(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20221221BHJP
A61B 3/103 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61B3/16
A61B3/103
(21)【出願番号】P 2018191471
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】山本 重義
(72)【発明者】
【氏名】辺 光春
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳人
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-051213(JP,A)
【文献】特開2013-230303(JP,A)
【文献】特開平01-097433(JP,A)
【文献】特開2000-107128(JP,A)
【文献】特開2000-235148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の種類の眼特性の測定に利用される第1測定部と第2の種類の眼特性の測定に利用される第2測定部とを備える眼科装置であって、
前記第1測定部が測定可能位置に配置され、前記第2測定部が当該第2測定部を収容する第2収容部に収容されている第1状態と、前記第2測定部が測定可能位置に配置され、前記第1測定部が当該第1測定部を収容する第1収容部に収容されている第2状態と、を切り替える切替部と、
前記第1状態において前記第1収容部のカバーとなり、前記第2状態において前記第1収容部に収容された前記第1測定部のカバーとなる第1カバーと、
前記第2状態において前記第2収容部のカバーとなり、前記第1状態において前記第2収容部に収容された前記第2測定部のカバーとなる第2カバーと、を備え、
前記切替部による切り替えに連動して、前記第1カバーは前記第1測定部の移動経路から退避し、前記第2カバーは前記第2測定部の移動経路から退避する、
眼科装置。
【請求項2】
前記第1カバーは、
前記第1測定部に向けて付勢されており、
前記第2カバーは、
前記第2測定部に向けて付勢されている、
請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記切替部は、
前記第1測定部と前記第2測定部とを備え、
前記切替部が移動することによって前記第1状態と前記第2状態とを切り替え、
前記第1カバーと前記第2カバーとの少なくとも一方は、前記切替部に連結されたリンク機構によって動作する、
請求項1または請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記切替部は、
前記第1測定部と前記第2測定部とを備え、
前記切替部が移動することによって前記第1状態と前記第2状態とを切り替え、
前記切替部は、接触部を備え、
前記第1カバーは、前記接触部が接触する接触面を備え、
前記切替部の移動の過程で前記接触部が前記接触面に接触することで、前記第1測定部の移動経路から前記第1カバーを退避させ、
前記第2カバーは、前記切替部に連結されたリンク機構によって動作する、
請求項1または請求項2に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記切替部は、水平方向に平行な回転軸を中心に回転することで前記第1状態と前記第2状態とを切り替え、
前記第1測定部は、前記切替部に対して固定された第1見口部を含み、
前記第1状態は、前記切替部が前記第1見口部の被検眼側を水平方向に向けた状態であり、
前記第2状態は、前記切替部が前記第1見口部の被検眼側を鉛直上方に向けた状態である、
請求項1~請求項4のいずれかに記載の眼科装置。
【請求項6】
前記第1状態における前記第1カバーの鉛直方向の高さは、前記第2状態における前記第1カバーの鉛直方向の高さよりも低い、
請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記切替部は、水平方向に平行な回転軸を中心に回転することで前記第1状態と前記第2状態とを切り替え、
前記第2測定部は、空気噴出口に連なる空気路を有し、前記切替部に対して固定された第2見口部を含み、
前記第2状態は、前記切替部が前記空気噴出口を水平方向に向けた位置であり、
前記第1状態は、前記切替部が前記空気噴出口を鉛直下方に向けた位置である、
請求項1~請求項6のいずれかに記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の測定部が連動して動作することで使用対象となる測定部切り替える構成を備えた眼科装置が知られている。例えば、特許文献1においては、回転部を回転させることによって被検眼の眼前に眼圧測定のための装置が配置された状態と、眼屈折率測定のための装置が配置された状態とを切り替える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼科装置において被検眼の眼前に配置される測定部は、光学部品を備える、清潔な状態が保たれる必要があるなどの理由から、使用しない場合であってもカバーで保護されていることが好ましい。しかし、複数の測定部を備える眼科装置において、使用対象の測定部を切り替えるたびに各測定部のカバーをそれぞれ別個に動作させる必要があると、煩雑であり、例えば、特定の測定部のカバーを動作させることを忘れてしまうなどの状況を誘発し得る。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、使用対象の測定部がどのように切り替えられたとしても、複数の測定部のそれぞれのカバーが適切に使用されているようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、眼科装置は、第1の種類の眼特性の測定に利用される第1測定部と第2の種類の眼特性の測定に利用される第2測定部とを備える眼科装置であって、前記第1測定部が測定可能位置に配置され、前記第2測定部が当該第2測定部を収容する第2収容部に収容されている第1状態と、前記第2測定部が測定可能位置に配置され、前記第1測定部が当該第1測定部を収容する第1収容部に収容されている第2状態と、を切り替える切替部と、前記第1状態において前記第1収容部のカバーとなり、前記第2状態において前記第1収容部に収容された前記第1測定部のカバーとなる第1カバーと、前記第2状態において前記第2収容部のカバーとなり、前記第1状態において前記第2収容部に収容された前記第2測定部のカバーとなる第2カバーと、を備え、前記切替部による切り替えに連動して、前記第1カバーは前記第1測定部の移動経路から退避し、前記第2カバーは前記第2測定部の移動経路から退避する。
【0006】
すなわち、少なくとも2種類の測定部を備える眼科装置において、切替部によって使用対象の測定部が切り替えられる。この構成において、各測定部が使用されない場合にはそれぞれの測定部がカバーで保護される。測定部が切り替えられる場合、切り替えに連動して各カバーが各測定部の移動経路から退避する。そして、各カバーが退避することで形成されたスペースを移動経路として各測定部が移動する。従って、測定部の使用対象を切り替える動作に、各測定部のカバーが連動する。このため、使用対象の測定部がどのように切り替えられたとしても、複数の測定部のそれぞれのカバーが適切に使用されているようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】眼圧を測定する際に利用される第2測定部を含む光学系を示す図である。
【
図2】眼屈折率を測定する際に利用される第1測定部を含む光学系を示す図である。
【
図4】制御系を含めた本発明の一実施例に係る眼科装置の全体構成を説明するブロック図である。
【
図6】
図6A,
図6Bは、ヘッド部を前後方向および上下方向に平行な平面で切断し、切替部700に関連する部分を抜き出して示した図である。
【
図7】
図7A,
図7Bは、ヘッド部を前後方向および上下方向に平行な平面で切断し、切替部700に関連する部分を抜き出して示した図である。
【
図8】
図8A~
図8Cは、第1測定部の移動経路から第1カバーを退避させる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)眼科装置の構成:
(2)カバーの構成:
(2-1)第1カバーの構成:
(2-2)第2カバーの構成:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)眼科装置の構成:
本発明の一実施形態にかかる眼科装置1は筐体を備えおり、筐体内には、第1の種類の眼特性の測定に利用される第1測定部と第2の種類の眼特性の測定に利用される第2測定部とが備えられている。本実施形態において第1測定部は眼屈折率を測定するための光学系の一部であり、第2測定部は眼圧を測定するための光学系の一部である。
図1は、第2測定部を含む光学系を示す図であり、
図2は第1測定部を含む光学系を示す図である。すなわち、本実施形態にかかる眼科装置1は、眼圧と眼屈折力との2種類の眼特性を測定可能である。
【0010】
図3は測定に際して被験者の眼前に配置される見口部を含む切替部を模式的に説明する図であり、
図4は制御系を含めた本発明の一実施例に係る眼科装置1の全体構成を説明するブロック図である。これら
図1~
図4を用いて本発明の一実施例に係る眼科装置1について以下に説明する。
【0011】
眼科装置1は
図4に示すように、被検眼を測定するための光学系が配置されたヘッド部602とヘッド部602の中の光学系や切替部の回転動作などを制御する制御部600を備えた本体部601で構成される。なお、本体部601は、ヘッド部602を本体部601に対してXYZ(左右、上下、前後)方向に移動させるXYZ駆動制御部630、ヘッド部602の空間位置の調整等を支持するジョイスティック640、撮影された前眼部の画像や測定結果を表示するモニタ650、測定項目等の指示を受け付けるタッチパネル660、制御部600の制御処理において利用されるメモリ670、固視標部(後述)を制御する固視標制御部680を備えている。測定時はヘッド部602を本体部601に対してXYZ(左右、上下、前後)方向に移動して被検眼の測定を実施する。
【0012】
(眼圧測定光学系)
図1には被検眼の眼圧測定を行う全体光学系(眼圧検査光学系)を示す。眼圧測定光学系は、光源101からプロファイルセンサ107、108に至る光路上の光学素子等を含むアライメント光学系100を備えている。また、眼圧測定光学系は、光源301、302から2次元撮像素子(CCD)306に至る光路上の光学素子等を含む観察光学系300を備えている。さらに、眼圧測定光学系は、光源401から反射ミラー404を経て被検眼Eに至る光路上の光学素子等を含む固視光学系400と、光源201からノズル205に至る光路上の光学素子等を含み被検眼の角膜の変形度合いを検出する変位変形検出受光光学系200とを備えている。
図1に示すように眼圧測定光学系を構成する各光学系はその一部が共有される構成になっている。本実施形態においては、後述する切替部を回転させることにより、被検眼の眼前に配置される見口部を切り替えることができる。眼圧測定の際には切替部が回転されて位置決めされ、眼圧測定のためのノズル205が被検眼の眼前に配置される。
【0013】
(アライメント光学系100)
アライメント光学系100は、光源101からの光がホットミラー102で反射され、対物レンズ103を通り、ホットミラー104で反射された後、平面ガラス206及びノズル205の開口部を通り被検眼Eの角膜に照射する。本実施例では、光源101は赤外光を出力するLEDが採用されている。
【0014】
角膜で反射された光は、主光軸O1に対して対称的に配置された第1の検出部であるレンズ105及びプロファイルセンサ107、第2の検出部であるレンズ106及びプロファイルセンサ108で受光される。プロファイルセンサ107及びプロファイルセンサ108で得られた信号は本体部601の制御部600で処理され、XYZ駆動制御部630によりヘッド部602が被検眼に対して3次元方向にアライメントされる。具体的には、モニタ650に表示された前眼部画像のアライメント光による輝点を検者が見て本体部601に備えられたジョイスティック640を操作することによって、粗アライメントが行われる。この後、輝点が所定の範囲に入るとXYZ駆動制御部630によりXYZのオートアライメント(微調整)を実施するように制御される。
【0015】
(観察光学系300)
観察光学系300が利用される場合、ヘッド部602の被検眼側に配置された光源301及び光源302により被検眼の角膜部を含む前眼部領域が照射される。この状態で、対物レンズ303、結像レンズ305及び2次元撮像素子(CCD)306により、被検眼の前眼部画像が取得され、取得された被検眼の前眼部画像がモニタ650に表示される。光源301及び光源302は赤外光を出力するLEDが採用されるが、アライメント用の光源101より短波長の光を採用する。そのため、ホットミラー104は観察用の光(観察光)は透過し、アライメント用の光(アライメント光、光源101からの光)は反射する。また、ダイクロイックミラー304は、観察光は透過するように反射/透過の波長領域が設定されている。これにより、アライメント光と観察光は適切に分割され、各々の測定を可能にしている。
【0016】
(固視光学系400)
固視光学系400が利用される場合、光源401からの光(固視光)がホットミラー402で反射され、リレーレンズ403を通り、反射ミラー404で反射される。この後、光はホットミラー506を透過し、ダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通り、対物レンズ303、ホットミラー104を通って、被検眼の網膜上で結像する。そのため、光源401と被検眼の網膜位置は略共役であることが望ましい。被検眼は固視光に基づいて固視され、眼圧測定などの眼特性の測定が可能になる。光源401は被検者が視認可能な可視光を出力するLEDが採用される。
【0017】
(変位変形検出受光光学系200)
変位変形検出受光光学系200が利用される場合、光源201からの光(変形検出光)の一部がハーフミラー202を透過後、ホットミラー102、対物レンズ103を透過し、ホットミラー104で反射して主光軸O1を通る。さらに、光は、平面ガラス206、ノズル205の開口部を通って、被検眼の角膜に照射する。角膜に照射した光は角膜で反射し、逆の経路で、ノズル205の開口部、平面ガラス206を通過し、ホットミラー104で反射して対物レンズ103、ホットミラー102を通り、その一部がハーフミラー202で反射される。その後、光は、集光レンズ203により、受光素子204で受光される。後述するが、眼圧測定時は、ノズル205の先端に設けられた空気噴出口から圧縮された空気が被検眼の角膜に向けて噴射される。空気が噴射されると角膜は変位変形するため受光素子204で受光する光量が変化する。この光量の変化の度合いから被検眼の眼圧値を算出するのである。光源201も赤外光を出力するLEDが採用されるが、観察光より長波長で、かつ、アライメント光より短波長を光が選択され、採用される。このように、アライメント光、観察光、固視光、変形検出光(光源201からの光)の波長が設定され、ホットミラー102、104、506、402及びダイクロイックミラー304の反射/透過特性を適宜設定することにより、これら4つの光が適切な光路に沿って進むように構成されているのである。
【0018】
(眼屈折力測定光学系)
図2には被検眼の眼屈折率測定を行う全体光学系(眼屈折力測定光学系)を示す。眼屈折力測定光学系は、光源101からプロファイルセンサ107、108に至る光路上の光学素子等を含むアライメント光学系100を備えている。また、眼屈折力測定光学系は、光源301、302から2次元撮像素子(CCD)306に至る光路上の光学素子等を含む観察光学系300を備えている。さらに、眼屈折力測定光学系は、光源514から固視標512、反射ミラー404を経て被検眼Eに至る光路上の光学素子等を含む固視光学系400を備えている。さらに、眼屈折力測定光学系は、光源501からミラー503や平面ガラス511を経て被検眼Eに至る光路上の光学素子等を含み、被検眼の眼屈折力を検出する眼屈折力光学系500から構成される。
図2に示すように眼屈折力測定光学系を構成する各光学系はその一部が共有される構成になっている。そして、眼屈折力測定の際には切替部が回転されて位置決めされ、眼圧測定のための平面ガラス510及び511が被検眼の眼前に配置される。
【0019】
アライメント光学系100と観察光学系300は上述の眼圧測定時と同じであるので、ここでは、説明を省略する。固視光学系400は、眼圧測定時とは一部異なるため、以下に説明する。
【0020】
(固視光学系400:眼屈折力測定)
眼屈折力を測定する場合は、眼圧測定時に用いた光源401を消灯して、別の光源である光源514を点灯する。光源514からの光はコリメータレンズ513で平行光とされ、固視標512に照射される。そして、固視標512からの光はホットミラー402、リレーレンズ403を透過した後、反射ミラー404で反射し、ホットミラー506を透過して、ダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通る。この後、光は、対物レンズ303、ホットミラー104、平面ガラス511、510を透過して、被検眼Eの網膜上で結像する。そのため、固視標512と被検眼の網膜位置は略共役であることが望ましい。被検眼は固視標512に基づいて固視される。眼屈折力を測定する際は、制御部600が固視標制御部680に制御指示を出力する。この結果、固視標制御部680は、固視標と被検眼の網膜位置が略共役になるように固視標部(固視標512、コリメータレンズ513及び光源514)を移動制御して被検眼を固視させる。その後、制御部600が固視標制御部680に制御指示を出力し、固視標制御部680が固視標部を所定距離移動して雲霧状態にしてから、眼屈折力を測定する。そのため、制御部600からの信号により固視標部は光軸に沿って前後に移動可能となっている。光源514は光源401より短波長である被検者が視認可能な可視光を出力するLEDが採用される。
【0021】
(眼屈折力光学系500)
眼屈折力光学系500が利用される場合、光源501からの光(レフ光)が集光レンズ502で集光し、ミラー503で反射して穴あきミラー504の中心にある穴を通る。そして、光軸O2に対して斜めに配置し、図示しない駆動部により光軸O2を中心に回転する平行平面ガラス505を光が透過した後、光は、ホットミラー506及びダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通る。そして、光は、対物レンズ303、ホットミラー104、平面ガラス511及び平面ガラス510を透過して被検眼Eの網膜に照射する。そして、被検眼Eの網膜からの反射光は、照射時とは逆の経路で、平面ガラス510、平面ガラス511、ホットミラー104及び対物レンズ303を透過する。さらに、光は、ダイクロイックミラー304及びホットミラー506で反射して光軸O2を通り、平行平面ガラス505を透過した後、穴あきミラー504で反射し、レンズ507を透過する。その後、光は、リングレンズ508により、2次元撮像素子(CCD)509でリング状に結像(リング像)する。光源501は、アライメント光(光源101)や観察光(光源301及び302)より長波長の赤外光が採用されている。本実施例では、波長870nmのSLD(スーパールミネッセントダイオード)を採用しているが、これに限定するものではなく、光源101などに採用したLEDやレーザーダイオード(LD)を採用してもよい。
【0022】
ここで、平行平面ガラス505は被検眼Eの瞳孔に共役となる位置に配置されている。レフ光(光源501からの光)は、光軸O2に対して斜めに配置した平行平面ガラス505に入射すると屈折して光軸O2に対して所定距離(例えばΔH)ずれる。上述のように、平行平面ガラス505は光軸O2を中心に回転するため、平行平面ガラス505を透過したレフ光は平行平面ガラス505の位置で、半径ΔHで回転する。平行平面ガラス505は被検眼Eの瞳孔位置と共役な位置に配置されているため、被検眼Eの瞳孔位置で所定(一定)の半径(例えばΔh)で回転しながら被検眼の網膜上に照射する。このため、レフ光は被検眼Eの網膜上で被検眼Eの眼屈折力に応じた大きさや形状を持つ円状に結像される。CCD509は被検眼Eの網膜と共役の位置に配置されているため、CCD509で取得したリング像を解析することにより、被検眼の眼屈折力を求めることができるのである。
【0023】
(見口部)
次に、本実施形態における切替部について
図3を参照して説明する。
図3A~
図3Dは見口部を搭載した切替部700を模式的に示す図である。切替部700は、ヘッド部602に設けられた回転軸に対して回転可能に支持される。本実施形態において、切替部700は、第1測定部および第2測定部を備えている。すなわち、本実施形態においては、眼屈折率を測定するための光学系に含まれ、切替部700によって切り替えられる部分が第1測定部である。また、眼圧を測定するための光学系に含まれ、切替部700によって切り替えられる部分が第2測定部である。
【0024】
【0025】
なお、本実施形態においては、被検眼Eの視線方向であって水平方向に平行な方向を前後方向、視線方向に垂直であって水平方向に平行な方向を左右方向(横方向)、鉛直方向を上下方向とする。
図3Aおよび
図3Cは、切替部700を被検眼Eの右側の空間から眺めた状態を示している。
【0026】
第1測定部は、眼屈折力測定時に被検眼Eの視線方向に配置される第1見口部510a,平面ガラス510および511を備えている。第2測定部は、眼圧測定時に被検眼Eの視線方向に配置される第2見口部205a,ノズル205および平面ガラス206を備えている。すなわち、切替部700の内部は空洞であるとともに、当該空洞は直交する2個の筒状の空洞が連結されるようにして形成されている。そして、一方の筒状の空洞の軸に沿ってノズル205および平面ガラス206が配置されている。また、他方の筒状の空洞の軸に沿って平面ガラス510,511が配置されている。なお、
図3Aおよび
図3Cにおいては、筒状の空洞の軸が一点鎖線によって示されている。
【0027】
切替部700は、筒状の空洞の軸の交点を通り、左右方向に平行な回転軸Axを中心に回転できるようにヘッド部602に対して支持されている。すなわち、切替部700が回転すると、被検眼Eの眼前にノズル205が配置される状態と、平面ガラス510が配置される状態とを切り替えることができる。
【0028】
切替部700の内部に形成された空洞には眼圧測定の際にノズル205から被検眼Eに向けて空気を噴射させるためのシリンダーSが接続される。本実施形態においては、
図3B,
図3Dに示すように切替部700の右側にシリンダーSが配置され、シリンダーSは配管Paを介して切替部700に接続される。本実施形態においては、配管Paと切替部700との接続部Pa1において、配管Pa内における空気路の中心軸が切替部700の回転軸Axと一致するようにシリンダーSと切替部700とが接続されている。むろん、配管Paは切替部700の左右どちら側に接続されていても良い。
【0029】
眼圧測定時は、制御部600がシリンダー制御部620に制御信号を出力する。この結果、シリンダー制御部620は、ソレノイド等のアクチュエータを駆動する。アクチュエータが駆動されると、アクチュエータによって動作するシリンダーS内のピストンPsが空気を押し出す(
図3Aに示す矢印F
1)。さらに、空気が切替部700内部の空洞を流れ(
図3Aに示す矢印F
2)、ノズル205から被検眼Eの角膜に空気が噴出される。
【0030】
第1測定部と第2測定部は、制御部600が切替部700を移動させることによって切り替えられる。すなわち、切替部700には図示しないモーターが接続されており、制御部600が切替制御部610に制御信号を出力すると、切替制御部610はモーターを動作させることができる。モーターが動作すると、
図3に示す回転機構部790を介してモーターの回転駆動力が切替部700に伝達され、切替部700が回転軸Axを中心に回転する。
【0031】
切替制御部610は、モーターの回転方向および回転量を制御することができる。制御部600が、眼屈折力測定の開始を示す制御信号を出力すると、切替部700が
図3Aに示す状態であれば切替制御部610がモーターを駆動させ、切替部700を
図3Cに示す状態に回転移動させる。切替部700が既に
図3Cに示す状態である場合、切替制御部610は切替部700を回転させない。いずれにしても、この状態においては、眼屈折率を測定するための第1測定部が測定可能位置に配置され、第2測定部は測定可能位置に配置されていない。この状態において第2測定部は、ヘッド部602の筐体内に収容される(詳細は後述)。本実施形態においては、この状態を第1状態と呼ぶ。
【0032】
制御部600が、眼圧測定の開始を示す制御信号を出力すると、切替部700が
図3Cに示す状態であれば切替制御部610がモーターを駆動させ、切替部700を
図3Aに示す状態に回転移動させる。切替部700が既に
図3Aに示す状態である場合、切替制御部610は切替部700を回転させない。いずれにしても、この状態においては、眼圧を測定するための第2測定部が測定可能位置に配置され、第1測定部は測定可能位置に配置されていない。この状態において第1測定部はカバーで保護される(詳細は後述)。本実施形態においては、この状態を第2状態と呼ぶ。
【0033】
(2)カバーの構成:
以上のように、本実施形態においては、切替部700を回転させることによって第1状態と第2状態とを切り替えることができる。本実施形態において、第1状態では第2測定部が使用されず、第2状態では第1測定部が使用されない。そこで、本実施形態においては、使用されない測定部を収容するように構成されている。本実施形態において、収容先はヘッド部602であるが、測定部が収容された状態において、使用しない測定部がカバーによって保護されるように構成されている。
【0034】
すなわち、第1測定部および第2測定部は、眼特性を測定する光学系を構成する光学部品を含み、光学部品は精巧な部品である。また、第1測定部および第2測定部は、眼前に配置されるため、ほこりや指紋等の汚れの付着が防止され、清潔な状態が保たれるべきである。そこで、本実施形態においては、収容された状態の第1測定部および第2測定部を保護するための第1カバーおよび第2カバーがヘッド部602に設けられている。
【0035】
図5A~
図5Cは、ヘッド部602の実例を示す斜視図である。ヘッド部602には、後方において切替部700に取り付けられた見口部が露出するように切替部700が回転軸に支持されている。
図5Aは第1状態、
図5Bは第2状態を示し、
図5Cは第1状態と第2状態とを切り替えている過程を示している。
【0036】
図5Aは、第1測定部が測定可能位置に存在する第1状態であるため、第1測定部を構成する平面ガラス510が取り付けられた第1見口部510aの被検眼側が水平方向後方を向き、眼前に位置する。
図5Bは、第2測定部が測定可能位置に存在する第2状態であるため、第2測定部を構成するノズル205を備える第2見口部205aの被検眼側が水平方向後方を向き、眼前に位置する。
【0037】
第1測定部を構成する第1見口部510aは、
図5Aから
図5Cを経て
図5Bに至ると第1見口部510aの被検眼側を鉛直上方に向けた状態でヘッド部602の上部に収容される。このため、ヘッド部602の後方の上部には、第1カバー10が設けられている。ヘッド部602の後方の上部には、第1見口部510a等を備える第1測定部が収容される第1収容部が設けられている。第1測定部が使用されない第2状態において第1測定部が第1収容部に収容され、第1測定部が使用される第1状態において第1測定部は第1収容部に収容されず、被検眼Eの眼前に位置する。従って、第1カバー10は、第1状態において第1収容部のカバーとなり、第2状態において第1収容部に収容された第1測定部のカバーとなる。
【0038】
なお、第1カバー10は、第1カバー10の前方側に設けられた回転軸に対して回転可能に支持される(詳細は後述)。従って、第1カバー10の後方が揺動するが、この際、第1カバー10の左右方向に検査者等の指が挟まれないようにするため、第1カバー10とヘッド部602との間に隙間が形成されないように構成されている。具体的には、第1カバー10は、上方において露出する面から、下方に向けて延びるリブ10rを備えている。当該リブ10rは、第1カバー10が最大限上方に揺動した状態であっても第1カバー10とヘッド部602との間に隙間が形成されない長さを有している。
【0039】
また、ヘッド部602の上部においては凹部が形成されており、当該凹部に第1カバー10が嵌まるようにして第1カバー10が回転軸に支持される。当該凹部の縁の形状は、第1カバー10に形成されたリブ10rの形状に沿うように設計されている。リブ10rは、当該筐体の形状に沿うようにして下方に延びているため、第1カバー10が上方に揺動した状態において、左右方向および前方のいずれの部位にも隙間を生じさせない。従って、眼特性が測定される際に、作業者等が第1カバー10の周囲に手や指を配置しつつ開瞼作業等を行ったとしても、第1カバー10とヘッド部602との間に指が挟まれることはない。
【0040】
さらに、第1測定部が使用されない第2状態において、第1見口部510aは、被検眼側を鉛直上方に向けた状態でヘッド部602の上部に収容される。そして、この状態において、第1見口部510aの被検眼側は、上から第1カバー10でカバーされる。従って、第1見口部510aが使用されない状態において、ほこりや指紋等の汚れの付着が防止され、清潔な状態が保たれる。
【0041】
第2測定部を構成する第2見口部205aは、
図5Bから
図5Cを経て
図5Aに至ると第2見口部205aの被検眼側を鉛直下方に向けた状態でヘッド部602の後方の内部に収容された状態になる。この際、第2見口部205aの移動経路が開口した状態にならないようにするため、ヘッド部602の後方には、第2カバー20が設けられている。すなわち、ヘッド部602の後方の内部には、第2見口部205a等を備える第2測定部が収容される第2収容部が設けられている。第2測定部が使用されない第1状態において第2測定部が第2収容部に収容され、第2測定部が使用される第2状態において第2測定部は第2収容部に収容されず、被検眼Eの眼前に位置する。従って、第2カバー20は、第2状態において第2収容部のカバーとなり、第1状態において第2収容部に収容された第2測定部のカバーとなる。
【0042】
第2測定部が使用されない第1状態において、第2見口部205aの被検眼側に存在する空気噴出口は、ヘッド部602の内部に存在し、かつ、下方を向いており、さらに第2カバー20が存在することによってヘッド部602の外部に露出しない状態になっている。従って、第2見口部205aに対するほこりや指紋等の汚れの付着が防止され、清潔な状態が保たれる。また空気噴出口の内部にほこりや汚れが進入することが防止される。
【0043】
(2-1)第1カバーの構成:
次に、第1カバーの構成を詳細に説明する。
図6A,
図6B,
図7A,
図7Bは、ヘッド部602を前後方向および上下方向に平行な平面で切断し、切替部700に関連する部分を抜き出して示した図である。なお、
図6Aが第1状態、
図7Bが第2状態であり、
図6A,
図6B,
図7A,
図7Bの順で第1状態から第2状態に向けて徐々に切替部700が回転する様子が示されている。
【0044】
第1カバー10は、ヘッド部602の後方上部に形成された凹部に嵌まる形状を有しており、ヘッド部602に設けられた回転軸10aに対して第1カバー10の前方の端部側の部位が回転可能に支持される。従って、第1カバー10は、回転軸10aを中心とし、ヘッド部602の後方側の端部が揺動するように構成されている。本実施形態において、第1カバー10は、第1測定部に向けて付勢されている。具体的には、本実施形態において第1カバー10は、第1見口部510a等を備える第1測定部や、第1測定部を収容する第1収容部10bを、上方側から保護するカバーである。そこで、第1カバー10には、鉛直下方に向けた力(回転軸10aを中心に
図6A等の時計回り方向に向けた力)が常に作用するように、バネ10cが取り付けられている。従って、第1カバー10は、可能な限り第1見口部510a等を備える第1測定部との隙間が開かないように構成されている。また、第1カバー10が過度に回転し、第1収容部10bを開け放ったままにすることはない。当該バネ10cが存在すれば、重力を利用しなくても第1カバー10と第1測定部との間の隙間ができる限り小さくなるようにすることができる。
【0045】
第1カバー10は、第1見口部510a等を備える第1測定部と第1カバー10との隙間が既定の間隔未満になるように設計されている。ここで、既定の間隔は、人間の指が入る間隔よりも狭い間隔である。例えば、
図6Aに示す第1状態においては、第1測定部の上端の部位700aと第1カバー10との間にほとんど隙間が発生しないように設計されている。このため、この状態の第1カバー10の位置が維持された状態で切替部700の回転によって第1見口部510aが反時計回りに回転すると、第1見口部510aと第1カバー10とが干渉してしまう。
【0046】
そこで、本実施形態においては、切替部700の回転動作に連動して第1カバー10が第1測定部(第1見口部510a)の移動経路から退避するように構成されている。具体的には、切替部700には、第1カバー10を退避させるための接触部が設けられており、第1カバー10には、当該接触部が接触する接触面が設けられている。そして、切替部700の回転移動の過程で接触部が接触面に接触することで、第1測定部(第1見口部510a)の移動経路から第1カバー10を退避させる。
【0047】
図8A~
図8Cは、第1測定部(第1見口部510a)の移動経路から第1カバー10を退避させる様子を示す図である。
図8A~
図8Cにおいては、切替部700を被検眼Eの右側の空間から眺めた状態を示している。また、
図8Aは第1状態、
図8Cは第2状態であり、
図8Bは第1状態から第2状態に切り替える過程を示している。
【0048】
切替部700は、右方向(図面手前方向)に突出する円柱状の接触部700bを備えている。一方、第1カバー10は鉛直下方および前後方向に延びるリブ状の部位を備えており、当該リブ状の部位の下端面が接触面10dを構成している。接触面10dは、鉛直下方に向けられた曲面であり、前後方向に延びている。また、接触面10dは、第1状態において接触面10dの後方の端部において接触部700bと接し、第2状態において接触面10dの前方の端部において接触部700bと接する。さらに、接触面10dは、第1状態から第2状態に切り替わる全課程において、接触部700bに接する。
【0049】
すなわち、接触部700bは、切替部700の回転中心Orから特定の距離Rにおいて右方向に突出しているため、切替部700が回転すると、接触部700bは回転中心Orから特定の距離を半径とした円弧上を移動する。この移動過程の全ての過程で接触面10dが接触部700bに接した状態である。そして、第1状態において接触部700bの回転中心Orと接触面10dとの距離Lrは、半径Rより短い。
【0050】
従って、切替部700の回転に伴って接触部700bが回転すると、接触部700bが接触面10dを押し上げる。この結果、第1カバー10は、回転軸10aを中心に揺動し、例えば
図8Bに示すような状態になる。本実施形態において、接触面10dの曲面形状は、第1状態から第1カバー10を押し上げる量を調整する形状である。本実施形態においては、接触面10dの形状を調整することにより、第1測定部の回転によって第1カバー10を押し上げ、第1見口部510aが通過する空間(移動経路)から第1カバー10を退避させる(
図8B)。
【0051】
さらに、第1カバー10が退避し、第1見口部510aと干渉することなく第1見口部510aを通過させると、第1見口部510aが第1カバー10の下方に収容された状態になる。第1見口部510aが第1カバー10の下方に収容されていく過程においては、第1カバー10が徐々に下降することによって第1カバー10と第1測定部との間の隙間が過度に大きくならないように構成されている。具体的には、本実施形態においては、第1カバー10と第1測定部(第1見口部510a等)との間の隙間に指が挟まらないように形成されている。すなわち、第1カバー10と第1測定部との間の隙間の最大値が、既定値以下になるように設計されており、当該既定値は、統計的に人間の指が入らないような隙間の大きさとなるように設計されている。
【0052】
第1カバー10は第1測定部(第1見口部510a)の移動経路から退避するが、退避量はできるだけ小さくなるように構成されている。すなわち、第1カバー10には、バネ10cが取り付けられており、第1カバー10は第1測定部(第1見口部510a)側に付勢されている。従って、第1状態から第2状態に切り替える過程において、第1カバー10と第1測定部との間に過度の隙間が形成されず、作業者が指を挟むことはない。
【0053】
さらに、本実施形態においては、第2状態において第1見口部510aの被検眼側が鉛直上方を向いた状態で第1見口部510aが第1カバー10の下方の第1収容部10b(
図6A等参照)に収容される。一方、第1状態において第1収容部10bに第1見口部510aは存在せず、第1収容部10bが空になる。このため、第1状態における第1カバー10の後部の鉛直方向の高さH
1は、第2状態における第1カバー10の後部の鉛直方向の高さH
2よりも低くなっている(高さの基準点は任意)。従って、眼屈折率を測定する際において作業者等が開瞼作業を行うために、第1カバー10の周囲に手や指を配置するスペースが確保されることになり、作業が容易になる。
【0054】
(2-2)第2カバーの構成:
次に、第2カバーの構成を詳細に説明する。第2カバー20は、ヘッド部602の後方下部においてヘッド部602の内部に取り付けられる。また、第2カバー20の一部は、ヘッド部602の後方の筐体に形成された開口部を塞ぐように機能する。
【0055】
本実施形態において、第2カバー20は、板状の部材であり、上部において2回屈曲している。第2カバー20においては、ヘッド部602の内側を向いた面に前方に向けて突出する突出部20a1,20b1が設けられている。突出部20a1は第2カバー20の上部において左右各1個設けられ、突出部20b1は第2カバー20の下部において左右各1個設けられており、
図6A,
図6B,
図7A,
図7Bにおいては、突出部20a1,20b1の一方(右側)を示している。
【0056】
ヘッド部602の内部には、溝603が設けられている。溝603は、ヘッド部602の後方側の内部において、切替部700の下方の点からさらに下方に向けて形成された溝であり、上から下に向けて溝の向きが後から前に向かうように、ヘッド部602内で斜めに形成されている。また、溝603は、前後方向の幅が略一定であり、左右方向の深さが略一定である。
【0057】
溝603は、ヘッド部602の筐体に形成されていても良いし、ヘッド部602の筐体に対して取り付けられた部品に形成されていても良い。いずれにしても、溝603は、第2カバー20の左右側に各1個形成されており、突出部20a1,20b1に隣接した位置に形成されている。そして、突出部20a1,20b1のそれぞれには、左右方向に延びる突起が形成されており、当該突起を溝603に挿入することができる。
【0058】
突起の幅は溝603の幅よりも僅かに小さく、突起が溝603に挿入された状態において、突起が溝603に沿って移動することができる。従って、第2カバー20は、当該突起の溝603に沿った移動により、姿勢が一定の状態で上下方向にスライドする。また、上下方向にスライドする動作と同時に前後方向にスライドする。すなわち、第2カバー20が、最上部に位置する状態から下方に向けてスライドすると、スライドとともに第2カバー20が前方にスライドする。
【0059】
本実施形態において、第2カバー20にはリンク機構21が連結されている。リンク機構21は板状の部材の中央寄りの部分が鈍角に曲げられたような形状である。リンク機構21の上端部21aは切替部700の第2見口部205aに対して回転可能に連結されている。一方、リンク機構21の下端部21bは、第2カバー20の下部に設けられた突出部20b1に対して回転可能に連結されている。なお、リンク機構21の上端部21a、下端部21bの双方において、回転軸は左右方向に平行である。
【0060】
従って、リンク機構21は、切替部700の回転動作を第2カバー20に伝達し、切替部700の回転動作に応じて第2カバー20を上下(後前)にスライド移動させる部材として機能する。以上の構成により、切替部700を回転移動させるだけで、第2カバー20をスライド移動させ、ヘッド部602の開口部を開閉させることができる。
【0061】
さらに、切替部700によって第1状態から第2状態に切り替えられる際の動作を説明する。
図6Aに示す第1状態において、第2測定部の第2見口部205aは、ヘッド部602の内部(
図7Aに示す第2収容部20b)に収容されている。また、第2カバー20はその可動範囲の上端に位置し、第1見口部510aの下方に設けられたヘッド部602の開口部を塞いでいる。従って、第1状態において、第2カバー20は、第2収容部20bに収容された第2測定部のカバーとなっている。なお、リンク機構21は、上端部21aと下端部21bとを結ぶ部材であるが、平面状ではなく屈曲した板状の部材である。このため、第1状態において第2カバー20と第2見口部205aとが干渉せずに、第2見口部205aを第2収容部20bに収容することができる。
【0062】
第1状態において上端部21aは、
図6Aに示すように、切替部700の回転軸Axよりも前方に存在する。この状態から第2状態に向けて変化する過程で切替部700が回転すると、上端部21aは、後方に移動しながら一旦下方に移動し、最下端まで移動すると、
図6Bのように後方に移動しつつ徐々に上方に移動し始める。
【0063】
従って、リンク機構21に連結されている第2カバー20は、
図6Aに示す第1状態から、一旦下方にスライドし、下端(
図6Bはほぼ下端である)に達した後に上昇し、
図7Aを経て第2状態(
図7B)に至る。この動作の過程において、第2カバー20が最下端に達した近辺で、第2測定部(第2見口部205a)が、第2カバー20に触れることなくその直上を通過する。
【0064】
すなわち、第1状態において第2カバー20は、第1見口部510aの下方における開口部を塞ぐように配置されている。しかし、第1状態における第2カバー20の位置が変化しない状態で切替部700が回転すると、第2状態に変化する過程で第2カバー20と第2見口部205aとが干渉してしまう。そこで、本実施形態においては、リンク機構21によって第2カバー20を、一旦、第2測定部(第2見口部205a)の移動経路から退避させる。この結果、
図6Bに示すように第2見口部205aが第2カバー20と干渉することなく移動可能になる。
【0065】
この後、切替部700がさらに回転すると、
図7Aに示すように第2測定部(第2見口部205a)がヘッド部602の外部に露出した状態となり、徐々に第2カバー20が上方にスライドする。そして、
図7Bに示すように第2測定部の第2見口部205aが測定可能位置に達すると、第2状態となる。当該第2状態では、第2見口部205aがヘッド部602の下部内部の第2収容部20bに存在せず、第2収容部20bが空になる。従って、第2状態において第2カバー20は、第2収容部20bをカバーしていることになる。
【0066】
さらに、本実施形態において、第2カバー20は、第2測定部に向けて付勢されている。具体的には、第2見口部205aを含む第2測定部は、第2カバー20から見て上方に存在する。そこで、本実施形態において第2カバー20には、鉛直上方に向けた力が常に作用するように、バネ20cが取り付けられている。
【0067】
すなわち、溝603の上方にはフックが設けられており、当該フックと突出部20b1とに対してバネ20cが取り付けられている。このため、第2カバー20には、常に上方に向けた力が作用する。従って、第2カバー20は、可能な限り第2見口部205a等を備える第2測定部との隙間が開かないように構成されている。
【0068】
本実施形態において、第2カバー20の形状およびリンク機構21の形状は、第2カバー20の上端と第2測定部(第2見口部205a等)との間の隙間の最大値が、既定値以下になるように設計されている。なお、当該既定値は、統計的に人間の指が入らないような隙間の大きさとなるように設計されている。
【0069】
第2カバー20は第2測定部(第2見口部205a)の移動経路から退避するが、退避量はできるだけ小さくなるように構成されている。すなわち、第2カバー20には、バネ20cが取り付けられており、第2カバー20は第2測定部(第2見口部205a)側に付勢されている。従って、第1状態から第2状態に切り替える過程において、第2カバー20と第2測定部との間に過度の隙間が形成されず、作業者が指を挟むことはない。なお、バネ20cが存在すれば、重力を利用しなくても第2カバー20と第2測定部との間の隙間ができる限り小さくなるようにすることができる。
【0070】
以上のように、本実施形態における第1カバー10および第2カバー20は、切替部700が回転することにより、切替部700に連動して動作する。そして、本実施形態においてはできるだけ隙間を小さくするように構成されており、第1状態および第2状態における第1カバー10および第2カバー20の位置は、移動過程の第1測定部や第2測定部と干渉し得る位置である。しかし、本実施形態によれば、第1カバー10および第2カバー20が切替部700の回転に連動して各カバーが退避する。
【0071】
そして、各カバーが退避することで形成されたスペースを移動経路として各測定部が移動する。また、各測定部が移動経路を通過し終えると、第1カバー10および第2カバー20には、バネ10c、20cによって元の位置に戻ろうとする力が作用する。従って、制御部600は、切替制御部610に制御信号を出力して切替部700を回転させるのみで、第1カバー10および第2カバー20を動作させることができる。このため、使用対象の測定部がどのように切り替えられたとしても、複数の測定部のそれぞれのカバーが適切に使用されているようにすることができる。
【0072】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、複数の測定部のそれぞれをカバーする複数のカバーを、測定部の切り替えに連動して動作させることができる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、眼科装置が備える切替部は複数個であっても良い。眼科装置の態様も限定されず、上述のようにヘッド部と本体部とを備える眼科装置以外にも種々の要素を備える眼科装置であって良い。
【0073】
眼科装置は第1の種類の眼特性の測定に利用される第1測定部と第2の種類の眼特性の測定に利用される第2測定部とを備えていればよい。第1測定部および第2測定部において測定対象となる眼特性は限定されない。例えば、眼圧、眼屈折力、角膜曲率、角膜形状、視力、眼球の表面状態(傷や濁り、炎症等)、視野、網膜断層像、角膜内皮などの、各種の特性が検査(測定)されて良い。むろん、3種類以上の眼特性が測定可能であっても良い。
【0074】
第1測定部は、第1の種類の眼特性の測定に利用される装置の少なくとも一部であれば良く、全てであっても良い。第2測定部も同様であり、第2測定部は、第2の種類の眼特性の測定に利用される装置の少なくとも一部であれば良く、全てであっても良い。
【0075】
第1状態は、第1測定部が測定に使用され、第2測定部が収容されている状態である。第2状態は、第2測定部が測定に使用され、第1測定部が収容されている状態である。切替部は、第1状態と第2状態とを切り替えることができればよい。すなわち、第1測定部および第2測定部は、切替部によって切り替えられることによっていずれか一方が使用対象となる。
【0076】
第1測定部や第2測定部の測定可能位置は、各測定部による眼特性の測定を可能にする位置であり、例えば、見口部を眼前に配置した状態で測定が行われる測定部であれば、各測定部の見口部を眼前に配置する位置が測定可能位置である。第1収容部は第1測定部が使用されない状態において収容される部分であり、第2収容部は第2測定部が使用されない状態において収容される部分であれば良い。
【0077】
第1収容部、第2収容部は、種々の構成によって実現されて良く、眼科装置の筐体(本体部やヘッド部)内が収容部となっても良いし、筐体の外部が収容部となってもよい。いずれにしても、第1測定部、第2測定部が第1収容部、第2収容部に収容された状態で第1カバー、第2カバーが第1測定部、第2測定部を保護する。
【0078】
第1カバーは、第1状態において第1収容部のカバーとなる。すなわち、第1測定部が第1収容部に収容されていない状態においては第1収容部をカバーする。従って、第1収容部は、第1カバーによって保護され得る。一方、第1カバーは、第2状態において第1収容部に収容された第1測定部のカバーとなる。第1カバーは少なくとも保護すべき部分を保護していれば良く、第1収容部に収容された第1測定部の全てが露出しないようにカバーされても良いし、保護すべき部分が露出しないようにカバーされても良い。
【0079】
第2カバーも同様であり、第2測定部が第2収容部に収容されていない状態においては第2収容部をカバーする。従って、第2収容部は、第2カバーによって保護され得る。一方、第2カバーは少なくとも保護すべき部分を保護していれば良く、第2収容部に収容された第2測定部の全てが露出しないようにカバーされても良いし、保護すべき部分が露出しないようにカバーされても良い。
【0080】
第1カバーと第2カバーの態様は限定されず、上述の実施形態のように、回転軸に対して回転可能に支持された蓋によって構成されても良いし、開口部に対してスライドするシャッターによって構成されても良いし、他にも種々の構成を採用可能である。むろん、蓋やシャッターの移動方向は、揺動方向や直線方向に限定されない。
【0081】
さらに、第1カバー、第2カバーが切替部による切り替えに連動する態様は、種々の態様を採用し得る。すなわち、切替部が備える接触部によって第1カバーが動作したり、切替部に接続されたリンク機構によって第2カバーが動作したりする構成以外にも種々の構成が採用されてよい。例えば、切替部を動作させるモーター等の駆動部が第1カバーと第2カバーを駆動しても良いし、切替部を動作させるモーター等の駆動部に同期して動作する他の駆動部が第1カバーと第2カバーを駆動しても良い。
【0082】
第1カバー、第2カバーを駆動させるための機構も、種々の機構を採用可能である。例えば、上述の接触部によって第1カバーを移動させるカム(接触面10dと接触部700b)と異なる各種のカム機構が採用されてもよいし、第2カバーを移動させるリンク機構と異なる各種のリンク機構が採用されてもよい。むろん、第1カバーがリンク機構で動作し、第2カバーがカム機構で動作しても良いし、他の機構、例えば、ギアやボールネジ等を利用した機構が採用されてもよい。
【0083】
切替部による切り替えの過程は、各測定部が収容部に収容されている状態と収容されていない状態とを切り替える過程である。そして、測定部が収容部に収容されていない状態で収容部がカバーされていると、測定部を収容部に移動させることができない。そこで、切り替えに連動して第1カバーが第1測定部の移動経路から一旦退避し、第2カバーが第2測定部の移動経路から一旦退避するように構成される。この意味で、切替部の動作と第1カバー、第2カバーの動作が連動する際に、切替部の動作の全課程で第1カバー、第2カバーが動作している構成に限定されない。例えば、第1カバーは、第1測定部と干渉し得るタイミングのみで動作して第1測定部の移動経路から退避し、第2カバーは、第2測定部と干渉し得るタイミングのみで動作して第2測定部の移動経路から退避するような構成であっても良い。
【0084】
切替部による第1測定部、第2測定部の切り替えは、上述の実施形態のように回転による切り替えに限定されず、第1測定部、第2測定部を並進運動させることによって切り替えが行われてもよい。
【0085】
さらに、複数の測定部のそれぞれをカバーする複数のカバーを、測定部の切り替えに連動して動作させる手法は、方法の発明としても適用可能である。また、以上のような眼科装置、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の機能を有する装置の一部として実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。
【符号の説明】
【0086】
1…眼科装置、10…第1カバー、10a…回転軸、10b…第1収容部、10c…バネ、10d…接触面、10r…リブ、20…第2カバー、20a1…突出部、20b…第2収容部、20b1…突出部、20c…バネ、21…リンク機構、21a…上端部、21b…下端部、100…アライメント光学系、200…変位変形検出受光光学系、205…ノズル、205a…第2見口部、206…平面ガラス、300…観察光学系、400…固視光学系、500…眼屈折力光学系、510…平面ガラス、510a…第1見口部、600…制御部、601…本体部、602…ヘッド部、603…溝、610…切替制御部、620…シリンダー制御部、630…XYZ駆動制御部、640…ジョイスティック、650…モニタ、660…タッチパネル、670…メモリ、680…固視標制御部、700…切替部、700a…部位、700b…接触部、790…回転機構部