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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】抗ヒトCCR1モノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20221221BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20221221BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221221BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12P21/08
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
G01N33/53 D
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019530574
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2018026958
(87)【国際公開番号】W WO2019017401
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2017139157
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和キリン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 正之
(72)【発明者】
【氏名】小川 進也
(72)【発明者】
【氏名】武藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】河田 健二
(72)【発明者】
【氏名】平位 秀世
(72)【発明者】
【氏名】坂井 義治
(72)【発明者】
【氏名】前川 平
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-517810(JP,A)
【文献】FEBS Letters, 2004, Vol.570, p.47-51
【文献】PLoS ONE, 2011, Vol.6, Issue 7, e21772 (pp.1-7)
【文献】Experimental Hematology, 2005, Vol.33, p.272-278
【文献】日本外科学会雑誌, 2013, 第114 巻, 臨時増刊号(2), p.387 (SSSA-3-3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/00
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCCケモカイン受容体1(CC chemokine receptor 1;以下CCR1と略記する)の細胞外領域に結合し、ヒトCC chemokine ligand(以下、CCLと略記する)15によるヒトCCR1の活性化を阻害するモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片であって、モノクローナル抗体が、下記(a)~()から選ばれるいずれか一つの抗体である、モノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
(a)VHが配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号52に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号56に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHが配列番号57に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号58に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHが配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号60に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHが配列番号61に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号62に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(g)VHが配列番号63に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号64に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(h)VHが配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号66に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(i)VHが配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(j)VHが配列番号130に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(k)VHが配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号125に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項2】
ヒトCCR1の細胞外領域に結合しCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害するモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片であって、モノクローナル抗体が、下記(a)~(c)から選ばれるいずれか一つの抗体である、モノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
(a)VHが配列番号136に記載されるアミノ酸配列または配列番号136に記載されるアミノ酸配列中の6番目のGluをGlnに、20番目のLeuをIleに、27番目のGlyをPheに、29番目のValをLeuに、30番目のSerをAsnに、37番目のIleをValに、48番目のIleをLeuに、67番目のValをLeuに、71番目のValをLysに、73番目のThrをAspに、76番目のAsnをSerに、78番目のPheをValに、80番目のLeuをPheに、82番目のLeuをMetに、85番目のValをLeuに、92番目のValをIleに、および97番目のArgをLysに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号135に記載されるアミノ酸配列または配列番号135に記載されるアミノ酸配列中の2番目のIleをValに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、92番目のTyrをPheに、および109番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列または配列番号146に記載されるアミノ酸配列中の4番目のLeuをValに、44番目のGlyをArgに、49番目のSerをAlaに、92番目のAlaをGlyに、93番目のValをMetに、97番目のAlaをThrに、および98番目のLysをArgに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列または配列番号145に記載されるアミノ酸配列中の2番目のIleをValに、15番目のSerをLeuに、19番目のAlaをValに、43番目のGlnをLysに、50番目のGlnをLysに、および109番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列または配列番号163に記載されるアミノ酸配列中の42番目のAspをGluに、87番目のLysをArgに、および97番目のAlaをThrに置換するアミノ酸改変のいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列または配列番号162に記載されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをHisに、および43番目のAlaをGlyに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項3】
モノクローナル抗体が、下記(a)~(h)から選ばれるいずれか一つの抗体である、請求項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
(a)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号135に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号137に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号138に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号139に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号140に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号141に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(g)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号142に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(h)VHが配列番号143に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号142に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体が、下記(a)~(w)から選ばれるいずれか一つの抗体である、請求項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
(a)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号147に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号149に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号150に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(g)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(h)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(i)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(j)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号147に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(k)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(l)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号149に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(m)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号150に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(n)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(o)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(p)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(q)VHが配列番号154に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(r)VHが配列番号155に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(s)VHが配列番号156に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(t)VHが配列番号157に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(u)VHが配列番号158に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(v)VHが配列番号159に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(w)VHが配列番号160に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体が、下記(a)~(f)から選ばれるいずれか一つの抗体である、請求項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
(a)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号165に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHが配列番号165に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHが配列番号166に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHが配列番号166に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項6】
モノクローナル抗体が遺伝子組換え抗体である請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
【請求項7】
遺伝子組換え抗体が、ヒト型キメラ抗体およびヒト化抗体から選ばれる1の遺伝子組換え抗体である、請求項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
【請求項8】
抗体断片が、Fab、Fab’、(Fab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)およびジスルフィド安定化V領域(dsFv)から選ばれる1の抗体断片である、請求項1~のいずれか1項に記載の抗体断片。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片をコードする塩基配列を有する核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含むベクターを含む形質転換細胞。
【請求項12】
請求項に記載のハイブリドーマまたは請求項11に記載の形質転換細胞を培養し、培養液から請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片を採取することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片の製造方法。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片を含む、ヒトCCR1の検出または測定用試薬。
【請求項14】
請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片を含む、ヒトCCR1関連疾患の診断薬。
【請求項15】
ヒトCCR1関連疾患が、癌、自己免疫疾患または炎症性疾患である、請求項14に記載の診断薬。
【請求項16】
請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片を有効成分として含有する、ヒトCCR1関連疾患の治療薬。
【請求項17】
ヒトCCR1関連疾患が、癌、自己免疫疾患または炎症性疾患である、請求項16に記載の治療薬。
【請求項18】
ヒトCCR1関連疾患の診断薬を製造するための、請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片の使用。
【請求項19】
ヒトCCR1関連疾患の治療薬を製造するための、請求項1~のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片の使用。
【請求項20】
ヒトCCR1関連疾患の治療薬としての使用のための請求項1~のいずれか1に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
【請求項21】
ヒトCCR1関連疾患の診断薬としての使用のための請求項1~のいずれか1に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片。
【請求項22】
請求項1~8のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片に、放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、タンパク質または抗体医薬を結合させた抗体の誘導体。
【請求項23】
請求項1~8のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗原結合性を有する該抗体断片に、低分子の薬剤を結合させた抗体の誘導体。
【請求項24】
低分子の薬剤が、アミフォスチン(エチオール)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロフォスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、ペプロマイシン、エストラムスチン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテア)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボブラチン、オキサリブラチン、ネダプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、10-ヒドロキシ-7-エチルーカンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、メスナ、イリノテカン(CPT-11)、ノギテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポプロマン、タモキシフェン、ゴセレリン、リユープロレニン、フルタミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ビンデシン、ニムスチン、セムスチン、カペシタビン、トムデックス、アザシチジン、UFT、オキザロブラチン、ゲフィチニブ(イレッサ)、イマチニブ(STI571)、エルロチニブ、FMS-like tyrosine kinase3 (Flt3)阻害剤、vascular endothelial growth factor receptor (VEGFR)阻害剤、fibroblast growth factor receptor (FGFR)阻害剤、epidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤、ラディシコール、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、ラパマイシン、アムサクリン、オール-トランスレチノイン酸、サリドマイド、レナリドマイド、アナストロゾール、ファドロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、金チオマレート、ブシラミン、アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、ヒドロコルチゾン、ベキサロテン(ターグレチン)、デキサメタゾン、プロゲスチン類、エストロゲン類、アナストロゾール(アリミデックス)、アスピリン、インドメタシン、セレコキシブ、ペニシラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、クロロフェニラミン、クレマシチン、トレチノイン、砒素、ボルテゾミブ、アロプリノール、カリケアマイシン、イブリツモマブチウキセタン、タルグレチン、オゾガミン、クラリスロマシン、ロイコボリン、ケトコナゾール、アミノグルテチミド、スラミンまたはメイタンシノイドあるいはその誘導体からなる群より少なくとも1つ選ばれる、請求項22または請求項23に記載の抗体の誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCCケモカイン受容体1(CC chemokine receptor 1、以下、ヒトCCR1と記載する)の細胞外領域に結合し、ヒトCCケモカインリガンド(以下、ヒトCCLと記載する)15によるヒトCCR1の活性化を阻害するモノクローナル抗体または該抗体断片、該抗体を産生するハイブリドーマ、該抗体または該抗体断片をコードする塩基配列を有する核酸、該核酸を含むベクターを含む形質転換細胞、該ハイブリドーマまたは該形質転換細胞を用いる該抗体または該抗体断片の製造方法、該抗体または該抗体断片を含む治療薬および診断薬、並びに該抗体または該抗体断片を用いたCCR1関連疾患の治療方法および診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCR1は、表面抗原分類(cluster of differentiation、CD)191、CKR-1、HM145、Macrophage inflammatory protein 1α receptor(MIP1α R)、CMKBR1またはSCYAR1等の別名がある。
【0003】
ヒトCCR1をコードする遺伝子は、1993年に同定されている(非特許文献1)。ヒトCCR1のcDNA配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)は公開されており、例えばNational Center for Biotechnology Information(NCBI)では、cDNA配列はNM_001295、タンパク質のアミノ酸配列はNP_001286から参照できる。マウスCCR1のcDNA配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)も公開されており、NCBIでは、cDNA配列はNM_009912、タンパク質のアミノ酸配列はNP_034042から参照できる。
【0004】
CCR1は、7回膜貫通型の構造を有するGタンパク質共役型受容体(G protein-coupled receptor;以下GPCR)であり、全長355アミノ酸からなる膜タンパク質である。ヒトCCR1のリガンドとしてヒトCCL3、CCL5、CCL8、CCL14、CCL15、CCL16およびCCL23が報告されている(非特許文献2)。また、マウスCCR1のリガンドとしてマウスCCL3、CCL5、CCL7およびCCL9が報告されている(非特許文献3)。
【0005】
ヒトCCL15はC-Cケモカインファミリーに含まれるリガンドであり、全長92アミノ酸からなる。CCR1とCCR3がCCL15の受容体として機能することが知られている。CCL15はタンパク質分解酵素の作用によってN末端が分解され、68アミノ酸前後の活性化型となることでより強力な活性を発揮することが知られている(非特許文献4)。
【0006】
CCR1を含むケモカイン受容体の活性化は、以下の2つのステップを経て起こると考えられている(非特許文献5)。ステップ1としてケモカイン(リガンド)と、受容体のN末端細胞外領域との相互作用が生じる。ステップ2としてケモカインのN末端領域が、受容体の細胞外ループ領域と相互作用し、受容体の構造変化が起こった結果、細胞内にシグナルが伝達される。
【0007】
GPCRの細胞内シグナル伝達においては、リガンドの結合によって生じたGPCRの構造変化に応じて、GPCRのC末端に会合したGタンパク質α、β、γ三量体が活性化され、αサブユニットがβγ複合体から解離する。αサブユニットはさらに下流の因子に作用し、シグナル伝達経路を活性化する。αサブユニットの活性化によりホスホリパーゼC(phospholipase C、以下PLC)が活性化すると、ホスファチジルイノシトール(4,5)2リン酸[phosphatidylinositol(4,5)bisphosphate、PIP]が分解され、イノシトール3リン酸(Inositol triphosphate、IP)とジアシルグリセロール(diacylglycerol、DAG)が産生される。
【0008】
IPは小胞体に作用し、カルシウムイオン(Ca2+)を細胞内に放出させ、カルモジュリンを介して種々の細胞反応を引き起こす。この細胞内カルシウム濃度の上昇は、蛍光カルシウムインジケーター等を使用して測定することができ、GPCRの活性化の指標とすることができる。CCR1についてもこの方法で細胞内シグナルの活性化を測定することが可能である。
【0009】
好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、T細胞またはB細胞等、種々の血球細胞におけるヒトCCR1の発現がこれまでに報告されている(非特許文献6~10)。さらに近年、癌微小環境中に存在し、癌の進展を促進する未成熟骨髄球(immature myeloid cell、以下iMC)、骨髄由来免疫抑制性細胞(myeloid derived suppressor cell、以下MDSC)と呼ばれる細胞群がCCR1を発現していることが報告されている(非特許文献11および12)。
【0010】
CCR1は関節リウマチ、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患等、種々の自己免疫性疾患、炎症性疾患への関与が示唆されている(非特許文献13)。また、上記のiMCおよびMDSCに発現していることから、癌の進展および増悪過程へのCCR1の寄与が示唆されている(非特許文献11および12)。
【0011】
例えば、ヒト大腸癌においては、ある頻度で、癌抑制遺伝子であるSMAD4の変異またはSMAD4タンパク質の消失が見られることが知られており、SMAD4の欠損は予後不良因子であると考えられている。近年、SMAD4の欠損が、CCL15の発現上昇を介して、腫瘍環境中にCCR1陽性のiMCまたはMDSC等を引き込む要因となっていること、さらに、これらの細胞がマトリクスメタロプロテアーゼ(matrix metalloprotease、MMP)の分泌や免疫抑制作用によって癌の浸潤または転移を補助し、患者の予後を悪化させるといった機序が明らかにされつつある(非特許文献11および12)。
【0012】
既存の低分子CCR1阻害剤としてはCP481,715(Pfizer社)、MLN3897(Millennium社)、BX-471(Berlex社)、CCX-354(Chemocentryx社)等を挙げることができる。これら低分子阻害剤については、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患等の自己免疫性または炎症性疾患の患者に対する臨床試験が行われたが、いずれも有効性を示すことができていない(非特許文献14)。
【0013】
既存の抗CCR1抗体のうち、文献等でCCR1活性化の阻害効果が報告されているものとしては、141-2(MBL社、#D063-3)(非特許文献15)、53504(R&D Systems社、#MAB145)(非特許文献16)および2D4(Millennium社)(特許文献1)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第6,756,035号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】Neote, Kuldeep, et al. "Molecular cloning, functional expression, and signaling characteristics of a CC chemokine receptor." Cell 72.3 (1993): 415-425.
【文献】Mannhold, Raimund, Hugo Kubinyi, and Gerd Folkers. Chemokine receptors as drug targets. Eds. Martine J. Smit, Sergio A. Lira, and Rob Leurs. Vol. 46. John Wiley & Sons, 2010.
【文献】Ono, Santa Jeremy, et al. "Chemokines: roles in leukocyte development, trafficking, and effector function." Journal of allergy and clinical immunology 111.6 (2003): 1185-1199.
【文献】Berahovich, Robert D., et al. "Proteolytic activation of alternative CCR1 ligands in inflammation." The Journal of Immunology 174.11 (2005): 7341-7351.
【文献】Ludeman, Justin P., and Martin J. Stone. "The structural role of receptor tyrosine sulfation in chemokine recognition." British journal of pharmacology 171.5 (2014): 1167-1179.
【文献】Su, S. B., et al. "Preparation of specific polyclonal antibodies to a CC chemokine receptor, CCR1, and determination of CCR1 expression on various types of leukocytes." Journal of leukocyte biology 60.5 (1996): 658-666.
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【文献】Phillips, Rhian M., et al. "Variations in eosinophil chemokine responses: an investigation of CCR1 and CCR3 function, expression in atopy, and identification of a functional CCR1 promoter." The Journal of Immunology 170.12 (2003): 6190-6201.
【文献】Cheng, Sara S., et al. "Granulocyte-macrophage colony stimulating factor up-regulates CCR1 in human neutrophils." The Journal of Immunology 166.2 (2001): 1178-1184.
【文献】Corcione, Anna, et al. "Chemotaxis of human tonsil B lymphocytes to CC chemokine receptor (CCR) 1, CCR2 and CCR4 ligands is restricted to non‐germinal center cells." International immunology 14.8 (2002): 883-892.
【文献】Kitamura, Takanori, et al. "SMAD4-deficient intestinal tumors recruit CCR1+ myeloid cells that promote invasion." Nature genetics 39.4 (2007): 467-475.
【文献】Inamoto, Susumu, et al. "Loss of SMAD4 Promotes Colorectal Cancer Progression by Accumulation of Myeloid-Derived Suppressor Cells through CCL15-CCR1 Chemokine Axis." Clinical Cancer Research (2015): clincanres-0726.
【文献】D'Ambrosio, Daniele, Paola Panina-Bordignon, and Francesco Sinigaglia. "Chemokine receptors in inflammation: an overview." Journal of immunological methods 273.1 (2003): 3-13.
【文献】Schall, Thomas J., and Amanda EI Proudfoot. "Overcoming hurdles in developing successful drugs targeting chemokine receptors." Nature Reviews Immunology 11.5 (2011): 355-363.
【文献】Lebre, Maria C., et al. "Why CCR2 and CCR5 blockade failed and why CCR1 blockade might still be effective in the treatment of rheumatoid arthritis." PLoS One 6.7 (2011): e21772.
【文献】Oba, Yasuo, et al. "MIP-1α utilizes both CCR1 and CCR5 to induce osteoclast formation and increase adhesion of myeloma cells to marrow stromal cells." Experimental hematology 33.3 (2005): 272-278.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の非特許文献15、非特許文献16および特許文献1等に記載の既存の抗CCR1抗体には医薬品として開発されたものはなく、抗体医薬品としての性能に関する情報は十分ではない。したがって、本発明は、ヒトCCR1に結合し、ヒトCCR1の活性化を阻害するモノクローナル抗体または該抗体断片、該抗体を産生するハイブリドーマ、該抗体または該抗体断片をコードする塩基配列を有する核酸、該核酸を含むベクターを含む形質転換細胞、該ハイブリドーマまたは該形質転換細胞を用いる該抗体または該抗体断片の製造方法、該抗体または該抗体断片を含む治療薬および診断薬、並びに該抗体または該抗体断片を用いたCCR1関連疾患の治療方法および診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための手段として、本発明はヒトCCR1の細胞外領域に結合し、ヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害するヒトCCR1モノクローナル抗体を提供する。
【0018】
すなわち、本発明は以下の(1)~(27)に関する。
(1)ヒトCCR1の細胞外領域に結合し、ヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害するモノクローナル抗体または該抗体断片。
(2)ヒトCCL15により誘導されるヒトCCR1発現細胞の遊走を阻害する(1)に記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(3)ヒトCCR1の細胞外ループ2領域のアミノ酸配列のうち、少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する、(1)または(2)に記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(4)モノクローナル抗体が、下記(a)~(n)から選ばれるいずれか一つの抗体である、(1)~(3)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(a)重鎖可変領域(heavy chain variable region;以下、VHと略記する)の相補性決定領域(complementarity determining region;以下CDRと略記する)1~3が、それぞれ配列番号69、70および71に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域(light chain variable region;以下、VLと略記する)のCDR1~3が、それぞれ配列番号72、73および74に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号75、76および77に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号78、79および80に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号81、82および83に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号84、85および86に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号87、88および89に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号90、91および92に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号93、94および95に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号96、97および98に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号99、100および101に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号102、103および104に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(g)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号105、106および107に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号108、109および110に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(h)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号111、112および113に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号114、115および116に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(i)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号117、118および119に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号120、121および122に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(j)VHのCDR1が配列番号75に記載されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR2が配列番号76に記載されるアミノ酸配列または、配列番号76に記載されるアミノ酸配列中の2番目のIleをThrに、9番目のValをAlaに、14番目のPheをAlaに、および15番目のIleをAlaに置換する改変から選ばれる少なくともいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、VHのCDR3が、配列番号77に記載されるアミノ酸配列または、配列番号77に記載されるアミノ酸配列中の5番目のTyrをAlaに、および7番目のThrをAlaに置換する改変の少なくともいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1が、配列番号126に記載されるアミノ酸配列または、配列番号126に記載されるアミノ酸配列中の15番目のPheをAlaに置換する改変が導入されたアミノ酸配列を含み、VLのCDR2が、配列番号127に記載されるアミノ酸配列または、配列番号127に記載されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および5番目のArgをLysに置換する改変の少なくともいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、VLのCDR3が、配列番号128に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(k)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号75、131および77に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号126、134および128に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(l)前記(a)~(k)に記載の少なくとも一つの抗体と、ヒトCCR1への結合について競合する抗体。
(m)前記(a)~(k)に記載のいずれか一つの抗体が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体。
(n)前記(a)~(k)に記載のいずれか一つの抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体。
(5)モノクローナル抗体が、下記(a)~(j)から選ばれるいずれか一つの抗体である、(1)~(4)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(a)VHが配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号52に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号56に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHが配列番号57に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号58に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHが配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号60に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHが配列番号61に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号62に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(g)VHが配列番号63に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号64に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(h)VHが配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号66に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(i)VHが配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(j)VHが配列番号130に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(6)モノクローナル抗体が、下記(a)~(c)から選ばれるいずれか一つの抗体である、(1)~(4)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(a)VHが配列番号136に記載されるアミノ酸配列または配列番号136に記載されるアミノ酸配列中の6番目のGluをGlnに、20番目のLeuをIleに、27番目のGlyをPheに、29番目のValをLeuに、30番目のSerをAsnに、37番目のIleをValに、48番目のIleをLeuに、67番目のValをLeuに、71番目のValをLysに、73番目のThrをAspに、76番目のAsnをSerに、78番目のPheをValに、80番目のLeuをPheに、82番目のLeuをMetに、85番目のValをLeuに、92番目のValをIleに、および97番目のArgをLysに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号135に記載されるアミノ酸配列または配列番号135に記載されるアミノ酸配列中の2番目のIleをValに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、92番目のTyrをPheに、および109番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列または配列番号146に記載されるアミノ酸配列中の4番目のLeuをValに、44番目のGlyをArgに、49番目のSerをAlaに、92番目のAlaをGlyに、93番目のValをMetに、97番目のAlaをThrに、および98番目のLysをArgに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列または配列番号145に記載されるアミノ酸配列中の2番目のIleをValに、15番目のSerをLeuに、19番目のAlaをValに、43番目のGlnをLysに、50番目のGlnをLysに、および109番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列または配列番号163に記載されるアミノ酸配列中の42番目のAspをGluに、87番目のLysをArgに、および97番目のAlaをThrに置換するアミノ酸改変のいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列または配列番号162に記載されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをHisに、および43番目のAlaをGlyに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
(7)モノクローナル抗体が、下記(a)~(h)から選ばれるいずれか一つの抗体である、(1)~(4)および(6)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(a)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号135に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号137に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号138に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号139に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号140に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号141に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(g)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号142に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(h)VHが配列番号143に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号142に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(8)モノクローナル抗体が、下記(a)~(w)から選ばれるいずれか一つの抗体である、(1)~(4)および(6)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(a)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号147に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号149に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号150に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(g)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(h)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(i)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(j)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号147に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(k)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(l)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号149に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(m)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号150に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(n)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(o)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(p)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(q)VHが配列番号154に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(r)VHが配列番号155に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(s)VHが配列番号156に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(t)VHが配列番号157に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(u)VHが配列番号158に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(v)VHが配列番号159に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(w)VHが配列番号160に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(9)モノクローナル抗体が、下記(a)~(f)から選ばれるいずれか一つの抗体である、(1)~(4)および(6)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(a)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHが配列番号165に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHが配列番号165に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHが配列番号166に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHが配列番号166に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(10)モノクローナル抗体が遺伝子組換え抗体である(1)~(9)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(11)遺伝子組換え抗体が、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体から選ばれるいずれか1の遺伝子組換え抗体である、(10)に記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(12)抗体断片が、Fab、Fab’、(Fab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)およびCDRを含むペプチドから選ばれるいずれか1の抗体断片である、(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体断片。
(13)(1)~(9)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(14)(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片をコードする塩基配列を有する核酸。
(15)(14)に記載の核酸を含むベクターを含む形質転換細胞。
(16)(13)に記載のハイブリドーマまたは(15)に記載の形質転換細胞を培養し、培養液から(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片を採取することを含む、(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片の製造方法。
(17)(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片を含む、ヒトCCR1の検出または測定用試薬。
(18)(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片を含む、ヒトCCR1関連疾患の診断薬。
(19)ヒトCCR1関連疾患が、癌、自己免疫疾患または炎症性疾患である、(18)に記載の診断薬。
(20)(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片を有効成分として含有する、ヒトCCR1関連疾患の治療薬。
(21)ヒトCCR1関連疾患が、癌、自己免疫疾患または炎症性疾患である、(20)に記載の治療薬。
(22)(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片を用いたヒトCCR1関連疾患の診断方法。
(23)(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片を用いたヒトCCR1関連疾患の治療方法。
(24)ヒトCCR1関連疾患の診断薬を製造するための、(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片の使用。
(25)ヒトCCR1関連疾患の治療薬を製造するための、(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片の使用。
(26)ヒトCCR1関連疾患の治療薬としての使用のための(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
(27)ヒトCCR1関連疾患の診断薬としての使用のための(1)~(12)のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または該抗体断片。
【発明の効果】
【0019】
本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片は、ヒトCCR1の細胞外領域に結合し、ヒトCCR1活性化に伴う種々の反応を阻害する。それゆえ、本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片は、ヒトCCR1関連疾患の治療薬および診断薬として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)および図1(b)は、抗ヒトCCR1抗体について、活性化ヒトCCL15によるTHP-1の遊走を阻害する活性を測定した結果である。図1(a)および図1(b)の縦軸は、THP-1細胞の遊走(%)を示し、DPBSと活性化CCL15を添加した時に、Transwellの下層に移動した細胞数を100%とした。図1(a)および図1(b)の横軸は、THP-1細胞に添加した抗体、リガンドおよびこれらの濃度を示している。図1(a)および図1(b)中には、DPBSを添加したサンプルをDPBS、活性化ヒトCCL15を添加していないサンプルをNo ligand、活性化ヒトCCL15を添加したサンプルをhCCL15(68aa)と記載した。抗ヒトCCR1抗体としては、KM5907抗体、KM5908抗体、KM5909抗体、KM5911抗体、KM5915抗体、KM5916抗体、KM5954抗体、KM5955抗体およびKM5956抗体を使用した。
図2図2は、抗ヒトCCR1抗体について、活性化ヒトCCL15によるTHP-1の遊走を阻害する活性を測定した結果である。図2の縦軸は、Transwellの下層に移動した細胞数をCellTiter-Gloで測定した際の発光量(relative light unit;RLU)を表わす。図2の横軸は、THP-1細胞に添加した抗体、リガンドおよびこれらの濃度を示している。図2中には、DPBSを添加したサンプルをDPBS、活性化ヒトCCL15を添加していないサンプルをNo ligand、活性化ヒトCCL15を添加したサンプルをhCCL15(68aa)と記載した。抗ヒトCCR1抗体としては、2D4抗体(Millennium社)、53504抗体(R&D Technologies社)、141-2抗体(MBL社、#D063-3)、KM5908抗体およびKM5916抗体を使用した。
図3図3は、抗ヒトCCR1抗体について、活性化ヒトCCL15によるTHP-1の遊走を阻害する活性を測定した結果である。図3の縦軸は、Transwellの下層に移動した細胞数をCellTiter-Gloで測定した際の発光量(relative light unit;RLU)を表わす。図3の横軸は、THP-1細胞に添加した抗体、リガンドおよびこれらの濃度を示している。図3中には、抗体を添加していないサンプルをNo mAb、活性化ヒトCCL15を添加していないサンプルをNo ligand、活性化ヒトCCL15を添加したサンプルをhCCL15と記載した。抗ヒトCCR1抗体としては、chKM5908抗体およびchKM5908’抗体を使用した。実験はN=3で実施し、グラフにはその平均値および標準偏差を示した。
図4図4は、抗ヒトCCR1抗体について、活性化ヒトCCL15によるTHP-1の遊走を阻害する活性を測定した結果である。図4の縦軸は、Transwellの下層に移動した細胞数をCellTiter-Gloで測定した際の発光量(relative light unit;RLU)を表わす。図4の横軸は、THP-1細胞に添加した抗体、リガンドおよびこれらの濃度を示している。図4中には、抗体を添加していないサンプルをNo mAb、活性化ヒトCCL15を添加していないサンプルをNo ligand、活性化ヒトCCL15を添加したサンプルをhCCL15と記載した。抗ヒトCCR1抗体としては、chKM5908抗体、chKM5908’抗体、chKM5908’mut02抗体、chKM5908’mut22抗体およびchKM5908’mut25抗体を使用した。実験はN=3で実施し、グラフにはその平均値および標準偏差を示した。
図5図5は、シグナル配列を含まないmAb5-06抗体のVL及びmAb5-06ヒト化抗体(以下、hzmAb5-06抗体と記載する)のVL(LV0,LV1a、LV1b、LV2a、LV2b、LV4およびLV5)のアミノ酸配列を示す。各配列中の枠で囲まれた領域は、CDRのアミノ酸配列を示す。
図6図6は、シグナル配列を含まないmAb5-06抗体のVH及びhzmAb5-06抗体のVH(HV0、HV14およびHV17)のアミノ酸配列を示す。各配列中の枠で囲まれた領域は、CDRのアミノ酸配列を示す。
図7図7は、シグナル配列を含まないKM5907抗体のVL及びKM5907ヒト化抗体(以下、hzKM5907抗体と記載する)のVL(LV0,LV1a、LV1b、LV1c、LV2a、LV2b、LV4およびLV6)のアミノ酸配列を示す。各配列中の枠で囲まれた領域は、CDRのアミノ酸配列を示す。
図8図8は、シグナル配列を含まないKM5907抗体のVH及びhzKM5907抗体のVH(HV0,HV1、HV2a、HV2b、HV3a、HV3b、HV3c、HV4およびHV7)のアミノ酸配列を示す。各配列中の枠で囲まれた領域は、CDRのアミノ酸配列を示す。
図9図9は、シグナル配列を含まないKM5916抗体のVL及びKM5916ヒト化抗体(以下、hzKM5916抗体と記載する)のVL(LV0およびLV1a)のアミノ酸配列を示す。各配列中の枠で囲まれた領域は、CDRのアミノ酸配列を示す。
図10図10は、シグナル配列を含まないKM5916抗体のVH及びhzKM5916抗体のVH(HV0,HV1およびHV3)のアミノ酸配列を示す。各配列中の枠で囲まれた領域は、CDRのアミノ酸配列を示す。
図11図11は、抗ヒトCCR1抗体について、活性化ヒトCCL15によるTHP-1の遊走を阻害する活性を測定した結果である。図11の縦軸は、Transwellの下層に移動した細胞数をCellTiter-Gloで測定した際の発光量(relative light unit;RLU)を表わす。図11の横軸は、THP-1細胞に添加した抗体、リガンドおよびこれらの濃度を示している。図11中には、抗体を添加していないサンプルをNo mAb、活性化ヒトCCL15を添加していないサンプルをNo ligand、活性化ヒトCCL15を添加したサンプルをhCCL15と記載した。抗ヒトCCR1抗体としては、hzmAb5-06 LV5HV14、hzKM5907 LV2bHV3aおよびhzKM5916 LV2HV0を使用した。実験はN=3で実施し、グラフにはその平均値および標準偏差を示した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ヒトCCR1の細胞外領域に結合し、ヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害するモノクローナル抗体または該抗体断片に関する。
【0022】
CCR1は、CD191、CKR-1、HM145、Macrophage inflammatory protein 1α receptor(MIP1αR)、CMKBR1およびSCYAR1等ともいう。CCR1は、7回膜貫通型の構造を有するGPCRであり、全長355アミノ酸からなる膜タンパク質である。
【0023】
CCR1を含むGPCRにおいて、細胞表面上のGPCRは、リガンドが結合することにより活性化され、該細胞内に該受容体依存的なシグナルが伝達されると同時に、該細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇する。その結果、該細胞について、細胞遊走、ケモカインの産生、マトリックスメタロプロテアーゼMMPの産生などが生じることが知られている。
【0024】
すなわち、CCR1の機能としては、リガンドが細胞表面上のCCR1に結合することにより、該細胞内にCCR1依存的なシグナルが伝達されると同時に、該細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇した結果、該細胞について細胞遊走、ケモカインの産生またはMMPの産生などを起こすことなどが挙げられる。
【0025】
ヒトCCR1のリガンドとしては、例えば、ヒトCCL3、CCL5、CCL8、CCL14、CCL15、CCL16およびCCL23などが挙げられる。マウスCCR1のリガンドとしては、例えば、マウスCCL3、CCL5、CCL7およびCCL9などが挙げられる。
【0026】
ヒトCCL15はC-Cケモカインファミリーに含まれるリガンドであり、全長92アミノ酸からなる。ヒトCCL15はタンパク質分解酵素の作用によってN末端が分解され、68アミノ酸前後の活性化型[以下、本発明では活性化ヒトCCL15またはhCCL15(68aa)と記載する]になることで、全長のCCL15(以下、本発明では全長CCL15と記載する)よりも強力な活性を発揮することが知られている。
【0027】
ヒトCCL15が細胞表面上のヒトCCR1に結合し、該受容体が活性化されると、該細胞内にCCR1依存的なシグナルが伝達され、ホスホリパーゼC(PLC)の活性化、細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇またはnuclear factor-κB(NF-κB)の活性化等が起こる。その結果、該細胞について、細胞遊走などが生じる。
【0028】
本発明のモノクローナル抗体(以下、本発明の抗体とも略す。)としては、ヒトCCL15によるヒトCCR1活性化に伴う種々の反応の少なくとも一つを阻害する抗体が挙げられる。本発明の抗体として具体的には、例えば、ヒトCCL15によるヒトCCR1発現細胞内でのCCR1依存的なシグナル伝達、PLCの活性化、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇、NF-κBの活性化およびCCR1発現細胞の遊走から選ばれる少なくとも一つの反応を阻害する抗体などが挙げられる。このうち、本発明の抗体としては、ヒトCCL15により誘導されるヒトCCR1発現細胞の遊走を阻害する抗体であることが好ましい。
【0029】
本発明の抗体としては、ヒトCCL15によるヒトCCR1活性化に伴う上記の反応について、ヒトCCL15のみを添加し、抗体を添加しないコントロールと比べて、好ましくは、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上阻害する抗体が挙げられる。ヒトCCL15の濃度は、測定系に応じてヒトCCL15添加時の上記反応の活性が最大値となる濃度に適宜調整することができる。例えば本願実施例に記載する方法でCCR1発現細胞の遊走を測定する場合には、CCL15の濃度は1ng/mLであることが好ましい。また、本発明の抗体の濃度についても測定系により適宜調整することができる。例えば本実施例に記載する方法でCCR1発現細胞の遊走を測定する場合には、本発明の抗体濃度は、0.3μg/mL以上、好ましくは1μg/mL以上、より好ましくは3μg/mL以上、最も好ましくは10μg/mL以上であることが挙げられる。
【0030】
本発明において、ヒトCCL15は、CCR1を活性化するものであれば、全長CCL15および活性化ヒトCCL15のいずれのCCL15であってもいい。
【0031】
ヒトCCR1発現細胞としては、ヒトCCR1を発現している細胞であればいずれの細胞でもよく、例えば、ヒト細胞、ヒト細胞株およびヒトCCR1強制発現株などが挙げられる。
【0032】
ヒトCCR1を発現しているヒト細胞としては、例えば、好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、T細胞、B細胞、未成熟骨髄球(iMC)および骨髄由来免疫抑制性細胞(MDSC)などが挙げられる。
【0033】
ヒトCCR1の細胞外領域としては、ヒトCCR1のアミノ酸配列のN末端から1~31番目のアミノ酸配列を含むN末端領域、97~103番目のアミノ酸配列を含む細胞外ループ1領域、172~195番目のアミノ酸配列を含む細胞外ループ2領域および266~278番目のアミノ酸配列を含む細胞外ループ3領域が挙げられる[Cell 72.3(1993):415-425]。
【0034】
N末端領域、細胞外ループ1領域、細胞外ループ2領域および細胞外ループ3領域として、具体的には、それぞれ配列番号2のアミノ酸配列における1~31番目、97~103番目、172~195番目および266~278番目のアミノ酸配列が挙げられる。
【0035】
本発明の抗体としては、上記のヒトCCR1の細胞外領域に結合する抗体であればいかなるものでもよいが、ヒトCCR1の細胞外ループ2領域のアミノ酸配列のうち、少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する抗体であることが好ましい。かかる抗体としては、配列番号2のアミノ酸配列の172~195番目のアミノ酸配列のうち、少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する抗体などが挙げられる。
【0036】
また、本発明の抗体としてより具体的には、下記(a)~(n)から選ばれるいずれか一つの抗体が挙げられる。
(a)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号69、70および71に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号72、73および74に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(b)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号75、76および77に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号78、79および80に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(c)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号81、82および83に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号84、85および86に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(d)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号87、88および89に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号90、91および92に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(e)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号93、94および95に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号96、97および98に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(f)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号99、100および101に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号102、103および104に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(g)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号105、106および107に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号108、109および110に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(h)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号111、112および113に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号114、115および116に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(i)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号117、118および119に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号120、121および122に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(j)VHのCDR1が配列番号75に記載されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR2が配列番号76に記載されるアミノ酸配列または、配列番号76に記載されるアミノ酸配列中の2番目のIleをThrに、9番目のValをAlaに、14番目のPheをAlaに、および15番目のIleをAlaに置換する改変から選ばれる少なくともいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、VHのCDR3が、配列番号77に記載されるアミノ酸配列または、配列番号77に記載されるアミノ酸配列中の5番目のTyrをAlaに、および7番目のThrをAlaに置換する改変の少なくともいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1が、配列番号126に記載されるアミノ酸配列または、配列番号126に記載されるアミノ酸配列中の15番目のPheをAlaに置換する改変が導入されたアミノ酸配列を含み、VLのCDR2が、配列番号127に記載されるアミノ酸配列または、配列番号127に記載されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および5番目のArgをLysに置換する改変の少なくともいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、VLのCDR3が、配列番号128に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(k)VHのCDR1~3が、それぞれ配列番号75、131および77に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3が、それぞれ配列番号126、134および128に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(l)前記(a)~(k)に記載の少なくとも一つの抗体と、ヒトCCR1への結合について競合する抗体。
(m)前記(a)~(k)に記載のいずれか一つの抗体が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体。
(n)前記(a)~(k)に記載のいずれか一つの抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体。
【0037】
本発明の抗体としては、上記(a)~(k)に記載されるいずれか一つの抗体のVHのCDR1~3およびVLのCDR1~3のアミノ酸配列と、それぞれ90%以上の相同性を示す抗体のVHのCDR1~3およびVLのCDR1~3のアミノ酸配列を有する抗体を含む。90%以上の相同性とは、具体的には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%以上の相同性などが挙げられる。
【0038】
本発明において、上記(a)~(i)に記載される抗体の一態様としては、それぞれマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体KM5907抗体、KM5908抗体、KM5909抗体、KM5911抗体、KM5915抗体、KM5916抗体、KM5954抗体、KM5955抗体およびKM5956抗体が挙げられる。上記(a)~(i)に記載される抗体の一態様として、それぞれ抗ヒトCCR1キメラ抗体chKM5907抗体、chKM5908抗体、chKM5909抗体、chKM5911抗体、chKM5915抗体、chKM5916抗体、chKM5954抗体、chKM5955抗体およびchKM5956抗体が挙げられる。上記(a)および(f)に記載される抗体の一態様として、それぞれヒト化抗ヒトCCR1抗体hzKM5907抗体およびhzKM5916抗体が挙げられる。上記(j)に記載される抗体の一態様として、抗ヒトCCR1キメラ抗体改変体chKM5908’抗体、chKM5908’mut01~32抗体およびヒト化抗ヒトCCR1抗体hzmAb5-06抗体が挙げられる。上記(k)に記載される抗体の一態様として、抗ヒトCCR1キメラ抗体改変体chKM5908’mut22抗体(mAb5-06とも記載する)およびヒト化抗ヒトCCR1抗体hzmAb5-06抗体が挙げられる。上記(a)~(k)に記載される抗体の一態様として、他には上記(a)~(k)に記載されるいずれか一つの抗体のVHのCDR1~3およびVLのCDR1~3のアミノ酸配列を有するヒト抗体などが挙げられる。
【0039】
本発明の上記(l)の抗体とは、上記(a)~(k)に記載の抗体を第1抗体とした時に、該第1抗体とヒトCCR1との結合を阻害する第2抗体をいう。本発明の上記(m)の抗体とは、上記(a)~(k)に記載の抗体を第1抗体、及び第1抗体が結合するエピトープを第1エピトープとした場合、当該第1エピトープを含む、第2エピトープに結合する第2抗体をいう。また、本発明の上記(n)の抗体とは、上記(a)~(k)に記載の抗体を第1抗体、及び第1抗体が結合するエピトープを第1エピトープとした場合に、当該第1エピトープに結合する第2抗体をいう。
【0040】
また、本発明の抗体として、具体的には、下記(1)-(a)~(j)、(2)-(a)~(c)、(3)-(a)~(h)、(4)-(a)~(w)および(5)-(a)~(f)から選ばれるいずれか一つの抗体も挙げられる。
(1)-(a)VHが配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号52に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(b)VHが配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号54に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(c)VHが配列番号55に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号56に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(d)VHが配列番号57に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号58に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(e)VHが配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号60に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(f)VHが配列番号61に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号62に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(g)VHが配列番号63に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号64に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(h)VHが配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号66に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(i)VHが配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(1)-(j)VHが配列番号130に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(2)-(a)VHが配列番号136に記載されるアミノ酸配列または配列番号136に記載されるアミノ酸配列中の6番目のGluをGlnに、20番目のLeuをIleに、27番目のGlyをPheに、29番目のValをLeuに、30番目のSerをAsnに、37番目のIleをValに、48番目のIleをLeuに、67番目のValをLeuに、71番目のValをLysに、73番目のThrをAspに、76番目のAsnをSerに、78番目のPheをValに、80番目のLeuをPheに、82番目のLeuをMetに、85番目のValをLeuに、92番目のValをIleに、および97番目のArgをLysに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号135に記載されるアミノ酸配列または配列番号135に記載されるアミノ酸配列中の2番目のIleをValに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、92番目のTyrをPheに、および109番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
(2)-(b)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列または配列番号146に記載されるアミノ酸配列中の4番目のLeuをValに、44番目のGlyをArgに、49番目のSerをAlaに、92番目のAlaをGlyに、93番目のValをMetに、97番目のAlaをThrに、および98番目のLysをArgに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列または配列番号145に記載されるアミノ酸配列中の2番目のIleをValに、15番目のSerをLeuに、19番目のAlaをValに、43番目のGlnをLysに、50番目のGlnをLysに、および109番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
(2)-(c)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列または配列番号163に記載されるアミノ酸配列中の42番目のAspをGluに、87番目のLysをArgに、および97番目のAlaをThrに置換するアミノ酸改変のいずれか1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列または配列番号162に記載されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをHisに、および43番目のAlaをGlyに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む抗体。
(3)-(a)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号135に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(3)-(b)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号137に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(3)-(c)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号138に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(3)-(d)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号139に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(3)-(e)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号140に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(3)-(f)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号141に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(3)-(g)VHが配列番号144に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号142に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(3)-(h)VHが配列番号143に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号142に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(a)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(b)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号147に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(c)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(d)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号149に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(e)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号150に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(f)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(g)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(h)VHが配列番号146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(i)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号145に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(j)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号147に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(k)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(l)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号149に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(m)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号150に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(n)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(o)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(p)VHが配列番号161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(q)VHが配列番号154に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(r)VHが配列番号155に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(s)VHが配列番号156に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(t)VHが配列番号157に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(u)VHが配列番号158に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(v)VHが配列番号159に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(4)-(w)VHが配列番号160に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(5)-(a)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(5)-(b)VHが配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(5)-(c)VHが配列番号165に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(5)-(d)VHが配列番号165に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(5)-(e)VHが配列番号166に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(5)-(f)VHが配列番号166に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号164に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
【0041】
本発明の抗体としては、上記(1)-(a)~(j)、(2)-(a)~(c)、(3)-(a)~(h)、(4)-(a)~(w)および(5)-(a)~(f)に記載されるいずれか一つの抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列と、それぞれ90%以上の相同性を示す抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を有する抗体を含む。90%以上の相同性とは、具体的には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%以上の相同性などが挙げられる。
【0042】
本発明において、上記(1)-(a)~(i)に記載される抗体の一態様としては、それぞれマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体KM5907抗体、KM5908抗体、KM5909抗体、KM5911抗体、KM5915抗体、KM5916抗体、KM5954抗体、KM5955抗体およびKM5956抗体が挙げられる。
【0043】
本発明において、上記(1)-(a)~(i)に記載される抗体の一態様として、それぞれ抗ヒトCCR1キメラ抗体chKM5907抗体、chKM5908抗体、chKM5909抗体、chKM5911抗体、chKM5915抗体、chKM5916抗体、chKM5954抗体、chKM5955抗体およびchKM5956抗体が挙げられる。また上記(1)-(j)に記載される抗体の一態様として、抗ヒトCCR1キメラ抗体改変体chmAb5-06が挙げられる。
【0044】
本発明において、上記(2)-(a)~(c)に記載される抗体の一態様として、それぞれヒト化抗ヒトCCR1抗体hzmAb5-06抗体、hzKM5907抗体、およびhzKM5916抗体が挙げられる。
【0045】
本発明において、上記(3)-(a)~(h)に記載される抗体の一態様として、それぞれヒト化抗ヒトCCR1抗体hzmAb5-06 LV0HV17抗体、hzmAb5-06 LV1aHV17抗体、hzmAb5-06 LV1bHV17抗体、hzmAb5-06 LV2aHV17抗体、hzmAb5-06 LV2bHV17抗体、hzmAb5-06 LV4HV17抗体、hzmAb5-06 LV5HV17抗体およびhzmAb5-06 LV5HV14抗体が挙げられる。
【0046】
本発明において、上記(4)-(a)~(w)に記載される抗体の一態様として、それぞれヒト化抗ヒトCCR1抗体hzKM5907 LV0HV0抗体、hzKM5907 LV1aHV0抗体、hzKM5907 LV1bHV0抗体、hzKM5907 LV1cHV0抗体、hzKM5907 LV2aHV0抗体、hzKM5907 LV2bHV0抗体、hzKM5907 LV4HV0抗体、hzKM5907 LV6HV0抗体、hzKM5907 LV0HV7抗体、hzKM5907 LV1aHV7抗体、hzKM5907 LV1bHV7抗体、hzKM5907 LV1cHV7抗体、hzKM5907 LV2aHV7抗体、hzKM5907 LV2bHV7抗体、hzKM5907 LV4HV7抗体、hzKM5907 LV6HV7抗体、hzKM5907 LV2bHV1抗体、hzKM5907 LV2bHV2a抗体、hzKM5907 LV2bHV2b抗体、hzKM5907 LV2bHV3a抗体、hzKM5907 LV2bHV3b抗体、hzKM5907 LV2bHV3c抗体およびhzKM5907 LV2bHV4抗体が挙げられる。
【0047】
本発明において、上記(5)-(a)~(f)に記載される抗体の一態様として、それぞれヒト化抗ヒトCCR1抗体hzKM5916 LV0HV0抗体、hzKM5916 LV2HV0抗体、hzKM5916 LV0HV1抗体、hzKM5916 LV2HV1抗体、hzKM5916 LV0HV3抗体およびhzKM5916 LV2HV3抗体が挙げられる。
【0048】
本発明においてヒトCCR1としては、配列番号2に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号NP_001286のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号2に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号NP_001286のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒトCCR1の機能を有するポリペプチド、あるいは配列番号2に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号NP_001286のアミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列から成り、かつヒトCCR1の機能を有するポリペプチドなどが挙げられる。
【0049】
配列番号2に記載のアミノ酸配列またはNCBIアクセッション番号NP_001286で示されるアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、Nucleic acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)]などを用いて、例えば配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNAに、部位特異的変異を導入することにより得ることができる。
【0050】
欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、好ましくは1個~数十個、例えば、1~20個、より好ましくは1個~数個、例えば、1~5個のアミノ酸である。
【0051】
ヒトCCR1をコードする遺伝子としては、配列番号1に記載の塩基配列、およびNCBIアクセッション番号NM_001295の塩基配列が挙げられる。配列番号1に記載の塩基配列若しくはNM_001295の塩基配列において、1以上の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列から成り、かつヒトCCR1の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、配列番号1に記載の塩基配列若しくはNM_001295の塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有する塩基配列、好ましくは80%以上の相同性を有する塩基配列、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列から成り、かつヒトCCR1の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子または配列番号1に記載の塩基配列、若しくはNM_001295の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAから成り、かつヒトCCR1の機能を有するポリペプチドをコードする遺伝子なども本発明のヒトCCR1をコードする遺伝子に含有される。
【0052】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号1に記載の塩基配列またはNM_001295の塩基配列を含むDNAをプローブに用いた、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、サザンブロット・ハイブリダイゼーション法またはDNAマイクロアレイ法などにより得られるハイブリダイズ可能なDNAのことをいう。
【0053】
具体的には、ハイブリダイズしたコロニーあるいはプラーク由来のDNA、または該配列を有するPCR産物若しくはオリゴDNAを固定化したフィルター若しくはスライドガラスを用いて、0.7~1.0mol/Lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University, (1995)]を行った後、0.1~2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターまたはスライドガラスを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
【0054】
ハイブリダイズ可能なDNAとしては配列番号1に記載の塩基配列、またはNM_001295の塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
【0055】
真核生物のタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列には、しばしば遺伝子の多型が認められる。本発明において用いられる遺伝子に、このような多型によって塩基配列に小規模な変異を生じた遺伝子も本発明のヒトCCR1をコードする遺伝子に含有される。
【0056】
本発明における相同性の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であってよいが、塩基配列については、BLAST[J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値など、アミノ酸配列については、BLAST2[Nucleic Acids Res.,25, 3389 (1997)、Genome Res., 7, 649 (1997)、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo/information3.htmL]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値などが挙げられる。
【0057】
デフォルトのパラメータとしては、G(Cost to open gap)が塩基配列の場合は5、アミノ酸配列の場合は11、-E(Cost to extend gap)が塩基配列の場合は2、アミノ酸配列の場合は1、-q(Penalty for nucleotide mismatch)が-3、-r(reward for nucleotide match)が1、-e(expect value)が10、-W(wordsize)が塩基配列の場合は11残基、アミノ酸配列の場合は3残基、-y[Dropoff(X)for blast extensions in bits]がblastnの場合は20、blastn以外のプログラムでは7、-X(X dropoff value for gapped alignment in bits)が15および-Z(final X dropoff value for gapped alignment in bits)がblastnの場合は50、blastn以外のプログラムでは25である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/htmL/blastcgihelp.htmL)。
【0058】
配列番号2に記載のアミノ酸配列またはNCBIアクセッション番号NP_001286のアミノ酸配列の部分配列を含むポリペプチドは、当業者に公知の方法によって作製することができる。具体的には、配列番号2のアミノ酸配列をコードするDNAの一部を欠失させ、これを含む発現ベクターを導入した形質転換体を培養することにより作製することができる。また、上記と同様の方法により、配列番号2に記載のアミノ酸配列またはNCBIアクセッション番号NP_001286のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得ることができる。さらに、配列番号2に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号NP_001286のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または配列番号2に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号NP_001286のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換あるいは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法、t-ブチルオキシカルボニル(tBoc)法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0059】
本発明の抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体およびオリゴクローナル抗体のいずれの抗体をも包含する。ポリクローナル抗体とは、異なるクローンの抗体産生細胞が分泌する抗体分子の集団をいう。モノクローナル抗体とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体であり、ただ一つのエピトープ(抗原決定基ともいう)を認識し、モノクローナル抗体を構成するアミノ酸配列(一次配列)が均一である抗体をいう。オリゴクローナル抗体とは、複数の異なるモノクローナル抗体を混合した抗体分子の集団をいう。
【0060】
本発明におけるモノクロ-ナル抗体としては、ハイブリドーマにより産生される抗体、または抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した形質転換体により産生される遺伝子組換え抗体をあげることができる。
【0061】
エピトープとは、モノクローナル抗体が認識し、結合する単一のアミノ酸配列、アミノ酸配列からなる立体構造、翻訳後修飾により修飾されたアミノ酸配列および該アミノ酸配列からなる立体構造などが挙げられる。
【0062】
翻訳後修飾により修飾されたアミノ酸配列としては、糖鎖がOH置換基を有するTyrおよびSerに結合したO結合型糖鎖、NH置換基を有するGlnおよびAsnに結合したN結合型糖鎖ならびに硫酸分子がOH置換基を有するTyrおよびSerに結合した硫酸基などが結合したアミノ酸配列が挙げられる。
【0063】
本発明の抗体がヒトCCR1の細胞外領域に結合することは、ヒトCCR1発現細胞に対する本発明の抗体の結合性を、ELISA、フローサイトメトリーおよび表面プラズモン共鳴法などを用いて測定することにより確認することができる。また、公知の免疫学的検出法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを組み合わせて確認することもできる。
【0064】
本発明の抗体が結合するヒトCCR1のアミノ酸残基またはエピトープは、ヒトCCR1の一部のドメインを欠失させた欠損体、他のタンパク質由来のドメインと置換させた変異体およびヒトCCR1の部分ペプチド断片等を用いて抗体の結合実験を行うことにより決定することができる。また、上記欠損体または変異体の発現細胞を用いて抗体の結合実験を行うこともできる。
【0065】
または、本発明の抗体が結合するヒトCCR1のアミノ酸残基またはエピトープは、タンパク質分解酵素にて消化したヒトCCR1のペプチド断片に本発明の抗体を添加し、既知の質量分析法を用いてエピトープマッピングを行うことによっても決定することができる。
【0066】
本発明の抗体がヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害することは、例えば、ヒトCCR1発現細胞内でのCCR1依存的なシグナル伝達、PLCの活性化、細胞内のカルシウムイオン濃度上昇、NF-κB活性化、またはヒトCCR1発現細胞の遊走など少なくとも一つを指標として確認することができる。
【0067】
細胞の遊走は、以下に記載するケモタキシスアッセイを用いて測定することができる。例えば、ケモタキシスアッセイチャンバーの上部にヒトCCR1発現細胞を、該チャンバーの下部に1)培地またはDPBSなどのネガティブコントロール、2)ヒトCCL15および3)ヒトCCL15と本発明の抗体をそれぞれ添加し、一定時間培養した後に、該チャンバー下部に存在するヒトCCR1発現細胞数を適当な方法で測定する。得られた結果について、ヒトCCL15を添加した時の細胞数が、培地を添加した時の細胞数よりも増加する条件下で、ヒトCCL15と本発明の抗体を添加した時の細胞数が、ヒトCCL15を添加した時の細胞数よりも減少していれば、本発明の抗体は、ヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害すると判定することができる。
【0068】
また、本発明の抗体が、ヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害することは、ヒトCCR1発現細胞内でのカルシウムイオン濃度の変化を指標として確認することができる。細胞内のカルシウムイオン濃度の変化は、公知の方法で測定することができ、例えば、細胞内Ca測定キット(Wako社製)などを使用し、添付のプロトコールに従い測定することができる。
【0069】
確認方法としては、例えばヒトCCR1発現細胞に、1)培地またはDPBSなどのネガティブコントロール、2)ヒトCCL15および3)ヒトCCL15と本発明の抗体をそれぞれ添加した時の細胞内カルシウムイオン濃度の変化を、上記の方法に従い測定する。ヒトCCL15を添加した時の細胞内カルシウムイオン濃度が、培地を添加した時の細胞内カルシウムイオン濃度よりも増加する条件下で、ヒトCCL15と本発明の抗体を添加した時の細胞内カルシウムイオン濃度が、ヒトCCL15を添加した時の細胞内カルシウムイオン濃度よりも減少していれば、本発明の抗体は、ヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害すると判定することができる。
【0070】
抗体分子はイムノグロブリン(以下、Igと表記する)とも称され、ヒト抗体は、分子構造の違いに応じて、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgMのアイソタイプに分類される。アミノ酸配列の相同性が比較的高いIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を総称してIgGともいう。
【0071】
抗体分子は重鎖(Heavy chain、以下H鎖と記す)および軽鎖(Light chain、以下L鎖と記す)と呼ばれるポリペプチドより構成される。また、H鎖はN末端側よりVH、H鎖定常領域(CHとも表記される)、L鎖はN末端側よりVL、L鎖定常領域(CLとも表記される)の各領域により、それぞれ構成される。CHは各サブクラスごとに、α、δ、ε、γおよびμ鎖がそれぞれ知られている。CHはさらに、N末端側よりCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインの各ドメインにより構成される。ドメインとは、抗体分子の各ポリペプチドを構成する機能的な構造単位をいう。また、CH2ドメインとCH3ドメインを併せてFc領域または単にFcという。CLは、Cλ鎖およびCκ鎖が知られている。
【0072】
本発明におけるCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびFc領域は、EUインデックス[Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]により、N末端からのアミノ酸残基の番号で特定することができる。具体的には、CH1はEUインデックス118~215番のアミノ酸配列、ヒンジはEUインデックス216~230番のアミノ酸配列、CH2はEUインデックス231~340番のアミノ酸配列、CH3はEUインデックス341~447番のアミノ酸配列とそれぞれ特定される。
【0073】
本発明の抗体としては、特に遺伝子工学的に作製された組換えマウス抗体、組換えラット抗体、組換えラビット抗体、ヒト型キメラ抗体(以下、単にキメラ抗体とも略記する)、ヒト化抗体(ヒト型相補性決定領域CDR移植抗体ともいう)およびヒト抗体などの遺伝子組換え抗体も含まれる。また、本発明の抗体には、異なる2種類の抗体由来のH鎖(又はVH)とL鎖(又はVL)とを組換えて作製される遺伝子組換え抗体(VL置換抗体ともいう)も含まれる。異なる2種類の抗体は、ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体いずれのものであってもよい。更に本発明の抗体としては、上述の遺伝子組換え抗体を作製するに当たって、適当なアミノ酸残基置換を加えた遺伝子組換え抗体も含まれる。
【0074】
キメラ抗体とは、ヒト以外の動物(非ヒト動物)の抗体のVHおよびVLと、ヒト抗体のCHおよびCLからなる抗体を意味する。非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビット等、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
【0075】
ハイブリドーマとは、非ヒト動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、マウスなどに由来するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を産生する細胞をいう。したがって、ハイブリドーマが産生する抗体を構成する可変領域は、非ヒト動物抗体のアミノ酸配列からなる。
【0076】
ヒト型キメラ抗体は、モノクローナル抗体を生産する非ヒト動物細胞由来のハイブリドーマより、該モノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0077】
本発明におけるキメラ抗体改変体は、あるキメラ抗体のVLを、別のキメラ抗体のVLと置き換えた抗体(VL置換キメラ抗体ともいう)、および/または該抗体のVLまたはVHの1または複数のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置換した抗体をいう。
【0078】
キメラ抗体改変体は、あるモノクローナル抗体を生産する非ヒト動物細胞由来のハイブリドーマより、該モノクローナル抗体のVHをコードするcDNAを取得し、別のモノクローナル抗体を生産する非ヒト動物細胞由来のハイブリドーマより、該モノクローナル抗体のVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入して、異なるハイブリドーマクローン由来のVHおよびVLを組み合わせたヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、キメラ抗体またはVL置換キメラ抗体のVHまたはVLのアミノ酸に対して、1または複数のアミノ酸残基を、ハイブリドーマから得られたものとは別のアミノ酸残基に置換したDNAを作製して、該発現ベクターに挿入することができる。このベクターを用いて同様に発現させ、製造することができる抗体についても、キメラ抗体改変体と称する。
【0079】
ヒト化抗体とは、非ヒト動物抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの対応するCDRに移植した抗体をいう。VHおよびVLのCDR以外の領域はフレームワーク領域(以下、FRと表記する)と称される。
【0080】
ヒト化抗体は、非ヒト動物抗体のVHのCDRのアミノ酸配列と任意のヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列からなるVHのアミノ酸配列をコードするcDNAと、非ヒト動物抗体のVLのCDRのアミノ酸配列と任意のヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列からなるVLのアミノ酸配列をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト化抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0081】
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体等も含まれる。
【0082】
ヒト抗体は、ヒトイムノグロブリン遺伝子を保持するマウス(Tomizuka K. et. al., Proc Natl Acad Sci U S A. 97, 722-7, 2000)に所望の抗原を免疫することにより、取得することが出来る。また、ヒト由来のB細胞から抗体遺伝子を増幅したphage displayライブラリーを用いることにより、所望の結合活性を有するヒト抗体を選択することで、免疫を行わずにヒト抗体を取得することができる(Winter G. et. al., Annu Rev Immunol.12:433-55. 1994)。さらに、EBウイルスを用いてヒトB細胞を不死化することにより、所望の結合活性を有するヒト抗体を生産する細胞を作製し、ヒト抗体を取得することができる(Rosen A. et. al., Nature 267, 52-54.1977)。
【0083】
ヒト体内に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血から単離したリンパ球を、EBウイルス等を感染させることによって不死化した後、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を得ることができ、該リンパ球を培養した培養物中より該抗体を精製することができる。
【0084】
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFv等の抗体断片を表面に発現させたファージのライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、更に遺伝子工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
【0085】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が宿主動物の染色体内に組込まれた動物をいう。具体的には、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞を他のマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニック動物を作製することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製方法は、通常のヒト以外の哺乳動物で行われているハイブリドーマ作製方法によりヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで培養物中にヒト抗体を産生蓄積させることができる。
【0086】
本発明の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列としては、ヒト抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列、非ヒト動物抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列または非ヒト動物抗体のCDRを、任意のヒト抗体のフレームワークに移植したヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列のいずれでもよい。
【0087】
本発明の抗体におけるCLのアミノ酸配列としては、ヒト抗体のアミノ酸配列または非ヒト動物抗体のアミノ酸配列のいずれでもよいが、ヒト抗体のアミノ酸配列のCκまたはCλが好ましい。
【0088】
本発明の抗体のCHとしては、イムノグロブリンに属すればいかなるものでもよいが、好ましくはIgGクラスに属するサブクラス、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)およびγ4(IgG4)のいずれも用いることができる。
【0089】
本発明の抗体としては、Fcと抗体断片とが結合したFc融合タンパク質、Fcと天然に存在するリガンドまたは受容体とが結合したFc融合タンパク質(イムノアドヘシンともいう)、複数のFc領域を融合させたFc融合タンパク質等も本発明に包含される。また、抗体を安定化させるためおよび血中半減期を制御するために、アミノ酸残基を改変したFc領域なども本発明の抗体に用いることができる。
【0090】
本発明の抗体又は該抗体断片は、翻訳後修飾されたいかなるアミノ酸残基を含む抗体をも包含する。翻訳後修飾としては、例えば、H鎖のC末端におけるリジン残基の欠失[リジン・クリッピング(lysine clipping)]またはポリペプチドのN末端におけるグルタミン残基のピログルタミン(pyroGlu)への変換などが挙げられる[Beck et al, Analytical Chemistry, 85, 715-736(2013)]。
【0091】
本発明において、抗体断片とは、ヒトCCR1の細胞外領域に結合し、ヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害する、抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明において抗体断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、diabody、dsFvまたは複数のCDRを含むペプチドなどが挙げられる。Fabは、IgG抗体をタンパク質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合(S-S結合)で結合した、分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0092】
F(ab’)は、IgGをタンパク質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のS-S結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。Fab’は、上記F(ab’)のヒンジ領域のS-S結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0093】
scFvは、1本のVHと1本のVLとを4個のGlyおよび1個のSer残基からなるリンカー(G4S)を任意の個数つなげたリンカーペプチドなどの適当なペプチドリンカー(P)を用いて連結した、VH-P-VLないしはVL-P-VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0094】
Diabodyは、抗原結合特異性の同じまたは異なるscFvが2量体を形成した抗体断片で、同じ抗原に対する2価の抗原結合活性または異なる抗原に対する特異的な抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0095】
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のS-S結合を介して結合させたものをいう。
【0096】
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、CDR同士を直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。本発明の改変抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法またはtBoc法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0097】
本発明のモノクローナル抗体には、本発明のヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片に放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、タンパク質または抗体医薬などを化学的または遺伝子工学的に結合させた抗体の誘導体を包含する。
【0098】
抗体の誘導体は、本発明のヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片のH鎖若しくはL鎖のN末端側、C末端側、抗体分子中の適当な置換基または側鎖あるいは糖鎖などに、放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、免疫賦活剤、タンパク質、抗体医薬または核酸医薬などを化学的手法[抗体工学入門、地人書館(1994)]により結合させることにより製造することができる。
【0099】
また、本発明のヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片をコードするDNAと、結合させたいタンパク質または抗体医薬をコードするDNAを連結させて発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させる遺伝子工学的手法より製造することができる。
【0100】
放射性同位元素としては、例えば、111In、131I、125I、90Y、64Cu、99Tc、77Luまたは211Atなどが挙げられる。放射性同位元素は、クロラミンT法などによって抗体に直接結合させることができる。また、放射性同位元素をキレートする物質を抗体に結合させてもよい。キレート剤としては、例えば、1-イソチオシアネートベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)などが挙げられる。
【0101】
低分子の薬剤としては、例えば、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗剤、抗生物質、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン療法剤、ホルモン拮抗剤、アロマターゼ阻害剤、P糖蛋白阻害剤、白金錯体誘導体、M期阻害剤若しくはキナーゼ阻害剤などの抗癌剤[臨床腫瘍学、癌と化学療法社(1996)]、ハイドロコーチゾン若しくはプレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン若しくはインドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート若しくはペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド若しくはアザチオプリンなどの免疫抑制剤またはマレイン酸クロルフェニラミン若しくはクレマシチンのような抗ヒスタミン剤などの抗炎症剤[炎症と抗炎症療法、医歯薬出版株式会社(1982)]などが挙げられる。
【0102】
抗癌剤としては、例えば、アミフォスチン(エチオール)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロフォスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、ペプロマイシン、エストラムスチン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテア)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、メスナ、イリノテカン(CPT-11)、ノギテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、ヒドロキシカルバミド、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、タモキシフェン、ゴセレリン、リュープロレニン、フルタミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ビンデシン、ニムスチン、セムスチン、カペシタビン、トムデックス、アザシチジン、UFT、オキザロプラチン、ゲフィチニブ(イレッサ)、イマチニブ(STI571)、エルロチニブ、FMS-like tyrosine kinase 3(Flt3)阻害剤、vascular endothelial growth facotr receptor(VEGFR)阻害剤、fibroblast growth factor receptor(FGFR)阻害剤、イレッサ若しくはタルセバなどのepidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤、ラディシコール、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、ラパマイシン、アムサクリン、オール-トランスレチノイン酸、サリドマイド、レナリドマイド、アナストロゾール、ファドロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、金チオマレート、D-ペニシラミン、ブシラミン、アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、ラパマイシン、ヒドロコルチゾン、ベキサロテン(ターグレチン)、タモキシフェン、デキサメタゾン、プロゲスチン類、エストロゲン類、アナストロゾール(アリミデックス)、ロイプリン、アスピリン、インドメタシン、セレコキシブ、ペニシラミン、金チオマレート、マレイン酸クロルフェニラミン、クロロフェニラミン、クレマシチン、トレチノイン、ベキサロテン、砒素、ボルテゾミブ、アロプリノール、カリケアマイシン、イブリツモマブチウキセタン、タルグレチン、オゾガミン、クラリスロマシン、ロイコボリン、ケトコナゾール、アミノグルテチミド、スラミンまたはメイタンシノイドあるいはその誘導体などが挙げられる。
【0103】
低分子の薬剤と抗体とを結合させる方法としては、例えば、グルタールアルデヒドを介して薬剤と抗体のアミノ基間を結合させる方法または水溶性カルボジイミドを介して薬剤のアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法などが挙げられる。
【0104】
高分子の薬剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する)、アルブミン、デキストラン、ポリオキシエチレン、スチレンマレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、またはヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどが挙げられる。これらの高分子化合物を抗体またはその抗体断片に結合させることにより、(1)化学的、物理的若しくは生物的な種々の因子に対する安定性の向上、(2)血中半減期の顕著な延長、または(3)免疫原性の消失若しくは抗体産生の抑制、などの効果が期待される[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。
【0105】
例えば、PEGと抗体を結合させる方法としては、PEG化修飾試薬と反応させる方法などが挙げられる[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。PEG化修飾試薬としては、リジンのε-アミノ基への修飾剤(日本国特開昭61-178926号公報)、アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシル基への修飾剤(日本国特開昭56-23587号公報)、またはアルギニンのグアニジノ基への修飾剤(日本国特開平2-117920号公報)などが挙げられる。
【0106】
免疫賦活剤としては、イムノアジュバントとして知られている天然物でもよく、具体例としては、免疫を亢進する薬剤が、β(1→3)グルカン(例えば、レンチナンまたはシゾフィラン)またはαガラクトシルセラミド(KRN7000)などが挙げられる。
【0107】
タンパク質としては、例えば、NK細胞、マクロファージまたは好中球などの免疫担当細胞を活性化するサイトカイン若しくは増殖因子または毒素タンパク質などが挙げられる。
【0108】
サイトカインまたは増殖因子としては、例えば、インターフェロン(以下、IFNと記す)-α、IFN-β、IFN-γ、インターロイキン(以下、ILと記す)-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-23、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)またはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)などが挙げられる。毒素タンパク質としては、例えば、リシン、ジフテリアトキシンまたはONTAKなどが挙げられ、毒性を調節するためにタンパク質に変異を導入したタンパク毒素も含まれる。
【0109】
抗体医薬としては、例えば、抗体の結合によりアポトーシスが誘導される抗原、腫瘍の病態形成に関わる抗原、免疫機能を調節する抗原または病変部位の血管新生に関与する抗原に対する抗体が挙げられる。
【0110】
抗体の結合によりアポトーシスが誘導される抗原としては、例えば、cluster of differentiation(以下、CDと記載する)19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80(B7.1)、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86(B7.2)、human leukocyte antigen(HLA)-Class IIまたはEpidermal Growth Factor Receptor(EGFR)などが挙げられる。
【0111】
腫瘍の病態形成に関わる抗原または免疫機能を調節する抗体の抗原としては、例えば、CD4、CD40、CD40リガンド、B7ファミリー分子(例えば、CD80、CD86、CD274、B7-DC、B7-H2、B7-H3またはB7-H4)、B7ファミリー分子のリガンド(例えば、CD28、CTLA-4、ICOS、PD-1またはBTLA)、OX-40、OX-40リガンド、CD137、tumor necrosis factor(TNF)受容体ファミリー分子(例えば、DR4、DR5、TNFR1またはTNFR2)、TNF-related apoptosis-inducing ligand receptor(TRAIL)ファミリー分子、TRAILファミリー分子の受容体ファミリー(例えば、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3またはTRAIL-R4)、receptor activator of nuclear factor kappa B ligand(RANK)、RANKリガンド、CD25、葉酸受容体、サイトカイン[例えば、IL-1α、IL-1β、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13、transforming growth factor(TGF)βまたはTNFαなど]若しくはこれらのサイトカインの受容体、またはケモカイン(例えば、SLC、ELC、I-309、TARC、MDCまたはCTACKなど)若しくはこれらのケモカインの受容体が挙げられる。
【0112】
病変部位の血管新生を阻害する抗体の抗原としては、例えば、vascular endothelial growth factor(VEGF)、angiopoietin、fibroblast growth factor(FGF)、EGF、hepatocyte growth factor(HGF)、platelet-derived growth factor(PDGF)、insulin-like growth factor(IGF)、erythropoietin(EPO)、TGFβ、IL-8、ephrinまたはSDF-1若しくはこれらの受容体などが挙げられる。
【0113】
タンパク質または抗体医薬との融合抗体は、モノクローナル抗体または抗体断片をコードするcDNAにタンパク質または抗体医薬に含まれる抗体をコードするcDNAを連結させ、融合抗体をコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物または真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、融合抗体を製造することができる。
【0114】
核酸医薬としては、例えば、遺伝子の機能を制御することによって生体に作用するsmall interference ribonucleic acid(siRNA)またはmicroRNAなどの核酸を含む医薬品が挙げられる。例えば、Th17細胞のマスター転写因子RORγtを抑制する核酸医薬とのコンジュゲートが考えられる。
【0115】
本発明の抗体の誘導体をヒトCCR1の検出および測定ならびにヒトCCR1関連疾患の診断に使用する場合に、当該抗体に結合する薬剤としては、通常の免疫学的検出または測定法で用いられる標識体が挙げられる。標識体としては、例えば、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ若しくはルシフェラーゼなどの酵素、アクリジニウムエステル若しくはロフィンなどの発光物質、またはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)などの蛍光物質などが挙げられる。
【0116】
また、本発明は、ヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片を有効成分として含有する組成物を含む。
【0117】
また、本発明は、ヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片を有効成分として含有する、ヒトCCR1関連疾患の治療薬に関する。また、本発明は、ヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片を投与することを含む、ヒトCCR1関連疾患の治療方法に関する。
【0118】
ヒトCCR1関連疾患としては、ヒトCCR1又はヒトCCR1のリガンドが関与する疾患であればいかなるものでもよく、例えば、癌、自己免疫疾患および炎症性疾患が挙げられる。癌疾患としては、例えば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、マントル細胞リンパ腫、濾胞辺縁帯リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、多発性骨髄腫、肝細胞癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、口腔扁平上皮癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫または骨肉腫などが挙げられる。自己免疫疾患または炎症性疾患としては、例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性閉塞肺疾患、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、喘息、アトピー性皮膚炎、炎症性大腸炎、クローン病またはベーチェット病などが挙げられる。
【0119】
本発明の抗体または該抗体断片を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体または該抗体断片のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが好ましい。
【0120】
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内若しくは静脈内などの非経口投与が挙げられ、好ましくは静脈内投与を挙げられる。投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏またはテープ剤などが挙げられる。
【0121】
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢および体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg~10mg/kgである。
【0122】
本発明はヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片を含有する、CCR1の検出若しくは測定用試薬、またはヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片を用いたCCR1の検出若しくは測定方法に関する。本発明においてヒトCCR1を検出または測定する方法としては、任意の公知の方法が挙げられる。例えば、免疫学的検出または測定方法などが挙げられる。
【0123】
免疫学的検出または測定方法とは、標識を施した抗原または抗体を用いて、抗体量または抗原量を検出または測定する方法である。免疫学的検出または測定方法としては、例えば、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、酵素免疫測定法(EIAまたはELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法(luminescent immunoassay)、ウエスタンブロット法または物理化学的手法などが挙げられる。
【0124】
本発明はヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体又は該抗体断片を含む、CCR1関連疾患の診断薬、またはヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体又は該抗体断片を用いてCCR1の検出または測定をすることを含む、CCR1関連疾患の診断方法に関する。本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片を用いて、上記の方法に従いヒトCCR1が発現した細胞を検出または測定することにより、ヒトCCR1が関連する疾患を診断することができる。
【0125】
本発明においてヒトCCR1を検出または測定する対象となる生体試料としては、例えば、組織、細胞、血液、血漿、血清、膵液、尿、糞便、組織液または培養液など、ヒトCCR1又はヒトCCR1が発現している細胞を含む可能性のあるものであれば特に限定されない。
【0126】
本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を含有する診断薬は、目的の診断法に応じて、抗原抗体反応を行なうための試薬、該反応の検出用試薬を含んでもよい。抗原抗体反応を行なうための試薬としては、緩衝剤、塩などが挙げられる。検出用試薬としては、該モノクローナル抗体若しくはその抗体断片を認識する標識された二次抗体、または標識に対応した基質などの通常の免疫学的検出または測定法に用いられる試薬が挙げられる。
【0127】
また、本発明はCCR1関連疾患の治療薬若しくは診断薬の製造のための、抗ヒトCCR1モノクローナル抗体または該抗体断片の使用に関する。
【0128】
以下に、本発明の抗体の製造方法、疾患の治療方法、および疾患の診断方法について、具体的に説明する。
【0129】
1.抗体の製造方法
(1)抗原の調製
抗原となるヒトCCR1またはヒトCCR1発現細胞は、ヒトCCR1全長またはその部分長をコードするcDNAを含む発現ベクターを、大腸菌、酵母、昆虫細胞または動物細胞などに導入することで得ることができる。また、ヒトCCR1は、ヒトCCR1を多量に発現している各種ヒト細胞株、ヒト細胞およびヒト組織などからヒトCCR1を精製することによっても得ることができる。また、これらヒト細胞株、ヒト細胞およびヒト組織などをそのまま抗原として使用することもできる。さらに、Fmoc法またはtBoc法などの化学合成法によりヒトCCR1の部分配列を有する合成ペプチドを調製し、抗原に用いることもできる。ヒトCCR1またはヒトCCR1の部分配列を有する合成ペプチドには、C末端またはN末端にFLAGまたはHisなどの公知のタグが付加されていてもよい。
【0130】
本発明で用いられるヒトCCR1は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)やCurrent Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)などに記載された方法などを用い、例えば以下の方法により、該ヒトCCR1をコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。
【0131】
まず、ヒトCCR1をコードする部分を含む完全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。上記完全長cDNAの代わりに、完全長cDNAをもとにして調製された、ポリペプチドをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を用いてもよい。次に、得られた該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、ポリペプチドを生産する形質転換体を得ることができる。
【0132】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞における自律複製または染色体中への組込みが可能で、ポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置に、適当なプロモーターを含有しているものであればいずれも用いることができる。宿主細胞としては、大腸菌などのエシェリヒア属などに属する微生物、酵母、昆虫細胞または動物細胞など、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。
【0133】
大腸菌などの原核生物を宿主細胞として用いる場合、組換えベクターは、原核生物中で自律複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、ヒトCCR1をコードする部分を含むDNA、および転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。また、該組換えベクターには、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。さらに、該組換えベクターには、プロモーターを制御する遺伝子を含んでいてもよい。
【0134】
該組換えベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ配列(SD配列ともいう)と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6~18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
【0135】
また、該ヒトCCR1をコードするDNAの塩基配列としては、宿主内での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することができ、これにより目的とするヒトCCR1の生産率を向上させることができる。
【0136】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(以上、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、pKK233―2(ファルマシア社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-8(キアゲン社製)、pKYP10(日本国特開昭58-110600号公報)、pKYP200[Agricultural Biological Chemistry, 48, 669 (1984)]、pLSA1[Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)]、pGEL1[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)]、pBluescript II SK(-)(ストラタジーン社製)、pTrs30[大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]、pTrs32[大腸菌JM109/pTrS32(FERM BP-5408)より調製]、pGHA2[大腸菌IGHA2(FERM BP-400)より調製、日本国特開昭60-221091号公報]、pGKA2[大腸菌IGKA2(FERM BP-6798)より調製、日本国特開昭60-221091号公報]、pTerm2(米国特許第4,686,191号明細書、米国特許第4,939,094号明細書、米国特許第160,735号明細書)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J. Bacteriol., 172, 2392 (1990)]、pGEX(ファルマシア社製)、pETシステム(ノバジェン社製)またはpME18SFL3などが挙げられる。
【0137】
プロモーターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターまたはT7プロモーターなどの、大腸菌またはファージなどに由来するプロモーターが挙げられる。また、例えば、Ptrpを2つ直列させたタンデムプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーターまたはlet Iプロモーターなどの人為的に設計改変されたプロモーターなどが挙げられる。
【0138】
宿主細胞としては、例えば、大腸菌XL1-Blue、大腸菌XL2-Blue、大腸菌DH1、大腸菌MC1000、大腸菌KY3276、大腸菌W1485、大腸菌JM109、大腸菌HB101、大腸菌No.49、大腸菌W3110、大腸菌NY49または大腸菌DH5αなどが挙げられる。
【0139】
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、使用する宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)、Molecular & General Genetics, 168, 111 (1979)]が挙げられる。
【0140】
動物細胞を宿主として用いる場合、発現ベクターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pcDNAI、pCDM8(フナコシ社製)、pAGE107[日本国特開平3-22979号公報;Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、pAS3-3(日本国特開平2-227075号公報)、pCDM8[Nature, 329, 840 (1987)]、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社製)、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J. Biochemistry, 101, 1307 (1987)]、pAGE210、pME18SFL3、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、N5KG1val(米国特許第6,001,358号明細書)、INPEP4(Biogen-IDEC社製)およびトランスポゾンベクター(国際公開第2010/143698号)などが挙げられる。
【0141】
プロモーターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のimmediate early(IE)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーターまたはモロニーマウス白血病ウイルスのプロモーター若しくはエンハンサーが挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0142】
宿主細胞としては、例えば、ヒト白血病細胞Namalwa細胞、サル細胞COS細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞CHO細胞[Journal of Experimental Medicine, 108, 945 (1958); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 60 , 1275 (1968); Genetics, 55, 513 (1968); Chromosoma, 41, 129 (1973); Methods in Cell Science, 18, 115 (1996); Radiation Research, 148, 260 (1997); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216 (1980); Proc. Natl. Acad. Sci., 60, 1275 (1968); Cell, 6, 121 (1975); Molecular Cell Genetics, Appendix I, II (pp. 883-900)]、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞(CHO/DG44細胞)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216(1980)]、CHO-K1(ATCC CCL-61)、DUkXB11(ATCC CCL-9096)、Pro-5(ATCC CCL-1781)、CHO-S(Life Technologies、Cat#11619)、Pro-3、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(またはYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NSO、マウスミエローマ細胞SP2/0-Ag14、シリアンハムスター細胞BHKまたはHBT5637(日本国特開昭63-000299号公報)などが挙げられる。
【0143】
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、リン酸カルシウム法(日本国特開平2-227075号公報)またはリポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]、などが挙げられる。
【0144】
以上のようにして得られるヒトCCR1をコードするDNAを組み込んだ組換えベクターを保有する微生物または動物細胞などの由来の形質転換体を培地中で培養し、培養液中に該ヒトCCR1を生成蓄積させ、該培養液から採取することにより、ヒトCCR1を製造することができる。該形質転換体を培地中で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
【0145】
真核生物由来の細胞で発現させた場合には、糖または糖鎖が付加されたヒトCCR1を得ることができる。
【0146】
誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドなどを、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはインドールアクリル酸などを培地に添加してもよい。
【0147】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967)]、EagleのMEM培地[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology, 8, 396 (1959)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1 (1950)]若しくはIscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)培地またはこれら培地に牛胎児血清(FBS)などを添加した培地などが挙げられる。培養は、通常pH6~8、30~40℃、5%CO存在下などの条件下で1~7日間行う。また、培養中に必要に応じて、カナマイシンまたはペニシリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
【0148】
ヒトCCR1をコードする遺伝子の発現方法としては、例えば、直接発現以外に、分泌生産または融合タンパク質発現などの方法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]が挙げられる。
【0149】
ヒトCCR1の生産方法としては、例えば、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、または宿主細胞外膜上に生産させる方法が挙げられ、使用する宿主細胞または生産させるヒトCCR1の構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
【0150】
ヒトCCR1が宿主細胞内又は宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J. Biol. Chem., 264, 17619 (1989)]、ロウらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86, 8227 (1989)、Genes Develop., 4, 1288 (1990)]、日本国特開平05-336963号公報または国際公開第94/23021号などに記載の方法を用いることにより、ヒトCCR1を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。また、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを用いた遺伝子増幅系(日本国特開平2-227075号公報)を利用してヒトCCR1の生産量を上昇させることもできる。
【0151】
得られたヒトCCR1は、例えば、以下のようにして単離、精製することができる。ヒトCCR1が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザーまたはダイノミルなどを用いて細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安などによる塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)-セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学社製)などのレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)などのレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロースなどのレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、または等電点電気泳動などの電気泳動法などの手法を単独または組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0152】
ヒトCCR1が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、上記と同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として該ヒトCCR1の不溶体を回収する。回収した該ヒトCCR1の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該ヒトCCR1を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法によりポリペプチドの精製標品を得ることができる。
【0153】
ヒトCCR1またはその糖修飾体などの誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清において該ヒトCCR1またはその糖修飾体などの誘導体を回収することができる。該培養物を上記と同様に遠心分離などの手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
【0154】
また、本発明において用いられるヒトCCR1は、Fmoc法またはtBoc法などの化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンストケムテック社製、パーキン・エルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジインストルメント社製、シンセセル-ベガ社製、パーセプチブ社製または島津製作所社製などのペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
【0155】
(2)動物の免疫と融合用抗体産生細胞の調製
3~20週令のマウス、ラットまたはハムスターなどの動物に、(1)で得られる抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。また、マウスCCR1ノックアウトマウスを被免疫動物として用いることもできる。
【0156】
免疫は、動物の皮下、静脈内または腹腔内に、例えば、フロインドの完全アジュバント、または水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどの適当なアジュバントとともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)またはKLH(Keyhole Limpet hemocyanin)などのキャリアタンパク質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
【0157】
抗原の投与は、1回目の投与の後、1~2週間おきに5~10回行う。各投与後3~7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を酵素免疫測定法[Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]などを用いて測定する。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示した動物を融合用抗体産生細胞の供給源とする。
【0158】
抗原の最終投与後3~7日目に、免疫した動物より脾臓などの抗体産生細胞を含む組織を摘出し、抗体産生細胞を採取する。脾臓細胞を用いる場合には、脾臓を細断、ほぐした後、遠心分離し、さらに赤血球を除去して融合用抗体産生細胞を取得する。
【0159】
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を用い、例えば、8-アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1(P3-U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology, 18, 1 (1978)]、P3-NS1/1-Ag41(NS-1)[European J. Immunology, 6, 511 (1976)]、SP2/0-Ag14(SP-2)[Nature, 276, 269 (1978)]、P3-X63-Ag8653(653)[J. Immunology, 123, 1548 (1979)]またはP3-X63-Ag8(X63)[Nature, 256, 495 (1975)]などが用いられる。
【0160】
該骨髄腫細胞は、正常培地(グルタミン、2-メルカプトエタノール、ジェンタマイシン、FBS、および8-アザグアニンを加えたRPMI1640培地)で継代し、細胞融合の3~4日前に正常培地に継代し、融合当日2×10個以上の細胞数を確保する。
【0161】
(4)細胞融合とモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
(2)で得られる融合用抗体産生細胞と(3)で得られる骨髄腫細胞をMinimum Essential Medium(MEM)培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、融合用抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5~10:1になるよう混合し、遠心分離した後、上清を除く。沈澱した細胞群をよくほぐした後、ポリエチレングリコール-1000(PEG-1000)、MEM培地およびジメチルスルホキシドの混液を37℃で、攪拌しながら加える。さらに1~2分間毎にMEM培地1~2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにする。遠心分離後、上清を除く。沈澱した細胞群をゆるやかにほぐした後、融合用抗体産生細胞にHAT培地[ヒポキサンチン、チミジン、およびアミノプテリンを加えた正常培地]中にゆるやかに細胞を懸濁する。この懸濁液を5%COインキュベーター中、37℃にて7~14日間培養する。
【0162】
培養後、培養上清の一部を抜き取り、後述のバインディングアッセイなどのハイブリドーマの選択方法により、ヒトCCR1を含む抗原に反応し、ヒトCCR1を含まない抗原に反応しない細胞群を選択する。次に、限界希釈法によりクローニングを行い、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
【0163】
(5)精製モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8~10週令のマウスまたはヌードマウスに、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを腹腔内に注射する。10~21日でハイブリドーマは腹水癌化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離して固形分を除去後、40~50%硫酸アンモニウムで塩析し、カプリル酸沈殿法、DEAE-セファロースカラム、プロテインA-カラムまたはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGまたはIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
【0164】
また、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、10%FBSを添加したRPMI1640培地などで培養した後、遠心分離により上清を除き、Hybridoma SFM培地に懸濁し、3~7日間培養する。得られた細胞懸濁液を遠心分離し、得られた上清よりプロテインA-カラムまたはプロテインG-カラムによる精製を行ない、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得ることもできる。なお、Hybridoma SFM培地には5%ダイゴGF21を添加することもできる。
【0165】
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。タンパク質量の定量は、ローリー法または280nmでの吸光度より算出する。
【0166】
(6)モノクローナル抗体の選択
モノクローナル抗体の選択は以下に示すように、フローサイトメトリーを用いて、ヒトCCR1発現細胞への抗体の結合性を測定することなどにより行う。ヒトCCR1発現細胞は、細胞表面上にヒトCCR1が発現していればいずれの細胞でもよく、例えば、ヒト細胞、ヒト細胞株および(1)で得られるヒトCCR1強制発現細胞株などが挙げられる。
【0167】
ヒトCCR1発現細胞を96ウェルプレートなどのプレートに分注した後、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清又は精製モノクローナル抗体などの被験物質を分注し、反応させる。反応後の細胞を1~10%bovine serum albumin(BSA)を含むPBS(以下、BSA-PBSと記す)などで、よく洗浄した後、第2抗体として蛍光試薬などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。BSA-PBSなどでよく洗浄した後、フローサイトメーターを用いて標識化抗体の蛍光量を測定することにより、ヒトCCR1発現細胞に対して特異的に反応するモノクローナル抗体を選択する。
【0168】
また、本発明の抗体と競合してヒトCCR1に結合する抗体は、上述のフローサイトメトリーを用いた測定系に、被験抗体を添加して反応させることで取得できる。すなわち、被験抗体を加えた時に本発明の抗体とヒトCCR1との結合が阻害される抗体をスクリーニングすることにより、ヒトCCR1のアミノ酸配列、又はその立体構造への結合について、本発明の抗体と競合するモノクローナル抗体を取得することができる。
【0169】
また、本発明のヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体は、上述のスクリーニング方法で取得された抗体のエピトープを公知の方法で同定し、同定したエピトープを含む合成ペプチド、またはエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチド等を作製し、免疫することで取得することができる。
【0170】
更に、本発明のヒトCCR1に結合するモノクローナル抗体が結合するエピトープと、同じエピトープに結合する抗体は、上述のスクリーニング方法で取得された抗体のエピトープを同定し、同定したエピトープの部分的な合成ペプチド、またはエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチド等を作製し、免疫することで、取得することができる。
【0171】
2.遺伝子組換え抗体の作製
遺伝子組換え抗体の作製例として、以下にヒト型キメラ抗体、ヒト型キメラ抗体改変体およびヒト化抗体の作製方法を示す。遺伝子組換えのマウス抗体、ラット抗体およびラビット抗体なども同様の方法で作製することができる。
【0172】
(1)遺伝子組換え抗体発現用ベクターの構築
遺伝子組換え抗体発現用ベクターは、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAが組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAをそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
【0173】
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCHおよびCLを用いることができる。例えば、ヒト抗体のγ1サブクラスのCHおよびκクラスのCLなどを用いる。ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAには、cDNAを用いるが、エキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることもできる。動物細胞用発現ベクターには、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnol., 3, 133 (1990)]、pAGE103[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pHSG274[Gene, 27, 223 (1984)]、pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78, 1527 (1981)]、pSG1bd2-4[Cytotechnol., 4, 173 (1990)]またはpSE1UK1Sed1-3[Cytotechnol., 13, 79 (1993)]などを用いる。動物細胞用発現ベクターのうちプロモーターとエンハンサーには、SV40の初期プロモーター[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスLTR[Biochem. Biophys. Res. Commun., 149, 960 (1987)]または免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell, 41, 479 (1985)]とエンハンサー[Cell, 33, 717 (1983)]などが挙げられる。
【0174】
遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、遺伝子組換え抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点から、抗体H鎖およびL鎖が同一のベクター上に存在するタイプ(タンデム型)の遺伝子組換え抗体発現用ベクター[J.Immunol. Methods, 167, 271(1994)]を用いるが、抗体H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプを用いることもできる。タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、pEE18[Hybridoma, 17, 559 (1998)]などを用いる。
【0175】
(2)ヒト以外の動物由来の抗体のV領域をコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析
非ヒト抗体のVH及びVLをコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析は以下のようにして行うことができる。
【0176】
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞よりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージまたはプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリーを作製する。該ライブラリーより、マウス抗体のC領域部分またはV領域部分をコードするDNAをプローブとして用い、VH若しくはVLをコードするcDNAを有する組換えファージまたは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージまたは組換えプラスミド上の目的とするマウス抗体のVHまたはVLの全塩基配列をそれぞれ決定し、塩基配列よりVHまたはVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定する。
【0177】
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製するヒト以外の動物には、マウス、ラット、ハムスターまたはラビットなどを用いるが、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなる動物も用いることができる。
【0178】
ハイブリドーマ細胞からの全RNAの調製には、チオシアン酸グアニジン-トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Enzymol., 154, 3 (1987)]、またはRNA easy kit(キアゲン社製)などのキットなどを用いる。
【0179】
全RNAからのmRNAの調製には、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]、またはOligo-dT30<Super>mRNA Purification(登録商標)Kit(タカラバイオ社製)などのキットなどを用いる。また、Fast Track mRNA Isolation(登録商標)Kit(インビトロジェン社製)、またはQuickPrep mRNA Purification(登録商標)Kit(ファルマシア社製)などのキットを用いてハイブリドーマ細胞からmRNAを調製することもできる。
【0180】
cDNAの合成およびcDNAライブラリーの作製には、公知の方法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1, John Wiley & Sons (1987-1997)]、またはSuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(インビトロジェン社製)若しくはZAP-cDNA Synthesis(登録商標)Kit(ストラタジーン社製)などのキットなどを用いる。
【0181】
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターには、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express[Strategies, 5, 58 (1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research, 17, 9494 (1989)]、λZAPII(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning:A Practical Approach, I, 49 (1985)]、Lambda BlueMid(クローンテック社製)、λExCell、pT7T3-18U(ファルマシア社製)、pCD2[Mol. Cell. Biol., 3, 280 (1983)]またはpUC18[Gene, 33, 103 (1985)]などを用いる。
【0182】
ファージまたはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌には、該cDNAライブラリーを導入、発現および維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1-Blue MRF’[Strategies, 5, 81 (1992)]、C600[Genetics, 39, 440 (1954)]、Y1088、Y1090[Science, 222, 778 (1983)]、NM522[J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)]、K802[J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)]またはJM105[Gene, 38, 275 (1985)]などを用いる。
【0183】
cDNAライブラリーからの非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAクローンの選択には、アイソトープ若しくは蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法、またはプラーク・ハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]などを用いる。
【0184】
また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNAまたはcDNAライブラリーを鋳型として、Polymerase Chain Reaction法[以下、PCR法と表記する、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition , Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1, John Wiley & Sons (1987-1997)]を行うことよりVHまたはVLをコードするcDNAを調製することもできる。
【0185】
選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(-)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法などにより該cDNAの塩基配列を決定する。塩基配列解析方法には、例えば、ジデオキシ法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977)]などの反応を行った後、ABI PRISM3700(PEバイオシステムズ社製)またはA.L.F.DNAシークエンサー(ファルマシア社製)などの塩基配列自動分析装置などを用いる。
【0186】
決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかをそれぞれ確認する。分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定でき、更にはそれらが属するサブグループを知ることができる。また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することによって見出すことができる。
【0187】
また、得られたVHおよびVLの完全なアミノ酸配列を用いて、例えば、SWISS-PROTまたはPIR-Proteinなどの任意のデータベースに対してBLAST法[J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)]などの相同性検索を行い、VHおよびVLの完全なアミノ酸配列が新規なものかを確認できる。
【0188】
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターまたはヒト型キメラ抗体改変体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、それぞれ非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングすることで、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
【0189】
あるモノクローナル抗体に由来するVHをコードするcDNAと、別のモノクローナル抗体に由来するVLをコードするcDNAを用いることにより、ヒト型キメラ抗体改変体発現ベクターを構築することができる。
【0190】
また、該当cDNAもしくは既に作製したヒト型キメラ抗体発現ベクターをPCRの鋳型として、望ましいアミノ酸改変部位に点変異を導入するようなPCRプライマーを用いて遺伝子断片を増幅し、(1)で得られるベクターにクローニングして連結させることによって、ヒト型キメラ抗体改変体発現ベクターを構築することができる。改変部位が複数個所に及ぶ場合は、人工DNA合成によって作製した遺伝子断片を用いることもできる。
【0191】
非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAの3’末端側と、ヒト抗体のCHまたはCLの5’末端側とを連結するために、連結部分の塩基配列が適切なアミノ酸をコードし、かつ適当な制限酵素認識配列になるように設計したVHおよびVLのcDNAを作製する。作製されたVHおよびVLのcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現する様にそれぞれクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターまたはヒト型キメラ抗体改変体発現ベクターを構築する。
【0192】
また、非ヒト抗体VHまたはVLをコードするcDNAを、適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAを用いてPCR法によりそれぞれ増幅し、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターにクローニングすることもできる。
【0193】
(4)ヒト化抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。
【0194】
非ヒト抗体のVHまたはVLのCDRのアミノ酸配列を移植するための、ヒト抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列をそれぞれ選択する。選択するFRのアミノ酸配列には、ヒト抗体由来のものであれば、いずれのものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のFRのアミノ酸配列、またはヒト抗体のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]などを用いる。抗体の結合活性の低下を抑えるため、元の抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)のFRのアミノ酸配列を選択する。
【0195】
次に、選択したヒト抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列に、もとの抗体のCDRのアミノ酸配列をそれぞれ移植し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をそれぞれ設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列をそれぞれ設計する。
【0196】
設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR反応を行う。この場合、PCR反応での反応効率及び合成可能なDNAの長さから、好ましくはVH、VL各々について各6本の合成DNAを設計する。さらに、両端に位置する合成DNAの5’または3’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターへ容易にクローニングすることができる。
【0197】
PCR反応後、増幅産物をpBluescript SK(-)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにそれぞれクローニングし、(2)に記載の方法と同様の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
【0198】
または、設計したDNA配列に基づき、VH全長およびVL全長を各々1本の長鎖DNAとして合成したものを、上記PCR増幅産物に代えて用いることもできる。さらに、合成長鎖DNAの両端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターへ容易にクローニングすることができる。
【0199】
(5)ヒト化抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト化抗体は、非ヒト抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元の非ヒト抗体に比べて低下する[BIO/TECHNOLOGY, 9, 266 (1991)]。ヒト化抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、および抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらのアミノ酸残基を元の非ヒト抗体のアミノ酸残基に置換することにより、低下した抗原結合活性を上昇させることができる。
【0200】
抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を同定するために、X線結晶解析[J. Mol. Biol., 112, 535 (1977)]またはコンピューターモデリング[Protein Engineering, 7, 1501 (1994)]などを用いることにより、抗体の立体構造の構築および解析を行うことができる。また、それぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討することを繰り返し、試行錯誤することで必要な抗原結合活性を有するヒト化抗体を取得できる。
【0201】
ヒト抗体のVH及びVLのFRのアミノ酸残基は、改変用合成DNAを用いて(4)に記載のPCR反応を行うことにより、改変させることができる。PCR反応後の増幅産物について(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
【0202】
(6)ヒト化抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、構築した遺伝子組換え抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングし、ヒト化抗体発現ベクターを構築することができる。
【0203】
例えば、(4)および(5)で得られるヒト化抗体のVHまたはVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’または3’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにそれぞれクローニングする。
【0204】
また、上述キメラ抗体、ヒト化抗体などの遺伝子組換え抗体を作製する場合に、異なる2種類の抗体由来のH鎖(またはVH)とL鎖(またはVL)とを組み換えた抗体発現用ベクターを作製することで、VL置換キメラ抗体発現用ベクターを構築することができる。
【0205】
(7)遺伝子組換え抗体の一過性発現
(3)および(6)で得られる遺伝子組換え抗体発現ベクター、またはそれらを改変した発現ベクターを用いて遺伝子組換え抗体の一過性発現を行い、作製した多種類のヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体の抗原結合活性を効率的に評価することができる。
【0206】
発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、例えばCOS-7細胞[American Type Culture Collection(ATCC)番号:CRL1651]を用いる[Methods in Nucleic Acids Res., CRC press, 283 (1991)]。
【0207】
COS-7細胞への発現ベクターの導入には、DEAE-デキストラン法[Methods in Nucleic Acids Res., CRC press (1991)]、またはリポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]などを用いる。
【0208】
発現ベクターの導入後、培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性は酵素免疫抗体法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを用いて測定する。
【0209】
(8)遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株の取得と遺伝子組換え抗体の調製
(3)および(6)で得られた遺伝子組換え抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株を得ることができる。
宿主細胞への発現ベクターの導入には、エレクトロポレーション法[日本国特開平2-257891号公報、Cytotechnology, 3, 133 (1990)]などを用いる。
【0210】
遺伝子組換え抗体発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、CHO-K1(ATCC CCL-61)、DUKXB11(ATCC CCL-9096)、Pro-5(ATCC CCL-1781)、CHO-S(Life Technologies、Cat#11619)、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(ATCC番号:CRL1662、またはYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NS0、マウスミエローマ細胞SP2/0-Ag14(ATCC番号:CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC番号:CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(Dihydroforate Reductase、以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞(CHO/DG44細胞)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216 (1980)]などを用いる。
【0211】
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素などのタンパク質、N-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素などのタンパク質若しくは細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースのゴルジ体への輸送に関与するタンパク質などの活性が低下または欠失した宿主細胞、例えばα1,6-フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)、レクチン耐性を獲得したLec13[Somatic Cell and Molecular genetics, 12, 55 (1986)]などを用いることもできる。
【0212】
発現ベクターの導入後、遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株は、G418硫酸塩(以下、G418と表記する)などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択する(日本国特開平2-257891号公報)。
【0213】
動物細胞培養用培地には、RPMI1640培地(インビトロジェン社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX-CELL301培地(ジェイアールエイチ社製)、IMDM培地(インビトロジェン社製)若しくはHybridoma-SFM培地(インビトロジェン社製)、またはこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いる。得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中に遺伝子組換え抗体を発現蓄積させる。培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性はELISA法などにより測定できる。また、dhfr遺伝子増幅系(日本国特開平2-257891号公報)などを利用して、形質転換株の産生する遺伝子組換え抗体の発現量を向上させることができる。
【0214】
遺伝子組換え抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインA-カラムを用いて精製する[Monoclonal Antibodies - Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]。また、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過などのタンパク質の精製で用いられる方法を組み合わすこともできる。
【0215】
精製した遺伝子組換え抗体のH鎖、L鎖或いは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法[Nature, 227, 680 (1970)]、またはウェスタンブロッティング法[Monoclonal Antibodies - Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]など用いて測定することができる。
【0216】
3.精製モノクローナル抗体またはその抗体断片の活性評価
精製した本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片の活性評価は、以下のように行うことができる。
【0217】
本発明の抗体または該抗体断片のヒトCCR1に対する結合活性は、前述の1-(6)記載のフローサイトメトリーを用いて測定する。また、蛍光抗体法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373 (1993)]などを用いて測定できる。
【0218】
本発明の抗体または該抗体断片のヒトCCL15によるヒトCCR1発現細胞の遊走を阻害する活性は、上述のケモタキシスアッセイを用いて測定することができる。
【0219】
ヒトCCR1発現細胞に対するCDC活性、又はADCC活性は公知の測定方法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373(1993); Current protocols in Immunology, Chapter7. Immunologic studies in humans, Editor, John E, Coligan et al., John Wiley & Sons,Inc.,(1993)]により測定することができる。
【0220】
4.抗体のエフェクター活性を制御する方法
本発明のモノクローナル抗体のエフェクター活性を制御する方法としては、抗体のFc領域の297番目のアスパラギン(Asn)に結合するN結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)にα1,6結合するフコース(コアフコースともいう)の量を制御する方法(国際公開第2005/035586号、国際公開第2002/31140号、国際公開第00/61739号)、又は抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することで制御する方法などが知られている。本発明のモノクローナル抗体にはいずれの方法を用いても、エフェクター活性を制御することができる。
【0221】
エフェクター活性とは、抗体のFc領域を介して引き起こされる抗体依存性の活性をいい、ADCC活性、CDC活性、又はマクロファージ若しくは樹状細胞などの食細胞による抗体依存性ファゴサイトーシス(Antibody-dependent phagocytosis、ADP活性)などが知られている。
【0222】
エフェクター活性の測定法として、例えば、標的として炎症性細胞、エフェクターとしてヒト末梢血単核球(PBMC)、そして炎症性細胞特異的な抗体を混合し、4時間程度インキュベーションした後、細胞傷害の指標として遊離してきた乳酸脱水素酵素(LDH)を測定することができる。若しくは、ヒト全血に、例えばCD20の様な血液細胞特異的な抗原を認識する抗体を添加し、インキュベーションした後、標的となる血液細胞数の減少をエフェクター活性として測定することができる。または、例えば、ヒト全血に別の標的細胞を混合し、さらに標的細胞に特異的な抗体を添加しインキュベーションした後、標的細胞数の減少をエフェクター活性として測定することができる。いずれの場合においてもエフェクター活性は、遊離LDH法、遊離51Cr法またはフローサイトメトリー法などによって測定することができる。
【0223】
抗体のFcのN結合複合型糖鎖のコアフコースの含量を制御することで、抗体のエフェクター活性を増加又は低下させることができる。抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を低下させる方法としては、α1,6-フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞を用いて抗体を発現することで、フコースが結合していない抗体を取得することができる。フコースが結合していない抗体は高いADCC活性を有する。
【0224】
一方、抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を増加させる方法としては、α1,6-フコース転移酵素遺伝子を導入した宿主細胞を用いて抗体を発現させることで、フコースが結合している抗体を取得できる。フコースが結合している抗体は、フコースが結合していない抗体よりも低いADCC活性を有する。
【0225】
また、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することでADCC活性又はCDC活性を増加又は低下させることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0148165号明細書に記載のFc領域のアミノ酸配列を用いることで、抗体のCDC活性を増加させることができる。
【0226】
また、米国特許第6,737,056号明細書、米国特許第7,297,775号明細書又は米国特許第7,317,091号明細書に記載のアミノ酸改変を行うことで、ADCC活性又はCDC活性を、増加させることも低下させることもできる。また本発明の抗体には、上述の抗体定常領域におけるアミノ酸改変または糖鎖改変に合わせて、例えば、日本国特開第2013-165716号公報または日本国特開第2012-021004号公報などに記載のアミノ酸改変を行うことにより、Fc受容体への反応性を制御することで血中半減期を制御した抗体も含まれる。
【0227】
さらに、上述の方法を組み合わせて、一つの抗体に使用することにより、抗体のエフェクター活性や血中半減期が制御された抗体を取得することができる。
【0228】
5.本発明の抗ヒトCCR1モノクローナル抗体またはその抗体断片を用いた疾患の治療方法
本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片は、ヒトCCR1依存的な細胞遊走、病変などCCR1が関連する疾患であれば、いずれのヒトCCR1関連疾患の治療に用いることができる。
【0229】
本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体または該抗体断片のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の方法により製造した医薬製剤として提供される。
【0230】
投与経路としては、例えば、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内若しくは静脈内などの非経口投与が挙げられる。投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏またはテープ剤などが挙げられる。
【0231】
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤または顆粒剤などが挙げられる。
【0232】
乳剤またはシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール若しくは果糖などの糖類、ポリエチレングリコール若しくはプロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油若しくは大豆油などの油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤またはストロベリーフレーバー若しくはペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造する。
【0233】
カプセル剤、錠剤、散剤または顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖若しくはマンニトールなどの賦形剤、デンプン若しくはアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム若しくはタルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース若しくはゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤またはグリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造する。
【0234】
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤または噴霧剤などである。注射剤は、塩溶液若しくはブドウ糖溶液、またはその両者の混合物からなる担体などを用いて製造する。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて製造する。
【0235】
噴霧剤は受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせる担体などを用いて製造する。担体としては、例えば乳糖またはグリセリンなどを用いる。また、エアロゾルまたはドライパウダーとして製造することもできる。さらに、上記非経口剤においても、経口投与に適当な製剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
【0236】
6.本発明の抗ヒトCCR1モノクローナル抗体またはその抗体断片を用いた疾患の診断方法
本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片を用いて、ヒトCCR1またはヒトCCR1が発現した細胞を検出または測定することにより、ヒトCCR1関連疾患を診断することができる。
【0237】
ヒトCCR1関連疾患である癌疾患、自己免疫性疾患および炎症性疾患の診断は、例えば患者体内に存在するヒトCCR1を免疫学的手法により検出または測定して行うことができる。また、患者体内の細胞に発現しているヒトCCR1をフローサイトメトリーなどの免疫学的手法を用いて検出することにより診断を行うことができる。
【0238】
免疫学的手法とは、標識を施した抗原または抗体を用いて、抗体量または抗原量を検出または測定する方法である。例えば、放射性物質標識免疫抗体法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法、ウエスタンブロット法または物理化学的手法などを用いる。
【0239】
放射性物質標識免疫抗体法は、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体または該抗体断片を反応させ、さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体または該抗体断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する。
【0240】
酵素免疫測定法は、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体または該抗体断片を反応させ、さらに酵素などで標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、基質を添加して反応液の吸光度を吸光光度計で測定する。例えばサンドイッチELISA法などを用いる。酵素免疫測定法で用いる標識体としては、公知[酵素免疫測定法、医学書院(1987)]の酵素標識を用いることができる。
【0241】
例えば、アルカリフォスファターゼ標識、ペルオキシダーゼ標識、ルシフェラーゼ標識またはビオチン標識などを用いる。サンドイッチELISA法は、固相に抗体を結合させた後、検出または測定対象である抗原をトラップさせ、トラップされた抗原に第2の抗体を反応させる方法である。該ELISA法では、検出または測定したい抗原を認識する抗体または抗体断片であって、抗原認識部位の異なる2種類の抗体を準備し、そのうち、第1の抗体または抗体断片を予めプレート(例えば、96ウェルプレート)に吸着させ、次に第2の抗体または抗体断片をFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素またはビオチンなどで標識しておく。上記の抗体が吸着したプレートに、生体内から分離された、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清、胸水、腹水または眼液などを反応させた後、標識したモノクローナル抗体または抗体断片を反応させ、標識物質に応じた検出反応を行う。濃度既知の抗原を段階的に希釈して作成した検量線より、被験サンプル中の抗原濃度を算出する。サンドイッチELISA法に用いる抗体としては、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれを用いてもよく、Fab、Fab’またはF(ab)などの抗体フラグメントを用いてもよい。サンドイッチELISA法で用いる2種類の抗体の組み合わせとしては、異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体または抗体断片の組み合わせでもよいし、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体または抗体断片との組み合わせでもよい。
【0242】
蛍光免疫測定法は、文献[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition,Academic Press (1996)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック (1987)]などに記載された方法で測定する。蛍光免疫測定法で用いる標識体としては、公知[蛍光抗体法、ソフトサイエンス社(1983)]の蛍光標識を用いることができる。例えば、FITCまたはRITCなどを用いる。
【0243】
発光免疫測定法は文献[生物発光と化学発光 臨床検査42、廣川書店(1998)]などに記載された方法で測定する。発光免疫測定法で用いる標識体としては、公知の発光体標識が挙げられ、アクリジニウムエステルまたはロフィンなどを用いる。
【0244】
ウエスタンブロット法は、抗原または抗原を発現した細胞などをSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)-PAGE(ポリアクリルアミドゲル)[Antibodies - A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]で分画した後、該ゲルをポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜またはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に抗原を認識する抗体または抗体断片を反応させ、さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素標識またはビオチン標識などを施した抗マウスIgG抗体または結合断片を反応させた後、該標識を可視化することによって測定する。
【0245】
一例を以下に示す。配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現している細胞や組織を溶解し、還元条件下でレーンあたりのタンパク量として0.1~30μgをSDS-PAGE法により泳動する。泳動されたタンパク質をPVDF膜にトランスファーし1~10%BSAを含むPBS(以下、BSA-PBSと表記する)に室温で30分間反応させブロッキング操作を行う。ここで本発明のモノクローナル抗体を反応させ、0.05~0.1%のTween-20を含むPBS(以下、Tween-PBSと表記する)で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスIgGを室温で2時間反応させる。Tween-PBSで洗浄し、ECL Western Blotting Detection Reagents(アマシャム社製)などを用いてモノクローナル抗体が結合したバンドを検出することにより、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドを検出する。ウェスタンブロッティングでの検出に用いられる抗体としては、天然型の立体構造を保持していないポリペプチドに結合できる抗体が用いられる。
【0246】
物理化学的手法は、例えば、抗原であるヒトCCR1と本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片とを結合させることにより凝集体を形成させて、この凝集体を検出することにより行う。この他に物理化学的手法として、毛細管法、一次元免疫拡散法、免疫比濁法またはラテックス免疫比濁法[臨床検査法提要、金原出版(1998)]などを用いることもできる。ラテックス免疫比濁法は、抗体または抗原を感作させた粒径0.1~1μm程度のポリスチレンラテックスなどの担体を用い、対応する抗原または抗体により抗原抗体反応を起こさせると、反応液中の散乱光は増加し、透過光は減少する。この変化を吸光度または積分球濁度として検出することにより被験サンプル中の抗原濃度などを測定する。
【0247】
ヒトCCR1が発現している細胞の検出または測定は、公知の免疫学的検出法を用いることができるが、中でも、免疫沈降法、免疫細胞染色法、免疫組織染色法または蛍光抗体染色法などを用いることが好ましい。
【0248】
免疫沈降法は、ヒトCCR1を発現した細胞などを本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片と反応させた後、プロテインG-セファロースなどのイムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させる。または以下のような方法によっても行うことができる。ELISA用96ウェルプレートに上述した本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片を固相化した後、BSA-PBSによりブロッキングする。抗体が、例えばハイブリドーマ培養上清などの精製されていない状態である場合には、抗マウスイムノグロブリン、抗ラットイムノグロブリン、プロテイン-Aまたはプロテイン-GなどをあらかじめELISA用96ウェルプレートに固相化し、BSA-PBSでブロッキングした後、ハイブリドーマ培養上清を分注して結合させる。次に、BSA-PBSを捨てPBSでよく洗浄した後、ヒトCCR1を発現している細胞や組織の溶解液を反応させる。よく洗浄した後のプレートより免疫沈降物をSDS-PAGE用サンプルバッファーで抽出し、上記のウェスタンブロッティングにより検出する。
【0249】
免疫細胞染色法または免疫組織染色法は、抗原を発現した細胞または組織などを、場合によっては抗体の通過性を良くするため界面活性剤やメタノールなどで処理した後、本発明のモノクローナル抗体と反応させ、さらにFITCなどの蛍光標識、ペルオキシダーゼなどの酵素標識またはビオチン標識などを施した抗イムノグロブリン抗体またはその結合断片と反応させた後、該標識を可視化し、顕微鏡にて顕鏡する方法である。また、蛍光標識の抗体と細胞を反応させ、フロ-サイトメーターにて解析する蛍光抗体染色法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition,Academic Press (1996)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック (1987)]により検出を行うことができる。特に、ヒトCCR1に結合する、本発明のモノクローナル抗体またはその抗体断片は、蛍光抗体染色法により天然型の立体構造を保持して発現している細胞の検出ができる。
【0250】
また、蛍光抗体染色法のうち、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などを用いた場合には、形成された抗体-抗原複合体と、抗体-抗原複合体の形成に関与していない遊離の抗体または抗原とを分離することなく、抗原量または抗体量を測定できる。
【0251】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0252】
[実施例1]ヒト、マウスCCR1の発現ベクターの作製
(1)各CCR1遺伝子の作製
下記、1~7のヒトまたはマウスのCCR1若しくはCCR1-CCR3キメラ受容体をコードするDNAを合成した(ジェンスクリプトジャパン社)。合成の際には各ベクターに組み込むための制限酵素サイト(BamHIおよびNotI)と、Kozak配列を付加した。
1.ヒトCCR1(以下、hCCR1)をコードするcDNA配列(配列番号1)
2.マウスCCR1(以下、mCCR1)をコードするcDNA配列(配列番号3)
3.ヒトCCR3(以下、hCCR3)をコードするcDNA配列(配列番号5)
4.ヒトCCR1の1番目から31番目のアミノ酸配列をヒトCCR3の対応するN末端のアミノ酸配列に置換したキメラ受容体(以下、NC3-hCCR1)をコードするcDNA配列(配列番号6)
5.マウスCCR1の1番目から31番目のアミノ酸配列をヒトCCR3の対応するN末端のアミノ酸配列に置換したキメラ受容体(以下、NC3-mCCR1)をコードするcDNA配列(配列番号7)
6.ヒトCCR3の171番目から194番目のアミノ酸配列をヒトCCR1の171番目から194番目のアミノ酸配列に置換したキメラ受容体(以下、hCCR3_EL2hCCR1)をコードするcDNA配列(配列番号8)
7.ヒトCCR3の171番目から194番目のアミノ酸配列をマウスCCR1の171番目から194番目のアミノ酸配列に置換したキメラ受容体(以下、hCCR3_EL2mCCR1)をコードするcDNA配列(配列番号9)
【0253】
(2)ヒトCCR1発現ベクターの作製
上記(1)-1で合成したhCCR1をコードするDNAを制限酵素BamHIおよびNotI(New England Biolab社)で処理し、DNA断片を精製した。Tol2トランスポゾンベクター(国際公開第2010/143698号)(以下、Tn-pMug-Hygroと記載する)を同制限酵素で処理し、CCR1をコードするDNA断片と混ぜたうえで、DNA ligase(タカラバイオ社)処理によって連結した。ライゲーション後のDNAを大腸菌コンピテントセル(タカラバイオ社)に導入し、薬剤耐性を獲得したコロニーの中から目的のプラスミドDNAを持つ大腸菌株を選択した。この大腸菌株を再度培養し、培養液からトランスフェクション用のDNAを精製した。(以下、このように作製したプラスミドをhCCR1/Tn-pMug-Hygroと表わす。)
【0254】
(3)各種CCR発現ベクターの作製
上記(2)と同様の方法で、上記(1)で合成したmCCR1、hCCR3、NC3-hCCR1、NC3-mCCR1、hCCR3_EL2hCCR1、hCCR3_EL2mCCR1をTn-pMug-Hygroに連結させ、発現ベクターを構築した。(以下、それぞれmCCR1/Tn-pMug-Hygro、hCCR3/Tn-pMug-Hygro、NC3-hCCR1/Tn-pMug-Hygro、NC3-mCCR1/Tn-pMug-Hygro、hCCR3_EL2hCCR1/Tn-pMug-Hygro、hCCR3_EL2mCCR1/Tn-pMug-Hygroと表わす。)
【0255】
(4)mCCR1発現ベクターの作製
上記(2)と同様の方法で、上記(1)で合成したmCCR1をコードするDNAを、pCAGGS[Gene. 1991 Dec 15;108(2):193-9.]にinternal ribosomal entry site(IRES)とネオマイシン耐性遺伝子が付加されたベクターであるpCAG-IRES-neoに連結させ、発現ベクターを構築した。(以下、mCCR1/pCAG-IRES-neoと表わす。)
【0256】
[実施例2]CCR1発現細胞株の作製
(1)hCCR1発現細胞の作製
実施例1で作製したプラスミドDNAであるhCCR1/Tn-pMug-HygroとTol2 transposase発現ベクターTPEX_pMug(国際公開第2013/005649号)をCHO-S(Thermo Fisher Scientific社)に共導入し、発現細胞株を作製した。遺伝子導入はFugene HD(プロメガ社)を用いて下記のように行った。1×10細胞/mLに調製した細胞を6ウェルプレートに2.5mLずつ播種し、24時間後に、hCCR1/Tn-pMug-Hygro、TPEX_pMug、Fugene HDの混合物を培養液に添加した。添加後72時間後に1mg/mLのハイグロマイシン(Invitrogen社)を添加し、約2週間の薬剤選択を行った。薬剤耐性を獲得した細胞を回収し、フローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Biosciences社)による発現解析を行ったところ、導入したhCCR1の発現が確認された。この細胞株をCHO-S-hCCR1と表わす。
【0257】
(2)各種CCR発現細胞の作製
実施例1で作製したmCCR1/Tn-pMug-Hygro、hCCR3/Tn-pMug-Hygro、NC3-hCCR1/Tn-pMug-Hygro、NC3-mCCR1/Tn-pMug-Hygro、hCCR3_EL2hCCR1/Tn-pMug-HygroおよびhCCR3_EL2mCCR1/Tn-pMug-Hygroについて、上記(1)と同様の方法でCHO-S細胞に導入し、発現細胞株を作製した。以下、これらの細胞株をそれぞれCHO-S-mCCR1、CHO-S-hCCR3、CHO-S-NC3-hCCR1、CHO-S-NC3-mCCR1、CHO-S-hCCR3_EL2hCCR1およびCHO-S-hCCR3_EL2mCCR1と表わす。
【0258】
(3)RL33-hCCR1細胞の作製
実施例1で作製したhCCR1/Tn-pMug-HygroとTol2 transposase発現ベクターTPEX_pMug(国際公開第2013/005649号)をウサギ細胞株RL-33[Yoshii et al., Jpn J Med Sci Biol. 1977 Jun;30(3):149-57]に共導入し、hCCR1発現細胞株を作製した。遺伝子導入はLipofectamine LTX(Thermo Fisher Scientific社)を使用し、以下のように行った。1×10細胞/mLに調製した細胞を6ウェルプレートに2mLずつ播種し、2.5μgのプラスミドDNA、5μLのLipofectamine LTXの混合物を培地中に添加した。添加後72時間後に1mg/mLのハイグロマイシンを添加し、約2週間の薬剤選択を行った。薬剤耐性を獲得した細胞を回収し、フローサイトメトリーによる発現解析を行ったところ、導入したhCCR1の発現が確認された。以下、この細胞株をRL33-hCCR1と表わす。
【0259】
(4)RL33-mCCR1細胞の作製
実施例1(4)で作製したmCCR1/pCAG-IRES-neoを上記(3)と同様の方法でRL-33に導入し、発現細胞株を作製した。薬剤選択は0.5mg/mLのG418で行った。以下、この細胞株をRL33-mCCR1と表わす。
【0260】
[実施例3]抗CCR1ウサギポリクローナル抗体の作製
以下の方法で抗CCR1ウサギポリクローナル抗体を作製した。ヒトCCR1のN末端ペプチド(配列番号10)を合成し、2匹のウサギ(New Zealand White)を2週おきに5回免疫した。免疫は、初回のみComplete Freund’s Adjuvant(CFA)を用い、二回目以降はIncomplete Freund’s Adjuvant(IFA)を使用し、背部の複数個所に皮下注入で行った。免疫後に抗体価の上昇した個体から血清を採取し、Protein Aカラム(GE Healthcare社)によるアフィニティ精製でIgGを精製した。このようにして作製した抗CCR1ウサギポリクローナル抗体はE5971と表わす。
【0261】
[実施例4]フローサイトメトリーによる発現解析
(1)CCR1発現の確認
実施例2で作製したCCR1発現細胞株について、実施例3で作製した抗CCR1ウサギポリクローナル抗体E5971を用いて染色し、フローサイトメトリー(FCM)でCCR1の発現を確認した。FCM解析は以下のように行った。細胞を96ウェルプレートに2×10細胞/ウェルで播種し、染色バッファー[3%FBS(Thermo Fisher Scientific社)/DPBS(ナカライテスク社)/0.1%アジ化ナトリウム(ナカライテスク社)]で洗浄した。該細胞を10μg/mLのE5971によって1時間氷上で処理し、染色バッファーによる洗浄後、二次抗体Alexa Fluor 647 goat Anti-Rabbit IgG(Thermo Fisher Scientific社製)を終濃度1μg/mLで添加し、室温にて30分間処理した。該細胞について、再度染色バッファーによる洗浄を行った後に、染色バッファーにて懸濁し、BD FACSCalibur(BD Biosciences社)を用いて解析を行った。これにより、作製したCCR1発現細胞株について、導入したCCR1が発現していることを確認できた。
【0262】
(2)CCR3発現の確認
実施例2で作製したCHO-S-hCCR3についても、上記(1)と同様の方法でCCR3の発現を確認した。一次抗体には、市販の抗CCR3抗体である444-11抗体(MBL社)を、二次抗体にはAlexa Fluor 647 goat Anti-mouseIgG(H+L)(Thermo Fisher Scientific社)を使用した。これにより、CHO-S-hCCR3で導入したCCR3が発現していることを確認できた。
【0263】
[実施例5]CCR1ノックアウトマウスを用いたモノクローナル抗体の作製
マウス交差性抗体を得るため、市販のCCR1ノックアウト(KO)マウス(B6.129S4-Ccr1tm1Gao N10+N5)(Taconic社)を用いてモノクローナル抗体を作製した。抗体作製は以下の手順で行った。
【0264】
(1)免疫感作
免疫原として、実施例2で作製したCHO-S-hCCR1、CHO-S-mCCR1、RL33-hCCR1、およびRL33-mCCR1を用いた。一回の免疫あたり1×10細胞/匹を用いた。5~9週齢のCCR1 KO マウスに、初回免疫時のみアジュバントとしてAlumゲル(エル・エス・エル社)(80μL/匹)及び百日咳ワクチン(ナカライテスク社)(1×10細胞/匹)を加え腹腔内投与により免疫感作を行った。いずれの免疫も投与量が500μL/匹になるようにPBSで調製した。初回免疫2週間後に2回目、さらに1週間後に3回目の免疫を行い、3日後に部分採血を行った。
【0265】
(2)抗血清評価(FCM)
実施例2で作製した各種CCR1発現細胞を用いて、血清中の特異的抗体価をFCMで測定した。測定は以下の手順で行った。細胞をそれぞれ1×10細胞/ウェルになるように、1%BSA(ナカライテスク社)-PBS(ナカライテスク社)[0.02%EDTA(ナカライテスク社)、0.05%NaN(ナカライテスク社)を含む]で調製し、96ウェル細胞培養用プレートU底に50μL/ウェルで分注した。そこへ被験サンプルとして被免疫動物から採取した血清を、終濃度200倍希釈、1000倍希釈、及び5000倍希釈になるように1%BSA-PBS(0.02%EDTA、0.05%NaN)で調製し50μL/ウェルで分注し、4℃で30分間放置した。遠心分離(2000rpm、2分間)した後に上清を吸引し、プレートシェーカーで細胞のペレットを解した。1%BSA-PBS(0.02%EDTA、0.05%NaN)を200μL/ウェルで分注し、再度遠心分離(2000rpm、2分間)した後に上清を吸引し、プレートシェーカーで細胞のペレットを解した。そこへAlexa Fluor647 goat anti-mouse IgG(H+L)、若しくはAlexa Fluor488 goat anti-mouse IgG(H+L)を最終的に300倍希釈になるように1%BSA-PBS(0.02%EDTA、0.05%NaN)で調製し、50μL/ウェルで分注し遮光下4℃で30分間放置した。遠心分離(2000rpm、2分間)した後に上清を吸引し、プレートシェーカーで細胞のペレットを解した。1%BSA-PBS(0.02%EDTA、0.05%NaN)を200μL/ウェルで分注し、再度遠心分離(2000rpm、2分間)した後に上清を吸引し、プレートシェーカーで細胞のペレットを解した。そこへ1%BSA-PBS(0.02%EDTA、0.05%NaN)を50μL/ウェルで分注し、フローサイトメーター[FACSCanto(商標)II/BD]で蛍光強度を測定した。これにより、抗体価の上昇が確認された個体を選択し、脾臓を摘出した。
【0266】
(3)細胞融合によるハイブリドーマ作製
マウスミエローマ細胞株 P3-U1(P3X63Ag8U.1、ATCC CRL-1597)をエスクロンクローニングメディウム(エーディア社)で培養して無血清馴化したのち、細胞融合の親株として用いた。被免疫動物の脾臓を無菌的に採取しRED BLOOD CELL LYSING BUFFER(Sigma-Aldrich社)で溶血後、PBSで2回洗浄し、脾細胞とP3-U1の細胞数が、脾臓細胞:P3-U1=8:1になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した。得られた沈澱画分の細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら37℃にて1gのポリエチレングリコール-1000(PEG-1000、純正化学社)、1mLのMEM培地(ナカライテスク社)および0.35mLのジメチルスルホキシド(Sigma-Aldrich社)の混液を0.5mL加え、そこに1分間毎に1mLのMEM培地を5回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにした。細胞懸濁液を遠心分離(900rpm、5分間)し、得られた沈澱画分の細胞をゆるやかにほぐした後、HAT SUPPLEMENT(Thermo Fisher Scientific社)を添加したエスクロンクローニングメディウムで脾臓細胞1.5×10細胞/9mLの細胞濃度に懸濁した。事前に96ウェル培養用プレートにはHAT添加クローニングメディウムを100μL/ウェルで分注しておき、そこへ細胞懸濁液を100μL/ウェルずつ分注し、COインキュベーター(5%CO、37℃)で8~10日間培養した。
【0267】
(4)ハイブリドーマのスクリーニング
ハイブリドーマ培養上清に含まれる抗体のCCR1への結合活性をFCMで評価した。被験サンプルにはハイブリドーマ培養上清を使用し、染色と測定は上記(2)と同様の手順で実施した。
【0268】
(5)ハイブリドーマのサブクローニング
スクリーニングで陽性であったウェルの細胞についてサブクローニングを行い、クローニングメディウム中で7~10日ほど培養した。
【0269】
(6)抗体サブクラスの決定
サブクラス特異的な二次抗体を用いたFCMで各抗体のサブクラスを決定した。染色、測定の手順は上記(2)と同様に行った。被験サンプルにはハイブリドーマ培養上清を使用した。検出抗体にはAlexa Fluor488 goat anti-mouse IgG(H+L)(Thermo Fisher Scientific社)及び、各サブクラス特異的な抗体(Alexa Fluor488 goat anti-mouse IgG1(Thermo Fisher Scientific社)、Alexa Fluor488 goat anti-mouse IgG2a(Thermo Fisher Scientific社)、 Alexa Fluor488 goat anti-mouse IgG2b(Thermo Fisher Scientific社)、Alexa Fluor488 goat anti-mouse IgG3)(Thermo Fisher Scientific社)を使用した。
【0270】
(7)ハイブリドーマ培養上清からの抗体精製
上記のようにクローニングしたハイブリドーマの培養上清から抗体を精製した。精製はProtein G Sepharose 4Fast Flow(GE Healthcare社)を使用した。培養上清を遠心分離して沈殿物を除き、フィルターでろ過した。カラムに400μLの担体を充填し、DPBSでバッファーを置換した。培養上清を添加し、単体に抗体を吸着させた後に、10mLのDPBSで2回洗浄した。0.4mLのIgG Elution Buffer(Thermo Fisher Scientific社)を添加して溶出し、直後に0.1mLの1M Tris-HCl(ニッポンジーン社)pH8.6にて中和した。NAPカラム(GE Healthcare社)を用いて脱塩とDPBSへのバッファー置換を行い、以降の解析に使用した。作製された抗体のクローン名、由来、およびサブクラスを表1に示す。
【0271】
【表1】
【0272】
[実施例6]THP-1遊走(ケモタキシス)アッセイ
CCR1を発現するヒト細胞株としてはヒト単球性白血病細胞株THP-1が知られている。本細胞はCCL3、CCL5、CCL15またはCCL23等のCCR1リガンドの濃度勾配に対して走化性を示すことが知られており、THP-1を用いた遊走アッセイはCCR1阻害剤の評価系として汎用される系である。よって、実施例5で得られた抗ヒトCCR1抗体についても、この実験系を用いてヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害するか否かを評価した。
【0273】
遊走アッセイの方法を以下に記す。THP-1細胞はATCCより入手した。THP-1細胞を5μM All-trans-retinoic acid(ATRA)(和光純薬工業社)存在下で3日間培養し分化誘導した上で回収し、37℃で加温したアッセイ培地[1%FBS(Thermo Fisher Scientific社)/RPMI1640(ナカライテスク社)]にて洗浄後、同培地に再懸濁した。1×10細胞/mLに調製し、ポアサイズ5μmのTranswell(Corning社、#3421)の上層に100μL/ウェルで細胞を分注した。下層にはケモアトラクタントとして、1ng/mLの組換えヒトCCL15(68aa)(R&D technologies社、#628-LK)を添加したアッセイ培地を入れ、37℃にて5%COインキュベーター内で4-6時間培養した後に、下層に移動した細胞数をCelltiter-Glo(プロメガ社)で定量した。
【0274】
本測定系を用いて精製抗体の細胞遊走を評価する際には、予め1.5mLチューブ内で90μLの細胞懸濁液と10μLの精製抗体溶液を混合し、37℃にて1時間インキュベートした上で、細胞をTrasnwellの上層に分注した。抗体は、終濃度を0.3、1、3および10μg/mLに調整し、測定に使用した。
【0275】
得られた結果を図1(a)および図1(b)に示す。図1(a)および図1(b)に示すように、実施例5で得られたマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体KM5907抗体、KM5908抗体、KM5909抗体、KM5911抗体、KM5915抗体、KM5916抗体、KM5954抗体、KM5955抗体およびKM5956抗体は、いずれも活性化CCL15により誘導されるTHP-1の遊走を濃度依存的に阻害した。
【0276】
以上より、本発明のマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体は、いずれもヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害する抗体であることが明らかになった。
【0277】
[実施例7]抗ヒトCCR1抗体のヒトCCR1結合領域の決定
実施例5で得られたマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体のヒトCCR1の結合領域を、CCR1-CCR3キメラ受容体発現細胞を用いてFCMで調べた。測定は実施例4と同様の方法で行った。
【0278】
CCR1-CCR3キメラ受容体発現細胞として、実施例2で作製したCHO-S-hCCR3、CHO-S-NC3-hCCR1、CHO-S-NC3-mCCR1、およびCHO-S-hCCR3_EL2hCCR1を使用した。また、ネガティブコントロールとしてCHO-Sを使用した。
【0279】
被験抗体としては、10倍希釈した各ハイブリドーマ培養上清、既存のマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体 53504抗体(R&D Technologies社)およびマウス抗ヒトCCR3モノクローナル抗体 444-11抗体(MBL社)を使用した。
【0280】
測定結果について、ある細胞を、ある被験抗体(各ハイブリドーマ培養上清、53504抗体または444-11抗体)および二次抗体で染色した時の蛍光強度を、該細胞を二次抗体のみで染色した時の蛍光強度で除した。得られた数値が10以上の時は、該被験抗体は該細胞に結合すると判定し、10未満の時は、該被験抗体は該細胞に結合しないと判定し、表2中にそれぞれ○、×で示した。
【0281】
【表2】
【0282】
表2より、マウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体KM5907抗体、KM5908抗体、KM5909抗体、KM5911抗体、KM5915抗体、KM5916抗体、KM5954抗体、KM5955抗体およびKM5956抗体は、いずれもCHO-S-hCCR3には結合せず、CHO-NC3-hCCR1およびCHO-S-hCCR3_EL2hCCR1の両方に結合した。したがって本発明のマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体はいずれもヒトCCR1の細胞外ループ2に結合することが明らかとなった。
【0283】
[実施例8]既存の抗ヒトCCR1抗体と抗ヒトCCR1抗体を用いたケモタキシスアッセイ
(1)既存のマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体2D4抗体の調製
既存の抗ヒトCCR1抗体である2D4抗体(米国特許第6,756,035号明細書)を産生するハイブリドーマ(LS-125-2D4-11-10-1)をATCCより入手した。本ハイブリドーマをHybridoma-SFM(Thermo Fisher Scientific社)を用いて培養し、培養上清から抗体を精製した。精製はProtein G Sepharose 4Fast Flow(GE Healthcare社)を使用した。培養上清を遠心分離して、得られた培養上清をフィルターでろ過した。カラムに400μLの担体を充填し、DPBSでバッファーを置換した。該カラムに該培養上清を添加し、担体に抗体を吸着させた後に、10mLのDPBSで2回洗浄した。該カラムに0.4mLのIgG Elution Buffer(Thermo Scientific社)を添加して抗体を溶出させ、すぐに0.1mLの1M Tris-Cl(ナカライテスク社)pH8.6にて抗体溶液を中和した。NAPカラム(GE Healthcare社)を用いて該抗体溶液の脱塩とDPBSへのバッファー置換を行い、以降の解析に使用した。
【0284】
精製した2D4抗体について、還元条件でのSDS-PAGEを通常の方法で行い、抗体が精製されていることを確認した。
【0285】
また、2D4抗体のヒトCCR1への結合活性を、実施例4に記載する方法に準じてFCMで確認した。2D4抗体は0.1、1μg/mLで反応させ、細胞は、ヒトCCR1発現細胞としてCHO-S-hCCR1を、ネガティブコントロールとしてCHO-Sを使用した。その結果、2D4抗体は、CHO-Sには結合せず、CHO-S-hCCR1には濃度依存的に結合した。よって、精製した2D4抗体は、市販されている141-2抗体(MBL社)および53504抗体(R&D Systems社)と同様に、ヒトCCR1への結合性を有していることが確認できた。
【0286】
(2)ケモタキシスアッセイ
既存の抗ヒトCCR1抗体と、実施例5で得られたマウス抗ヒトCCR1抗体モノクローナル抗体KM5908抗体およびKM5916抗体について、実施例6に記載した方法に準じてヒトCCR1の活性化を阻害する活性を測定し、得られた結果を抗体毎に比較した。
【0287】
既存の抗ヒトCCR1抗体としては、(1)で作製した2D4抗体ならびに市販の141-2抗体および53504抗体を使用した。
【0288】
得られた結果を図2に示す。図2に示すように、既存の抗ヒトCCR1抗体である2D4抗体、141-2抗体、および53504抗体は、いずれも活性化CCL15により誘導されるTHP-1細胞の遊走を阻害しない一方で、本発明のマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体KM5908抗体およびKM5916抗体は、いずれも濃度依存的に上記細胞の遊走を阻害した。
【0289】
実施例6にて記載したように、実施例5で取得した抗ヒトCCR1抗体は、いずれも本実施例と同じ実験条件で、抗体濃度依存的に活性化CCL15により誘導されるTHP-1細胞の遊走を阻害した[図1(a)および図1(b)]。
【0290】
したがって、既存の抗ヒトCCR1抗体は、ヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害しない一方で、実施例5で得られたマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体KM5907抗体、KM5908抗体、KM5909抗体、KM5911抗体、KM5915抗体、KM5916抗体、KM5954抗体、KM5955抗体およびKM5956抗体は、いずれもヒトCCL15によるヒトCCR1の活性化を阻害する抗体であることが示された。
【0291】
[実施例9]遺伝子組換え抗体の作製
(1)抗体可変領域遺伝子のクローニングと配列決定
実施例5でクローニングしたハイブリドーマからTrizol(Life Technologies社)を用いてトータルRNAを抽出し、5’-RACE法により抗体遺伝子を増幅させた。RACE用cDNAの合成にはSMARTer RACE Kit(Clontech社)を用いた。RACE用cDNA合成過程で付加される配列に特異的なプライマーと、マウスIg gamma鎖またはkappa鎖増幅用プライマー(配列番号11-14)を用いたPCRによって抗体可変領域断片を増幅させ、クローニングして該DNA断片の塩基配列を確認した。
【0292】
実施例5で得られた各抗ヒトCCR1抗体について、重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列および該アミノ酸配列からシグナル配列を除いたアミノ酸配列を表す配列番号を、それぞれ表3に示す。さらに、本発明の各抗体のCDRのアミノ酸配列を表す配列番号を、それぞれ表4に示す。
【0293】
【表3】
【0294】
【表4】
【0295】
(2)キメラ抗体の発現ベクターの作製
実施例5で作製した各抗ヒトCCR1抗体について、定常領域をS228P、L235EおよびR409Kのアミノ酸改変を含むヒトIgG4定常領域(ヒトIgG4PE_R409K)に置換したキメラ抗体を以下に記載する方法で作製した。(1)で作製した各抗体の可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列がクローニングされたプラスミドDNAを鋳型として、相同組換え用の塩基配列を付加したプライマーを用いたPCRで各抗体の可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を増幅させた。In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社)を使用して、該塩基配列を、N5KG4PE R409Kベクター[N5KG1ベクター(米国特許第6,001,358号明細書)中のヒトIgG1の定常領域をコードする塩基配列を、上記のアミノ酸改変を含む変異ヒトIgG4の定常領域をコードする塩基配列に置換したベクター(以下N5KG4PE R409Kベクターと記載する)]に連結させ、キメラ抗体の発現ベクターを作製した。実験の手順はキットに付属のマニュアルに従った。
【0296】
(3)キメラ抗体の産生と精製
(2)で作製した発現ベクターおよびExpi293 Expression System(Life Technologies社)を使用して、キメラ抗体を産生した。手順は付属マニュアルに従い以下のように行った。Expi293F細胞(Thermo Fisher Scientific社)を2×10細胞/mLの密度で37℃、24時間培養し、その後、1反応あたり1.25×10細胞を、42.5mLのExpi293 Expression Medium(Thermo Fisher Scientific社)に加えた。Opti-MEM(Thermo Fisher Scientific社)に50μgのプラスミドDNAとExpiFectamin 293 Reagent(Thermo Fisher Scientific社)を添加し、30分間静置した後に、該プラスミド溶液を上記の細胞液に添加した。さらに一晩の培養後に、該細胞液にExpiFectamin 293 Transfection Enhancerを添加した(培養ボリュームはトータルで50mL)。該細胞液を7~10日間培養した後に、培養上清を回収した。
【0297】
抗体の精製には、Protein G Sepharose 4Fast Flow(GE Healthcare社)を使用した。回収した培養上清を遠心分離し、得られた培養上清をフィルターでろ過した。カラムに400μLの担体を充填し、DPBSでバッファーを置換した。該カラムに培養上清を添加し、単体に抗体を吸着させた後に、該カラムを10mLのDPBSで2回洗浄した。該カラムに0.4mLのIgG Elution Buffer(Thermo Scientific社)を添加して抗体を溶出させ、ただちに該抗体溶液に0.1mLの1M Tris-Cl pH8.6を加えて中和した。NAPカラム(GE Healthcare社)を用いて該抗体溶液を脱塩し、以降の解析に使用した。
【0298】
こうして得られたマウス抗ヒトCCR1モノクローナル抗体KM5907抗体、KM5908抗体、KM5909抗体、KM5911抗体、KM5915抗体、KM5916抗体、KM5954抗体、KM5955抗体およびKM5956抗体のキメラ抗体を、それぞれchKM5907抗体、chKM5908抗体、chKM5909抗体、chKM5911抗体、chKM5915抗体、chKM5916抗体、chKM5954抗体、chKM5955抗体およびchKM5956抗体と記載する。
【0299】
[実施例10]キメラ抗体の結合性の評価
実施例9で作製したキメラ抗体chKM5907抗体、chKM5908抗体、chKM5909抗体、chKM5911抗体、chKM5915抗体、chKM5916抗体、chKM5954抗体、chKM5955抗体およびchKM5956抗体について、ヒトおよびマウスCCR1への結合性を実施例4に記載する方法に準じてFCMで測定した。ヒトCCR1発現細胞およびマウスCCR1発現細胞としては、それぞれ実施例2で作製したCHO-S-hCCR1、CHO-S-mCCR1を使用した。その結果、chKM5955抗体は、ヒトCCR1に結合することが示された。その他のキメラ抗体は、ヒトおよびマウスCCR1の両方に結合することが示された。
【0300】
[実施例11]キメラ抗体を用いたケモタキシスアッセイ
実施例9で作製したキメラ抗体chKM5907抗体、chKM5908抗体、chKM5909抗体、chKM5911抗体、chKM5915抗体、chKM5916抗体、chKM5954抗体、chKM5955抗体およびchKM5956抗体について、実施例6に記載する方法に準じて、ヒトCCR1活性化を阻害する活性測定した。その結果、いずれのキメラ抗体も、活性化ヒトCCL15によるTHP-1の遊走を阻害することが示された。
【0301】
[実施例12]VLを置換したchKM5908抗体改変体の作製
chKM5908抗体のさらなる改良のため、chKM5908抗体のVLを他の抗CCR1キメラ抗体のVLと置換した抗体の作製を検討した。置換するVLとして、実施例5に記載の方法で取得されたマウス抗ヒトCCR1抗体をもとに、実施例10に記載の方法で作製されたキメラ抗体のVLを複数種類検討した。このうち、THP-1遊走活性等の基準で選抜された、VLがchKM5914抗体のものに置換されたchKM5908抗体改変体の作製について以下に記載する。
【0302】
(1)VL置換キメラ抗体の設計
置換されるchKM5914のVLは、chKM5908のVLのアミノ酸配列との相同性が高いため選択された。chKM5914抗体のVLのアミノ酸配列をコードする塩基配列、該塩基配列から推定される、シグナル配列を含むアミノ酸配列および該アミノ酸配列からシグナル配列を除いたアミノ酸配列をそれぞれ配列番号123、124および125に示す。また、chKM5914抗体のVLのCDR1~3のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号126~128に示す。
【0303】
(2)発現ベクターの作製
chKM5914抗体のVL可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列がクローニングされたプラスミドDNAを鋳型として、相同組換え用の塩基配列を付加したプライマーを用いたPCRで各抗体のVL可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を増幅させた。chKM5908 VH可変領域についても同様に増幅させた。In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社)を使用して、該塩基配列を、N5hKベクター(L鎖用発現ベクター)またはN5hG4PE_R409Kベクター(H鎖用発現ベクター)に連結させ、キメラ抗体の発現ベクターを作製した。実験の手順はキットに付属のマニュアルに従った。大腸菌DH5αコンピテントセル(タカラバイオ社)を形質転換して、得られたプラスミドのシーケンスを確認した。正しい塩基配列が挿入されたプラスミドを産生する大腸菌のコロニーを選抜し、NucleoBond Xtra Midi EFキット(タカラバイオ社)を用いてプラスミドを調製した。
【0304】
(3)VL置換キメラ抗体の産生と精製
目的のVL置換キメラ抗体を、Expi293 Expression System Kit(Life Technologies社)を使用して一過性に発現させた。プラスミドの導入の方法は添付書類に従った。軽鎖の発現ベクターと重鎖の発現ベクターは、1:2の比率で混合して導入した。プラスミド導入後の細胞を、120mLの培養液中で、37℃、5% CO、125rpmの条件下で、3日間培養した。その後、細胞培養懸濁液の遠心分離を行い、0.2μmフィルター(Thermo Scientific社)を通して培養上清を回収した。培養上清からMabSelect SuRe(GE Healthcare社)を用いたアフィニティ精製により、精製抗体を取得した。
【0305】
具体的には、カラムに充填したレジンをPBSで平衡化した後、当該カラムに培養上清を添加し、PBSで2回洗浄し、Washバッファー1(PBS with 1M NaCl)、Washバッファー2(20mM クエン酸、50mM NaCl、pH5.0)で各1回洗浄後、溶出バッファー(20mM クエン酸、50mM NaCl、pH3.4)を用いて抗体を溶出した。
【0306】
得られた抗体溶液に中和バッファー(1M リン酸-NaOH、pH7.0)を1/10量加えて中和し、NAP25(GE Healthcare社)を用いて抗体溶液の溶媒をPBSに置換した。バッファー置換後の抗体溶液について、Amicon Ultra-4 Centrifugal Filter Units(ミリポア社)を用いて限外濾過による濃縮を行い、Nanodrop(Thermo Scientific社)を使用して吸光度A280を測定し、抗体溶液の濃度の測定と調整を行った。このようにして得られた、chKM5908抗体のVHとchKM5914抗体のVLとを含むキメラ抗体改変体を、以降の記述においてはchKM5908’抗体と記載する。
【0307】
[実施例13]chKM5908’抗体の抗原結合活性およびTHP-1遊走阻害活性の評価
実施例2で作製したCHO-S-hCCR1細胞を用いたフローサイトメトリーにより、VL置換キメラ抗体であるchKM5908’抗体の抗原結合活性を測定した。細胞を遠心分離して集めて上清を除き、2%ウシ胎児血清(FBS)、0.05% NaN及び1mM EDTAを含むPBS(Staining Medium、以下SMと略記する)で懸濁した。次に、細胞数を1ウェルあたり1×10個となるように96ウェルプレートに播種し、10000,2000,400,80,16および3.2ng/mLの各最終濃度のchKM5908’抗体を添加し、4℃で60分間の反応を行った。細胞をSMで洗浄した後、SMで500倍に希釈したGoat F(ab’) Anti-Human IgG PE(γchain specific)(Southern Biotech社)を添加し、4℃で60分間の反応を行った。SMで細胞を洗浄した後、細胞を50μLのSMで再懸濁し、蛍光強度をフローサイトメトリー(FACS CantoII、BDバイオサイエンス社)で測定した。
【0308】
データはFlowJo 7.65(トミーデジタルバイオロジー社)によって解析し、各濃度におけるGeomean値から結合強度を比較した。その結果、chKM5908’抗体は、CHO-S-hCCR1細胞に対し、chKM5908と同等の結合活性を有していることが分かった。
【0309】
また、chKM5908’抗体について、実施例6に示した方法で、THP-1遊走阻害活性の測定を行った。抗体濃度は1μg/mLの濃度で添加した。その結果、図3に示す通り、chKM5908’抗体は、chKM5908抗体と同等以上のTHP-1遊走阻害活性を有していることが分かった。
【0310】
[実施例14]CDR改変chKM5908’抗体改変体の作製および評価
(1)CDRのアミノ酸を改変したキメラ抗体改変体の作製と評価
chKM5908’抗体を基にして更にCDR改変を行うことを試みた。設計したchKM5908 VHの改変VHを表5に示す。また設計したchKM5914 VLの改変VLを表6に示す。さらに、これらを組み合わせたCDR改変キメラ抗体改変体を表7に示す。
【0311】
【表5】
【0312】
【表6】
【0313】
【表7】
【0314】
これらのキメラ抗体改変体を発現するために必要な塩基配列を、全合成により、または対応する変異を導入したプライマーを用いたアセンブルPCRにより作製し、実施例12-(2)に示した方法を用いて発現ベクターに導入して必要なプラスミドを作製した。次に、実施例12-(3)に示した方法を用いてキメラ抗体改変体を取得した。
【0315】
得られたCDR改変キメラ抗体改変体それぞれについて実施例13に示した方法を用いて抗原結合活性を測定し、アイソタイプコントロールキメラ抗体[Mol Immunol. 1996 Jun;33(9):759-68.に記載のDNP-1抗体のVLおよびVH(GenBankアクセッションNo.:VL U16688、VH U116687)をコードするベクターを用い、実施例12-(3)に記載の方法に準じて作製した抗体。以下chDNP1と記載する。)]に比べて10倍以上の蛍光強度を示すものを、ヒトCCR1に結合すると判定した。その結果、いずれのCDR改変キメラ抗体改変体も、抗体濃度が少なくとも80ng/mLから、ヒトCCR1への結合性を示すことが分かった。
【0316】
また、それぞれのCDR改変抗体について実施例13に示した方法を用いてTHP-1遊走阻害活性を評価した。その結果、いずれのCDR改変キメラ抗体改変体も活性化ヒトCCL15によるTHP-1の遊走を阻害することが分かった。
【0317】
chKM5908’mut02、chKM5908’mut22およびchKM5908’mut25についてはさらに、抗体濃度が10、3、1、0.75、0.5、0.3、0.1および0.05μg/mLの条件でTHP-1遊走阻害活性の測定を行った。結果を図4に示す。
【0318】
図4に示すように、いずれの抗体も抗体濃度依存的にTHP-1細胞遊走を阻害した。また、chKM5908’mut22はchKM5908’、chKM5908’mut02およびchKM5908’mut25と比較して同等またはそれ以上の阻害活性を有していることが明らかになった。
【0319】
以降の記述においては、chKM5908’mut22をmAb5-06と記載する。mAb5-06のVHおよびVLの塩基配列およびアミノ酸配列ならびにVHおよびVLそれぞれのCDR1~3のアミノ酸配列の配列番号を表8に示す。
【0320】
【表8】
【0321】
[実施例15]mAb5-06、chKM5907、およびchKM5916のヒト化抗体の軽鎖および重鎖可変領域の設計
(1)mAb5-06ヒト化抗体のVLおよびVHのアミノ酸配列の設計
以下に記載する方法で、mAb5-06ヒト化抗体の各種VLおよびVHのアミノ酸配列を設計した。以降の記述では様々なVL、VHのアミノ酸配列を有するmAb5-06ヒト化抗体の総称として、hzmAb5-06抗体と記載する。VLおよびVHのそれぞれについて、mAb5-06抗体のFRのアミノ酸配列と、Kabatら[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services(1991)]で報告されているヒトFRコンセンサス配列との相同性を比較した。その結果、human subgroup L chain II(hSGLII)およびhuman subgroup H chain II(hSGHII)が、それぞれmAb5-06抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸配列と最も相同性が高かった。
【0322】
よって、hSGLIIのFRのアミノ酸配列の適切な位置に、それぞれ配列番号126、134および128で表されるmAb5-06 VLのCDR1~3のアミノ酸配列を移植し、hzmAb5-06 LV0(配列番号135)を設計した。また、hSGHIIのFRのアミノ酸配列の適切な位置に、それぞれ配列番号75、131および77で表されるmAb5-06 VHのCDR1~3のアミノ酸配列を移植し、hzmAb5-06 HV0(配列番号136)を設計した。
【0323】
上記のとおり設計したhzmAb5-06 LV0およびhzmAb5-06 HV0は、選択したヒト抗体のFRのアミノ酸配列に、マウス由来抗体のCDR改変体であるmAb5-06由来のCDRのアミノ酸配列のみを移植したアミノ酸配列である。しかし、一般的に、ヒト化抗体を作製する場合には、単にげっ歯類由来抗体のCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のFRのアミノ酸配列へ移植するのみでは、ヒト化抗体の生物活性が低下してしまうことが多い。このような結合活性の低下を回避するため、CDRのアミノ酸配列の移植とともに、ヒト抗体とげっ歯類抗体で異なっているFRのアミノ酸残基のうち、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基を改変することが行われている。そこで、本実施例においても、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基を以下のようにして同定し、改変した。
【0324】
以降の記述においては、上記で設計したhzmAb5-06 LV0およびhzmAb5-06 HV0をそれぞれVL、VHに有する抗体をhzmAb5-06 LV0HV0抗体または単にhzmAb5-06 LV0HV0と記載する。他のhzmAb5-06抗体についても同様の方法で記載する。hzmAb5-06 LV0HV0抗体の可変領域の三次元構造をコンピューターモデリングの手法を用いて構築した。
【0325】
三次元構造座標作製および三次元構造の表示には、Discovery Studio(BIOVIA社)を用いた。また、mAb5-06抗体の可変領域の三次元構造のコンピューターモデルも同様にして構築した。更に、hzmAb5-06 LV0HV0抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸配列の中で、mAb5-06抗体と異なっているアミノ酸残基を、mAb5-06抗体の同じ部位に存在するアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を作成し、同様に三次元構造モデルを構築した。これら作製したmAb5-06抗体、hzmAb5-06 LV0HV0抗体および改変体の可変領域の三次元構造を比較し、抗体の結合活性に影響を与えると予測されるアミノ酸残基を同定した。
【0326】
その結果、hzmAb5-06 LV0HV0抗体の可変領域のFRのアミノ酸残基の中で、抗原結合部位の三次元構造を変化させ、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基として、VLでは、配列番号135で表わされるアミノ酸配列の2番目のIle、15番目のPro、50番目のGln、92番目のTyr、および109番目のValを、VHでは、配列番号136で表わされるアミノ酸配列の6番目のGlu、20番目のLeu、27番目のGly、29番目のVal、30番目のSer、37番目のIle、48番目のIle、67番目のVal、71番目のVal、73番目のThr、76番目のAsn、78番目のPhe、80番目のLeu、82番目のLeu、85番目のVal、92番目のVal、および97番目のArgを、それぞれ選択した。これらの選択したアミノ酸残基のうち、少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を、mAb5-06抗体の同じ部位に存在するアミノ酸残基へ置換し、様々な改変を有するヒト化抗体のVLおよびVHを設計した。
【0327】
具体的には、VLについては、配列番号135で表わされるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、15番目のProをLeuに、50番目のGlnをLysに、92番目のTyrをPheに、および109番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。これにより、hzmAb5-06抗体のVLとして、hzmAb5-06 LV0(配列番号135)、LV1a(配列番号137)、LV1b(配列番号138)、LV2a(配列番号139)、LV2b(配列番号140)、LV4(配列番号141)、およびLV5(配列番号142)を設計し、それぞれのアミノ酸配列を図5に示す。
【0328】
また、VHについては、配列番号136で表わされるアミノ酸配列の6番目のGluをGlnに、20番目のLeuをIleに、27番目のGlyをPheに、29番目のValをLeuに、30番目のSerをAsnに、37番目のIleをValに、48番目のIleをLeuに、67番目のValをLeuに、71番目のValをLysに、73番目のThrをAspに、76番目のAsnをSerに、78番目のPheをValに、80番目のLeuをPheに、82番目のLeuをMetに、85番目のValをLeuに、92番目のValをIleに、および97番目のArgをLysに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。これにより、hzmAb5-06抗体のVHとして、hzmAb5-06 HV0(配列番号136)、HV14(配列番号143)、およびHV17(配列番号144)を設計し、それぞれのアミノ酸配列を図6に示す。
【0329】
(2)chKM5907ヒト化抗体のVLおよびVHのアミノ酸配列の設計chKM5907ヒト化抗体の各種VLおよびVHのアミノ酸配列についても、実施例15(1)と同様の方法で設計した。以降の記述では様々なVL、VHのアミノ酸配列を有するchKM5907ヒト化抗体の総称として、hzKM5907抗体と記載する。GenBankアクセッションナンバーABG38363.1(immunoglobulin light chain variable region,partial [Homo sapiens])で表わされるヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列の適切な位置に、KM5907抗体のVLのCDR1~3のアミノ酸配列(それぞれ配列番号72、73および74)を移植することで、hzKM5907 LV0(配列番号145)を設計した。
【0330】
また、ヒト重鎖V領域ジャームラインVH3-23(FR1~3)およびhSGHI(FR4)を結合したヒト抗体のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、KM5907抗体VHのCDR1~3のアミノ酸配列(それぞれ配列番号69、70および71)を移植することで、hzKM5907 HV0(配列番号146)を設計した。
【0331】
hzKM5907抗体の結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基についても、hzmAb5-06抗体の場合と同様の手法でVL、VHに関してそれぞれ選択した。選択したアミノ酸残基のうち、少なくとも1つ以上のアミノ酸配列をKM5907抗体の同じ部位に存在するアミノ酸残基へ置換し、様々な改変を有するヒト化抗体のVLおよびVHを設計した。
【0332】
具体的には、VLについては、配列番号145で表わされるアミノ酸配列の2番目のIleをValに、15番目のSerをLeuに、19番目のAlaをValに、43番目のGlnをLysに、50番目のGlnをLysに、および109番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。これにより、hzKM5907抗体のVLとして、hzKM5907 LV0(配列番号145)、LV1a(配列番号147)、LV1b(配列番号148)、LV1c(配列番号149)、LV2a(配列番号150)、LV2b(配列番号151)、LV4(配列番号152)、およびLV6(配列番号153)を設計し、それぞれのアミノ酸配列を図7に示す。
【0333】
また、VHについては、配列番号146で表わされるアミノ酸配列の4番目のLeuをValに、44番目のGlyをArgに、49番目のSerをAlaに、92番目のAlaをGlyに、93番目のValをMetに、97番目のAlaをThrに、および98番目のLysをArgに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。これにより、hzKM5907抗体のVHとして、hzKM5907 HV0(配列番号146)、HV1(配列番号154)、HV2a(配列番号155)、HV2b(配列番号156)、HV3a(配列番号157)、HV3b(配列番号158)、HV3c(配列番号159)、HV4(配列番号160)、およびHV7(配列番号161)を設計し、それぞれのアミノ酸配列を図8に示す。
【0334】
以降の記述においては、hzKM5907 LV0およびhzKM5907 HV0をそれぞれVL、VHに有する抗体をhzKM5907 LV0HV0抗体またはhzKM5907 LV0HV0と記載する。その他のhzKM5907抗体についても同様の方法で記載する。
【0335】
(3)chKM5916ヒト化抗体のVLおよびVHのアミノ酸配列の設計chKM5916ヒト化抗体の各種VLおよびVHのアミノ酸配列についても、実施例15(1)と同様の方法で設計した。以降の記述では様々なVL、VHのアミノ酸配列を有するchKM5916ヒト化抗体の総称として、hzKM5916抗体と記載する。PIRアクセッションナンバーS52789(Ig kappa chain V region - human (fragment))で表わされるヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列の適切な位置に、KM5916抗体のVLのCDR1~3のアミノ酸配列(それぞれ配列番号102、103および104)を移植することで、hzKM5916 LV0(配列番号162)を設計した。
【0336】
また、GenBankアクセッションナンバーAAX82494.1(anti-Plasmodium falciparum merozoite surface protein 3 immunoglobulin heavy chain variable region,partial[Homo sapiens])で表わされるヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列の適切な位置に、KM5916抗体VHのCDR1~3のアミノ酸配列(それぞれ配列番号99、100および101)を移植することで、hzKM5916 HV0(配列番号163)を設計した。
【0337】
hzKM5916抗体の結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基についても、hzmAb5-06抗体の場合と同様の手法でVL、VHに関してそれぞれ選択した。選択したアミノ酸残基のうち、少なくとも1つ以上のアミノ酸配列をKM5916抗体の同じ部位に存在するアミノ酸残基へ置換し、様々な改変を有するヒト化抗体のVLおよびVHを設計した。
【0338】
具体的には、VLについては、配列番号162で表わされるアミノ酸配列の38番目のGlnをHisに、および43番目のAlaをGlyに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。これにより、hzKM5916抗体のVLとして、hzKM5916 LV0(配列番号162)、およびLV2(配列番号164)を設計し、それぞれのアミノ酸配列を図9に示す。
【0339】
また、VHについては、配列番号163で表わされるアミノ酸配列の42番目のAspをGluに、87番目のLysをArgに、および97番目のAlaをThrに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。これにより、hzKM5916抗体のVHとして、hzKM5907 HV0(配列番号163)、HV1(配列番号165)、およびHV3(配列番号166)を設計し、それぞれのアミノ酸配列を図10に示す。
【0340】
以降の記述においては、hzKM5916 LV0およびhzKM5916 HV0をそれぞれVL、VHに有する抗体をKM5916 LV0HV0抗体またはhzKM5916 LV0HV0と記載する。その他のhzKM5916抗体についても同様の方法で記載する。
【0341】
(4)ヒト化抗体の可変領域遺伝子の設計表9に示すヒト化抗体(hzmAb5-06抗体、hzKM5907抗体、hzKM5916抗体)の可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を、動物細胞で高頻度に使用されるコドンを用いて設計した。
【0342】
【表9】
【0343】
[実施例16]ヒト化抗体の作製および評価
実施例15-(4)で設計した塩基配列を、実施例12-(2)に示した方法を用いて発現ベクターに導入して必要なプラスミドを作製した。但し、VL発現ベクターとしてはシグナル配列およびヒトκ鎖定常領域配列を有したpCI-OtCMV_hKベクターを、VH発現ベクターとしてはシグナル配列およびヒトγ鎖定常領域配列を有したpCI-OtCAG_hG4PE(R409K)ベクターを用いた。
【0344】
次に、実施例12-(3)に示した方法を用いて改変抗体の取得を行った。SDS-PAGEによる品質確認を行った後に、実施例13に示した方法を用いて抗原結合活性の測定を行い、アイソタイプコントロールヒト化抗体[chDNP1を元に実施例15に記載の方法に準じて設計(ヒトFR配列としてはコンセンサス配列を使用)し、実施例12-(3)に記載の方法に準じて作製した抗体であり、それぞれ配列番号167および168で示されるアミノ酸配列からなるVLおよびVHを有する。以下hzDNP1と記載する。)]に比べて10倍以上の蛍光強度を示すものを、ヒトCCR1に結合すると判定した。その結果、いずれのヒト化抗体も、抗体濃度が少なくとも80ng/mLから、ヒトCCR1への結合性を示すことが分かった。
【0345】
次に、作製した全てのヒト化抗体について、THP-1遊走阻害活性の評価を行った。その結果、いずれのヒト化抗体もTHP-1遊走阻害活性を有することが示された。hzmAb5-06 LV5HV14、hzKM5907 LV2bHV3aおよびhzKM5916 LV2HV0についてはさらに、抗体濃度が10、3、1、0.75、0.5、0.3、0.1および0.05μg/mLの条件でTHP-1遊走阻害活性を評価した。その結果、図11に示す通り、いずれのヒト化抗体も抗体濃度が0.3μg/mL以上ではTHP-1遊走阻害活性を示すことが分かった。
【0346】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2017年7月18日付けで出願された日本特許出願(特願2017-139157)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【配列表フリーテキスト】
【0347】
配列番号6-人工配列の説明:NC3-hCCR1の塩基配列
配列番号7-人工配列の説明:NC3-mCCR1の塩基配列
配列番号8-人工配列の説明:hCCR3_EL2hCCR1の塩基配列
配列番号9-人工配列の説明:hCCR3_EL2mCCR1の塩基配列
配列番号10-人工配列の説明:N末端hCCR1 peptideのアミノ酸配列
配列番号11-人工配列の説明:プライマー_mouse_gamma_r1の塩基配列
配列番号12-人工配列の説明:プライマー_mouse_gamma_r2の塩基配列
配列番号13-人工配列の説明:プライマー_mouse_kappa_r1の塩基配列
配列番号14-人工配列の説明:プライマー_mouse_kappa_r2の塩基配列
配列番号51-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5907 VHのアミノ酸配列
配列番号52-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5907 VLのアミノ酸配列
配列番号53-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5908 VHのアミノ酸配列
配列番号54-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5908 VLのアミノ酸配列
配列番号55-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5909 VHのアミノ酸配列
配列番号56-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5909 VLのアミノ酸配列
配列番号57-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5911 VHのアミノ酸配列
配列番号58-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5911 VLのアミノ酸配列
配列番号59-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5915 VHのアミノ酸配列
配列番号60-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5915 VLのアミノ酸配列
配列番号61-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5916 VHのアミノ酸配列
配列番号62-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5916 VLのアミノ酸配列
配列番号63-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5954 VHのアミノ酸配列
配列番号64-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5954 VLのアミノ酸配列
配列番号65-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5955 VHのアミノ酸配列
配列番号66-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5955 VLのアミノ酸配列
配列番号67-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5956 VHのアミノ酸配列
配列番号68-人工配列の説明:シグナル配列を除いたKM5956 VLのアミノ酸配列
配列番号69-人工配列の説明:KM5907 VH CDR1のアミノ酸配列配列番号70-人工配列の説明:KM5907 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号71-人工配列の説明:KM5907 VH CDR3のアミノ酸配列
配列番号72-人工配列の説明:KM5907 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号73-人工配列の説明:KM5907 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号74-人工配列の説明:KM5907 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号75-人工配列の説明:KM5908 VH CDR1のアミノ酸配列
配列番号76-人工配列の説明:KM5908 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号77-人工配列の説明:KM5908 VH CDR3のアミノ酸配列
配列番号78-人工配列の説明:KM5908 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号79-人工配列の説明:KM5908 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号80-人工配列の説明:KM5908 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号81-人工配列の説明:KM5909 VH CDR1のアミノ酸配列
配列番号82-人工配列の説明:KM5909 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号83-人工配列の説明:KM5909 VH CDR3のアミノ酸配列
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配列番号85-人工配列の説明:KM5909 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号86-人工配列の説明:KM5909 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号87-人工配列の説明:KM5911 VH CDR1のアミノ酸配列
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配列番号90-人工配列の説明:KM5911 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号91-人工配列の説明:KM5911 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号92-人工配列の説明:KM5911 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号93-人工配列の説明:KM5915 VH CDR1のアミノ酸配列
配列番号94-人工配列の説明:KM5915 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号95-人工配列の説明:KM5915 VH CDR3のアミノ酸配列
配列番号96-人工配列の説明:KM5915 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号97-人工配列の説明:KM5915 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号98-人工配列の説明:KM5915 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号99-人工配列の説明:KM5916 VH CDR1のアミノ酸配列
配列番号100-人工配列の説明:KM5916 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号101-人工配列の説明:KM5916 VH CDR3のアミノ酸配列
配列番号102-人工配列の説明:KM5916 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号103-人工配列の説明:KM5916 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号104-人工配列の説明:KM5916 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号105-人工配列の説明:KM5954 VH CDR1のアミノ酸配列
配列番号106-人工配列の説明:KM5954 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号107-人工配列の説明:KM5954 VH CDR3のアミノ酸配列
配列番号108-人工配列の説明:KM5954 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号109-人工配列の説明:KM5954 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号110-人工配列の説明:KM5954 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号111-人工配列の説明:KM5955 VH CDR1のアミノ酸配列
配列番号112-人工配列の説明:KM5955 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号113-人工配列の説明:KM5955 VH CDR3のアミノ酸配列
配列番号114-人工配列の説明:KM5955 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号115-人工配列の説明:KM5955 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号116-人工配列の説明:KM5955 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号117-人工配列の説明:KM5956 VH CDR1のアミノ酸配列
配列番号118-人工配列の説明:KM5956 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号119-人工配列の説明:KM5956 VH CDR3のアミノ酸配列
配列番号120-人工配列の説明:KM5956 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号121-人工配列の説明:KM5956 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号122-人工配列の説明:KM5956 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号125-人工配列の説明:シグナル配列を除いたchKM5914 VLのアミノ酸配列
配列番号126-人工配列の説明:chKM5914 VL CDR1のアミノ酸配列
配列番号127-人工配列の説明:chKM5914 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号128-人工配列の説明:chKM5914 VL CDR3のアミノ酸配列
配列番号129-人工配列の説明:mAb5-06 VHの塩基配列
配列番号130-人工配列の説明:mAb5-06 VHのアミノ酸配列
配列番号131-人工配列の説明:mAb5-06 VH CDR2のアミノ酸配列
配列番号132-人工配列の説明:mAb5-06 VLの塩基配列
配列番号133-人工配列の説明:mAb5-06 VLのアミノ酸配列
配列番号134-人工配列の説明:mAb5-06 VL CDR2のアミノ酸配列
配列番号135-人工配列の説明:hzmAb5-06 LV0のアミノ酸配列
配列番号136-人工配列の説明:hzmAb5-06 HV0のアミノ酸配列
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配列番号145-人工配列の説明:hzKM5907 LV0のアミノ酸配列
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配列番号162-人工配列の説明:hzKM5916 LV0のアミノ酸配列
配列番号163-人工配列の説明:hzKM5916 HV0のアミノ酸配列
配列番号164-人工配列の説明:hzKM5916 LV2のアミノ酸配列
配列番号165-人工配列の説明:hzKM5916 HV1のアミノ酸配列
配列番号166-人工配列の説明:hzKM5916 HV3のアミノ酸配列
配列番号167-人工配列の説明:hzDNP1 VLのアミノ酸配列
配列番号168-人工配列の説明:hzDNP1 VHのアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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