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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】エステル化剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/53 20060101AFI20221221BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 231/12 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 235/08 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 235/12 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 271/22 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 269/06 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 231/16 20060101ALI20221221BHJP
   C07D 209/18 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C07D213/53
C07D401/12
C07C231/12
C07C235/08
C07C235/12
C07C271/22
C07C269/06
C07C231/16
C07D209/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017202972
(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公開番号】P2019077616
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 脩
(72)【発明者】
【氏名】西川 泰弘
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表平01-501310(JP,A)
【文献】特開平06-228067(JP,A)
【文献】米国特許第03173900(US,A)
【文献】特開平06-263743(JP,A)
【文献】特表2013-537211(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02279345(GB,A)
【文献】特表2010-537978(JP,A)
【文献】特表2017-509610(JP,A)
【文献】特開2010-090139(JP,A)
【文献】国際公開第2016/109880(WO,A1)
【文献】REGISTRY(STN)[online],掲載日:2016年2月11日,検索日:2021年5月6日,CAS登録番号1864207-86-2
【文献】REGISTRY(STN)[online],掲載日:2011年12月6日,検索日:2021年5月6日,CAS登録番号1349504-94-4
【文献】REGISTRY(STN)[online],掲載日:2011年12月5日,検索日:2021年5月6日,CAS登録番号1348905-27-0
【文献】REGISTRY(STN)[online],掲載日:2008年7月14日,検索日:2021年5月6日,CAS登録番号1033990-19-0
【文献】REGISTRY(STN)[online],掲載日:2008年6月10日,検索日:2021年5月6日,CAS登録番号1027075-87-1
【文献】REGISTRY(STN)[online],掲載日:2008年6月8日 ,検索日:2021年5月6日,CAS登録番号1026195-18-5
【文献】REGISTRY(STN)[online],掲載日:1984年11月16日,検索日:2021年5月6日,CAS登録番号5657-77-2, 5657-50-1
【文献】Plucinski, T. et al.,O-(N-Acylaminoacyl)-2-pyridylmethylketoximes and their use in peptide synthesis,Polish Journal of Chemistry,1981年,55(3),pp. 573-582
【文献】SANDERS, D. P. et al.,A Simple and Efficient Synthesis of Functionalized Cyclic Carbonate Monomers Using a Versatile Pentafluorophenyl Ester Intermediate,Journal of the American Chemical Socirty,2010年,132(42),pp. 14724-14726
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
MARPAT(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表され、α位又はβ位水酸基を有し、さらに、他の水酸基を有するヒドロキシアミド化合物の前記α位又はβ位水酸基をRCO基により選択的にエステル化するためのエステル化剤。
【化21】
(式(1)中、Rは、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基であり直接若しくは炭素原子数1~4のアルキレン基を介してカルボニル基の炭素原子に結合される前記脂肪族複素環基、芳香族複素環基であり直接若しくは炭素原子数1~4のアルキレン基を介してカルボニル基の炭素原子に結合される前記芳香族複素環基又はアミノ基がアミノ基保護基で保護されたアミノ酸誘導体であってアミノ酸由来のカルボキシ基を除いた構造部分を表し、Rは、水素原子、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を表し、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を表す。)
【請求項2】
において、前記アルキル基は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、前記アリール基は炭素原子数6~20のアリール基を表し、アラルキル基は炭素原子数1~10のアルキル基の少なくとも1個の水素原子が炭素原子数6~20のアリール基で置換されたアラルキル基を表し、前記脂肪族複素環基は、炭素原子数2~14で異種原子として1~3個のヘテロ原子を含む単環式、多環式又は縮合環式のヘテロシクロアルキル基を表し、前記芳香族複素環基は炭素原子数2~15で異種原子として1~3個のヘテロ原子を含む、単環式、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基を表す、請求項1に記載エステル化剤。
【請求項3】
は、水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基を表し、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は置換されていてもよいアルキル基を表す、請求項1又は2に記載エステル化剤。
【請求項4】
基質が、以下の式(2)で表される化合物である、請求項1~3のいずれかに記載のエステル化剤。
【化22】
(式(2)中、Rは、置換されていてもよい、炭素原子数1又は2のアルキレン基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基又はアミノ基の保護基を表す。)
【請求項5】
及びRは、それぞれ独立して、1又は2以上の水酸基を備える、請求項4に記載のエステル化剤。
【請求項6】
金属ルイス酸の存在下、以下の式(1)で表される第1の化合物によって、α-又はβ-ヒドロキシアミド化合物の水酸基に、前記第1の化合物のRCO基を導入してエステル化する工程を備える、方法。
【化23】
(式(1)中、Rは、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基であり直接若しくは炭素原子数1~4のアルキレン基を介してカルボニル基の炭素原子に結合される前記脂肪族複素環基、芳香族複素環基であり直接若しくは炭素原子数1~4のアルキレン基を介してカルボニル基の炭素原子に結合される前記芳香族複素環基又はアミノ基がアミノ基の保護基で保護されたアミノ酸誘導体においてアミノ酸由来のカルボキシ基を除いた構造部分を表し、Rは、水素原子、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基からなる群から選択される基を表し、R~R、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基からなる群から選択される基を表す。)
【請求項7】
前記α-又はβ-ヒドロキシアミド化合物は、以下の式(2)で表される、請求項6に記載の方法。
【化24】
(式(2)中、Rは、置換されていてもよい、炭素原子数1又は2のアルキレン基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基及びアミノ基の保護基からなる群から選択される基を表す。)
【請求項8】
金属ルイス酸の存在下、以下の式(1)で表される第1の化合物によって、α-又はβ-ヒドロキシアミド化合物の水酸基に、前記第1の化合物のRCO基を導入してエステル化する工程、を備える、エステル化合物の製造方法。
【化25】

(式(1)中、Rは、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基であり直接若しくは炭素原子数1~4のアルキレン基を介してカルボニル基の炭素原子に結合される前記脂肪族複素環基、芳香族複素環基であり直接若しくは炭素原子数1~4のアルキレン基を介してカルボニル基の炭素原子に結合される前記芳香族複素環基又はアミノ基がアミノ基の保護基で保護されたアミノ酸誘導体において前記アミノ酸由来のカルボキシ基を除いた構造部分を表し、Rは、水素原子、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を表し、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、それぞれ置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、エステル化剤及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
新たな生理活性物質の創製研究において、種々の化合物への機能付与を目的とした選択的修飾法が注目されている。一般に、分子内に存在する複数の同一官能基の特定の官能基のみを選択的に反応させることは困難である。例えば、アルコールの位置選択的アシル化は、糖を基質とした反応や、1,2-ジオール構造を有する基質とする反応などについて報告されている(非特許文献1、2)。また、コンフォメーションの自由度の高い直鎖状の第1級アルコール同士を区別して選択的にアシル化する方法も報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】J. AM. CHEM. SOC., 2007, 129, 12890-12895
【文献】J. AM. CHEM. SOC., 2011, 133, 13926-13929
【文献】Chem. Commun., 2012, 48, 6981-6983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンフォメーションの自由度の高い直鎖状第1級アルコール同士を区別して選択的にアシル化してエステルを合成することは未だ困難であった。
【0005】
本明細書は、新たなエステル化剤を提供し、さらに、当該エステル化剤を特定水酸基のみをアシル化してエステルを生成する選択的アシル化剤として利用することを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ピリジンオキシムエステルにルイス酸を配位させることによって生じるカチオン性有機分子基の電子吸引性を利用することで、ピリジンオキシムエステルをエステル化剤として、さらに、選択的エステル化剤として利用できるという知見を得た。本開示によれば、以下の手段が提供される。
【0007】
[1]以下の式(1)で表される、エステル化剤。
【化1】
(式(1)中、R1は、置換基されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表し、R2は、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基からなる群から選択される基を表し、R3~R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基からなる群から選択される基を表す。)
[2]R1は、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される1種又は2種以上を表す、[1]に記載のエステル化剤。
[3]α-及びβ-ヒドロキシアミドのエステル化剤である、[1]又は[2]に記載のアシル化剤。
[4]基質が、以下の式(2)で表される化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載のエステル化剤。
【化2】
(式(2)中、R7は、置換されていてもよい、炭素原子数1又は2のアルキレン基を表し、R8及びR9は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表す。)
[5]金属ルイス酸の存在下、以下の式(1)で表される第1の化合物によって、α-又はβ-ヒドロキシアミド化合物に水酸基にアシル基を導入してエステル化する工程を備える、方法。
【化3】
(式(1)中、R1は、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表し、R2は、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基からなる群から選択される基を表し、R3~R6、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基からなる群から選択される基を表す。)
[6]前記α-又はβ-ヒドロキシアミド化合物は、以下の式(2)で表される、[5]に記載の方法。
【化4】
(式(2)中、R7は、置換されていてもよい、炭素原子数1又は2のルキレン基を表し、R8及びR9は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表す。)
[7]金属ルイス酸の存在下、以下の式(1)で表される第1の化合物によって、α-又はβ-ヒドロキシアミド化合物の水酸基にアシル基を導入してエステル化する工程、を備える、エステル化合物の製造方法。
【化5】
(式(1)中、R1は、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表し、R2は、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基からなる群から選択される基を表し、R3~R6、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基からなる群から選択される基を表す。)
[8]以下の式(3)で表される化合物。
【化6】
(式(3)中、R1は、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表し、R7は、置換されていてもよい、炭素原子数1又は2のアルキレン基を表し、R8及びR9は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表す。)
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の概要を示す図である。
図2A】実施例2で合成したピリジンオキシムエステルの構造式及び各種データを示す図である。
図2B】実施例2で合成したピリジンオキシムエステルの構造式及び各種データを示す図である。
図3A】実施例3で合成したエステル化されたアミドの構造式及び各種データを示す図である。
図3B】実施例3で合成したエステル化されたアミドの構造式及び各種データを示す図である。
図3C】実施例3で合成したエステル化されたアミドの構造式及び各種データを示す図である。
図4A】実施例4で合成したエステル化されたアミドの構造式及び各種データを示す図である。
図4B】実施例4で合成したエステル化されたアミドの構造式及び各種データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の開示は、エステル化剤及びその利用に関し、特に、ヒドロキシアミド化合物におけるα位及びβ位水酸基を選択的にアシル化してエステル化することができる、エステル化剤及びその利用に関する。
【0010】
本発明者らは、既に、ピリジルリン酸アミドに酸を配位させることにより生じるカチオン性有機分子の電子吸引性によりプロトンが活性化されることを利用した酸触媒を開発している(特開2016-88915号公報)。
【0011】
発明者らは、こうした知見から、ピリジン環とエステル基とを有する基質化合物に対して適切な金属ルイス酸を用いることにより生じるカチオン性複素環が電子吸引性基として機能させ、当該複素環に連結されるエステルカルボニル基を活性化できる可能性に着目するに至った。
【0012】
さらに、本発明者らは、金属イオンを雛形とするテンプレート効果によって、アルコールとルイス塩基性部位とを有する基質化合物を優先的に金属イオンに配位させて、このアルコール性水酸基を、活性化されたエステルカルボニル基に近接させることができる可能性に着目するに至った。
【0013】
本発明者らは、これらの可能性に基づき、種々検討したところ、ピリジンオキシムエステル化合物がエステル化剤として利用できること、さらに、当該エステル化剤は、2以上のアルコール性水酸基を有するとともに特定の構造を有する化合物の特定水酸基に選択的にアシル基を導入してエステル化できるエステル化剤として利用できることを見出した。図1に、本明細書に開示されるエステル化剤について推定される反応系を示す。
【0014】
図1に示すように、ピリジンオキシムエステル化合物は、解離性の対アニオンXを有する金属ルイス酸MXの存在により、そのエステルカルボニル基が適度に活性化される。同時に、金属イオンMは、ピリジン環上の窒素原子及びオキシム基の窒素原子と配位する。
このとき、被エステル化基質化合物として、ルイス塩基部位としてのカルボニル基と水酸基を有する化合物を用いると、金属イオンMは、カルボニル基の酸素原子及び水酸基の酸素原子にも配位する。
【0015】
すなわち、金属イオンMにより、ピリジンオキシムエステル化合物の活性化したエステルカルボニル基と被エステル化基質化合物中の水酸基が近接することとなる(近接効果)。こうしたエステルカルボニル基の活性化及び当該エステルカルボニル基に対する特定水酸基の近接効果により、特定水酸基のみをアシル化しエステルを生成できる、と考えられる。
【0016】
本明細書の開示によれば、ピリジンオキシムエステル化合物は、ルイス塩基部位としてのカルボニル基に近接して水酸基を有する基質化合物の当該水酸基をアシル化してエステルとすることができる。また、本明細書の開示によれば、ピリジンオキシムエステル化合物は、前記基質が、さらにルイス塩基部位としてアミドのカルボニル基を有し、さらに別の水酸基を有する場合、例えば、図1中Rが、ヒドロキシプロピルアミノ基などであっても、カルボニル基の炭素原子に対してα位及びβ位の炭素原子に結合する水酸基を特異的にアシル化しエステルとすることができる。
【0017】
以下、本明細書に開示するエステル化剤であるピリジンオキシムエステル化合物及び当該化合物をエステル化剤として用いたエステル化方法等について説明する。
【0018】
(ピリジンオキシムエステル化合物:第1の化合物)
本開示のピリジンオキシムエステル化合物(以下、本明細書において第1の化合物ともいう。)は、以下の一般式(1)で表される。
【0019】
【化7】
【0020】
式(1)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、以下の基を表す。
【0021】
[R1
1は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表す。
【0022】
(アルキル基)
で表されるアルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい。アルキル基としては、例えば炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~10、より好ましくは炭素原子数1~6の直鎖又は分岐もしくは環状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、ステアリル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0023】
(アルキル基の置換基)
これらアルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭化水素基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アルキルエステル基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、水酸基、オキソ基、ニトロ基、メルカプト基、三置換シリル基及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0024】
アルキル基に置換する炭化水素基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0025】
アルキル基に置換するアルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよく、例えば、炭素数1~20の直鎖又は分岐もしくは環状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、ステアリル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0026】
アルキル基に置換するアルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば炭素数2~15、好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~6のアルケニル基が挙げられ、具体的には、エテニル基、プロペニル基、1-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0027】
アルキル基に置換するアルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば炭素数2~15、好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~6のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0028】
アルキル基に置換するアリール基としては、例えば炭素数6~20のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0029】
アルキル基に置換するアラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が上記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、3-ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0030】
アルキル基に置換する脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2~14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5~8員、好ましくは5又は6員の、単環の脂肪族複素環基、或いは多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピロリジル-2-オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
【0031】
アルキル基に置換する芳香族複素環基としては、例えば炭素数2~15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5~8員、好ましくは5又は6員の、単環式ヘテロアリール基、或いは多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0032】
アルキル基に置換するアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよく、例えば炭素数1~6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、2-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、2,2-ジメチルプロピルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、5-メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシメトキシ基、2-エトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0033】
アルキル基に置換するアルキルエステル基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよく、例えば炭素数1~6のアルキル基を備えるエステル基が挙げられ、具体的にはメチルエステル基、エチルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、2-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、tert-ブチルエステル基、n-ペンチルエステル基、2-メチルブトチルエステル基、3-メチルブチルエステル基、2,2-ジメチルプロピルエステル基、n-ヘキシルエステル基、2-メチルペンチルエステル基、3-メチルペンチルエステル基、4-メチルペンチルエステル基、5-メチルペンチルエステル基、シクロヘキシルエステル基、メトキシメチルエステル基、2-エトキシエチルエステル基等が挙げられる。
【0034】
アルキル基に置換するアルキレンジオキシ基としては、例えば炭素数1~3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的にはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基、イソプロピリデンジオキシ基等が挙げられる。
【0035】
アルキル基に置換するアリールオキシ基としては、例えば炭素数6~14のアリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフトキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
アルキル基に置換するアラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7~12のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的にはベンジルオキシ基、4-メトキシフェニルメトキシ基、1-フェニルエトキシ基、2-フェニルエトキシ基、1-フェニルプロポキシ基、2-フェニルプロポキシ基、3-フェニルプロポキシ基、1-フェニルブトキシ基、3-フェニルブトキシ基、4-フェニルブトキシ基、1-フェニルペンチルオキシ基、2-フェニルペンチルオキシ基、3-フェニルペンチルオキシ基、4-フェニルペンチルオキシ基、5-フェニルペンチルオキシ基、1-フェニルヘキシルオキシ基、2-フェニルヘキシルオキシ基、3-フェニルヘキシルオキシ基、4-フェニルヘキシルオキシ基、5-フェニルヘキシルオキシ基、6-フェニルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0037】
アルキル基に置換するヘテロアリールオキシ基としては、例えば、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、炭素数2~14のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、2-ピリジルオキシ基、2-ピラジルオキシ基、2-ピリミジルオキシ基、2-キノリルオキシ基等が挙げられる。
【0038】
アルキル基に置換するアルキルチオ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよく、例えば炭素数1~6のアルキルチオ基が挙げられ、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、2-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0039】
アルキル基に置換するアリールチオ基としては、例えば炭素数6~14のアリールチオ基が挙げられ、具体的にはフェニルチオ基、トリルチオ基、キシリルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0040】
アルキル基に置換するアラルキルチオ基としては、例えば炭素数7~12のアラルキルチオ基が挙げられ、具体的にはベンジルチオ基、2-フェネチルチオ基等が挙げられる。
【0041】
アルキル基に置換するヘテロアリールチオ基としては、例えば、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、炭素数2~14のヘテロアリールチオ基が挙げられ、具体的には、4-ピリジルチオ基、2-ベンズイミダゾリルチオ基、2-ベンズオキサゾリルチオ基、2-ベンズチアゾリルチオ基等が挙げられる。
【0042】
アルキル基に置換する置換アミノ基としては、アミノ基の1個又は2個の水素原子がアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の置換基で置換されたアミノ基が挙げられる。アルキル基で置換されたアミノ基、即ちアルキル基置換アミノ基の具体例としては、N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、N-シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基が挙げられる。 アリール基で置換されたアミノ基、即ちアリール基置換アミノ基の具体例としては、N-フェニルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基、N,N-ジトリルアミノ基、N-ナフチルアミノ基、N-ナフチル-N-フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基が挙げられる。 アラルキル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキル基置換アミノ基の具体例としては、N-ベンジルアミノ基、N,N-ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基が挙げられる。
【0043】
アルキル基に置換する三置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0044】
アルキル基に置換するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、ハロゲン化されたアルキル基としては、例えばモノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0045】
これらの置換基のうち、炭化水素基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、ヘテロアリールチオ基又は置換アミノ基は、上記置換基の群から選ばれる基によってさらに置換基を有していてもよい。
【0046】
(アルケニル基)
で表されるアルケニル基としては、炭素数2~15、好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~6の直鎖あるいは分岐してもよい鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0047】
また、これらのアルケニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基、アリール基、複素環基(脂肪族複素環基、芳香族複素環基)、ハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0048】
(アルキニル基)
で表されるアルキニル基としては、炭素数2~15、好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~6の、直鎖又は分岐していてもよいアルキニル基が挙げられ、具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。
【0049】
また、これらアルキニル基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルキル基、アリール基、複素環基(脂肪族複素環基、芳香族複素環基)、三置換シリル基等が挙げられ、その具体例としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0050】
(アリール基)
で表されるアリール基としては、例えば炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。アリール基は置換されていてもよい。置換基としては、例えば、各種ハロゲン原子、炭素原子数1~4程度のアルキル基等が挙げられる。その具体例としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0051】
(アラルキル基)
で表されるアラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が上記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素原子数7~12のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2-フェニルエチル基等のフェニルエチル基、1-フェニルプロピル基などのフェニルプロピル基、3-ナフチルプロピル基等当のナフチルプロピル基等が挙げられる。その具体例としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0052】
(脂肪族複素環を有する基)
で表される脂肪族複素環を有する基における脂肪族複素環としては、特に限定するものではないが、例えば、炭素原子数2~14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5~8員、好ましくは5又は6員の、単環の脂肪族複素環基、或いは多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピロリジル-2-オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
【0053】
こうした脂肪族複素環を有する基としては、特に限定するものではないが、例えば、脂肪族複素環を、炭素原子数1~4程度のアルキレン基を介して第1の化合物のカルボニル基の炭素原子に結合する基が挙げられる。
【0054】
(芳香族複素環を有する基)
で表される芳香族複素環を有する基としては、特に限定するものではないが、例えば、炭素原子数2~15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5~8員、好ましくは5又は6員の、単環式ヘテロアリール基、或いは多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、インドリル基、ピリミジル基、ピラジル基、イミダゾリル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。また、芳香族複素環は、置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0055】
こうした芳香族複素環を有する基としては、特に限定するものではないが、例えば、芳香族複素環を、炭素原子数1~4程度のアルキレン基を介して第1の化合物のカルボニル基の炭素原子に結合する基が挙げられる。こうした芳香族複素環を有する基としては、例えば、インドリルメチル基が挙げられる。
【0056】
(アミノ基の保護基を有する基)
で表されるアミノ基の保護基を有する基におけるアミノ基の保護基としては、特に限定するものではないが、公知のアミノ基の保護基が挙げられる。例えば、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)等が挙げられる。また、アミノ基の保護基は、置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0057】
こうしたアミノ基の保護基を有する基としては、特に限定するものではないが、例えば、グリシン、アラニン、セリン等の各種アミノ酸のアミノ基をこれらの基で保護して得られるアミノ酸誘導体におけるアミノ酸に由来するカルボキシ基を除いた構造部分が挙げられる。
【0058】
例えば、アミノ酸保護基を有する基としては、アミノ基がベンジルオキシカルボニル基で保護されたセリン又はアラニンのアミノ酸由来のカルボキシ基を除いた構造部分が挙げられる。
【0059】
[R2
2は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基からなる群から選択される基を表す。アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基については、R1として既に記載した態様を適用できる。これらの基は、置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0060】
[R3]~[R6
3~R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基からなる群から選択される基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基及び芳香族複素環を有する基については、R1として既に記載した態様を適用できる。また、これらの基は、置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0061】
以上説明した第1の化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
【0062】
【化8】
【0063】
第1の化合物は、当業者であれば、公知技術に基づいて合成することができる。特に限定するものではないが、例えば、Rを備える酸塩化物と、R2~R6を備えるピリジンオキシム化合物とを縮合させることにより、合成することができる。当該合成は、例えば、以下のスキーム1に従うことができる。すなわち、当該合成に際しては、例えば、ジクロロメタンなどの溶媒中で、トリエチルアミンなどの塩基性化合物の存在下に縮合反応を実施することができる。
【0064】
【化9】
【0065】
また、以下のスキーム2に従い、上記酸塩化物に替えて、Rを備えるカルボン酸化合物と、R2、R3及びR4を備えるピリジンオキシム化合物とを1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)や1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCl)などの公知の脱水縮合剤を用いて脱水縮合させることにより、合成することもできる。
【0066】
【化10】
【0067】
こうした第1の化合物は、例えば、以下に示す、ヒドロキシアミド化合物(本明細書において、第2の化合物ともいう。)にアシル基を導入してエステル化合物を得ることができる。
【0068】
(ヒドロキシアミド化合物:第2の化合物)
ヒドロキシアミド化合物としては、アミド基のカルボニル基炭素原子に対してα位及びβ位のいずれかに水酸基を有する化合物であればよい。かかるヒドロキシアミド化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、以下の一般式(2)で表される。
【0069】
【化11】
【0070】
式(2)におけるR7、R8及びRは、以下の基を表すことができる。
【0071】
[R7
7は、置換されていてもよい、炭素原子数1又は2のアルキレン基を表す。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1~4のアルキル基が挙げられる。アルキレン基における置換数としては、1個又は2個以上である。アルキレン基は、置換されていないことが好ましいが、置換されていてもよい。置換されている場合、好ましくは、置換数は1個又は2個であり、一つの炭素原子について1個又は2個置換されていてもよいし、2つの炭素原子について、それぞれ1個又は2個置換されていてもよい。
【0072】
[R8]及び[R9
8及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基からなる群から選択される基を表す。アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基を有する基については、既に、R1について説明した各種態様及び置換基の態様を適用することができる。
【0073】
このほか、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、アラルキル基、脂肪族複素環を有する基、芳香族複素環を有する基及びアミノ基の保護基が1又は2以上の水酸基によって置換されていてもよい。本明細書に開示されるエステル化剤であるピリジンオキシムエステル化合物は、式(2)で表されるヒドロキシアミド化合物の*印の水酸基に選択的にアシル基を導入してエステル化することができる。
【0074】
例えば、Rが、水酸基を1又は2以上備える、炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状又は環状部分を有するアルキレン基を表すことができる。当該アルキレン基としては、例えば、炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~10、より好ましくは炭素原子数1~6の直鎖状、分岐状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、sec-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、セチレン基、ステアリレン基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチレン基、メチルシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基等が挙げられる。
【0075】
アルキレン基を置換する置換基としては、例えば、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基としては、例えば、炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~10、より好ましくは炭素原子数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、ステアリル基等の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0076】
アルキレン基を置換する置換基としては、アリール基が挙げられる。当該アリール基としては、例えば、炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。アリール基は置換されていてもよい。置換基としては、例えば、各種ハロゲン原子、炭素原子数1~4程度のアルキル基等が挙げられる。
【0077】
アルキレン基を置換する置換基としては、アラルキル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、炭素原子数1~20、また例えば、炭素原子数が1~12、また例えば、炭素原子数が1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の少なくとも1個の水素原子が上記アリール基で置換された基が挙げられる。かかるアラルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、炭素原子数7~12のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2-フェニルエチル基等のフェニルエチル基、1-フェニルプロピル基などのフェニルプロピル基、3-ナフチルプロピル基等当のナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0078】
アルキレン基を置換する置換基としては、アルキルエステル基が挙げられる。当該アルキルエステル基としては、例えば、炭素原子数1~20、また例えば、炭素原子数が1~12、また例えば、炭素原子数が1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有するエステル基が挙げられる。かかるアルキルエステル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、n-プロピルエステル基、iso-プロピルエステル基、n-ブチルエステル基、tert-ブチルエステル基等が挙げられる。
【0079】
アルキレン基を置換する置換基としては、ヒドロキシアラルキル基が挙げられる。当該ヒドロキシアラルキル基としては、アラルキル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、炭素原子数1~20、また例えば、炭素原子数が1~12、また例えば、炭素原子数が1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の少なくとも1個の水素原子が上記アリール基で置換された基が挙げられる。かかるアラルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、炭素原子数7~12のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2-フェニルエチル基等のフェニルエチル基、1-フェニルプロピル基などのフェニルプロピル基、3-ナフチルプロピル基等当のナフチルプロピル基等が挙げられる。ヒドロキシアラルキル基としては、こうしたアラルキル基中のアリール基に結合する水素原子の少なくとも一つをヒドロキシ基で置換したヒドロキシアラルキル基が挙げられる。特に限定するものではないが、例えば、ヒドロキシベンジル基等が挙げられる。
【0080】
また、Rが、水酸基を有する基である場合において、Rが、水素原子又は炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表す。特に限定するものではないが、Rは、置換されていてもよい、水素原子又は炭素原子数1~10、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4のアルキル基を表す。アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。なお、これらの基は、置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基の置換基として前記したようなものが挙げられる。
【0081】
以上説明した第2の化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
【0082】
【化12】
【0083】
第2の化合物は、当業者であれば、公知技術に基づいて合成することができる。特に限定するものではないが、例えば、R7を備えるエステル化合物と、R9、R10を備えるアミノアルコール化合物とを縮合することにより、合成することができる。
【0084】
(ピリジンオキシムエステル化合物を用いたヒドロキシアミド化合物のエステル化方法)
本明細書に開示されるエステル化方法は、金属ルイス酸の存在下、ピリジンオキシムエステル化合物によって、ヒドロキシアミド化合物中の*印の水酸基をアシル化してエステル化する工程を、備えることができる。本エステル化方法によれば、ヒドロキシアミド化合物中の*印の水酸基をアシル化してエステル化合物とすることができる。また、本エステル化方法によれば、ヒドロキシアミド化合物に*印以外のアルコール性水酸基を有していても、*印の水酸基にアシル基を導入してエステル化合物を得ることができる。
【0085】
本エステル化方法では、金属ルイス酸を使用する。金属ルイス酸としては、ルイス酸を構成する金属とアニオン基とにより構成されているものであって、この場合の金属とは、従来よりルイス酸を構成するものとして知られているものを含め、各種の多価金属であってよい。たとえば、Al、B、Ti、Zr、Sn、Zn、Ga、Bi、Sb、Si、Cd、V、Mo、W、Mn、Fe、Cu、Co、Pb、Ni、Ag希土類金属等の各種のものが例示される。なかでも、Zn、Cu等がこのましく用いられる。
【0086】
また、アニオン基としては、特に限定しないで公知のアニオン基を用いることができる。かかるアニオン基としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)、メタンスルホン酸(MsOH)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Tf2NH)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン(HCTf3)、ペンタフルオロフェニルビス(トリフリル)メタン(C65CHTf2)、トリフルオロ酢酸(TFA)等が挙げられる。
【0087】
本エステル化方法では、これらの化合物及び金属ルイス酸の適量を、反応溶媒、反応温度及び反応時間を適宜設定することにより、エステル化合物を得ることができる。ピリジンオキシムエステル化合物とヒドロキシアミド化合物とは、理論的には当モル(当量)で反応するものであるが、ピリジンオキシムエステル化合物をヒドロキシアミド化合物よりも過剰に含むことが好ましい。例えば、ピリジンオキシムエステル化合物をヒドロキシアミド化合物に対して、好ましくは1当量超、より好ましくは1.1当量以上、さらに好ましくは1.2当量以上を用いる。なお、ピリジンオキシムエステル化合物を2.0当量程度用いても、収率は向上するものでもなく、また、選択性も低下する傾向にある。このため好ましくは1.8当量以下であり、より好ましくは1.6当量以下であり、さらに好ましくは1.4当量以下である。
【0088】
金属ルイス酸の使用量は、特に限定するものではないが、例えば、ヒドロキシアミド化合物に対して10モル%以上30モル%以下とすることができる。10モル%未満であると、意図したエステル化反応の収量が減る傾向にあるからである。また、30モル%を超えても特段メリットがないからである。より好ましくは、15モル%以上25モル%以下である。
【0089】
反応溶媒は、ピリジンオキシムエステル化合物及びヒドロキシアミド化合物並びに金属ルイス酸及びエステル化合物の十分な溶解性があればよく、特に限定するものではない。例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメトキシエタン(DME)、アセトニトリル(CHCN)等を1種類又は2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0090】
反応溶媒におけるヒドロキシアミド化合物の濃度は、特に限定するものではないが、例えば、0.05M~1M程度とすることができ、また例えば、0.1M~0.5M程度とすることができ、また例えば、0.2M~0.4M程度とすることができる。
【0091】
反応温度及び時間も、特に限定するものではないが、例えば、15℃~40℃程度の温度で3時間~20時間程度とすることができる。反応温度及び反応時間は、当業者であれば、生成するエステル化物の収量や選択性を考慮して適宜設定することができる。
【0092】
こうしたエステル化反応は、特に限定するものではないが、空気などの酸化性雰囲気中あるいは不活性ガス雰囲気中で行うことができる。不活性ガスとしては窒素ガス、アルゴンガス等の1種又は2種以上が挙げられる。また、常圧でもよいし、加圧あるいは減圧条件も適宜選択することができる。
【0093】
本エステル化方法によれば、以下の式(3)で表されるエステル化合物を得ることができる。なお、本明細書によれば、こうしたエステル化合物も提供される。式(3)におけるR1、R7及びR8及びR9は、は、既に説明した各種態様の置換基を適用することができ、これらの各種基についての好ましい態様も適用される。
【0094】
【化13】
【0095】
こうしたエステル化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0096】
【化14】
【化15】
【0097】
こうして得られるエステル化合物は、こうしたエステル化合物は、必要に応じて後処理、精製、単離等を行ってもよい。また、エステル化合物は、医薬、農薬等の中間体等に有用である。さらに、エステル化合物は、特定部分に意図したエステル基を有するために、例えば、生理活性物質のプロドラッグとして有利である。
【0098】
本エステル化方法によれば、特段、立体選択性の高い複雑な化合物を用いることなく、高い選択性で特性のヒドロキシアミド化合物のアルコール性水酸基に選択的にアシル基を導入しエステル化合物を得ることができる。したがって、工業的にも有利なエステル化方法である。本エステル化方法は、エステル化合物を製造する製造方法としても実施できる。
【実施例
【0099】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0100】
本実施例では、各種酸塩化物と各種ピリジンオキシム類との縮合反応により、ピリジンオキシムエステルを合成した。すなわち、既知のピリジンオキシム類に対し、ジクロロメタン中トリエチルアミン存在下、市販の酸塩化物を作用させる条件にて目的のピリジンオキシムエステルを合成した。なお、酸塩化物の代わりに、対応するカルボン酸を用いて、脱水縮合剤を用いた縮合反応によっても合成可能である。以下に本実施例における合成スキーム及び各種置換基を示す。
【0101】
【化16】
【0102】
(合成方法)
よく乾燥させたナスフラスコにピリジンオキシム (1.1 equiv)を量り入れ、窒素置換する。dry CH2Cl2を加えて溶解させた後、Et3N (1.1 equiv), 酸塩化物 (1 equiv)を加え、室温で2時間攪拌する。反応液を酢酸エチルで希釈後、1 M KHSO4水溶液を加えよく攪拌する。有機層を分離後、水、飽和食塩水で順次洗浄し、Na2SO4にて乾燥、吸引ろ過する。ろ液をエバポレーターで濃縮し、再結晶またはシリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行い、目的物を得た。
【0103】
得られた化合物の構造式、収率、目的物の外観、NMRデータ、MSデータ等を図2に示す。
【実施例2】
【0104】
本実施例では、実施例1にて合成したピリジンオキシム2aを用いて位置選択的アシル化反応における各種条件を検討した。今回見出した最適条件をエントリー1に記載し、エントリー1と部分的に異なる反応条件としてエントリー2-15に記載した条件にて反応を行い、精製する化合物の収率を算出した。また、対照実験として、エントリー16には酸塩化物をアシル化剤として用いる既知の方法で本反応を行った。
【0105】
(方法、エントリー1)
よく乾燥させたナスフラスコに1a (0.2 mmol)を量り入れ、窒素置換する。10% DMF/DMEを1mL加えて溶解させた後、Zn(OTf)2 (0.04 mmol), ピリジンオキシム 2a (1.2 equiv)を加え、30℃で18時間攪拌する。反応液を酢酸エチルで希釈後、水、飽和食塩水で順次洗浄し、Na2SO4にて乾燥、吸引ろ過する。ろ液をエバポレーターで濃縮し、粗生成物NMR測定を行いNMR収率を算出する。さらに、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行い、目的物3aAを得た。
【0106】
【化17】
【0107】
以上に示すように、本手法は、ピリジンオキシムエステル2aを用い、活性化剤としてZn(OTf)2、溶媒として10%DMF/DMEを用いると、高い位置選択性でアミドのα位に存在するヒドロキシ基選択的にアシル化できることがわかった。
【実施例3】
【0108】
本実施例では、位置選択的アシル化反応におけるポリオール基質について検討した。各種ポリオール1a-l(1a-lの構造は、以下の3aA~3lAにおけるエステル部分を水酸基としたものである。段落番号0082参照)とピリジンオキシムエステル2aとの組み合わせで、実施例2と同様にしてアシル化反応を行い、以下に示す化合物の収率を算出した。各反応において、特に記載がない場合には過剰にアシル化が進行した副生成物の収率は5%未満である。副生成物が生じた場合には右隣にカッコをつけて、その副生成物の構造及びNMR収率を記載した。
【0109】
【化18】
【0110】
さらに、本実施例では、β-ヒドロキシアミド1mlを用いた位置選択的アシル化反応について検討した。
【0111】
よく乾燥させたナスフラスコに、β-ヒドロキシアミド1ml(0.2 mmol)を量り入れ、窒素置換する。DMFを1mL加えて溶解させた後、ピリジンオキシム 2’a (1.2 equiv)、 (CuOTf)2benzene (0.25 equiv),を加え、30 oCで18時間攪拌する。反応液を酢酸エチルで希釈後、水、飽和食塩水で順次洗浄し、水層を酢酸エチルで再度抽出する。酢酸エチル層を合わせたのち、Na2SO4にて乾燥、吸引ろ過する。ろ液をエバポレーターで濃縮し、粗生成物NMR測定を行いNMR収率を算出する。さらに、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行い、目的物3mAを収率78%にて得た。
【0112】
【化19】
【0113】
以上に示すように、実施例4に示す方法で、ピリジンオキシムエステル2’aを用いて、高い位置選択性でアミドのβ位に存在するヒドロキシ基選択的にアシル化できることがわかった。
【0114】
本実施例で得られた化合物の構造式、収率、目的物の外観、NMRデータ、MSデータ等を図3に示す。
【実施例4】
【0115】
本実施例では、位置選択的アシル化反応におけるピリジンオキシムエステル基質について検討した。ポリオール1aとピリジンオキシムエステル2a-g(実施例1参照)との組み合わせで、実施例2と同様にしてアシル化反応を行い、以下に示す化合物の収率を算出した。各反応において、過剰にアシル化が進行した副生成物の収率は5%未満であった。
【0116】
【化20】
【0117】
以上に示すように、実施例2に示す方法で、ポリオール1aを用い、様々なピリジンオキシムエステルを用いて、高い位置選択性でアミドのα位に存在するヒドロキシ基選択的にアシル化できることがわかった。本手法で用いることができるピリジンオキシムエステルは嵩高さの異なる様々な炭化水素類のみならず、インドールのような複素環、アミノ酸誘導体が利用できた(8aA, 9aA)。またピリジンオキシムエステル側に反応性のアルコールが存在しても、高い選択性、収率で目的のアシル化反応が進行することがわかった (10aA)。実施例4にて得られた化合物の構造式、収率、目的物の外観、NMRデータ、MSデータ等を図4に示す。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B