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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】熱交換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 17/00 20060101AFI20221221BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20221221BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20221221BHJP
   F28D 1/047 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F28F17/00 501B
F28F9/02 301J
F28F1/02 A
F28D1/047 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018240205
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101329
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502112854
【氏名又は名称】有限会社和氣製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 亮平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦士
(72)【発明者】
【氏名】和氣 庸人
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-291953(JP,A)
【文献】特開2010-243147(JP,A)
【文献】実開昭57-182069(JP,U)
【文献】実開昭61-089685(JP,U)
【文献】実開昭55-080691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 17/00
F28F 1/02,1/32
F28F 3/00,3/08
F28F 9/02
F28D 1/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を用いて向かい合わせに接合することにより熱交換媒体の2つの流出入口と該2つの流出入口を連通する連通流路とを有する扁平な熱交換用チューブを構成するよう形成されたチューブ部材を隣接する熱交換用チューブの前記2つの流出入口が整合するように複数積層して構成され、前記熱交換用チューブ内に流れる前記熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブの間に流れる被熱交換媒体とで熱交換する熱交換器であって、
前記チューブ部材は、外周縁の少なくとも一部に切り掛け部が複数形成されており、
前記チューブ部材は、矩形形状をしており、向かい合う長手方向の2つの縁部のうちの一方にのみ全体に前記切り掛け部が連続して形成されており、
前記熱交換用チューブは、向かい合わせに接合する2つのチューブ部材のうちの一方の前記切り掛け部が形成された長手方向の縁部と他方の前記切り掛け部が形成されていない長手方向の縁部とが整合するように組み付けられている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器であって、
前記切り掛け部は、V字形状、U字形状、ノコギリ波形状のいずれかである、
熱交換器。
【請求項3】
熱交換器の製造方法であって、
第1金属による中心材に前記第1金属より融点の低い第2金属が両面に接合され厚みが0.3mm以下としたクラッド板材を用いて、外形が矩形形状で、長手方向の2つの縁部の一方にのみ全体に切り掛け部が連続するように複数形成されており、2つの流出入口の一方から2つの流出入口の他方に至る連通流路を有するチューブ部材を形成するチューブ部材形成工程と、
前記連通流路および前記流出入口が整合するように、且つ、向かい合わせに組み付ける2つのチューブ部材のうちの一方の前記切り掛け部が形成された長手方向の縁部と他方の前記切り掛け部が形成されていない長手方向の縁部とが整合するように、2つのチューブ部材を向かい合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるように前記チューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける組み付け工程と、
前記第1金属の融点より低く前記第2金属の融点より高い温度に調整された炉を用いて前記積層体をロウ付けするロウ付け工程と、
を有する熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器およびその製造方法に関し、詳しくは、扁平に形成された熱交換用チューブを複数積層することにより構成される熱交換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換器としては、チューブ部材を、長手方向の中央に短手方向に直列に並ぶように2つの流出入口用貫通孔を有するように、且つ、この2つの流出入口用貫通孔を連通するU字形状で鏡像対称の2つの連通流路を有するように形成して熱交換用チューブを構成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この熱交換器では、長手方向に対して垂直方向に被熱交換媒体を給排したときに、矩形の熱交換用チューブの長手方向の両端部に2つの流出入口用貫通孔が形成されていると共にこの2つの流出入口用貫通孔を連通する連通流路が形成されているものに比して、流出入口用貫通孔の1つ分だけ被熱交換媒体の流路幅を広くすることができ、熱交換に有効な流路幅を広くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-072331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の熱交換器は、熱回収に用いられることがあり、使用環境によっては熱交換用チューブに結露水が生じる場合がある。結露水は、隣接する熱交換用チューブとの間に生じ、滞ると熱交換器の通風面積を小さくし、熱交換効率を低下させる。このため、結露水の排出性を良好にする必要がある。
【0005】
本発明の熱交換器は、結露水の排出性を良好にすることを主目的とする。また、本発明の熱交換器の製造方法は、結露水の排出性のよい熱交換器を比較的簡易に精度良く製造する方法を提案することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱交換器およびその製造方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の熱交換器は、
金属材料を用いて向かい合わせに接合することにより熱交換媒体の2つの流出入口と該2つの流出入口を連通する連通流路とを有する扁平な熱交換用チューブを構成するよう形成されたチューブ部材を隣接する熱交換用チューブの前記2つの流出入口が整合するように複数積層して構成され、前記熱交換用チューブ内に流れる前記熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブの間に流れる被熱交換媒体とで熱交換する熱交換器であって、
前記チューブ部材は、外周縁の少なくとも一部に切り掛け部が複数形成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の熱交換器では、チューブ部材の外周縁の少なくとも一部に切り掛け部が複数形成されている。結露水は切り掛け部に誘導されて排出されるから、結露水の排出性を良好なものとすることができる。この結果、結露水の排出性が不良なものに比して熱交換効率を向上させることができる。また、切り掛け部を形成することにより、切り掛け部が形成されていないものに比して、被熱交換媒体の流入断面積を徐々に小さくすることができる。この結果、被熱交換媒体の通流抵抗を小さくすることができ、熱交換効率を向上させることができる。なお、切り掛け部は、V字形状、U字形状、ノコギリ波形状のいずれかが好ましい。
【0009】
こうした本発明の熱交換器において、前記チューブ部材は、矩形形状をしており、向かい合う長手方向の2つの縁部のうちの一方にのみ全体に前記切り掛け部が連続して形成されており、前記熱交換用チューブは、向かい合わせに接合する2つのチューブ部材のうちの一方の前記切り掛け部が形成された長手方向の縁部と他方の前記切り掛け部が形成されていない長手方向の縁部とが整合するように組み付けられているものとしてもよい。こうすれば、熱交換用チューブの伝熱面積を小さくすることなく、結露水の排出性を良好なものにすることができる。この場合でも被熱交換媒体の流入断面積を徐々に小さくすることができるから、熱交換効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の熱交換器において、前記チューブ部材は、矩形形状をしており、向かい合う長手方向の2つの縁部の双方の全体に前記切り掛け部が連続して形成されており、前記熱交換用チューブは、向かい合わせに接合する2つのチューブ部材の前記切り掛け部が整合するように組み付けられているものとしてもよい。こうすれば、結露水の排出性を更に良好なものとすることができる。
【0011】
本発明の熱交換器の製造方法は、
第1金属による中心材に前記第1金属より融点の低い第2金属が両面に接合され厚みが0.3mm以下としたクラッド板材を用いて、外形が矩形形状で、長手方向の2つの縁部の一方にのみ全体に切り掛け部が連続するように複数形成されており、2つの流出入口の一方から2つの流出入口の他方に至る連通流路を有するチューブ部材を形成するチューブ部材形成工程と、
前記連通流路および前記流出入口が整合するように、且つ、向かい合わせに組み付ける2つのチューブ部材のうちの一方の前記切り掛け部が形成された長手方向の縁部と他方の前記切り掛け部が形成されていない長手方向の縁部とが整合するように、2つのチューブ部材を向かい合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるように前記チューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける組み付け工程と、
前記第1金属の融点より低く前記第2金属の融点より高い温度に調整された炉を用いて前記積層体をロウ付けするロウ付け工程と、
を有することを特徴とする。
【0012】
この本発明の熱交換器の製造方法では、向かい合わせて接合することによって熱交換用チューブを形成するチューブ部材であって、外形が矩形形状で、長手方向の2つの縁部の一方にのみ全体に切り掛け部が連続するように複数形成されており、2つの流出入口の一方から2つの流出入口の他方に至る連通流路を有するチューブ部材をクラッド板材を用いて形成する。続いて、連通流路および流出入口が整合するように、且つ、向かい合わせに組み付ける2つのチューブ部材のうちの一方の切り掛け部が形成された長手方向の縁部と他方の切り掛け部が形成されていない長手方向の縁部とが整合するように、2つのチューブ部材を向かい合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるようにチューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける。そして、これをロウ材の融点より高く板材の融点より低い温度の炉に入れて当接部を接合(ロウ付け)して本発明の熱交換器を完成する。このため、結露水の排出性がよく熱交換効率の高い熱交換器をより簡易に製造することができる。なお、切り掛け部は、V字形状、U字形状、ノコギリ波形状のいずれかが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の熱交換器20の構成の概略を示す構成図である。
図2図1におけるA-A断面を模式的に示す断面図である。
図3】熱交換用チューブ30の構成の概略を示す構成図である。
図4】チューブ部材40の構成の概略を示す構成図である。
図5図1および図3におけるB-B断面を示す断面図である。
図6図1および図3におけるC-C断面を示す断面図である。
図7】変形例のチューブ部材140の構成の概略を示す構成図である。
図8】変形例のチューブ部材240の構成の概略を示す構成図である。
図9】変形例のチューブ部材340の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0015】
図1は、本発明の実施例の熱交換器20の構成の概略を示す構成図である。図2は、図1におけるA-A断面を模式的に示す断面図である。実施例の熱交換器20は、空調装置や冷凍装置などの冷凍サイクルや発熱を伴って作動する機器の冷却装置などに用いられ、図1に示すように、2つのチューブ部材40により構成される熱交換用チューブ30を複数積層して構成される積層体22と、積層体22の配列方向(図中上下方向)の両側に配置されるプレート23と、熱交換用チューブの長手方向(図中左右方向)の両側に配置されるプレート24と、積層体22およびプレート23に形成される熱交換媒体の流入用流路25および流出用流路26に取り付けられる供給管27および排出管28と、を備える。この熱交換器20は、流入用流路25から熱交換用チューブ30に形成された後述する2つの連通流路34,35に供給されるハイドロフルオロカーボンや水などの熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブ30の間の隙間に流れる空気などの被熱交換媒体との熱交換により、熱交換媒体を加熱または冷却する又は被熱交換媒体を冷却または加熱する。図2中、供給管27および排出管28の上に記載された白抜き矢印は、熱交換媒体の供給や排出の方向を示しており、熱交換器20の左右に記載された白抜き矢印は、被熱交換媒体の流れる方向を示している。
【0016】
図3は、熱交換用チューブ30の構成の概略を示す構成図である。図4は、熱交換用チューブ30を構成するチューブ部材40の構成の概略を示す構成図である。図5は、図1および図3におけるB-B断面を示す断面図である。図6は、図1および図3におけるC-C断面を示す断面図である。図5中の白抜き矢印は、被熱交換媒体の流れる方向を示している。
【0017】
熱交換用チューブ30は、図3に示すように、2つのチューブ部材40を向かい合わせて接合することにより構成されている。チューブ部材40は、図3および図4に示すように、アルミニウムの板材の両面にアルミシリコン合金などのロウ材を配置して一体に圧延することによって板材とロウ材とを接合した厚さが0.2mmのいわゆるクラッド板材に対して、プレス加工や穴開け加工などを施して形成されている。
【0018】
チューブ部材40には、図4に示すように、長手方向(図中左右方向)の中央に短手方向に直列に並ぶように2つの流出入口用貫通孔41a,41bが形成されており、この2つの流出入口用貫通孔41a,41bを連通するようにW字状の2つの連通流路形成部44,45が形成されている。また、2つの流出入口用貫通孔41a,41bの周囲にはフランジ部42a,42bが形成されている。2つの流出入口用貫通孔41a,41bとフランジ部42a,42bは、2つの流出入口用貫通孔41a,41bの中間点を通る直線(図3における水平方向の線)で鏡像対称となるように形成されており、連通流路形成部44,45は、2つの流出入口用貫通孔41a,41bの中央を通る直線(図3における上下方向の線)で鏡像対称となるように形成されている。
【0019】
また、チューブ部材40の長手方向の2つの辺を形成する縁部46a,46bのうちの一方の縁部46a(図3中上側の縁部)は直線上に形成されており、他方の縁部46b(図3中下側の縁部)は、略全体にV字形状の切り掛け部47が連続して切り取られた形状に形成されている。
【0020】
熱交換用チューブ30は、図3に示すように、2つのチューブ部材40は向かい合わせになるように、且つ、一方のチューブ部材40の縁部46aが他方のチューブ部材40の縁部46bに整合するよう向かい合わせて構成する。2つの流出入口用貫通孔41a,41bとフランジ部42a,42bは鏡像対称となるように形成されており、連通流路形成部44,45も鏡像対称となるように形成されているから、一方のチューブ部材40の2つの流出入口用貫通孔41a,41bおよび2つのフランジ部42a,42bと他方のチューブ部材40の2つの流出入口用貫通孔41b,41aおよび2つのフランジ部42a,42bとが整合し、流入用流路25および流出用流路26を形成する。また、一方のチューブ部材40の連通流路形成部44,45と他方のチューブ部材40の連通流路形成部45,44とが整合し、連通流路34,35を形成する。
【0021】
熱交換用チューブ30では、結露水が生じたときには、結露水は、被熱交換媒体の流出端部近傍まで運ばれ、流出端部近傍では縁部46bの端部まで連続する切り掛け部47に導かれる。連続する切り掛け部47は端部になるほどその面積が小さくなるから、結露水の表面張力による付着力が小さくなり、被熱交換媒体の流れにより端部或いは端部近傍で外部に排出される。一方、比較例として長手方向の2つの辺が直線により形成されたもの(切り掛け部47を連続して切り取らないもの)を考えると、連続する切り掛け部47が形成されていないため、連続する切り掛け部47による効果を得ることができない。即ち、実施例の熱交換用チューブ30では、被熱交換媒体の流出端部近傍に連続する切り掛け部47が形成されていることにより、連続する切り掛け部47が形成されていない比較例に比して、結露水の良好な排出性を得ることができる。
【0022】
また、熱交換用チューブ30では、図5に示すように、被熱交換媒体の通流断面積は、被熱交換媒体の流入端部では、切り掛け部47が切り取られているからクラッド板材1枚分の厚み(0.2mm)だけ小さくなり、そこから切りかけ部47の切り掛け幅が小さくなる分だけ徐々に小さくなる。そして、クラッド板材2枚分の厚み(0.4mm)だけ小さくなり、さらにクラッド板材2枚分の厚み(0.4mm)に連通流路34,35の厚みを加えた分だけ小さくなる。一方、比較例を考えると、被熱交換媒体の通流断面積は、被熱交換媒体の流入端部では、クラッド板材2枚分の厚み(0.4mm)だけ小さくなり、そこからクラッド板材2枚分の厚み(0.4mm)に連通流路34,35の厚みを加えた分だけ小さくなる。したがって、実施例の熱交換用チューブ30では、比較例に比して、被熱交換媒体の流入側における通流断面積が徐々に小さくなる。これにより、通流抵抗を小さくすることができる。
【0023】
実施例では、2つのチューブ部材40を向かい合わせるように、且つ、一方のチューブ部材40の縁部46aが他方のチューブ部材40の縁部46bに整合するように複数積層することにより複数の熱交換用チューブ30を積層してなる積層体22とし、これにプレート23,24および供給管27,排出管28を組み付け、これをロウ材の融点より高く板材の融点より低い温度(例えば610℃や620℃など)で加熱することによって当接部を接合(ロウ付け)して熱交換器20を完成する。即ち、熱交換用チューブ30を構成するチューブ部材40の向かい合わせの接触部を接合すると共に隣接する熱交換用チューブ30のフランジ部42a,42bの接触部を接合し、同時にプレート23,24や供給管27,排出管28を接合するのである。
【0024】
こうして構成された熱交換器20では、ハイドロフルオロカーボンや水などの熱交換媒体は、供給管27から2つの流出入口用貫通孔41a,41bにより形成される流入用流路25に供給され、各熱交換用チューブ30の連通流路44,45を流れて2つの流出入口用貫通孔41a,41bにより形成される流出用流路26に流出し、排出管28から排出される。一方、空気などの被熱交換媒体は、流出用流路26側から各熱交換用チューブ30に供給され、各熱交換用チューブ30の間の隙間を流れて熱交換媒体と熱交換を行ない、流入用流路25側から排出される。このように、熱交換媒体と被熱交換媒体とを給排することにより、熱交換媒体の全体としての流れと被熱交換媒体の流れとを対向流とすることができる。
【0025】
以上説明した熱交換器20では、熱交換用チューブ30を構成する一方のチューブ部材40の縁部46bに連続する切り掛け部47が連続して形成されているから、流入用流路25側の被熱交換媒体の排出端部における結露水の排出を良好に行なうことができる。また、被熱交換媒体の通流断面積は、流出用流路26側の被熱交換媒体の流入側では徐々に小さくなり、流入用流路25側の被熱交換媒体の排出側では徐々に大きくなる。このため、連続する切り掛け部47が全く形成されていないチューブ部材を用いて構成したものと比して、通流抵抗を小さくすることができる。一方、一方のチューブ部材40の縁部46aが他方のチューブ部材40の縁部46bに整合するよう向かい合わせて構成されているから、熱交換用チューブ30の伝熱面積は、切り掛け部47が全く形成されていないものと同様である。このため、熱交換効率を向上させることができる。これらの結果、結露水の排水性がよく、熱交換効率の高い熱交換器とすることができる。
【0026】
実施例の熱交換器20の製造方法では、向かい合わせることにより扁平な熱交換用チューブ30を構成するチューブ部材40をクラッド板材を用いて形成し、熱交換用チューブ30を複数積層した状態となるようにチューブ部材40を複数積層して積層体22を組み付け、これをロウ材の融点より高く板材の融点より低い温度の炉に入れて当接部を接合(ロウ付け)して実施例の熱交換器20を完成する。このため、結露水の排出性がよく熱交換効率の高い実施例の熱交換器20をより簡易に製造することができる。
【0027】
実施例の熱交換器20では、チューブ部材40の長手方向の一方の縁部46bに略全体にV字形状の切り掛け部47を連続して形成するものとしたが、切り掛け部47の形状は、若干丸みを帯びたV字形状としてもよい。また、図7に例示する変形例のチューブ部材140に示すように、その長手方向の一方の縁部146bに略全体にU字形状の切り掛け部147を連続して形成するものとしてもよい。図示しないが、長手方向の一方の縁部の略全体をノコギリ波状に形成するものとしても構わない。
【0028】
実施例の熱交換器20では、チューブ部材40の長手方向の一方の縁部46bだけに略全体にV字形状の切り掛け部47を連続して形成するものとしたが、図8に例示する変形例のチューブ部材240に示すように、その長手方向の2つの縁部246a,246bの双方に略全体にV字形状の切り掛け部247を連続して形成するものとしてもよい。この場合、熱交換用チューブの伝熱面積は若干小さくなるが、結露水の排出性は高くなる。このため、伝熱面積の若干の減少に比して結露水の排出性の影響が大きい状況下での熱交換では熱交換効率を良好にすることができる。
【0029】
実施例の熱交換器20では、チューブ部材40の長手方向の中央に短手方向に直列に並ぶように2つの流出入口用貫通孔41a,41bおよび2つのフランジ部42a,42bを形成するものとしたが、図9の変形例のチューブ部材340に示すように、その長手方向の両端部に2つの流出入口用貫通孔341a,341bおよび2つのフランジ部342a,342bを形成するものとしてもよい。この場合でも、長手方向の一方の縁部346aは直線となるように形成し、他方の縁部346bには略全体にV字形状の切り掛け部47を連続して形成するものとすればよい。
【0030】
実施例の熱交換器20では、チューブ部材40の長手方向の一方の縁部46bだけに略全体にV字形状の切り掛け部47を連続して形成するものとしたが、全体ではなく一部分にまたは部分的にV字形状の切り掛け部47を連続してまたは不連続に形成するものとしてもよい。
【0031】
実施例の熱交換器20では、流出入口用貫通孔41a,41bの周囲にフランジ部42a,42bを形成するものとしたが、フランジ部42a,42bに代えてバーリング加工によりバーリング加工部を形成するものとしてもよい。この場合、チューブ部材の2つのバーリング加工部のうちの一方のバーリング加工部が他方のバーリング加工部に嵌合するよう一方のバーリング加工部の径を他方のバーリング加工部の径より若干小さく或いは若干大きく形成するのが好ましい。こうしたバーリング加工部を有するチューブ部材を、隣接する熱交換用チューブ30とが交互に重なるように積層すれば、向かい合うチューブ部材のバーリング加工部が嵌まり合うようにすることができる。
【0032】
実施例の熱交換器20では、アルミニウムの板材の両面にアルミシリコン合金などのロウ材を接合した厚さが0.2mmのクラッド板材を用いてチューブ部材40を形成するものとしたが、0.2mmより薄いアルミニウムとアルミニウム合金によるクラッド板材や0.2mmより厚いアルミニウムとアルミニウム合金によるクラッド板材を用いてチューブ部材40を形成するものとしてもよい。また、ステンレスの板材の両面に銅やニッケルなどのロウ材を接合したクラッド板材やステンレスに板材の両面にメッキを施した板材を用いてチューブ部材を形成するものとしてもよい。さらに、銅の板材の両面にロウ材を接合したりメッキした板材を用いてチューブ部材を形成するものとしてもよい。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、熱交換器の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
20 熱交換器、22 積層体、23,24 プレート、25 流入用流路、26 流出用流路、27 供給管、28 排出管、30 熱交換用チューブ、34,35 連通流路、40,140,240,340 チューブ部材、41a,41b,341a,341b 流出入口用貫通孔、42a,42b,342a,342b フランジ部、44,45 連通流路形成部、46a,46b,146a,146b,246a,246b,346a,346b 縁部、47,147,247,347 切り掛け部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9