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特許7197859作業ロボットとそれを備えた不要部分掻き出し装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】作業ロボットとそれを備えた不要部分掻き出し装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20221221BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20221221BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
B25J9/06 B
A47C27/14 A
A47C27/14 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018233961
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020093359
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592067166
【氏名又は名称】トヤマキカイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福舎 利元
(72)【発明者】
【氏名】吉桑 栄二
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭一
(72)【発明者】
【氏名】羽田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】杉野 彰俊
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-099520(JP,U)
【文献】特開昭62-176728(JP,A)
【文献】国際公開第2017/174577(WO,A1)
【文献】特開2016-000435(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163436(WO,A1)
【文献】特開平07-040181(JP,A)
【文献】特開2004-042142(JP,A)
【文献】特開2005-111617(JP,A)
【文献】特開2006-346739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06-19/00
A47C 27/14
B23C 3/12- 5/08
B23Q 11/00
B24B 9/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端部分に備えられた手首部と、
前記手首部に備えられたハンドと、
前記ハンドの位置を制御する制御部と、を備え、
前記ハンドは、柔軟な被対象物の不要部分を掻き出す掻き出し部を有し、
前記掻き出し部は、駆動機で回転させる駆動軸に支持された回転体を有し、
前記回転体は、半径方向に突出した突起部を有し、前記突起部は、前記駆動軸を中心に放射状に複数設けられ、前記突起部の隣り合う部分の間に形成される凹状部分と該突起部とによって前記回転体の外周部分が凹凸曲面で連なるように形成されている、
ことを特徴とする作業ロボット。
【請求項2】
前記回転体は、少なくとも前記突起部の表面が鏡面研磨されている、
請求項1に記載の作業ロボット。
【請求項3】
前記制御部は、前記被対象物に応じて、前記回転体の回転速度、該回転体の移動速度、該回転体の駆動軸の傾き及び前記突起部の前記不要部分への挿入深さの設定が可能なように構成されている、
請求項1又は2に記載の作業ロボット。
【請求項4】
前記駆動機は、前記制御部の外部軸制御によってサーボ制御されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の作業ロボット。
【請求項5】
多関節型ロボットである、
請求項1~のいずれか1項に記載の作業ロボット。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の作業ロボットと、
前記回転体で掻き出した前記不要部分を吸引する吸引口を有する吸引機と、を備え、
前記吸引口は、前記回転体の前記突起部で前記不要部分を掻き出す方向に備えられている、
ことを特徴とする不要部分掻き出し装置。
【請求項7】
前記吸引口は、一部に前記突起部が通過する開口部を有している、
請求項に記載の不要部分掻き出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンやスポンジなどの柔軟な物の切除した部分を掻き出して除去するための作業ロボット、それを備えた不要部分掻き出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マットなどに用いられるウレタンやスポンジなどの柔軟な物(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、「被対象物」という)は、表面を凹凸状に形成する場合がある。この方法として、例えば、被対象物の表面の一部を除去して表面を凹凸状にすることが行われている。例えば、平面状に形成されたマットの場合、表面に凹状部分を形成する溝部を形成し、その溝部の部分を除去している。マットの場合、溝部を形成することで接触面積を減らして硬さ調整する場合がある。このような作業は、例えば、マットの表面に溝部を形成する切れ目を二次元カットや熱線カッタなどで形成し、溝部の部分を切れ目に沿って人手で除去している。
【0003】
なお、ロボットハンドを用いてシートカバーをモールドパッド上にセットする先行技術がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この文献には、柔軟な物の一部を切除し、その部分を除去することについて何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-286627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようにマットなどの被対象物の表面に形成する溝部の部分を人手で除去する場合、作業者が溝部に指を挿入して掻き出すため、多くの時間と労力を要する。しかも、作業者が掻き出しに失敗する場合もある。その上、掻き出した部分が散乱しないように集めながら作業しなければならない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、柔軟な被対象物の切除した部分を適切に掻き出して除去できる作業ロボットと、それを備えた不要部分掻き出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る作業ロボットは、ロボットアームと、前記ロボットアームの先端部分に備えられた手首部と、前記手首部に備えられたハンドと、前記ハンドの位置を制御する制御部と、を備え、前記ハンドは、柔軟な被対象物の不要部分を掻き出す掻き出し部を有し、前記掻き出し部は、駆動機で回転させる駆動軸に支持された回転体を有し、前記回転体は、半径方向に突出した突起部を有している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「掻き出し」は、被対象物に対して内側に切り込まれた部分を外に掻き出すことをいう。
【0008】
この構成により、ロボットアームの手首部に備えられたハンドの掻き出し部を被対象物の所定位置に配置し、回転体を回転させながら突起部を被対象物の不要部分に沿って移動させることで、不要部分を適切に掻き出して除去することができる。
【0009】
また、前記突起部は、前記駆動軸を中心に放射状に複数設けられ、前記突起部の隣り合う部分の間に形成される凹状部分と該突起部とによって前記回転体の外周部分が凹凸曲面で連なるように形成されていてもよい。
【0010】
このように構成すれば、凹凸曲面で形成された回転体の外周部分における突起部の曲面が不要部分に接して掻き出すので、柔軟な材質の被対象物であっても不要部分を適切に掻き出すことができる。
【0011】
また、前記回転体は、少なくとも前記突起部の表面が鏡面研磨されていてもよい。
【0012】
このように構成すれば、突起部と被対象物の不要部分との接触による摩擦抵抗を低減させ、柔軟な不要部分を適切に掻き出すことができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記被対象物に応じて、前記回転体の回転速度、該回転体の移動速度、該回転体の駆動軸の傾き及び前記突起部の前記不要部分への挿入深さの設定が可能なように構成されていてもよい。
【0014】
このように構成すれば、被対象物の材質や不要部分の大きさなどに応じて、回転体の突起部によって不要部分を掻き出す速度、回転体による掻き出し角度、不要部分への挿入深さを適切に設定することができる。
【0015】
また、前記駆動機は、前記制御部の外部軸制御によってサーボ制御されていてもよい。
【0016】
このように構成すれば、作業ロボットの制御部による外部軸制御によって駆動機をサーボ制御し、回転体の回転速度と掻き出し部の移動速度などをロボットアームと協調動作で制御することができる。
【0017】
また、多関節型ロボットであってもよい。
【0018】
このように構成すれば、被対象物の不要部分に沿って掻き出し部を移動させることが多関節のロボットアームの制御によって適切にできる。
【0019】
一方、本発明に係る不要部分掻き出し装置は、前記いずれかの作業ロボットと、前記回転体で掻き出した前記不要部分を吸引する吸引口を有する吸引機と、を備え、前記吸引口は、前記回転体の前記突起部で前記不要部分を掻き出す方向に備えられている。
【0020】
この構成により、突起部で掻き出した不要部分を、吸引機によって吸引口から吸引することができる。よって、被対象物から掻き出した不要部分を掻き出し方向から吸引し、塵埃を周囲に散らすことなく除去できる。
【0021】
また、前記吸引口は、一部に前記突起部が通過する開口部を有していてもよい。
【0022】
このように構成すれば、突起部を吸引口の内部まで入り込ませることができるので、不要部分を突起部で掻き出した直後に吸引口から吸い込むことができる。よって、より塵埃を生じやすい被対象物であっても塵埃を周囲に散らすことなく除去できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、柔軟な被対象物の不要部分を適切に除去できるので、不要部分を除去する作業の自動化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る作業ロボットを備えた不要部分掻き出し装置の全体構成を示す側面図である。
図2図2は、図1に示す作業ロボットの掻き出し部を示す拡大斜視図である。
図3図3は、図2に示す掻き出し部の背面図である。
図4図4は、図1に示す作業ロボットで不要部分を除去する被対象物の一例を示す斜視図である。
図5図5は、図4に示す被対象物から不要部分を除去している状態を示す側面図である。
図6図6は、図4に示す被対象物から一部の不要部分を除去した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、被対象物60として矩形状のマットを例に説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中におけるX方向、Y方向、Z方向は、図4に示すX方向、Y方向、Z方向とする。
【0026】
(不要部分掻き出し装置の全体構成)
図1は、一実施形態に係る作業ロボット1を備えた不要部分掻き出し装置50の全体構成を示す側面図である。不要部分掻き出し装置50は、作業ロボット1と吸引機30とを備えている。この実施形態の作業ロボット1は、6軸の垂直多関節型ロボットの例である。但し、作業ロボット1の態様はこの実施形態に限定されない。作業ロボット1は、用途に対応した、産業用ロボットであればよい。
【0027】
作業ロボット1は、基台2にロボットアーム10が備えられている。ロボットアーム10は、基台2に旋回軸Sを介して旋回可能に連結された第1リンク11と、第1リンク11に下腕揺動軸Lを介して揺動可能に連結された第2リンク12と、第2リンク12に上腕揺動軸Uを介して揺動可能に連結された第3リンク13と、第3リンク13に手首旋回軸Rを介して旋回可能に連結された第4リンク14と、第4リンク14に手首揺動軸Bを介して揺動可能に連結された第5リンク15とを有している。第5リンク15に、手首回転軸Tを介して回転可能に手首部16が連結されている。なお、作業ロボット1は、各軸につきアクチュエータとしてのサーボモータや回転角検出器などが設けられている(いずれも図示略)。作業ロボット1として、公知の構成の垂直多関節型ロボットを用いることができるため、作業ロボット1についてのこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0028】
そして、手首部16にハンド17が備えられている。ハンド17は、被対象物60の不要部分61(図4)を掻き出す掻き出し部20を有している。掻き出し部20には、駆動機27(図2)の駆動軸21に支持された回転体22が設けられている。回転体22には、周囲に複数の突起部23が設けられている。
【0029】
また、吸引機30は、吸引ファン及び被対象物60の不要部分61(図4)を収容する容器などが内部に備えられている(いずれも図示略)。吸引機30は、吸引口31が作業ロボット1のロボットアーム10の先端部分に備えられた掻き出し部20にブラケット32で固定されている。吸引口31は、掻き出し部20の突起部23による不要部分61の掻き出し方向に備えられている。吸引口31は、突起部23が回転する方向の前方において開口している。吸引口31には吸引ホース33が接続されており、吸引ホース33の後端部は吸引機30に接続されている。吸引ホース33は、第4リンク14の部分にブラケット34で支持されている。ブラケット34は、第4リンク14に対して第5リンク15が変位したときの吸引ホース33の変位を許容するようになっている。吸引ホース33は、柔軟な蛇腹状のホースを用いることができ、蛇腹状のホースとすることでロボットアーム10の動作に応じて柔軟に変形することができる。
【0030】
作業ロボット1及び吸引機30は、制御部3と電気的に接続されている。制御部3は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。制御部3は、作業ロボット1の各リンク11~15の角度、方向、移動速度などを、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで各部を制御する。制御部3は、吸引機30の作動・停止も制御する。例えば、後述するように、掻き出し部20を被対象物60に近接した位置に配置した段階で吸引機30による吸引を開始するようにできる。
【0031】
なお、図1では、被対象物60が台4の上部に配置された例を示している。図示するY方向とZ方向は図4と同じである。
【0032】
(掻き出し部の構成)
図2は、図1に示す作業ロボット1の掻き出し部20を示す拡大斜視図である。図3は、図2に示す掻き出し部20の背面図である。図3は、掻き出し部20を進行方向の後方から見た図である。これらの図では、吸引ホース33は先端部分のみを示している。ハンド17の上部には、手首部16に取り付ける取付フランジ25が設けられている。取付フランジ25には、下方に延びるベース板26が設けられており、このベース板26の一方の面(図の右奥)に駆動機27が設けられている。駆動機27の駆動軸21は、ベース板26の他方の面(図の左手前)に突出している。この駆動軸21に、回転体22が支持されている。回転体22にはボス部24が設けられており、このボス部24が駆動軸21に固定されている。駆動機27には、例えば、ギヤードモータを使用することができる。ギヤードモータを使用することで、適切な回転数に減速することができる。
【0033】
また、駆動機27を、作業ロボット1の制御部3による外部軸制御によって制御するようにしてもよい。これにより、作業ロボット1の制御部3による外部軸制御によって駆動機27をサーボ制御し、回転体22を回転させる速度と掻き出し部20の移動速度などをロボットアーム10の協調動作で制御することができる。
【0034】
回転体22は、板状部材の周囲に、被対象物60の不要部分61を掻き出す突起部23が放射状に設けられている。回転体22は、例えば、数mmの板材を用いることができる。この実施形態の回転体22は、駆動軸21を中心に放射状に設けられた3個(複数)の突起部23を有している。また、回転体22の外周部分は、突起部23と、その隣り合う部分の間に形成される凹状部分とによって凹凸曲面で連なるように形成されている。突起部23は、板面に向かった状態で先端部分が円形状に形成され、その円形状の間が中心側に向けて凹状に形成されている。これにより、回転体22の外周は滑らかな形状となっている。さらに、回転体22は、少なくとも突起部23の表面が鏡面研磨されている。突起部23の表面は、周端面と側面を含む。突起部23は、その形状と表面の鏡面研磨とによって、被対象物60の不要部分61と接触したときの摩擦抵抗を低減させている。回転体22は、全体が鏡面研磨されていてもよい。回転体22の突起部23の旋回直径は、不要部分61の深さなどに応じて設定できるが、例えば、100mm~200mm程度にできる。なお、突起部23の形状は限定されるものではなく、爪状などの他の形状であってもよい。
【0035】
また、吸引口31には、一部に突起部23の先端部分が通過する開口部35が設けられている。この実施形態では、吸引口31の幅方向中央位置にスリット状の開口部35が設けられている。これにより、突起部23の先端部分が吸引口31の内部まで入り込んで回転するので、突起部23で掻き出した不要部分61を直後に吸引口31から吸い込むことができる。よって、塵埃を生じやすい被対象物60であっても、塵埃を周囲に散らすことなく除去できる。
【0036】
(被対象物の一例)
図4は、図2に示す掻き出し部20で不要部分61を除去する被対象物60の一例を示す斜視図である。この実施形態の被対象物60は、矩形状のマットである。また、この例では、矩形状の被対象物60の上面に、X方向とY方向に溝状に切り込まれた不要部分61が形成されている。この例では、所定間隔で切れ目62を入れることで溝状の不要部分61を形成しているが、これは一例であり、両端部分のみや中央部分のみなどであってもよく、形状も一例であり、不要部分61はこの例に限定されない。
【0037】
不要部分61は、被対象物60の上面から所定の深さで形成されている。不要部分61を形成する切れ目62を入れる方法は限定されず、例えば、二次元カットや熱線カッタなどの公知の手段を用いることができる。二点鎖線で示す掻き出し部20は、第1溝X1の部分の不要部分61を掻き出す前の配置状態を示している。掻き出し部20の回転体22による不要部分61の掻き出しは、吸引口31が前方に位置する状態で掻き出し部20を図示する矢印Vの方向に移動させることによって行われる。
【0038】
(掻き出し部による不要部分の掻き出しと吸引)
図5は、図4に示す被対象物60から不要部分61を除去している状態を示す側面図である。図6は、図4に示す被対象物60から一部の不要部分61を除去した状態の斜視図である。
【0039】
図5に示すように、掻き出し部20の回転体22による不要部分61の掻き出しは、吸引口31が前方に位置する状態で掻き出し部20が所定の移動速度で矢印Vの方向に移動させられる。掻き出し部20の移動速度は、被対象物60の材質などに応じて設定することができ、例えば、5~15m/min程度にできる。掻き出し部20は、突起部23が不要部分61に所定の挿入深さHで回転するようにZ方向の位置が保たれる。突起部23を不要部分61に挿入する深さHは、被対象物60の材質や不要部分61の大きさなど応じて設定される。例えば、不要部分61の深さに対して30~80%程度の深さにできる。
【0040】
回転体22は、不要部分61を吸引口31に向けて掻き出す回転方向Wに回転させられる。回転体22の回転速度は 例えば、100~500rpm程度に設定できる。この実施形態の被対象物60は、不要部分61がX方向とY方向とに切れ目62を入れることで形成されており(図4)、その切れ目62の間の不要部分61が突起部23によって掻き出されて吸引口31から吸引される。
【0041】
図6に示すように、例えば、この実施形態の被対象物60の場合、X方向に延びる第1溝X1~第5溝X5に沿って掻き出し部20を移動させることで第1溝X1~第5溝X5の不要部分61を順に除去する。その後、Y方向に延びる第6溝Y6~第13溝Y13に沿って掻き出し部20を移動させることで第6溝Y6~第13溝Y13の不要部分61を順に除去することができる。すなわち、掻き出し部20で第1溝X1の不要部分61を除去した後、掻き出し部20を第2溝X2の掻き出し初めの位置(この例では、図の右手前)に配置し、掻き出し部20で第2溝X2の不要部分61を掻き出して除去した後、第3溝X3へと順に掻き出し部20を移動させてX方向の不要部分61を順に除去する。そしてX方向の不要部分61を除去する作業が終わると、掻き出し部20を第6溝Y6の掻き出し初めの位置(この例では、図の右奥)に配置し、掻き出し部20で第6溝Y6の不要部分61を掻き出して除去し、その後、第7溝Y7の不要部分61と順にY方向の不要部分61を除去することができる。
【0042】
このような不要部分61の掻き出しは、この例の作業ロボット1が6軸の垂直多関節型ロボットであるため、第1リンク11~第5リンク15の各軸S、L、U、R、B、Tにおける角度などを制御することで、突起部23を不要部分61に挿入する深さHを保ちながら適切に行うことができる。また、不要部分61に応じて、手首回転軸Tの角度設定により掻き出し部20を傾けて回転体30の駆動軸21を傾けることができる。回転体30の傾きは、不要部分61に応じてロボットアーム10の各軸を角度制御することで設定できる。図示する被対象物60は、第1溝X1~第5溝X5の不要部分61を除去した後、第6溝Y6~第11溝Y11の不要部分61を除去した状態を示している。不要部分61を除去することで、被対象物60の上面は凹凸状となる。この後、掻き出し部20によって第12溝Y12と第13溝Y13の不要部分61が掻き出されて除去される。このようにして突起部23によって掻き出される不要部分61は、掻き出しとほぼ同時に吸引口31から吸引されて除去される。
【0043】
しかも、この実施形態の被対象物60の場合、X方向とY方向とに入れられた切れ目62が交差するように形成されているため、不要部分61は細かく分断されており、回転体22の突起部23で各不要部分61を適切に掻き出して吸引口31から吸引することができる。また、上記した回転体22は、突起部23とその隣り合う部分の間の凹状部分とによって外周部分が凹凸曲面に形成されているため、例えば、溝状の不要部分61の奥が広がっているような形状の場合でも、適切に掻き出すことができる。よって、ウレタンやスポンジなどの柔軟な被対象物60に形成された溝などの不要部分61を適切に掻き出して除去することが可能となる。
【0044】
(その他の変形例)
被対象物60の配置は水平状の配置に限られるものではなく、被対象物60を斜めに配置した場合でも掻き出し部20をX方向、Y方向及びZ方向に位置制御して移動させることで突起部23によって不要部分61を適切に掻き出すことができる。よって、被対象物60の配置、掻き出し部20の移動形態などは、上記した実施形態に限定されるものではない。
【0045】
また、上記した実施形態は一例を示しており、被対象物60の大きさ、形状、及び不要部分61の大きさ、形状などは他の構成であてもよい。丸い被対象物60、深さが変化する不要部分61などであっても本発明は実施可能であり、被対象物60及び不要部分61は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0046】
さらに、作業ロボット1は6軸の垂直多関節型ロボットに限定されるものではなく、本発明の要旨を損なわない範囲で構成を変更してもよく、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 作業ロボット
3 制御部
10 ロボットアーム
16 手首部
17 ハンド
20 掻き出し部
21 駆動軸
22 回転体
23 突起部
26 ベース板
27 駆動機
30 吸引機
31 吸引口
33 吸引ホース
35 開口部
50 不要部分掻き出し装置
60 被対象物
61 不要部分
62 切れ目
図1
図2
図3
図4
図5
図6