(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】プレキャスト製基礎ブロック
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
E02D29/02 302
(21)【出願番号】P 2017250280
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】598093484
【氏名又は名称】有徳コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】湯田 晋市
(72)【発明者】
【氏名】湯田 恭弘
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-209653(JP,A)
【文献】特開平04-366230(JP,A)
【文献】実開平07-042381(JP,U)
【文献】特開2007-291797(JP,A)
【文献】特開2001-040683(JP,A)
【文献】特開平06-294139(JP,A)
【文献】実開昭60-058647(JP,U)
【文献】登録実用新案第3012914(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル背面に打設される裏込めコンクリートから受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さの壁面パネルが上方に設置されて擁壁の基礎となるプレキャスト製基礎ブロックにおいて、
前記壁面パネルが設置される立脚部と、この立脚部に交差する方向に延出してこの立脚部を支える支持脚部とから構成され、上方の前記壁面パネルが転倒するのを防止する転倒防止部材を固定するための固定材が前記支持脚部の所定の位置に設けられ、前記立脚部の上端に積み上げられる前記壁面パネルに取り付けられて前記壁面パネルの下方に突出する
第1の連結部材
の下方に突出する部分に当接して押され、かつ、前記立脚部の上端から上方に突出する部分が、前記立脚部の上端に積み上げられる前記壁面パネルの背面に
当接して押す第2の連結部材が取り付けられる壁面が前記立脚部の頭部における前記支持脚部側に設けられることを特徴とするプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項2】
前記固定材は前記支持脚部に着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項3】
前記壁面パネルは、前記立脚部に係合させられることで下端が前記立脚部の上端に位置決めされてまたは自立して前記立脚部に連結させられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項4】
前記固定材は、最下段に設置される前記壁面パネルの上部への前記転倒防止部材取付箇所よりも前記立脚部から離れる後方における前記支持脚部に設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項5】
前記支持脚部は、前記立脚部の上端から所定間隔をあけた箇所から前記立脚部に交差する方向に延出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項6】
前記支持脚部は、基礎地盤に対向する面に開口部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項7】
前記立脚部および前記支持脚部は、基礎地盤に接する面に複数の凸部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項8】
前記支持脚部は、前記立脚部から離れる端部に水平方向に切り欠かれた切り欠き部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項9】
前記支持脚部は、勾配を持って曲線施工される擁壁において最下段に設置される前記壁面パネルどうしの当接箇所下方に位置する箇所を起点に前記立脚部から離れるにしたがってしぼむ傾斜が幅方向の両側部につけられることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項10】
前記支持脚部は、最も小さい勾配を持って曲線施工される擁壁において最下段に設置される前記壁面パネルどうしの当接箇所下方に位置する箇所より前記立脚部に近い箇所を起点に前記立脚部から離れるにしたがってしぼむ傾斜が幅方向の両側部につけられ、最下段に設置される前記壁面パネルどうしの当接箇所下方に位置する箇所に間隔維持部材の先端を位置させる着脱部が、傾斜がついた前記両側部の前記立脚部からの距離が異なる、曲線施工される擁壁の複数の勾配に応じた複数箇所に、前記間隔維持部材を着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプレキャスト製基礎ブロック。
【請求項11】
基礎の高さを含めない高さが7m以下の擁壁の勾配および裏込めコンクリート厚の設計計算を行わないで規定値を用いる経験に基づく設計法
にしたがい、請求項5または請求項5を引用する請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のプレキャスト製基礎ブロックを用いて擁壁を構築する擁壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面パネルが上方に多段に設置されて擁壁の基礎となるプレキャスト製基礎ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプレキャスト製基礎ブロックとしては、例えば、特許文献1に開示された擁壁構築用基礎ブロックがある。
【0003】
この基礎ブロックは、基礎ブロック本体の傾斜面上に構築ブロックを配置するために予め定めた基準線a-a上に段差が形成されると共に、この基準線a-aを起点にして水平な平坦部が形成される。平坦部の短手幅hは、構築する擁壁面の施工半径をRとした場合、h=R-(Rcosθ)に設定される。基礎ブロック本体の傾斜面の下部からは台座が水平に延出して一体成形される。構築ブロックは、平坦部の短手幅h内に仮想した円弧状のブロック配置線b-bに倣って敷設されるが、段差と平坦部が目安となり、構築する擁壁の曲線に沿った正確な円弧状に容易に配置される。つまり、基礎ブロックの長手方向の両端に敷設する構築ブロックは平坦部の下端に合わせて配置し、基礎ブロックの長手方向の中央に敷設する構築ブロックは平坦部の上端に合わせて配置し、これらの中間に位置する構築ブロックを円弧状に敷設していけば自ずと求める曲線状に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された従来の擁壁構築用基礎ブロックは、上記のように基礎ブロックとその上方に積まれる構築ブロックとの相対対置を容易に決めて、構築ブロックを積み上げることができる。しかしながら、基礎ブロック上方に積まれるのは構築ブロックであり、略直方形状で、擁壁の法面側に設置されるパネル部に向かって末広がった錐形状に形成される。このため、従来の擁壁構築用基礎ブロックは、パネル背面に打設される裏込めコンクリートから受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さの壁面パネルが上方に設置されて形成される擁壁の基礎とすることはできない。また、基礎ブロックに積み上げる構築ブロックは、構築ブロックとの相対対置を容易に決められても、単位面積当たりに積み上げる個数が多くなるため、決めた位置に多くの構築ブロックを積み上げる作業は簡単ではなく、作業に多くの時間および人工を要する。その結果、擁壁の構築コストを抑制することができなかった。
【0006】
本発明は、裏込めコンクリートから受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さの壁面パネルを施工性良く簡単に上方に設置して擁壁の基礎とすることができ、擁壁の構築コストを抑えられるプレキャスト製基礎ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために本発明は、
パネル背面に打設される裏込めコンクリートから受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さの壁面パネルが上方に設置されて擁壁の基礎となるプレキャスト製基礎ブロックにおいて、
壁面パネルが設置される立脚部と、この立脚部に交差する方向に延出してこの立脚部を支える支持脚部とから構成され、上方の壁面パネルが転倒するのを防止する転倒防止部材を固定するための固定材が支持脚部の所定の位置に設けられ、立脚部の上端に積み上げられる壁面パネルに取り付けられて壁面パネルの下方に突出する第1の連結部材の下方に突出する部分に当接して押され、かつ、立脚部の上端から上方に突出する部分が、立脚部の上端に積み上げられる壁面パネルの背面に当接して押す第2の連結部材が取り付けられる壁面が立脚部の頭部における支持脚部側に設けられることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、固定材が支持脚部に設けられることで、基礎ブロック上方に設置される壁面パネルのパネル背面と固定材との間に転倒防止部材を設けることができる。壁面パネルは、裏込めコンクリートから受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さであるため、従来の構築ブロックより大型化しても重量が軽くてその取り扱いが容易であり、単位面積当たりの使用個数を大幅に減らすことができる。基礎ブロック上方に個数の少ないこのような壁面パネルを転倒防止部材を使って設置する作業は、時間および人工を要さない簡単な作業で済む。このため、裏込めコンクリートから受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さの壁面パネルを施工性良く簡単に上方に設置して擁壁の基礎とすることができ、擁壁の構築コストを抑えられるプレキャスト製基礎ブロックを提供することができる。また、固定材が支持脚部の所定の位置に設けられるので、上方に設置する壁面パネルと基礎ブロックとの相対位置を考慮して固定材の設置位置をその都度計算することなく、精度良く効率的に、壁面パネルを基礎ブロックの上方に設置することができる。
【0009】
また、本発明は、固定材が支持脚部に着脱自在に設けられることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、固定材を支持脚部に取り付けられるので、固定材が無い状態で基礎ブロックを成型することができ、基礎ブロックの製造が容易になる。また、基礎ブロックの保管や運搬時等におけるその取り扱いが容易になる。
【0011】
また、本発明は、壁面パネルが、立脚部に係合させられることで下端が立脚部の上端に位置決めされてまたは自立して立脚部に連結させられることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、壁面パネルのパネル背面と固定材との間に転倒防止部材を設ける際、基礎ブロックの立脚部の上端に壁面パネルの下端を位置決めすること、または、立脚部の上端に壁面パネルを自立させることができる。したがって、転倒防止部材を設ける際に、立脚部の上端に壁面パネルの下端をズレることなく合わせて、壁面パネルを基礎ブロックの上方に保持させるためのサポート材を設ける作業を容易に行え、擁壁の構築作業の作業性が向上する。または、立脚部の上端に壁面パネルを自立させることで、サポート材を設ける作業が不要になり、擁壁の構築工程が簡略化されて、擁壁の構築コストの低減化を図ることができる。
【0013】
また、本発明は、固定材が、最下段に設置される壁面パネルの上部への転倒防止部材取付箇所よりも立脚部から離れる後方における支持脚部に設けられることを特徴とする。
【0014】
固定材が、最下段に設置される壁面パネルの上部への転倒防止部材取付箇所よりも立脚部に近い位置における支持脚部に設けられる場合、壁面パネルの壁面前方側への転倒は防止できるが、壁面後方側への転倒は効果的に防止できない。しかし、本構成によれば、壁面パネルの壁面前方側への転倒および壁面後方側への転倒の双方を効果的に防止できる。
【0015】
また、本発明は、支持脚部が、立脚部の上端から所定間隔をあけた箇所から立脚部に交差する方向に延出することを特徴とする。
【0016】
特許文献1に開示された従来の基礎ブロックでは、基礎ブロックを設置してから基礎ブロックの開口部にコンクリートを打設して養生をすることで、擁壁の基礎部分が構築される。その後、基礎ブロックの上に最下段の構築ブロックが設置されて、その背後に裏込めコンクリートを打設して養生をすることで、最下段の構築ブロックが積み上げられる。しかし、本構成によれば、立脚部の上端から所定間隔をあけた箇所から立脚部に交差する方向に支持脚部が延出するため、所定間隔があいた立脚部の背後と最下段に設置される壁面パネルの背後とにつながって空間が形成される。したがって、この空間に裏込めコンクリートを打設することで、基礎ブロックの背後と最下段に設置される壁面パネルの背後とに同時に裏込めコンクリートが形成され、擁壁の基礎部分と最下段に設置される壁面パネルの構築部分とが、1回のコンクリートの打設と1回のその養生とで、構築される。このため、擁壁を構築する施工工程の削減が図れる。
【0017】
また、従来の基礎ブロックでは、基礎ブロックの上面と、最下段の構築ブロックの背後に打設される裏込めコンクリートとの間に構造的に境界面が形成され、裏込めコンクリート背後の地山や盛土からの土圧により、この境界面において、構築ブロックからなる上部構造が背後から押されて基礎ブロックからなる下部構造との間にズレが生じるおそれがある。しかし、本構成によれば、基礎ブロックの背後に打設される裏込めコンクリートと最下段に設置される壁面パネルの背後に打設される裏込めコンクリートとを壁面パネルの積み上げ方向および擁壁の敷設延長方向の双方に打ち継ぎせずに連続させられる。したがって、基礎ブロックからなる下部構造と最下段に設置される壁面パネルからなる上部構造との間に、従来の基礎ブロックを用いた擁壁のように境界面が形成されず、下部構造と上部構造との間にズレが生じ難くなる。このため、擁壁の強度が増して安定した擁壁が構築される。さらに、壁面パネルの積み上げ方向および擁壁の敷設延長方向の双方に連続する空間が形成されるため、この空間に連続して、裏込めコンクリートの強度を補強する補強鉄筋を配置できるようになり、擁壁の耐震性能を向上させることが可能になる。
【0018】
また、本発明は、支持脚部が、基礎地盤に対向する面に開口部が形成されることを特徴とする。
【0019】
本構成によれば、支持脚部の基礎地盤に対向する面に形成される開口部に裏込めコンクリートが入り込み、裏込めコンクリートが開口部に充填されて基礎地盤に接するようになる。したがって、基礎ブロックは、開口部の無い基礎ブロックに比較して、基礎地盤に対する摩擦力が増して基礎地盤との密着力が増大する。このため、裏込めコンクリートの背後の地山や盛土からの土圧によって基礎ブロックおよびその背後に打設される裏込めコンクリートが擁壁の前面側に押されて滑動しようとする力に抵抗する抵抗力が向上する。
【0020】
また、本発明は、立脚部および支持脚部が、基礎地盤に接する面に複数の凸部が形成されることを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、基礎ブロックは、基礎地盤に接する面に形成される複数の凸部により、基礎地盤に対する摩擦力が増す。このため、基礎ブロックは、擁壁の基礎構築初期時における、基礎ブロック自身を含む構築物の自重が軽くて、基礎ブロックの基礎地盤に対する摩擦力が十分に生じない段階において、その背後に裏込めコンクリートが打設される際に、裏込めコンクリートおよび裏込め砕石から受ける側圧によって擁壁の前面側に押されて滑動しようとする力に抵抗する抵抗力が向上する。
【0022】
また、本発明は、支持脚部が、立脚部から離れる端部に水平方向に切り欠かれた切り欠き部が形成されることを特徴とする。
【0023】
本構成によれば、壁面パネルの背後に裏込めコンクリートを打設する際、裏込めコンクリートの背後に設けられる裏込め砕石との間を区分けするために用いられる平板状をした引き抜き型枠の下辺を、支持脚部の端部に水平方向に切り欠かれた切り欠き部にあてがうことで、引き抜き型枠の下方にパネル背面との距離を保つ特別な間隔維持材などを新たに設けることなく、裏込めコンクリートの厚さを必要な厚さに設定することができる。引き抜き型枠は裏込めコンクリートの施工後に裏込めコンクリートの背後から引き抜かれる。
【0024】
また、本発明は、支持脚部が、勾配を持って曲線施工される擁壁において最下段に設置される壁面パネルどうしの当接箇所下方に位置する箇所を起点に立脚部から離れるにしたがってしぼむ傾斜が幅方向の両側部につけられることを特徴とする。
【0025】
本構成によれば、擁壁の基礎部分上部に構築される上部構造部を傾斜させて曲線施工する場合、隣接する基礎ブロックにおける支持脚部の両側部にしぼんでつけられる傾斜の起点どうしを当接させて基礎ブロックを設置することで、最下段の壁面パネル間の開きと同じまたはほぼ同じ程度の開きに容易に基礎ブロックを設置することができる。したがって、曲線施工する半径の大きさと上部構造部の傾斜の大きさとに応じて、その都度、従来のように、隣接する基礎ブロック間の開きを計算する必要もなく、しかも、予め基礎ブロックどうしを離して設置する必要もなく、基礎ブロックを設置することができる。このため、基礎ブロックの設置施工時における作業の段取りを削減でき、基礎ブロックの設置施工性が大幅に向上する。
【0026】
また、本発明は、支持脚部が、最も小さい勾配を持って曲線施工される擁壁において最下段に設置される壁面パネルどうしの当接箇所下方に位置する箇所より立脚部に近い箇所を起点に立脚部から離れるにしたがってしぼむ傾斜が幅方向の両側部につけられ、最下段に設置される壁面パネルどうしの当接箇所下方に位置する箇所に間隔維持部材の先端を位置させる着脱部が、傾斜がついた両側部の立脚部からの距離が異なる、曲線施工される擁壁の複数の勾配に応じた複数箇所に、間隔維持部材を着脱自在に設けられることを特徴とする。
【0027】
本構成によれば、支持脚部の傾斜がついた両側部の複数箇所に設けられた着脱部のうち、曲線施工する擁壁の勾配に応じた箇所に設けられた着脱部に間隔維持部材を取り付け、これら間隔維持部材の先端を当接させて、基礎ブロックを隣接して並べて設置することで、最下段の壁面パネル間の開きと同じまたはほぼ同じ程度の開きに容易に基礎ブロックを設置することができる。このため、上部構造部の傾斜の大きさが変わっても、基礎ブロックの両側部の形状を変えることなく、間隔維持部材を取り付ける着脱部の位置を変えるだけで、簡単に上部構造部の傾斜の大きさに応じた配置に基礎ブロックを設置することができる。
【0028】
また、本発明は、基礎の高さを含めない高さが7m以下の擁壁の勾配および裏込めコンクリート厚の設計計算を行わないで規定値を用いる経験に基づく設計法にしたがい、立脚部の上端から所定間隔をあけた箇所から立脚部に交差する方向に支持脚部が延出するプレキャスト製基礎ブロックを用いて擁壁を構築する擁壁の構築方法を構成した。
【0029】
経験に基づく設計法を用いて構築されるブロック積み擁壁は、設計計算により断面形状が決定される重要度の高い擁壁ではなく、これまでの経験により、擁壁の直高と断面方向の勾配の関係および背面土の状態から予め控え長さが決められ、土圧が小さい所に使用することが原則とされ、重要な場所には使用しないことが前提とされている。このような擁壁は、比較的簡易に構築されてコストが極力抑えられるが、地震や降雨によって被災するものも多い。しかしながら、本構成による擁壁の構築方法によれば、基礎ブロックの背後に打設される裏込めコンクリートと最下段に設置される壁面パネルの背後に打設される裏込めコンクリートとが壁面パネルの積み上げ方向および擁壁の敷設延長方向の双方に打ち継ぎせずに連続させられる。したがって、基礎ブロックからなる下部構造と最下段に設置される壁面パネルからなる上部構造とに境界面が形成されず、下部構造と上部構造との間にズレが生じ難くなる。このため、経験に基づく設計法を用いて構築される擁壁であっても、擁壁の強度が増して安定した擁壁が構築され、地震や降雨による被災に対する耐力が向上する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、裏込めコンクリートから受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さの壁面パネルが上方に設置されて形成される擁壁の基礎とすることができ、しかも、その上方に積まれる壁面パネルとの相対対置を容易に決められるプレキャスト製基礎ブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるプレキャスト製基礎ブロックを示す図である。
【
図2】
図1に示す基礎ブロックを用いて擁壁の基礎部を構築する方法を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す基礎ブロック上に壁面パネルを多段に積み上げて構築される擁壁を施工中に斜め上方から見下ろした斜視図である。
【
図4】
図1に示す基礎ブロック上に壁面パネルを多段に積み上げて構築される擁壁の断面図である。
【
図5】(a)、(b)、(c)は、5分勾配、4分勾配、3分勾配で擁壁を構築する際における、立脚部から離れるにしたがって一定の角度でしぼむ傾斜を支持脚部の幅方向の両側部につけた
図1に示す基礎ブロックの平面図、(d)、(e)、(f)は、擁壁の5分勾配、4分勾配、3分勾配に対応して立脚部から離れるにしたがって異なる角度でしぼむ傾斜を支持脚部の幅方向の両側部につけた第1の実施形態の変形例によるプレキャスト製基礎ブロックの平面図である。
【
図6】(a)は、
図5(a)に示す基礎ブロック上に最下段の壁面パネルを5分の勾配で積み上げた状態の側面図、(b)はその状態の平面図、(c)は、
図5(d)に示す基礎ブロック上に最下段の壁面パネルを5分の勾配で積み上げた状態の側面図、(d)はその状態の平面図である。
【
図7】(a)は、
図5(b)に示す基礎ブロック上に最下段の壁面パネルを4分の勾配で積み上げた状態の側面図、(b)はその状態の平面図、(c)は、
図5(e)に示す基礎ブロック上に最下段の壁面パネルを4分の勾配で積み上げた状態の側面図、(d)はその状態の平面図である。
【
図8】(a)は、
図5(c)に示す基礎ブロック上に最下段の壁面パネルを3分の勾配で積み上げた状態の側面図、(b)はその状態の平面図、(c)は、
図5(f)に示す基礎ブロック上に最下段の壁面パネルを3分の勾配で積み上げた状態の側面図、(d)はその状態の平面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態によるプレキャスト製基礎ブロックを示す図である。
【
図10】
図9に示す基礎ブロック上に壁面パネルを多段に積み上げて構築される擁壁を施工中に斜め上方から見下ろした斜視図である。
【
図11】
図9に示す基礎ブロック上に壁面パネルを多段に積み上げて構築される擁壁の断面図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態によるプレキャスト製基礎ブロックを示す図である。
【
図13】
図12に示す基礎ブロック上に壁面パネルを多段に積み上げて構築される擁壁を施工中に斜め上方から見下ろした斜視図である。
【
図14】
図12に示す基礎ブロック上に壁面パネルを多段に積み上げて構築される擁壁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明によるプレキャスト製基礎ブロックの第1の実施形態について説明する。
【0033】
図1(a)は本発明の第1の実施形態によるプレキャスト製基礎ブロック1Aの正面図、同図(b)、(c)、(d)、(e)および(f)は、基礎ブロック1Aの平面図、側面図、斜視図、背面図および底面図である。
【0034】
基礎ブロック1Aは、工場において成型金型によってコンクリートが一体成型されて予め形成され、擁壁が構築される現場において、後述するように壁面パネル13(
図2参照)が上方に設置されて、擁壁の基礎となる。壁面パネル13は、パネル背面に打設される裏込めコンクリート17から受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さをしている。また、基礎ブロック1Aおよび壁面パネル13によって構築される擁壁は、社団法人である日本道路協会が定める擁壁工指針にしたがって構築される。この擁壁工指針では、基礎の高さを含めない高さが7m以下の擁壁の勾配、および裏込めコンクリート厚の設計計算を行わないで、規定値を用いる、経験に基づく設計法を用いて、擁壁を構築する。
【0035】
基礎ブロック1Aは、壁面パネル13が設置される立脚部1aと、この立脚部1aを支える支持脚部1bとから構成される。支持脚部1bは、立脚部1aに交差する方向に延出しており、本実施形態では、立脚部1aの上端から所定間隔d1(
図1(c)参照)をあけた箇所から、立脚部1aに直交する方向に延出している。支持脚部1bの延出端における所定の位置には、
図1(c)に点線の円で囲まれた一部拡大図に詳細に示されるように、埋め込みナット2が一対埋設されており、各埋め込みナット2には、鉄筋の外周に雄ネジが刻まれて形成されるネジ棒3の一端部が螺合させられる。このため、支持脚部1bの延出端には、一対のネジ棒3が着脱自在に立設される。ネジ棒3は、基礎ブロック1Aの上方の壁面パネル13が転倒するのを防止する、後述する転倒防止部材14(
図2参照)を固定するための固定材を構成する。
【0036】
また、支持脚部1bは、擁壁が構築される基礎地盤に対向する面に、矩形状の開口部1cが3箇所に形成されている。開口部1cは、ネジ棒3が立設される側の上面より基礎地盤に面する側の下面が広く形成され、開口部1cを囲む支持脚部1bの側壁面に傾斜がつけられて、開口部1cに形成される空間は頂部を欠いた四角錐状をしている。また、立脚部1aおよび支持脚部1bは、同図(f)に示すように、基礎地盤に接する面に複数の凸部1dが形成されている。凸部1dは本実施形態ではドーム状をしている。また、支持脚部1bには、立脚部1aから離れる端部に、水平方向に切り欠かれた切り欠き部1eが形成されている。この切り欠き部1eには後述するように、引き抜き型枠15(
図2参照)の端部が当てられ、切り欠き部1eは引き抜き型枠15の位置決めに供される。
【0037】
また、立脚部1aの頭部には支持脚部1b側に張り出す傾斜がつけられている。この傾斜がつけられた壁面には、埋め込みナット4が一対埋設されている。各埋め込みナット4はネジ棒3の立設間隔と同じ間隔に設けられ、各埋め込みナット4の軸心は対向する各ネジ棒3に向けられている。これら埋め込みナット4には、次述する連結部材7(
図2参照)を立脚部1aの頭部に固定するボルト6が螺合させられる。また、支持脚部1bの両側部には穴5が所定深さに3個ずつ設けられている。この穴5には後述するピン21(
図5参照)が間隔維持部材として挿入され、隣接して設置される基礎ブロック1A間に所定の間隔をあけるために、穴5は、後述するように、擁壁を敷設延長方向に曲線施工する際に使用される。
【0038】
図2(a)~(e)は、基礎ブロック1Aを用いて擁壁の基礎部を谷底に構築する方法を示す断面図である。
図3は、壁面パネル13を基礎ブロック1A上に多段に積み上げて構築される擁壁を施工中に斜め上方から見下ろした斜視図である。
【0039】
図2(a)に示すように、基礎ブロック1Aは、谷底の地盤11に敷設された基礎砕石12上に設置される。基礎ブロック1Aの立脚部1aの頭部には、一対の連結部材7の各一端部が埋め込みナット4およびボルト6によって取り付けられる。立脚部1aの頭部に一端部が取り付けられた連結部材7の他端部は、立脚部1aの上端から上方に突出する。基礎ブロック1A上に積み上げられる壁面パネル13は、薄い板厚のコンクリートパネルからなり、パネル成型用の型枠にコンクリートが打設されて、長方形状に成型されている。壁面パネル1Aの背面上方および下方にはそれぞれ一対の埋め込みナットが埋設されており、
図3に示すように、4個の連結部材7の各一端部がこれら埋め込みナットおよびボルト6によって壁面パネル13の背面に取り付けられる。したがって、壁面パネル13の上端からは2個の連結部材7の各他端部が突出し、下端からも2個の連結部材7の各他端部が突出する。
【0040】
連結部材7は長方形状の板材が短手方向にコの字状にパネル背面側または立脚部1aの傾斜壁面側へ曲げられた形状をしており、パネル背面または立脚部1aの傾斜壁面に取り付けられる側の一端部における曲げ高さが高く形成され、この曲げ高さの高い足高部7aがパネル背面または立脚部1aの傾斜壁面に当接して、ボルト6によってパネル背面および立脚部1aの傾斜壁面に取り付けられる。これにより、壁面パネル13に設けられる連結部材7の反対側の他端部は、壁面パネル13の上端または下端から上方または下方に突出し、上下に隣接する壁面パネル13の背面との間に隙間を形成する。また、立脚部1aに設けられる連結部材7の反対側の他端部は、立脚部1aの上端から上方に突出し、最下段の壁面パネル13の背面との間に隙間を形成する。連結部材7のこの反対側の他端部にはボルト8が螺合しており、このボルト8の先端のパネル背面側または立脚部1aの傾斜壁面側への突出量を調整することで、連結部材7の反対側の他端部は、ボルト8を介して上下に隣接する壁面パネル13の背面または立脚部1aの傾斜壁面と係合する。
【0041】
図2(a)に示すように基礎砕石12上に設置された基礎ブロック1Aの上方には、立脚部1aの上端に設けられた連結部材7と、最下段の壁面パネル13の下端に設けられた連結部材7とにより、最下段の壁面パネル13が積み上げられる。この際、立脚部1aの上端に設けられた連結部材7の上方に突出した端部が最下段の壁面パネル13のパネル本体の背面にボルト8を介して当接して、最下段の壁面パネル13の背面を押さえると共に、最下段の壁面パネル13に設けられた連結部材7の下方に突出した端部が立脚部1aの傾斜壁面にボルト8を介して当接して、立脚部1aの傾斜壁面を押さえる。これにより、最下段の壁面パネル13の壁面背面側へ倒れる力がボルト8および連結部材7を介して最下段の壁面パネル13の背面および立脚部1aの傾斜壁面で受けられて、最下段の壁面パネル13が基礎ブロック1A上に自立する。
【0042】
次に、
図2(b)に示すように、最下段の壁面パネル13の背面に連結部材7を取り付ける各ボルト6と、基礎ブロック1Aの支持脚部1bに立設されたネジ棒3との各間に転倒防止部材14が溶接されて設けられ、最下段の壁面パネル13の転倒が防止される。固定材を構成するネジ棒3は、図示するように、最下段に設置される壁面パネル13の上部へ転倒防止部材14を取り付ける箇所Aよりも、立脚部1aから離れる後方における支持脚部1bに設けられる。
【0043】
次に、
図2(c)に示すように、支持脚部1bの端部に設けられた切り欠き部1eに、平板状をした引き抜き型枠15の下端部が当てられ、引き抜き型枠15の背面側に形成される空間が区画される。そして、壁面パネル13の背面と引き抜き型枠15の前面との間に図示しない支え棒が設けられた状態で、引き抜き型枠15の背面側に形成された空間に、引き抜き型枠15の高さの範囲内で裏込め砕石16が投入される。
【0044】
次に、
図2(d)に示すように、壁面パネル13の背面と引き抜き型枠15の前面との間に形成される空間に、壁面パネル13の上端に取り付けられた連結部材7に届かない図示する高さまで、裏込めコンクリート17が打設される。この際、裏込めコンクリート17は、基礎ブロック1Aの支持脚部1bに形成された開口部1cに入り込んで開口部1cを埋め、下方の基礎砕石12と接触する。また、裏込コンクリート17は、コンクリートの水平打ち継ぎ面が壁面パネル13側が高く、その反対側が低い段17aになって、その段17aが構造物である擁壁の敷設延長方向に延在して形成される。この裏込めコンクリート17の打設時、裏込コンクリート17には図示しない補強鉄筋が設けられる。補強鉄筋は、壁面パネル13側およびその反対側に打ち継がれる裏込コンクリート17をそれぞれ通って各々少なくとも1本が設けられる。また、鉄筋18が裏込めコンクリート17に一端部を露出させて埋設される。露出した鉄筋18には、次段の壁面パネル13の転倒を防止する転倒防止部材14の一端部が固定される。裏込めコンクリート17の硬化後、
図2(e)の矢印に示すように、引き抜き型枠15が裏込めコンクリート17の背後から斜め上方に引き抜かれ、擁壁の基礎部が構築される。
【0045】
次に、
図3に示すように、最下段の壁面パネル13の上方に2段目の壁面パネル13が積まれる。2段目以降の壁面パネル13は、下段の壁面パネル13に設けられた連結部材7の下段の壁面パネル13から上方に突出した端部が上段の壁面パネル13の背面にボルト8を介して当接して、上段の壁面パネル13の背面を押さえると共に、上段の壁面パネル13に設けられた連結部材7の上段の壁面パネル13から下方に突出した端部が下段の壁面パネル13の背面にボルト8を介して当接して、下段の壁面パネル13の背面を押さえる。これにより、上段の壁面パネル13の壁面背面側へ倒れる力がボルト8および連結部材7を介して上段および下段の各壁面パネル13の背面で受けられて、上段の壁面パネル13が下段の壁面パネル13上に自立し、上下に隣接する上段および下段の各壁面パネル13が複数段斜めに積み上げられる。
【0046】
なお、本実施形態では、壁面が敷設延長方向に曲がって曲線施工される場合について説明している。このため、連結部材7の壁面パネル13から突出する他端部にパネル背面との間に隙間を設け、この隙間にボルト8を突出させて、その先端をパネル背面に当接させている。しかし、壁面が敷設延長方向に直線施工される場合には、各段の壁面パネル13のパネル面が面一になり、連結部材7の反対側の他端部とパネル背面との間に隙間を設ける必要がない。このため、パネル背面に取り付けられる一端部に足高部7aが設けられない連結部材7を使用することもできる。この場合、連結部材7の反対側の他端部は、上下に隣接する壁面パネル13の背面と直接係合するため、ボルト8は不要となる。
【0047】
また、本実施形態では、壁面パネル13のパネル背面に、壁面パネル13の積み上げ方向である上下方向に沿って、2列の凸部13aが平行に並んでまばらに配置されている。これら凸部13aは、壁面パネル13の積み上げ方向におけるパネル上端およびパネル下端から所定間隔をあけて形成されている。また、各凸部13aの周りの4箇所には凹部13bが形成されている。壁面パネル13は、これら凸部13aおよび凹部13bにより、その背後に打設される裏込めコンクリート17との一体化が図られる。また、壁面パネル13の背面に連結部材7を取り付けるためのボルト6は、パネル背面から突出する端部が裏込めコンクリート17に埋められて固定されることで、壁面パネル13を裏込めコンクリート17の前面に固定するためのアンカー材となる。
【0048】
連結部材7によって自立させられる各段の壁面パネル13は、その背面上下端に連結部材7の一端部を取り付ける各ボルト6と、その背後の裏込めコンクリート17に露出する鉄筋18との各間に転倒防止部材14が溶接されて設けられ、転倒が防止される。そして、転倒が防止された状態で、各段の壁面パネル13の背後に裏込め砕石16および裏込めコンクリート17が順次積層されて行き、壁面パネル13によって擁壁が構築される。
【0049】
図4は、このように壁面パネル13を積み上げて構築される擁壁19Aの断面図である。同図において
図2および
図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。擁壁19Aは、基礎砕石12上に設置された基礎ブロック1Aを土台にして構築され、壁面パネル13と、連結部材7と、各段の壁面パネル13のパネル本体を保持して各段の壁面パネル13が転倒するのを防止する転倒防止部材14と、各段の壁面パネル13の背面を転倒防止部材14と共に所定の高さまで順次打ち継いで埋められる複数層に形成され、各層におけるコンクリートの水平打ち継ぎ面が壁面パネル13側が高くその反対側が低い段17aになってその段17aが擁壁19Aの敷設延長方向に延在して形成される裏込めコンクリート17と、壁面パネル13側およびその反対側に打ち継がれる裏込めコンクリート17をそれぞれ通る各々少なくとも1本の補強鉄筋と、裏込め砕石16とを備えて構成される。なお、同図では補強鉄筋の図示は省略している。また、同図に示す擁壁19Aは、水平方向に50cm離れた地点で1mの高さに立ち上がる1:0.5の5分勾配になっている。
【0050】
図5(a)は、この5分勾配で擁壁19Aを構築する際における基礎ブロック1Aの平面図である。また、同図(b)は、水平方向に40cm離れた地点で1mの高さに立ち上がる1:0.4の4分勾配、同図(c)は、水平方向に30cm離れた地点で1mの高さに立ち上がる1:0.3の3分勾配で擁壁19Aを構築する際における、基礎ブロック1Aの平面図である。基礎ブロック1Aの支持脚部1bの両側部には前述したようにそれぞれ3つの穴5が形成されており、同図(a)に示す5分勾配で擁壁19Aが構築される場合には、立脚部1aから最も離れた穴5にピン21が間隔維持部材として挿入される。また、同図(b)に示す4分勾配で擁壁19Aが構築される場合には、立脚部1aから次に離れた中央の穴5にピン21が間隔維持部材として挿入される。また、同図(c)に示す3分勾配で擁壁19Aが構築される場合には、立脚部1aに最も近い穴5にピン21が間隔維持部材として挿入される。
図5で○印が付された箇所は、隣り合う基礎ブロック1Aどうしが当接する箇所を示している。
【0051】
また、
図6(a)は、
図5(a)に示す基礎ブロック1A上に最下段の壁面パネル13を5分の勾配で積み上げた状態の側面図、
図6(b)はその状態の平面図である。
図7(a)は、
図5(b)に示す基礎ブロック1A上に最下段の壁面パネル13を4分の勾配で積み上げた状態の側面図、
図7(b)はその状態の平面図である。
図8(a)は、
図5(c)に示す基礎ブロック1A上に最下段の壁面パネル13を3分の勾配で積み上げた状態の側面図、
図8(b)はその状態の平面図である。なお、
図5~
図8において
図1および
図2と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0052】
図6(b),
図7(b)および
図8(b)に示すように、基礎ブロック1Aが敷設延長方向に描く曲線半径Rが一定の場合、隣接する基礎ブロック1Aおよび隣接する最下段の壁面パネル13間に同様に生じる隙間s1,s2およびs3の大きさは、擁壁19Aの勾配に応じて異なる。これら隙間s1,s2およびs3の大きさは、勾配が5分、4分および3分と小さくなると、小さくなる(s1>s2>s3)。
【0053】
本実施形態では、基礎ブロック1Aの支持脚部1bに、立脚部1aから離れるにしたがってしぼむ傾斜が支持脚部1bの幅方向の両側部につけられている。この傾斜は、最も小さい3分の勾配を持って曲線施工される
図8に示す擁壁19Aにおいて最下段に設置される壁面パネル13どうしの当接箇所B3の下方に位置する箇所C3より立脚部1aに近い、箇所D(
図5(a)~(c)参照)を起点につけられている。また、最下段に設置される壁面パネル13どうしの当接箇所B1,B2,B3の下方に位置する各箇所C1,C2,C3に間隔維持部材であるピン21の先端を位置させる穴5が、着脱部としてこの両側部に設けられている。各穴5は、立脚部1aからの距離が異なる、曲線施工される擁壁19Aの5分、4分および3分の各勾配に対応した、傾斜がついた両側部の3箇所に、ピン21を着脱自在に設けられる。
図6(b),
図7(b)および
図8(b)には、隣接する基礎ブロック1Aがそれぞれ持つピン21どうしの当接箇所、およびピン21が挿入される穴5の位置を一部拡大して表す一部拡大図が示されている。
【0054】
擁壁19Aを5分の勾配に傾斜させて構築する場合には、
図5(a)に示すように、立脚部1aから最も遠い位置の穴5にピン21が挿入され、
図6(b)に示すように、各ピン21の先端どうしを当接させて、擁壁19Aの勾配に応じて基礎砕石12に予め描かれた曲線に沿って基礎ブロック1Aが並べられる。また、擁壁19Aを4分の勾配に傾斜させて構築する場合には、
図5(b)に示すように、立脚部1aから次に遠い位置の穴5にピン21が挿入され、
図7(b)に示すように、各ピン21の先端どうしを当接させて、擁壁19Aの勾配に応じて基礎砕石12に予め描かれた曲線に沿って基礎ブロック1Aが並べられる。また、擁壁19Aを3分の勾配に傾斜させて構築する場合には、
図5(c)に示すように、立脚部1aに最も近い位置の穴5にピン21が挿入され、
図8(b)に示すように、各ピン21の先端どうしを当接させて、擁壁19Aの勾配に応じて基礎砕石12に予め描かれた曲線に沿って基礎ブロック1Aが並べられる。
【0055】
本実施形態では、擁壁19Aの勾配にかかわらず支持脚部1bの両側部に一定の角度の傾斜をつけ、ピン21を挿入する穴5の位置を変えることで、擁壁19Aの勾配に合うように基礎ブロック1Aを並べている。しかし、
図5(d),(e)および(f)に示すように、立脚部1aから離れるにしたがって異なる角度でしぼむ傾斜を擁壁19Aの勾配に応じて、支持脚部1bの幅方向の両側部につけるように構成して、基礎ブロック1A1,1A2および1A3を並べるようにしてもよい。この場合、支持脚部1bの幅方向の両側部には穴5が設けられない。
【0056】
図6(c)は、
図5(d)に示す基礎ブロック1A1上に最下段の壁面パネル13を5分の勾配で積み上げた状態の側面図、
図6(b)はその状態の平面図である。
図7(c)は、
図5(e)に示す基礎ブロック1A2上に最下段の壁面パネル13を4分の勾配で積み上げた状態の側面図、
図7(d)はその状態の平面図である。
図8(c)は、
図5(f)に示す基礎ブロック1A3上に最下段の壁面パネル13を3分の勾配で積み上げた状態の側面図、
図8(d)はその状態の平面図である。
【0057】
支持脚部1bの幅方向の両側部には、勾配を持って曲線施工される擁壁19Aにおいて最下段に設置される壁面パネル13どうしの当接箇所B1,B2,B3の下方に位置する箇所C1,C2,C3を起点に、立脚部1aから離れるにしたがってしぼむ傾斜がつけられている。
図6(d),
図7(d)および
図8(d)には、隣接する基礎ブロック1A1,1A2および1A3の両側部につけられた傾斜の起点どうしの当接箇所を一部拡大して表す一部拡大図が示されている。
【0058】
擁壁19Aを5分の勾配に傾斜させて構築する場合には、
図5(d)に示される基礎ブロック1A1が使用され、
図6(d)に示すように、隣接する基礎ブロック1A1の両側部につけられた傾斜の起点どうしを当接させて、擁壁19Aの勾配に応じて基礎砕石12に予め描かれた曲線に沿って基礎ブロック1A1が並べられる。また、擁壁19Aを4分の勾配に傾斜させて構築する場合には、
図5(e)に示される基礎ブロック1A2が使用され、
図7(d)に示すように、隣接する基礎ブロック1A2の両側部につけられた傾斜の起点どうしを当接させて、擁壁19Aの勾配に応じて基礎砕石12に予め描かれた曲線に沿って基礎ブロック1A2が並べられる。また、擁壁19Aを3分の勾配に傾斜させて構築する場合には、
図5(f)に示される基礎ブロック1A3が使用され、
図8(d)に示すように、隣接する基礎ブロック1A3の両側部につけられた傾斜の起点どうしを当接させて、擁壁19Aの勾配に応じて基礎砕石12に予め描かれた曲線に沿って基礎ブロック1A3が並べられる。
【0059】
このような本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、
図1に示すように、固定材を構成するネジ棒3が支持脚部1bに設けられることで、
図2に示すように、基礎ブロック1Aの上方に設置される壁面パネル13のパネル背面とネジ棒3との間に転倒防止部材14を設けることができる。壁面パネル13は、裏込めコンクリート17から受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さであるため、従来の構築ブロックより大型化しても重量が軽くてその取り扱いが容易であり、単位面積当たりの使用個数を大幅に減らすことができる。基礎ブロック1Aの上方に個数の少ないこのような壁面パネル13を転倒防止部材14を使って設置する作業は、時間および人工を要さない簡単な作業で済む。このため、裏込めコンクリート17から受ける側圧に対抗できずに動いてしまう大きさまたは重量または厚さの壁面パネル13を施工性良く簡単に上方に設置して擁壁19Aの基礎とすることができ、擁壁19Aの構築コストを抑えられるプレキャスト製基礎ブロック1Aを提供することができる。また、ネジ棒3が支持脚部1bの所定の位置に設けられるので、上方に設置する壁面パネル13と基礎ブロック1Aとの相対位置を考慮してネジ棒3の設置位置をその都度計算することなく、精度良く効率的に、壁面パネル13を基礎ブロック1Aの上方に設置することができる。
【0060】
また、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、ネジ棒3を支持脚部1bに着脱自在に取り付けられるので、ネジ棒3が無い状態で基礎ブロック1Aを成型することができ、基礎ブロック1Aの製造が容易になる。また、基礎ブロック1Aの保管や運搬時等におけるその取り扱いが容易になる。
【0061】
また、本実施形態においては、壁面パネル13は、
図2に示すように、連結部材7によって立脚部1aに係合させられることで、自立して立脚部1aに連結させられる。このため、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、壁面パネル13のパネル背面とネジ棒3との間に転倒防止部材14を設ける際、立脚部1aの上端に壁面パネル14を自立させることができる。したがって、転倒防止部材14を設ける際に、立脚部1aの上端に壁面パネル13を自立させることで、壁面パネル13を基礎ブロック1Aの上方に保持させるためのサポート材を設ける作業が不要になり、擁壁19Aの構築工程が簡略化されて、擁壁19Aの構築コストの低減化を図ることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、壁面パネル13が連結部材7によって立脚部1aに係合させられて、立脚部1aの上端に壁面パネル14が自立させられる場合について、説明している。しかし、壁面パネル13の下端または立脚部1aの上端にピンを突出させて設け、立脚部1aの上端または壁面パネル13の下端にそのピンが嵌まる穴を設ける等して、ピンを穴に係合させることで、壁面パネル13の下端が立脚部1aの上端に位置決めされるように構成してもよい。この構成によれば、壁面パネル13のパネル背面とネジ棒3との間に転倒防止部材14を設ける際、基礎ブロック1Aの立脚部1aの上端に壁面パネル13の下端を位置決めすることができる。したがって、転倒防止部材14を設ける際に、立脚部1aの上端に壁面パネル13の下端をズレることなく合わせて、壁面パネル13を基礎ブロック1Aの上方に保持させるためのサポート材を設ける作業を容易に行え、擁壁19Aの構築作業の作業性が向上する。
【0063】
また、本実施形態では、固定材を構成するネジ棒3は、上述したように、最下段に設置される壁面パネル13の上部へ転倒防止部材14を取り付ける箇所A(
図2(b)参照)よりも、立脚部1aから離れる後方における支持脚部1bに設けられる。もしも、ネジ棒3が、最下段に設置される壁面パネル13の上部への転倒防止部材14の取付箇所Aよりも立脚部1aに近い位置における支持脚部1bに設けられる場合、壁面パネル13の壁面前方側への転倒は防止できるが、壁面後方側への転倒は効果的に防止できない。しかし、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、壁面パネル13の壁面前方側への転倒および壁面後方側への転倒の双方を転倒防止部材14によって効果的に防止できる。
【0064】
また、特許文献1に開示された従来の基礎ブロックでは、基礎ブロックを設置してから基礎ブロックの開口部にコンクリートを打設して養生をすることで、擁壁19Aの基礎部分が構築される。その後、基礎ブロックの上に最下段の構築ブロックが設置されて、その背後に裏込めコンクリートを打設して養生をすることで、最下段の構築ブロックが積み上げられる。しかし、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、立脚部1aの上端から所定間隔d1(
図1(c)参照)をあけた箇所から立脚部1aに交差する方向に支持脚部1bが延出するため、
図3に示すように、所定間隔d1があいた立脚部1aの背後と最下段に設置される壁面パネル13の背後とにつながって空間が形成される。したがって、この空間に裏込めコンクリート17を打設することで、基礎ブロック1Aの背後と最下段に設置される壁面パネル13の背後とに同時に裏込めコンクリート17が形成され、基礎ブロック1Aの背後の構築部分と最下段に設置される壁面パネル13の構築部分とが、1回のコンクリートの打設と1回のその養生とで、構築される。このため、擁壁19Aを構築する施工工程の削減が図れる。
【0065】
また、従来の基礎ブロックでは、基礎ブロックの上面と、最下段の構築ブロックの背後に打設される裏込めコンクリートとの間に構造的に境界面が形成され、裏込めコンクリート背後の地山や盛土からの土圧により、この境界面において、構築ブロックからなる上部構造が背後から押されて基礎ブロックからなる下部構造との間にズレが生じるおそれがある。しかし、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、基礎ブロック1Aの背後に打設される裏込めコンクリート17と最下段に設置される壁面パネル13の背後に打設される裏込めコンクリート17とを壁面パネル13の積み上げ方向および擁壁19Aの敷設延長方向の双方に打ち継ぎせずに連続させられる。したがって、基礎ブロック1Aからなる下部構造と最下段に設置される壁面パネル13からなる上部構造との間に、従来の基礎ブロックを用いた擁壁のように境界面が形成されず、下部構造と上部構造との間にズレが生じ難くなる。このため、擁壁19Aの強度が増して安定した擁壁19Aが構築される。さらに、壁面パネル13の積み上げ方向および擁壁19Aの敷設延長方向の双方に連続する空間が基礎ブロック1Aおよび壁面パネル13の背後に形成されるため、この空間に連続して、裏込めコンクリート17の強度を補強する補強鉄筋を配置できるようになり、擁壁19Aの耐震性能を向上させることが可能になる。
【0066】
また、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、支持脚部1bの基礎地盤に対向する面に形成される開口部1c(
図1(d)参照)に、
図2(d),(e)に示すように裏込めコンクリート17が入り込み、裏込めコンクリート17が開口部1cに充填されて基礎地盤に接するようになる。したがって、基礎ブロック1Aは、開口部1cの無い基礎ブロックに比較して、基礎地盤に対する摩擦力が増して基礎地盤との密着力が増大する。このため、裏込めコンクリート17の背後の地山や盛土からの土圧によって基礎ブロック1Aおよびその背後に打設される裏込めコンクリート17が擁壁19Aの前面側に押されて滑動しようとする力に抵抗する抵抗力が向上する。
【0067】
また、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、基礎ブロック1Aは、基礎地盤に接する面に形成される複数の凸部1d(
図1(f)参照)により、基礎地盤に対する摩擦力が増す。このため、基礎ブロック1Aは、擁壁19Aの基礎の構築初期時における、基礎ブロック1A自身を含む構築物の自重が軽くて、基礎ブロック1Aの基礎地盤に対する摩擦力が十分に生じない段階において、その背後に裏込めコンクリート17が打設される際に、裏込めコンクリート17および裏込め砕石16から受ける側圧によって擁壁19Aの前面側に押されて滑動しようとする力に抵抗する抵抗力が向上する。
【0068】
また、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、壁面パネル13の背後に裏込めコンクリート17を打設する際、裏込めコンクリート17の背後に設けられる裏込め砕石16との間を区分けするために用いられる平板状をした引き抜き型枠15の下辺を、支持脚部1bの端部に水平方向に切り欠かれた切り欠き部1e(
図1(d)参照)に
図2(c)に示すようにあてがうことで、引き抜き型枠15の下方にパネル背面との距離を保つ特別な間隔維持材などを新たに設けることなく、裏込めコンクリート17の厚さを必要な厚さに設定することができる。
【0069】
また、本実施形態による基礎ブロック1Aによれば、
図5(a),(b)および(c)に示すように、支持脚部1bの傾斜がついた両側部の3箇所に設けられた穴5のうち、曲線施工する擁壁19Aの5分、4分および3分の各勾配に応じた箇所に設けられた穴5にピン21を取り付け、
図6(b)、
図7(b)および
図8(b)に示すように、これらピン21の先端を当接させて、基礎ブロック1Aを隣接して並べて設置することで、最下段の壁面パネル13間の開きと同じまたはほぼ同じ程度の開きに容易に基礎ブロック1Aを設置することができる。このため、上部構造部の傾斜の大きさが変わっても、基礎ブロック1Aの両側部の形状を変えることなく、ピン21を取り付ける穴5の位置を変えるだけで、簡単に上部構造部の傾斜の大きさに応じた配置に基礎ブロック1Aを設置することができる。したがって、曲線施工する半径の大きさと上部構造部の傾斜の大きさとに応じて、その都度、従来のように、隣接する基礎ブロック1A間の開きを計算する必要もなく、しかも、予め基礎ブロック1Aどうしを離して設置する必要もなく、基礎ブロック1Aを設置することができる。このため、基礎ブロック1Aの設置施工時における作業の段取りを削減でき、基礎ブロック1Aの設置施工性が大幅に向上する。
【0070】
また、
図5(d),(e)および(f)に示す基礎ブロック1A1、1A2および1A3によれば、擁壁19Aの基礎部分上部に構築される上部構造部を5分、4分および3分の各勾配に傾斜させて曲線施工する場合、隣接する基礎ブロック1A1、1A2および1A3における支持脚部1bの両側部にしぼんでつけられる傾斜の起点どうしを、
図6(d)、
図7(d)および
図8(d)に示すように当接させて基礎ブロック1A1、1A2および1A3を設置することで、最下段の壁面パネル13間の開きと同じまたはほぼ同じ程度の開きに容易に基礎ブロック1A1、1A2および1A3を設置することができる。したがって、これらの基礎ブロック1A1、1A2および1A3によっても、基礎ブロック1Aと同様に、基礎ブロック1A1、1A2および1A3の設置施工時における作業の段取りを削減でき、基礎ブロック1A1、1A2および1A3の設置施工性が大幅に向上する。
【0071】
また、前述の擁壁工指針にしたがって経験に基づく設計法を用いて構築されるブロック積み擁壁は、設計計算により断面形状が決定される重要度の高い擁壁ではなく、これまでの経験により、擁壁の直高と断面方向の勾配の関係および背面土の状態から予め控え長さが決められ、土圧が小さい所に使用することが原則とされ、重要な場所には使用しないことが前提とされている。このような擁壁は、比較的簡易に構築されてコストが極力抑えられるが、地震や降雨によって被災するものも多い。しかしながら、本実施形態による擁壁19Aによれば、基礎ブロック1Aまたは1A1、1A2もしくは1A3の背後に打設される裏込めコンクリート17と最下段に設置される壁面パネル13の背後に打設される裏込めコンクリート17とが壁面パネル13の積み上げ方向および擁壁19Aの敷設延長方向の双方に打ち継ぎせずに連続させられる。
【0072】
したがって、基礎ブロック1Aまたは1A1、1A2もしくは1A3からなる下部構造と最下段に設置される壁面パネル13からなる上部構造とに境界面が形成されず、下部構造と上部構造との間にズレが生じ難くなる。このため、経験に基づく設計法を用いて構築される擁壁19Aであっても、擁壁19Aの強度が増して安定した擁壁19Aが構築され、地震や降雨による被災に対する耐力が向上する。さらには、壁面パネル13の積み上げ方向および擁壁19Aの敷設延長方向の双方に連続する空間が基礎ブロック1Aおよび壁面パネル13の背後に形成されるため、この空間に連続して、裏込めコンクリート17の強度を補強する補強鉄筋を配置できるようになり、擁壁19Aの耐震性能を向上させることが可能になる。
【0073】
図9(a)は本発明の第2の実施形態によるプレキャスト製基礎ブロック1Bの正面図、同図(b)、(c)、(d)および(e)は、基礎ブロック1Bの平面図、側面図、斜視図および背面図である。なお、同図において
図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0074】
上記の第1の実施形態による基礎ブロック1Aでは、支持脚部1bは、立脚部1aの上端から所定間隔d1をあけた箇所から、立脚部1aに直交する方向に延出していた。しかし、この第2の実施形態による基礎ブロック1Bでは、支持脚部1fは、立脚部1aの上端から所定間隔d2(d2<d1)をあけた箇所から延出し、また、立脚部1aに所定角度を成す方向に延出している。また、上記の第1の実施形態による基礎ブロック1Aでは、支持脚部1bは、擁壁が敷設される基礎地盤に対向する面に、大きな矩形状の開口部1cとその両脇の細長い矩形状の開口部1cとが3箇所に形成されていた。しかし、この第2の実施形態による基礎ブロック1Bでは、支持脚部1fは、擁壁が敷設される基礎地盤に対向する面に、大きな矩形状の開口部1gが並んで2箇所に形成されている。また、上記の第1の実施形態による基礎ブロック1Aでは、立脚部1aおよび支持脚部1bは、基礎地盤に接する面に複数の凸部1dが形成されていた。しかし、この第2の実施形態による基礎ブロック1Bでは、立脚部1aおよび支持脚部1fは、基礎地盤に接する面に凸部1dは形成されていない。第2の実施形態による基礎ブロック1Bは、これらの点以外は、第1の実施形態による基礎ブロック1Aと同様な構成をしている。
【0075】
第2の実施形態による基礎ブロック1Bも、第1の実施形態による基礎ブロック1Aと同様に、
図2に示すように地盤11上の基礎砕石12に設置されて、擁壁の基礎部を構成する。
図10は、この基礎部における基礎ブロック1B上に壁面パネル13を多段に積み上げて構築される擁壁を施工中に斜め上方から見下ろした斜視図である。同図において
図3および
図9と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、
図11は、基礎ブロック1B上に壁面パネル13を積み上げて構築される擁壁19Bの断面図である。同図において
図4および
図10と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。擁壁19Bは基礎ブロック1Bを土台にして、例えば、同図に示すように1:0.5の5分勾配の傾斜をつけて構築される。
【0076】
この擁壁19Bにおいても、立脚部1aの上端から所定間隔d2をあけた箇所から立脚部1aに交差する方向に支持脚部1fが延出するため、所定間隔d2があいた立脚部1aの背後と最下段に設置される壁面パネル13の背後とにつながって空間が形成される。したがって、この空間に裏込めコンクリート17を打設することで、基礎ブロック1Bの背後と最下段に設置される壁面パネル13の背後とに同時に裏込めコンクリート17が形成され、基礎ブロック1Bの背後の構築部分と最下段に設置される壁面パネル13の構築部分とが、1回のコンクリートの打設と1回のその養生とで、構築される。また、裏込めコンクリート17は、各段の壁面パネル13の背面を転倒防止部材14と共に所定の高さまで順次打ち継いで埋められる複数層に形成され、各層におけるコンクリートの水平打ち継ぎ面が壁面パネル13側が高くその反対側が低い段17aになってその段17aが擁壁19Bの敷設延長方向に延在して形成される
【0077】
このような第2の実施形態による基礎ブロック1Bによれば、第1の実施形態による基礎ブロック1Aにおける、立脚部1aおよび支持脚部1bが基礎地盤に接する面に複数の凸部1dが形成されることで奏される作用効果は奏されない。しかし、それ以外は第1の実施形態による基礎ブロック1Aと同様な作用効果が奏され、擁壁19Bの構築コストを抑えられるプレキャスト製基礎ブロック1Bを提供することができる。
【0078】
また、支持脚部1fは、擁壁が構築される基礎地盤に対向する面が、第1の実施形態による支持脚部1bと異なり、基礎地盤に接しず、基礎地盤との間に空間を形成する。したがって、この空間に裏込めコンクリート17が入り込んでこの空間が裏込めコンクリート17で埋められることで、裏込めコンクリート17が基礎地盤と接する面積が増える。このため、基礎ブロック1Bは、第1の実施形態による基礎ブロック1Aに比較して、基礎地盤に対する摩擦力が増して基礎地盤との密着力がさらに増大する。このため、裏込めコンクリート17の背後の地山や盛土からの土圧によって基礎ブロック1Bおよびその背後に打設される裏込めコンクリート17が擁壁19Bの前面側に押されて滑動しようとする力に抵抗する抵抗力がさらに向上する。
【0079】
図12(a)は本発明の第3の実施形態によるプレキャスト製基礎ブロック1Cの正面図、同図(b)、(c)、(d)および(e)は、基礎ブロック1Cの平面図、側面図、斜視図および背面図である。なお、同図において
図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0080】
この第3の実施形態による基礎ブロック1Cでは、支持脚部1hは立脚部1aの上端から延出し、第2の実施形態による基礎ブロック1Bのように、立脚部1aの上端との間に所定間隔d2があけられていない。第3の実施形態による基礎ブロック1Cは、この点以外は、第2の実施形態による基礎ブロック1Bと同様な構成をしており、開口部1gと同様な開口部1iが並んで2箇所に形成され、基礎地盤に接する面に凸部1dは形成されていない。
【0081】
第3の実施形態による基礎ブロック1Cも、第2の実施形態による基礎ブロック1Bと同様に、
図2に示すように地盤11上の基礎砕石12に設置されて、擁壁の基礎部を構成する。
図13は、この基礎部における基礎ブロック1C上に壁面パネル13を多段に積み上げて構築される擁壁を施工中に斜め上方から見下ろした斜視図である。同図において
図10および
図12と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、
図14は、基礎ブロック1C上に壁面パネル13を積み上げて構築される擁壁19Cの断面図である。同図において
図11および
図13と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。擁壁19Cは基礎ブロック1Cを土台にして、例えば、同図に示すように1:0.5の5分勾配の傾斜をつけて構築される。
【0082】
この擁壁19Cにおいては、立脚部1aの上端から支持脚部1hが延出するが、支持脚部1hに開口部1iが形成される。このため、第2の実施形態のように、立脚部1aの背後と最下段に設置される壁面パネル13の背後とにつながる空間が形成され、基礎ブロック1Cの背後の構築部分と最下段に設置される壁面パネル13の構築部分とは、1回のコンクリートの打設と1回のその養生とで、構築される。しかし、最下段に設置される壁面パネル13の背後に開口部1iが存在しない一部箇所では、基礎ブロック1Cの背後の下部構造と最下段に設置される壁面パネル13の上部構造との境に、構造的に境界面が形成される。また、裏込めコンクリート17は、第2の実施形態のように、各段の壁面パネル13の背面を転倒防止部材14と共に所定の高さまで順次打ち継いで埋められる複数層に形成され、各層におけるコンクリートの水平打ち継ぎ面が壁面パネル13側が高くその反対側が低い段17aになってその段17aが擁壁19Cの敷設延長方向に延在して形成される
【0083】
このような第3の実施形態による基礎ブロック1Cによれば、最下段に設置される壁面パネル13の背後に上記のように部分的に境界面が形成される。このため、第2の実施形態による基礎ブロック1Bにおける、立脚部1aの上端との間に所定間隔d2があけられて支持脚部1fが延出することで、下部構造と上部構造との間に境界面が形成されなくなってズレが生じ難くなる作用効果は、第3の実施形態による基礎ブロック1Cでは劣る。しかし、それ以外は第2の実施形態による基礎ブロック1Bと同様な作用効果が奏され、擁壁19Cの構築コストを抑えられるプレキャスト製基礎ブロック1Cを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
上記の各実施形態および各変形例では、基礎ブロック1A,1Bおよび1C並びに1A1,1A2および1A3を擁壁19A,19Bおよび19Cの基礎構造に適用する場合について説明したが、ダムにおける砂や水の堰き止め壁といった他の構造物における基礎構造にも、同様に適用することができる。そして、その場合においても、上記の各実施形態および各変形例と同様な作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0085】
1A,1B,1C,1A1,1A2,1A3…基礎ブロック、1a…立脚部、1b,1f,1h…支持脚部、1c,1g,1i…開口部、1d…凸部、1e…切り欠き部、2,4…埋め込みナット、3…ネジ棒(固定材)、5…穴(着脱部)、6,8…ボルト、7…連結部材、11…地盤、12…基礎砕石、13…壁面パネル、13a…凸部、13b…凹部、14…転倒防止部材、15…引き抜き型枠、16…裏込め砕石、17…裏込めコンクリート、17a…段差、18…鉄筋、19A,19B,19C…擁壁、s1,s2,s3…隙間