(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20221221BHJP
G10B 3/24 20190101ALI20221221BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
G10B3/24
(21)【出願番号】P 2020184947
(22)【出願日】2020-11-05
(62)【分割の表示】P 2018195100の分割
【原出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直也
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 弘志
(72)【発明者】
【氏名】今村 尚人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】井上 馨
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-211618(JP,A)
【文献】特開2009-229860(JP,A)
【文献】特開2017-090922(JP,A)
【文献】特開2006-311324(JP,A)
【文献】特開2012-217080(JP,A)
【文献】特開昭54-034054(JP,A)
【文献】実開平03-039797(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
H04R 1/02
G10B 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵を有する鍵盤と、
前記複数の鍵の操作面を露出するようにして前記鍵盤を収納するとともに、前記複数の鍵の後端側で前記操作面よりも高い位置にスピーカの音を前方に放音するための放音孔が設けられている前面部を有するケースと、
を備え、
前記ケースは、前記前面部に連結するとともに前記前面部の後方に延びる第1補強リブと、前記第1補強リブと連結するとともに前記複数の鍵の配列方向に延びる第2補強リブと、を有する、鍵盤楽器。
【請求項2】
前記第2補強リブは、前記第1補強リブの後端部に連結し、前記鍵の前後方向の長さより前記複数の鍵の配列方向の長さが長い枠状のリブである、請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記ケースは、前記前面部における前記複数の鍵の配列方向の異なる位置にそれぞれ連結する複数の前記第1補強リブを有し、
前記第2補強リブは、前記複数の鍵の配列方向の異なる位置に前記複数の前記第1補強リブがそれぞれ連結されている、請求項1または2に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
白鍵と黒鍵を含む複数の鍵を有する鍵盤と、
前記複数の鍵の操作面を露出するようにして前記鍵盤を収納するとともに、前記複数の鍵の後端側で前記操作面よりも高い位置にスピーカの音を前方に放音するための放音孔が設けられている前面部を有するケースと、
を備え、
前記ケースは、前記前面部に連結するとともに前記前面部の後方に延びる第1補強リブを有し、
複数の前記黒鍵それぞれに対応した位置に複数の前記第1補強リブが設けられている、鍵盤楽器。
【請求項5】
複数の鍵を有する鍵盤と、
前記複数の鍵の操作面を露出するようにして前記鍵盤を収納するとともに、前記複数の鍵の後端側で前記操作面よりも高い位置にスピーカの音を前方に放音するための放音孔が設けられている前面部を有するケースと、
を備え、
前記ケースは、前記前面部に連結するとともに前記前面部の後方に延びる第1補強リブを有し、
前記第1補強リブの下部には
、フェル
トの位置を規制する位置規制部が設けられている、鍵盤楽器。
【請求項6】
前記ケースは、前記複数の鍵の配列方向の異なる位置に前記第2補強リブが複数設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
【請求項7】
前記ケースは、前記第2補強リブに連結する複数の前記第1補強リブと、前記第2補強リブに連結しない複数の前記第1補強リブを有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
【請求項8】
前記ケースは、前記スピーカの音を後方に放音するための放音孔が設けられている背面放音部を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、複数の鍵およびスピーカを備えた楽器ケースにおける複数の鍵の後部上側の前面部に、左右方向に長い複数の放音孔を備えた放音部を設け、この放音部からスピーカの音を楽器ケースの前方に向けて放音する構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような鍵盤楽器では、放音部の複数の放音孔が複数の鍵の配列方向に長く、かつ上下方向に複数配列されているため、複数の放音孔内にそれぞれ複数の仕切リブを所定間隔で設けることにより、放音部を補強している。
【0005】
しかしながら、このような鍵盤楽器では、複数の仕切リブを複数の放音孔内に設けた構造であるから、楽器ケースの肉厚を厚く形成しなければ、放音部の強度を十分に確保することができないという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、ケースの肉厚を薄くしても、十分な強度を確保できる鍵盤楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一態様は、複数の鍵を有する鍵盤と、前記複数の鍵の操作面を露出するようにして前記鍵盤を収納するとともに、前記複数の鍵の後端側で前記操作面よりも高い位置にスピーカの音を前方に放音するための放音孔が設けられている前面部を有するケースと、を備え、前記ケースは、前記前面部に連結するとともに前記前面部の後方に延びる第1補強リブと、前記第1補強リブと連結するとともに前記複数の鍵の配列方向に延びる第2補強リブと、を有する、鍵盤楽器である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ケースの肉厚を薄くしても、十分な強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態を示した斜視図である。
【
図4】
図2に示された鍵盤楽器の一部を示した拡大正面図である。
【
図5】
図2に示された鍵盤楽器のA-A矢視における拡大断面図である。
【
図6】
図2に示された鍵盤楽器のB-B矢視における要部を示した拡大断面図である。
【
図7】
図1に示された鍵盤楽器の上部ケースの内部側を示した斜視図である。
【
図8】
図7に示された上部ケースを示した斜視図である。
【
図9】
図8に示された上部ケースを前側から見た要部の拡大正面図である。
【
図10】
図9に示された上部ケースの放音部の一部を示した拡大正面図である。
【
図11】
図8に示された上部ケースの要部を示した拡大斜視図である。
【
図12】
図11に示された上部ケースの要部を示した内面図である。
【
図13】
図9に示された上部ケースのC-C矢視における拡大断面図である。
【
図14】
図9に示された上部ケースのD-D矢視における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図14を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態について説明する。
この鍵盤楽器は、
図1~
図3に示すように、左右方向に長い横長の楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、上部ケース2と下部ケース3とを備えている。
【0011】
上部ケース2は、
図1~
図3に示すように、上面における後部側と両側部とを除いて、前側のほぼ半分以上と前側部の上部とに亘って開放部2aが設けられて、下部側が開放された横長のほぼ箱状に形成されている。下部ケース3は、上側に開放された横長の箱状に形成されている。これにより、楽器ケース1は、上部ケース2の下部外周が下部ケース3の上部外周に配置されて接合された構造になっている。この場合、上部ケース2の上面には、ボリュームスイッチSW1および複数の押釦スイッチSW2が設けられている。
【0012】
また、この楽器ケース1の内部には、
図1~
図7に示すように、鍵盤部4と複数のスピーカ5とが設けられている。鍵盤部4は、
図5に示すように、下部ケース3内に配置された鍵盤シャーシ6と、この鍵盤シャーシ6上に配列された複数の鍵7と、これら複数の鍵7それぞれにアクション荷重を付与する複数のハンマー部材8と、複数の鍵7の押鍵操作に応じてそれぞれスイッチ動作する複数のスイッチ部9と、を備えている。
【0013】
複数の鍵7は、
図1~
図6に示すように、複数の白鍵10と複数の黒鍵11とを有している。複数の白鍵10それぞれは、
図5に示すように、後部が鍵盤シャーシ6の後端部上に設けられた鍵支持部12に回転可能に取り付けられ、前端部が鍵盤シャーシ6の前端部に配置されて鍵盤シャーシ6の白鍵ガイド部13aによって上下方向にガイドされるようになっている。
【0014】
複数の黒鍵11それぞれは、
図1、
図2、
図4~
図6に示すように、前後方向の長さが白鍵10の前後方向の長さよりも短く形成され、高さが後部を除いて白鍵10よりも高く形成されている。すなわち、複数の黒鍵11それぞれは、
図5に示すように、その後部が複数の白鍵10の各後部と同じ高さになっている。
【0015】
また、これら複数の黒鍵11それぞれは、
図5に示すように、白鍵10と同様、後部が鍵盤シャーシ6の鍵支持部12に回転可能に取り付けられ、前部が鍵盤シャーシ6の黒鍵ガイド部13bによって上下方向にガイドされるようになっている。この場合、鍵支持部12は、その高さが白鍵10および黒鍵11の各後部よりも少し高く形成されている。
【0016】
これにより、複数の鍵7は、
図5に示すように、楽器ケース1内に配置された際に、各鍵7の後部が上部ケース2の後側の部の下側に配置された状態で、上部ケース2の開放部2aに対応して上側に露出するようになっている。この場合、複数の黒鍵11それぞれは、前部側が高く、後部側に向けて次第に低くなるように傾斜している。これら複数の黒鍵11は、その前部側の高さが上部ケース2の上面と同じ高さか、それよりも少し低く形成されている。
【0017】
複数のハンマー部材8それぞれは、
図5に示すように、ハンマー本体15と錘部16と軸部17と鍵連動部18とを備え、軸部17が鍵盤シャーシ6のハンマー支持部14に回転可能に取り付けている。この場合、複数のハンマー部材8は、白鍵用のハンマー部材8aと黒鍵用のハンマー部材8bとを備えている。白鍵用のハンマー部材8aは、黒鍵用のハンマー部材8bよりも長く、かつハンマー本体15が黒鍵用のハンマー部材8bのハンマー本体15と異なる形状になっている。
【0018】
これにより、複数のハンマー部材8それぞれは、
図5に示すように、錘部16の重量によってハンマー本体15が鍵盤シャーシ6のハンマー支持部14に取り付けられた軸部17を中心に反時計回り回転して、錘部16の下端部が下限ストッパ20に当接し、この状態で鍵連動部18が鍵7を押し上げて初期位置に位置規制させるようになっている。
【0019】
また、これら複数のハンマー部材8それぞれは、
図5に示すように、鍵7が押鍵操作され、この押鍵操作された鍵7によって鍵連動部18が錘部16の重量に抗して押し下げられた際に、ハンマー本体15が鍵盤シャーシ6のハンマー支持部14に取り付けられた軸部17を中心に時計回り回転し、鍵7にアクション荷重を付与して、錘部16の上端部を上限ストッパ21に当接させるようになっている。
【0020】
複数のスイッチ部9それぞれは、
図5に示すように、鍵盤シャーシ6上に設けられたスイッチ基板9aと、このスイッチ基板9a上に設けられて各鍵7に対応する膨出ゴム9bと、を備えている。これら複数のスイッチ部9は、鍵7が押鍵操作された際に、鍵7の押圧部7aが膨出ゴム9bを弾性変形させて、膨出ゴム9b内の可動接点をスイッチ基板9a上の固定接点(いずれも図示せず)に接触させることにより、スイッチ信号を出力するようになっている。
【0021】
ところで、複数のスピーカ5は、
図5~
図7に示すように、上部ケース2内における左右方向の両側にそれぞれ上部ケース2の背面側に向けて設けられている。すなわち、これら複数のスピーカ5は、上部ケース2内における左右両側の背面にそれぞれ取り付けられている。これにより、複数のスピーカ5それぞれは、上部ケース2の背面側に向けて鍵盤部4の鍵盤シャーシ6の後部と上部ケース2の背面との間に配置されている。
【0022】
この場合、上部ケース2の左右両側における背面には、
図3、
図5、
図6に示すように、スピーカ5で発生された楽音を放音するための第1放音部22が複数のスピーカ5にそれぞれ対応して設けられている。これら第1放音部22には、多数の孔がそれぞれ設けられている。これにより、第1放音部22は、スピーカ5で発生した楽音を楽器ケース1の背面から後方に向けて放音するようになっている。
【0023】
また、上部ケース2の上部における前端部、つまり上部ケース2の開放部2aの後部側の縁部には、
図1、
図4、
図9、
図10に示すように、前面部23が複数の鍵7における各後部の上側に対応して設けられている。この前面部23における左右両側には、第2放音部24がそれぞれ設けられている。この第2放音部24は、左右方向に長いスリット状の放音孔24aが上下2段に配列されている。
【0024】
この場合、第2放音部24は、
図1、
図2、
図4、
図6~
図9に示すように、第1放音部22の左右方向の長さよりも長く設けられている。すなわち、この第2放音部24は、スピーカ5に対応する箇所から上部ケース2の前面部23の中央側に向けてスピーカ5の左右方向の長さの2倍程度の長さで設けられている。この第2放音部24が設けられた上部ケース2の前面部23における内面には、
図5~
図10に示すように、複数の第1補強リブ25が複数の鍵7の配列方向に沿って所定間隔で設けられている。
【0025】
すなわち、複数の第1補強リブ25それぞれは、
図11~
図14に示すように、鍵7の前後方向の長さS1が鍵7の配列方向の長さS2(厚み)よりも長い縦板状をなしている(
図12参照)。これら複数の第1補強リブ25それぞれは、上部ケース2の上面における内面から上部ケース2の前面部23の下端部に亘って複数の放音孔24aを横切った状態で上下方向に延びていると共に、上部ケース2の背面に向けて延びている。
【0026】
この場合、複数の第1補強リブ25の下端部は、
図11~
図14に示すように、上部ケース2の前面部23の下端面と同一の高さで、同一面上に配置されている。これにより、複数の第1補強リブ25は、上部ケース2の上面部および前面部23の肉厚が薄く形成されていても、上部ケース2の上面部および前面部23を強固に補強するようになっている。
【0027】
この場合、複数の第1補強リブ25のうち、第2放音部24に対応する複数の第1補強リブ25は、
図11~
図14に示すように、上部ケース2の前面部23の肉厚が薄く形成され、かつ第2放音部24にスリット状の複数の放音孔24aが設けられていても、上部ケース2の上面における内面から上部ケース2の前面部23の下端部に亘って複数の放音孔24aを横切った状態で設けられていることにより、第2放音部24を強固に補強するようになっている。
【0028】
また、これら複数の第1補強リブ25のうち、少なくとも第2放音部24に対応する複数の第1補強リブ25は、
図4~
図6に示すように、鍵盤部4の複数の黒鍵11にそれぞれ対応して設けられている。これにより、第2放音部24に対応する複数の第1補強リブ25は、上部ケース2の前面部23の第2放音部24が複数の鍵7の各後部の上側に配置されていても、鍵盤部4を前方から見た際に、複数の黒鍵11によって前方から見えないように隠されている。
【0029】
また、上部ケース2の上面の内面における複数の第1補強リブ25の後部側には、
図11~
図14に示すように、複数の第1補強リブ25の配列方向に沿って長い枠状の第2補強リブ26が設けられている。この第2補強リブ26は、上部ケース2の前面部23と平行な一対の長辺部26aと、これら一対の長辺部26aの間に所定間隔で設けられた短辺部26bと、を備え、これらによって全体が細長い枠状に形成されている。
【0030】
すなわち、この第2補強リブ26は、
図11~
図14に示すように、鍵7の前後方向の長さS3(幅)が鍵7の配列方向の長さS4よりも短い横長の枠状に形成されている(
図12参照)。この第2補強リブ26の長辺部26aには、複数の第1補強リブ25がそれぞれ連結されている。これにより、複数の第1補強リブ25と第2補強リブ26とは、上部ケース2の上面と前面部23とを、より一層、強固に補強して、上部ケース2と前面部23との撓みや捩れを防ぐようになっている。
【0031】
この場合、第2補強リブ26は、
図5および
図6に示すように、下部ケース3上に上部ケース2が重なり合った際に、鍵盤シャーシ6に設けられて複数の鍵7をそれぞれ回転可能に支持する複数の鍵支持部12に対応して設けられている。これにより、第2補強リブ26は、鍵盤シャーシ6に設けられた複数の鍵支持部12の上端部に配置されて支持されるようになっている。すなわち、鍵盤シャーシ6に設けられた複数の鍵支持部12は、複数の各鍵7の各後部の上側に突出していることにより、各上端部に第2補強リブ26が配置されても、複数の鍵7の回転動作を妨げないようになっている。
【0032】
また、この第2補強リブ26には、
図11~
図14に示すように、第2放音部24のうち、スピーカ5よりも上部ケース2の前面部23における左右方向の中間部寄りに位置する第2放音部24に対応する一部の領域に、第2補強リブ26が存在しない音抜け部27が設けられている。この音抜け部27は、第2補強リブ26が設けられていない箇所であり、スピーカ5で発生した音が第2補強リブ26によって遮らないようにして、音抜けを向上させるようになっている。
【0033】
この場合、音抜け部27の中間部には、
図11~
図14に示すように、左右方向の長さが短い枠状の補助補強リブ27aが設けられている。この補助補強リブ27aは、音抜け部27の左右方向の長さが長い場合に、上部ケース2の強度が低下するのを防ぐためのものであり、上部ケース2が下部ケース3上に重なって配置された際に、第2補強リブ26と同様、鍵盤シャーシ6の鍵支持部12に支持されるようになっている。
【0034】
また、上部ケース2の前面部23の下端部と複数の第1補強リブ25の各下端部とには、
図5に示すように、帯状のフェルト28が上部ケース2の前面部23の全長に亘って貼り付けられている。この場合、複数の第1補強リブ25の各下端部には、
図11~
図14に示すように、フェルト28の前後位置を規制する位置規制部25aが設けられている。これにより、フェルト28は、第1補強リブ25の位置規制部25aによって前後位置が規制されることにより、フェルト28の前端が上部ケース2の前面部23に対して揃えられている。
【0035】
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
この鍵盤楽器で演奏する場合には、複数の鍵7を押鍵操作すれば良い。すなわち、複数の鍵7を押鍵操作すると、押鍵された鍵7がハンマー部材8の鍵連動部18を押し下げて、ハンマー部材8の軸部17を中心にハンマー本体15を回転させるので、ハンマー部材8の回転動作に伴って押鍵された鍵7にアクション荷重が付与される。
【0036】
このときには、押鍵された鍵7の押圧部7aがスイッチ部9の膨出ゴム9bを押圧して弾性変形させるので、膨出ゴム9b内の可動接点がスイッチ基板9aの固定接点に接触してスイッチ信号を出力する。すると、スイッチ9のスイッチ信号に基づいて発音部(図示せず)が楽音データを生成して複数のスピーカ5から楽音を発生させる。
【0037】
このときには、複数のスピーカ5で発生した楽音が、上部ケース2の背面に設けられた第1放音部22から楽器ケース1の後方、つまり観客側に向けて放音される。また、このときには、複数のスピーカ5で発生した楽音のうちの低音の楽音が、上部ケース2の前面部23に設けられた第2放音部24の複数の放音孔24aから楽器ケース1の前側、つまり演奏者側に向けて放音される。
【0038】
このように、上部ケース2の前面部23に設けられた第2放音部24の複数の放音孔24aからスピーカ5の音が放音されるときには、第2放音部24の複数の放音孔24aが上部ケース2の前面部23にその左右方向にスリット状に細長く形成されていても、第1補強リブ25によって第2放音部24が補強されていることにより、複数の放音孔24aを通り抜ける音によって第2放音部24が振動することによる異音の発生が防げる。
【0039】
また、このときには、枠状の第2補強リブ26に音抜け部27が設けられていることにより、スピーカ5で発生した楽音の一部が第2補強リブ26によって遮られても、スピーカ5で発生した楽音の他の一部が音抜け部27を通して第2放音部24の複数の放音孔24aから放音されるので、これによってもスピーカ5で発生した楽音が楽器ケース1の前側から演奏者側に向けて良好に放音される。
【0040】
ところで、この楽器ケース1の上部ケース2における前面部23の内面には、第1補強リブ25が上部ケース2の上面の内面から前面部23の下端部に亘って設けられていることにより、上部ケース2の上面部と前面部23とが補強されている。このため、上部ケース2の上面部および前面部23の肉厚を薄くしても、上部ケース2の上面部および前面部23の強度が確保される。
【0041】
また、上部ケース2の上面の内面に枠状の第2補強リブ26が複数の第1補強リブ25の配列方向に沿って長く設けられていることにより、上部ケース2の上面部が補強されている。このため、これによっても、上部ケース2の上面部の肉厚を薄くしても、上部ケース2の上面部の強度が確保される。
【0042】
すなわち、この枠状の第2補強リブ26は、上部ケース2の前面部23と平行な一対の長辺部26aと、これら一対の長辺部26a間に所定間隔で設けられた短辺部26bと、を備え、これらによって全体が細長い枠状に形成されていることにより、この枠状の第2補強リブ26によって上部ケース2の上面部が強固に補強される。このため、上部ケース2の上面部の肉厚を薄くしても、上部ケース2の上面部の撓みが防げる。
【0043】
この場合、複数の第1補強リブ25は、枠状の第2補強リブ26に連結されているので、これら複数の第1補強リブ25と枠状の第2補強リブ26とによって上部ケース2全体の強度が更に高められる。このため、上部ケース2の上面部および前面部23の肉厚を薄くしても、上部ケース2全体の撓みや捩れが確実に防げる。
【0044】
また、枠状の第2補強リブ26は、上部ケース2が下部ケース3上に重なって配置された際に、下部ケース3に設けられた鍵盤シャーシ6の鍵支持部12上に配置されて支持されることにより、これによっても上部ケース2の強度が確保されると共に、楽器ケース1全体の強度も確保される。
【0045】
このように、この楽器ケース1は、複数の第1補強リブ25と枠状の第2補強リブ26とによって上部ケース2が強固に補強されていることにより、上部ケース2の肉厚を薄くして、上部ケース2の材料費を削減して低コスト化が図れるほか、上部ケース2の重量を軽くして軽量化が図れるので、楽器ケース1の持ち運びが容易になる。
【0046】
また、この楽器ケース1は、上部ケース2の上面に放音部が設けられていないことによっても、上部ケース2の強度が確保されるので、楽器ケース1の破損が防げるほか、楽器ケース1内への塵挨の侵入が軽減されると共に、外観がスッキリしたものになり、デザイン性が高められる。
【0047】
この場合、上部ケース2の前面部23に設けられた第2放音部24の複数の第1補強リブ25が、複数の鍵7のうち、上部ケース2の上面とほぼ同じ高さの複数の黒鍵11に対応して設けられていることにより、楽器ケース1を正面から見た際に、第2放音部24の複数の放音孔24aが黒鍵11間から見えても、複数の第1補強リブ25が複数の黒鍵11によって隠されるので、これによっても楽器ケース1全体の外観がスッキリしてデザイン性が向上される。
【0048】
さらに、上部ケース2の前面部23の下端部と複数の第1補強リブ25の各下端部とには、帯状のフェルト28が上部ケース2の前面部23の全長に亘って貼り付けられているので、複数の鍵7が上部ケース2の前面部23の下端部に直接当接するのを防いで緩衝するほか、第2放音部24の複数の放音孔24aから侵入した塵挨など異物の楽器ケース1内への侵入が軽減される。
【0049】
この場合、複数の第1補強リブ25には、フェルト28の前後方向の位置を規制する位置規制部25aがそれぞれ設けられていることにより、これら第1補強リブ25の位置規制部25aによってフェルト28の前後位置を規制して、フェルト28の前端が上部ケース2の前面部23に対して正確に揃えられるので、これによっても外観性およびデザイン性の向上が図れる。
【0050】
このように、この鍵盤楽器によれば、複数の鍵7を有する鍵盤部4と、複数の鍵7の後端側に、スピーカ5の音を前方に放音するための放音孔24aが設けられている前面部23、およびこの前面部23の内側に、放音孔24aに対応して設けられている少なくとも1つの第1補強リブ25を有する楽器ケース1と、を備え、少なくとも1つの第1補強リブ25は、複数の鍵7の配列方向の長さS2より鍵7の前後方向の長さS1が長いことにより、上部ケース2の肉厚を薄くしても、十分な強度を確保することができる。
【0051】
すなわち、この鍵盤楽器では、複数の第1補強リブ25が、複数の鍵7の配列方向の長さS2(厚み)よりも鍵7の前後方向の長さS1が長い縦板状をなし、鍵7の配列方向に配列されていることにより、上部ケース2および第2放音部24を補強することができるので、上部ケース2の肉厚を薄くしても、上部ケース2および第2放音部24の強度を十分に確保することができる。
【0052】
また、この鍵盤楽器では、第2放音部24が、ピーカ5の音を上部ケース2の前方に放音するための鍵7の配列方向に長い複数の放音孔24aを上部ケース2の前面部23に上下方向に配列させていることにより、ピーカ5で発生した音を上部ケース2の前面部23に設けられた複数の放音孔24aから上部ケース2の前側に良好に放音させることができるので、ピーカ5で発生した音を演奏者が良好に聴くことができる。
【0053】
この場合、複数の第1補強リブ25のうち、第2放音部24に対応する複数の第1補強リブ25は、上部ケース2の上面における内面から上部ケース2の前面部23の下部に亘って上下方向に延びていることにより、第2放音部24の複数の放音孔24aを上下方向に横切って設けられているので、複数の放音孔24aが左右方向に長いスリット状に形成されていても、複数の第1補強リブ25によって第2放音部24を確実にかつ強固に補強することができる。
【0054】
また、この鍵盤楽器では、上部ケース2の上面の内面における複数の第1補強リブ25の後方に、鍵7の配列方向の長さS4が鍵7の前後方向の長さS3(幅)よりも長い枠状の第2補強リブ26が複数の第1補強リブ25の配列方向に沿って設けられていることにより、この枠状の第2補強リブ26によっても上部ケース2を補強することができるので、上部ケース2の肉厚を薄くすることができると共に、上部ケース2の肉厚を薄くしても、上部ケース2の強度を十分に確保することができる。
【0055】
すなわち、この枠状の第2補強リブ26は、上部ケース2の前面部23と平行で鍵7の配列方向に長い一対の長辺部26aと、これら一対の長辺部26aの間に等間隔で設けられて鍵7の前後方向の長さS3が長辺部26aよりも短い短辺部26bと、を備え、これらによって全体が細長い枠状に形成されていることにより、この枠状の第2補強リブ26によって上部ケース2の上面部を確実にかつ強固に補強することができるので、上部ケース2の肉厚を薄くしても、上部ケース2の撓みを防ぐことができる。
【0056】
この場合、枠状の第2補強リブ26は、複数の第1補強リブ25がそれぞれ連結されていることにより、これら複数の第1補強リブ25と枠状の第2補強リブ26とによって上部ケース2および前面部23を、より一層、確実にかつ強固に補強することができ、これにより上部ケース2および前面部23の各肉厚を薄くしても、上部ケース2および前面部23の撓みや捩れを確実にかつ強固に防ぐことができる。
【0057】
これにより、この鍵盤楽器では、複数の第1補強リブ25と枠状の第2補強リブ26とによって上部ケース2および前面部23が十分に補強されているので、上部ケース2および前面部23の各肉厚を薄くすることにより、上部ケース2の材料費を削減して低コスト化を図ることができると共に、上部ケース2の重量を軽くして軽量化を図ることができ、これにより楽器ケース1の持ち運びを容易にすることができる。
【0058】
また、この鍵盤楽器では、複数の鍵7の配列方向に沿って長い枠状の第2補強リブ26が、鍵盤シャーシ6に設けられて複数の鍵7の後部を回転可能に支持する鍵支持部12に対応して設けられていることにより、上部ケース2を下部ケース3に重ねて楽器ケース1を組み立てた際に、鍵盤シャーシ6の鍵支持部12に枠状の第2補強リブを支持させることができるので、これによっても上部ケース2を補強することができると共に、楽器ケース1全体を補強することができる。
【0059】
この場合、鍵盤シャーシ6に設けられた複数の鍵支持部12は、複数の各鍵7の各後部の上側に突出していることにより、各上端部に枠状の第2補強リブ26が配置されても、この第2補強リブ26によって複数の鍵7の回転動作が妨げられることがないので、複数の鍵7を良好に押鍵操作することができる。
【0060】
また、この鍵盤楽器では、複数の放音孔24aが設けられた第2放音部24に対応する第2補強リブ26の一部の領域に、第2補強リブ26が存在しない音抜け部27が設けられていることにより、スピーカ5で発生した音が第2補強リブ26によって遮られても、第2補強リブ26に設けられた音抜け部27をスピーカ5で発生した音が通り抜けるので、この音抜け部27によって音抜けを向上させてスピーカ5の音を第2放音部24の複数の放音孔24aから良好に放音させることができる。
【0061】
この場合、音抜け部27は、第2放音部24に対応する領域のうち、上部ケース2の前面部23における中央側に位置する領域に設けられていることにより、スピーカ5で発生した音が音抜け部27を通り抜けて上部ケース2の前側に放音されるので、スピーカ5で発生した音を演奏者に向けて確実にかつ良好に放音させることができる。
【0062】
また、この音抜け部27の左右方向の長さが長い場合には、音抜け部27の中間部に左右方向の長さが短い枠状の補助補強リブ27aを設けることにより、第2補強リブ26による上部ケース2の強度の低下を補助補強リブ27aによって防ぐことができる。この場合にも、補助補強リブ27aは、上部ケース2が下部ケース3上に重なって配置された際に、第2補強リブ26と同様、鍵盤シャーシ6の鍵支持部12に支持されることにより、音抜け部27に対応する箇所の上部ケース2の強度を確保することができる。
【0063】
また、この鍵盤楽器では、複数の第1補強リブ25が複数の鍵7における黒鍵11に対応して設けられていることにより、楽器ケース1を正面から見た際に、第2放音部24の複数の放音孔24aが黒鍵11同士の間から見えても、複数の黒鍵11によって複数の第1補強リブ25を隠すことができるので、楽器ケース1全体の外観をスッキリさせてデザイン性を向上させることができる。
【0064】
すなわち、この鍵盤楽器では、第2放音部24と黒鍵11とがほぼ同じ高さであることにより、楽器ケース1を正面から見た際に、複数の黒鍵11によって複数の第1補強リブ25を確実に隠すことができる。この場合、黒鍵11は、前部側が第2放音部24と同じ高さで、後部側に向けて次第に低くなるように傾斜して形成されているので、楽器ケース1を正面から見た際に、高さの高い黒鍵11の前部側によって複数の第1補強リブ25を確実に隠すことができる。
【0065】
さらに、この鍵盤楽器では、複数の第1補強リブ25の下部にフェルト28が水平な状態で張り渡されていることにより、複数の鍵7が上部ケース2の前面部23の下端部に直接当接するのを防いで緩衝することができるほか、第2放音部24の複数の放音孔24aから侵入した塵挨など異物が楽器ケース1に侵入するのを軽減することができる。
【0066】
この場合、複数の第1補強リブ25には、フェルト28の前後方向の位置を規制する位置規制部25aがそれぞれ設けられていることにより、これら第1補強リブ25の位置規制部25aによってフェルト28の前後位置を規制することができるので、フェルト28の前端を上部ケース2の前面部23に対して正確にかつ良好に揃えることができ、これによっても外観性およびデザイン性を向上させることができる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、上部ケース2の前面部23の下端部と複数の第1補強リブ25の下端部とにフェルト28を張り渡した場合について述べたが、この発明は、これに限らず、上部ケース2の前面部23の下端部と複数の第1補強リブ25の下端部とに放音ネットを張り渡した構造であっても良い。
【0068】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0069】
(付記)
請求項1に記載の発明は、複数の鍵を有する鍵盤と、前記複数の鍵の後端側に、スピーカの音を前方に放音するための放音孔が設けられている前面部と、前記前面部の内側に、前記放音孔に対応して設けられている少なくとも1つの第1補強リブと、を有するケースと、を備え、前記少なくとも1つの第1補強リブは、前記複数の鍵の配列方向の長さより鍵の前後方向の長さが長い、鍵盤楽器である。
【0070】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記ケースは、前記少なくとも1つの第1補強リブの後方に、前記鍵の前後方向の長さより前記複数の鍵の配列方向の長さが長い枠状の第2補強リブを備え、前記少なくとも1つの第1補強リブと、前記第2補強リブと、は連結している、鍵盤楽器である。
【0071】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鍵盤楽器において、前記第2補強リブは、前記複数の鍵をそれぞれ回転可能に支持するために前記鍵盤側に設けられている鍵支持部に対応して設けられている、鍵盤楽器である。
【0072】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の鍵盤楽器において、前記第2補強リブは、前記複数の鍵の配列方向に沿って複数設けられており、前記第2補強リブは、前記放音孔に対応する領域のなかの一部領域には設けられていない、鍵盤楽器である。
【0073】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の鍵盤楽器において、前記一部領域は、前記放音孔に対応する領域のなかの、前記ケースの中央側に位置する領域に含まれる、鍵盤楽器である。
【0074】
請求項6に記載の発明は、請求項1~請求項5のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記少なくとも1つの第1補強リブは、黒鍵に対応して設けられている、鍵盤楽器である。
【0075】
請求項7に記載の発明は、請求項1~請求項6のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記少なくとも1つの第1補強リブは、前記ケースの上面における内面側から前記前面部の下部に亘って延びている、鍵盤楽器である。
【0076】
請求項8に記載の発明は、請求項1~請求項7のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記放音孔は、前記前面部に複数、上下方向に配列されている、鍵盤楽器である。
【0077】
請求項9に記載の発明は、請求項1~請求項8のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記少なくとも1つの第1補強リブの下部には、少なくともフェルト及び放音部材のいずれか一方の位置を規制する位置規制部、が設けられている、鍵盤楽器である。
【符号の説明】
【0078】
1 楽器ケース
2 上部ケース
3 下部ケース
4 鍵盤部
5 スピーカ
6 鍵盤シャーシ
7 鍵
8 ハンマー部材
9 スイッチ部
10 白鍵
11 黒鍵
12 鍵支持部
23 前面部
24 第2放音部
24a 放音孔
25 第1補強リブ
25a 位置規制部
26 第2補強リブ
26a 長辺部
26b 短辺部
27 音抜け部
27a 補助補強リブ
28 フェルト