(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】脳活動活性化方法、脳活動活性化プログラム、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20221221BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20221221BHJP
A61M 21/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61B5/02 C
A61B10/00 E
A61M21/00 B
A61B5/02 ZDM
(21)【出願番号】P 2018193754
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518070663
【氏名又は名称】株式会社NeU
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 清
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203664(WO,A1)
【文献】特開2007-267818(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069756(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0078780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 10/00
A61M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部、操作部、通信部と接続可能なコンピュータが、
前記通信部に、所定のバイタルデータを計測する計測装置を装着された利用者の前記バイタルデータの計測値を前記計測装置から取得させ、
前記表示部に、前記利用者の身体機能を向上させる有酸素運動の開始を前記利用者に促す表示をさせ、
前記バイタルデータの計測値に基づいて、前記利用者が前記有酸素運動を行った時間である有酸素運動時間を計測させ、
前記有酸素運動が所定時間以上になった場合、前記表示部に、前記有酸素運動の終了を前記利用者に促す表示をさせ、
前記有酸素運動の終了からの前記バイタルデータの計測値または前記有酸素運動の終了からの経過時間に基づく所定の条件を満たす場合、前記表示部に、前記利用者の脳機能を向上させる所定の認知機能トレーニングを行わせる表示をさせ、
前記操作部に、前記利用者が前記認知機能トレーニングを行っている際の前記利用者による操作を受け付けさせる、
ことを実行する脳活動活性化方法。
【請求項2】
前記コンピュータが、
前記有酸素運動の終了からの経過時間が所定時間
に達した場合、前記表示部に、前記利用者の前記認知機能トレーニングの開始を前記利用者に促す表示をさせる、
ことを実行する請求項1に記載の脳活動活性化方法。
【請求項3】
前記バイタルデータは、脈拍数または心拍数を含む、請求項1または2に記載の脳活動活性化方法。
【請求項4】
前記バイタルデータは、脳血流変化量を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の脳活動活性化方法。
【請求項5】
表示部、操作部、通信部と接続可能なコンピュータが、
前記通信部に、所定のバイタルデータを計測する計測装置を装着された利用者の前記バイタルデータの計測値を前記計測装置から取得させ、
前記表示部に、前記利用者の身体機能を向上させる有酸素運動の開始を前記利用者に促す表示をさせ、
前記バイタルデータの計測値に基づいて、前記利用者が前記有酸素運動を行った時間である有酸素運動時間を計測させ、
前記有酸素運動が所定時間以上になった場合、前記表示部に、前記有酸素運動の終了を前記利用者に促す表示をさせ、
前記有酸素運動の終了からの前記バイタルデータの計測値または前記有酸素運動の終了からの経過時間に基づく所定の条件を満たす場合、前記表示部に、前記利用者の脳機能を向上させる所定の認知機能トレーニングを行わせる表示をさせ、
前記操作部に、前記利用者が前記認知機能トレーニングを行っている際の前記利用者による操作を受け付けさせる、
ことを実行するための脳活動活性化プログラム。
【請求項6】
通信部、表示部、操作部、演算部を備える情報処理装置であって、
前記通信部は、所定のバイタルデータを計測する計測装置を装着された利用者の前記バイタルデータの計測値を前記計測装置から取得し、
前記表示部は、前記利用者の身体機能を向上させる有酸素運動の開始を前記利用者に促す表示をし、
前記演算部は、前記バイタルデータの計測値に基づいて、前記利用者が前記有酸素運動を行った時間である有酸素運動時間を計測し、
前記表示部は、前記有酸素運動が所定時間以上になった場合、前記表示部に、前記有酸素運動の終了を前記利用者に促す表示をし、
前記表示部は、
前記有酸素運動の終了からの前記バイタルデータの計測値または前記有酸素運動の終了からの経過時間に基づく所定の条件を満たす場合、前記表示部に、前記利用者の脳機能を向上させる所定の認知機能トレーニングを行わせる表示し、
前記操作部は、前記利用者が前記認知機能トレーニングを行っている際の前記利用者による操作を受け付ける、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳活動活性化方法、脳活動活性化プログラム、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人が有酸素運動を行うと、脳由来神経栄養因子(Brain-deriverd Neurotrophic Factor;BDNF)が増加し、BDNFによって神経回路の育成や再生等が活発になり、脳活動の向上や活性化させる効果があることが知られている。
【0003】
また、従来から、ヘッドセットと呼ばれる頭部装着装置(身体装着装置)に、近赤外線照射部と近赤外線検出部を設け、脳表面の血流量の変化を検出し、検出されたデータをデータ処理装置で処理することで、脳の活動状態を示す情報を取得する計測システムが提供されている。当該計測システムを利用して、認知機能トレーニング(脳トレーニング)の際の脳活動状態を計測することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/069756号公報
【文献】国際公開第2016/203664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脳活動の向上のためにはBDNFが増加していると考えられる有酸素運動中に、認知機能トレーニングをさせることが好ましい。しかし、有酸素運動中に認知機能トレーニングを行う場合、認知機能トレーニングを行う装置の制約により、有酸素運動の種類が限定される。よって、利用者が好む有酸素運動をしながら、認知機能トレーニングをすることができないことがある。また、有酸素運動中に認知機能トレーニングを行う場合、有酸素運動に意識が集中すると認知機能トレーニングへの意欲が低下することがあり、また、認知機能トレーニングに意識が集中すると有酸素運動が疎かになることがある。
【0006】
本発明は、利用者に、有酸素運動後、適切なタイミングで、認知機能トレーニングすることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
即ち、第1の態様は、
表示部、操作部、通信部と接続可能なコンピュータが、
前記通信部に、所定のバイタルデータを計測する計測装置を装着された利用者の前記バイタルデータの計測値を前記計測装置から取得させ、
前記表示部に、前記利用者に前記利用者の身体機能を向上させる有酸素運動を行わせる表示をさせ、
前記バイタルデータの計測値に基づいて、前記利用者が前記有酸素運動を行った時間である有酸素運動時間を計測させ、
前記有酸素運動が所定時間以上になった場合、前記表示部に、前記利用者に前記有酸素運動の終了を促す表示をさせ、
前記バイタルデータの計測値または前記有酸素運動の終了からの経過時間に基づく所定の条件を満たす場合、前記表示部に、前記利用者の脳機能を向上させる所定の認知機能トレーニングを行わせる表示をさせ、
前記操作部に、前記利用者が前記認知機能トレーニングを行っている際の前記利用者による操作を受け付けさせる、
ことを実行する脳活動活性化方法である。
【0008】
開示の態様は、プログラムが情報処理装置によって実行されることによって実現されてもよい。即ち、開示の構成は、上記した態様における各手段が実行する処理を、情報処理装置に対して実行させるためのプログラム、或いは当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として特定することができる。また、開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を情報処理装置が実行する方法をもって特定されてもよい。開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を行う情報処理装置を含むシステムとして特定されてもよい。
【0009】
プログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくても、並列的または個別に実行される処理を含む。プログラムを記述するステップの一部が省略されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利用者に、有酸素運動後、適切なタイミングで、認知機能トレーニングすることを促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る脳活動活性化システムの情報処理に関する構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、身体装着装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、利用者端末の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の脳活動活性化システムの動作フローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0013】
〔実施形態〕
(構成例)
図1は、本実施形態に係る脳活動活性化システムの情報処理に関する構成例を示す図である。本実施形態のシステムは、利用者に有酸素運動をさせ、有酸素運動中に、利用者のバイタルデータ(例えば、心拍数、脳血流変化量、血流量変化量など)を示す計測データ(検出値、計測値ともいう)を検出する。さらに、本実施形態のシステムは、有酸素運動終了後所定時間内に、利用者に認知機能トレーニングをさせ、利用者のバイタルデータを示す計測データを検出する。有酸素運動は、所定の身体機能の向上を図るトレーニングである。認知機能トレーニングは、所定の脳機能の向上を図る(脳を鍛える)トレーニングである。
【0014】
脳由来神経栄養因子(BDNF)は、有酸素運動によって増加し、有酸素運動後しばらく増加し、その後、徐々に減少すると考えられている。本実施形態にかかる脳活動活性化システムは、有酸素運動後、BDNFが体内に未だ多く存在していると考えられる時間に、認知機能トレーニングを行うことを利用者に促す。これにより、利用者の脳機能をより活性化させる。
【0015】
図1のように、脳活動活性化システム1は、身体装着装置10、利用者端末20とを有する。身体装着装置10と利用者端末20とは、ネットワークN1を介して、通信可能に接続される。ネットワークN1は、例えば、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(Local
Area Network)、LTE(Long Term Evolution)等の規格にしたがうネットワークである。身体装着装置10は、バイタルデータを計測する計測装置の一例である。
【0016】
図2は、身体装着装置の構成例を示す図である。身体装着装置10は、情報処理の側面としては、制御部11と、無線通信部13と、一対のセンサ115、125と、加速度センサ14とを有する。制御部11は、身体装着装置10の計測と通信を制御する。制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、あるいはDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサとメモリとを有し、メモリ上に実行可能に展開されたコンピ
ュータプログラム、ファームウェア等により処理を実行する。ただし、制御部11は、無線通信部13、センサ115、125、加速度センサ14を起動し、各構成要素との連携処理を実行する専用のハードウェア回路、FPGA(Field Programmable Gate Array)
等であってもよい。また、制御部11は、CPU、DSP、専用のハードウェア回路等が混在したものであってもよい。身体装着装置10は、利用者の身体の測定対象部分(脳、腕、脚など)に装着され、利用者の身体(頭部、腕、脚など)に固定される構造を有する。
【0017】
無線通信部13は、所定のインターフェースによって、制御部11およびセンサ115、125と接続される。ただし、無線通信部13は、制御部11を介して、センサ115、125からデータを取得する構成であってもよい。無線通信部13は、ネットワークN1を介して、利用者端末20と通信する。無線通信部13は、転送手段の一例である。ただし、脳活動活性化システム1において、無線通信部13の無線インターフェースの規格に限定はない。
【0018】
ネットワークN1での通信時、通信ヘッダのヘッダ部分、あるいは、通信データ中の利用者データ部分(ペイロード部分)に、身体装着装置10を識別する識別子を埋め込んで、利用者端末20が利用者(被験者)を識別できるようにする。
【0019】
また、脳活動活性化システム1において、無線通信部13に代えて、あるいは、無線通信部13とともに有線で通信を行う通信部を設けてもよい。すなわち、身体装着装置10と利用者端末20とが有線通信のインターフェースで接続されてもよい。この場合の有線通信のインターフェースに限定はなく、脳活動活性化システム1の用途に応じてUSB(Universal Serial Bus)、PCI Express(登録商標)等の各種インターフェースを使用できる。
【0020】
センサ115、125は、いずれも近赤外線を身体の測定対象部分(頭部、腕、脚など)に照射し、脳の大脳皮質付近や腕等の血管付近で一部吸収されて散乱された近赤外線を受光し、電気信号に変換する。脳の大脳皮質は、例えば、脳の活動状態に応じて、血流量が異なる。その結果、大脳皮質の各部において、血液中の酸素と結合したヘモグロビンの量と、酸素と結合していないヘモグロビンの量が変化する。ヘモグロビンの量の変化、酸素量の変化等に起因して、大脳皮質付近での近赤外線の吸収特性、あるいは、散乱特性が変化する。センサ115、125は、このような大脳皮質付近の血流の状態に応じた近赤外線吸収率の変化あるいは透過率の変化により光量が変化する近赤外線を電気信号に変換して出力する。腕や脚などの血管付近においても同様である。センサ115、125は、検出部の一例である。センサ115、125で検出される情報により、脳血流変化量、血流変化量、脈拍数を算出することができる。脈拍数は、心拍数に相当する。
【0021】
センサ115、125は、例えば、近赤外線を照射する近赤外線光源と、近赤外線を受
光する受光部を含む。近赤外線光源は、例えば、LED(Light Emitting Diodes)、赤
外線ランプ等である。また、受光部は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の光電素子と、増幅器と、AD(Analog Digital)コンバータとを含む。なお、近赤外線光源と受光部とが対にして設けられなくてもよい。例えば、1つの近赤外線光源に対して、複数の受光部が設けられてもよい。センサ115、125は、計測部の一例である。
【0022】
加速度センサ14は、直交する3方向について、身体装着装置10の加速度を測定するセンサである。加速度センサ14は、角加速度を測定するセンサを含んでもよい。加速度センサ14は、身体装着装置10を装着する利用者の、身体装着装置10を装着した部分の加速度を取得することができる。
【0023】
図3は、利用者端末の構成例を示す図である。利用者端末20は、身体装着装置10から、利用者の大脳皮質付近での近赤外線の吸収率または透過率の変化データを取得し、利用者の脳の活動状態に関連する様々な情報処理を含むサービスを提供する。利用者端末20は、情報処理装置(コンピュータ)の一例である。利用者端末20は、PC(Personal
Computer)、スマートフォン、携帯電話、タブレット型端末、カーナビゲーション装置
、PDA(Personal Digital Assistant)のような専用または汎用のコンピュータ、あるいは、コンピュータを搭載した電子機器を使用して実現可能である。
【0024】
利用者端末20は、CPU21と、メモリ22と、無線通信部23と、公衆回線通信部24と、表示部25と、操作部26と、出力部27と、撮像部28と、測位部29と、物理センサ部2Aを有する。CPU21は、メモリ22に実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより、利用者端末20としての処理を実行する。利用者端末20としての処理とは、例えば、上記利用者の脳の活動状態に関連する様々な情報処理を含むサービスである。このようなコンピュータプログラムを実行するCPU21は、演算部の一例である。
【0025】
メモリ22は、CPU21で実行されるコンピュータプログラム、あるいは、CPU21が処理するデータを記憶する。メモリ22は、揮発性メモリと不揮発性メモリを含んでよい。メモリ22は、記憶部の一例である。メモリ22には、認知機能トレーニングを利用者に行わせるためのプログラム、データ、有酸素運動を行っているか否かの判定基準のデータ等が格納される。
【0026】
無線通信部23は、身体装着装置10の無線通信部13と同様である。無線通信部23は、受信手段の一例である。また、利用者端末20は、無線通信部13に代えて、あるいは、無線通信部13とともに有線で通信を行う通信部を有してもよい。利用者端末20は、無線通信部23を介して、身体装着装置10のセンサ115、125、加速度センサ14等で検出された情報を取得する。利用者端末20は、身体装着装置10から取得した情報に基づいて、利用者の心拍数、脳血流変化量等を算出する。
【0027】
公衆回線通信部24は、上位のネットワーク等を介して、サーバ等の他の情報処理装置等と通信する。上位のネットワークは、公衆回線網等である。公衆回線通信部24は、通信部の一例である。ただし、脳活動活性化システム1において、上位のネットワークは公衆回線網に限定されず、例えば、LAN(Local Area Network)等の構内ネットワーク、企業、事業者、役所、学校、研究機関等の専用回線、VPN(Virtual Private Network)等
の広域ネットワークであってもよい。
【0028】
表示部25は、例えば、液晶ディスプレイ、EL(Electro-Luminescence)パネル等であり、CPU21からの出力情報を表示する。表示部25は、利用者端末20に外部接続される液晶ディスプレイ等の表示手段を含んでもよい。操作部26は、例えば、押しボタ
ン、タッチパネル等であり、利用者の操作を受け付ける。操作部26は、利用者端末20に外部接続されるキーボード、ポインティングデバイス等の入力手段を含んでもよい。出力部27は、例えば、振動を出力するバイブレータ、音響あるいは音声を出力するスピーカ等である。撮像部28は、例えば、固体撮像素子を含むカメラである。固体撮像素子としては、CCD(Charge-coupled device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を利用できる。
【0029】
測位部29は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機であり、GPS
衛星からの電波を受信し、現在位置(緯度、経度等)、時刻等を算出する。ただし、測位部29としては、GPS受信機を有するものに限定される訳ではない。例えば、公衆回線通信部24が携帯電話網である場合には、測位部29は、携帯電話基地局からの距離を基に測位を実行してもよい。
【0030】
物理センサ部2Aは、例えば、加速度センサ、あるいは角加速度センサ等である。ただし、物理センサ部2Aは、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、または水圧センサであってもよい。
【0031】
〈動作例〉
本実施形態の脳活動活性化システムの動作例について説明する。脳活動活性化システム1は、利用者に有酸素運動をさせ、所定時間以内に、利用者に認知機能トレーニングさせる。脳活動活性化システム1は、有酸素運動の際、及び、認知機能トレーニングの際に、利用者に装着した身体装着装置10により、脈拍数、脳血流変化量等を測定し、利用者の脳活動情報、心拍数等を取得する。身体装着装置10は、利用者の身体(頭部、腕、脚など)に装着される。身体装着装置10は、認知機能トレーニングの際には、利用者の頭部に装着される。
【0032】
図4は、本実施形態の脳活動活性化システムの動作フローの例を示す図である。本実施形態の脳活動活性化システム1の身体装着装置10は、利用者(被験者)の身体に装着されており、血流変化量、脈拍数を測定できる状態である。身体装着装置10は、利用者端末20に接続されている。利用者端末20は、当該動作フローにおいて、血流変化量、心拍数、身体装着装置10の加速度(利用者の加速度)等を、身体装着装置10からネットワークN1を介して、常時取得できる状態にある。また、身体装着装置10から加速度を取得する代わりに、利用者端末20を利用者に携帯させ、利用者端末20は、物理センサ部2Aにより、利用者端末20の加速度(利用者の加速度)を取得してもよい。
【0033】
S101では、利用者端末20は、利用者に有酸素運動を行うことを促す。利用者端末20は、表示部25に有酸素運動を開始することを促す表示をする。開始することを促す表示は、例えば、「有酸素運動を開始してください」等の表示である。有酸素運動は、長時間継続できる軽度または中程度の負荷の運動である。有酸素運動では、体内の糖質や脂肪が酸素とともに消費される。また、利用者端末20は、当該表示とともに、または、代わりに、出力部27のスピーカ等により有酸素運動を行うことを促す音声出力を行ってもよい。利用者端末20に有酸素運動の開始を促された利用者は、有酸素運動を開始する。ここで行う有酸素運動の種類に限定はなく、利用者が所望する有酸素運動を行うことができる。
【0034】
S102では、利用者端末20は、利用者が有酸素運動を行っている時間を計測する。例えば、利用者端末20は、直近の所定期間(例えば、30秒)において、利用者の加速度が所定値を超えている割合が、所定割合以上であり、かつ、心拍数が所定値以上である場合に、当該所定期間、有酸素運動を行っていると判定する。また、利用者端末20は、脳などの血流変化量から血液中のヘモグロビン量を推定し、ヘモグロビン量の変化量から
有酸素運動を行っているか否かを推定してもよい。利用者端末20は、例えば、運動前からヘモグロビン量が10%以上変化した場合に有酸素運動を行っていると推定する。利用者が有酸素運動を行っているか否かの判定基準として、他の基準が使用されてもよい。利用者が有酸素運動を行っているか否かの判定基準は、利用者の属性(年代、性別など)等によって、変更されてもよい。当該判定基準は、あらかじめ、メモリ22等の記憶手段に格納されている。判定基準は、利用者が行った有酸素運動の種類、運動強度、運動回数、運動時間等に応じて、変更されてもよい。
【0035】
S103では、利用者端末20は、利用者が有酸素運動を行っている時間が、所定時間以上であるか否かを判定する。利用者が有酸素運動を所定時間以上行うと、利用者のBDNFが増加していると考えられる。所定時間は、例えば、30分である。有酸素運動を行っている時間が所定時間以上である場合(S103;YES)、処理がS104に進む。有酸素運動を行っている時間が所定時間未満である場合(S103;NO)、処理がS102に戻る。
【0036】
S104では、利用者端末20は、利用者に有酸素運動の終了を促す。利用者端末20は、表示部25に有酸素運動の終了を促す表示をする。終了を促す表示は、例えば、「有酸素運動を終了してください」等の表示である。このとき、利用者の体内ではBDNFが多くなっていると考えられる。また、利用者端末20は、当該表示とともに、または、代わりに、出力部27のスピーカ等により有酸素運動の終了を促す音声出力を行ってもよい。利用者端末20に有酸素運動の終了を促された利用者は、有酸素運動を終了する。
【0037】
S105では、利用者端末20は、利用者が認知機能トレーニング開始のための所定条件を満たしたか否かを判定する。所定条件は、例えば、有酸素運動の終了からの経過時間が所定時間に達したこと、利用者の心拍数が所定値以下になったこと等である。複数の条件のうち所定の数の条件を満たしたときに、所定条件を満たしたとしてもよい。有酸素運動終了後も、利用者の体内のBDNFはしばらく増加すると考えられている。よって、有酸素運動の終了から所定時間(例えば、5分)経過したときに、BDNFが最大になっていると考えられる。また、心拍数が所定値以下のときに認知機能トレーニングを行うと、脳機能をより向上させやすいと考えられる。所定の条件を満たす場合(S105;YES)、処理がS106に進む。所定の条件を満たさない場合(S105;NO)、S105の処理を繰り返す。
【0038】
S106では、利用者端末20は、利用者に認知機能トレーニングを行うことを促す。利用者端末20は、表示部25に認知機能トレーニングを行うことを促す表示をする。また、利用者端末20は、当該表示とともに、または、代わりに、出力部27のスピーカ等により有酸素運動を行うことを促す音声出力を行ってもよい。また、利用者端末20は、表示部25に、「認知機能トレーニングの開始」を選択するための表示をする。利用者は、認知機能トレーニングを開始したい場合に、表示部25に表示される「認知機能トレーニングの開始」を、操作部26等により選択する。
【0039】
認知機能トレーニングは、例えば、脳機能別に、頭の回転トレーニング、注意・抑制力トレーニング、記憶力トレーニングの3種類(カテゴリー)に分類される。頭の回転トレーニングは、脳の処理速度向上を図るトレーニングである。このトレーニングにより、所定時間内に多くの作業を行うことができるようになる。注意・抑制力トレーニングは、ミスを少なくして、同時に複数のことを正しく遂行する能力の向上を図るトレーニングである。このトレーニングにより、怒りにくくなり忍耐力を高めることができる。記憶力トレーニングは、新しい知識や考え方を習得する能力の向上を図るトレーニングである。このトレーニングにより、脳の容量を大きくし、いわゆる地頭をよくする効果がある。
【0040】
利用者端末20は、利用者が行った有酸素運動の種類、運動強度、運動回数、運動時間等に応じて、利用者に行わせる認知機能トレーニングの種類や難易度を変更してもよい。また、利用者端末20は、利用者が過去に行った認知機能トレーニングの正答率に応じて、利用者に行わせる認知機能トレーニングの種類や難易度を変更してもよい。利用者端末20は、種類や難易度の異なる複数の認知機能トレーニングを利用者に提示して、利用者が行う認知機能トレーニングを利用者に選択させるようにしてもよい。
【0041】
S107では、利用者端末20は、利用者による操作部26等に対する操作によって、「認知機能トレーニングの開始」が選択されたか否かを判定する。認知機能トレーニングの開始が選択された場合(S107;YES)、処理がS109に進む。認知機能トレーニングの開始が選択されない場合(S107;NO)、処理がS108に進む。
【0042】
S108では、利用者端末20は、所定時間(例えば、5分)、待機する。その後、S106に戻り、利用者に、認知機能トレーニングを行うことを、再度、促す。有酸素運動の終了後、利用者の体内のBDNFが多いときに、利用者に早めに認知機能トレーニングをさせることが好ましい。また、利用者端末20は、有酸素運動の終了から所定時間(例えば、2時間)経過したために利用者の体内のBDNFが減少して、認知機能トレーニングを行っても利用者の脳機能を効率よく活性化できないと考えられる場合に、当該動作フローの処理を終了させてもよい。
【0043】
S109では、利用者端末20は、利用者に認知機能トレーニングを行わせる。利用者端末20は、選択されたトレーニング項目について、認知機能トレーニングを行わせるために、表示部25への文字や図等の表示や出力部27のスピーカから音声等の出力により、出題や操作の指示を行う。利用者端末20は、操作部26等により、出題に対する回答や指示に対する入力などを受け付ける。認知機能トレーニングについての回答や入力などにより、利用者は、所定の脳機能を向上させることができる。このとき、利用者端末20は、身体装着装置10のセンサ115、125を介して検出される情報により、利用者の心拍数、脳血流変化量を取得する。1つの認知機能トレーニングは、例えば、60秒間から90秒間である。利用者端末20は、認知機能トレーニングを行わせている際に、利用者の心拍数や脳血流変化量を表示部25に表示してもよい。利用者は、自身の心拍数や脳血流変化量を認識しながら、認知機能トレーニングを行うことができる。利用者は、例えば、自身の心拍数や脳血流変化量に基づいて、認知機能トレーニングの際の、脳への負荷を調整することができる。特に、脳血流変化量は脳への負荷が妥当かを判別する指標となるので、リアルタイムにトレーニング負荷を調整するための補助となる。認知機能トレーニングが終了すると、当該動作フローの動作は終了する。
【0044】
これにより、脳活動活性化システム1は、有酸素運動後、利用者の体内のBDNFが高いときに、利用者に認知機能トレーニングを行うことを促すことができる。
【0045】
ここでは、身体装着装置10のセンサ115、125により、利用者の脈拍数(心拍数)を測定するとしたが、身体装着装置10が、センサ115、125とは別の脈拍計をさらに備え、当該脈拍計を利用者の身体に装着し、利用者の脈拍数を測定してもよい。当該脈拍計は、利用者の身体のどこに装着されてもよい。また、脈拍計は、身体装着装置10から独立した装置であってもよい。
【0046】
S105において、所定の条件を満たす場合(S105)、処理がS109に進んで、利用者に認知機能トレーニングを行わせてもよい。
【0047】
(実施形態の作用、効果)
脳活動活性化システム1は、利用者に有酸素運動をさせ、有酸素運動中に、利用者の脈
拍数などのバイタルデータを示す計測データを検出する。さらに、脳活動活性化システム1は、有酸素運動終了後、利用者の体内のBDNFが多くなっている所定時間内に、利用者に認知機能トレーニングを行うことを促し、利用者に認知機能トレーニングを行わせ、利用者のバイタルデータを示す計測データを検出する。利用者の体内でBDNFが多くなっているときに、認知機能トレーニングを行うことで、脳機能を効率的に活性化できることが知られている。脳活動活性化システム1は、利用者の体内のBDNFが多くなっているときに、脳機能を活性化させる認知機能トレーニングを行わせることで、より効率的に脳機能を活性化させることができる。
【0048】
上記の構成は、可能な限りこれらを組み合わせて実施され得る。
【0049】
〈コンピュータ読み取り可能な記録媒体〉
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0050】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体内には、CPU、メモリ等のコンピュータを構成する要素を設け、そのCPUにプログラムを実行させてもよい。
【0051】
また、このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。
【0052】
また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【符号の説明】
【0053】
1 :脳機能活性化システム
10 :身体装着装置
11 :制御部
115 :センサ
125 :センサ
13 :無線通信部
14 :加速度センサ
20 :利用者端末
21 :CPU
22 :メモリ
23 :無線通信部
24 :公衆回線通信部
25 :表示部
26 :操作部
27 :出力部
28 :撮像部
29 :測位部
2A :物理センサ部