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  • 特許-害獣忌避散布材及びその製造方法 図1
  • 特許-害獣忌避散布材及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】害獣忌避散布材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/12 20110101AFI20221221BHJP
【FI】
A01M29/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021104208
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】517441963
【氏名又は名称】合同会社SUNPORT
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀二郎
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-027953(JP,A)
【文献】特開平11-335216(JP,A)
【文献】特開平01-261314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0093120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00-99/00
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の侵入を防止する害獣忌避散布材であって、
人の髪の毛をパウダー状にした人毛パウダーを、竹をチップ状に粉砕した竹チップに接着剤を使用することなく混ぜ合わせてなることを特徴にする害獣忌避散布材。
【請求項2】
害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の侵入を防止する害獣忌避散布材であって、
人の髪の毛をパウダー状にした人毛パウダーを、竹をチップ状に粉砕した竹チップに接着剤を使用して混ぜ合わせてなることを特徴にする害獣忌避散布材。
【請求項3】
前記竹チップの各辺の長さを3cm以下にしたことを特徴にする請求項1又は2に記載の害獣忌避散布材。
【請求項4】
前記竹チップの各辺の長さを1cm以上3cm以下にしたことを特徴にする請求項1又は2に記載の害獣忌避散布材。
【請求項5】
害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の侵入を防止する害獣忌避散布材の製造方法であって、
人の髪の毛をパウダー状にして人毛パウダーを作る人毛パウダー作成工程と、
竹をチップ状に粉砕して竹チップを作る竹チップ作成工程と、
前記人毛パウダーと前記竹チップを混ぜ合わせて、少なくとも前記竹チップに生じた割れに前記人毛パウダーを入れ込む混合工程を、備えることを特徴にする害獣忌避散布材の製造方法。
【請求項6】
害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の侵入を防止する害獣忌避散布材の製造方法であって、
人の髪の毛をパウダー状にして人毛パウダーを作る人毛パウダー作成工程と、
竹をチップ状に粉砕して竹チップを作る竹チップ作成工程と、
前記竹チップに水分を与える水分付与工程と、
前記人毛パウダーと前記水分を与えた竹チップを混ぜ合わせて、少なくとも前記竹チップに生じた割れに前記人毛パウダーを入れ込む混合工程を、備えることを特徴にする害獣忌避散布材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イノシシ,シカ,クマ,アライグマなどの害獣を忌避させ農地などに侵入することを防止する害獣忌避散布材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イノシシ,シカ,クマ,アライグマなどの害獣による農作物の被害は、耕作農業者にとって悩みの種である。
害獣を忌避させる害獣忌避材として、ナフタレンや木酢液を使用したもの(特許文献1,2)が知られているが、臭いが薄くなるため長期間忌避効果を持続させることは困難であった。
【0003】
これに対して、忌避成分をマイクロカプセルに包含することで忌避効果の持続性を高めたものが知られている(特許文献3)。
しかし、マイクロカプセルを用意する必要がありコスト高になるとともに、そのマイクロカプセル内に忌避成分を取り込ませる工程が追加されるため作業性が煩雑になるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3164186号公報
【文献】特開2008-283911号公報
【文献】特開2021-38号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的とするところは、簡易な構成で長期間忌避効果を持続可能な害獣忌避散布材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の侵入を防止する害獣忌避散布材であって、
人の髪の毛をパウダー状にした人毛パウダー(1)を、竹をチップ状に粉砕した竹チップ(2)に接着剤を使用することなく混ぜ合わせてなることを特徴にする。
【0007】
また本発明は、害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の侵入を防止する害獣忌避散布材であって、
人の髪の毛をパウダー状にした人毛パウダー(1)を、竹をチップ状に粉砕した竹チップ(2)に接着剤(3)を使用して混ぜ合わせてなることを特徴にする。
【0008】
また本発明は、前記竹チップ(2)の各辺の長さを3cm以下にしたことを特徴にする。
【0009】
また本発明は、前記竹チップ(2)の各辺の長さを1cm以上3cm以下にしたことを特徴にする。
【0010】
また本発明は、害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の侵入を防止する害獣忌避散布材の製造方法であって、
人の髪の毛をパウダー状にして人毛パウダー(1)を作る人毛パウダー作成工程(A)と、
竹をチップ状に粉砕して竹チップ(2)を作る竹チップ作成工程(B)と、
前記人毛パウダー(1)と前記竹チップ(2)を混ぜ合わせて、少なくとも前記竹チップ(2)に生じた割れ(2a)に前記人毛パウダー(1)を入れ込む混合工程(C)を、備えることを特徴にする。
【0011】
また本発明は、害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の侵入を防止する害獣忌避散布材の製造方法であって、
人の髪の毛をパウダー状にして人毛パウダー(1)を作る人毛パウダー作成工程(A)と、
竹をチップ状に粉砕して竹チップ(2)を作る竹チップ作成工程(B)と、
前記竹チップ(2)に水分を与える水分付与工程(D)と、
前記人毛パウダー(1)と前記水分を与えた竹チップ(2)を混ぜ合わせて、少なくとも前記竹チップ(2)に生じた割れ(2a)に前記人毛パウダー(1)を入れ込む混合工程(C)を、備えることを特徴にする。
【0012】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の害獣忌避散布材は、人の髪の毛をパウダー状にした人毛パウダーを、竹をチップ状に粉砕した竹チップに混ぜ合わせてなるものであるので、構成が簡易で、人間の毛髪のもつ独特な臭気によって害獣を効果的に忌避させることができる。この場合、従来例で示したようなカプセルなどを使用する必要はない。
しかも竹チップは農作地に敷き詰められるとそれ自体、雑草の育成を防止する効果を有している。
【0014】
特に本発明では、人毛パウダーを竹チップに混ぜ合わせると、人毛パウダーは竹チップの表面に付着するだけでなく粉砕によって竹チップに生じた繊維間の割れに人毛パウダーが入り込み、害獣忌避散布材を農作地に散布すると太陽の光にあたり乾燥することで竹チップの割れが閉じて割れの中に人毛パウダーが閉じ込められるようになる。
その結果、人毛パウダーは風雨などによっても竹チップから容易に分離することはないので、人毛パウダーの臭気が長期間にわたって持続され、害獣を忌避させることができるといった格別に優れた効果を発揮する。
【0015】
人毛パウダーを竹チップに混ぜ合わせるときに接着剤を使用することもできるが、竹チップの割れに人毛パウダーが入り込むので接着剤を特に使用しなくてもよい。
接着剤を使用する場合には、接着剤の臭いによって、人毛パウダーから発せられる臭気を打ち消すものではないものが好ましい。
【0016】
粉砕される竹チップとしては水分を含んでいる点で生竹が好ましいが、乾燥した竹の場合は、竹チップに水分を与えるようにすればよい。水分を含んだ竹チップに対して人毛パウダーはより付着しやすく、しかも太陽の光に当てて竹チップが乾燥すると竹チップに生じた割れが閉じ、それにより割れの中に入れ混まれた人毛パウダーを閉じ込めることができるので人毛パウダーからの臭気を長期間持続させた状態にすることができる。
【0017】
なお本願発明のように、人毛パウダーと竹チップを組み合わせた構成は、上述した特許文献には一切記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る害獣忌避散布材の製造工程を示すブロック図である。
図2図1に示した工程で製造された竹チップに人毛パウダーが付着した状態をイメージ化した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る害獣忌避散布材及びその製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係る害獣忌避散布材は、イノシシ,シカ,クマ,アライグマなどの害獣を忌避させたい場所、農作地などに散布して害獣の侵入を防止するものであって、人の髪の毛をパウダー状にした人毛パウダー1を、竹をチップ状に粉砕した竹チップ2に接着剤を使用することなく混ぜ合わせてなるものである。
【0020】
この害獣忌避散布材は、図1に示すように、人毛パウダー作成工程Aにおいて、人の髪の毛をパウダー状にして人毛パウダー1を作る。
人の髪の毛は、理髪店や美容室などから供給される。人の髪の毛をパウダー状にするには、髪の毛をさらに細かくハサミで切った後、すり鉢に入れて手作業によって潰していく。なお、パウダー状にする機械を使用することも可能である。
【0021】
次に、竹チップ作成工程Bにおいて、竹をチップ状に粉砕して竹チップ2を作る。竹チップ2は、生竹を粉砕機に投入して、竹チップ2の各辺の長さ、すなわち縦横の長と幅がおよそ1cmのものとした。粉砕機を利用することで、竹を5mm程度やそれ以下の粉状にすることができるが、竹チップ2の各辺の長さを1cm以上3cm以下にすることが好ましい。生竹を使用するのは、生竹には水分が豊富に含まれているからである。よって、伐採後間もない生竹を使用することが好ましい。
【0022】
ここでは、人毛パウダー作成工程Aの後に竹チップ作成工程Bを行ったが、順序は逆でもよく、また並行して同時に行うこともできる。
【0023】
そして、混合工程Cにおいて、人毛パウダー1と竹チップ2をしっかり撹拌して混ぜ合わせて、少なくとも竹チップ2に生じた繊維間の割れ2aに人毛パウダー1を入れ込むようにする。
これによれば、図2に示したイメージ図のように、特に接着剤を使用しなくても、人毛パウダー1は竹チップ2の表面に付着するとともに、竹チップ2に生じた割れ2aの中に入り込む。
本実施形態では、特に限定されるものではないが、人毛パウダー1を50g,竹チップを1kgの割合で混合した。
【0024】
なお、人毛パウダー1と竹チップ2を混ぜ合わせるときに接着剤3を使用することもできるが、製造された害獣忌避散布材を農作地に散布するときには接着剤3の成分が入っていない方が好ましい。接着剤3を使用する場合には、有害な成分を含有するものではなくしかも人毛パウダー1から発せられる臭気を打ち消すものではないものが好ましい。
【0025】
このようして害獣忌避散布材の製造が完了すると保存するか散布を開始する。
害獣忌避散布材を農作地に散布すると竹チップ2は太陽の光にあたり乾燥する(実際は太陽が出ていない状況でも場合でも竹チップ2は乾燥する)。
害獣忌避散布材が乾燥すると、竹チップ2の割れ2aが閉じて、割れ2aの中に人毛パウダー1が閉じ込められるようになる。その結果、人毛パウダー1は風雨などによっても竹チップ2から容易に分離することはなく人毛パウダー1の臭気が長期間にわたって持続され、害獣を忌避させることができる。
また、竹チップ2は農作地に敷き詰められるとそれ自体、雑草の育成を防止する効果を有している。
【0026】
本実施形態における害獣忌避散布材を農作地に散布したところ、半年から1年の間、人毛パウダー1からの臭気を持続させることができ、その間、害獣の農作地への侵入を防止することができた。その後、人毛パウダー1が付着した竹チップ2は土にかえるようになっている。
なお、比較するため竹チップ2を使用することなく人毛パウダー1だけを農作地に散布したところ人毛パウダー1からの臭気は2週間程度でなくなった。
【0027】
また本実施形態では、生竹を粉砕して竹チップ2を作成したが、乾燥した竹を利用して竹チップ2を作成した後に、竹チップ2に水分を付止する水分付与工程Dを設けることもできる。水分の付止としては、竹チップ2を水に浸けたり、あるいは竹チップ2に水をかけたりするなどして行う。
竹チップ2に水分を付与するのは竹チップ2に生じた割れ2aを、竹チップ2を乾燥させることで閉じさせ、それにより割れ2aの中に入れ混まれた人毛パウダー1を閉じ込めるためである。また、竹チップ2を農作地に散布することで太陽の光に当て自然乾燥するようにしたが、混合工程Cの後に竹チップ2を人工的に乾燥させる工程を設けることもできる。
【0028】
人の髪の毛は、理髪店や美容室などから供給されるようにしたが特に限定されるものではない。特に大人の髪には通常、シャンプー,リンス,トリートメントの他、染料などの薬剤やマニキュアなどが施された場合が多く、子供などの髪とは異なるので、農作地の土壌などを考慮して選択しながら使用してもよいし、人毛であれば取捨選択なくまとめて使用するものであってもよい。
【0029】
また、人毛パウダー1と竹チップ2を混ぜ合わせる混合工程Cにおいて、唐辛子や山葵などの刺激物を粉末にしたものを追加することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 人毛パウダー
2 竹チップ
2a 割れ
3 接着剤
A 人毛パウダー作成工程
B 竹チップ作成工程
C 混合工程
D 水分付与工程
【要約】
【課題】簡易な構成で長期間忌避効果を持続可能な害獣忌避散布材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】害獣を忌避させたい場所に散布して害獣の浸入を防止する害獣忌避散布材であって、人の髪の毛をパウダー状にした人毛パウダー1を、竹をチップ状に粉砕した竹チップ2に接着剤を使用することなく混ぜ合わせてなる。竹チップ2の各辺の長さは、3cm以下にしたものが好ましい。より好ましくは、竹チップ2の各辺の長さを1cm以上3cm以下にする。人毛パウダー1を竹チップ2に混合する前に、竹チップ2に対して水分を与える。
【選択図】図1
図1
図2