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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】荷物運搬補助具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A45C 5/00 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
A45C5/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018209309
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020074875
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592160607
【氏名又は名称】日進ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】野崎 知裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 喜朗
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-023675(JP,A)
【文献】特開2001-329415(JP,A)
【文献】実開昭60-103379(JP,U)
【文献】特開2018-102344(JP,A)
【文献】特開2011-120833(JP,A)
【文献】特開2017-082508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体の外面に沿って取り付けられ、その外面に押し当てられた荷物との間に摩擦を生じさせることにより、荷物のずれ落ちを抑止して荷物の運搬を補助する荷物運搬補助具であって、
外側の面が荷物に接触する荷物側摩擦面とされて、内側の面が身体に接触する身体側摩擦面とされた板状滑り止め部材と、
板状滑り止め部材を身体に取り付けるための取り付け部材と
で構成され、
板状滑り止め部材が、
荷物側摩擦面を形成する荷物側弾性層と、
身体側摩擦面を形成する身体側弾性層と、
荷物側弾性層と身体側弾性層との間に配された面状芯材からなる芯材層と
で構成され
荷物側摩擦面に、正面視「V」字状の荷物側滑り止め突起が多数形成され、
身体側摩擦面に、正面視逆「V」字状の身体側滑り止め突起が多数形成された
ことを特徴とする荷物運搬補助具。
【請求項2】
芯材層を構成する面状芯材が不織布とされた請求項1記載の荷物運搬補助具。
【請求項3】
荷物側滑り止め突起の上向き面が、階段状に形成された請求項1又は2記載の荷物運搬補助具。
【請求項4】
請求項1~いずれか記載の荷物運搬補助具を製造する荷物運搬補助具の製造方法であって、
荷物側弾性層を形成するゴムシートと、身体側弾性層を形成するゴムシートとの間に、芯材層を形成する面状芯材を挟んだ状態としてコンプレッション成形することにより、荷物側弾性層と身体側弾性層と芯材層とを一体的に形成する荷物運搬補助具の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の身体の外面に沿って取り付けられ、使用者の身体に押し当てた荷物と身体との間に摩擦を生じさせることにより、荷物のずれ落ちを抑止して荷物の運搬を補助する荷物運搬補助具と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
宅配便の配達員等は、段ボール箱に入れられた荷物を小脇に抱えて運搬することがある。このときの荷物は、腰部側面と片方の手とで挟まれた状態となるが、荷物が腰部側面に対して滑ってしまうと、荷物が落下する虞がある。このため、配達員等は、荷物が腰部側面に対してずれ落ちないように、荷物を腰部側面に対してしっかりと押し付ける必要があり、腕力を消耗していた。また、荷物の重量がある場合等には、荷物を片手で持つのを諦めて両手で抱えなければならないこともあった。荷物を両手で抱えてしまうと、ドアや門の開閉や、チャイムやエレベータのボタンの操作を行うたびに、荷物をどこかに置かなければならず、運搬作業の効率が低下する。
【0003】
このような実状に鑑みてか、これまでには、荷物を小脇に抱えて運搬しやすくするための荷物運搬補助具が提案されている。例えば、特許文献1の図3等には、帯状の本体1と、本体1の一端に設けられた装着部2と、本体1の他端に設けられた当接部3とで構成された荷物運搬補助具(同文献では「荷物保持用補助具」と記載)が記載されている。同文献の荷物運搬補助具は、本体1を荷物Cの下側に弛みのない状態で掛け回し、腕に掛かる力を分散することによって、荷物Cを楽に運べるようにするものとなっている。同文献には、当接部3の表面に、滑り止めのための微小凸部3c(同文献の図5を参照)を設けることも記載されている。以下においては、特許文献1の荷物運搬補助具のように、荷物の下側に帯材を掛け回して腕に掛かる力を分散することで、荷物の運搬を補助するようにした荷物運搬補助具を「帯材掛け回しタイプの荷物運搬補助具」と呼ぶことがある。
【0004】
また、特許文献2の図2等には、荷物載せ部5と、荷物載せ部5を腰ベルト2へ止めるための止め部(挟み部3)とを備えた荷物運搬補助具が記載されている。同文献の荷物運搬補助具は、水平に突き出た板状の荷物載せ部5の上面に荷物を載せ、腕に掛かる力を分散することによって、荷物を楽に運べるようにするものとなっている。以下においては、特許文献2の荷物運搬補助具のように、水平に突き出た板状部に荷物を載せて腕に掛かる力を分散することで、荷物の運搬を補助するようにした荷物運搬補助具を「板状部載置タイプの荷物運搬補助具」と呼ぶことがある。板状部材載置タイプの荷物運搬補助具は、特許文献2に記載されたものの他にも、いくつか提案されている(例えば、特許文献3の図6等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平06-061827号公報
【文献】特開2005-279222号公報
【文献】特開2013-091566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、帯材掛け回しタイプの荷物運搬補助具においては、荷物の寸法が小さいと、荷物の下側に掛け回す帯材が余ってしまい、逆に荷物を持ちにくくなる虞があった。また、荷物を運搬しないときには、その帯材が腰ベルトから垂れ下がった状態となるため、帯材が絡まったり、周囲の物に引っ掛かったりする虞もあった。
【0007】
これに対し、板状部材載置タイプの荷物運搬補助具は、荷物の寸法が小さい場合でも好適に用いることができるものとなっている。また、絡み等の原因になる帯材を有さないものとなっている。ところが、板状部材載置タイプの荷物運搬補助具は、荷物を載せる板状部が腰部側面から外方に突き出た状態となる。このため、荷物を運搬しないときには、その板状部が手や周囲の物にぶつかる虞があった。
【0008】
この点、特許文献3の荷物運搬補助具では、同文献の図5に示されるように、荷物を運搬しないときの板状部(同文献では「受板5」)を折り畳むことができるようになっている。しかし、荷物を運搬しようとするたび、又は、荷物の運搬を終えるたびに、板状部の開閉を繰り返すことは煩わしく、出しっ放しの状態で使用される可能性を否定しきれない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、使用者(配達員等)の身体に対して荷物がずれ落ちないようにするだけでなく、使用時(荷物を運搬するとき)と不使用時(荷物を運搬しないとき)とのいずれにおいても、嵩張らず周囲の物にぶつかったりすることがない荷物運搬補助具を提供するものである。また、この荷物運搬補助具を製造する荷物運搬補助具の製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
使用者の身体の外面に沿って取り付けられ、その外面に押し当てられた荷物との間に摩擦を生じさせることにより、荷物のずれ落ちを抑止して荷物の運搬を補助する荷物運搬補助具であって、
外側の面が荷物に接触する荷物側摩擦面とされて、内側の面が身体に接触する身体側摩擦面とされた板状滑り止め部材と、
板状滑り止め部材を身体に取り付けるための取り付け部材と
で構成され、
板状滑り止め部材が、
荷物側摩擦面を形成する荷物側弾性層と、
身体側摩擦面を形成する身体側弾性層と、
荷物側弾性層と身体側弾性層との間に配された面状芯材からなる芯材層と
で構成された
ことを特徴とする荷物運搬補助具
を提供することによって解決される。
【0011】
本発明の荷物運搬補助具は、荷物のずれ落ちを防止する部分(板状滑り止め部材)が板状を為し、使用者の身体の外面に沿って取り付けられるものとなっている。このため、使用時(荷物を運搬するとき)と不使用時(荷物を運搬しないとき)とのいずれにおいても、嵩張ることがなく、周囲の物にぶつかりにくく、使用感に優れたものとなっている。
【0012】
また、本発明の荷物運搬補助具は、主に、板状滑り止め部材の外側の面(荷物側摩擦面)と荷物との間に生ずる摩擦力によって、荷物がずれ落ちないようにするものであるため、板状滑り止め部材の荷物側摩擦面に荷物を押し当てることさえできれば、荷物の寸法にかかわらず、荷物の運搬を補助できるものとなっている。
【0013】
ただし、使用者の身体に対して板状滑り止め部材がずれ動くことがあると、荷物の位置が定まらなくなり、荷物を運搬しにくくなる虞がある。この点、本発明の荷物運搬補助具では、板状滑り止め部材の外側の面だけでなく、内側の面も摩擦面としている。このため、板状滑り止め部材における荷物側摩擦面に荷物を押し当てると、板状滑り止め部材における身体側摩擦面が使用者の身体に押し当てられた状態となり、板状滑り止め部材における身体側摩擦面と使用者の身体との間に生ずる摩擦力によって、使用者の身体に対して板状滑り止め部材がずれ動かないようにすることも可能となっている。
【0014】
さらに、本発明の荷物運搬補助具においては、板状滑り止め部材における荷物側摩擦面と身体側摩擦面とを弾性層(弾性材料からなる層)としているため、大きな摩擦力を得ることができ、荷物のずれ落ちを好適に防止することができるようになっている。ただし、板状滑り止め部材の全体を弾性材料によって形成すると、板状滑り止め部材が撓みやすくなる虞がある。板状滑り止め部材が撓んで曲面状になると、板状滑り止め部材における荷物側摩擦面と荷物との接触面積が小さくなり、板状滑り止め部材と荷物との間に生ずる摩擦力が小さくなってしまう。このため、板状滑り止め部材は、平面状を維持するようにすることが好ましい。この点、本発明の荷物運搬補助具では、板状滑り止め部材に面状芯材からなる芯材層を設けており、板状滑り止め部材が平面状に保たれやすくしている。
【0015】
本発明の荷物運搬補助具において、板状滑り止め部材における荷物側弾性層及び身体側弾性層は、弾性材料で形成されたものであれば、特に限定されない。荷物運搬補助具の連続生産性を考慮すると、合成ゴムを使用するとよい。一方、機械的強度や弾力性等を考慮すると、天然ゴム(NR)や、天然ゴム(NR)を含有する非耐油ゴムによって形成するとよい。天然ゴム(NR)は、機械的強度に優れているだけでなく、優れた弾力性を有しており、高い摩擦係数を得ることが可能である。
【0016】
本発明の荷物運搬補助具において、芯材層を形成する面状芯材は、板状滑り止め部材に保形性を付与できるものであれば、特に限定されないが、不織布とすることが好ましい。不織布は、低コストであるだけでなく、荷物側弾性層や身体側弾性層を形成する弾性材料(ゴム等)と一体化しやすいという利点を有している。また、厚手の不織布を厚さ方向にプレスすると、厚さ方向に収縮し、板状滑り止め部材として必要な剛性を得ながらも、板状滑り止め部材に適度な弾性を残すことも可能である。
【0017】
本発明の荷物運搬補助具において、板状滑り止め部材における荷物側摩擦面や身体側摩擦面には、多数の滑り止め突起を形成することもできる。これにより、荷物側摩擦面の摩擦係数(荷物に対する最大静止摩擦係数)や、身体側摩擦面の摩擦係数(身体に対する最大摩擦係数)をより大きくすることができる。滑り止め突起の形態等も特に限定されないが、荷物側摩擦面には、正面視「V」字状(上側が開いた「V」字状)の荷物側滑り止め突起を多数形成し、身体側摩擦面には、正面視逆「V」字状(下側が開いた「V」字状)の身体側滑り止め突起が多数形成することが好ましい。
【0018】
板状滑り止め部材における荷物側摩擦面では、荷物は、上側から下側にずれ動こうとするところ、上記のように、荷物側摩擦面に形成する滑り止め突起(荷物側滑り止め突起)を上側が開いた「V」字状とすることによって、荷物側摩擦面から荷物が受ける抵抗(摩擦力)をより大きくすることができる。また、板状滑り止め部材は、使用者の身体を上側から下側にずれ動こうとするところ、上記のように、身体側摩擦面に形成する滑り止め突起(身体側滑り止め突起)を下側に開いた「V」字状とすることによって、身体側摩擦面が身体から受ける抵抗力(摩擦力)をより大きくすることができる。
【0019】
ここで、荷物側滑り止め突起は、単純な「V」字状に形成してもよいが、その上向き面(法線ベクトルが鉛直方向上向きの成分を有する面。したがって、斜め上向きの面も含む。以下同じ。)を階段状に形成することが好ましい。というのも、荷物を運搬する際に一般的に用いられている段ボール箱の表面や、建築資材の表面は、紙紛や埃等の微細な粉が付着していて粉っぽいことが多い。荷物の表面に付着した微細な粉は、板状滑り止め部材における荷物側摩擦面の摩擦力を低下させるように作用する。この点、荷物側滑り止め突起の上向き面を階段状に形成することで、当該上向き面に複数の上向きエッジを形成し、荷物の表面が粉っぽい場合であっても、荷物が下側にずれ落ちにくくすることが可能になるからである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によって、使用者(配達員等)の身体に対して荷物がずれ落ちないようにするだけでなく、使用時(荷物を運搬するとき)と不使用時(荷物を運搬しないとき)とのいずれにおいても、嵩張らず周囲の物にぶつかったりすることがない荷物運搬補助具を提供することが可能になる。また、この荷物運搬補助具を製造する荷物運搬補助具の製造方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る荷物運搬補助具を外面側から見た状態を示した斜視図である。
図2】本発明に係る荷物運搬補助具を内面側から見た状態を示した斜視図である。
図3】本発明に係る荷物運搬補助具を身体に取り付けた状態を撮影した写真である。
図4】本発明に係る荷物運搬補助具をその幅方向中心線を含む鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
図5】本発明に係る荷物運搬補助具における板状滑り止め部材の外面を示した図である。
図6】本発明に係る荷物運搬補助具における板状滑り止め部材の内面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の荷物運搬補助具の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明に係る荷物運搬補助具10を外面側(荷物側摩擦面αの側)から見た状態を示した斜視図である。図2は、本発明に係る荷物運搬補助具10を内面側(身体側摩擦面αの側)から見た状態を示した斜視図である。図3は、本発明に係る荷物運搬補助具10を身体に取り付けた状態を撮影した写真である。
【0023】
本発明の荷物運搬補助具10は、図3に示すように、使用者の身体の外面に沿って取り付けるものとなっている。本発明の荷物運搬補助具10は、使用者の身体における、運搬時の荷物が押し当てられる可能性がある箇所であれば、いずれの箇所に取り付けることもできる。例えば、荷物を両手で抱え持つ場合には、その荷物は、胸部や腹部の前面に押し当てられた状態となるところ、このような運搬態様を想定する場合には、荷物運搬補助具10を胸部や腹部の前面に取り付けることができる。
【0024】
しかし、本発明の荷物運搬補助具10は、荷物を片手で小脇に挟んで運搬する場合に特に好適に使用することができる。というのも、既に述べたように、荷物を小脇に挟んで運搬すると、腕力が消耗しやすいところ、本発明の荷物運搬補助具10を使用すると、ある程度重量のある荷物やある程度寸法の大きな荷物であっても、腕力をそれ程消耗させることなく容易に運搬することができるからである。荷物を小脇に挟んでの運搬態様を想定する場合には、腰部の側面や腹部の側面に荷物運搬補助具10を取り付ける。本実施態様の荷物運搬補助具10も、使用者の腰部側面に沿って取り付けることを想定したものとなっている。
【0025】
本発明の荷物運搬補助具10は、図1に示すように、板状滑り止め部材11と、取り付け部材12とを備えたものとなっている。以下、板状滑り止め部材11及び取り付け部材12のそれぞれについて詳しく説明する。
【0026】
[板状滑り止め部材]
板状滑り止め部材11は、荷物と使用者の身体(腰部)との間に挟み込まれる平板状の部材となっている。板状滑り止め部材11の外面(使用者の身体に取り付けたときに、使用者から見て外側を向く面)は、荷物が接触されて、そのときの摩擦力によって荷物が下側にずれ落ちないようにするための荷物側摩擦面αとなっている。一方、板状滑り止め部材11の内面(使用者の身体に取り付けたときに、使用者側を向く面)は、使用者の身体(腰部)に接触して、板状滑り止め部材11が身体(腰部)に対して下側にずれ落ちないようにするための身体側摩擦面αとなっている。荷物側摩擦面αには、図1に示すように、多数の荷物側滑り止め突起βが形成されており、身体側摩擦面αには、図2に示すように、多数の身体側滑り止め突起βが形成されている。
【0027】
この板状滑り止め部材11は、図4に示すように、荷物側摩擦面αを形成する荷物側弾性層11aと、身体側摩擦面αを形成する身体側弾性層11bと、荷物側弾性層11aと身体側弾性層11bとの間に配された面状芯材からなる芯材層11cとで構成されている。図4は、本発明に係る荷物運搬補助具10をその幅方向中心線を含む鉛直面で切断した状態を示した断面図である。このように、板状滑り止め部材11の外面(荷物側摩擦面α)側と内面(身体側摩擦面α)側とを弾性層としたことによって、荷物側摩擦面αと身体側摩擦面αにゴム弾性を付与して荷物側摩擦面α及び身体側摩擦面αの摩擦抵抗を大きくすることが可能となっている。ただし、板状滑り止め部材11の全体を弾性層とすると、板状滑り止め部材11が撓みやすくなり、荷物側摩擦面αと荷物との接触面積が小さくなる虞がある。この点、荷物側弾性層11aと身体側弾性層11bとの間に芯材層11cを設けることによって、板状滑り止め部材11の形態が平板状に保たれやすくしている。
【0028】
荷物側弾性層11a及び身体側弾性層11bは、エラストマー(弾性材料)で形成される。荷物側弾性層11a及び身体側弾性層11bを形成するエラストマーとしては、熱硬化性エラストマーや熱可塑性エラストマーが挙げられる。このうち、熱硬化性エラストマーとしては、天然ゴム(NR)のほか、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)や、ブタジエンゴム(BR)や、ニトリルブタジエンゴム(NBR)や、スチレンブタジエンゴム(SBR)や、イソプレンゴム(IR)や、ブチルゴム(IIR)や、クロロプレンゴム(CR)や、アクリルゴム(ACM)や、ウレタンゴム(U)やシリコーンゴム(SI)やフッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムが挙げられる。一方、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)や、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)や、エステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)や、アミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)が例示される。
【0029】
荷物側弾性層11a及び身体側弾性層11bは、上記のように、ゴム弾性を有する各種のエラストマーで形成することができる。本実施態様の荷物運搬補助具10では、板状滑り止め部材11の連続生産性を考慮して、荷物側弾性層11a及び身体側弾性層11bを合成ゴムで形成している。しかし、板状滑り止め部材11の機械的強度や弾力性を重視するのであれば、荷物側弾性層11a及び身体側弾性層11bを、天然ゴム(NR)や、天然ゴム(NR)を含有する非耐油ゴムによって形成することもできる。天然ゴム(NR)は、機械的強度に優れているだけでなく、優れた弾力性を有しており、高い摩擦係数を得ることが可能であるからである(ただし、合成ゴムを使用する場合でも、イソプレンゴム(IR)等を用いれば、天然ゴム(NR)に近い機械的強度や弾力性を得ることが可能である。)。荷物側弾性層11a及び身体側弾性層11bを、天然ゴム(NR)を含有する非耐油ゴムで形成する場合において、天然ゴム(NR)の含有量は、特に限定されないが、30重量%以上とすることが好ましい。
【0030】
荷物側弾性層11a及び身体側弾性層11bは、その間に配される芯材層11cに対して事後的に接着してもよいが、芯材層11cに対して一体的に成形すると好ましい。本実施態様の荷物運搬補助具10では、荷物側弾性層11aを形成するゴムシートと、身体側弾性層11bを形成するゴムシートとの間に、芯材層11cを形成する面状芯材を挟んだ状態としてコンプレッション成形することにより、荷物側弾性層11aと身体側弾性層11bと芯材層11cとを一体的に形成している。上記の荷物側滑り止め突起βと身体側滑り止め突起βも、このコンプレッション成形の際に形成されている。
【0031】
荷物側滑り止め突起β及び身体側滑り止め突起βの形態は、特に限定されない。本実施態様の荷物運搬補助具10において、荷物側滑り止め突起βは、図1に示すように、正面視「V」字状(上側が開いた「V」字状)としている。荷物は、荷物側摩擦面αに対し、上側から下側にずれ動こうとするところ、荷物側滑り止め突起βを上側が開いた「V」字状とすることによって、荷物が荷物側摩擦面αに対して下側に動こうとする際に荷物が荷物側摩擦面αから受ける抵抗(摩擦力)を大きくすることができる。
【0032】
加えて、本実施態様の荷物運搬補助具10においては、荷物側滑り止め突起βの上向き面を階段状に形成しており、荷物側滑り止め突起βに複数の上向きエッジを形成している。これにより、荷物側摩擦面αに押し当てられた荷物の表面に微細な粉が付着している場合等であっても、荷物側摩擦面αに対して荷物が滑らないように、荷物側滑り止め突起βで抵抗を与えることができるようになっている。既に述べたように、荷物を運搬する際に一般的に用いられている段ボール箱の表面や、建築資材の表面は、紙紛等の微細な粉が付着していて粉っぽいことが多いところ、このような段ボール箱でもずれ落ちないようにすることができる。
【0033】
荷物側滑り止め突起βの高さH図4)は、特に限定されない。しかし、荷物側滑り止め突起βの高さHが低すぎると、荷物側滑り止め突起βによる抵抗力を大きく確保できなくなる虞がある。特に、荷物側滑り止め突起βの上向き面を階段状に形成する場合に、その段数を確保できなくなり、粉が付着した荷物に対する耐滑性を高めにくくなる。荷物側滑り止め突起βの上向き面を階段状に形成する場合、その段数は、通常、2~10段、好ましくは、3~7段とされる。このため、荷物側滑り止め突起βの高さHは、通常、1mm以上とされる。荷物側滑り止め突起βの高さHは、2mm以上とすることが好ましく、3mm以上とすることがより好ましい。
【0034】
一方、荷物側滑り止め突起βの高さHを高くしすぎると、荷物側滑り止め突起βの強度を維持しにくくなる虞がある。このため、荷物側滑り止め突起βの高さHは、通常、10mm以下とされる。荷物側滑り止め突起βの高さHは、7mm以下とすることが好ましく、5mm以下とすることがより好ましい。本実施態様の荷物運搬補助具10において、荷物側滑り止め突起βの高さHは、約4mmとなっており、荷物側滑り止め突起βにおける階段状の上向き面の段数は、4段となっている。
【0035】
図5は、本発明に係る荷物運搬補助具10における板状滑り止め部材11の外面(荷物側摩擦面α)を示した図である。荷物側滑り止め突起βの横長L図5)は、好ましくは、5~30mm程度、より好ましくは、10~20mm程度とされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、荷物側滑り止め突起βの横長Lは、約13mmとなっている。また、荷物側滑り止め突起βの縦長L図5)は、好ましくは、2~20mm程度、より好ましくは、5~15mm程度とされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、荷物側滑り止め突起βの縦長Lは、約8mmとなっている。さらに、荷物側滑り止め突起βの開き角度θ図5)は、好ましくは、30~150°とされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、荷物側滑り止め突起βの開き角度θは、約90°となっている。
【0036】
荷物側滑り止め突起βの配置も特に限定されないが、本実施態様の荷物運搬補助具10においては、縦方向(上下方向)に並んだ複数(通常、5~30個、好ましくは、10~20個)の荷物側滑り止め突起βからなる列を横方向(水平方向)に並列(通常、2~20列、好ましくは、5~10列)に並べた配置となっている。荷物側滑り止め突起βの縦方向の配置ピッチP図5)は、通常、2~20mm、好ましくは、3~10mmとされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、荷物側滑り止め突起βの縦方向の配置ピッチPは、約4mmとなっている。荷物側滑り止め突起βの横方向の配置ピッチP図5)は、通常、7~30mm、好ましくは、10~20mmとされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、荷物側滑り止め突起βの横方向の配置ピッチPは、約15mmとなっている。
【0037】
上記の荷物側滑り止め突起βに対し、身体側滑り止め突起βは、図2に示すように、正面視逆「V」字状(下側が開いた「V」字状)としている。板状滑り止め部材11は、使用者の腰部側面を上側から下側にずれ動こうとするところ、身体側滑り止め突起βを下側が開いた「V」字状(逆「V」字状)とすることによって、板状滑り止め部材11が腰部側面に対して下側に動こうとする際に板状滑り止め部材11が腰部側面から受ける抵抗(摩擦力)を大きくすることができる。
【0038】
身体側滑り止め突起βは、荷物側滑り止め突起βと同様の寸法とすることもできる。しかし、板状滑り止め部材11は、取り付け部材12によって腰部側面(身体)に対して取り付けられた状態となることに加えて、身体側滑り止め突起βが接触するのは、衣服の生地等、比較的摩擦の大きなものである。このため、身体側滑り止め突起βには、荷物側滑り止め突起βと同程度の耐滑性までは要求されない。このため、本実施態様の荷物運搬補助具10においては、身体側滑り止め突起βを、荷物側滑り止め突起βとは異なる寸法としている。
【0039】
身体側滑り止め突起βの高さH図4)は、通常、0.5~5mmとされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、身体側滑り止め突起βの高さHは、約2mmとなっている。図6は、本発明に係る荷物運搬補助具10における板状滑り止め部材11の内面(身体側摩擦面α)を示した図である。身体側滑り止め突起βの横長L図6)は、好ましくは、5~30mm程度、より好ましくは、10~20mm程度とされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、身体側滑り止め突起βの横長L図5)は、約13mmとなっている。また、身体側滑り止め突起βの縦長L図6)は、好ましくは、2~20mm程度、より好ましくは、5~15mm程度とされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、身体側滑り止め突起βの縦長Lは、約12mmとなっている。さらに、身体側滑り止め突起βの開き角度θ図6)は、好ましくは、30~150°とされる。本実施態様の荷物運搬補助具10において、身体側滑り止め突起βの開き角度θは、約65°となっている。
【0040】
身体側滑り止め突起βの配置も特に限定されないが、荷物側滑り止め突起βよりは粗く配置することができる。本実施態様の荷物運搬補助具10においては、縦方向(上下方向)に並んだ複数の身体側滑り止め突起βからなる列を横方向(水平方向)に並列に並べた配置としていることについては、荷物側滑り止め突起βと同様であるものの、縦方向の列を構成する身体側滑り止め突起βの数は7個、横方向の列数は、6列と、いずれも、荷物側滑り止め突起βの場合よりも少なくなっている。
【0041】
芯材層11cを形成する面状芯材は、板状滑り止め部材11に保形性を付与できるものであれば、特に限定されない。芯材層11cを形成する面状芯材としては、布製のものや、樹脂製のものや、金属製のものや、厚紙からなるもの等とすることもできる。ただし、上記のように、板状滑り止め部材11を、荷物側弾性層11aと身体側弾性層11bと芯材層11cとをコンプレッション成形により一体的に形成する場合において、芯材層11cを樹脂によって形成する場合には、その樹脂には、荷物側弾性層11aや身体側弾性層11bを形成するゴムよりも融点の高いものを用いる。
【0042】
本実施態様の荷物運搬補助具10において、芯材層11cを形成する面状芯材は、厚手の不織布としている。厚手の不織布を厚さ方向にプレスすると、厚さ方向に収縮し、板状滑り止め部材11に剛性を付与しながらも、板状滑り止め部材11に適度な弾性を残すことができる。既に述べたように、本実施態様の荷物運搬補助具10において、板状滑り止め部材11は、コンプレッション成形により成形されるところ、このコンプレッション成形の際に、芯材層11cを形成する面状芯材が厚さ方向にプレスされる。不織布は、低コストであるだけでなく、荷物側弾性層11aや身体側弾性層11bを形成するゴム材料と一体化しやすいという利点も有している。
【0043】
[取り付け部材]
一方、取り付け部材12は、板状滑り止め部材11を使用者の身体における所定箇所に取り付けるためのものとなっている。既に述べたように、本実施態様の荷物運搬補助具10は、使用者の腰部側面に取り付けて使用するものであるところ、本実施態様の荷物運搬補助具10において、取り付け部材12は、板状滑り止め部材11を使用者の腰ベルト20(図3を参照。)に取り付けるためのものとなっている。
【0044】
具体的には、図1及び図2に示すように、取り付け部材12を、板状滑り止め部材11の上縁部中央付近から板状滑り止め部材11の内面(身体側摩擦面α)側に引き回される上側帯状部12aと、板状滑り止め部材11の下縁部中央付近から板状滑り止め部材11の内面(身体側摩擦面α)側に引き回される下側帯状部12bとを有する帯状のものとしている。上側帯状部12aと下側帯状部12bは、図1に示すように、板状滑り止め部材11の上縁部中央付近と下縁中央部付近に設けられた貫通スリット11dを通されて板状滑り止め部材11の内面側に引き出されており、図2に示すように、板状滑り止め部材11の内面側で連続した状態となっている。
【0045】
この取り付け部材12は、図4に示すように、その上側帯状部12aと下側帯状部12bを腰ベルト20の内面側で互いに固着することによって、板状滑り止め部材11を腰ベルト20に取り付けるようになっている。上側帯状部12aと下側帯状部12bの先端部における互いに重なり合う部分には、固着部γ,γが設けられている。固着部γ,γは、互いに固着可能なものであれば、その態様を特に限定されないが、本実施態様の荷物運搬補助具10では、面ファスナーとしている。面ファスナーは、その面に垂直な方向に引き剥がし力が加えられると剥離しやすい。この点、上記のように、上側帯状部12aと下側帯状部12bを腰ベルト20の内面側で固着するようにしたことによって、板状滑り止め部材11における荷物側摩擦面αに荷物を押し当てた際には、面ファスナー(固着部γ,γ)が互いに押し付け合う向きに力を受けるようになり、面ファスナーが剥離しにくくすることが可能となっている。
【0046】
[用途]
以上で説明した本発明の荷物運搬補助具10は、使用者(配達員等)の身体に対して荷物がずれ落ちないようにするだけでなく、使用時(荷物を運搬するとき)と不使用時(荷物を運搬しないとき)とのいずれにおいても、嵩張らないものとなっている。本発明の荷物運搬補助具10は、その用途を特に限定されるものではないが、宅配便の配達員が荷物を配達する際や、工場等の事業所で作業員が荷物を運ぶ際等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 荷物運搬補助具
11 板状滑り止め部材
11a 荷物側弾性層
11b 身体側弾性層
11c 芯材層
11d スリット
12 取り付け部材
12a 上側帯状部
12b 下側帯状部
20 腰ベルト
α 荷物側摩擦面
α 身体側摩擦面
β 荷物側滑り止め突起
β 身体側滑り止め突起
γ 面ファスナー(固着部)
γ 面ファスナー(固着部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6