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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】熱交換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/02 20060101AFI20221221BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20221221BHJP
   F28F 13/12 20060101ALI20221221BHJP
   F28D 1/047 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F28F1/02 A
F28F9/02 301J
F28F13/12 B
F28D1/047 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018240206
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101330
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502112854
【氏名又は名称】有限会社和氣製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 亮平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦士
(72)【発明者】
【氏名】和氣 庸人
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072331(JP,A)
【文献】特開2006-112731(JP,A)
【文献】実公昭28-003688(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 99/00
F28D 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を用いて向かい合わせに接合することにより熱交換媒体の2つの流出入口と該2つの流出入口を連通する連通流路とを有する扁平な熱交換用チューブを構成するよう形成されたチューブ部材を隣接する熱交換用チューブの前記2つの流出入口が整合するように複数積層して構成され、前記熱交換用チューブ内に流れる前記熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブの間に流れる被熱交換媒体とで熱交換する熱交換器であって、
前記チューブ部材は、接合部に複数の切り起こしが形成されており、
前記複数の切り起こしは、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように形成された第1切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第2切り起こしと、を含み、
前記複数の切り起こしは、前記熱交換用チューブを形成したときに、該熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第2切り起こしとが積層方向に整合するように形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
金属材料を用いて向かい合わせに接合することにより熱交換媒体の2つの流出入口と該2つの流出入口を連通する連通流路とを有する扁平な熱交換用チューブを構成するよう形成されたチューブ部材を隣接する熱交換用チューブの前記2つの流出入口が整合するように複数積層して構成され、前記熱交換用チューブ内に流れる前記熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブの間に流れる被熱交換媒体とで熱交換する熱交換器であって、
前記チューブ部材は、接合部に複数の切り起こしが形成されており、
前記複数の切り起こしは、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方側に前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように形成された第1切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第2切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方側に前記熱交換用チューブの内側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第3切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの内側方向に開口するように前記第2切り起こしと同一形状に形成された第4切り起こしと、を含み、
前記第1切り起こしと前記第2切り起こしは交互に配置されており、
前記第3切り起こしと前記第4切り起こしは交互に配置されており、
前記複数の切り起こしは、前記熱交換用チューブを形成したときに、該熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第3切り起こしとが積層方向に整合し、且つ、前記一方のチューブ部材に形成された第2切り起こしと前記他方のチューブ部材に形成された第4切り起こしとが積層方向に整合するように形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2記載の熱交換器であって、
前記複数の切り起こしは、V字形状、U字形状、コ字形状のいずれかである、
熱交換器。
【請求項4】
熱交換器の製造方法であって、
第1金属による中心材に前記第1金属より融点の低い第2金属が両面に接合され厚みが0.3mm以下としたクラッド板材を用いて、2つの流出入口の一方から2つの流出入口の他方に至る連通流路形成部と前記連通流路形成部を構成しない部分に複数の切り起こしとを有するチューブ部材を形成するチューブ部材形成工程と、
前記連通流路形成部および前記流出入口が整合するように2つのチューブ部材を向かい
合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるように前記チューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける組み付け工程と、
前記第1金属の融点より低く前記第2金属の融点より高い温度に調整された炉を用いて前記積層体をロウ付けするロウ付け工程と、
を有し、
前記チューブ部材形成工程は、前記複数の切り起こしとして、被熱交換媒体の流れ方向の一方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように形成された第1切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第2切り起こしとを有し、前記熱交換用チューブを形成したときに、該熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第2切り起こしとが積層方向に整合するように形成する工程であり、
前記組み付け工程は、前記熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第2切り起こしとが整合するように組み付ける工程である、
熱交換器の製造方法。
【請求項5】
熱交換器の製造方法であって、
第1金属による中心材に前記第1金属より融点の低い第2金属が両面に接合され厚みが0.3mm以下としたクラッド板材を用いて、2つの流出入口の一方から2つの流出入口の他方に至る連通流路形成部と前記連通流路形成部を構成しない部分に複数の切り起こしとを有するチューブ部材を形成するチューブ部材形成工程と、
前記連通流路形成部および前記流出入口が整合するように2つのチューブ部材を向かい
合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるように前記チューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける組み付け工程と、
前記第1金属の融点より低く前記第2金属の融点より高い温度に調整された炉を用いて前記積層体をロウ付けするロウ付け工程と、
を有し、
前記チューブ部材形成工程は、前記複数の切り起こしとして、交互に配置される前記被熱交換媒体の流れ方向の一方側に前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように形成された第1切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第2切り起こしとを有すると共に、交互に配置される前記被熱交換媒体の流れ方向の一方側に前記熱交換用チューブの内側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第3切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの内側方向に開口するように前記第2切り起こしと同一形状に形成された第4切り起こしとを有し、前記熱交換用チューブを形成したときに、該熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第3切り起こしとが積層方向に整合し、且つ、前記一方のチューブ部材に形成された第2切り起こしと前記他方のチューブ部材に形成された第4切り起こしとが積層方向に整合するように形成する工程であり、
前記組み付け工程は、前記熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第3切り起こしとが整合し、且つ、前記一方のチューブ部材に形成された第2切り起こしと前記他方のチューブ部材に形成された第4切り起こしとが整合するように組み付ける工程である、
熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器およびその製造方法に関し、詳しくは、扁平に形成された熱交換用チューブを複数積層することにより構成される熱交換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換器としては、チューブ部材を、長手方向の中央に短手方向に直列に並ぶように2つの流出入口用貫通孔を有するように、且つ、この2つの流出入口用貫通孔を連通するU字形状で鏡像対称の2つの連通流路を有するように形成して熱交換用チューブを構成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この熱交換器では、長手方向に対して垂直方向に被熱交換媒体を給排したときに、矩形の熱交換用チューブの長手方向の両端部に2つの流出入口用貫通孔が形成されていると共にこの2つの流出入口用貫通孔を連通する連通流路が形成されているものに比して、流出入口用貫通孔の1つ分だけ被熱交換媒体の流路幅を広くすることができ、熱交換に有効な流路幅を広くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-072331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来からこの種の技術分野では、熱交換効率の向上を図ることが課題として考えられている。このため、熱交換媒体や被熱交換媒体の流れに乱れを生じさせる機構を設けることも行なわれているが、熱交換媒体や被熱交換媒体の流れにおける乱れは圧損失を招き、熱交換効率を低下させてしまう場合がある。
【0005】
本発明の熱交換器は、熱交換効率をより向上させることを主目的とする。また、本発明の熱交換器の製造方法は、熱交換効率のよい熱交換器を比較的簡易に精度良く製造する方法を提案することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱交換器およびその製造方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の熱交換器は、
金属材料を用いて向かい合わせに接合することにより熱交換媒体の2つの流出入口と該2つの流出入口を連通する連通流路とを有する扁平な熱交換用チューブを構成するよう形成されたチューブ部材を隣接する熱交換用チューブの前記2つの流出入口が整合するように複数積層して構成され、前記熱交換用チューブ内に流れる前記熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブの間に流れる被熱交換媒体とで熱交換する熱交換器であって、
前記チューブ部材は、接合部に複数の切り起こしが形成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の熱交換器では、チューブ部材の接合部に複数の切り起こしが形成されている。切り起こしは被熱交換媒体の流れに乱れを生じさせることにより、伝熱を促進する。この結果、熱交換器の熱交換効率をより向上させることができる。なお、複数の切り起こしは、V字形状、U字形状、コ字形状のいずれかが好ましい。
【0009】
こうした本発明の熱交換器において、前記複数の切り起こしは、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように形成された第1切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第2切り起こしと、を含むものとしてもよい。この場合、前記複数の切り起こしは、前記熱交換用チューブを形成したときに、該熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第2切り起こしとが整合するように形成されているものとしてもよい。こうすれば、熱交換用チューブを構成したときに、第1切り起こしと第2切り起こしとにより、熱交換用チューブの一方側と他方側とを連通する連通孔を形成し、被熱交換媒体の隣接する流路への通流を行なうことができる。これにより、被熱交換媒体の流れを複雑にし、伝熱を促進することができる。この結果、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の熱交換器において、前記複数の切り起こしは、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方側に前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように形成された第1切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第2切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方側に前記熱交換用チューブの内側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第3切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの内側方向に開口するように前記第2切り起こしと同一形状に形成された第4切り起こしと、を含み、前記複数の切り起こしは、前記熱交換用チューブを形成したときに、該熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第3切り起こしとが整合し、且つ、前記一方のチューブ部材に形成された第2切り起こしと前記他方のチューブ部材に形成された第4切り起こしとが整合するように形成されている、ものとしてもよい。こうすれば、熱交換用チューブを構成したときに、第1切り起こしと第3切り起こし、および 第2切り起こしと第4切り起こしとにより、熱交換用チューブの一方側と他方側とを連通する連通孔を形成し、被熱交換媒体の隣接する流路への通流を行なうことができる。これにより、被熱交換媒体の流れを複雑にし、伝熱を促進することができる。この結果、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。また、熱交換用チューブを構成すると第1切り起こしと第3切り起こしとが整合すると共に第2切り起こしと第4切り起こしとが整合するから、チューブ部材を積層する際の位置決めを容易に行なうことができる。
【0011】
本発明の熱交換器の製造方法は、
第1金属による中心材に前記第1金属より融点の低い第2金属が両面に接合され厚みが0.3mm以下としたクラッド板材を用いて、2つの流出入口の一方から2つの流出入口の他方に至る連通流路形成部と前記連通流路形成部を構成しない部分に複数の切り起こしとを有するチューブ部材を形成するチューブ部材形成工程と、
前記連通流路形成部および前記流出入口が整合するように2つのチューブ部材を向かい合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるように前記チューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける組み付け工程と、
前記第1金属の融点より低く前記第2金属の融点より高い温度に調整された炉を用いて前記積層体をロウ付けするロウ付け工程と、
を有することを特徴とする。
【0012】
この本発明の熱交換器の製造方法では、向かい合わせて接合することによって熱交換用チューブを形成するチューブ部材であって、2つの流出入口の一方から2つの流出入口の他方に至る連通流路形成部と連通流路形成部を構成しない部分に複数の切り起こしとを有するチューブ部材をクラッド板材を用いて形成する。続いて、連通流路形成部および流出入口が整合するように、2つのチューブ部材を向かい合わせて構成される扁平な熱交換用チューブが複数積層された状態となるようにチューブ部材を複数積層して積層体を組み付ける。そして、これをロウ材の融点より高く板材の融点より低い温度の炉に入れて当接部を接合(ロウ付け)して本発明の熱交換器を完成する。このため、熱交換効率のより高い熱交換器をより簡易に製造することができる。なお、複数の切り起こしは、V字形状、U字形状、コ字形状のいずれかが好ましい。
【0013】
こうした本発明の熱交換器の製造方法において、前記チューブ部材形成工程は、前記複数の切り起こしとして、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように形成された第1切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第2切り起こしとを有し、前記熱交換用チューブを形成したときに、該熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第2切り起こしとが整合するように形成する工程であり、前記組み付け工程は、前記熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第2切り起こしとが整合するように組み付ける工程である、ものとしてもよい。こうすれば、熱交換用チューブを構成したときに、第1切り起こしと第2切り起こしとにより、熱交換用チューブの一方側と他方側とを連通する連通孔を形成し、被熱交換媒体の隣接する流路への通流を行なうことができる熱交換器を簡易に製造することができる。
【0014】
また、本発明の熱交換器の製造方法において、前記チューブ部材形成工程は、前記複数の切り起こしとして、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方側に前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように形成された第1切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの外側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第2切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の一方側に前記熱交換用チューブの内側方向に開口するように前記第1切り起こしと同一形状に形成された第3切り起こしと、前記被熱交換媒体の流れ方向の他方向側に且つ前記熱交換用チューブの内側方向に開口するように前記第2切り起こしと同一形状に形成された第4切り起こしとを有し、前記熱交換用チューブを形成したときに、該熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第3切り起こしとが整合し、且つ、前記一方のチューブ部材に形成された第2切り起こしと前記他方のチューブ部材に形成された第4切り起こしとが整合するように形成する工程であり、前記組み付け工程は、前記熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材のうちの一方のチューブ部材に形成された第1切り起こしと他方のチューブ部材に形成された第3切り起こしとが整合し、且つ、前記一方のチューブ部材に形成された第2切り起こしと前記他方のチューブ部材に形成された第4切り起こしとが整合するように組み付ける工程である、ものとしてもよい。こうすれば、熱交換用チューブを構成したときに、第1切り起こしと第2切り起こしとにより、熱交換用チューブの一方側と他方側とを連通する連通孔を形成し、被熱交換媒体の隣接する流路への通流を行なうことができる熱交換器を簡易に製造することができる。また、熱交換用チューブを構成すると第1切り起こしと第3切り起こしとが整合すると共に第2切り起こしと第4切り起こしとが整合するから、チューブ部材を積層する際の位置決めを容易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例の熱交換器20の構成の概略を示す構成図である。
図2図1におけるA-A断面を模式的に示す断面図である。
図3】熱交換用チューブ30を構成するチューブ部材40の構成の概略を示す構成図である。
図4図1および図3におけるB-B断面を示す断面図である。
図5図1および図3におけるC-C断面を示す断面図である。
図6】変形例のチューブ部材140の構成の概略を示す構成図である。
図7図6におけるD-D断面を示す断面図である。
図8】変形例のチューブ部材240の構成の概略を示す構成図である。
図9図8におけるE-E断面を示す断面図である。
図10】変形例のチューブ部材340の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0017】
図1は、本発明の実施例の熱交換器20の構成の概略を示す構成図である。図2は、図1におけるA-A断面を模式的に示す断面図である。実施例の熱交換器20は、空調装置や冷凍装置などの冷凍サイクルや発熱を伴って作動する機器の冷却装置などに用いられ、図1に示すように、2つのチューブ部材40により構成される熱交換用チューブ30を複数積層して構成される積層体22と、積層体22の配列方向(図中上下方向)の両側に配置されるプレート23と、熱交換用チューブの長手方向(図中左右方向)の両側に配置されるプレート24と、積層体22およびプレート23に形成される熱交換媒体の流入用流路25および流出用流路26に取り付けられる供給管27および排出管28と、を備える。この熱交換器20は、流入用流路25から熱交換用チューブ30に形成された後述する2つの連通流路34,35に供給されるハイドロフルオロカーボンや水などの熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブ30の間の隙間に流れる空気などの被熱交換媒体との熱交換により、熱交換媒体を加熱または冷却する又は被熱交換媒体を冷却または加熱する。図2中、供給管27および排出管28の上に記載された白抜き矢印は、熱交換媒体の供給や排出の方向を示しており、熱交換器20の左右に記載された白抜き矢印は、被熱交換媒体の流れる方向を示している。
【0018】
図3は、熱交換用チューブ30を構成するチューブ部材40の構成の概略を示す構成図である。図4は、図1および図3におけるB-B断面を示す断面図である。図5は、図1および図3におけるC-C断面を示す断面図である。図4中白抜き矢印は被熱交換媒体の流れる方向を示している。
【0019】
熱交換用チューブ30は、2つのチューブ部材40を向かい合わせて接合することにより構成されている。チューブ部材40は、図3に示すように、アルミニウムの板材の両面にアルミシリコン合金などのロウ材を配置して一体に圧延することによって板材とロウ材とを接合した厚さが0.2mmのいわゆるクラッド板材に対して、プレス加工や穴開け加工などを施して形成されている。
【0020】
チューブ部材40には、図3に示すように、長手方向(図中左右方向)の中央に短手方向に直列に並ぶように2つの流出入口用貫通孔41a,41bが形成されており、この2つの流出入口用貫通孔41a,41bを連通するようにW字状の2つの連通流路形成部44,45が紙面表側に凸となるように形成されている。また、2つの流出入口用貫通孔41a,41bの周囲にはフランジ部42a,42bが紙面表側に凸となるように形成されている。2つの流出入口用貫通孔41a,41bとフランジ部42a,42bは、2つの流出入口用貫通孔41a,41bの中間点を通る直線(図3における水平方向の線)で鏡像対称となるように形成されており、連通流路形成部44,45は、2つの流出入口用貫通孔41a,41bの中央を通る直線(図3における上下方向の線)で鏡像対称となるように形成されている。
【0021】
また、チューブ部材40の連通流路形成部44,45の間の接合部には、第1切り起こし46a,46c,46e,47b,48d,47f,48a,48c,48eと、第2切り起こし46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48fとが交互に配置されるように形成されている。第1切り起こし46a,46c,46e,47b,48d,47f,48a,48c,48eは、図中下側が紙面の表面方向に同一形状のコ字形状となるように切り起こされている。第2切り起こし46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48fは、第1切り起こし46aと形状は同じだが、図中上側が紙面の表面方向にコ字形状となるように切り起こされている。
【0022】
熱交換用チューブ30は、図4および図5に示すように、2つのチューブ部材40を紙面裏側が向かい合うように接合することにより構成されている。このため、一方のチューブ部材40の流出入口用貫通孔41a,41bおよびフランジ部42a,42bは他方のチューブ部材40の流出入口用貫通孔41a,41bおよびフランジ部42a,42bと整合する。また、一方のチューブ部材40の第1切り起こし46a,46c,46e,47b,48d,47f,48a,48c,48eは他方のチューブ部材40の第2切り起こし46f,46d,46b,47e,47c,47a,48f,48d,48bと整合し、一方のチューブ部材40の第2切り起こし46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48fは他方のチューブ部材40の第1切り起こし46e,46c,46a,47f,47d,47b,48e,48c,48aと整合する。
【0023】
熱交換用チューブ30は、図4に示すように、第1切り起こし46aと第2切り起こし46fとにより、また、第1切り起こし48aと第2切り起こし48fとにより、被熱交換媒体が図中下側から上側に連通する連通孔を形成する。一方、第2切り起こし47aと第2切り起こし46fとにより、被熱交換媒体が図中上側から下側に連通する連通孔を形成する。このため、被熱交換媒体は、熱交換用チューブ30に形成された連通孔により熱交換用チューブ30によって区分けされた反対側の流路に流入したり、熱交換用チューブ30によって区分けされた反対側の流路から流入したりする。これにより、熱交換用チューブ30によって区分けされた流路を流れる被熱交換媒体は、その流れが乱される。この結果、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。
【0024】
実施例では、2つのチューブ部材40を、紙面裏側が向かい合わせとなるように、且つ、一方のチューブ部材40の流出入口用貫通孔41a,41bおよびフランジ部42a,42bは他方のチューブ部材40の流出入口用貫通孔41a,41bおよびフランジ部42a,42bと整合するように、複数積層することにより複数の熱交換用チューブ30を積層してなる積層体22とし、これにプレート23,24および供給管27,排出管28を組み付け、これをロウ材の融点より高く板材の融点より低い温度(例えば610℃や620℃など)で加熱することによって当接部を接合(ロウ付け)して熱交換器20を完成する。即ち、熱交換用チューブ30を構成するチューブ部材40の向かい合わせの接触部を接合すると共に隣接する熱交換用チューブ30のフランジ部42a,42bの接触部を接合し、同時にプレート23,24や供給管27,排出管28を接合するのである。
【0025】
こうして構成された熱交換器20では、ハイドロフルオロカーボンや水などの熱交換媒体は、供給管27から2つの流出入口用貫通孔41a,41bにより形成される流入用流路25に供給され、各熱交換用チューブ30の連通流路44,45を流れて2つの流出入口用貫通孔41a,41bにより形成される流出用流路26に流出し、排出管28から排出される。一方、空気などの被熱交換媒体は、流出用流路26側から各熱交換用チューブ30に供給され、各熱交換用チューブ30の間の隙間を流れて熱交換媒体と熱交換を行ない、流入用流路25側から排出される。このように、熱交換媒体と被熱交換媒体とを給排することにより、熱交換媒体の全体としての流れと被熱交換媒体の流れとを対向流とすることができる。
【0026】
以上説明した熱交換器20では、チューブ部材40の連通流路形成部44,45の間の接合部に、第1切り起こし46a,46c,46e,47b,47d,47f,48a,48c,48eと、第2切り起こし46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48fとを交互に配置されるように形成し、2つのチューブ部材40が、紙面裏側が向かい合わせとなるように、且つ、一方のチューブ部材40の流出入口用貫通孔41a,41bおよびフランジ部42a,42bは他方のチューブ部材40の流出入口用貫通孔41a,41bおよびフランジ部42a,42bと整合するように組み付けて熱交換用チューブ30を構成する。これにより、一方のチューブ部材40の第1切り起こし46a,46c,46e,47b,48d,47f,48a,48c,48eと他方のチューブ部材40の第2切り起こし46f,46d,46b,47e,47c,47a,48f,48d,48bとにより連通孔を形成すると共に、一方のチューブ部材40の第2切り起こし46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48fと他方のチューブ部材40の第1切り起こし46e,46c,46a,47f,47d,47b,48e,48c,48aとに連通孔を形成し、被熱交換媒体を、連通孔により熱交換用チューブ30によって区分けされた反対側の流路に流出させたり、熱交換用チューブ30によって区分けされた反対側の流路から流入させたりする。これにより、熱交換用チューブ30によって区分けされた流路を流れる被熱交換媒体の流れが乱れを生じさせることができる。この結果、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。
【0027】
実施例の熱交換器20の製造方法では、向かい合わせることにより扁平な熱交換用チューブ30を構成するチューブ部材40をクラッド板材を用いて形成し、熱交換用チューブ30を複数積層した状態となるようにチューブ部材40を複数積層して積層体22を組み付け、これをロウ材の融点より高く板材の融点より低い温度の炉に入れて当接部を接合(ロウ付け)して実施例の熱交換器20を完成する。このため、熱交換効率のよい実施例の熱交換器20をより簡易に製造することができる。
【0028】
実施例の熱交換器20では、チューブ部材40の連通流路形成部44,45の間の接合部に、コ字形状の第1切り起こし46a,46c,46e,47b,48d,47f,48a,48c,48eと、第2切り起こし46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48fとを形成するものとした。しかし、第1切り起こしや第2切り起こしの形状は、コ字形状に限定されるものではなく、V字形状としたり、U字形状としたりしてもよい。
【0029】
実施例の熱交換器20では、第1切り起こし46a,46c,46e,47b,48d,47f,48a,48c,48eと、第2切り起こし46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48fとを全て図3における紙面表側に凸となるように形成した。しかし、図6に例示する変形例のチューブ部材140に示すように、図6において紙面表側方向に切り起こすように第1切り起こし146a,146c,147b,148a,148cを形成し、紙面表側方向に切り起こすように第2切り起こし146b,147a,147c,148bを形成し、紙面裏側方向に切り起こすように第3切り起こし146d,146f,147e,148d,148fを形成し、紙面裏側方向に切り起こすように第4切り起こし146e,147d,147f,148eを形成するものとしてもよい。図7は、図6におけるD-D断面を示す断面図である。図示するように、変形例の2つのチューブ部材140を紙面裏側が向かい合わせとなるように接合すると、第1切り起こし146a,148aが第3切り起こし146f,148fと整合して連通孔を形成し、第2切り起こし147aが第4切り起こし147fと整合して連通孔を形成する。即ち、熱交換用チューブを構成する2つのチューブ部材140のうちの一方のチューブ部材140の第1切り起こし146a,146c,147b,148a,148cは、他方のチューブ部材140の第3切り起こし146f,146d,147e,148f,148dと整合して各連通孔を形成し、一方のチューブ部材140の第2切り起こし146b,147a,147c,148bは、他方のチューブ部材140の第4切り起こし146e,147f,147d,148eと整合して各連通孔を形成する。被熱交換媒体は連通孔により熱交換用チューブ30によって区分けされた反対側の流路に流出したり、熱交換用チューブ30によって区分けされた反対側の流路から流入したりするから、これにより、熱交換用チューブ30によって区分けされた流路を流れる被熱交換媒体の流れが乱れを生じさせることができる。この結果、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。また、変形例のチューブ部材140を複数積層して積層体を構成する際に、一方のチューブ部材140の第1切り起こし146a,146c,147b,148a,148cと他方のチューブ部材140の第3切り起こし146f,146d,147e,148f,148dとにより、一方のチューブ部材140の第2切り起こし146b,147a,147c,148bと他方のチューブ部材140の第4切り起こし146e,147f,147d,148eとにより、位置決めされる。この結果、積層体の組付けを簡易なものとすることができる。
【0030】
実施例の熱交換器20では、第1切り起こし46a,46c,46e,47b,48d,47f,48a,48c,48eと、第2切り起こし46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48fとにより各連通孔を形成するものとした。しかし、連通孔を形成しないものとしてもよい。図8は、変形例のチューブ部材240の構成の一例を示す構成図であり、図9は、図8におけるE-E断面の断面図である。変形例のチューブ部材240には、図8に示すように、紙面表側に切り起こした切り起こし246a,246c,246e,247b,247d,247f,248a,248c,248eが飛び飛びになるように形成されている。変形例の2つのチューブ部材240を紙面裏側が向かい合わせとなるように接合すると、図9に示すように、切り起こし246a,246c,246e,247b,247d,247f,248a、248c、248eは切り起こしが形成されていない部位に整合する。このため、実施例の熱交換用チューブ30のように切り起こしによる連通孔は形成されない。この変形例のチューブ部材240を用いた熱交換器では、若干の被熱交換媒体の通流抵抗が大きくなるものの、切り起こし246a,246c,246e,247b,247d,247f,248a、248c、248eにより被熱交換媒体の流れが乱されることにより、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。
【0031】
実施例の熱交換器20では、チューブ部材40の長手方向の中央に短手方向に直列に並ぶように2つの流出入口用貫通孔41a,41bおよび2つのフランジ部42a,42bを形成するものとしたが、図10の変形例のチューブ部材340に示すように、その長手方向の両端部に2つの流出入口用貫通孔341a,341bおよび2つのフランジ部342a,342bを形成するものとしてもよい。この場合でも、連通流路形成部344,345の間の接合部に第1切り起こし346a,346c,346eと第2切り起こし346b,346d,346fとを形成するものとすればよい。
【0032】
実施例の熱交換器20では、流出入口用貫通孔41a,41bの周囲にフランジ部42a,42bを形成するものとしたが、フランジ部42a,42bに代えてバーリング加工によりバーリング加工部を形成するものとしてもよい。この場合、チューブ部材の2つのバーリング加工部のうちの一方のバーリング加工部が他方のバーリング加工部に嵌合するよう一方のバーリング加工部の径を他方のバーリング加工部の径より若干小さく或いは若干大きく形成するのが好ましい。こうしたバーリング加工部を有するチューブ部材を、隣接する熱交換用チューブ30とが交互に重なるように積層すれば、向かい合うチューブ部材のバーリング加工部が嵌まり合うようにすることができる。
【0033】
実施例の熱交換器20では、アルミニウムの板材の両面にアルミシリコン合金などのロウ材を接合した厚さが0.2mmのクラッド板材を用いてチューブ部材40を形成するものとしたが、0.2mmより薄いアルミニウムとアルミニウム合金によるクラッド板材や0.2mmより厚いアルミニウムとアルミニウム合金によるクラッド板材を用いてチューブ部材40を形成するものとしてもよい。また、ステンレスの板材の両面に銅やニッケルなどのロウ材を接合したクラッド板材やステンレスに板材の両面にメッキを施した板材を用いてチューブ部材を形成するものとしてもよい。さらに、銅の板材の両面にロウ材を接合したりメッキした板材を用いてチューブ部材を形成するものとしてもよい。
【0034】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、熱交換器の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 熱交換器、22 積層体、23,24 プレート、25 流入用流路、26 流出用流路、27 供給管、28 排出管、30 熱交換用チューブ、34,35 連通流路、40,140,240,340 チューブ部材、41a,41b,341a,341b 流出入口用貫通孔、42a,42b,342a,342b フランジ部、44,45,344,345 連通流路形成部、46a,46c,46e,47b,48d,47f,48a,48c,48e,146a,146c,147b,148a,148c,346a,346c,346e 第1切り起こし、46b,46d,46f,47a,48c,47e,48b,48d,48f,146b,147a,147c,148b,346b,346d,346f 第2切り起こし、146d,146f,147e,148d,148f 第3切り起こし、146e,147f,147d,148e 第4切り起こし、246a,246c,246e,247b,247d,247f,248a、248c、248e 切り起こし。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10