部の拡大断面図、(b)は図6のB-B矢視における要部の拡大断面図である。
図8図7に示されたハンマーホルダにハンマー部材を取り付けた状態における要部の拡大断面図である。
図9図8に示されたハンマーホルダに対するハンマー部材の回転範囲を示した図である。
図10図9に示されたハンマーホルダとハンマー部材とを上下反転させて作業台などの載置面上に配置させた状態を示した図である。
図11図10に示されたハンマーホルダとハンマー部材とを上下反転された鍵盤シャーシに上方から組み付ける状態を示した図である。
図12図11に示されたハンマーホルダとハンマー部材とが上下反転された鍵盤シャーシに組み付かられた状態を示した図である。
図13図12に示された鍵盤シャーシに対するハンマーホルダの位置決め状態を示し、(a)は鍵盤シャーシの要部を示した裏面図、(b)はハンマーホルダの裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図13を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、ABS樹脂などの合成樹脂製の鍵盤シャーシ1と、この鍵盤シャーシ1上に配列されて上下方向にそれぞれ回転可能に取り付けられた複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に伴って各鍵2それぞれにアクション荷重を付与するためのハンマーユニット3と、複数の鍵2それぞれの押鍵動作に応じてオン動作するスイッチ部4と、を備えている。
【0010】
鍵盤シャーシ1は、楽器ケース(図示せず)内に配置されるものである。この鍵盤シャーシ1の前端部(図1では右端部)には、図1および図2に示すように、前脚部5が底部から上方に突出して設けられている。この前脚部5の上部には、鍵2の横振れを防ぐための鍵ガイド部6が各鍵2にそれぞれ対応して設けられている。また、この鍵盤シャーシ1における前脚部5の後部側(図1では左側部)には、ユニット載置部7が前脚部5とほぼ同じ高さで設けられている。
【0011】
この鍵盤シャーシ1の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部、つまりユニット載置部7の上部後方には、図1および図2に示すように、基板載置部8が一段高く設けられている。この基板載置部8の上方には、スイッチ部4が複数の基板支持部9によって取り付けられている。この場合、複数の基板支持部9は、基板載置部8の上面における前後部に起立して設けられている。
【0012】
さらに、この鍵盤シャーシ1の後部、つまり基板載置部8の後部側には、図1および図2に示すように、鍵載置部10が鍵ガイド部6の上部よりも少し低い高さで設けられている。この鍵載置部10の上面には、複数の鍵支持部11が上方に突出した状態で鍵2の配列方向に沿って等間隔で設けられている。これら複数の鍵支持部11には、鍵2の後端部を上下方向に回転可能に支持する鍵支持軸11aがそれぞれ設けられている。
【0013】
また、この鍵盤シャーシ1における鍵載置部10の後端部には、図1および図2に示すように、鍵盤シャーシ1の後端部を支持する後脚部12が鍵盤シャーシ1の上部から底部に向けて垂下されている。この後脚部12の下端部には、ハンマーユニット3の後述するハンマー部材20の下限位置を規制するためのフェルトなどの下限ストッパ13が設けられている。
【0014】
一方、鍵2は、図1および図2に示すように、白鍵と黒鍵とを有している。ただし、この実施形態では、1つの白鍵について説明する。この鍵2は、その後端部(図1では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部10上に設けられた鍵支持部11の鍵支持軸11aによって上下方向に回転可能に支持されている。この鍵2の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部には、鍵盤シャーシ1の基板載置部8上に取り付けられたスイッチ部4を押圧するためのスイッチ押圧部14が下側に突出して設けられている。
【0015】
この場合、スイッチ部4は、図1および図2に示すように、スイッチ基板15上に配置されたゴムシートを膨出させたドーム状の膨出部16を備えている。このドーム状の膨出部16は、鍵2のスイッチ押圧部14に対応してスイッチ基板15上に設けられている。このスイッチ部4におけるスイッチ基板15は、その前端部(図1では右端部)がユニット載置部7上に配置され、他端部(図1では左端部)が基板載置部8上に設けられた基板支持部9上に配置され、この状態で基板載置部8の上方に浮いた状態で取り付けられている。
【0016】
また、このスイッチ部4は、図1および図2に示すように、ゴムシートの膨出部16がスイッチ押圧部14によって押圧された際に、膨出部16が弾性変形して、その内部の可動接点がスイッチ基板15の固定接点に接触することにより、オン信号を出力するようになっている。この場合、スイッチ基板15には、スイッチ部4からのオン信号に基づいて楽音情報を生成し、この生成した楽音情報に基づいてスピーカ(図示せず)から楽音を放音させるための発音部15aが設けられている。
【0017】
さらに、鍵2のスイッチ押圧部14の前側(図1では右側)に位置する鍵2の箇所には、図1および図2に示すように、ハンマー押圧部17が鍵2の下側に突出して設けられている。このハンマー押圧部17の下部には、ハンマーユニット3の後述するハンマー部材20の力点部である鍵連結部25が配置されるハンマー連結部18が設けられている。
【0018】
ハンマーユニット3は、図1図3に示すように、複数の鍵2それぞれの押鍵操作に応じて回転して各鍵2にそれぞれアクション荷重を付与する複数のハンマー部材20と、鍵2が配列される鍵盤シャーシ1のユニット載置部7の下面に取り付けられて、複数のハンマー部材20をそれぞれ回転可能に保持するハンマーホルダ21と、を備えている。
【0019】
白鍵用のハンマー部材20は、図4(a)~図4(c)に示すように、ハンマー本体22と、このハンマー本体22の後部(図4(a)では左側部)に設けられた荷重点部である錘部23と、ハンマー本体22の前部側(図4(a)では右側部)に設けられて、ハンマー本体22の回転中心となる支点部である回転軸部24と、この回転軸部24よりも前側に位置するハンマー本体22の先端部(図4(a)では右端部)に設けられた力点部である鍵連結部25と、を備えている。
【0020】
同様に、黒鍵用のハンマー部材20は、図5(a)~図5(c)に示すように、ハンマー本体22と、このハンマー本体22の後部(図5(a)では左側部)に設けられた荷重点である錘部23と、ハンマー本体22の前部側(図5(a)では右側部)に設けられて、ハンマー本体22の回転中心となる支点部である回転軸部24と、この回転軸部24よりも前側に位置するハンマー本体22の先端部(図5(a)では右端部)に設けられた力点部である鍵連結部25と、を備え、白鍵用のハンマー部材20と形状が少し異なっている。
【0021】
ハンマーホルダ21は、図3および図6に示すように、鍵2の配列方向に沿って鍵盤シャーシ1のユニット載置部7の下方に配置される台座状のベース部26と、このベース部26の上面(図6では上面)に設けられて複数のハンマー部材20それぞれを回転可能に保持する複数のハンマー保持部27と、を備えている。この場合、複数のハンマー保持部27それぞれは、ハンマー本体22の回転軸部24を保持する一対の保持片27aに軸受け孔27bが同一軸上に対応してそれぞれ設けられた構造になっている。
【0022】
ところで、ハンマー部材20のハンマー本体22は、図4および図5に示すように、金属板をプレス加工などの打ち抜き加工によって形成されている。また、ハンマー部材20の回転軸部24は、ハンマー本体22に打ち抜き加工によって形成された取付孔22aに嵌入する軸本体24aと、この軸本体24aに設けられた鍔状のフランジ部24bと、を備え、これらがポリアセタール(POM)などの剛性の高い合成樹脂によって形成されている。
【0023】
この場合、軸本体24aは、図4図8に示すように、軸方向の長さがハンマーホルダ21のハンマー保持部27における一対の保持片27a間の長さよりも少し長く形成され、軸本体24aの両端部が一対の保持片27aの軸受け孔27bに回転可能に挿入されるようになっている。フランジ部24bは、ハンマー本体22が打ち抜き加工された際に、取付孔22aの縁部にバリが発生する面側に配置され、ハンマー本体22のバリ側の面が一対の保持片27aに接触するのを防ぐようになっている。
【0024】
また、ハンマー部材20の力点部である鍵連結部25は、図1図5に示すように、鍵2のハンマー押圧部17のハンマー連結部18に嵌め込まれる当接本体部25aと、この当接本体部25aの上面部に円弧状に設けられて鍵2のハンマー連結部18に当接した状態で摺動する当接摺動部25bと、を備えている。この鍵連結部25は、回転軸部24と同じポリアセタール(POM)などの剛性の高い合成樹脂によって形成されている。
【0025】
これにより、ハンマー部材20は、図1および図2に示すように、回転軸部24の軸本体24aがハンマーホルダ21のハンマー保持部27における一対の保持片27a間に回転可能に保持されて、力点部である鍵連結部25の当接本体部25aが鍵2のハンマー押圧部17のハンマー連結部18に嵌め込まれた状態で、鍵2が押鍵操作されて、鍵連結部25が鍵2のハンマー押圧部17で押し下げられた際に、ハンマー本体22が回転軸部24の軸本体24aを中心に上下方向に回転して、押鍵操作された鍵2にアクション荷重を付与するようになっている。
【0026】
この場合、ハンマー部材20は、図1および図2に示すように、力点部である鍵連結部25がハンマーホルダ21から鍵2の前側に突出し、荷重点部である錘部23側のハンマー本体22がハンマーホルダ21から鍵2の後側に突出するようになっている。このため、ハンマー部材20は、鍵2の押鍵操作によって回転する際に、慣性モーメントによって鍵2にアクション荷重を付与するために、錘部23側のハンマー本体22が、鍵連結部25側のハンマー本体22よりもハンマーホルダ21から突出する長さが十分に長く設定されている。
【0027】
これにより、ハンマー部材20は、図1および図2に示すように、通常の状態で、ハンマー本体22が荷重点部である錘部23の重量によってハンマーホルダ21のハンマー保持部27に保持された支点部である回転軸部24の軸本体24aを中心に反時計回りに回転し、ハンマー本体22の錘部23側の後端部(図1では左端部)が下限ストッパ13に当接して位置規制されると共に、ハンマー本体22の鍵連結部25が鍵2のハンマー押圧部17を押し上げて鍵2を上限位置である初期位置に位置規制するようになっている。
【0028】
また、このハンマー部材20は、図1および図2に示すように、鍵2が上方から押鍵されると、鍵2のハンマー押圧部17によってハンマー本体22の力点部である鍵連結部25がハンマー本体22の荷重点部である錘部23の重量に抗して押し下げられ、これに伴ってハンマー本体22がハンマーホルダ21のハンマー保持部27に保持された回転軸部24を中心に時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与するようになっている。
【0029】
すなわち、このハンマー部材20は、図1および図2に示すように、ハンマー本体22がハンマーホルダ21のハンマー保持部27における一対の保持片27aの軸受け孔27bに挿入されて保持された回転軸部24の軸本体24aを中心に時計回りに回転し、ハンマー本体22の錘部23側の後端部が鍵盤シャーシ1の基板載置部8の後部下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ28に当接して、ハンマー本体22の回転が停止するようになっている。これにより、ハンマー部材20は、下限ストッパ13と上限ストッパ28との間で回転するようになっている。
【0030】
ところで、ハンマーホルダ21のハンマー保持部27における一対の保持片27aは、図7および図8に示すように、互いに対向する下部側の対向面が互いに平行に形成され、互いに対向する上部側の対向面が上方に向けて次第に広がるように傾斜している。これにより、ハンマーホルダ21のハンマー保持部27は、ハンマー部材20の回転軸部24を一対の保持片27a間に上方から挿入させ易くするようになっている。
【0031】
また、一対の保持片27aの対向面には、図7および図8に示すように、複数の接触リブ30が上下方向に沿って設けられている。すなわち、これら複数の接触リブ30は、軸受け孔27bの前後方向に位置した状態で、一対の保持片27aの下部から上部に亘って設けられている。この場合、複数の接触リブ30は、傾斜している上部側を除いてハンマーホルダ21のベース部26の水平面である上面に対して垂直、つまり抜き勾配のない状態で設けられている。
【0032】
また、複数の接触リブ30は、図7および図8に示すように、1つの接触リブ30における前後方向の長さ(図7(b)では横幅)が軸受け孔27bの内径よりもそれぞれ十分に短い最小限の長さで形成されている。このため、複数の接触リブ30は、ハンマー保持部27の一対の保持片27aに対するハンマー部材20の接触面積が小さくなるようになっている。さらに、これら複数の接触リブ30における前後方向の角部には、円弧状の面取リブ(図示せず)が設けられている。このため、複数の接触リブ30は、抜き勾配のない状態でも、成形用金型から型抜きし易くするようになっている。
【0033】
これにより、ハンマーホルダ21のハンマー保持部27は、図8に示すように、一対の保持片27aの軸受け孔27bに回転軸部24の軸本体24aの両端部が挿入された際に、ハンマー本体22のバリ側の面に配置されたフランジ部24bが一方の保持片27aにおける複数の接触リブ30の間に収まり、また押鍵に応じてハンマー本体22が回転する際に、ハンマー本体22を挟む複数の保持片27aの各接触リブ30により、ハンマー本体22の左右方向(鍵2の配列方向)への動きが規制されるようになっている。
【0034】
このため、ハンマー保持部27は、図8に示すように、接触リブ30によってハンマー保持部27の一対の保持片27aに対するハンマー部材20の接触面積が小さくなり、一対の保持片27aとハンマー部材20との間の摩擦抵抗が軽減された状態で、ハンマー部材20の横振れを防いでハンマー部材20を良好に保持するようになっている。
【0035】
また、一対の保持片27aの対向面それぞれには、図7(b)に示すように、段差凹部31が軸受け孔27bの周辺部における接触リブ30の間に設けられている。この段差凹部31は、グリースなどの潤滑剤を溜める油溜まりであり、前後方向の両側が接触リブ30によって囲われていることにより、潤滑剤の流出を防いで潤滑剤による潤滑性能を長期間に亘って確保するようになっている。
【0036】
さらに、一対の保持片27aの前後部における各上端部には、図6および図7に示すように、識別子である支持突起27cがそれぞれ設けられている。これら識別子である各支持突起27cは、白鍵用のハンマー部材20を保持する一対の保持片27aの上端部に、黒鍵用のハンマー部材20を保持する一対の保持片27aの上端部よりも高く設けられている。
【0037】
これにより、一対の保持片27aは、図6および図7に示すように、白鍵用のハンマー部材20と黒鍵用のハンマー部材20とが取り付けられる際に、複数の識別子である各支持突起27cによって、白鍵用のハンマー部材20と黒鍵用のハンマー部材20とを区別して取り付けるための目印になっている。
【0038】
この場合、ハンマーホルダ21は、図10に示すように、例えば、黒鍵用のハンマー部材20が5つ、白鍵用のハンマー部材20を7つ保持しており、黒鍵用のハンマーホルダ21の保持片27aに支持突起27cを持たせていてもよいが、白鍵用のハンマーホルダ21の保持片27aに支持突起27cを持たせている方がハンマーユニット3を上下反転させて載置面T上に載置した際に、載置面Tとの接点が増えて安定するため望ましい。
【0039】
また、このハンマーホルダ21は、図9に示すように、ハンマー部材20を保持した状態で、鍵盤シャーシ1に組み付けられる前の状態のときにおいて、ハンマー部材20はM0~M3の範囲内で自由に揺動する。このM0~M3の範囲を自由揺動範囲Fという。ハンマー保持部27は、ハンマー部材20がM0の位置より上側に動くことを規制する規制部材である第1ハンマー規制部32aと、ハンマー部材20がM3の位置より下側に動くことを規制する規制部材である第2ハンマー規制部32bと、を備えている。
【0040】
なお、ハンマー部材20が鍵盤シャーシ1に組み付けられた状態において、ハンマー部材20の回転は下限ストッパ13と上限ストッパ28により規制されることにより、ハンマー部材20は、図9に示すように、M1~M2の範囲内で揺動する。このM1~M2の範囲を回転規制範囲である規制範囲Eという。
【0041】
すなわち、ハンマー部材20が自由に揺動する自由揺動範囲Fの上限であるM0は、規制範囲Eの外に位置しているので、第1ハンマー規制部32aは、演奏者に押鍵に応じたハンマー部材20の揺動に影響を与えない。また、ハンマー部材20が自由に揺動する自由揺動範囲Fの下限であるM3は、規制範囲Eの外に位置しているので、第2ハンマー規制部32bは、演奏者に押鍵に応じたハンマー部材20の揺動に影響を与えない。
【0042】
すなわち、これら第1、第2ハンマー規制部32a、32bのうち、第1ハンマー規制部32aは、図11に示すように、力点部側接点つまり鍵連結部25側接点であり、ハンマー部材20をハンマーホルダ21に回転可能に取り付けた状態で、これらを上下反転させてハンマーホルダ21を持ち上げた際に、ハンマー本体22の支点部である回転軸部24と力点部である鍵連結部25との間に位置するハンマー本体22の箇所に当接することにより、ハンマー部材20の回転を規制してハンマー部材20の錘部23側の垂れ下がりを、この第1ハンマー規制部32aが設けられていない実施例と比べて、抑えるようになっている。
【0043】
すなわち、この第1ハンマー規制部32aは、図11に示すように、ハンマー本体22の支点部である回転軸部24と力点部である鍵連結部25との間に位置するハンマー本体22に当接することにより、ハンマー部材20の錘部23側の垂れ下がりを、この第1ハンマー規制部32aが設けられていない実施例と比べて、抑えるように、ハンマー部材20の回転を規制して、ハンマー部材20をハンマーホルダ21に対して水平に近い状態で保持するようになっている。これにより、力点部側接点である第1ハンマー規制部32aは、ハンマー部材20が取り付けられたハンマーホルダ21を鍵盤シャーシ1に組み付け易くするようになっている。
【0044】
また、このハンマーホルダ21は、図10に示すように、ハンマー部材20が回転可能に取り付けられた状態で、これらを上下反転させて組立作業台などの載置面T上に配置させた際に、ハンマー部材20の錘部23側の下面とハンマーホルダ21の各保持片27aの各支持突起27cとが載置面Tに当接することにより、ハンマーホルダ21が載置面T上に安定した状態で配置されるようになっている。
【0045】
すなわち、このハンマー部材20は、図10に示すように、回転軸部24の軸本体24aがハンマー保持部27の一対の保持片27aの軸受け孔27bに支持された状態で、軸本体24aを中心に回転して、錘部23側のハンマー本体22の下面が載置面T上に当接した際に、ハンマー本体22が第1、第2ハンマー規制部32a、32bに接触することがないため、ハンマーホルダ21を載置面T上に安定させた状態で配置させるようになっている。
【0046】
この場合、ハンマーホルダ21は、図10に示すように、ハンマー部材20が回転可能に取り付けられた状態で、これらを上下反転させて載置面T上に配置させた際に、一対の保持片27aに設けられた複数の支持突起27cのうち、白鍵用のハンマー部材20を保持する一対の保持片27aの支持突起27cが載置面T上に配置されて、ハンマー部材20の錘部23側の下面が載置面T上に配置されるようになっている。
【0047】
また、図10に示すように、錘部23は略三角形の形状をしており、ハンマーユニット3を上下反転させて載置面T上に配置させた際に、錘部23の上側の一辺(図10では下側の一辺)の一部Pが載置面T上に接して安定するように、一辺の一部Pは真っすぐ曲がりのない形状になっている。
【0048】
一方、第2ハンマー規制部32bは、図9に示すように、荷重点部側接点つまり錘部23側接点であり、ハンマー部材20がM0~M3の自由揺動範囲F内で自由に揺動する際に、ハンマー部材20をM3の位置に規制する。すなわち、ハンマー部材20は、ハンマーユニット3が鍵盤シャーシ1に組み込まれていない状態において、荷重点部側接点である第2ハンマー規制部32bの位置から力点部側接点である第1ハンマー規制部32aの位置までの自由揺動範囲F内を揺動し、押鍵操作に応じて、ハンマー部材20が規制範囲E内を揺動する際に、ハンマー本体22が第1、第2ハンマー規制部32a、32bに接しない。
【0049】
また、ハンマーホルダ21は、図13(a)および図13(b)に示すように、複数のハンマー部材20を回転可能に保持した状態で、鍵盤シャーシ1のユニット載置部7の下面にビス(図示せず)によって取り付けられている。すなわち、ハンマーホルダ21は、ユニット載置部7の下面に設けられたほぼ円柱状の取付ボス33に対応するベース部26に設けられたビス挿入孔26aにビスを挿入させ、この挿入したビスを取付ボス33に螺着させることにより、鍵盤シャーシ1のユニット載置部7の下面に取り付けられている。
【0050】
この場合、ハンマーホルダ21は、図13(a)および図13(b)に示すように、鍵盤シャーシ1のユニット載置部7の下面に設けられた取付ボス33によって位置決めされる第1位置決め部34と、鍵盤シャーシ1のユニット載置部7から基板載置部8に亘って設けられた補強リブ35によって位置決められる第2位置決め部36と、を備えている。
【0051】
この場合、鍵盤シャーシ1の取付ボス33は、図13(a)および図13(b)に示すように、鍵盤シャーシ1のユニット載置部7の下面に鍵2の配列方向に沿って所定間隔で複数設けられている。鍵盤シャーシ1の補強リブ35は、ユニット載置部7から基板載置部8までの間において、鍵2の配列方向に沿って所定間隔で複数設けられている。
【0052】
これにより、第1位置決め部34は、図13(a)および図13(b)に示すように、鍵盤シャーシ1の取付ボス33が挿入する隙間であり、この隙間に鍵盤シャーシ1の取付ボス33が挿入することにより、鍵2の配列方向におけるハンマーホルダ21の位置を規制するようになっている。第2位置決め部36は、鍵盤シャーシ1の補強リブ35に設けられた切欠き部35aに係合する係合突起であり、この係合突起が補強リブ35の切欠き部35aに係合することにより、鍵2の前後方向におけるハンマーホルダ21の位置を規制するようになっている。
【0053】
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
この鍵盤楽器を組み立てる場合には、まず、ハンマー部材20を製作し、このハンマー部材20をハンマーホルダ21に取り付けて、ハンマーユニット3を組み立てる。すなわち、ハンマー部材20を製作する場合には、金属板をプレス加工などの打ち抜き加工によってハンマー本体22、錘部23、ハンマー本体22の取付孔22aを形成し、このハンマー本体22の取付孔22aに回転軸部24を取り付けると共に、ハンマー本体22の先端部に鍵連結部25を取り付ける。
【0054】
この場合、回転軸部24をハンマー本体22の取付孔22aに取り付ける際には、打ち抜き加工によってハンマー本体22の外周の縁部および取付孔22aの縁部に発生したバリ側の面から回転軸部24の軸本体24aをハンマー本体22の取付孔22aに嵌め込んで、回転軸部24のフランジ部24bをハンマー本体22のバリ側の面に押し当てる。
【0055】
これにより、ハンマー本体22の取付孔22aの縁部にバリが発生していても、このバリを回転軸部24のフランジ部24bで覆った状態で、回転軸部24の軸本体24aがハンマー本体22の取付孔22aに取り付けられる。この結果、ハンマー本体22に回転軸部24が取り付けられる。
【0056】
また、ハンマー本体22の先端部に鍵連結部25を取り付ける際には、鍵連結部25の当接本体部25aの上面部に設けられた円弧状の当接摺動部25bを上方に向けた状態で、鍵連結部25の当接本体部25aをハンマー本体22の先端部に嵌め込む。これにより、ハンマー本体22の先端部に鍵連結部25が取り付けられ、ハンマー部材20が組み立てられる。
【0057】
このハンマー部材20をハンマーホルダ21に取り付ける場合には、予め、ハンマー保持部27の一対の保持片27aの対向面に設けられた段差凹部31にグリースなどの潤滑剤を充填させる。この状態で、ハンマー部材20をハンマーホルダ21に取り付ける際には、ハンマー保持部27の一対の保持片27aに設けられた識別子である支持突起27cによって、白鍵用のハンマー部材20と黒鍵用のハンマー部材20とを区別して取り付ける。
【0058】
すなわち、支持突起27cが設けられた高さの高い一対の保持片27aには、白鍵用のハンマー部材20を取り付け、支持突起27cが設けられていない高さの低い一対の保持片27aには、黒鍵用のハンマー部材20を取り付ける。このように、ハンマー部材20をハンマーホルダ21に取り付ける際には、ハンマー保持部27の一対の保持片27a間にハンマー本体22の回転軸部24を上方から挿入させて、回転軸部24の軸本体24aの両端部を一対の保持片27aの各軸受け孔27bに回転可能に挿入させる。
【0059】
このときには、一対の保持片27aの対向面における上部側が互いに広がるように傾斜していることにより、一対の保持片27aを押し広げながら、一対の保持片27a間に回転軸部24の軸本体24aが容易に挿入される。この状態では、ハンマー本体22のバリ側の面に配置された回転軸部24のフランジ部24bが、ハンマー本体22のバリ側の面とこれに対向する一方の保持片27aの対向面との間に配置される。これにより、ハンマー本体22のバリ側の面が一方の保持片27aの対向面に接触することがない。
【0060】
この場合には、一対の保持片27aの対向面に接触リブ30が上下方向に沿って設けられているので、ハンマー本体22のバリ側の面に配置されたフランジ部24bが一方の保持片27aの接触リブ30に接触して配置される。また、この場合には、ハンマー本体22のバリ側と反対側の面が他方の保持片27aの接触リブ30に接触して配置される。
【0061】
この状態では、複数の接触リブ30が上部側を除いてハンマーホルダ21のベース部26の水平面である上面に対して垂直、つまり抜き勾配のない状態で設けられているので、ハンマー本体22のバリ側の面に配置されたフランジ部24bが一方の保持片27aの接触リブ30に均一に押し当てられると共に、ハンマー本体22のバリ側と反対側の面が他方の保持片27aの接触リブ30に均一に押し当てられる。
【0062】
この場合には、回転軸部24のフランジ部24bとハンマー本体22のバリ側と反対側の面とが一対の保持片27aの接触リブ30に接触することにより、ハンマー保持部27の一対の保持片27aに対するハンマー部材20の接触面積が小さくなる。このため、一対の保持片27aとハンマー部材20との間の摩擦抵抗が軽減されると共に、ハンマー部材20の横振れが防げる。これにより、ハンマー部材20が回転可能な状態で確実にかつ良好に保持され、ハンマーユニット3が組み立てられる。
【0063】
このようにして、組み立てられたハンマーユニット3を鍵盤シャーシ1に取り付ける際には、まず、図10に示すように、ハンマーユニット3と鍵盤シャーシ1とを上下反転させる。すなわち、ハンマーユニット3のハンマーホルダ21を複数のハンマー部材20と共に上下反転させて組立作業台などの載置面T上に配置させると共に、図11に示すように、鍵盤シャーシ1を上下反転させて組立作業台などの載置面T上に配置させる。
【0064】
このときには、一対の保持片27aに設けられた複数の支持突起27cのうち、白鍵用のハンマー部材20を保持する一対の保持片27aの上端部に設けられた支持突起27cが載置面T上に配置される。この状態では、ハンマー部材20の錘部23によってハンマー部材20が回転軸部24の軸本体24aを中心に回転して、ハンマー部材20の錘部23側の下面が載置面Tに当接する。
【0065】
また、このときは、図10に示すように、回転軸部24の軸本体24aがハンマー保持部27の一対の保持片27aの軸受け孔27bに支持された状態で、鍵連結部25側のハンマー本体22が第1、第2ハンマー規制部32a、32bに接触することなく、ハンマーホルダ21に保持される。このため、ハンマー部材20とハンマーホルダ21とが載置面T上に安定した状態で配置される。
【0066】
この状態で、ハンマーホルダ21を自動組立機(図示せず)によって載置面T上から持ち上げた際には、図11に示すように、ハンマー部材20の錘部23によってハンマー部材20が回転軸部24の軸本体24aを中心に回転するが、ハンマー本体22がハンマーホルダ21の力点部側接点である第1ハンマー規制部32aに当接して、ハンマー部材20の回転が規制される。
【0067】
このときには、規制部材の力点部側接点である第1ハンマー規制部32aによってハンマー部材20の錘部23側の垂れ下がりが最小限に抑えられるため、ハンマー部材20がハンマーホルダ21に対して水平に近い状態で保持される。これにより、ハンマー部材20が取り付けられたハンマーホルダ21が自動組立機によって鍵盤シャーシ1に組み付け易くなる。
【0068】
そして、複数のハンマー部材20が取り付けられたハンマーホルダ21を上下反転させた状態で、上下反転された鍵盤シャーシ1のユニット載置部7の上面(図1では下面)に組み付ける。このときには、複数のハンマー部材20が第1ハンマー規制部32aによってハンマーホルダ21に対して水平に近い状態で保持されるため、複数のハンマー部材20が大きく垂れ下がることない。このため、複数のハンマー部材20の大きな垂れ下がりによって邪魔されることがなく、ハンマーホルダ21が鍵盤シャーシ1のユニット載置部7の上面に組み付けられる。
【0069】
このときには、ハンマーホルダ21を第1、第2位置決め部34、36によって鍵盤シャーシ1に対して位置決めする。すなわち、第1位置決め部34は、鍵盤シャーシ1の取付ボス33が挿入して、鍵2の配列方向におけるハンマーホルダ21の位置を規制する。第2位置決め部36は、鍵盤シャーシ1の補強リブ35に設けられた切欠き部35aに係合して、鍵2の前後方向におけるハンマーホルダ21の位置を規制する。
【0070】
これにより、ハンマーホルダ21のベース部26に設けられたビス挿入孔26aが、ユニット載置部7の下面に設けられたほぼ円柱状の取付ボス33に対応する。この状態で、ビス(図示せず)をハンマーホルダ21のベース部26のビス挿入孔26aに挿入させ、この挿入したビスを取付ボス33に螺着させる。これにより、図12に示すように、鍵盤シャーシ1のユニット載置部7にハンマーホルダ21が取り付けられている。
【0071】
この後、鍵盤シャーシ1をハンマーユニット3と共に上下反転させて普通の状態にする。この状態で、鍵盤シャーシ1の基板載置部8にスイッチ部4を取り付ける。このときには、予め、ドーム状の膨出部16が設けられたゴムシートをスイッチ基板15上に取り付け、このスイッチ基板15の前端部をユニット載置部7上に配置し、他端部を基板載置部8上に設けられた基板支持部9上に配置する。
【0072】
そして、複数の鍵2を鍵盤シャーシ1に取り付ける。このときには、まず、鍵2の前端部内に鍵盤シャーシ1の鍵ガイド部6を挿入させて、鍵2のハンマー押圧部17の下部に設けられたハンマー連結部18に、ハンマー部材20の鍵連結部25の当接摺動部25bを挿入させる。この状態で、鍵2の後端部を鍵盤シャーシ1の鍵支持部11に鍵支持軸11aによって上下方向に回転可能に取り付ける。
【0073】
これにより、鍵2の前部内に鍵ガイド部6が挿入され、鍵2のハンマー押圧部17の下部に設けられたハンマー連結部18に、ハンマー部材20の鍵連結部25の当接摺動部25bが挿入された状態で、鍵2のスイッチ押圧部14が鍵盤シャーシ1のスイッチ部4の膨出部16に対応して配置される。これにより、鍵盤楽器が組み立てられる。
【0074】
次に、このように組み立てられた鍵盤楽器を使用する場合について説明する。
まず、鍵2が押鍵操作されていない初期状態のときには、図1に示すように、ハンマー部材20のハンマー本体22が錘部23の重量によってハンマー本体22の回転軸部24の軸本体24aを中心に反時計回りに回転し、このハンマー部材20の錘部23側の後端部が鍵盤シャーシ1の後脚部12における下端部に設けられた下限ストッパ13に上方から当接し、ハンマー本体22がM2の位置に規制されている。
【0075】
このときには、図1に示すように、ハンマー本体22がハンマーホルダ21の第2ハンマー規制部32bに当接することなく、離れている。このとき、鍵2のハンマー押圧部17のハンマー連結部18がハンマー本体22の先端部(図1では右端部)に位置する鍵連結部25によって押し上げられているので、鍵2が鍵盤シャーシ1の鍵載置部10上に設けられた鍵支持部11の鍵支持軸11aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制されている。この状態では、鍵2のスイッチ押圧部14がスイッチ部4の上方に位置して離れている。
【0076】
この状態で、鍵2を押鍵操作すると、図2に示すように、鍵2が鍵支持部11の鍵支持軸11aを中心に時計回りに回転して、ハンマー押圧部17のハンマー連結部18がハンマー部材20の鍵連結部25を押し下げる。これにより、ハンマー部材20が錘部23の重量に抗して、図1において時計回りに回転する。このときには、ハンマー部材20のハンマー本体22の回転によって、鍵2にアクション荷重が付与されるので、鍵荷重が重くなる。
【0077】
そして、鍵2の押鍵操作に伴ってハンマー部材20が時計回りに更に回転して、ハンマー本体22の後端部(図2では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部10の下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ28に下側から接近する。このときには、スイッチ部4が鍵2のスイッチ押圧部14によって押圧されて、ゴムシートの膨出部16が弾性変形することにより、スイッチ部4がスイッチ信号を出力する。
【0078】
これにより、発音部15aがスイッチ部4からのオン信号に基づいて楽音情報を生成し、この生成した楽音情報に基づいてスピーカ(図示せず)から楽音を放音させる。この後、ハンマー本体22の後端部(図1では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部10の下面に設けられたフェルトなどの上限ストッパ28に下側から当接し、ハンマー本体22が上限位置M1に規制されて、ハンマー部材20の回転が停止する。このときには、ハンマー部材20がハンマーホルダ21の第1ハンマー規制部32aに当接することがなく、離れている。
【0079】
そして、鍵2から指が離れて鍵2が離鍵動作を開始すると、ハンマー部材20のハンマー本体22が錘部23の重量によって回転軸部24の軸本体24aを中心に反時計回りに回転し、鍵2がスイッチ部4の膨出部16の弾性復帰力によって鍵支持部11の鍵支持軸11aを中心に反時計回りに回転を開始する。
【0080】
このように、ハンマー本体22が回転軸部24の軸本体24aを中心に反時計回りに更に回転し、鍵2が鍵支持部11の鍵支持軸11aを中心に反時計回りに更に回転する。そして、ハンマー本体22の錘部23側の後端部が鍵盤シャーシ1の後脚部12における下端部に設けられた下限ストッパ13に上方から当接する。
【0081】
これにより、鍵2は、図1に示すように、ハンマー押圧部17のハンマー連結部18がハンマー本体22の先端部(図1では右端部)に位置する鍵連結部25によって押し上げられるので、鍵2が鍵支持部11の鍵支持軸11aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制される。この状態では、鍵2が初期位置に戻り、ハンマー本体22が第2ハンマー規制部32bに当接することがなく、鍵2のスイッチ押圧部14がスイッチ部4の上方に位置して離れる。
【0082】
このように、ハンマー部材20の回転軸部24がハンマーホルダ21のハンマー保持部27の一対の保持片27aの軸受け孔27bを中心に回転する際には、回転軸部24のフランジ部24bがハンマー本体22のバリ側の面に押し当てられているので、ハンマー本体22の取付孔22aの縁部にバリがあっても、このバリをフランジ部24bで覆っていることにより、バリによる影響が防げる。
【0083】
また、ハンマー部材20は、回転軸部24の軸本体24aの両端部がハンマー保持部27の一対の保持片27aの軸受け孔27bに挿入された状態で、回転軸部24が一対の保持片27a間に挟まれて保持されているので、ハンマー本体22のバリ側の面とこれに対向する一方の保持片27aの対向面との間にフランジ部24bが配置されて、ハンマー本体22のバリ側の面とこれに対向する一方の保持片27aの対向面とが接触することがない。このため、ハンマー部材20の回転時にハンマー本体22のバリによって保持片27aが削られることがない。
【0084】
この場合、ハンマー部材20の回転軸部24が一対の保持片27a間に挟まれて保持された際には、一対の保持片27aの対向面に設けられた複数の接触リブ30が、傾斜している上部側を除いてハンマーホルダ21のベース部26の水平面である上面に対して垂直、つまり抜き勾配のない状態で設けられているので、ハンマー本体22のバリ側の面に配置されたフランジ部24bが一方の保持片27aの接触リブ30に均一に押し当てられ、ハンマー本体22のバリ側と反対側の面が他方の保持片27aの接触リブ30に均一に押し当てられる。
【0085】
このため、ハンマー部材20がハンマー保持部27に保持されて回転する際には、接触リブ30によってハンマー保持部27の一対の保持片27aに対するハンマー部材20の接触面積が小さくなる。このため、一対の保持片27aとハンマー部材20との間の摩擦抵抗が軽減されると共に、ハンマー部材20の横振れが防止される。これにより、ハンマー部材20が良好に保持された状態で円滑に回転する。
【0086】
このときには、一対の保持片27aの対向面における軸受け孔27bの周辺部における接触リブ30の間に設けられた段差凹部31に、グリースなどの潤滑剤が溜められていることにより、ハンマー部材20がハンマー保持部27に保持されて回転する際に、グリースなどの潤滑剤によっても、ハンマー部材20が円滑にかつ良好に回転する。この場合、段差凹部31は前後方向の両側が接触リブ30によって囲われていることにより、潤滑剤の流出を防いで潤滑剤による潤滑性能を長期間に亘って確保する。
【0087】
このように、この鍵盤楽器によれば、一端側の力点部である鍵連結部25と、他端側の荷重点部である錘部23と、鍵連結部25と錘部23との間の支点部である回転軸部24と、をそれぞれ有する複数のハンマー部材20と、これら複数のハンマー部材20を揺動可能に保持しているハンマーホルダ21と、を有するハンマーユニット3と、複数のハンマー部材20の揺動を規制範囲内に規制する規制部材である第1、第2ハンマー規制部32a、32bを有し、ハンマーユニット3が組み込まれている鍵盤シャーシ1と、を備えているので、規制部材である第1、第2ハンマー規制部32a、32bによって複数のハンマー部材20の揺動を規制範囲つまり自由揺動範囲F内に規制することができるので、組立作業性を向上させることができる。
【0088】
すなわち、この鍵盤楽器では、ハンマーユニット3を鍵盤シャーシ1に組み込むためにハンマーユニット3を上下反転させた状態において、複数のハンマー部材20それぞれの支点部である回転軸部24と荷重点部である錘部23側の先端部との間の鍵2の前後方向の第1長さを、回転軸部24と上限ストッパ28の回転軸部24側の一端との間の鍵2の前後方向の第2長さより長くするために、ハンマーホルダ21は、上下反転された状態で複数のハンマー部材20の各力点部である鍵連結部25側が接する複数の力点部側接点である第1ハンマー規制部32aを有していることにより、複数のハンマー部材20の揺動を特定の範囲つまり自由揺動範囲Fに規制することができる。
【0089】
つまり、この鍵盤楽器では、鍵2の押鍵操作時にハンマー部材20が回転する回転範囲である規制範囲E、つまりハンマー部材20が下限ストッパ13と上限ストッパ28との間で回転する回転範囲である規制範囲Eを超えた際に、力点部側接点である第1ハンマー規制部32aによってハンマー部材20の回転を規制するこができるので、ハンマー部材20をハンマーホルダ21で回転可能に保持した状態で、ハンマーホルダ21を鍵盤シャーシ1に組み付ける際に、第1ハンマー規制部32aによってハンマー部材20が大きく垂れ下るのを防ぐことができ、これにより組立作業性を向上させることができる。
【0090】
また、この鍵盤楽器では、鍵2の押鍵操作時にハンマー部材20が回転する回転範囲である規制範囲E、つまりハンマー部材20が下限ストッパ13と上限ストッパ28との間で回転する規制範囲Eを超えた際に、ハンマー部材20の回転を力点部側接点である第1ハンマー規制部32aが規制するので、ハンマー部材20がハンマーホルダ21によって鍵盤シャーシ1に取り付けられた状態で、鍵2の押鍵操作に応じてハンマー部材20が回転して鍵2にアクション荷重を付与する際に、第1ハンマー規制部32aがハンマー部材20の回転動作を妨げないようにすることができる。
【0091】
また、この鍵盤楽器では、力点部側接点である第1ハンマー規制部32aによってハンマー部材20の回転を規制してハンマー部材20の錘部23側の垂れ下がりを最小限に抑えることができるので、ハンマー部材20をハンマーホルダ21で回転可能に保持した状態で、ハンマーホルダ21を上下反転させて鍵盤シャーシ1に組み付ける際に、ハンマー部材20が大きく垂れ下るのを防ぐことができ、これにより組立作業性を向上させることができる。
【0092】
さらに、この鍵盤楽器によれば、ハンマーユニット3を鍵盤シャーシ1に組み込むためにハンマーユニット3を上下反転させて載置面T上に載置させた際に、ハンマーホルダ21の上端である支持突起27cと、複数のハンマー部材20それぞれの荷重点部である錘部23とが載置面T上に接するように、ハンマーホルダ21が複数のハンマー部材20を保持していることにより、ハンマーホルダ21を載置面T上に安定させた状態で配置させることができるので、これによっても組立作業性を向上させることができる。
【0093】
すなわち、この鍵盤楽器では、ハンマー部材20の錘部23側とハンマーホルダ21とを載置面T上に当接させた状態で、ハンマーホルダ21を載置面T上に安定させた状態で配置させることができるので、ハンマー部材20がハンマーホルダ21の規制部材である第1、第2ハンマー規制部32a、32bに当接することがなく、ハンマー部材20をハンマーホルダ21で回転可能に保持した状態で、ハンマーホルダ21を上下反転させて鍵盤シャーシ1に組み付ける際に、ハンマー部材20を保持したハンマーホルダ21を自動組立機によって良好に保持して持ち上げることができ、これにより組立作業性を向上させることができる。
【0094】
この場合、この鍵盤楽器では、押鍵操作に応じて、複数のハンマー部材20が規制範囲E内を揺動する際に、複数のハンマー部材20が力点部側接点である第1ハンマー規制部32aに接しないことにより、鍵2の押鍵操作に応じてハンマー部材20が規制範囲E内で回転して鍵2にアクション荷重を付与する際に、第1ハンマー規制部32aがハンマー部材20の回転動作を妨げないようにすることができるので、鍵2を良好に押鍵操作することができる。
【0095】
また、この鍵盤楽器のハンマーホルダ21は、ハンマーユニット3が鍵盤シャーシ1に組み込まれていない状態において、複数のハンマー部材20の荷重点部側である錘部23側に接する荷重点部側接点である第2ハンマー規制部32bを有することにより、ハンマーユニット3が鍵盤シャーシ1に組み込まれていない状態において、荷重点部側接点である第2ハンマー規制部32bの位置から力点部側接点である第1ハンマー規制部32aの位置までの自由揺動範囲F内を揺動し、押鍵操作に応じて、複数のハンマー部材20が規制範囲E内を揺動する際に、ハンマー部材20が荷重点部側接点である第2ハンマー規制部32bに接しないようにすることができる。このため、鍵2の押鍵操作に応じてハンマー部材20が回転して鍵2にアクション荷重を付与する際に、第2ハンマー規制部32bがハンマー部材20の回転動作を妨げないようにすることができるので、鍵2を良好に押鍵操作することができる。
【0096】
また、この鍵盤楽器では、ハンマーホルダ21がハンマー部材20を複数配列させた状態で保持することにより、ハンマーホルダ21に複数のハンマー部材20を保持させることができるので、鍵盤シャーシ1に複数のハンマー部材20をハンマーホルダ21によって一度に組む付けることができ、これによっても組立作業性を向上させることができる。
【0097】
また、この鍵盤楽器では、ハンマーホルダ21がハンマー部材20を回転可能に挟んで保持するハンマー保持部27を備えていることにより、このハンマー保持部27によってハンマー部材20を回転可能な状態で挟むことができ、これによりハンマー部材20を確実にかつ良好に保持することができる。
【0098】
すなわち、ハンマー保持部27は、一対の保持片27aに軸受け孔27bを同一軸上に対応させて設けた構造であるから、ハンマー部材20の回転軸部24を軸受け孔27bに挿入させた状態で、回転軸部24を一対の保持片27aで良好に挟むことができ、これによりハンマー部材20を回転可能な状態で確実にかつ良好に保持することができる。
【0099】
また、この鍵盤楽器では、複数の保持片27aが複数のハンマー部材20を保持していない状態において、複数の保持片27aが白鍵用のハンマー部材20と黒鍵用のハンマー部材20とのいずれのハンマー部材20を保持するかを識別するために、複数の保持片27aは、識別子である支持突起27cを有していることにより、この識別子である支持突起27cによって白鍵用のハンマー部材20と黒鍵用のハンマー部材20とを識別して取り付けることができる。
【0100】
すなわち、識別子は、複数の保持片27aのうち白鍵用のハンマー部材20を保持している一対の保持片27aの上端に設けられている複数の支持突起27cであることにより、支持突起27cが、黒鍵用のハンマー部材20が取り付けられるハンマー保持部27の上端部よりも高いことにより、白鍵用のハンマー部材20と黒鍵用のハンマー部材20とが取り付けられる際に、ハンマー保持部27の支持突起27cによって、白鍵用のハンマー部材20と黒鍵用のハンマー部材20とを識別して取り付けることができる。
【0101】
この場合、ハンマーホルダ21は、ハンマーユニット3を鍵盤シャーシ1に組み込むためにハンマーユニット3を上下反転させて載置面T上に載置させた際に、複数の支持突起27cと、複数のハンマー部材20それぞれの荷重点部である錘部23が、載置面T上に接するように、複数のハンマー部材20を保持していることにより、ハンマー部材20がハンマーホルダ21の規制部材である第1、第2ハンマー規制部32a、32bに当接することがなく、ハンマーホルダ21を載置面T上に安定させた状態で配置させることができるので、これによっても組立作業性を向上させることができる。
【0102】
さらに、この鍵盤楽器では、ハンマー部材20の回転軸部24が、一対の保持片27aの各軸受け孔27bに挿入する軸本体24aと、この軸本体24aに設けられた鍔状のフランジ部24bと、を備えているので、フランジ部24bをハンマー本体22のバリ側の面に押し当てることができ、これによりハンマー本体22の取付孔22aの縁部にバリがあっても、このバリをフランジ部24bで覆うことができるので、バリによる影響を防ぐことができる。
【0103】
また、ハンマー部材20は、回転軸部24の軸本体24aの両端部がハンマー保持部27の一対の保持片27aの軸受け孔27bに挿入された状態で、回転軸部24が一対の保持片27a間に挟まれて保持されることにより、ハンマー本体22のバリ側の面とこれに対向する一方の保持片27aの対向面との間にフランジ部24bを配置させて、ハンマー本体22のバリ側の面と一対の保持片27aの対向面との接触を防ぐことができ、これによりハンマー部材20の回転時にハンマー本体22のバリによって保持片27aが削られることがない。
【0104】
また、一対の保持片27aは、互いに対向する対向面の上部側が互いに広がるように傾斜していることにより、ハンマー本体22の回転軸部24を一対の保持片27a間に挿入させる際に、一対の保持片27aを押し広げながら、一対の保持片27a間に回転軸部24の軸本体24aを容易に挿入させることができる。
【0105】
この場合、一対の保持片27aの対向面には、複数の接触リブ30が、傾斜している上部側を除いて、ハンマーホルダ21のベース部26を水平面である上面に対して垂直、つまり抜き勾配のない状態で設けられているので、ハンマー本体22のバリ側の面に配置されたフランジ部24bを一方の保持片27aの接触リブ30に均一に押し当てることができると共に、ハンマー本体22のバリ側と反対側の面を他方の保持片27aの接触リブ30に均一に押し当てることができる。
【0106】
このため、ハンマー保持部27は、ハンマー部材20が回転する際に、接触リブ30によってハンマー保持部27の一対の保持片27aに対するハンマー部材20の接触面積を小さくすることができ、一対の保持片27aとハンマー部材20との間の摩擦抵抗を軽減させることができると共に、ハンマー部材20の横振れを防ぐことができるので、ハンマー部材20を良好に保持した状態で円滑に回転させることができる。
【0107】
この場合、一対の保持片27aの対向面には、段差凹部31が保持片27aの前後方向の両側に位置する接触リブ30によって囲われていることにより、この段差凹部31にグリースなどの潤滑剤を充填させることができると共に、充填された潤滑剤の流出を防ぐことができので、潤滑剤による潤滑性能を長期間に亘って確保することができる。
【0108】
また、この鍵盤楽器では、ハンマーホルダ21を鍵盤シャーシ1に対して位置決めするための第1、第2位置決め部34、36を備えていることにより、第1、第2位置決め部34、36によって鍵2の配列方向と鍵2の前後方向とにおけるハンマーホルダ21の位置を正確に規制して、ハンマーホルダ21を鍵盤シャーシ1に精度良く位置決めして取り付けることができる。
【0109】
すなわち、第1位置決め部34は、鍵盤シャーシ1の取付ボス33が挿入する隙間であり、この隙間に鍵盤シャーシ1の取付ボス33が挿入することにより、鍵2の配列方向におけるハンマーホルダ21の位置を正確に規制することができる。第2位置決め部36は、鍵盤シャーシ1の補強リブ35に設けられた切欠き部35aに係合する係合突起であり、この係合突起が補強リブ35の切欠き部35aに係合することにより、鍵2の前後方向におけるハンマーホルダ21の位置を正確に規制することができる。
【0110】
なお、上述した実施形態では、ハンマー部材20に回転軸部24を設け、ハンマーホルダ21のハンマー保持部27における一対の保持片27aに軸受け孔27bを同一軸上に対応させて設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えばハンマー部材20に軸受け孔27bを設け、ハンマーホルダ21のハンマー保持部27における一対の保持片27aの対向面に回転軸部24を同一軸上に対応させて設けた構造であっても良い。
【0111】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0112】
(付記)
請求項1に記載の発明は、一端側に設けられている力点部と、他端側に設けられている荷重点部と、前記力点部と前記荷重点部との間に設けられている支点部と、をそれぞれ有する複数のハンマー部材と、前記複数のハンマー部材を揺動可能に保持しているハンマーホルダと、を有するハンマーユニットと、押鍵操作に応じた前記複数のハンマー部材の揺動を規制範囲内に規制する規制部材を有し、前記ハンマーユニットが組み込まれている鍵盤シャーシと、を備え、前記ハンマーユニットを前記鍵盤シャーシに組み込むために前記ハンマーユニットを上下反転させた状態において、前記複数のハンマー部材それぞれにおける前記支点部と、前記荷重点部の他端と、の間の鍵の前後方向の長さを、前記支点部と、前記規制部材における前記支点部側の一端と、の間の前記鍵の前後方向の長さより長くするために、前記ハンマーホルダは、前記上下反転させた状態で前記複数のハンマー部材のそれぞれの前記力点部側に接する複数の力点部側接点を有していることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0113】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記ハンマーホルダは、前記ハンマーユニットを前記鍵盤シャーシに組み込むために前記ハンマーユニットを上下反転させて載置面上に載置させた際に、前記ハンマーホルダの上端と、前記複数のハンマー部材それぞれの荷重点部が、前記載置面上に接するように、前記複数のハンマー部材を保持していることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0114】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の鍵盤楽器において、前記複数のハンマー部材は、少なくとも1つの白鍵用のハンマー部材と、前記少なくとも1つの白鍵用のハンマー部材とは形状が異なる少なくとも1つの黒鍵用のハンマー部材と、を含み、前記ハンマーホルダは、前記複数のハンマー部材をそれぞれ保持するための複数の保持片を含み、前記複数の保持片が前記複数のハンマー部材を保持していない状態において、前記複数の保持片が前記少なくとも1つの白鍵用のハンマー部材及び前記少なくとも1つの黒鍵用のハンマー部材のいずれのハンマー部材を保持するかを識別するために、前記複数の保持片は、識別子を有していることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0115】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鍵盤楽器において、前記識別子は、前記複数の保持片のうち前記少なくとも1つの白鍵用のハンマー部材を保持している一対の保持片の上端に設けられている複数の突起であることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0116】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の鍵盤楽器において、前記ハンマーホルダは、前記ハンマーユニットを前記鍵盤シャーシに組み込むために前記ハンマーユニットを上下反転させて載置面上に載置させた際に、前記複数の突起と、前記複数のハンマー部材それぞれの荷重点部が、前記載置面上に接するように、前記複数のハンマー部材を保持していることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0117】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記複数のハンマー部材それぞれの支持部はそれぞれ軸を含み、前記ハンマーホルダは、前記軸を軸止する複数の孔を含むことを特徴とする鍵盤楽器である。
【0118】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記押鍵操作に応じて、前記複数のハンマー部材が前記規制範囲内を揺動する際に、前記複数のハンマー部材は、前記力点部側接点に接しないことを特徴とする鍵盤楽器である。
【0119】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記ハンマーホルダは、前記ハンマーユニットが前記鍵盤シャーシに組み込まれていない状態において、前記複数のハンマー部材のそれぞれの前記荷重点部側に接する複数の荷重点部側接点を有することにより、前記複数のハンマー部材は、前記ハンマーユニットが前記鍵盤シャーシに組み込まれていない状態において、前記荷重点部側接点の位置から前記力点部側接点の位置までの自由揺動範囲内を揺動し、前記押鍵操作に応じて、前記複数のハンマー部材が前記規制範囲内を揺動する際に、前記複数のハンマー部材は、前記荷重点部側接点に接しないことを特徴とする鍵盤楽器である。
【符号の説明】
【0120】
1 鍵盤シャーシ
2 鍵
3 ハンマーユニット
4 スイッチ部
7 ユニット載置部
10 鍵載置部
13 下限ストッパ
15a 発音部
17 ハンマー押圧部
20 ハンマー部材
21 ハンマーホルダ
22 ハンマー本体
23 錘部(荷重点部)
24 回転軸部(支点部)
24a 軸本体
24b フランジ部
25 鍵連結部(力点部)
26 ベース部
27 ハンマー保持部
27a 保持片
27b 軸受け孔
27c 支持突起(識別子)
28 上限ストッパ
30 接触リブ
31 段差凹部
32a 第1ハンマー規制部(力点部側接点)
32b 第2ハンマー規制部(荷重点部側接点)
33 取付ボス
34 第1位置決め部
35 補強リブ
36 第2位置決め部
E 規制範囲
F 自由揺動範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13