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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】貨幣処理システム及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/10 20190101AFI20221221BHJP
   G07D 11/40 20190101ALI20221221BHJP
   G07D 11/60 20190101ALI20221221BHJP
【FI】
G07D11/10
G07D11/40
G07D11/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018235746
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020098419
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】川田 勝則
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212686(JP,A)
【文献】特開2013-073391(JP,A)
【文献】特開2018-101279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体から離間可能な面部を含む可動部と、前記筐体及び前記可動部の少なくとも何れか一方に設けられた貨幣処理部とを有する貨幣処理装置と、
前記筐体の上面に載置される本体部と、前記本体部に対して上下方向に摺動可能に設けられた表示部とを有し前記表示部が前記本体部から下方に突出する状態と前記表示部が前記本体部から下方に突出しない状態とに切り替え可能であり、前記表示部が前記本体部から下方に突出して前記表示部が前記面部の前記筐体からの離間方向に重なる状態と、前記表示部が前記本体部から下方に突出しないで前記表示部が前記面部の前記筐体からの離間方向に重ならない状態とに切り替え可能な表示装置と
を備えることを特徴とする貨幣処理システム。
【請求項2】
前記貨幣処理装置は、前記可動部を前記筐体にロックするロック部を更に有し、
前記ロック部は、前記表示部が前記面部の前記筐体からの離間方向に重なる状態では前記可動部のロックの解除が不可であり、重ならない状態では前記可動部のロックの解除が可能であることを特徴とする請求項1記載の貨幣処理システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記面部の前記筐体からの離間方向に重ならない状態で前記表示部をロック可能であり、
前記ロック部は、前記表示部が前記面部の前記筐体からの離間方向に重ならない状態でロックされている場合に、前記可動部のロックの解除が可能であることを特徴とする請求項2記載の貨幣処理システム。
【請求項4】
前記表示装置は前記面部が前記筐体から離間している際に前記表示部の摺動を規制する摺動規制部有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項記載の貨幣処理システム。
【請求項5】
前記表示装置は前記表示部の下降時に上昇時よりも高い抵抗力を発生させる抵抗部有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項記載の貨幣処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣処理システム及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙幣を入出金等する紙幣処理装置と硬貨を入出金等する硬貨処理装置とを備える貨幣処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のような従来の貨幣処理システムの紙幣処理装置は、筐体から装置前方に引き出し可能な引出部を有し、この引出部に、紙幣に対して入出金等の各種の処理を行う紙幣処理部の一部又は全てが設けられている。硬貨処理装置は、硬貨に対して入出金等の各種の処理を行う硬貨処理部が設けられた筐体の前面に回動可能に設けられた扉部を有している。更に、紙幣処理装置及び硬貨処理装置のうちの何れか一方の筐体の上面には、操作者に対して各種の表示を行うと共に操作者によって紙幣処理装置及び硬貨処理装置に対する操作入力を行う表示装置(ターミナル装置)が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-041157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような従来の貨幣処理システムでは、処理装置の前面には引出部や扉部が設けられているので、表示装置が筐体の上面の奥側に設置されている。更に、引出部を装置前方に引き出す際や扉部を装置前方に回動する際に、引出部や扉部が表示装置と接触することを防止するために、正面視(前面視)した際に、表示装置が、引出部や扉部と重ならないように、引出部や扉部よりも高く設けられている。従って、小柄な操作者では、表示装置を視認し難い可能性があり、また、表示装置がアクセスを受け付ける場合にはアクセスし難い可能性もあった。
【0005】
その一方で、小柄な操作者であっても表示装置を視認し易いように、表示装置を処理装置の前方に配置して引出部や扉部と重なるように低く設けると、メンテナンスのため引出部を装置前方に引き出す際や扉部を装置前方に回動する際に引出部や扉部が表示装置と接触してしまい、引出部や扉部を動かすことができなくなってしまう。
【0006】
本発明は、視認性の向上及びメンテナンス性の確保が可能な貨幣処理システム及び表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の態様は、筐体と、前記筐体から離間可能な面部を含む可動部と、前記筐体及び前記可動部の少なくとも何れか一方に設けられた貨幣処理部とを有する貨幣処理装置と、前記筐体の上面に載置される本体部と、前記本体部に対して上下方向に摺動可能に設けられた表示部とを有し前記表示部が前記本体部から下方に突出する状態と前記表示部が前記本体部から下方に突出しない状態とに切り替え可能であり、前記表示部が前記本体部から下方に突出して前記表示部が前記面部の前記筐体からの離間方向に重なる状態と、前記表示部が前記本体部から下方に突出しないで前記表示部が前記面部の前記筐体からの離間方向に重ならない状態とに切り替え可能な表示装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記第1の態様によれば、表示装置を視認性向上のため可動部の面部の筐体からの離間方向に重なる状態としても、メンテナンス時には、表示装置を筐体に対し摺動させて可動部の面部の筐体からの離間方向に重ならない状態とすることができ、よって、可動部を面部が筐体から離間するように筐体に対し移動させることができる。従って、視認性の向上及びメンテナンス性の確保が可能となる。
【0009】
本発明に係る第2の態様は、上記第1の態様において、前記貨幣処理装置は、前記可動部を前記筐体にロックするロック部を更に有し、前記ロック部は、前記表示部が前記面部の前記筐体からの離間方向に重なる状態では前記可動部のロックの解除が不可であり、重ならない状態では前記可動部のロックの解除が可能であることを特徴とする。
【0010】
上記第2の態様によれば、表示装置が可動部の面部の筐体からの離間方向に重なる状態では、ロック部は可動部のロックの解除が不可となって、可動部の面部が表示装置に干渉することを防止する。また、表示装置が可動部の面部の筐体からの離間方向に重ならない状態では、ロック部は可動部のロックの解除が可能となって、面部を表示装置に干渉させることなく可動部を、面部が筐体から離間するように移動させることができる。
【0011】
本発明に係る第3の態様は、上記第2の態様において、前記表示装置は、前記面部の前記筐体からの離間方向に重ならない状態で前記表示部をロック可能であり、前記ロック部は、前記表示部が前記面部の前記筐体からの離間方向に重ならない状態でロックされている場合に、前記可動部のロックの解除が可能であることを特徴とする。
【0012】
上記第3の態様によれば、表示装置が可動部の面部の筐体からの離間方向に重ならない状態でロックされている場合に、ロック部は可動部のロックの解除が可能となるため、可動部の面部が表示装置に干渉することを、より確実に防止することができる。
【0013】
本発明に係る第4の態様は、上記第1から第3の何れか一態様において、前記表示装置は前記面部が前記筐体から離間している際に前記表示部の摺動を規制する摺動規制部有することを特徴とする。
【0014】
上記第4の態様によれば、表示装置の表示部が可動部の面部の筐体からの離間方向に重ならない状態にあって、可動部がその面部を筐体から離間させている状態では、摺動規制部が、表示部の摺動を規制することになるため、表示装置の表示部が、筐体に対し移動している可動部に干渉することを防止することができる。
【0015】
本発明に係る第5の態様は、上記第1から第4の何れか一態様において、前記表示装置は前記表示部の下降時に上昇時よりも高い抵抗力を発生させる抵抗部有することを特徴とする。
【0016】
上記第5の態様によれば、抵抗部が、表示部の下降時に上昇時よりも高い抵抗力を発生させるため、表示部の上昇時の負荷を低減しつつ、表示部の急激な下降を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、視認性の向上及びメンテナンス性の確保が可能な貨幣処理システム及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムを示す斜視図である。
図2】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムを示す正面図である。
図3】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの紙幣入出金装置を示す斜視図である。
図4】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの硬貨処理ユニットを示す斜視図である。
図5】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの表示装置を示す斜視図である。
図6】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの紙幣入出金装置及び表示装置を示す部分側面図である。
図7】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの表示部を示す後面側から見た斜視図である。
図8】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの本体部を示す斜視図である。
図9】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの紙幣入出金装置及び表示装置を部分的に示す斜視断面図である。
図10】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの紙幣入出金装置及び表示装置を部分的に示す斜視断面図である。
図11】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの表示装置を部分的に示す斜視断面図である。
図12】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの表示装置を部分的に示す斜視断面図である。
図13】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの下降規制機構を示す側面図である。
図14】本発明に係る一実施形態の貨幣処理システムの下降規制機構等を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る一実施形態の貨幣処理システム及び表示装置を図面を参照して以下に説明する。
【0022】
<構成>
実施形態の貨幣処理システム10は、図1及び図2に示すような、金融機関等で使用される出納システムであり、実施形態の表示装置11は、この貨幣処理システム10に設けられて、貨幣処理システム10においてターミナル装置として使用されるものである。
【0023】
以下の説明において使用する「前」は貨幣処理システム10及び表示装置11の操作者側、「後」は貨幣処理システム10及び表示装置11の操作者とは反対側、「左」は貨幣処理システム10及び表示装置11の操作者から見た左、「右」は貨幣処理システム10及び表示装置11の操作者から見た右である。
【0024】
貨幣処理システム10は、図1及び図2に示すように、小束収納出金装置21と紙幣入出金装置22(貨幣処理装置)と新券支払装置23とを有する紙幣処理ユニット24と、バラ硬貨入出金装置31と棒金支払装置32(貨幣処理装置)とを有する硬貨処理ユニット33と、複数、具体的には2個の表示装置11とを備えている。また、貨幣処理システム10は、複数、具体的には2個のプリンタ34と、投函ポスト35と、複数、具体的には2個のテンキー装置36と、複数、具体的には2個の静脈認証装置37と、背板38とを備えている。貨幣処理システム10は、操作者が表示装置11に表示される画面を見ながら操作をすることで、現金(バラ紙幣、バラ硬貨)の入金と、紙幣(バラ・小束・新券)及び硬貨(バラ・棒金)の出金と、営業店舗内の在高管理などを行うものである。
【0025】
小束収納出金装置21は、貨幣処理システム10の左端位置に設けられている。小束収納出金装置21は、右隣の紙幣入出金装置22から繰り出されてきたバラ紙幣を所定枚数ずつ集積し結束して小束を作成する。小束収納出金装置21は、作成した小束を収納すると共に、収納している小束を、前面上部から上面前部にかけて設けられた開閉可能な小束出金口41から出金する。
【0026】
紙幣入出金装置22は、小束収納出金装置21の右隣りに設けられている。紙幣入出金装置22には、開閉可能な紙幣入出金口43が前面上部に設けられており、開閉可能な紙幣返却口44が上面前部に設けられている。紙幣入出金装置22は、紙幣入出金口43に投入されたバラ紙幣を識別し、受け入れ可能なバラ紙幣を計数しつつ金種別に収納する一方で、受け入れ不可なバラ紙幣を紙幣返却口44に返却する。また、紙幣入出金装置22は、収納しているバラ紙幣を紙幣入出金口43から出金する。
【0027】
新券支払装置23は、小束収納出金装置21の上面の小束出金口41よりも後側に設置されている。新券支払装置23は、収納している新券紙幣を前面の開閉可能な図2に示す新券出金口46から出金する。新券支払装置23の上面に1個のプリンタ34が設置されている。
【0028】
バラ硬貨入出金装置31は、紙幣入出金装置22の右隣りに設けられている。図1に示すように、バラ硬貨入出金装置31には、開閉可能な硬貨入金口51が上面に設けられている。また、図2に示すように、バラ硬貨入出金装置31には、前面から引き出し可能な硬貨出金箱52及び硬貨返却箱53が設けられている。バラ硬貨入出金装置31は、硬貨入金口51に投入されたバラ硬貨を識別し、受け入れ可能なバラ硬貨を計数しつつ金種別に収納する一方で、受け入れ不可なバラ硬貨を硬貨返却箱53に返却する。また、バラ硬貨入出金装置31は、収納しているバラ硬貨を硬貨出金箱52に出金する。
【0029】
図1に示すように、バラ硬貨入出金装置31の上面には、硬貨入金口51よりも後側に、プリンタ34と投函ポスト35とが設置されている。これらのうち、投函ポスト35が左側に、プリンタ34が右側に、それぞれ設けられている。
【0030】
棒金支払装置32は、バラ硬貨入出金装置31の右隣りであって、貨幣処理システム10の右端位置に設けられている。棒金支払装置32は、バラ硬貨入出金装置31から繰り出されてきたバラ硬貨を所定枚数ずつ集積し包装して棒金を作成する。棒金支払装置32は、作成した棒金を収納すると共に収納している棒金を、前面上部から上面前部にかけて設けられた開閉可能な棒金出金口55から出金する。
【0031】
背板38は、紙幣処理ユニット24の左側面部と、紙幣処理ユニット24及び硬貨処理ユニット33の背面部と、硬貨処理ユニット33の右側面部とに取り付けられており、紙幣処理ユニット24の上面の左端位置と、紙幣処理ユニット24及び硬貨処理ユニット33の上面の後端位置と、硬貨処理ユニット33の上面の右端位置とから、これらの上面よりも上方に立ち上がっている。背板38は、紙幣処理ユニット24及び硬貨処理ユニット33の上面に設置されている表示装置11やプリンタ34等の配線を隠す仕切りである。
【0032】
表示装置11は、紙幣入出金装置22の上面に1個設置されると共に、棒金支払装置32の上面に1個設置されている。テンキー装置36は、バラ硬貨入出金装置31の上面の左端位置に1個載置されると共に、棒金支払装置32の右側面に固定された載置台58の上面に1個設載置されている。静脈認証装置37は、バラ硬貨入出金装置31の上面左端のテンキー装置36よりも後側に1個載置されると共に、載置台58の上面のテンキー装置36よりも後側に1個載置されている。
【0033】
紙幣入出金装置22の上面に設置された表示装置11とバラ硬貨入出金装置31の上面左端に設置されたテンキー装置36及び静脈認証装置37とが1組の操作卓61を構成し、棒金支払装置32の上面に設置された表示装置11と、載置台58に載置されたテンキー装置36及び静脈認証装置37とが1組の操作卓61を構成する。即ち、貨幣処理システム10は、2卓仕様となっている。
【0034】
貨幣処理システム10を、このように2卓仕様にすることで、2人の操作者が同時に貨幣処理システム10を操作することができ、作業性に優れることになる。また、貨幣処理システム10は、一方の操作者が一方の操作卓61を操作して紙幣の入出金処理を行い、他方の操作者が他方の操作卓61を操作して硬貨の入出金処理を行う等、2人の操作者の行う処理が干渉しない場合には、2人の操作者が同時に並行して処理を行うことができ、作業性に優れることになる。更に、処理が干渉する場合、先に操作卓61を操作した操作者の処理が優先され、後に別の操作卓61を操作した操作者は入力までしか行うことができず、先に操作卓61を操作した操作者の処理が完了するのを待って、後に操作した操作者の処理が開始される。このように処理が干渉するとしても、入力等の操作自体は2人の操作者が同時にすることができるため、作業性に優れることになる。
【0035】
図3に示すように、紙幣入出金装置22は、前方に開口する箱状の筐体70と、筐体70に可動に連結された引出部71(可動部)とを有している。引出部71は、左右両側に設けられたスライドレール72を介して筐体70に連結されている。引出部71は、スライドレール72の案内で、筐体70に対し上下方向及び左右方向の位置は一定のまま前後方向にのみ移動可能となっている。引出部71は、筐体70から前方に引き出し可能であり、筐体70に対し後方に押し込み可能となっている。
【0036】
紙幣入出金装置22は、筐体70に対し可動である引出部71を筐体70にロックする電磁ロック等のロック部74を有している。引出部71は、通常時は、筐体70に対し最も奥側まで押し込まれた状態でロック部74によって筐体70にロックされている。以下、引出部71のこの状態を「通常使用状態」と言う。
【0037】
引出部71には、前面上部に紙幣入出金口43が設けられており、上面前部に紙幣返却口44が設けられている。引出部71には、紙幣返却口44によりも後方に、紙幣返却口44が設けられた水平に広がる上面部75の後端縁部から上方に立ち上がる前壁部80が形成されている。この前壁部80は、その下部に前方に向く下前面部76(面部)を、その上部に前方に向く上前面部77(面部)を、それぞれ有している。下前面部76は、引出部71の引き出し方向、即ち前後方向に直交して広がっており、上前面部77は、下前面部76の上端縁部から上部が下部よりも後方に位置するように後上がりに若干傾斜して広がっている。
【0038】
下前面部76及び上前面部77は、引出部71の筐体70からの引き出し時に筐体70から離間し、引出部71の筐体70への押し込み時に筐体70に接近する。よって、引出部71は、筐体70から離間可能な下前面部76及び上前面部77を含んでいる。引出部71には、上前面部77の上端縁部から水平後方に広がる上面部78と、上面部78の後端縁部から前後方向に直交して広がるように下方に延出する後面部79とを有している。上面部78は、紙幣返却口44が設けられた上面部75よりも上側に配置されており、筐体70の上面73と同一平面に配置されている。
【0039】
引出部71には、押し込み時に筐体70内に収納され、引き出し時に筐体70から外に露出する部分に、紙幣の紙幣入出金口43からの繰り出し、紙幣の搬送、紙幣の識別、紙幣の計数、紙幣の一時貯留、紙幣の収納、紙幣の紙幣返却口44に向けた返却、紙幣の紙幣入出金口43に向けた出金等の処理を行う紙幣処理部81(貨幣処理部)が設けられている。なお、紙幣入出金装置22において、紙幣処理部81は、引出部71のみに設けられているが、筐体70のみに設けられていても良く、筐体70及び引出部71の両方に設けられていても良い。即ち、紙幣処理部81は、筐体70及び引出部71の少なくとも何れか一方に設けられていれば良い。
【0040】
そして、図1に示すように、この紙幣入出金装置22の筐体70の上面73に、一方の表示装置11が設置されることになる。
【0041】
図4に示すように、棒金支払装置32は、前方に開口する箱状の筐体90と、筐体90に可動に連結された扉部91(可動部)とを有している。扉部91は、筐体90に対し、筐体90の前端右側部に鉛直に設けられた図示略の回動軸を中心に回動可能である。扉部91は、筐体90に対し上下方向の位置は一定のまま右前方に回動して筐体90を開き、左後方に回動して筐体90を閉じる。
【0042】
棒金支払装置32は、筐体90に対し可動である扉部91を筐体90にロックする電磁ロック等のロック部94を有している。扉部91は、通常時は、筐体90を閉塞した状態で電磁ロック等のロック部94によって筐体90にロックされている。以下、扉部91のこの状態を「通常使用状態」と言う。
【0043】
扉部91には、通常使用状態での前面上部から上面前部にかけて棒金出金口55が設けられている。通常使用状態の扉部91には、棒金出金口55よりも後方に、棒金出金口55が設けられた水平に広がる上面部95の後端縁部から上方に立ち上がる前壁部96が形成されている。通常使用状態の扉部91の前壁部96は、前方に向く前面部97(面部)を有しており、この前面部97は、前後方向に直交する面に対し上部が下部よりも後方に位置するように後上がりに若干傾斜して広がっている。
【0044】
この前面部97は、扉部91の開放時に筐体90から離間し、扉部91の閉塞時に筐体90に接近する。よって、扉部91は、筐体90から離間可能な前面部97を含んでいる。扉部91には、通常使用状態にあるとき、前面部97の上端縁部から水平後方に広がる上面部98と、上面部98の後端縁部から前後方向に直交して広がるように下方に延出する後面部99とを有している。上面部98は、棒金出金口55が設けられた上面部95よりも上側に配置されており、筐体90の上面93と同一平面に配置されている。
【0045】
筐体90には、扉部91の開放時に外に露出する部分に、硬貨の搬送、硬貨の識別、硬貨の計数、硬貨の集積、硬貨の包装、棒金の収納、棒金の搬送、棒金の棒金出金口55に向けた出金等の処理を行う棒金処理部101(貨幣処理部)が設けられている。なお、棒金処理部101は、筐体90及び扉部91の両方に設けられていても良く、扉部91のみに設けられていても良い。即ち、棒金処理部101は、筐体90及び扉部91の少なくとも何れか一方に設けられていれば良い。
【0046】
そして、図1に示すように、この棒金支払装置32の筐体90の上面93に、他方の表示装置11が設置されることになる。
【0047】
貨幣処理システム10においては、紙幣入出金装置22の筐体70の上面73に1個の表示装置11が設置されると共に、棒金支払装置32の筐体90の上面93にもう1個の表示装置11が設置されているが、各表示装置11の構成は同様である。従って、ここでは、紙幣入出金装置22に設置された表示装置11を例に説明する。棒金支払装置32に設置された表示装置11については異なる点のみを説明する。
【0048】
紙幣入出金装置22に設置される表示装置11は、筐体70の上面73に載置される本体部111と、本体部111の前部に連結された板状の表示部112とを備えている。表示部112は、通常使用状態にある引出部71の上前面部77に平行となっており、よって、下部よりも上部が若干後側に位置するように傾斜している。
【0049】
なお、棒金支払装置32に設置される表示装置11は、本体部111が、筐体90の上面93に載置され、表示部112が、通常使用状態にある扉部91の前面部97に平行となっている。
【0050】
表示部112は、本体部111とは反対側となる前面に、操作者に向け画面表示を行うディスプレイ115と、ディスプレイ115の画面の前面に設けられて操作入力を受け付けるタッチパネル116とを有している。つまり、この表示部112は、操作者に向け画面表示を行う表示手段として機能すると共に、操作者による操作入力を受け付ける操作手段としても機能する。
【0051】
図5に示すように、表示部112は、ディスプレイ115及びタッチパネル116よりも下方となる下部に、ICカードリーダ118と磁気カードリーダ119とが前方に向けて設けられている。これらのうちICカードリーダ118が左側に、磁気カードリーダ119が右側に設けられている。
【0052】
表示装置11は、表示部112が、本体部111に対して上記傾斜状態を維持したまま、傾斜方向に沿って上下方向に摺動可能となっている。通常操作時には、図5(A)に示すように、表示部112が摺動範囲の下部位置にあって本体部111から下方に突出する状態になる。これにより、紙幣入出金装置22に設置された表示装置11は、通常操作時には、図6(A)に示すように、表示部112の下部が引出部71の装置前方に配置され、正面視(前面視)した際に表示部112が引出部71と重なるようになる。以下、表示装置11のこの状態を「通常操作状態」と言う。
【0053】
言い換えると、通常操作状態では、表示部112の下部が、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77に対し、上下方向及び左右方向の位置を重ね合わせることになり、前後に重なる状態になる。更に言い換えると、通常操作状態では、表示部112の下部が、通常使用状態にある引出部71に対し、引出部71の筐体70に対する移動方向の先方に重なる状態になる。更に言い換えると、通常操作状態では、表示部112の下部が、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に対し直交する方向の位置を下前面部76及び上前面部77と重ね合わせることになり、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77に対し、これらの筐体70からの離間方向に重なる状態になる。更に言い換えると、通常操作状態では、表示部112の下部が、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向の移動軌跡上に配置される状態になる。
【0054】
そのため、通常使用状態にある引出部71を筐体70から引き出す際には、図5(A)のような通常操作状態から、表示部112を手動で上方向に移動させ、図5(B)に示すように、表示部112を本体部111から下方に突出しない状態とし、図6(B)に示すように、表示部112の下部を引出部71の装置前方から退避させ、引出部71の装置前方に重ならないようにする。以下、表示装置11のこの状態を「退避状態」と言う。表示装置11の表示部112を除く本体部111は、筐体70の上面73に載置されていて、通常使用状態にある引出部71の装置前方には重なっていないため、退避状態では表示装置11も、通常使用状態にある引出部71の装置前方に重ならない状態になる。
【0055】
言い換えると、退避状態では、表示部112及びこれを含む表示装置11が、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77に対し、上下方向の位置をずらすことになり、前後に重ならない状態になる。更に言い換えると、退避状態では、表示部112及びこれを含む表示装置11が、通常使用状態にある引出部71に対し、引出部71の筐体70に対する引き出し時の移動方向の先方に重ならない状態になる。更に言い換えると、退避状態では、表示部112及びこれを含む表示装置11が、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に対し直交する方向の位置を下前面部76及び上前面部77に対しずらすことになり、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77に対し、これらの筐体70からの離間方向に重ならない状態になる。更に言い換えると、退避状態では、表示部112及びこれを含む表示装置11が、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向の移動軌跡上にない状態になる。
【0056】
その後、再度通常操作状態にする際には、図5(B)のような退避状態から、表示部112を手動で下方向に移動させ、図5(A)に示すように、表示部112を本体部111から下方に突出するように下部位置に位置させる。これにより、図6(A)に示すように、表示部112の下部が通常使用状態にある引出部71の装置前方に位置し、表示部112が引出部71と、引出部71の筐体70からの引き出し時の移動方向に重なる通常操作状態になる。
【0057】
以上により、紙幣入出金装置22に設置された表示装置11は、その表示部112が、本体部111を介して紙幣入出金装置22の筐体70に対し上下に摺動可能に設けられ、引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重なる状態と重ならない状態とに切り替え可能となっている。表示装置11は、本体部111が、常に、引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重ならない状態となっているため、その全体として、引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重なる状態と重ならない状態とに切り替え可能となっている。
【0058】
棒金支払装置32に設置された表示装置11は、通常操作状態では、表示部112の下部が扉部91の装置前方に配置され、正面視(前面視)した際に表示部112が、通常使用状態にある扉部91と重なるようになる。言い換えると、通常操作状態では、表示部112の下部が、通常使用状態にある扉部91の前壁部96の前面部97に対し、上下方向及び左右方向の位置を重ね合わせることになり、前後に重なる状態になる。更に言い換えると、通常操作状態では、表示部112の下部が、通常使用状態にある扉部91に対し、扉部91の筐体90に対する移動方向の先方に重なる状態になる。更に言い換えると、通常操作状態では、表示部112の下部が、通常使用状態にある扉部91の前面部97に対し、その筐体90からの離間方向に重なる状態になる。更に言い換えると、通常操作状態では、表示部112の下部が、通常使用状態にある扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向の移動軌跡上に配置される状態になる。
【0059】
また、棒金支払装置32に設置された表示装置11は、退避状態では、表示部112の下部を扉部91の装置前方から退避させ、正面視(前面視)した際に、通常使用状態にある扉部91の装置前方に重ならないようにする。言い換えると、退避状態では、表示部112及びこれを含む表示装置11が、通常使用状態にある扉部91の前面部97に対し、上下方向の位置をずらすことになり、前後に重ならない状態になる。更に言い換えると、退避状態では、表示部112及びこれを含む表示装置11が、通常使用状態にある扉部91に対し、扉部91の筐体90に対する開時の移動方向の先方に重ならない状態になる。更に言い換えると、退避状態では、表示部112及びこれを含む表示装置11が、通常使用状態にある扉部91の前面部97に対し、その筐体90からの離間方向に重ならない状態になる。更に言い換えると、退避状態では、表示部112及びこれを含む表示装置11が、通常使用状態にある扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向の移動軌跡上にない状態になる。
【0060】
以上により、棒金支払装置32に設置された表示装置11は、その表示部112が、本体部111を介して棒金支払装置32の筐体90に対し上下に摺動可能に設けられ、扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重なる状態と重ならない状態とに切り替え可能となっている。表示装置11は、本体部111が、常に、扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重ならない状態となっているため、全体として、扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重なる状態と重ならない状態とに切り替え可能となっている。
【0061】
図7に示すように、表示部112の後部には、後面131よりも前方に凹む凹状をなして上下方向に延びるガイド凹部132が左右両側に一対設けられている。これらガイド凹部132の互いに平行で反対を向く、位置が近い側の側面には、それぞれガイドレール133が後面131と平行をなして上下方向に延びるように固定されている。これらガイド凹部132のそれぞれの上端は、下方に向きガイド凹部132の延在方向に対し直交して広がる下位置規制部135となっている。
【0062】
一対のガイド凹部132のそれぞれの下部には、左右方向のガイドレール133側に規制部136が設けられている。これら規制部136の上面は、ガイド凹部132の延在方向に対し直交して広がる上位置規制部137となっており、これら規制部136の下面は、ガイド凹部132の延在方向に対し直交して広がる下降規制部138となっている。
【0063】
図8に示すように、本体部111の前面141は、前後方向に直交して広がる面に対して下部よりも上部が若干後側に位置するように傾斜しており、図6に示すように、本体部111の紙幣入出金装置22への設置時に、通常使用状態の引出部71の上前面部77と同一平面に配置される。なお、棒金支払装置32に設置される場合、本体部111の前面141は、通常使用状態の扉部91の前面部97と同一平面に配置される。
【0064】
図8に示すように、本体部111の前部には、前面141よりも後方に凹む凹状の前面凹部142が設けられている。前面凹部142には、前面141よりも前方に突出するように支持部143が左右両側に一対固定されている。これら支持部143には、それぞれの対向する近い側の側面に、ガイドキャリッジ144が、前面141と平行をなして上下方向に延びるように固定されている。
【0065】
本体部111の一対の支持部143が、それぞれ表示部112の一対のガイド凹部132の対応する一方に挿入されることになり、この状態で、表示部112の一対のガイドレール133に、本体部111の一対のガイドキャリッジ144が、それぞれ対応するもの同士連結されることになる。すると、図9に示すように、表示部112は、後面131が本体部111の前面141に対し、平行をなし、若干の一定距離離れて対向する。この状態で、表示部112は、一対のガイドレール133が一対のガイドキャリッジ144上を走行することになり、その結果、本体部111に対してガイドレール133及びガイドキャリッジ144の延在方向に摺動する。よって、表示部112は、本体部111に支持されて、後面131が本体部111の前面141に対し平行をなし若干の一定距離離れて対向する状態を維持したまま本体部111に対し上下に摺動する。
【0066】
ここで、図9(A)に示すように、表示部112が通常操作状態にある場合には、ガイド凹部132の上端の下位置規制部135が、本体部111の支持部143の上面と当接することで、表示部112が本体部111に対しこれ以上下方向に移動しないように規制する。
【0067】
その一方で、図9(B)に示すように、表示部112が退避状態にある場合には、ガイド凹部132の下部に設けられた規制部136の上位置規制部137が、支持部143の下面と当接することで、表示部112が本体部111に対しこれ以上上方向に行かないように規制する。
【0068】
ここで、一対の支持部143のそれぞれの前端部には、左右方向に沿う軸回りに回転可能なローラ部146が上下に設けられている。これらローラ部146が対応するガイド凹部132の底面と接触する。よって、表示部112はローラ部146を転動させながら本体部111に対し円滑に摺動するようになっている。
【0069】
図7に示すように、表示部112の後部には、一対のガイド凹部132の間に、ガイド凹部132と平行をなして延びるようにラックギア151が設けられている。これに対して、図8に示すように、本体部111の前面凹部142にはピニオンギア152が左右軸回りに回転可能に設けられている。そして、表示部112の一対のガイドレール133に、本体部111の一対のガイドキャリッジ144がそれぞれ連結されると、図10に示すように、ラックギア151とピニオンギア152とが噛み合う。
【0070】
ピニオンギア152は、図8に示すように、ワンウェイクラッチ155(抵抗部)に連結されている。ワンウェイクラッチ155は、表示部112を上方向に移動させ、通常操作状態から退避状態にする際には、これに連動して回転するピニオンギア152に回転負荷を発生させず、表示部112を下方向に移動させ、退避状態から通常操作状態にする際には、これに連動して回転するピニオンギア152に回転負荷を発生させるようになっている。
【0071】
即ち、ワンウェイクラッチ155は、表示装置11の表示部112に対しその下降時にその上昇時よりも高い抵抗力を発生させる。よって、表示部112を容易に退避状態にすることができる一方で、表示部112が急激に下降することを抑制できる。このため、図9(A)に示すように、表示部112の下降時に下位置規制部135と本体部111の支持部143の上面とが当接する際の衝撃を緩和することができる。
【0072】
図7に示すように、表示部112の後面131側の左右両端縁部には、表示部112を本体部111に対し摺動させる際に操作者の手で把持される一対の把持部161が後面131よりも前方に凹んで設けられている。左側の把持部161は表示部112の左側面に抜けており、右側の把持部161は表示部112の右側面に抜けている。
【0073】
表示部112の両側のガイド凹部132には、それぞれ係合部材171の係合部172が、上位置規制部137の近傍に設けられている。これら係合部172は、それぞれが配置されたガイド凹部132内において規制部136よりも左右方向のガイドレール133とは反対側に配置されている。図9(A)に示すように、係合部材171は、表示部112内に位置固定で設けられた上下一対の回動軸173を中心に回動可能となっている。一対の回動軸173は、ガイド凹部132の延在方向、言い換えれば表示部112の摺動方向に沿っており、よって、係合部材171は、表示部112の摺動方向に沿う軸回りに回動する。
【0074】
係合部材171には、左右方向のガイドレール133とは反対側に一対の回動軸173が設けられており、左右方向のガイドレール133側に係合部172が設けられている。係合部材171は、ガイド凹部132内でガイド凹部132の底面に沿って広がる平板状のベース板部174を有しており、このベース板部174から上下に一対の回動軸173が突出し、このベース板部174から後方に係合部172が突出している。係合部材171は、バネ等の付勢部材(不図示)によって係合部172を後方、即ち表示部112の後面131側に位置させるように付勢されている。
【0075】
ベース板部174には、左右方向の回動軸173側の下部の後面に後方に突出するようにロック解除レバー175が固定されている。ロック解除レバー175は、左右方向の係合部172側ほどベース板部174からの突出高さが高くなる形状をなしている。図7に示すように、係合部材171は、把持部161の前側に配置されており、ロック解除レバー175は、把持部161の下端部の開口部176から後方に突出している。操作者が手で把持部161を把持する際に、開口部176から突出するロック解除レバー175を前方に押圧操作すると、係合部172がガイド凹部132内で前方に移動する。
【0076】
図11に示すように、係合部172は、ベース板部174から後方に突出し、その下面を含んで回動軸173の軸方向に直交して広がる係合本体部177と、係合本体部177の後端縁部から上方且つ前方に延出する係合ガイド部178とを有している。係合本体部177の下面は、表示部112の摺動方向に対し直交して広がっている。係合ガイド部178は、係合本体部177に対して鋭角をなして傾斜しており、延出先端側ほどベース板部174及び下位置規制部135に近づくように傾斜している。
【0077】
本体部111の前面凹部142にはロック部材181が固定されている。ロック部材181は、前面凹部142の底面に固定されてこの底面から本体部111の前面141に直交して前面141よりも前方に延出するロック本体部182と、ロック本体部182の前端縁部から下方且つ後方に延出するロックガイド部183と、ロックガイド部183の後端縁部から前面凹部142の底面まで延びてこの底面に固定される延出部184とを有している。
【0078】
ロック本体部182は、その上面を含んで係合部材171の回動軸173の軸方向に直交して広がっており、表示部112の摺動方向に対し直交して広がっている。ロックガイド部183は、ロック本体部182に対して鋭角をなしており、延出部184とは反対側ほど回動軸173の軸方向において下位置規制部135に近づくように傾斜している。
【0079】
図7に示すような表示部112の係合部172と、図8に示すような本体部111のロック部材181とが、図11に示すように、係合することで、表示部112は、退避状態で保持される。具体的には、図11に示すように、係合部材171の係合本体部177の下面とロック部材181のロック本体部182の上面とが面接触で当接することで、表示部112は本体部111にロックされて退避状態に保持される。
【0080】
そして、操作者が係合部材171のロック解除レバー175を前方に押して、図12に示すように、一対の回動軸173を中心に係合部材171を前方に回動させることで、係合部172を前方に移動させて、係合部172とロック部材181との係合状態を解除することになる。即ち、係合部材171の係合本体部177の下面とロック部材181のロック本体部182の上面との面接触を解除して、係合部172とロック部材181とが表示部112の摺動方向に見て重ならない状態とする。この状態で、表示部112を下方向に移動させると、表示部112を退避状態から通常操作状態にすることができる。
【0081】
図11に示すように、ロック解除レバー175が押圧操作されない状態では、係合部172の先端の上方且つ前方に向け傾斜した係合ガイド部178と、ロック部材181の先端の上方且つ前方に向け傾斜したロックガイド部183とは、表示部112の摺動方向に見て重なっている。従って、通常操作状態から退避状態にするために操作者が表示部112を上方向に移動させると、先ず、係合ガイド部178が下方からロックガイド部183に当接し、これらの傾斜により、表示部112の上方移動に連動して、ロックガイド部183が係合ガイド部178を前方に押圧し、係合部材171を回動軸173を中心に係合部172が前方に移動するように回動させる。
【0082】
その後、更に操作者が表示部112を上方向に移動させることにより、係合本体部177の下面がロック本体部182の上面よりも上方に配置されると、付勢部材によって係合部材171が表示部112の後面131側に回動される。すると、再度、係合本体部177とロック本体部182とが係合できるようになる。以上のように、操作者が表示部112を上方向に移動させるだけで、係合部172とロック部材181とが自動的に係合し、表示部112を退避状態で保持することができるようになる。
【0083】
図11に示すように、係合部材171のベース板部174には、左右方向の係合部172側の端部の係合部172よりも上側に検出部191が設けられている。これに対応して本体部111の支持部143には、係合部172とロック部材181との係合状態を検出する検出センサ192が設けられている。検出部191及び検出センサ192は、表示部112が退避状態にあると共に、係合部172とロック部材181とが係合されている状態のときに、当接するように設けられている。
【0084】
検出センサ192は、検出部191が当接してオン状態になると、表示部112が退避状態にあり且つ係合部172とロック部材181とが係合状態にあることを検出し、検出部191が当接せずオフ状態になると、この状態にないことを検出する。これにより、検出センサ192は、退避状態において係合部172とロック部材181とが係合され表示部112がロックされているか、否かを検出することができる。
【0085】
そして、紙幣入出金装置22は、これに設置された表示装置11の検出センサ192によって表示部112のロックが検出された場合にのみ、引出部71の電磁ロックであるロック部74によるロックを解除し、筐体70から引出部71を引き出し可能にする。紙幣入出金装置22に設置された表示装置11において、検出センサ192によって表示部112のロックが検出された状態では、表示部112は退避状態にあって、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重ならない状態にある。
【0086】
紙幣入出金装置22は、逆に、これに設置された表示装置11の検出センサ192によって表示部112のロックが検出されていないと、引出部71のロック部74によるロックを解除せず、筐体70から引出部71の引き出しを規制する。紙幣入出金装置22に設置された表示装置11において、検出センサ192によって表示部112のロックが検出されない状態は、表示部112が通常操作状態にあって、通常使用状態にある引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重なる状態を含む。
【0087】
よって、紙幣入出金装置22のロック部74は、紙幣入出金装置22に設けられた表示装置11の表示部112が、下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重なる状態では引出部71のロックの解除が不可であり、重ならない状態では引出部71のロックの解除が可能である。これにより、紙幣入出金装置22に設けられた表示装置11において表示部112が引出部71に重なった状態で、引出部71を筐体70から引き出して表示部112と引出部71とが接触することを防止することができる。
【0088】
しかも、紙幣入出金装置22のロック部74は、紙幣入出金装置22に設けられた表示装置11の表示部112が、下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重ならない状態でロックされている場合に、引出部71のロックの解除が可能であり、重なる状態は勿論、重ならない状態でもロックされていなければ、引出部71のロックの解除が不可である。これにより、紙幣入出金装置22に設けられた表示装置11において表示部112が引出部71に重なった状態で、引出部71を筐体70から引き出して表示部112と引出部71とが接触することを、より確実に防止することができる。
【0089】
棒金支払装置32においても、これに設置された表示装置11の検出センサ192によって表示部112のロックが検出された場合にのみ、扉部91の電磁ロックであるロック部94によるロックを解除し、筐体90から扉部91を離間可能にする。棒金支払装置32は、逆に、これに設置された表示装置11の検出センサ192によって表示部112のロックが検出されていないと、扉部91のロック部94によるロックを解除せず、筐体90からの扉部91の離間を規制する。
【0090】
よって、棒金支払装置32のロック部94は、棒金支払装置32に設けられた表示装置11の表示部112が、前面部97の筐体90からの離間方向に重なる状態では扉部91のロックの解除が不可であり、重ならない状態では扉部91のロックの解除が可能である。これにより、棒金支払装置32に設けられた表示装置11において表示部112が扉部91に重なった状態で、扉部91を開いて表示部112と扉部91とが接触することを防止することができる。
【0091】
図8に示すように、本体部111の前面凹部142には、表示部112の落下を防止する左右一対の下降規制機構201(摺動規制部)が設けられている。図13に示すように、下降規制機構201は、本体部111側に位置固定で設けられる下降規制固定部203と、下降規制固定部203に位置固定で設けられた複数本のガイドピン204と、前方に下降規制支持部206を突出させた状態でガイドピン204にガイド溝207において移動可能に支持される下降規制支持部材208とを有している。下降規制支持部材208は、ガイド溝207が前後方向に延在する状態でガイドピン204に支持されており、下降規制固定部203及び本体部111に対し、ガイド溝207の延在方向である前後方向に移動可能となっている。
【0092】
下降規制機構201は、下降規制固定部203と下降規制支持部材208との間に介装されて下降規制支持部材208を前方に付勢するバネである付勢部材211と、下降規制固定部203の下部に設けられた支持軸212と、下降規制支持部材208の下部に設けられた作動軸213とを有している。支持軸212及び作動軸213は、中心軸線が左右方向に沿っており、支持軸212よりも作動軸213の方が下側に配置されている。
【0093】
下降規制機構201は、支持軸212に支持され作動軸213に連結されたリンク部材215と、リンク部材215の支持軸212とは反対側の端部に回転可能に支持されたローラ部216と、リンク部材215をローラ部216が前方に位置するように付勢するバネである付勢部材217とを有している。リンク部材215は、下降規制固定部203に設けられた支持軸212に対し位置固定で回動可能に支持されており、下降規制支持部材208に設けられた作動軸213に対し長穴219で回動可能且つスライド可能に連結されている。リンク部材215及びローラ部216は左右方向に沿う軸回りに回転する。
【0094】
この下降規制機構201は、下降規制固定部203に回動可能に設けられたリンク部材215が、図13(A)に示すような後退位置から支持軸212を中心に前方に回動されて図13(B)に示すような前進位置に配置されると、リンク部材215の長穴219に作動軸213を係合させている下降規制支持部材208が、それに連動して、下降規制固定部203のガイドピン204に対しガイド溝207を摺動させながら、図13(A)に示すような退避位置から前方に移動して図13(B)に示すような係合位置に移動する。
【0095】
その一方で、リンク部材215が図13(B)に示すような前進位置から支持軸212を中心に後方に回動されて図13(A)に示すような後退位置に配置されると、それに連動して、下降規制支持部材208が図13(B)に示すような係合位置から後方に移動して図13(A)に示すような退避位置に移動する。
【0096】
このような下降規制機構201は、図14(A)に示すように、表示装置11が設置されている紙幣入出金装置22の引出部71が筐体70に収容されている通常使用状態にある場合には、リンク部材215に設けられたローラ部216が引出部71の上面部78に当接しており、回動が規制されて後退位置に配置され、下降規制支持部材208も退避位置に配置されている。
【0097】
そして、この状態から、引出部71が筐体70から引き出されると、引出部71の上面部78がローラ部216から離れることになり、リンク部材215に設けられた付勢部材217及び下降規制固定部203と下降規制支持部材208との間に設けられた付勢部材211の付勢力によって、リンク部材215が、図14(A)に示すような後退位置から前方に回動されて、図14(B)に示すような前進位置に配置される。すると、リンク部材215に連結された下降規制支持部材208が、付勢部材211,217の付勢力によって、図14(A)に示すような退避位置から前方に移動されて、図14(B)に示すような係合位置に配置される。
【0098】
このとき、下降規制支持部材208の先端の下降規制支持部206が表示部112の規制部136の下降規制部138に係合するように或いは下降規制部138のやや下方に位置するように配置される。言い換えると、下降規制支持部206が表示部112の摺動時における下降規制部138の移動軌跡上に配置される。これにより、引出部71が筐体70から引き出された状態で誤って操作者がロック解除レバー175を押しても、下降規制部138が下降規制支持部206に係合することで、これ以上表示部112が下方向に行かないように規制することができる。よって、引出部71が筐体70から引き出された状態で表示部112が下方向に移動して、表示部112と引出部71とが接触することを防止することができる。
【0099】
その一方で、その後、引出部71を筐体70に収容するために引出部71が筐体70に向けて押し込まれると、引出部71の後面部79とリンク部材215に設けられたローラ部216とが当接し、更に引出部71が筐体70に押し込まれると、それに伴って、リンク部材215が、図14(B)に示すような前進位置から後方に回動されてローラ部216を引出部71の上面部78に当接させて、図14(A)に示すような後退位置に配置される。それに連動して、下降規制支持部材208が、図14(B)に示すような係合位置から後方に移動されて、図14(A)に示すような退避位置に配置される。すると、下降規制支持部206は表示部112の摺動時における下降規制部138の移動軌跡上にない状態となる。これにより、引出部71が筐体70に押し込まれた通常使用状態にあれば、操作者がロック解除レバー175を押すと、表示部112を下降させることができる。
【0100】
よって、紙幣入出金装置22に設けられた表示装置11の下降規制機構201は、引出部71の下前面部76及び上前面部77が、引出部71が通常使用状態にあるときよりも筐体70から離間している際に、表示部112の下降規制部138に当接して表示部112の下方への摺動を規制する。その一方で、下前面部76及び上前面部77が、引出部71が通常使用状態にあるときよりも筐体70から離間していなければ、表示部112の下降規制部138に当接せず、表示部112の下方への摺動を許容する。
【0101】
棒金支払装置32に設けられた表示装置11においても、下降規制機構201は、棒金支払装置32の扉部91が閉じられている通常使用状態にある場合には、リンク部材215に設けられたローラ部216が扉部91の上面部98に当接しており、回動が規制されて後退位置に配置され、下降規制支持部材208も退避位置に配置されている。
【0102】
そして、この状態から、扉部91が開かれると、扉部91の上面部98がローラ部216から離れることになり、リンク部材215が前進位置に配置される。すると、このリンク部材215に連結された下降規制支持部材208が、係合位置に配置され、その下降規制支持部206が表示部112の下降規制部138に係合するように或いは下降規制部138のやや下方に位置するように配置される。これにより、扉部91が開かれた状態で誤って操作者がロック解除レバー175を押しても、下降規制部138が下降規制支持部206に係合することで、これ以上表示部112が下方向に行かないように規制することができる。よって、扉部91が開かれた状態で表示部112が下方向に移動して、表示部112と扉部91とが接触することを防止することができる。
【0103】
その一方で、その後、扉部91が閉じられると、扉部91の後面部99とローラ部216とが当接し、更に扉部91が閉じられると、それに伴って、リンク部材215が、ローラ部216を扉部91の上面部98に当接させて後退位置に配置される。それに連動して、下降規制支持部材208が退避位置に配置される。これにより、扉部91が閉じられた通常使用状態にあれば、操作者がロック解除レバー175を押すと、表示部112を下降させることができる。
【0104】
よって、棒金支払装置32に設けられた表示装置11の下降規制機構201は、扉部91の前面部97が、扉部91が通常使用状態にあるときよりも筐体90から離間している際に、表示部112の下降規制部138に当接して表示部112の下方への摺動を規制する。その一方で、前面部97が、扉部91が通常使用状態にあるときよりも筐体90から離間していなければ、表示部112の下降規制部138に当接せず、表示部112の下方への摺動を許容する。
【0105】
図7に示すように、表示部112の後面131には、ディスプレイ115、タッチパネル116、ICカードリーダ118及び磁気カードリーダ119等の配線を外部に排出する配線開口部231が設けられている。更に、その付近には、配線開口部231から排出された配線を後方(本体部111側)にガイドする配線ガイド部232が設けられている。図8に示すように、本体部111の前面凹部142には、本体部111から排出された配線が挿通される配線開口部233が設けられている。
【0106】
また、本体部111には、表示装置11の電源部(不図示)と、表示装置11を制御する制御部(不図示)とが設けられている。更に、本体部111の右側面には、図8に示すように、保護蓋235が回動可能に設けられており、保護蓋235で覆われて電源スイッチ(不図示)が設けられている。また、本体部111の左右両側面には、表示装置11を持ち上げる際に把持される装置把持部236が設けられている。
【0107】
<動作>
[表示部112を通常操作状態から退避状態にして、通常使用状態にある引出部71を筐体70から引き出すまでの動作]
【0108】
(工程1)通常使用状態にある引出部71をメンテナンス等で筐体70から引き出す必要が生じた場合、操作者は、先ず、表示部112に、引出部71を筐体70から引き出すに当たって必要な操作を入力する。すると、表示部112には、表示部112を上方向に移動させて退避させる旨の操作指示(メッセージ・画像)が表示され、スピーカから操作メッセージが出力される。すると、操作者は、表示部112の左右両側部の把持部161を手で握る等しながら、手動で、表示部112を、規制部136の上位置規制部137と支持部143とが当接するまで、上方向に移動させる。
【0109】
この際に、表示部112は一対のガイドレール133が本体部111の一対のガイドキャリッジ144を摺動して、その後面131と本体部111の前面141との平行を維持し間隔を一定に維持したまま、前面141に沿って上昇する。また、この際に、ラックギア151がピニオンギア152を回転させ、ワンウェイクラッチ155を回転させることになるが、ワンウェイクラッチ155による回転抵抗は小さく、よって、表示部112の上昇は、基本的に表示部112の自重に抗する力となる。更に、この際に、係合部材171の係合ガイド部178が、下方からロック部材181のロックガイド部183に当接し、係合ガイド部178がロックガイド部183によって前方に導かれ、係合ガイド部178を含む係合部材171が前方に回動される。その後、係合本体部177の下面がロック本体部182の上面よりも上方に配置されると、付勢部材(不図示)によって係合部材171が表示部112の後面131側に回動し、係合本体部177とロック本体部182とが表示部112の移動方向に見て重なる状態になり、係合部172とロック部材181とが係合可能な状態になる。
【0110】
(工程2)次いで、操作者が表示部112から手を放す。すると、表示部112が自重によって少し下方向に移動して、係合本体部177とロック本体部182とが当接し係合部172とロック部材181とが係合する。これにより、表示部112が退避状態に保持される。
【0111】
このとき、係合部材171は、上記のように表示部112の後面131側に回動しており、検出部191が検出センサ192に当接する。すると、検出センサ192がオン状態になり、これにより、退避状態で係合部172とロック部材181とが係合して表示部112がロックされていることが検出される。すると、紙幣入出金装置22は、引出部71のロック部74によるロックを解除し、引出部71が筐体70から引き出し可能な状態になる。この状態では、表示部112は、全体として引出部71よりも上側に位置しており、引出部71の筐体70からの引き出しに干渉することがなくなる。
【0112】
(工程3)次いで、操作者が引出部71を筐体70から引き出す。すると、リンク部材215に設けられたローラ部216が、当接している引出部71の上面部78上で回転し、引出部71の上面部78がローラ部216よりも前方に位置すると、付勢部材217及び付勢部材211によって、リンク部材215が、次第に後退位置から前方に回動されて、ローラ部216を引出部71の後面部79に当接させ、更なる引出部71の引き出しで、前進位置に配置されて引出部71の後面部79から離間する。このように後退位置から前進位置に移動する際に、リンク部材215は、長穴219内に配置された作動軸213を前方に押圧する。すると、下降規制支持部材208がガイド溝207をガイドピン204に対し摺動させながら退避位置から前方に移動して係合位置に配置されて表示部112の下降規制部138の下側に入り込む。
【0113】
このように引出部71が筐体70から引き出された状態では、操作者が表示部112の側部の把持部161を手で握りつつロック解除レバー175を指で押して係合部材171を回動させても、下降規制支持部材208が表示部112の下降規制部138に当接して表示部112の下降を規制して、引出部71への当接を規制する。また、このように係合部材171が回動させられると、検出センサ192は検出部191との当接が解除されたことを検出することになり、すると、表示装置11が表示部112に警告メッセージや警告画像を表示させ、スピーカから警告メッセージ及び警告音の少なくとも何れか一方を出力させて警告を行う。
【0114】
以上のようにして、表示部112を通常操作状態から退避状態にした後、通常使用状態にある引出部71を筐体70から引き出すことができる。即ち、表示装置11に干渉させることなく引出部71を筐体70から引き出すことができる。
【0115】
なお、図4に示すような扉部91を有する棒金支払装置32の筐体90の上面93に設置された表示装置11の場合には、(工程1)及び(工程2)によって、表示部112を通常操作状態から退避状態にした後、検出センサ192によって表示部112のロックが検出されると、棒金支払装置32は、通常使用状態にある扉部91のロック部94によるロックを解除し、扉部91を筐体90に対し回動可能な状態にする。この状態では、表示部112は、全体として扉部91よりも上側に位置することになり、扉部91の筐体90に対する回動に干渉することがなくなる。これにより、表示装置11に干渉することなく扉部91を筐体90に対して開くことができる。
【0116】
その後、(工程3)において、操作者が、手動で、扉部91を前方に回動させて、筐体90の前部を開ける。すると、リンク部材215に設けられたローラ部216が、扉部91の上面部98から後面部99に当接する状態になった後、後面部99から離間することなり、これにより、リンク部材215が、下降規制支持部材208を係合位置に配置して表示部112の下降規制部138の下側に入り込ませて表示部112の下降を規制する。
【0117】
[引出部71が筐体70から引き出された状態から、表示部112を再度通常操作状態にするまでの動作]
【0118】
(工程4)操作者は、先ず、引出部71を筐体70に向けて押し込み、引出部71を筐体70に収容して通常使用状態にする。すると、ロック部74が引出部71を押込位置で筐体70にロックすることになる。
【0119】
この引出部71の筐体70に向けての押し込みの際、引出部71の後面部79とリンク部材215に設けられたローラ部216とが当接し、後面部79でローラ部216が後方に押されて、リンク部材215が前進位置から後方に回動する。そして、ローラ部216が引出部71の上面部78に乗り上げると、リンク部材215が後退位置に配置される。このように前進位置から後退位置に移動する際に、リンク部材215は、長穴219内に配置された作動軸213を後方に押圧する。すると、下降規制支持部材208がガイド溝207をガイドピン204に対し摺動させながら係合位置から後方に移動されて退避位置に配置され、表示部112の下降規制部138から後方に退避する。
【0120】
(工程5)次いで、操作者は、表示部112の側部の把持部161を手で握りつつ、ロック解除レバー175を指で手前に押す。すると、係合部材171が前方に回動し、係合部172のロック部材181との係合状態を解除する。
【0121】
(工程6)次いで、操作者は、ロック解除レバー175を指で押したまま、表示部112を、ガイド凹部132の下位置規制部135が支持部143と当接するまで下方向に移動させ、表示部112及びロック解除レバー175から手を放す。すると、表示部112が自重により下位置規制部135を支持部143に係合させた状態に維持する。これにより、表示部112が通常操作状態に保持される。
【0122】
表示部112を下方に移動させる際に、表示部112はガイドレール133が本体部111のガイドキャリッジ144を摺動して、その後面131と本体部111の前面141との平行を維持し間隔を一定に維持したまま、前面141に沿って下降する。また、この際に、ラックギア151がピニオンギア152を回転させ、ワンウェイクラッチ155を回転させることになり、ワンウェイクラッチ155による回転抵抗が生じる。よって、表示部112の下降速度は遅くなって、下位置規制部135の支持部143への衝突が緩衝される。
【0123】
以上のようにして、引出部71が筐体70から引き出された状態から、引出部71を押し込んだ後、表示部112を再度通常操作状態にする。
【0124】
なお、図4に示すような扉部91を有する棒金支払装置32の筐体90の上面93に設置された表示装置11の場合には、(工程4)において、操作者は、先ず、扉部91を後方に回動させて筐体90の前部を閉じる通常使用状態にする。すると、ロック部94が扉部91を筐体90にロックする。扉部91を通常使用状態にする際に、扉部91の後面部99とリンク部材215に設けられたローラ部216とが当接し、ローラ部216が後面部99で後方に押圧される。これにより、リンク部材215が、前進位置から後方に回動されてローラ部216を扉部91の上面部98に乗り上げさせることになり、後退位置に配置される。他の工程については、上述した紙幣入出金装置22と同様である。
【0125】
以上に述べた実施形態の貨幣処理システム10によれば、紙幣入出金装置22上に載置された表示装置11において、その表示部112を視認性向上のため引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重なる状態としても、メンテナンス時には、表示部112を筐体70に対し摺動させて、引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重ならない状態とすることができ、よって、引出部71を、表示装置11に干渉させずに、下前面部76及び上前面部77が筐体70から離間するように筐体70に対し移動させることができる。従って、視認性の向上及びメンテナンス性の確保が可能となる。
【0126】
棒金支払装置32上に載置された表示装置11についても、同様に、表示部112を視認性向上のため扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重なる状態としても、メンテナンス時には、表示部112を筐体90に対し摺動させて、扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重ならない状態とすることができ、よって、扉部91を、表示装置11に干渉させずに前面部97が筐体90から離間するように移動させることができる。従って、視認性の向上及びメンテナンス性の確保が可能となる。
【0127】
即ち、表示部112を引出部71や扉部91と重なるように下げることで、小柄な操作者であっても、表示部112を容易に視認でき、表示部112に容易にアクセスできることになる。また、表示部112を引出部71や扉部91と重ならないように上げることで、引出部71をその下前面部76及び上前面部77が筐体70から離間するように筐体70に対し移動させたり、扉部91をその前面部97が筐体90から離間するように筐体90に対し移動させることができる。よって、引出部71を筐体70から前方に引き出して紙幣入出金装置22の内部にアクセスすることができ、扉部91を前方に回動させて棒金支払装置32の内部にアクセスすることができる。
【0128】
また、紙幣入出金装置22上に載置された表示装置11が、引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重なる状態では、ロック部74は引出部71のロックの解除が不可となって、引出部71が表示装置11に干渉することを防止する。また、表示装置11が引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重ならない状態では、ロック部74は引出部71のロックの解除が可能となって、表示装置11に干渉させることなく引出部71を、下前面部76及び上前面部77が筐体70から離間するように移動させることができる。
【0129】
棒金支払装置32上に載置された表示装置11においても、扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重なる状態では、ロック部94は扉部91のロックの解除が不可となって、扉部91が表示装置11に干渉することを防止する。また、表示装置11が扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重ならない状態では、ロック部94は扉部91のロックの解除が可能となって、表示装置11に干渉させることなく扉部91を、前面部97が筐体90から離間するように移動させることができる。
【0130】
しかも、紙幣入出金装置22上に載置された表示装置11が、引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重ならない状態でロックされている場合に、ロック部74は引出部71のロックの解除が可能となるため、引出部71が表示装置11に干渉することを、より確実に防止することができる。
【0131】
棒金支払装置32上に載置された表示装置11においても、扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重ならない状態でロックされている場合に、ロック部94は扉部91のロックの解除が可能となるため、扉部91が表示装置11に干渉することを、より確実に防止することができる。
【0132】
また、紙幣入出金装置22上に載置された表示装置11において、その表示部112が引出部71の下前面部76及び上前面部77の筐体70からの離間方向に重ならない状態にあって、引出部71が引き出され、その下前面部76及び上前面部77を筐体70から離間させている状態では、下降規制機構201が、表示部112の摺動を規制することになるため、表示部112が、筐体70に対し移動している引出部71に干渉したり、引出部71の押し込み時に引出部71に干渉したりすることを防止することができる。
【0133】
棒金支払装置32上に載置された表示装置11においても、同様に、その表示部112が扉部91の前面部97の筐体90からの離間方向に重ならない状態にあって、扉部91が開かれ、その前面部97を筐体90から離間させている状態では、下降規制機構201が、表示部112の摺動を規制することになるため、表示部112が、筐体90に対し移動している扉部91に干渉したり、扉部91の閉時に扉部91に干渉したりすることを防止することができる。
【0134】
表示装置11は、ワンウェイクラッチ155が、表示部112の下降時に上昇時よりも高い抵抗力を発生させるため、表示部112の上昇時の負荷を低減しつつ、表示部112の急激な下降を抑制することができる。
【0135】
<変形例>
実施形態では、表示装置11を、紙幣入出金装置22と棒金支払装置32とに設置する場合を例にとり説明したが、小束収納出金装置21やバラ硬貨入出金装置31等の他の装置に設置するようにしても良い。更に、実施形態では、表示装置11を、貨幣処理システム10に対して2個設置しているが、1個だけ設置するようにしても良く、2個以上設置するようにしても良い。
【0136】
また、実施形態では、表示装置11が、表示手段として機能すると共に操作手段としても機能するものとしたが、これに限定されることはなく、貨幣処理システム10にキーボード、ICカードリーダ及び磁気カードリーダ等の操作手段を別途設けることで、表示装置11は、表示手段としてのみ機能するものであっても良い。即ち、表示部112のディスプレイ115の表面にタッチパネル116がなく、表示部112にICカードリーダ118及び磁気カードリーダ119が設けられていなくても良い。
【0137】
また、表示装置11が、表示部112を通常操作状態(下位置)と退避状態(上位置)との間の任意の位置に配置できる高さ調整機構を有するようにしても良い。例えば、ロック部材181の代わりに、本体部111にラックギアを設けて、表示部112の係合部材171の係合部172を本体部111のラックギアの任意の歯部に係合させれば、表示部112を、通常操作状態と退避状態との間の任意の位置で保持することができる。
【0138】
また、表示装置11は、表示部112を電動で上下動されるようにしても良い。例えば、本体部111に、ピニオンギア152に連結され、ピニオンギア152を回転駆動させる駆動部を設けるようにする。駆動部は、モータ等で構成されており、ピニオンギア152を一方に回転させることで、表示部112を上昇させ、ピニオンギア152を他方に回転させることで、表示部112を下降させる。これにより、操作者は、表示部112に表示された上昇ボタン又は下降ボタン、本体部111及び/又は表示部112に設けられた上昇ボタン又は下降ボタン等の高さ調整操作部を操作することで、表示部112を、通常操作状態と退避状態との間の任意の位置に配置できる。更に、駆動部によって表示部112を上下動させるので、力のない操作者であっても、表示部を容易に上下動させることができる。
【0139】
更に、本体部111に、操作者毎に設定した表示部112の指定高さを記憶する記憶部を設けるようにし、操作者によってID入力が行われて操作者が特定されると、駆動部が駆動されて、表示部112は、特定された操作者の指定高さに自動的に配置されるようにしても良い。
【0140】
また、表示装置11は、小束収納出金装置21、紙幣入出金装置22、新券支払装置23、紙幣処理ユニット24、バラ硬貨入出金装置31及び棒金支払装置32等の貨幣処理装置に設けることができるが、これに限定されるものではない。例えば、手形や小切手等を収納する紙葉類処理装置、通帳や証書等を収納する通帳・証書処理装置、鍵・カード・印鑑等を管理する鍵管理装置、現金・通帳・証書・手形・小切手及び重要書類等の重要物を収納する金庫やロッカー等の重要物管理装置等の各種装置に設置することも可能である。
【符号の説明】
【0141】
10…貨幣処理システム、11…表示装置、22…紙幣入出金装置(貨幣処理装置)、32…棒金支払装置(貨幣処理装置)、70,90…筐体、71…引出部(可動部)、74,94…ロック部、76…下前面部(面部)、77…上前面部(面部)、81…紙幣処理部(貨幣処理部)、91…扉部(可動部)、97…前面部(面部)、101…棒金処理部(貨幣処理部)、112…表示部、155…ワンウェイクラッチ(抵抗部)、201…下降規制機構(摺動規制部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14