(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】インクジェットにより3D物体をプリンティングする方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20221221BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20221221BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221221BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20221221BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221221BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20221221BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20221221BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20221221BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221221BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20221221BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20221221BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20221221BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20221221BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221221BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221221BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20221221BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20221221BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20221221BHJP
B29C 67/04 20170101ALI20221221BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20221221BHJP
B22F 12/10 20210101ALI20221221BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/112
B05D7/24 301M
B05D7/24 303A
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D3/02 Z
B05C5/00 101
B05C9/14
B05C11/10
B29C64/209
B29C64/218
B29C64/295
B29C64/314
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y70/10
B29C64/264
B29C67/04
B22F10/85
B22F12/10
B22F3/10 C
(21)【出願番号】P 2019211218
(22)【出願日】2019-11-22
(62)【分割の表示】P 2016524126の分割
【原出願日】2014-10-17
【審査請求日】2019-12-18
(32)【優先日】2013-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510333542
【氏名又は名称】エックスジェット・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XJET LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ゴサイット、ハナン
(72)【発明者】
【氏名】クリッチマン、イリ
(72)【発明者】
【氏名】ベニチョー、アクセル
(72)【発明者】
【氏名】シマル、ティモフェイ
(72)【発明者】
【氏名】イータン、ガイ
(72)【発明者】
【氏名】サララー、ウェイル
(72)【発明者】
【氏名】ダヤギ、ヨハイ
(72)【発明者】
【氏名】コディネッツ、オレグ
(72)【発明者】
【氏名】レイビッド、リオル
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-048781(JP,A)
【文献】特表2009-531260(JP,A)
【文献】特開2003-337552(JP,A)
【文献】特表2012-527346(JP,A)
【文献】国際公開第2007/063695(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101111362(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0014916(US,A1)
【文献】特開2007-290248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
B22F 10/00-12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体をプリンティングするための付加製造システムであって、前記システムは、
キャリア液、分散剤、及び微粒子を含むインクを噴射するよう構成された複数のノズルを有するプリンティングヘッドと、
付加製造過程において、層ごとに構築される3次元物体を支えるよう構成されたトレイと、
構築中の3次元物体の現在の高さに基づいて、供給する熱の量を決定するよう構成されたプロセッサと、
前記付加製造過程において、プリンティングされている層に前記決定がなされた量の熱を供給するよう構成された少なくとも1つのエネルギー源と、
前記層の平面にほぼ平行であり、個別のブレードを含む回転軸を有する水平ローラと、
を具備し、
前記供給する熱の量は、分散剤のバーンオフ温度より低くキャリア液の沸点(T1)の下限より高い温度に加熱して前記キャリア液を蒸発させるための量であり、前記キャリア液の前記沸点の下限が華氏で表した前記キャリア液の沸点よりも20%低くなるような量であることを特徴とし、
前記分散剤は、前記キャリア液の蒸発後に前記微粒子を互いに結合させることを特徴とし、
前記プロセッサはさらに、前記プリンティングヘッド、前記エネルギー源、及び、前記
水平ローラに、3次元物体が構築されるまで、繰り返し各印刷層を分配し、加熱し、平らにするよう命令を与えるように構成されることを特徴とする、
付加製造システム。
【請求項2】
前記水
平ローラは、プリンティングされた前記層の平面に関して横軸に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項3】
前記
水平ローラは、
(a)離散的なブレードを有する切削ローラ、
(b)らせん状にブレードを有する切削ローラ、及び、
(c)鋼鉄又はタングステンカーバイドの離散的なブレード、
からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエネルギー源は、前記付加製造過程において前記プリンティングされている層を温める一方、前記3次元物体の下部のすでにプリンティングされた層を前記キャリア沸点温度(T1)近傍又はそれ以下に保持するために熱を供給するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのエネルギー源は、構築されている前記3次元物体より下に配置された加熱されたトレイ、前記付加製造過程においてプリンティングされている層に熱風を吹き込むように構成された部品、加熱ランプ、レーザ、集光させた線形レーザビーム、集光させた走査型のペンシルレーザビーム、直線状の白熱電球からの集光させた光、放電灯ランプ電球からの集光させた光、閃光、紫外線(UV)光源、可視光源、及び、赤外線(IR)光源の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項6】
前記付加製造過程においてプリンティングされている層は、電磁照射源、熱風源、及び熱したトレイの内の少なくとも2つの組み合わせを用いて加熱されることを特徴とする請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項7】
前記付加製造過程において前記プリンティングされている層への加熱により生じた煙を集めるよう構成された少なくとも1つの吸引パイプをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項8】
前記インク中の前記微粒子は、金属、金属酸化物、酸化物、金属炭化物、炭化物、合金、無機塩類、及び高分子微粒子の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項9】
3次元物体をプリンティングする方法であって、前記方法は、
複数のノズルを有するプリンティングヘッドにインクを供給するステップであって、前記インクは、少なくともキャリア液、微粒子、及び分散剤を含み、前記分散剤は、前記微粒子に付着し、前記微粒子を互いに分離し、キャリア液に溶解させることを特徴とするステップと、
前記複数のノズルから前記インクを分配して第1の層を形成するステップと、
前記分散剤の燃焼温度より低く、前記キャリア液の沸点(T1)の下限より高い温度に前記第1の層を加熱して前記キャリア液を蒸発させることで、前記第1の層を少なくとも部分的に硬化させるステップであって、前記キャリア液の前記沸点の下限は華氏で表した前記キャリア液の沸点よりも20%低いことを特徴とするステップと、
水平ローラを用いて前記第1の層を平らにするステップであって、前記水平ローラは前記第1の層の平面にほぼ平行な回転軸を有することを特徴とするステップと、
3次元物体が構築されるまで、前記第1の層の上に繰り返し追加の層を分配し、少なくとも部分的に硬化させ、加熱し平らにするステップと、
を具備することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には3D(3次元)プリンティングに関する。
【背景技術】
【0002】
3D(3次元)プリンティング市場は急速に成熟してきている(2014)。3Dプリ
ンティング又は付加製造(AM)とは、一連の素材の層をコンピュータ制御の下で積み重
ねる、付加製造過程を介して、主として3Dモデル又は他の電子データソースからほとん
どすべての形状の3D物体を作る種々の製造過程である。3Dプリンターは、一種の産業
用ロボットである。
【0003】
従来の製造過程には、感光性樹脂を加工するUVレーザを採用するステレオリソグラフ
ィー、感光性樹脂を加工するUVランプを用いるインクジェットプリンター、(選択的レ
ーザ焼結及び直接的金属レーザ焼結のような)金属焼結、プラスチック押出し成形技術、
及び、パウダーへの液状のバインダーの堆積が含まれる。
【0004】
3Dプリンティングは、製品開発、データの可視化、素早い試作化、専門分野における
製作、及び製造(個別受注生産、大量生産、分散製造)のような分野に応用される。使用
分野は、建築、構造(AEC)、工業デザイン、自動車、航空宇宙産業、エンジニアリン
グ、歯科及び医療産業、生物工学(ヒト組織補填)、ファッション、履物、宝石類、メガ
ネ類、教育、地理情報システム、食品、及び多くの他の分野、を含んで多岐にわたる。
【発明の概要】
【0005】
本実施形態による教示では、
(a)少なくとも1つのインクで第1の層をプリンティングするステップであって、前記
少なくとも1つのインクは、
(i)キャリア沸点温度(T1)を有するキャリア、
(ii)分散剤沸点温度(T2)を有する分散剤、及び
(iii)微粒子焼結温度(T3)を有する微粒子、
を含むことを特徴とするステップと、
(b)前記プリンティングの期間、前記第1の層(TL)を所定の温度範囲に保持するス
テップと、
(c)前記所定の温度範囲は、前記キャリア沸点温度の下限([T1])より高く、前記
分散剤沸点温度の上限([T2])より低い([T1]<TL<[T2])ので、前記分
散剤を前記第1の層に残しながら前記キャリアを蒸発させるステップと、
を含む物体のプリンティング方法が提供される。
【0006】
本実施形態による教示では、
(a)少なくとも1つのインクで第1の層をプリンティングするステップであって、前記
少なくとも1つのインクは、
(i)キャリア沸点温度(T1)を有するキャリア、
(ii分散剤沸点温度(T2)を有する分散剤、及び
(iii)微粒子焼結温度(T3)を有する微粒子、
を含むことを特徴とするステップと、
(b)前記分散剤の少なくとも1部を蒸発させるステップと、
(c)それに続く操作を実行するステップであって、
(i)前記第1の層を少なくとも部分的に焼結させるステップ、及び
(ii)前記第1の層の少なくとも1つのインクの次の層をプリンティングすることで、
(a)のステップを繰り返すステップ、
からなるグループから選択されることを特徴とする、それに続く操作を実行するステッ
プと、
を含む物体のプリンティング方法が提供される。
【0007】
任意的実施形態では、プリンティングは、少なくとも1つのインクを噴射する少なくと
も1つのプリンティングヘッドを介しておこなう。他の任意的実施形態では、プリンティ
ングヘッドのうちの少なくとも1つは、第1の層の内容により調節される。
【0008】
他の任意的実施形態では、キャリアは液体であり、微粒子は、物体を構成するために用
いられる素材でありキャリア液に分散される。分散剤は、キャリア液に溶かされて微粒子
表面に付着し、微粒子同士が凝集するのを防止する。
【0009】
他の任意的実施形態では、分散剤の少なくとも一部を蒸発させるステップの前にキャリ
アを蒸発させるステップがさらに含まれる。他の任意的実施形態では、キャリアが蒸発し
た後、分散剤が微粒子を相互に結びつける。他の任意的実施形態では、キャリアが蒸発し
た後、微粒子が相互に焼結するのを防止する。他の任意的実施形態では、プリンティング
は選択可能であり、物体の第1の層の一部の領域にプリンティングする。他の任意的実施
形態では、物体は、断熱素材で作られたトレイ上にプリンティングされる。
【0010】
他の任意的実施形態では、物体の上面(TS)の温度は、キャリア沸点温度T1より少
なくとも4%高く、その結果、プリンティングされた物体の格子に多孔性の構造物を作る
。他の任意的実施形態では、下限([T1])には、ケルビン温度で、キャリア沸点温度
(T1)より20%低い温度が含まれる。他の任意的実施形態では、上限([T2])は
、ケルビン温度で、分散剤沸点温度(T2)より20%大きいか又は小さい。
【0011】
他の任意的実施形態では、保持するステップは、加熱トレイ、物体の上にある電磁(E
M)照射源、及びホットガスからなるグループから選択された熱源を用いて行われる。
【0012】
他の任意的実施形態では、プリンティングは選択的であり、物体の第1の層の一部の領
域へのプリンティング、及び、物体がプリンティングされた全領域へ照射するEM照射源
は、非選択的である。
【0013】
他の任意的実施形態では、さらに、分散剤の少なくとも一部を蒸発させるステップが含
まれる。他の任意的実施形態では、さらに、微粒子を少なくとも部分的に焼結するステッ
プが含まれる。他の任意的実施形態では、さらに、少なくとも1つのインクの第1の層に
少なくとも1つのインクの次の層をプリンティングするステップが含まれる。
【0014】
他の任意的実施形態では、分散剤を蒸発させるステップは、加熱ランプ、レーザ、集光
させた線形レーザビーム、集光させた走査型のペンシルレーザビーム、直線状の白熱電球
からの集光させた光、放電灯ランプ電球からの集光させた光、閃光、紫外線(UV)光源
、可視光源、及び、赤外線(IR)光源からなるグループから選択されるEM照射源を用
いることでおこなわれる。
【0015】
他の任意的実施形態では、プリンティングは選択的であり、物体の第1の層の一部の領
域へのプリンティング、及び、物体がプリンティングされた全領域へ照射するEM照射源
は、非選択的である。他の任意的実施形態では、走査型のレーザビームは、層の内容によ
り調節される。
【0016】
他の任意的実施形態では、少なくとも2つのインクがプリンティングされ、少なくとも
2つのインクの各々には、異なるタイプの微粒子が含まれ、少なくとも2つのインクの各
々の局所的な割合は、第1の層の仕様により定められる。
【0017】
他の任意的実施形態では、微粒子は、金属、金属酸化物、金属炭化物、合金、無機塩類
、高分子微粒子、ポリオレフィン、及び、4-メチル-1-ペンテン重合体からなるグル
ープから選択される。
【0018】
他の任意的実施形態では、物体を少なくとも部分的に焼結するステップの後、第1の層
に少なくとも1つのインクの次の層をプリンティングすることで、2(a)のステップを
繰り返す。他の任意的実施形態では、触媒が第1の層に加えられる。他の任意的実施形態
では、触媒は、少なくとも1つのインク中に触媒を加えるステップ、第1の層の上からの
ガス体の触媒を噴射するステップ、第1の層の上からの液体の触媒を噴射するステップ、
第1の層の上からのガス体の触媒を噴霧するステップ、第1の層の上から液体の触媒を噴
霧するステップ、を含むグループから選択される技術を用いて加えられる。
【0019】
他の任意的実施形態では、触媒は、ハロゲン化合物、及び、塩化銅化合物からなるグル
ープから選択される。
【0020】
本実施形態による教示では、少なくとも1つのインクで第1の層をプリンティングする
よう構成された少なくとも1つのプリンティングヘッドであって、少なくとも1つのイン
クの各々には、キャリア沸点温度(T1)を有するキャリア、分散剤沸点温度(T2)を
有する分散剤、及び微粒子焼結温度(T3)を有する微粒子が含まれることを特徴とする
プリンティングヘッドと、第1の層(TL)を所定の温度範囲に保持するよう構成された
コントローラとを含み、前記所定の温度範囲は、前記キャリア沸点温度の下限([T1]
)より高く、前記分散剤沸点温度の上限([T2])より低い([T1]<TL<[T2
])ので、前記分散剤を前記第1の層に残しながら前記キャリアを蒸発させることを特徴
とする、物体をプリンティングするシステムが提供される。
【0021】
本実施形態による教示では、少なくとも1つのインクで第1の層をプリンティングする
よう構成された少なくとも1つのプリンティングヘッドであって、少なくとも1つのイン
クの各々には、キャリア沸点温度(T1)を有するキャリア、分散剤沸点温度(T2)を
有する分散剤、及び微粒子焼結温度(T3)を有する微粒子が含まれることを特徴とする
プリンティングヘッドと、前記分散剤の少なくとも1部を蒸発させるステップと、前記第
1の層を少なくとも部分的に焼結させる動作、及び、前記第1の層の少なくとも1つのイ
ンクで次の層をプリンティングすることで、(a)のステップを繰り返す動作からなるグ
ループから選択される、その次の動作を行うよう構成されたコントローラとを含む、物体
をプリンティングするシステムが提供される。
【0022】
任意的実施形態では、少なくとも1つのプリンティングヘッドは、噴射により少なくと
も1つのインクをプリンティングするよう構成されたインクジェットヘッドである。他の
任意的実施形態では、少なくとも1つのプリンティングヘッドは、第1の層の内容に従い
調節される。
【0023】
他の任意的実施形態では、キャリアは液体であり、微粒子は、物体を構成するために用
いられる素材でありキャリア液に分散される。分散剤は、キャリア液に溶かされて微粒子
表面に付着し、微粒子同士が凝集するのを防止する。
【0024】
他の任意的実施形態では、物体の第1の層の一部の領域へのプリンティングは選択的で
ある。他の任意的実施形態では、物体は、断熱素材で作られたトレイ上にプリンティング
される。他の任意的実施形態では、下限([T1])には、ケルビン温度で、キャリア沸
点温度(T1)より20%低い温度が含まれる。他の任意的実施形態では、上限([T2
])は、ケルビン温度で、分散剤沸点温度(T2)より20%大きいか又は小さい。
【0025】
他の任意的実施形態では、保持するステップは、加熱トレイ、物体の上にある電磁(E
M)照射源、及びホットガスからなるグループから選択された熱源を用いて行われる。
【0026】
他の任意的実施形態では、プリンティングは選択的であり、物体の第1の層の一部の領
域へのプリンティング、及び、物体がプリンティングされた全領域へ照射するEM照射源
は、非選択的である。他の任意的実施形態では、分散剤を蒸発させるステップは、加熱ラ
ンプ、レーザ、集光させた線形レーザビーム、集光させた走査型のペンシルレーザビーム
、直線状の白熱電球からの集光させた光、放電灯ランプ電球からの集光させた光、閃光、
紫外線(UV)光源、可視光源、及び、赤外線(IR)光源からなるグループから選択さ
れるEM照射源を用いることでおこなわれる。
【0027】
他の任意的実施形態では、少なくとも2つのインクをプリンティングするよう構成され
た少なくとも2つのプリンティングヘッドが含まれ、少なくとも2つのインクの各々には
、異なるタイプの微粒子が含まれ、少なくとも2つのインクの各々の局所的な割合は、第
1の層の仕様により定められる。
【0028】
本実施形態による教示では、
(a)少なくとも1つのインクで第1の層をプリンティングするステップと、
(b)少なくとも部分的に前記第1の層を硬くするステップと、
(c)水平ローラを用いて前記第1の層を平らにするステップであって、前記水平ローラ
は、前記第1の層の平面に対して一様に平行である回転軸を有していることを特徴とする
ステップと、
を含む物体のプリンティング方法が提供される。
【0029】
任意的実施形態では、水平ローラは、第1の層の平面に関して横軸に取り付けられてい
る。他の任意的実施形態では、水平ローラは、研磨面を有する研磨ローラ、離散的なブレ
ードを有する切削ローラ、らせん状にブレードを有する切削ローラ、及び、鋼鉄及び/又
はタングステンカーバイドの離散的なブレードを有する切削ローラからなるグループから
選択される。
【0030】
他の任意的実施形態では、平らにすることで生じる廃棄微粒子は、吸引、及び、ダスト
フィルタを経由したパイプを介しての吸引からなるグループから選択される技術を用いて
第1の層から除去される。
【0031】
他の任意的実施形態では、水平ローラは、ローラの外部の熱源、ローラの内部の熱源、
及び、静的内部熱源からなるグループから選択される加熱源を用いて、第1の層の層温度
より高いローラ温度になるよう加熱される。他の任意的実施形態では、さらに、第1の層
に少なくとも1つのインクでその次の層をプリンティングするステップを含む。
【0032】
本実施形態による教示では、物体をプリンティングするシステムが提供され、このシス
テムは、少なくとも1つのインクで第1の層をプリンティングするよう構成された少なく
とも1つのプリンティングヘッドと、第1の層の平面に対して一様に垂直に回転軸する水
平ローラと、第1の層を少なくとも部分的に硬くし、水平ローラを用いて第1の層を平ら
にするよう構成されたコントローラとを含む。
【0033】
任意的実施形態では、水平ローラは、第1の層の平面に関して横軸に取り付けられてい
る。他の任意的実施形態では、ローラは、研磨面を有する研磨ローラ、離散的なブレード
を有する切削ローラ、らせん状にブレードを有する切削ローラ、及び、鋼鉄及びタングス
テンカーバイドの離散的なブレードを有する切削ローラからなるグループから選択される
。
【0034】
本実施形態による教示では、サポートを有する物体をプリンティングする方法が提供さ
れ、該方法は、
(a)少なくとも第1のインクを用いて第1の層の物体部分をプリンティングするステッ
プであって、前記第1のインクは、
(i)第1のキャリアと、
(ii)前記物体を構築するために用いられ、前記第1のキャリアに分散された第1の微
粒子と、
を含むことを特徴とするステップと、
(b)少なくとも第2のインクを用いて第1の層のサポート部分をプリンティングするス
テップであって、前記第2のインクは、
(i)第2のキャリアと、
(ii)前記サポートを構築するために用いられ、前記第2のキャリアに分散された第1
の微粒子と、
を含むことを特徴とするステップと、
を含む。
【0035】
任意的実施形態では、第1のキャリア及び第2のキャリアは液体である。
【0036】
他の任意的実施形態では、さらに、第1の層の上にそれぞれ物体部分とサポート部分と
を含むその次の層をプリンティングするステップを含む。
【0037】
他の任意的実施形態では、第2の微粒子は、水と混和性があり、少なくとも部分的には
水に対して溶解性がある、無機固形物、有機物、ポリマー、第1の微粒子の硬度より小さ
い硬度を有する微粒子、塩、金属酸化物、シリカ(SiO2)、硫酸カルシウム、及び、
タングステンカーバイド(WC)からなるグループから選択される。
【0038】
他の任意的実施形態では、さらに、サポートを有する物体から、技術を用いてサポート
を除去するステップを含み、前記技術は、焼成、サポートを溶解するための浸漬、サポー
トを溶解するための水への浸漬、酸への浸漬、サンドブラスト、及び、水噴射からなるグ
ループから選択される。
【0039】
他の任意的実施形態では、微粒子は、金属、金属酸化物、金属炭化物、合金、無機塩類
、高分子微粒子、ポリオレフィン、及び、4-メチル-1-ペンテン重合体からなるグル
ープから選択される。
【0040】
本実施形態による教示では、サポートを有する物体をプリンティングするシステムが提
供され、前記システムは、少なくとも1つのプリンティングヘッドと、コントローラであ
って、前記少なくとも1つのプリンティングヘッドを介して、少なくとも第1のインクを
用いて、第1の層の物体部分をプリンティングするためであって、前記第1のインクには
、第1のキャリア、及び、前記物体を構築するために用いられ、前記第1のキャリア内に
分散される第1の微粒子、を含むことを特徴とする、前記第1の層の物体部分をプリンテ
ィングするため、及び、前記少なくとも1つのプリンティングヘッドを介して、少なくと
も第2のインクを用いて、前記第1の層のサポート部分をプリンティングするためであっ
て、前記第2のインクには、第2のキャリア、及び、前記サポートを構築するために用い
られ、前記第2のキャリア内に分散される第2の微粒子、を含むことを特徴とする、前記
第1の層のサポート部分をプリンティングするため、に構成されたコントローラと、を含
む。
【0041】
任意的実施形態では、第2のキャリアは、第1のキャリアである。他の任意的実施形態
では、第2の微粒子は、第1の微粒子とは異なる。他の任意的実施形態では、サポート部
分のプリンティングは、さらに加えて、第1のインクで行う。他の任意的実施形態では、
物体部分のプリンティングは、第1のインクを噴射する、少なくとも1つの第1のプリン
ティングヘッドを介して行い、サポート部分のプリンティングは、第2のインクを噴射す
る、少なくとも1つの第2のプリンティングヘッドを介して行う。他の任意的実施形態で
は、プリンティングヘッドの少なくとも1つは、第1の層の内容に従い調節される。
【0042】
本実施形態による教示では、ネットワークに接続されたサーバーにロードすることがで
きるコンピュータプログラムが提供され、コンピュータプログラムを走らせたサーバーは
、システム中にシステムが要求するものを組み込むコントローラを構成することができる
。
【0043】
コンピュータ読み取り可能記憶媒体には、物体をプリンティングするためのコンピュー
タ読み取り可能なコードが組み込まれており、コンピュータ読み取り可能なコードは、
(a)少なくとも1つのインクで第1の層をプリンティングするステップであって、前記
少なくとも1つのインクは、
(i)キャリア沸点温度(T1)を有するキャリア、
(ii)分散剤沸点温度(T2)を有する分散剤、及び
(iii)微粒子焼結温度(T3)を有する微粒子、
を含むことを特徴とするステップと、
(b)前記プリンティングの期間、前記第1の層(TL)を所定の温度範囲に保持するス
テップと、
(c)前記所定の温度範囲は、前記キャリア沸点温度の下限([T1])より高く、前記
分散剤沸点温度の上限([T2])より低い([T1]<TL<[T2])ので、前記分
散剤を前記第1の層に残しながら前記キャリアを蒸発させるステップと、
を実行するためのコードを具備することを特徴とする。
【0044】
コンピュータ読み取り可能記憶媒体には、物体をプリンティングするためのコンピュー
タ読み取り可能なコードが組み込まれており、コンピュータ読み取り可能なコードは、
(a)少なくとも1つのインクで第1の層をプリンティングするステップであって、前記
少なくとも1つのインクは、
(i)キャリア沸点温度(T1)を有するキャリア、
(ii)分散剤沸点温度(T2)を有する分散剤、及び
(iii)微粒子焼結温度(T3)を有する微粒子、
を含むことを特徴とするステップと、
(b)前記分散剤の少なくとも1部を蒸発させるステップと、
(c)それに続く操作を実行するステップであって、
(i)前記第1の層を少なくとも部分的に焼結させるステップ、及び
(ii)前記第1の層の少なくとも1つのインクの次の層をプリンティングすることで、
(a)のステップを繰り返すステップ、
からなるグループから選択されることを特徴とする、それに続く操作を実行するステッ
プと、
を実行するためのコードを具備することを特徴とする。
【0045】
コンピュータ読み取り可能記憶媒体には、物体をプリンティングするためのコンピュー
タ読み取り可能なコードが組み込まれており、コンピュータ読み取り可能なコードは、
(a)少なくとも1つのインクの第1の層をプリンティングするステップと、
(b)前記第1の層を少なくとも部分的に硬くするステップと、
(c)水平ローラを用いて前記第1の層を平らにするステップであって、前記水平ローラ
は、前記第1の層の平面に対して一様に平行である回転軸を有していることを特徴とする
ステップと、
を実行するためのコードを具備することを特徴とする。
【0046】
コンピュータ読み取り可能記憶媒体には、物体をプリンティングするためのコンピュー
タ読み取り可能なコードが組み込まれており、コンピュータ読み取り可能なコードは、
(a)少なくとも第1のインクを用いて第1の層の物体部分をプリンティングするステッ
プであって、前記第1のインクは、
(i)第1のキャリアと、
(ii)前記物体を構築するために用いられ、前記第1のキャリアに分散された第1の微
粒子と、
を含むことを特徴とするステップと、
(b)少なくとも第2のインクを用いて第1の層のサポート部分をプリンティングするス
テップであって、前記第2のインクは、
(i)第2のキャリアと、
(ii)前記サポートを構築するために用いられ、前記第2のキャリアに分散された第1
の微粒子と、
を実行するためのコードを具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
実施形態を、添付図を参照して、実施例を示す目的のみで、ここに記載する。
【
図1】個々の層の3Dプリンティングの概略図である。
【
図2B】加温源を有するならし装置の概略図である。
【
図3A】3Dプリンティングの例示的システムの概略図である。
【
図3B】例示的照射源としてのランプを示す図である。
【
図3C】例示的照射源としてのランプを示す図である。
【
図4A】プリンティング時の煙を除去するためのシステムの概略図である。
【
図5】別の照射源を用いたプリンティング時の煙を除去するためのシステムの概略図である。
【
図6A】小さなエッジを有する固体微粒子を示す図である。
【
図6B】小さな微粒子を用いて架橋焼結した固体微粒子を示す図である。
【
図10A】異なる素材で構築された物体を示す図である。
【
図10B】混ぜ合わせた素材で構築された物体を示す図である。
【
図11A】3D物体を構築するときのサポートを示す図である。
【
図11B】層のサポート部分と物体部分のプリンティングを示す図である。
【
図12】3D物体の製造のための例示的な回転台機械を示す図である。
【
図13】本願発明にコントローラを組み込むよう構成された例示的なシステムの高位部分ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(詳細な説明:
図1~13)
1.概要
本実施形態によるシステム及び方法の原理および動作は、図面及びその説明を参照する
ことでよく理解することができる。本発明は、選ばれた素材の微粒子を含むインクを分配
することで、3D(3次元)プリンティングを行うシステム及び方法である。一般に、分
配されるインクは、マイクロ微粒子又はナノ微粒子である。プリンティングのあいだにお
いても、プリンティングの後でも、微粒子は相互に結合し(すなわち、焼結し)固形化し
た素材又は固形化した多孔質の素材となる。システムは、
3D構造の構築、
有機物の排出、
微粒子の焼結、
形の崩れの防止、及び
安定したインク分配、
を容易にする。
【0049】
本明細書の文脈中で、用語「物体」は、一般に、ユーザが、特に3Dプリンティングに
より製造したいと望む品物を意味する。言い換えると、用語「物体」は、3Dプリンティ
ング製造過程により作られる品物を意味する。プリンティングしているあいだ、用語「物
体」は、未完成の又は部分的にできた品物を意味する場合がある。
【0050】
本明細書の文脈中で、用語「バーンアウト」又は「バーンオフ」、「ファイアオフ」又
は「ファイアリングオフ」は、蒸発又はインク成分の分解及び蒸発を意味する。
【0051】
本明細書の文脈中で、冪乗の数学記号は、「^」で表されることがあり、例えばcm^
2は平方センチメートルを意味する。
【0052】
本明細書の文脈中で、用語「プリンティング液」及び「インク」は、一般に、プリンテ
ィングに用いられる素材を意味し、例えば、プリンティング過程で堆積させる金属微粒子
のような溶かされた素材を含有するキャリア液のような、均質な素材及び均質でない素材
を含むがこれに限定されるものではない。
【0053】
本明細書の文脈中で、用語「分散」は、一般に、液体又はガス中に分配され浮遊してい
る、及び/又は、媒体全体に均等に分配されている微粒子を意味する。
【0054】
本明細書の文脈中で、用語「ペンシルレーザビーム」は、一般に、一点に集光すること
ができるレーザビームを意味し、「線形レーザビーム」は、直線状に集光することができ
るレーザビームを意味する。
【0055】
本明細書に用いられる限定を意図しない実施例において、一般に、以下の表記が温度を
表示するために用いられる。
【0056】
T1は、キャリア液の沸騰温度である。
【0057】
T2は、有機物(分散剤及び添加剤)のバーンアウト(ファイアオフ、蒸発)温度であ
り、しばしば「分散剤沸点」と称される。
【0058】
T3は、(微粒子の素材及び大きさに依存する)焼結における微粒子の特性温度である
。
【0059】
TSは、新しい層がその上に分配される物体の上面の温度である。いくつかの実施形態
では、TSは、プリンティング期間中、物体の他の部分の本体温度と実質的に等しい温度
を維持する。
【0060】
TLは、現在プリンティング中の層(本明細書の文脈中で、上部層、最近の層、新しい
層、又は第1の層とも称される)の温度である。新しい層の温度は、新しい層が分配され
た上面の温度(TS)を最初に新しい層が受け取り、その後随時、新しい補助熱源から新
しい層に加えられる付加的な熱の結果、新しい層の温度が上昇するので、新しい層のプリ
ンティングを行っている間随時変化する。従って、TLは、新しい層の一時的な最大温度
と定義される。
【0061】
インクジェットプリンティングヘッドに関して実施形態を記載しているが、記載のシス
テム及び方法は、一般に、ノズル分配器のような液体噴射機構の液体噴射ノズルに適用可
能である。液体噴射ノズルもまた、分配ヘッドと称される。
【0062】
2.3Dインクジェットプリンティング
好ましい実施形態では、インクの分配にインクジェットプリンティングヘッドを用いる
。他の選択肢は噴霧ノズルを使うことである。一般に、インクジェットプリンティングは
、噴霧ノズルと比べて、速度が速く、物体の大きさが小さく、品質の高い完成した物体を
もたらす。インクジェットヘッドは、通常、先に分配した層の上に次の層へとインクを次
から次に分配する。一般に、各層は、次の層を分配する前に硬くなる。好ましくは、イン
クジェットヘッドは、その層の画像内容に従って各層を分配する。代替的に、インクジェ
ットヘッドは、「やみくもに」層を分配し、硬化工具(例えば、スキャニングレーザビー
ム)が、層の具体的な画像内容に従って層を硬くする。
【0063】
3.インク
一般に、プリンティングシステムには、1以上のタイプのインクが含まれる。インクに
は、物体インク及びサポートインクが含まれる。物体インクは、望みの物体を作り出すた
めに用いられ、サポートインクは、例えば、物体の「負方向に」傾いた壁をサポートする
ために一時的にプリンティングするときに用いられる。本明細書に記載された実施形態に
おいて、インクには次の構成要素が含まれる。
【0064】
a.マイクロ微粒子又はナノ微粒子。インクには、任意の好ましい素材、例えば、金属
(鉄、銅、銀、金、チタニウム、等)、金属酸化物、酸化物(SiO2、TiO2、Bi
O2、等)、金属炭化物、炭化物(WC、Al4C3、TiC)、合金(ステンレス鋼、
チタニウムTi64、等)、無機塩類、重合体微粒子、等を蒸発しやすいキャリア液に分
散させたものが含まれる。微粒子は、プリンティング時の必要な空間分解能を維持するこ
と、素材の特性(焼結後)を維持すること、又は、分配ヘッドの制限を満たすことが求め
られているので、マイクロ(0.5から50マイクロメータの大きさ)又はナノ(5から
500ナノメータの大きさ)である。例えば、分配ヘッドがインクジェットのノズルの配
列であるとき、30μ(=マイクロメータ又はミクロン)の直径のノズルを含み、微粒子
の大きさは、2μ以下が好ましい。本明細書の文脈において、「微粒子」は一般に、物体
及び/又は物体の「バルク素材」を構築(プリンティング)するために用いられる固体微
粒子を意味する。用語微粒子の使用については、文脈から明らかであろう。
【0065】
b.キャリア液。微粒子はキャリア液に分散され、「キャリア」又は「溶剤」とも称さ
れる。分散させるための薬剤(しばしば分散剤と呼ばれる)は、液体中に微粒子を分散さ
せるのを手助けする。1つの実施形態では、液体は、次に続く層を下にある固体の素材上
に分配するために、プリンティングの後直ちに蒸発する。従って、プリンティング中物体
の上部層は、キャリアの沸騰温度に匹敵する。別の実施形態では、上部のプリンティング
された層の温度は、液体キャリアの沸騰温度よりかなり高く、それにより、キャリア中の
分散剤又は種々の添加剤のような有機素材の蒸発が促進される。一般的な分散剤は、By
k chemie GMBHからの、Disperbyk 180、disperbyk
190、disperbyk 163のような重合体の分散剤が容易に入手できる。一
般的な微粒子インクは、Sun Chemicals Ltd(485 Berkshi
re Av,Slough,UK)から市販のSunTronic Jet Silve
r U6503のように、容易に入手できる。
【0066】
c.溶解素材。物体を構成(プリンティング)するために用いられる固体素材の少なく
とも一部は、インク中に溶かすことができる。例えば、キャリア液に溶かされたAg微粒
子に加えて微量のAg有機化合物を含む銀(Ag)微粒子の分散である。プリンティング
の後の焼成時、Ag有機化合物の有機成分は燃え尽き、金属の銀原子を十分拡散させる。
一般にこのインクは、2020 Fifth Street #638、Davis C
A95617の、Dyesol Inc.(USA)からの、Commercial D
YAG100 Conductive Silver Printing Inkのよう
に、容易に入手できる。
【0067】
d.分散させるための薬剤。微粒子の分散を維持するために、分散させるための薬剤(
分散剤と呼ばれる)が、インク中に用いられる。分散剤は、業界で知られており、しばし
ば、一種の重合体分子である。一般に、分散させる分子(分散剤の分子)は(固体)微粒
子の表面に付着し(すなわち、微粒子を包み込み)、微粒子が相互に凝集するのを妨げる
。1以上の固体微粒子の種類が分散したとき、異なる分散剤の素材間で親和性の問題を避
けるために固体微粒子のすべての種類に同じ分散剤素材を用いることが望ましい。分散さ
せるための薬剤は、安定した分散を形成するために、キャリア液中に溶かすこともできる
。
【0068】
従来のプリンティングにおいて、分散剤は、一般的に約10%の濃度で最終の物体に残
る。最終の3D製品の一部に分散剤を含むことが、いくつかの物体では許容されるかもし
れないが、他の物体では、実質的に分散剤をすべて除去することが本質的に必要とされる
。例えば、最終的な分散剤の濃度は0.1%未満とする必要がある。これは、
a.分散させるための薬剤により、微粒子が相互に緊密に接触することが妨げられ、そ
れにより、十分な焼結ができないこと、及び、
b.分散させるための薬剤は、3D構造の固化を弱める(例えば、分散剤が塊になり、
素材中に「島」として残った場合)、ためである。
【0069】
従って、いくつかの実施形態では分散剤は、最終的な焼結の前に取り除かなくてはなら
ない。
【0070】
4.ノズル散乱
図1を参照すると、これは各層への3Dプリンティングの概略図である。プリンティン
グヘッド100は、物体の第1の層104のプリンティングを準備するとき第1のポジシ
ョン100Aにあることが示され、続く次の物体の層のプリンティングを準備するとき第
2のポジション100Bにあることが示される。プリンティングヘッド100(例えば、
インクジェットヘッド)には、層104の縦軸Yに実質的に垂直なX方向に層104をス
キャンするノズル列102が含まれる。
【0071】
(ノズル列102の)相異なる個々のノズルから噴射した飛沫の量は、ヘッド100構
成の技術的欠陥により、他の各ノズルからのものと少し異なることがある。さらに、イン
ク微粒子の塊によりノズルが詰まることがあるので、又は、他の理由により、ノズルの噴
射が止まることがある。プリンティングされる物体の上面を平らに維持するために、また
、特に3Dのプリンティングされた物体に深い空洞の線ができるのを防ぐために、続く次
の層をプリンティングする前に、その都度、Y軸に沿ってヘッド100をずらす。層と層
とでのシフト量は所定のシフト範囲でランダムとなるよう設定することができる。
【0072】
5.ならし装置
異なるノズルからの異なる噴射力(すなわち飛沫の量)、層の端部でのインクの液体表
面張力に起因する縁ダレ、その他の既知の現象を含む多くの理由により、分配された層は
、完全な平面でないことがあり(起伏があり)、分配された層の端部は、完全なエッジと
なっていないことがある(丸くなっている)。そこで、上部層を平らにする(水平にする
)ため及び/又は上部層の1以上の層のエッジを鋭くするために、ならし装置が組み込ま
れる。1つの実施形態では、適切なならし装置には、垂直研磨ローラ又は切削(機械加工
)ローラが含まれる。好ましい実施形態では、適切なならし装置には、水平(すなわち、
プリンティング面に平行な)研磨ローラ又は切削(機械加工)ローラが含まれる。
【0073】
図2Aを参照すると、これはならし装置の概略図であり、
図3Aは、3Dプリンティン
グの例示的システムの概略図である。
【0074】
3D物体312は、一般に、基材又はトレイの上に層を積み重ねて構築される。トレイ
は、一般に、加熱され、限定を意図しない加熱トレイ318の実施例がこの明細書で一般
的に用いられる。上述の通り、物体はX-X軸の平面にプリンティングされ、新たに形成
された層310(この明細書の文脈において、上部層とも称される)は、プリンティング
過程ごとにZ軸に沿って積み上げられる。インク322はプリンティングヘッド314に
供給又は収容される。プリンティング装置からプリンティングヘッド314を守るため、
及び/又は、その逆のため、任意的に、冷却マスク316、風防324、熱仕切り板32
0が用いられる。新たにプリンティングされた層、及び/又は、3D物体312の温度制
御の補助のため、任意的に、照射源308、及び/又は、冷却ファン326を用いること
ができる。3D物体312の新たに形成された層310、及び/又は、最上面(Z軸に沿
っての最上面)の表面を滑らかにするために、プリンティング時に、任意的に、ならしロ
ーラ302を用いることができる。ならし操作により出てきたダストを吸引するために、
任意的に、ダストフィルタ306を用いることができる。
【0075】
ならし装置はまた、「ならしローラ」又は単に「ローラ」として当業者に知られている
。ならし装置は、層がプリンティングされたあと又はプリンティングされている最中に3
D物体312の新たに形成された層310に対して作用する。ならし装置は、一般に、も
っとも新しくプリンティングされた層の高さの5%から30%の間で素材を削り取る。言
い換えると、第1の層(もっとも新しくプリンティングされた層)の表面を削る。ローラ
は、インクのキャリア液が蒸発し、層が少なくとも部分的に乾燥し固化した後、インクに
触れる。いくつかの場合において、固体は、「金属片」、すなわち十分焼結した微粒子を
意味する。その他の場合において、固体は、有機素材又は最初の焼結により相互に接着さ
せた、積層された微粒子を意味する。ならしローラ302は、研磨面206、例えば堅い
微粒子、例えば、WC(タングステンカーバイド)でコートされた面、を有する金属シリ
ンダ204を含む研磨ローラ202とすることができる。代替的に、ならしローラ302
は、鋭いブレード216を有するフライス加工工具214を含む切削ローラ212(本明
細書の文脈内で「刃のついた」ローラとも称される)スムースローラ及びナールドローラ
202は、当業者に知られており、例えば、スムースローラは、Kritchmanによ
りUS8038427に教示されており、ナールドローラは、LeydenによりUS6
660209に教示されている。スムースローラは、一般に、素材の液体層を計測するた
めに用いられ、精巧なシェービングポンプのような役割を果たす。ナールドローラは、一
般にやわらかいワックス面の計測に適合し、シリンダ204の大きさと比べた時、及び/
又は、研磨すべき物体の大きさに比べて、比較的小さい多数のナール又は微粒子の集団か
らなる。一方、切削ローラ212は、研磨すべき物体の大きさに比べて、比較的大きくす
ることのできる、離散的なブレード216であることが特徴である。スムースローラのナ
ールドローラも、多くの理由により、乾燥した固体素材を平らにするのに適合させること
ができる。加えて、研磨ローラ202(及びスムースローラ及びナールドローラも)使用
するとき、研磨ローラは、平らにすべき物体に実質的に常に接触している。一方、切削ロ
ーラ212は、ブレード216の刃が平らにすべき物体の表面に当たっている時だけ、研
磨すべき物体と断続的に接触している。ナールドローラが乾燥した固体の素材に適合可能
な理由として、垂直ローラが成形した面に用いられることがあげられる。回転しているブ
レードが表面に触れると、ブレードは、最初に、水平に力を加えることにより切削し、次
に、上部方向に力を加えることにより、切削くずを持ち上げる。回転しているナールが表
面に触れると、ナールは、最初に、下方向及び水平方向に力を加えることにより素材に下
方と前方の両方向に圧力を加え、次に、前方及び上方に力を加えることにより切り離され
た素材を突き出す。下方への力は、壊れやすい物体の外観を簡単に壊してしまうので、繊
細な物体の外観に対して、下方へ力を加えることが害になることがある。
【0076】
一般に、ローラの軸及び方向に言及するときは、添付図のX-Y軸に示すように、プリ
ンティング面を基準にする。従来の実施形態では、複数切削ブレード又はグラインディン
グディスク(例えば、ダイヤモンド粉末面を含む)を含む垂直フライス工具又はスムージ
ング工具は、プリンティング平面/物体の上面の平面に垂直な垂直ビームに取り付けられ
、このビームの周りを回転する。これらの垂直フライス工具は、(もっとも新しく印刷さ
れ、少なくとも部分的に固化した)上部層を平らにするために用いられる。垂直な工具の
切削面又は研磨面は、プリンティング面に平行であるが、回転ベクトル点は垂直に上に向
かう。革新的な実施形態では、ならしローラは、横軸にとりつけられ、(物体の上部層の
平面に水平な)横軸の周りを回転するので、水平ローラを提供することになる。素材と接
触する点における水平ローラの研磨面も、一般に水平(プリンティング面に平行)である
が、回転ベクトルは水平である(スイープ方向Xに垂直に、水平方向を向く)。水平ロー
ラは、地面をなす層に対して横軸220の周りを回転する。言い換えると、ローラの外面
(又はブレードの先)は、物体の新しい層と接触する点で水平に動く。水平ローラは、研
磨ローラ202とすることができ、又は好ましくは、水平ローラは、切削(ブレード)ロ
ーラ212とともに取り付けることができる。垂直工具と比べたとき、水平ローラの特徴
は、出てきたダスト(切削した素材を含む)を集めることができることである。垂直工具
は、垂直軸からあらゆる方向に向けて(すなわち、プリンティング面に平行な周りのすべ
ての方向に)ダストを放出するが、水平ローラは、ダストフィルタ306のようなものを
介して、ダストを容易に集め放出するような方法で、ダストを上に持ち上げる。加えて、
垂直工具は、垂直工具の水平面全体でプリンティング面と接触するので、正確な位置合わ
せに細心の注意を払う必要がある場合がある。理想的な垂直状態から(X方向に向かって
)角度αだけ垂直回転軸がずれていると、工具の水平面も、理想的な垂直状態から同じ角
度αだけずれる。この場合、物体の処理された上面はY方向に平らにならないで、バナナ
形状(中央がへこんでいる)になる。定量的に、回転ブレード又は研磨面の半径が、例え
ば、R=50mmである場合、バナナ効果の量は、ΔZ=α*R(*は乗算を意味し、α
はラジアンで表す)。従って、α=1ミリラジアン(すなわち、α=0.060、これは
達成が難しい)であれば、ΔZ=50ミクロンとなり、受け入れがたい。この非常に微妙
な位置合わせに比べ、水平ローラは、プリンティング面と実質的に線で接触し、したがっ
て、水平ローラをX軸方向に合わせる必要があない。切削ブレードローラ/工具と比較し
て、研磨面の実際上不利な点は、(研磨面の)ダイヤモンドダストによるダスト(削った
微粒子)の付着を受けやすく、これにより適切な研磨が妨げられる。
【0077】
実験から、ブレードが接触したとき物体表面からこすり取る量が少なければ少ないほど
、細かい崩れは小さくなることが分かった。1つの実施形態では、切削ローラはN個のブ
レードを有し、F(RPM)(1分当たりの回転数)で回転し、X方向へのローラと物体
との間での相対スイープ速度はVである。所定のVに対してNとFとが最大値に設定され
たとき、最小の削りくずが得られる。実験から、スパイラルブレードは、一度に削り取る
面が比較的小さい点のみを削る一方、その点に隣接する領域の損傷は免れるので、スパイ
ラルブレードを用いることは、(ストレートブレードを用いる場合に比べて)細部に損傷
を与えるような悪影響が少ないことも分かっている。N=40、F=3500RPM、の
水平ローラ、(ローラ長さ150mm当たり1回転の)スパイラルブレード、そして、V
=100mm/s(ローラ直径=25mm)において好成績(損傷なし)が得られた。ロ
ーラ素材は、a.ブレードは、極めて鋭いこと、b.ブレードは、ブレードが削り取る印
刷した微粒子からの衝撃に耐えること、が要求される。2つの要求は堅い素材に対する使
用に影響を与える。a.「高速度鋼」、及び、b.「タングステンカーバイド」(すなわ
ち、WC+Co)素材で作られた切削ローラにより、好成績(損傷がなく長いブレード寿
命)が得られた。
【0078】
説明を簡単にするために、水平ローラの向きは、プリンティング中にスイープする方向
に対して垂直であるとして記載している。しかしながら、当業者であれば、この方向は、
厳密に垂直にする必要はなく(垂直以外でもよく)、スイープする方向と一定の角度(ゼ
ロでない)であればよいことを理解するであろう。
【0079】
ローラと物体との間での相対的なスイープ方向に対する切削ローラ212の回転方向2
22は、「切削及び持ち上げ」方向(例えば、
図2A及び
図2Bにおいて時計方向)又は
「押しつけ」方向(例えば、
図2A及び
図2Bにおいて反時計方向)のいずれかとするこ
とができる。平らにするときのローラに対して物体を相対的にずらす方向(物体及びトレ
イ300のX方向の動き)は、定めはなく(未定/あらかじめ定められない)、そして、
応用例ごとに違うようにすることができる。この記載に基づき、当業者は、具体的な応用
例に用いるプリンティング機械についての、具体的な詳細、印刷素材の特性値、及び、そ
の他考慮すべき点を判断ことができるであろう。
【0080】
先に説明したように、(研磨ローラ又は切削ローラのような)ローラを用いることで物
体を平らにした(削った)結果として、微粒子の屑が生じることがある。微粒子の屑には
、プリンティングインクから削り取られた微粒子及び/又は固体微粒子の塵が含まれるこ
とがある。微粒子の屑がプリンティング面の上に散らばるのを防止し、ローラブレードか
らこの屑を取り除くための技術を適用しなければならない。水平ローラでは、例えばロー
ラの周りに遮蔽物(半円アーチシールド303)を追加し、「回転」中パイプ304で吸
引力を加えることにより、微粒子の屑の散乱を防止するための技術を適用するのは容易で
ある。微粒子の屑は、物体の表面及びブレードから吸い取られ、随意的にフィルタ306
を経由する。(半円アーチシールド303を加えた
図3A)
ローラは、白熱灯又は放電灯(図示)、コヒーレントな光線(レーザ)、又は紫外線(
UV)、可視、又は赤外線(IR)照射源、等のような照射源308の前又は好ましくは
後ろに取り付けることができる。
【0081】
ここで
図2Bを参照すると、これは加温源を有するならし装置の概略図である。乾燥し
たインクが粘着性を有する場合、インク微粒子は、ローラブレード又は粉になった微粒子
に付着することがあり、これにより適切に平らにすることが妨げられる。このことが結果
としてインクの不十分な乾燥又は有機成分の不十分な燃焼につながる。このような悪影響
をなくすために、層の温度を上げることにより層をさらに乾燥させることができる。層の
温度を上げるという技術は、プリンティング製造過程における他の側面、例えば、プリン
ティングされた物体の変形が生じるので、容認できない場合がある。代替的に、インクが
付着するという問題を避けることのできる十分高い温度までローラを温めることができる
。限定を意図しない実施例では、ローラは、摂氏100度(℃)又は層の温度よりさらに
高い温度に設定することができる。外部熱源(すなわち、ローラの外部にある熱源)又は
、ローラの内部にある内部熱源により、ローラの外面を加熱することで、ローラを温める
ことができる。内部熱源には、ハロゲンランプ又は加熱棒230のような静止型(回転し
ない)加熱要素が含まれる。
【0082】
6.マスク
本明細書において、マスクは、オリフィスプレートを部分的に覆い、ノズルからプリン
ティング領域へのプリンティングを容易にするための開口を有するプレートを意味する。
マスクは、また、「冷却マスク」とも言われ、「温度バッファ」として用いることができ
る。
【0083】
層を形成しそしてキャリア液を蒸発させている間における必要性から、プリンティング
された物体312は、室温(25℃)に比べて熱くなっているので(例えば、230℃)
、極めて接近して(プリンティングヘッド314と物体312との間隔が0.5~3mm
)スキャンする(プリンティングヘッド100のような)プリンティングヘッド314は
、新たに形成された層310(注がれた層)から生じる熱及び煙から保護されなければな
らない。プリンティングされている間の物体の温度の比べて低い温度に保持された冷却マ
スク316(例えば、10~40℃)が、プリンティングヘッド314とプリンティング
された物体312との間のバッファとして取り付けられる。
【0084】
7.加熱手段
プリンティングの精度を維持するために、プリンティングされた物体は、プリンティン
グの期間中、実質的に均一で一定の温度を保つことが望ましい。注いだインクはたいてい
物体より冷たいので、そして、熱は新しい層の液体キャリアの蒸発により消費されるので
、物体本体の上面は、しかし、プリンティング期間中周囲に熱を逃がし続け、新たに注が
れた層に熱を供給する。熱源が物体(例えば、加熱トレイ318)より下にある場合、熱
は上の層まで絶えず流れてゆき、素材に熱流抵抗があるので温度勾配が生じ、(Z軸に沿
って)物体の底で高い温度となり物体の上面で低い温度となる。好ましくは、上面又は上
層に熱も(又は熱だけを)直接照射するべきである。加えて、上層で、乾燥及び場合によ
っては有機物の蒸発と、部分的な焼結とが生じ、製造過程がその層の温度に強く依存する
ので、プリンティングの間中、上層の温度は、同じになるようにすべきである。
【0085】
本明細書において、「プリンティング面」328には、一般的に、現在のプリンティン
グより以前に、もっとも新しくプリンティングが終了した層、新たに形成された層310
が含まれる。言い換えれば、プリンティング面328は、上面又は上部層であり、Z軸に
沿って前もってプリンティングされた最新の層であり、その上に新たに形成される層31
0がプリンティングされる。プリンティングが始まるとき、プリンティング面は、下地、
例えば加熱トレイ318である。しかし、プリンティングが始まった後は、プリンティン
グ面は、一般に物体本体の上面、プラス、必要に応じてサポート用素材となる。
【0086】
第1の実施形態では、電磁(EM)エネルギーにより、周囲のガス又は真空を介して上
面に熱を供給する。EMエネルギー源は、限定を意図しない実施例として、照射源308
である。一般に、照射源308は、プリンティングされる上部層/物体の上方に配置され
る。EM源による直接的加熱により上部層の温度を確実に一定に保つことができる。上部
層の直接的加熱が行われないとき、トレイ318(物体がその上にプリンティングされる
)の温度は、上部層の温度を保つために、プリンティングしている間、物体の暫定的な高
さに応じて徐々に高くなるよう制御しなければならない。この上面の代替的な加熱方法は
、上部のプリンティングされた層に熱風を吹き付けることである。熱風の使用は、上部層
の温度を上げるためだけではなく、むしろ、上面から液体キャリア(及び、場合によって
は分散剤及び他の有機素材)の蒸発を促進するためでもある。EM照射、熱風、及び熱し
たトレイの組み合わせ(又はそれらの任意の組み合わせ)を、加熱及び/又は蒸発の効率
を最大化するために用いることができる。
【0087】
プリンティングを行う基材の表面は、物体と密接に接触しており、従って物体と同じ温
度となっている。基材(すなわち、トレイ)が熱伝導性がある場合、例えば、金属ででき
ている場合、トレイを物体が必要とする温度に温めることは、望ましい物体を正しく作る
上で必要不可欠なものとなる。代替的に、トレイを熱伝導性のない素材、例えば、木材、
プラスチック、又は、断熱セラミックとすることができる。この場合、上部からの熱照射
により物体の過熱が行われている間、基材は物体の温度を保持する。
【0088】
物体の高さが比較的低く物体の素材が十分高い熱伝導性を有するとき、物体を基材側か
ら加熱するだけで十分であろう。この文脈において、「十分高い熱伝導性」とは一般に、
温度勾配(これは、長さ当たりの熱伝導率と高さZとの積で与えられる)が小さいこと、
例えば、摂氏で計測して、プリンティング時の物体温度の1%より小さいことを意味する
。例えば、熱伝導率が完全に焼結した金属(100W/(C・m))に匹敵する場合、温
度勾配条件は、10mmまでの比較的プリンティング高さが低いものに適する。これは、
しかしながら、常に真実ではない。物体は高くなることがあり、例えば、現実施例で10
mm以上となることがあり、低い熱伝導率(例えば、100W/(C・m)以下)の素材
で作られることがある。従って、物体の上方から加熱することが不可欠である。物体の上
方からの加熱は、物体の上部にある空気での熱伝達及び対流、エアナイフエレメントから
の加熱空気の上部層へ吹き付け、EMエネルギー源、等を含むいくつかの方法により行う
ことができる。好ましい実施例は、以下に述べるようにEMエネルギー源である。
【0089】
7.1.照射源
上述したように、EMエネルギー源は通常プリンティングヘッド314のわきに配置さ
れ、UV、可視、又はIR照射タイプとすることができる。
【0090】
任意で、照射源308は、ならしローラ302の後に、又は、好ましくは前に取り付け
ることができる。照射源308は、
加熱トレイ318上の層の高さとは独立に、上部層の温度を一定に保つために、物体の
上部層を加熱すること、
プリンティングされた面(すなわち前の層)TSの温度以上にその上の物体の新しい層
を加熱すること、そして、その結果
a.インクへの分散剤及び他の添加剤の分解及び/又は蒸発を助ける、
b.部分的焼結又は全焼結を助ける、
c.3D物体312(全本体)を同じ温度に保つこと(一時的に高くなっているその上
の新しい層の温度を除く)、すなわち、Z方向(物体312がプリンティングされている
時の物体312の上から下への方向)への温度う勾配を避ける、こととなる、
を含む1つ以上の仕事をこなすために用いられる。
【0091】
UV照射源の場合が特別な場合となる。UV照射は、分子結合を切断することにより、
微粒子に付着した分散剤分子を分解させる能力を有する。同時に、UVはまた、層を加熱
し、分散剤素材又は分散剤素材の残留物質の蒸発を助ける。
【0092】
7.2.新しい層の特別な加熱
1つの実施形態では、キャリア液の沸点をT1と仮定する。上面の温度はTSに保持す
ることが望ましく、この温度は、インクを噴射した後新しい層の温度(TL)が急激にT
Sに上昇し、直ちにキャリア液が蒸発するように、実質的にT1と同等かそれ以上(例え
ば、華氏で0.8×T1)である。一般に、プリンティング中の全体的な物体の温度は、
TSに保持することができる。
【0093】
分散剤素材及び他の有機添加剤を蒸発させるため、及び、随意的に築き上げた微粒子間
での少なくとも部分的な焼結を開始するために、上部の(新しい)層を高い温度TLにす
る必要があるかもしれない。プリンティング面の温度TSをT1より(例えば、30℃ほ
ど)上昇させることは、水滴が120℃(後述するように特殊な実施形態では破裂現象を
利用することができる)の面に乗せたときのように、インクの液的をそのような高温面に
乗せると付着しないで破裂してしまうので、一般に、許容されない。この場合、物体の他
の部分はそのような高い温度(TL)に保持する必要はなく、一定の一様な温度TSに保
持するだけでよい。
【0094】
新たに形成された第1の層が分配されると、層は一般に空気(プリンティング機械の周
囲環境)にさらされ、従って、この第1の層が次に続く層におおわれる前にインク中の有
機物が蒸発する機会ができる。従って、1つの実施形態では、新しい層は、下の(先に噴
霧した/先にプリンティングした)層が比較的低い温度TS(例えば、230℃)であっ
ても、キャリア液の沸騰温度T1より高い温度TL(例えば、T1=230℃なら新しい
層は400℃まで温められる)まで温められる。
【0095】
ここで
図3Bを参照すると、これは例示的照射源としてのランプを示す図である。上述
の通り、新しい層を加熱することは、一般に物体の上からの照射源308により実行する
ことができる。上部層の下の下部層が上部層より低い温度なら、熱伝導及び対流により空
中に伝達又は放散することにより、前の(先にプリンティングされた)層に熱が放散する
前に、層の温度を即座に上昇させるために熱照射(すなわち、新しい層の単位面積当たり
の照射出力)を最大にすることが重要である。従って、(照射源308として)加熱ラン
プ308Aが与えられると、ランプは、本体312表面にできるだけ近づけ、リフレクタ
との隙間はできるだけ狭くするべきである。
【0096】
ランプハウジング332には、一般に、隣接する構成要素を加熱しないように、断熱素
材で覆われた金属外被が含まれる。通常、研磨したアルミニウムのリフレクタ334が特
にリフレクタの保護のため及びハウジングの過熱防止のために必要とされる。研磨したア
ルミニウムのリフレクタ334は、熱の97%を反射する。透明ガラス窓336は、通常
、高い透明度を有する(すなわち、特に窓の過熱を防止するために小さな照射熱吸収が要
求される)。窓336は、具体的な応用例に適した素材(例えば、パイレックス又は石英
)で作られる。隙間338(例えば、9mm)は、所定の照射出力に対応して用いられる
。ランプとの比較的小さい隙間は、高い照射出力(すなわち、プリンティングされた層の
単位面積当たりの照射出力が高い)を確保する。加熱ランプ308Aからの(具体的には
、透明窓336からの)物体本体312までの隙間340を小さくすることで、一度に層
の広い領域をランプが照射しないようにする。しかしながら、集光した照射はかなり強い
照射強度を可能とする(
図3C)。
【0097】
表1および表2を参照して、以下に3D物体を作るために一般に用いられるもっとも頑
丈な金属に対して、熱伝導が大きいので、物体の温度より実質的に高い温度まで新しい層
を加熱するのに、非常に強い照射が必要なことを示す、例示的計算を示す(例えば、ΔT
=81℃を得るために、Ir=1000KW/cm^2が必要)。
物体の温度に対する新しい層の温度上昇(ΔT=TL-TS)
【0098】
【0099】
単位記号
mは、メーターを意味する。
Wは、ワットを意味する。
μは、ミクロンを意味する。
cmは、センチメーターを意味する。
金属の層が分配された直後に完全に焼結したとき、層の構造は連続的に固体となり、
熱伝導率は前述の金属(例えば、銀に対して430W/(C・m))に対応するものとな
り、温度上昇ΔTは、上表で計算した通り(1℃よりはるかに小さい)となる。
【0100】
しかしながら、プリンティング段階で実際に焼結が起こらないとき、層の構造は微粒子
の集積のようになる。計測値により、プリンティングされた体積のほぼ半分だけが固体微
粒子で占められる一方、その他はほとんど空気であることが示される。このように、各方
向(X、Y、Z)で、層の80%だけが固体微粒子で占められ(0.8×0.8×0.8
≒0.5)、焼結されていないか又は部分的に焼結された残りの部分は、空気である。従
って、すべての層は、80%の金属と20%の空気でできた高さの層を含む層と同等であ
る。空気の伝導率(0.04W/(C・m))は実質的に金属の伝導率(例えば、WCは
、84W/(C・m))より十分小さいので、空気層の部分がその層の伝導率を支配する
。従って、照射出力が0.1KW/cm^2のとき、この場合の温度上昇は、5×0.2
μの空気層の温度上昇、すなわち、ΔT=87.5×0.2=17.7℃(ここで、87
.5は、表2の2行目から取った)となる。
【0101】
ここでは、縦長ハロゲンランプからの例示的な強い照射である0.1KW/cm^2の
照射を認める。集光リフレクタ(楕円)が用いられる場合、照射は因子10(すなわち、
Ir=1KW/cm^2)だけ強められ、そして、同様の計算により、ΔT=875×0
.2=177℃が導かれる(ここで、875は、表2の3行目から取った)。
【0102】
さらに強い照射出力強度、例えば、集光光線(一般にIr=6KW/cm^2)を含む
線形レーザビーム、又は、照射の走査線(一般にIr=600KW/cm^2)を含む集
光走査線レーザビームにより、又は、(高い出力照射が非常に短時間で吸収される(以下
に一般例を参照))フラッシュ照射により、さらに高い温度上昇ΔTが得られる。これら
の技術を以下に説明する。
【0103】
フラッシュ照射源の動作とは、照射が非常に短い時間、例えば1ms、非常に高出力、
例えば、Ir=10KW/cm^2で送り出されることを意味する。この場合、焼結され
ていないか又は部分的に焼結された物体についてΔT=8750×0.2=1770℃(
ここで、8750は、表2の4行目から取った)となる。
【0104】
断熱素材、例えば、SiO2、TiO2、又は、他のセラミック素材のような酸化物を
プリンティングするとき、熱伝導率は、一般に0.5~5W/(C・m)となる(表2参
照)。上部層を温めた後、上部層が焼結されなかった(未焼結のままであった)場合、空
気層の部分の伝導率は、依然として酸化物層伝導率より低く、金属の微粒子の場合と同様
に層の伝導率は空気による伝導率が支配的になる。(フラッシュ照射の下で)層が焼結さ
れた場合、照射出力Irが高く、高い熱伝導率にもかかわらず、層の温度上昇ΔTは、7
0~700℃にまでなる(表2の4行目参照)。
【0105】
新しい層を前の層の温度よりはるかに高くなるよう加熱することのできる上述を実現さ
せることで、有機物をバーンオフさせる、すなわち、物体を焼結させるのに必要な瞬時温
度より、プリンティングされた物体の温度をかなり低く保持することができる。ファン(
例えば、冷却ファン326)は、低い物体温度に下げるために必要になることがある。
【0106】
本体の上面からは、400℃の温度でざっと3KW/cm^2の熱放散を行う。従って
、上部のランプは、物体の温度を一定に保つために、上部層に大きな出力を照射しなけれ
ばならず、さらに、素材の蒸発および焼結のための熱消費を補うために大きな出力が必要
となる。
【0107】
7.3.集光照射
上述のとおり、集光照射は、本体温度より上部層の速やかな温度上昇を得るために用い
ることができる。従来の実施形態では、乾いた微粒子の層が先の層の上に均等に塗布され
、そして、集光照射(例えば、走査集光(即ちスポット)レーザビーム)が層をスキャン
し、層マップに従い層の必要とされる部分を選択的に固化する。
【0108】
1つの実施形態では、最新の層を構築するために用いられる微粒子は、均等に先の層に
塗布されるのではなく(不均一に分配され)、微粒子(層)は、層マップに従い選択的に
分配される。これにより、微粒子が選択的に分配されたところにだけ新しく形成された層
を形成するために非選択的な照射をもちいることが容易になる。
【0109】
ここで
図3Cを参照すると、これは例示的な照射源としてのランプを示す図である。じ
っしれには、1つ以上の以下の技術を含むことができる。
a.線形ランプおよび集光リフレクタ
ここで
図3Cの照射源の図を参照する。第1の実施形態は照射ランプ350であり、透
明な石英パイプ356に収納された線形照射フィラメント352を含む、(上述の)線形
電球を含み、楕円の横断面358を有する集光反射面と一体となり、透明な窓354(例
えば、保護ガラス)に収納されている。フィラメントは、楕円湾曲の一つの焦点360F
1に配置される一方、プリンティングされた本体の上面にフィラメントの熱源の像が他の
焦点360F2に得られる。この像の幅は、フィラメントの境界線の長さに匹敵する(し
かし、それ以下ではない)ようにできる。フィラメントの境界線の実際的な実施例では1
mmであり、3D上面上のフィラメントの像の幅は3mmであり、照射出力は50W/(
cm長)である。従って、表面のその部分で得られた照射出力は50/0.3=167W
/cm^2である。
b.集光線形コヒーレントビーム
ここでまた
図3Cを参照すると、第2の実施形態には線形コヒーレントビーム370が
含まれる。適切なレーザ装置372は、例えば、Coherent Incから、部品番
号LIM-C-60として入手することができる。このようなレーザは、くびれを最小限
にする平面である、集光面を有する。一般的なくびれ幅は50μである。レーザの一般的
な出力は20W/cmである。従って、照射出力は4000W/cm^2である。そのよ
うな出力において、熱損失は、入力熱より非常に小さく、従って、層の温度は実質的に本
体の温度を超えることができる。微粒子がお互いに焼結する前に上部層の温度上昇がΔT
=1770×4/10=708℃となり、ここで、1770℃は、(固体微粒子同士が空
気により断熱されているため、前章参照)照射出力10KW/cm^2当たりの上部層の
温度上昇ΔTであり、4/10は、4と10KW/cm^2との間の比を反映している。
c.集光ビームのスキャニング
第3の実施形態にはスキャニング装置(例えば、回転鏡ポリゴン)を有するスポット(
ポイント)コヒーレントビームが含まれる。ビームが層の像に従いオン/オフ調整を行う
従来の3D金属プリンティングとは異なり、この実施形態におけるビームは(省エネルギ
ーのためビームは像に従い調整を行うこともできるが)「沈黙」させることができる。こ
の「沈黙」ビームは、物体本体がX方向に動くとき、Y方向の直線にそってスキャンする
。標準的なレーザ出力は500Wであり、直径50μの焦点である。従って、照射出力は
500/0.005^2=210^4KW/cm^2となる(一般に、円と方形とでの面
積の差はこのケイ線では無視する)。このような照射出力によりすべての金属素材及びセ
ラミック素材の焼結温度よりはるかに高い温度まで層を加熱することができる。
【0110】
8.煙の除去
ここで、
図3A及び
図4Aを参照すると、これは、プリンティング中の煙を除去するた
めのシステムの概略図であり、
図5は、代替的照射源を用いてプリンティングしていると
きの煙を除去するためのシステムの概略図である。通常は、3D物体のインクジェットプ
リンティング中に、キャリア液及び場合によっては分散剤を含む分配され加熱されたイン
ク層からかなりの量の煙が生じる。この煙は、電子基板及び電子部品の表面を含む比較的
温度の低い面(プリンティング中の3D物体312の温度と比べて)に凝結するので、プ
リンターにとって有害となることがある。1つの実施形態では、煙は、プリンティングヘ
ッド314に隣接して、及び/又は、照射源308により層がさらに過熱される場所の近
くに位置する吸引口414を有する吸引パイプ404により集められる。
【0111】
9.3D構造の支え
従来技術では、しばしば、接着剤が(例えば、感光性高分子、熱可塑性高分子)が微粒
子インクに加えられる。この接着剤素材は、高温度のオーブンでの次の固化製造過程(す
なわち焼結)の前の段階で、プリンティング中に3D構造を支えるのに役立つ。例えば、
(従来の製造過程において)粉末分配装置がトレイ(加熱トレイ318のような、物体が
その上にプリンティングされ/構築されるトレイ)全体に固体の(乾燥した)微粒子を分
配し、次いで、プリンティングされている層の望ましい内容量に従い、散らばった微粒子
の上にプリンティングヘッドが液体の接着剤を分配する。この製造過程は、プリンティン
グが完了するまで層ごとに繰り返される。後で、接着されなかった微粒子が除去され、接
着された物体は、プリンターからオーブンへと移される。オーブンでは、焼結を完了させ
るために物体は高温に加熱される。この焼結過程において、接着剤は燃焼してしまうが、
概して、接着剤の一部が残留する。残留している接着剤は、接着剤が完全にオーブン中で
蒸発していない場合は、焼結を妨害し及び/又は中断させる。加えて、物体の構造中に接
着剤が存在することは、この明細書の他の場所で記載されているとおり、好ましくない場
合がある。
【0112】
接着剤についての問題を避けるための技術として、層基板にプリンティングするときに
焼結を行い、従って、接着剤を必要としないようにすることがある。例えば、粉末分配装
置がトレイ全体に微粒子を拡散し、次いで、層の量に従い、集光レーザビームが広がった
微粒子にスキャンする。レーザにより照射されたすべての場所が、照射した位置で粉末を
焼結するのに十分な温度まで加熱される。
【0113】
本発明の実施形態によれば、微粒子構造は少なくとも部分的には以下により維持される
。
a.プリンティング時、キャリア液が直ちに蒸発し、各微粒子を取り囲む分散剤の分子に
より微粒子が相互に付着する。この場合、分散剤はインクが分散しているところで微粒子
がお互いに離れるようにするのみならず、キャリア液(溶剤)が除去されたとき、互いに
付着する。従来の部品を使った場合、ここでの分散剤はバインダーの役割を果たす。しば
しば、分散剤は、良好な接着特性を有する高分子である。
b.完成した物体がオーブン中で加熱されるとき、分散剤分子は最初に蒸発し、ついて、
最初の焼結が生じて焼結が完了するまで微粒子を一緒にしておく。
c.ここで
図6Aを参照すると、これは小さなエッジを有する固体微粒子を示す図である
。小さな微粒子は、大きな微粒子より低い温度で焼結することはよく知られた特性である
(例えば、50nmの大きさのWC微粒子は、800℃で焼結し、700nmの大きさの
微粒子は1400℃で焼結する)。この文脈において、大きいに対する小さいは、小さい
と大きいとの間の差が好ましい製造過程で焼結温度において明らかな相違が結果として生
じる程度とする。焼結が分散剤の蒸発よりはるかに高い温度で開始する場合は、固体微粒
子604は、通常にではなく、すなわち、微粒子の全体的な半径と比較して小さい半径で
特徴づけられる、鋭いエッジ600を含む、通常ではない状態で、選択され又は作られる
。このようなエッジは、そのような小さい半径で作られた微粒子が持つ温度と同程度の低
い温度(微粒子の塊に対する高い焼結温度と比較して)で部分的な焼結602を生じてい
る。
【0114】
ここで
図6Bを参照すると、これは小さな微粒子を用いて架橋焼結した固体微粒子を示
す図である。加えて、固体微粒子610の調剤において、平均的な大きさの(大きな)微
粒子よりはるかに小さい破片の微粒子612(例えば、平均的な大きさが700nmなの
に対して、50nm)が含まれることがある。このような小さな微粒子は、低い温度(例
えば、1400℃との比較で800℃)で焼結し、部分的に「架橋」構造により相互に大
きな微粒子と部分的に固着する。
【0115】
このようにして、分散剤が燃え尽きると、大きな微粒子の鋭いエッジ同士の親密な接触
点で、又は、大きな微粒子の間の小さな微粒子による「架橋」効果により、初期の焼結が
生じる。この部分的焼結は、大きな微粒子同士の間の小さな点に限定され、従って大部分
の構造体は、燃焼している分散剤が素材から流れ出るように、多孔構造を維持する。
【0116】
10.有機素材の排除
インクは、キャリア液、分散素材、及びプリンティングを完成させるためのおそらく複
数の添加剤を含有し、これらはすべてたいていは有機素材である。上述したように、好ま
しい形態は、可能な限り早く、あるいは、少なくとも最終焼結の前に、この有機素材を排
除することである。
【0117】
1つの実施形態では、キャリア液は、層を形成している間に実質的に蒸発し、従って、
層は固化する。これは、3D物体の本体(又は少なくとも3D物体の上部層)を比較的高
い温度に保つことにより、少なくとも部分的には、達成される。この場合、高い温度は、
液体キャリア沸点に匹敵する温度又はそれより高く維持された温度である。いくつかの実
施形態では、この高い温度は、温度を絶対温度で計測したとき、キャリアの沸騰温度の2
0%前後とすることができる。
【0118】
別の実施形態では、上部層の温度は、上部層を形成する間に、他の有機素材、特に分散
素材(分散剤)もバーンアウトさせるのに十分高くする。本体(本体プリンティングされ
ている物体の本体)が大きいとき(例えば、X、Y、Z寸法=100mmのとき)、普通
このバーンオフが必要である。有機素材がプリンティング中に燃え尽きない場合は、プリ
ンティング中に有機素材が残り、燃焼により有機素材を、すでにプリンティングされた大
きな物体の外に流しだすことが難しくなる。
【0119】
別の実施形態では、プリンティング中にバルク素材中に分散剤が残る。従来の用語では
、(バインダーの役割を果たす)有機素材がプリンティングされた物体に残っているとき
、物体は、「グリーン物体」と称される。この場合、物体のプリンティングであるが、物
体の焼成の前に、通常はオーブンの中で追加の初期加熱段階が実施される。この初期加熱
段階で、有機素材(崩壊しているかどうかにかかわらず)はゆっくりと物体外面から流れ
出て蒸発する。この初期加熱は、完全焼結を生じさせる温度まで焼成温度を上げる前に、
行われる。好ましい形態は、有機物を排出する段階で物体微粒子を焼結してしまうことを
防ぐことである。これは以下を含む理由による。
a.バルク素材から有機物が流れ出る経路をふさがないように、及び
b.有機素材を抽出する前に出来てしまうスポンジのような、素材の格子構造を維持させ
ないようにするため、である。
【0120】
有機物の燃焼段階で焼結を完了させないことは、焼結での微粒子特性温度T3(微粒子
の素材及び大きさに依存する)を調整することにより、又は有機物(分散剤及び添加剤)
を、適切なバーンアウト温度T2、T3>T2になるように選択することにより、実行可
能である。
【0121】
11.プリンティング中の部分的焼結
プリンティング中に部分的焼結を行うことで、平らにする前に新しく形成された層を強
化すること、又は、(上述したように)物体を基板から取り外す前に、及び/又は物体を
(オーブンで)焼成する前に、物体を強化することができる。この明細書の文脈において
「部分的焼結」とは一般に、微粒子の表面を囲んで微粒子の表面が完全に接触することな
く、各微粒子の表面の1つ以上の局所的な位置で、本の部分的に相互に微粒子が溶け合っ
ていることを意味する。
【0122】
1つの実施形態では、物体本体の部分的焼結により、物体のプリンティング中に行われ
る。開放された多孔構造が依然として存在するので、物体のプリンティングが完了した後
に分散剤の燃焼をおこなったときでも、部分的焼結により次の分散剤の燃焼除去が可能と
なる。
【0123】
別の実施形態では、物体本体の完全な焼結が、物体のプリンティング中に行われる。分
散剤は焼結を妨げるので、この方法には、温度T2で層の形成を行っている間に分散剤の
最初の蒸発を行い、そのあとで、温度T3で焼結を完成させる。ここでT3>T2である
。
【0124】
ここで
図7を参照すると、これは部分的な焼結を示す図である。焼結期間中に通常は微
粒子が相互に近づき微粒子間の隙間を埋めるので物体は収縮する。多くの場合、この焼結
した物体の収縮は相当なものである(例えば各方向の寸法において20%)。新たに形成
された層は、物体の側方の寸法(X-Y)と比べて通常は非常に薄い(例えば、収縮前で
5ミクロン)ので、新たに形成された層と先にプリンティングされ乾燥させた層との間の
摩擦によりX-Y面での収縮は減殺され、底面方向にのみ、すなわちすでに焼結された先
の層に向かう方向にのみ大きな収縮が生じる。層平面で(すなわち、X、Y方向に)収縮
する作用を生じる毛管力は、先に説明した摩擦力とバランスし、層内で横方向への収縮を
もたらす。この力は、焼結702を完成させるときに層から層へと繰り返し働き物体71
2の性質をゆがめることがある。一方、微粒子を集合させ(新たに生じた)層に大きな収
縮力をもたらさないためには、部分的な焼結700で十分な場合がある。従って、部分的
な焼結により、プリンティング710している間、物体の好ましい性質(形状)を保持す
ることが容易になる。
【0125】
焼結温度は、部分的焼結を可能にするために注意深く考慮すべきである。十分高い温度
で、微粒子はお互いに溶け合いほぼ又は完全に固化した素材になる(焼結が完了する)。
必要な焼結温度は、微粒子の素材の融点と微粒子の大きさに実質的に依存する。例えば、
銀の融点は960℃、1μm(マイクロメータ)の銀微粒子は800℃で焼結するが、2
0nm(ナノメータ)の銀微粒子は200℃で焼結する。従って、銀微粒子で作られた物
体の部分的な焼結を行うために、1μm微粒子が用いられる場合は、新しく形成された層
は、有機物が燃え尽くされ部分的な焼結で有機素材を置き換えることにより物体が崩壊し
ないようにする。
【0126】
12.層レベルでの焼結の完成(又は十分な焼結)
分散剤(及び、あるいは、インク中の他の添加剤)は、焼結の望ましい品質を妨げるこ
とがあり、従って、これらの素材(分散剤、及び、あるいは、他の添加剤)を除去するこ
とが、焼結するために重要となる(しかし、十分な焼結が得られるとは限らない)。以下
の説明を簡単にするために、当業者には、分散剤と言うときは他の添加剤を言うこともあ
ることを理解するであろう。
【0127】
中程度の温度(例えば、230℃)でプリンティングし、その後高い温度のオーブンで
焼結して本体を完成させるのとは対照的に、層のプリンティング時に焼結を完成させる革
新劇な技術には以下のような特徴が含まれる。すなわち、
a.上部層が(温度T2で)外気と触れている時に分散分子と添加剤とを除去する。分散
剤の蒸発がオーブンの中で行われたとき、特に物体の一部が少なくとも部分的に焼結して
いるとき、結果として生じたガスは大量の素材を介して取り除くことが難しい。この点で
、素材が完全に焼結する前に物体の外殻がオーブンにより焼結することに留意する。これ
は、外殻から物体の中央に向けてのオーブン内で熱流が流れ、これは、温度勾配‐外殻で
は他の部分より温度が高い温度勾配を伴う。従って、全体が焼結する十分前に外殻の焼結
を行うと、ガスは物体から出て行けない。
b.焼結を促進させるために層をさらに温度T3まで加熱し、(上述のように)焼結に伴
う収縮を側方、X軸及びY軸、ではなく下方(Z軸)に生じさせる。Z軸方向への収縮は
、プリンティング前に(あらかじめ)考慮しておくことができ、プリンティングされた物
体のデジタル的記述の作成時に補正しておくことができる。
【0128】
層レベルでの焼結は、有機物を簡単に除去する方法をもたらすのみならず、オーブンで
の焼成でのエネルギーと時間とを消費する必要性を省くことができる。
【0129】
層毎に分散剤を除去する技術及び特徴には以下が含まれる。
a.熱
集光照射により又は高出力フラッシュライトにより、新しい層を加熱することは、例え
ば、両方ともIr=5~10KW/cm^2で、(分散剤のような)邪魔な素材を蒸発さ
せるために用いるができ、上層部を焼結するのに必要な高い温度でこの層を加熱するため
に用いることもできる。集中的な照射により瞬間的に高温になった層では、キャリア液が
蒸発するのみならず、分散剤も蒸発又は分解・蒸発し、その後、完全な又は十分な焼結が
起こる。通常この技術は、キャリア液が特別に加熱した装置に入る前に蒸発するように、
中程度に熱した先の層の上に新しい層を分配することにより行い、それによりキャリア液
及び分散剤を両方とも蒸発させる装置での必要なエネルギーを減らす。
b.触媒の追加
層のプリンティングは、焼結を加速する触媒素材の分配を伴うことがある。好ましい実
施形態には、分散剤分子が蒸発又は少なくとも焼結を邪魔しないように、分散剤分子を分
解する素材が含まれる。さらに、熱を加えることは、この分解された分子を蒸発させるた
めに用いることができる。分散剤を除去した後の生の固体分子は、温度が十分高ければ、
自然発生的にこの段階で相互に焼結する。例えば、固体微粒子が直径20ナノメータの銀
微粒子である場合、分散剤が除去されていれば、焼結を完成させるのには200℃の温度
で十分である。触媒は、モデル層を分配した後又はその直前に分配することができる。
【0130】
ここで
図8Aを参照すると、これは触媒素材を分配している図である。触媒802の分
配は、触媒飛沫噴射ヘッド800又は噴霧ノズルにより行うことができる。触媒は、物体
層の像に従い選択的に分配することも、物体に対して確保されたすべての領域に「手探り
で」分配することもできる。触媒は液体または気体で供給することができる。あるいは、
触媒をプリンティングした新しい層の上又は下に広げるローラにより分配することもでき
る。触媒が高温でのみ活動的(アクティブ)になる性質をもつとき、触媒はまえもってイ
ンクに含有させておくことができ、アクティブにすることが必要になったとき、プリンテ
ィングの後その層とともに加熱することができる。
【0131】
13.別のプリンティング技術
ここで
図9を参照すると、これは液体ポンプローラを用いた図である。プリンティング
、ならし、及び加熱の代替的な実施形態では、プリンティングされる本体の温度がキャリ
ア液の沸騰温度より十分小さいとき(例えば、キャリア液の沸騰温度が230℃のときに
、150℃)、層毎のプリンティングが含まれる。層のプリンティングの後、層は液体ポ
ンプローラ(LPR)900により平らにされる(平準化される)。LPRは一般的に、
「逆方向」(物体のX軸の動きに対して反対に)回転し、物体のY軸に平行な軸をもつ、
平滑ローラである。次に、新たに形成された層310に、高い照射出力ビーム(例えば、
レーザ902)が少なくとも液体を蒸発させ層を固化するまで照射される(例えば、層を
230℃以上の温度まで加熱する)。その後、次の層を分配する前に、その層は(例えば
、冷却ファン326により)低い物体温度になるまで冷却される。平らにした層からの余
分なインクは、LPR900の回転ローラの表面に付着し、ローラワイパーにより(例え
ば、金属製ワイピングナイフ904により)拭き取られ、収集トラフ906に流れ込み、
集められた余剰インクは、プリンティングヘッド314に再度送るため又は廃棄タンクに
排出するために、インクタンクに戻される。
【0132】
14.噴射ヘッド及び噴出飛沫の保護
熱い3D物体をプリンティングすることは、インクジェットプリンティング技術を用い
たとき、困難になる。噴霧ノズルは印刷された層に近付け、例えば1mm離す。従って、
ノズルはプリンティングされた本体の熱い上面により加熱され、噴霧の質が劣化すること
がある。ノズルの過熱を防止する技術には熱い層と噴霧ノズルとの間に温度バッファとし
て振る舞う冷却シェルを含めることができる(
図3A、冷却マスク316参照)。そのよ
うな冷却シェルについては、Xjet Solar Corporationの国際特許
公開公報WO2010/134072A1に記載されている。
【0133】
保護マスクがあるにもかかわらず、物体の熱せられた本体から、インクが噴霧するマス
ク中のスリットを通してヘッドのノズルプレートへと熱が出てゆくので、通常、3D本体
温度(上面も含めて)を高くしないよう(比較的低くするよう)な要請がある。さらに、
熱い物体へのプリンティングにおける別の難しさは、熱い面に触れたとき噴霧した液滴が
「爆発」する可能性にある。この場合、「爆発」は、キャリア液がゆっくり蒸発するので
はなく急激に沸騰することを言う。
【0134】
斬新な解決手段は本体(物体)温度と新しい層の温度とに差をつけることである。これ
は以下のステップにより達成できる。
a.新たな層を分配した直後に(例えば、集光照射により)本体の温度より高い温度まで
新たな層を加熱するステップ、および
b.3D本体の上面に新しい層を分配する前に冷却するステップである。冷却は、ファン
(
図3Aの冷却ファン326参照)の助けにより、又は、層中に蓄積された熱を下の物体
および周囲の空気中に放散することにより達成することができる。
【0135】
15.複数の(複合)素材の物体
ここで
図10Aを参照すると、これは異なる素材で構築された物体を示す図である。し
ばしば、必要な物体には、物体の異なる部分に異なる素材が含まれる。特別で重要な場合
としては、第1の物体1002の大部分の素材1006は、第1の物体1002の外表面
にコーティング素材1007を薄くかぶせる(コーティングする)べきときである。同様
に、第2の物体1004の大部分の素材1006は、第2の物体1004の外表面にコー
ティング素材1007を薄くかぶせる(コーティングする)ことができる。
【0136】
ここで
図10Bを参照すると、これは混ぜ合わせた素材で構築された物体を示す図であ
る。第3の物体1010に必要なものには、物体全体にわたって必要な、又は物体に部分
的に必要な2つ以上の素材の混合物が含まれる。この図において、第3の物体1010に
は、第1の素材(素材1:1018)および第2の素材(素材2:1020)の混合物が
含まれる。物体1012の一部を拡大1014したとき、素材の混合物は、各ピクセルで
素材が交互に異なっていることが見て取れる。
【0137】
所定の層に素材の混合物で物体をプリンティングする1つの技術では、層の特定のピク
セルに1つの素材を分配し他の素材を他のピクセルに分配することで行うことができる。
【0138】
代替的技術では、1つの層は1つの素材で他の層は他の素材でプリンティングされる。
特別な場合には、物体(例えば、第2の物体1004)の外面にコーティングのような素
材1008の含浸のようなものにする。この含浸のようなものには、物体の表面から遠ざ
かるにつれて、含浸する素材と大部分の素材との比率を徐々に増大させることが含まれる
。
【0139】
複数のインク及びインクヘッドを物体の素材のプリンティングと物体のサポートプリン
ティングとを区別するために用いることができる。1つの実施形態では、1つのインクを
物体とサポート構造の両方に(層毎に)用いることができる一方、別のインクを物体又は
サポートのどちらか一方に属する部分の層に分配し、両方の素材の機械的特性の差を導入
することができる。この差異は後にサポートが物体から取り除かれるときに用いられる。
例えば、Ag微粒子を含む第1のインクが層の物体部分と層のサポート部分の両方をプリ
ンティングするために用いられる。Ag高分子化合物の素材又は微粒子を含む第2のイン
クを層の物体部分にのみ分配する。プリンティングが終わり、プリンティングされた複合
体がオーブンで焼成された後、実質的に差異が両方の素材にもたらされ、Ag微粒子のみ
のサポートは焼結されないままになる一方、物体は焼結又は少なくともAg高分子化合物
の固体組織となる。この差異により、サポートを物体から取り除くことが可能になる。
【0140】
16.鋳型と物体のプリンティング
1つの実施形態では、鋳型は物体と一緒にプリンティングされる。鋳型は物体本体31
2に付着する補助的本体である。この明細書の文脈中、鋳型は、以下に説明するように、
物体のサポートと考えることができる。鋳型は、同じ層毎のプリンティングにおいて、主
要部のものとは異なるインクでプリンティングすることができる。物体のプリンティング
および鋳型は、本体が焼成されオーブン中で焼結(通常600~1500℃で)されるま
で、互いに接着する(結合せず又は少し接着している)微粒子を含む物体の扱いを容易に
する。このために、鋳型は、低い温度で緊密に保持され高い温度で取り外ずし、又は、す
くなくとも物体から取り除くことのできる素材を含むことが好ましい。鋳型はまた、プリ
ンティング中に物体を保護することもできる。例えば、鋳型は、切削ローラ302がプリ
ンティングされた層310を平らにしている間に物体312の繊細なエッジか破損しない
よう保護することができる。鋳型の素材が物体の素材よりもしっかりと保持しない場合で
あっても、例えば、新しい層を平らにするとき又はプリンティングの後物体を焼成オーブ
ンに移送するときに、鋳型自身のエッジを犠牲にしてでも物体のエッジを保護する。鋳型
を薄くすることができ(例えば、厚さ0.5mm)、物体の周りの外皮の形状、又は物体
の一部となることができる。従って、物体(及び、同時に鋳型)は、鋳型に埋め込まれて
プリンティングすることができ、素材の範囲を拡張し3D物体の製作を可能にする。
【0141】
この技術の1つの例は、分散剤で覆われた高い硬度(例えば、WC)の微粒子を含む物
体インクである。比較的低い温度(例えば、200~400℃)では、分散剤は微粒子を
結合させる接着剤のように振る舞う。中間的な温度(例えば、400℃)では、分散剤は
蒸発し、3D物体は積層した微粒子となることができる。物体が400℃で部分的に焼結
するが溶融又は分解し、800℃以上で蒸発する素材(例えば、800℃で蒸発する高分
子微粒子を含む鋳型インク)で囲まれている場合、中間的な温度以上で鋳型は固体のまま
であり、物体の分散剤の蒸発を可能にし、より高い温度(例えば、700℃)まで、物体
の部分的焼結が起こる。
【0142】
17.サポート
物体は、任意の向きにプリンティングトレイに乗せられ、以下のように、物体の表面上
のすべての点に対して、正又は負の角度を定めることができる。すなわち、物体の素材が
その点のすぐ下にある場合は、表面角度は正と定められる。それ以外は、その点での表面
角は負と定められる(物体の負の角度又は負の傾き)。言い換えると、負の角度とは、構
築中の物体に、プリンティングされる領域のすぐ下に物体の部分がない領域である。
【0143】
ここで
図11Aを参照すると、これは3D物体を構築するときのサポートを示す図であ
る。3D物体の負の角度をサポートすることは、3Dプリンティングにおいて重要となる
。サポート1100の素材は、サポート素材はプリンティングの後又は焼結のような次の
ステップの後に物体を劣化させることなく取り除くことができる点で、物体312の素材
と異なる。サポートは、取り除くことが簡単、タッチインターフェースラインでモデル素
材とほとんど混合しない、低コスト、自立している、及び、プリンティング技術(インク
ジェット)と両立する、等を含む多くの付加的要求を満足する必要がある。
【0144】
プリンティングがインクジェット技術により実行されるので、プリンターには通常少な
くとも2つのプリンティングノズルグループ(しばしば、2プリンティングヘッド)、1
つのジェット物体素材、及び、1つのサポート素材が含まれる。プリンティングされた各
層は、(現在の)層の「物体部分」と呼ばれる、最終的な物体に望まれる、ゼロ、1、又
は複数の層の部分を有する。同様に、各層は、(現在の)層の「サポート部分」と呼ばれ
る、最終的な物体に望まれない(不必要な)ゼロ、1、又は複数の部分を有する。サポー
ト部分は、物体の製造過程で補助動作を行うサポート、鋳型、又は他の構造として一般に
用いられるが、最終的物体から取り除かれ及び/又は最終的物体にはないようになる。上
述したように、物体部分及びプリンティングされた層のサポート部分をプリンティングす
るために用いられる他の技術を使うこともできる(例えば、物体部分に対して第1のイン
クを使い、サポート部分に対して第1のインクと第2のインクの組み合わせを用いる)。
本明細書の文脈において、プリンティングされた層の物体部分をしばしば「物体層」と称
し、プリンティングされた層のサポート部分をしばしば「サポート層」と称する。本明細
書の文脈において、サポートと称するときには、サポートを作るのに用いられるインク(
サポートインク)及び物体に隣接する部分(重力に抗して物体をサポートし、又は、鋳型
として、を含む何らかの目的で物体を取り巻く部分)(サポート部分)も含むことができ
る。簡単にするために、現記載は、少なくとも2つのプリンティングヘッドの現在の実施
例に用いる。この記載に基づき、この方法を他の実施形態に適用することができよう。
【0145】
ここで、
図11Bを参照すると、これは層のサポート部分と物体部分のプリンティング
を示す図である。側面
図1120は、プリンティング時の3D物体312及びサポート1
100を示す。平面
図1122は、上部層を示す。各層は、物体層に隣接するサポート層
を含む。この場合、上部層には、サポート層1102(次の物体層のためのサポートを構
築する)となる部分、及び、物体層1104(先の物体及び/又はサポート層に構築され
る)となる部分が含まれる。
【0146】
第1の実施形態では、サポートには、揮発性キャリア液に分散された、無機固体微粒子
(例えば、酸化物、炭化物、窒化物、例えばタングステンのような金属のような、高溶融
温度微粒子)又は有機微粒子(例えば、硬質重合体)が含まれる。堅くなければ重合体素
材を(マイクロ微粒子サイズまで)研磨することが難しいか又は不可能になるので、重合
体素材は堅くするべきである。サポート層のプリンティングの後、液体のキャリアは蒸発
し、固体の薄板が残る。物体のプリンティングが終了したとき、物体は、サポートされ、
又は、サポート素材に包まれることもある。インクの選択と準備により、物体の微粒子(
密着度)とサポートの微粒子との間での粘着度における実質的な差異を確保する処理を行
う。この差異は、プリンティングの直後、又は部分的な焼成又は完全な焼成の後顕在化す
る。この差異は、分散剤の特性に差がある結果(例えば、固体微粒子間の接着特性の差異
)、又は固体微粒子の焼結傾向がお互いに異なっている結果であろう。一般に、サポート
構造は、水又は溶剤中で、物体より柔らかく又は壊れやすく又は混和しやすく、従って、
プリンティングされた物体から素早く除去できるようにすべきである。理想的なサポート
は、焼成の間にサポートが、例えば、分解及び蒸発により、消えてしまうようなものであ
る。
【0147】
第2の実施形態では、サポートには、揮発性の液体中に溶解した固体素材が含まれる。
液体が蒸発したのち、固体の薄板が残り固体のサポートを形成する。
【0148】
第3の実施形態では、プリンティング後の固体の素材は後処理液に対して溶解性を有す
る。従って、3D物体及びサポートのプリンティングを完了した後、物体及びサポートは
、水や薄い酸のような後処理液に浸し、溶解させることでサポートを除去する。
【0149】
第4の実施形態では、固体のサポート素材は、固体のサポート素材が蒸発、又は焼成処
理過程で燃えてしまうようになっている。1つの例は、有機溶剤に溶かしたワックス、又
は分散液に分散させた高分子化合物の微粒子である。溶剤又は分散液は、プリンティング
中に(例えば、200℃で)層毎に蒸発し、ワックス又は高分子化合物は硬化する。プリ
ンティングの後、サポートする本体は、オーブンで、好ましくは真空にして、焼成される
。(例えば)550℃で、ワックスは蒸発し消失し、700℃で、高分子化合物について
も同様となる。
【0150】
第2の実施形態及び第3の実施形態の例では、水の中に溶解された塩(例えば、NaC
l-塩化ナトリウム、食卓塩としても知られている)を用いている。水を蒸発させた後、
固体のサポートが後に残る。プリンティングを完了した後、物体を水に漬けることができ
、塩は溶けてしまう。
【0151】
サポート素材の他の例は、有機分散剤の存在下で溶剤中に分散させた酸化亜鉛(ZnO
)微粒子の分散である。プリンティング及び/又は焼成が完了した後、乾いたZnO微粒
子を、適度な力を加えることにより(この例では、ZnO微粒子は相互に焼結していない
と仮定する)取り除くことができる。他の選択肢としては、物体を強い酸(例えば、HN
O3)に浸し、亜鉛を溶解させる(ZnO+2HNO3=Zn(NO3)2+H2O)
先の例の代替例として、酸化物微粒子の混合物とキャリア液に溶かした塩である。プリン
ティングの後(サポートが乾燥したとき)、物体及びサポートは、水又は酸溶液に浸され
、塩はこの液により溶かされ酸化物微粒子は粘着性のないダストの薄板としてとどまる。
【0152】
サポート素材の別の例はシリカ(SiO2)の分散液である。シリカは入手が容易であ
り比較的安価な素材である。分散液が乾燥すると、残留シリカ微粒子は、700℃に温め
られた後でもお互いに粘着せずに接触しているだけであり、従って、シリカのサポート本
体は、物体から取り除くことができる。
【0153】
そのようなシリカの分散液の例は、エチレングリコール及びDegbe(ジ・エチレン
・グリコール・ブチル・エーテル)溶剤に分散された、平均直径12nmのSiO2微粒
子を含むEVONIK IndustriesによるAerodisp G1220であ
る。
【0154】
サポート素材の別の例は、硫酸カルシウムの分散液である。硫酸カルシウムは、石膏ボ
ード、漆喰、及び食品添加剤のような多くの用途で用いられる普通の素材である。硫酸カ
ルシウムは、水に混ぜることのできる無機塩であり、プリンティング及び/又は焼成の後
、水で洗うことにより、このサポート素材を取り除くことが可能である。硫酸カルシウム
のインクは、以下のステップで調合することができる。
a.固体の無水硫酸カルシウム(CaSO4)をグリコール・エーテル中で、イオンとア
クリルを組み合わせた分散剤とともに撹拌機ミルにより粉砕し、3μmメッシュのフィル
ターを通過する安定した分散液を形成する。
b.この分散液を、インクに必要な固体量に応じてさらにグリコール・エーテルを加えて
薄める。
【0155】
18.強化されたサポート及びペデスタル
ここで、
図11Cを参照すると、これは強化したサポート柱を用いた図である。側面図
1130は、プリンティング中の3D物体312及びサポート柱1110を示す。対応す
る平面
図1132は上部層を示す。上部層の図には、サポート1114(続く物体層のた
めに形成されたサポート)部分、及び、物体層1104(物体及び/又はサポート層に築
かれた)部分が含まれる。サポート1100の素材が下のトレイ318又は上(及び、又
は下の)物体312にうまく接着していない場合、好ましくは物体素材の柱1110を加
えることにより補強材を追加することができる。
【0156】
物体とトレイとの接着が強すぎる場合、サポートを含むペデスタル1112を物体の下
面の下に追加することもできる。本明細書の文脈において、ペデスタルには、物体下層よ
り低いすべてのサポート層(強化されていてもいなくても)を含めることができる。ペデ
スタル1112は、3D物体の適切で正確なZ軸寸法を取得するための手助けをすること
ができる。これは、(ならしローラ302に類似するローラ1116のような)ならし装
置が完全にペデスタル1112に接触しペデスタルを平らにするような高さまで、サポー
ト‐ペデスタルのプリンティング層により少なくとも部分的に達成される。その後、物体
のプリンティング及び素材のサポートは、平らにしたペデスタル上で行われる。
【0157】
19.オーブン中での(最終)焼結の完成
プリンティングが完了した後、物体は通常、完全な焼結が生じるのに必要な温度まで物
体を焼成するオーブンに入れられる。この最終(完全)焼結段階には、以下のステップが
含まれる。
【0158】
すべての有機素材をバーンアウトさせるための初期加温。
【0159】
無機添加剤(コバルトのような)を液化させるためのさらなる加温。
【0160】
液相中の微粒子を焼結するための、最終加温。
【0161】
焼成ステップの一部には、この明細書の別の場所に記載したように、真空を適用するス
テップ、圧力を加えるステップ、酸化防止のために不活性ガスを加えるステップ、及び、
望ましい、本体への分子拡散又は化学反応を起こすことができる他のガスを加えるステッ
プを含めることができる。
【0162】
20.高い処理能力
ここで
図12を参照すると、これは3D物体の製造のための例示的な回転台機械を示す
図である。3Dプリンティングは、一般に、各物体が通常いく千ものプリンティングされ
た層で構成されているため、生産量が低いことで特徴づけられる。3D物体1220のた
めの回転製造機械の複数のトレイ1200を、(3D物体312のような)3D物体の製
造処理能力を向上させるために用いることができる。
【0163】
1つの実施形態では、3D製造機械1220は、多くのプリンティング(噴射)ヘッド
による同じ工程で多くの物体の製造を可能にするために、複数のプリンティング(好まし
くはインクジェット)ヘッド1214及び複数のトレイ1200を含むことが望ましい。
複数のプリンティングヘッドは、プリンティングヘッドのグループ(1206A、120
6B、1206C)にグループ化することができる。多くのそして別々の部分(例示的に
は3D物体1202)が各トレイにプリンティングされる。各物体は(プリンティングヘ
ッドの下の)プリンティングセクションを複数回(サイクル)通る。各物体は、通常、プ
リンティングされた何千もの層から作られるので、何千ものサイクルが必要となる。各サ
イクルが複数のプリンティングヘッドによる複数のプリンティングを含む場合、サイクル
の数を何千から何百に減少させることができる。この記載に基づき、当業者は、具体的に
複数の物体を作るのにどれだけの数のヘッド及びサイクル及びトレイ1200が必要であ
るかを決定することができる。
【0164】
複数のヘッドはY軸方向に並べられ、層の表面を1パスで完全に時間差をもって注入す
ることができるように、複数のヘッドのそれぞれのノズルがY方向にお互いにずらされる
。例えば、1パスで1つ以上の層をプリンティングするために、1つの層に注入するのに
必要な数より多くのプリンティングヘッドを用いることができる。互いに異なる成型素材
のヘッドを採用することができる。例えば、第1のグループのプリンティングヘッド12
06Aは、第1の素材(素材A)をプリンティングするために構成され、第2のグループ
のプリンティングヘッド1206Bは、第2の素材(素材B)をプリンティングするため
に構成される。サポート素材のためのヘッドを採用することもできる。例えば、プリンテ
ィングサポート素材のための第3のグループのプリンティングヘッド1206Cである。
代替的に、1つの経路(すなわち、1つのサイクル)に層を堆積させた後、プリンティン
グされた層の上に(照射源308のような)加熱照射源1208が続く。加えて、任意的
に、ならし装置1210(例えば、ならしローラ302)を、通常、プリンティングヘッ
ドの後の、回転台サイクル中に含めることができる。
【0165】
物体のプリンティングが終了したとき、ロボットアーム1204は回転台1212から
トレイ1200を取り除き、又は、トレイ1200から物体1202を取り除き、回転台
の回転を止めることなくさらなる製造段階(例えば、焼成)に物体を送ることができる。
各トレイの層から層への動きは、ならし装置が乾いた層の上面をそぎ取るのに適切な高さ
に最後にプリンティングされた層をもってゆくよう、Z方向に少し低くシフトすることに
留意すべきである。すべての部品がトレイから取り除かれたとき、トレイ1200が回転
台1212にとどまる好ましい場合では、トレイのZレベル(高さ)は、初期の位置に管
理され、機械は次のグループの部品をプリンティングを開始する。
【0166】
代替的な実施例では、各トレイ1200に除去可能なプレート1216を最初に乗せて
、1以上の物体1202を後でプリンティングする。この場合、トレイ1200は、回転
台に固定され、除去可能なプレート1216を保持する「チャック」となることが好まし
い。プレート1216上のすべての物体1202がプリンティングされたとき、ロボット
アーム1204が除去可能なプレート1216を取り除き、除去可能なプレート上の物体
と共に除去可能なプレートを、焼成段階のような次の段階へ送る。除去可能なプレートに
は、薄い金属プレートを含めることができ、あるいは、焼成段階で通常900℃以上の温
度を用いる場合は、カーボンプレートを含めることができる。プレートは、真空により、
又は、プレートの周りに「指」を保持することにより、チャックに保持される。
【0167】
プリンティングヘッド1214の下の回転台1212トラックの部分は、直線が好まし
い。ヘッドは、「ノズル散乱」を実行するために、回転台サイクルごとにY軸方向に動く
。本明細書の別の場所で記載したように、プリンティングの間に必要な温度に従い、トレ
イ1200は温められ、プリンティングヘッド1214は、トレイの熱及び煙から保護さ
れる。
【0168】
21.システムコントローラ
図13は、本発明にコントローラを組み込むよう構成された例示的システム1300の
高位部分ブロック図である。システム(処理システム)1300には、(1以上の)プロ
セッサ1302及び4つの例示的記憶装置、すなわち、RAM1304、ブートROM1
306、大容量記憶装置(ハードディスク)1308、及びフラッシュメモリ1310、
が含まれ、すべては共通バス1312を介して通信を行う。当業者に知られているように
、処理及びメモリには、ソフトウェアを記憶したコンピュータ読み取り媒体、及び/又は
、ファームウェア、及び/又は、フィールドプログラマブル論理アレー(FPLA)要素
、ハードワイヤード論理要素、フィールドプログラマブルゲートアレー(FPGA)要素
、及び特定用途向け集積回路(ASIC)要素を含むがこれらに限定されない、任意のハ
ードウェアを含むことができる。縮小命令セットコンピュータ(RISC)構造、及び/
又は、複雑命令セットコンピュータ(CISC)構造を含むがこれらに限定されない、任
意の命令セット構造をプロセッサ1302で用いることができる。モジュール(処理モジ
ュール)1314が大容量記憶装置1308に示されているが、当業者には明らかなよう
に、このモジュールは、任意の記憶装置に配置することができる。
【0169】
大容量記憶装置1308は、ここに記載された方法を組み込むためのコンピュータ読み
取り可能な命令を有するコンピュータ読み取り可能媒体の、限定を意図しない実施例であ
る。このようなコンピュータ読み取り可能記憶媒体の他の実施例として、このような命令
を書き込んだCDのような、読み出し専用メモリが含まれる。
【0170】
システム1300は、記憶装置に保存されたオペレーティングシステムを有することが
でき、ROMはこのシステムのためのブートコードを含むことができ、プロセッサはオペ
レーティングシステムをRAM1304にロードするためにブートコードを実行するよう
構成することができ、オペレーティングシステムを実行してコンピュータ読み取り可能命
令をRAM1304にコピーしてこの命令を実行する。
【0171】
ネットワーク接続1320により、システム1300から及びシステム1300への通
信がなされる。一般に、単一のネットワーク接続は、ローカル及び/又は遠隔のネットワ
ークにある他の装置との仮想接続を含む、1つ以上のリンクを提供する。代替的に、シス
テム1300は、1以上のネットワーク接続(不図示)を含み、各ネットワーク接続は、
他の装置及び/又はネットワークとの1以上のリンクを提供することができる。
【0172】
システム1300は、ネットワークを介してクライアント又はサーバとそれぞれ接続さ
れたサーバ又はクライアントとして実施することができる。代替的に、システム1300
は、組み込まれたコントローラとして実施することができる。
動作:第1の実施形態
第1の実施形態の原理および動作は添付図及び詳細な説明を参照することでよく理解で
きるであろう。本実施形態は、物体をプリンティングするシステム及び方法である。本シ
ステムにより、プリンティング中にキャリア液の蒸発を容易にする一方、少なくとも分散
剤の一部はプリンティングされた層に残留する。
【0173】
従来の実施形態では、プリンティングの後物体本体を加熱しキャリアを蒸発させるが、
本実施形態の特徴は、プリンティングされた層(物体の本体の上面)の(ごく最近/現在
の)温度(TL)をキャリアの沸点T1の近傍又は沸点以上(例えば、摂氏で0.7×T
1だけ上回る)であって、同時に分散剤の沸点以下にもって行き又は保持することである
。この画期的な特徴により、プリンティングの後にキャリアを蒸発させる従来の技術とは
対照的に、インクをプリンティングしているときにキャリア液が蒸発する一方、分散剤の
少なくとも一部は物体のプリンティングされた層に残留する。いくつかの場合は、キャリ
ア液が蒸発した後、残留した分散剤が固体微粒子を結合させる役割を果たす。代替的に、
キャリア液が蒸発した後、固体微粒子の結合を補助するために他の素材をインクに加える
ことができる。
【0174】
当業者であれば、所定の物体(及び付属するインク、キャリア液、分散剤、及び、他の
任意的要素)に対して、キャリア沸点温度の下限([T1])以上であって分散剤沸点温
度の上限([T2])以下の、所定の(測定された/計算された)温度範囲([T1]<
TL<[T2])があり、上部層の温度(TL)をこの所定の温度範囲までもって行き又
は保持することにより、キャリアを蒸発させる一方分散剤をプリンティングされた現在の
層に残留させることが可能となることに気がつくであろう。言い換えれば、事実上、正確
なキャリア沸点温度T1を使わなくてもよく、キャリアが蒸発するキャリア沸点温度T1
以下の既知の範囲が存在する。キャリア沸点温度T1以下のこの範囲を、この明細書では
キャリア沸点温度の下限([T1])と称する。同様に、正確な分散剤沸点温度T2を使
わなくてもよく、分散剤が蒸発しない(液体のまま残る)分散剤沸点温度T2近傍の既知
の範囲が存在する。分散剤沸点温度T2近傍のこの範囲を、この明細書では分散剤沸点温
度の上限([T2])と称する。下限及び上限は、(通常、華氏で測って)それぞれの沸
点温度の20%上まわるか又は20%下回る。下限([T1])は、通常、華氏で測って
キャリア沸点温度(T1)より20%下回ることができる。上限([T2])は、通常、
華氏で測って分散剤沸点温度(T2)より20%上回ることも下回ることもできる。
【0175】
物体のプリンティング面に第1の層がプリンティングされる。第1の層の物体部分は、
通常は対応する少なくとも1つのインクジェットプリンティングヘッドにより、少なくと
も1つのインクでプリンティングされる。プリンティングヘッドの1つ以上は、通常すべ
てのプリンティングヘッドは、第1の層の内容に従い調節することができる。少なくとも
1つのインクの各々には、通常、キャリア沸点温度(T1)を有するキャリア、分散剤沸
点温度(T2)を有する分散剤、及び、微粒子焼結温度(T3)を有する微粒子が含まれ
る。少なくとも2つのインクがプリンティングされたとき、この少なくとも2つのインク
の各々には、異なるタイプの微粒子を含むことができ、この少なくとも2つのインクの各
々の局所的な比率は、プリンティングされる層の仕様(第1の層の仕様)により決まる。
一般的に、このインクの各々の局所的な比率は、1つのプリンティングされた層から他の
プリンティングされた層で、及び、層の1つの点から同じ層の他の点で変化する。層には
又サポート部が含まれ、サポート部は、以下に説明するように、物体層に隣接してサポー
トがプリンティングされる。
【0176】
本明細書の他の部分に記載したように、キャリアが蒸発した後、微粒子を相互に結合さ
せるために、及び/又は、キャリアが蒸発した後、微粒子が相互に焼結するのを抑制する
ために、分散剤を付加的に及び/又は代替的に選択することができる。
【0177】
インクジェットプリンティングの特徴は、プリンティングが選択可能である点、言い換
えれば、(物体の第1の層のような)プリンティングする各層の一部である領域にプリン
ティングする点である。各層は、通常、現在の層のどの部分が好ましい物体なのかの情報
を含む、層の仕様又は層の内容(概要)に基づきプリンティングされる。代替的に、層の
仕様には、現在の層のプリンティングされない領域について、別のインク(第2のインク
、第3のインク、等)によりプリンティングされる領域について、サポート領域について
、及び/又は、鋳型領域についての情報を含めることができる。
【0178】
本明細書の他の部分に記載したように、上部層の温度(TL)まで持ち上げ又は保持し
、分散剤を蒸発させ、及び/又は、焼結させることは、加熱ランプのような照射源、物体
の上の電磁(EM)照射源、選択的レーザ又は非選択的レーザ、集光線形レーザビーム、
走査レーザビーム、走査集光ペンシルレーザビーム、線形白熱電球からの集光ライト、ガ
ス放電ランプからの集光ライト、フラッシュライト、紫外線(UV)光源、可視光源、赤
外線(IR)光源、及び、基板(トレイ)温度制御の使用のような技術により達成するこ
とができる。走査レーザビームを用いる場合、ビームは層の内容(現在の層のどの部分が
物体に好ましいかの情報)に従い調節することができる。上述の技術は、第1の層の温度
を物体の温度より一時的に上昇させることで分散剤を蒸発させるために用いることができ
る。
【0179】
プリンティングが選択的で、物体の第1の層の一部の領域にプリンティングする場合、
選択的プリンティングの後、非選択的レーザを物体がプリンティングされたすべての領域
に照射するために用いることができる(例えば、線形集光レーザを用いる)。選択的プリ
ンティングの後に非選択的加熱源を用いる、特に非選択的レーザを用いる技術は、上面を
加熱するため、すなわち、分散剤をファイアリングオフ(蒸発)させるために用いること
ができる。一方、従来の技術では、非選択的プリンティング(又は、プリンティング領域
に、3D物体を構築するためのインク又は他の物質を単に供給する)を用い、続いて、物
体の必要な部分を焼結するために選択的レーザを用いる。
【0180】
キャリアを蒸発させた後、任意的に、残留している分散剤又は分散剤の一部が蒸発する
ことができ、次に、任意的に、第1の(最も最近プリンティングされた)層を焼結させる
ことができる。任意的に、キャリアを蒸発させた後、分散剤を蒸発させた後、又は(プリ
ンティングされた層)を焼結させた後、第1の層の上に次の層をプリンティングすること
ができる。一般に、物体は何百又は何千ものプリンティングされた層により構築され、こ
の方法は、次の層を(新しい「第1の層」として)先にプリンティングされた(第1の)
層の上にプリンティングすることを繰り返す。
【0181】
本明細書の他の部分に記載したように、触媒をプリンティングされた層(第1の層)に
加えることができる。触媒は、ハロゲン化合物及び塩化銅のような化合物から選択するこ
とができる。触媒は種々の技術で加えることができる。例えば、
少なくとも1つのインクに触媒を含める、
第1の層の上からガス状の触媒を噴出させる、
第1の層の上から液状の触媒を噴出させる、
第1の層の上からガス状の触媒を噴霧する、
第1の層の上から液状の触媒を噴霧する、
技術である。
【0182】
物体は、通常、加熱された又は断熱素材のトレイ上でプリンティングされる。
【0183】
上面の温度TSがキャリア沸騰温度T1以上に保持された場合、(例えば、T1より3
0℃高い)新たに分配された層の液体キャリアは、インクが上面に着地したとき急激に(
爆発的に)蒸発し、多くの小さな空になった膨張部を含むスポンジのような層を形成する
。これは急激な沸騰の間、ガスが開口を作り「飛び出す」寸前に、分配されたインクが(
キャリアガスにより)、膨張し凍結(すなわち、乾燥)するからである。結果として3D
物体の構造はこのように多孔質となる。多孔質の物体本体をつくることは、その後のオー
ブンでの加熱において、残留した分散剤を物体の構造体から流れ出させるために好ましい
であろう。その後の加熱は、残留した分散剤及び/又は有機素材のような他のインク成分
を除去(分解及び/又は蒸発)するために用いることができる。
動作:第2の実施形態
第2の実施形態の原理および動作は添付図及び詳細な説明を参照することでよく理解で
きるであろう。本実施形態は、物体をプリンティングするシステム及び方法である。本シ
ステムにより、第1の層の焼結に先だって及び/又は第2の層のプリンティングに先だっ
て第1の層の分散剤の蒸発を容易にする。
【0184】
本明細書の他の部分に記載したように、従来の実施形態では、分散剤を完成した物体の
中に残し、全体物体をプリンティングの後、全体物体を加熱し分散剤の部分をファイアオ
フ(蒸発)する。本実施形態の特徴は、プリンティング中に少なくとも分散剤の一部を蒸
発させることである。一般に、物体をプリンティングする方法は、少なくとの1つのイン
クで第1の層をプリンティングすることから始まり、分散剤の少なくとも一部、通常は実
質的にすべての分散剤を蒸発させる。分散剤の少なくとも一部を蒸発させたあと、その後
の動作を行う。その後の動作には、
第1の層を少なくとも部分的に焼結させるステップ、及び
第1の層の上に少なくとも1つのインクで次の層をプリンティングすることを繰り返す。
が含まれる。
【0185】
任意的に、分散剤の少なくとも一部を蒸発させることに先立ち、第1の層に分散剤が残
っている間にキャリアを蒸発させることができる。
【0186】
一般に、上述した技術及び選択肢は、特に第1の実施形態を参照して、この第2の実施
形態に組み込むこともできる。
動作:第3の実施形態:
図2A~3
第3の実施形態の原理および動作は添付図及び詳細な説明を参照することでよく理解で
きるであろう。本実施形態は、物体をプリンティングするシステム及び方法である。本シ
ステムにより、水平ローラを用いてプリンティングされた物体の上部層を平らにすること
が容易になる。
【0187】
本明細書の他の部分に記載したように、プリンティングでは、次の処理のために十分平
らになっていない(粗すぎる)上部層(最も最近プリンティングされた/第1の層)生じ
る結果となることがある。この場合、物体の上部を平らにすることが求められる。従来の
実施形態では、垂直ビームの周りに回転する垂直ミル又はグラインディングディスク、平
滑又はナールドローラを用いている。本実施形態では、画期的な水平ローラを用いる。任
意的実施形態では、水平ローラ切削(ブレードのついた)ローラである。
【0188】
一般に、物体をプリンティングする方法は、少なくとの1つのインクで第1の層をプリ
ンティングすることから始まり、第1の層を少なくとも部分的に硬くする。そして、第1
の層を画期的な水平ローラを用いて平らにする。水平ローラには、1つ以上のブレード(
又は代替的に円筒形の研磨面)が含まれ、第1の層の平面に水平な軸(通常、Y軸)の周
りに回転する。
【0189】
本実施形態に対する、付加、選択肢、代替、として、上述の「ならし装置」に記載され
ている。平らにした後、及び、選択的に、クリーニング、さらなる硬化、分散剤の少なく
とも一部の蒸発、及び/又は、部分的焼結の後、物体がまだ完成していない(未完成の)
場合は、少なくとも1つのインクの次の層が第1の層にプリンティングされる。
動作:第4の実施形態:
図10A~11C
第4の実施形態の原理および動作は添付図及び詳細な説明を参照することでよく理解で
きるであろう。本実施形態は、サポートを有する物体をプリンティングするシステム及び
方法である。本システムは、マップに従い層を繰り返しプリンティングするのを容易にし
、各層は、潜在的に物体部及びサポート部を有し、結果的に、サポートを有する物体とす
るものである。特に、負の角度及び鋳型に対するサポートである。
【0190】
本明細書の他の部分に記載したように、サポートを用いた技術により、鋳型の使用、強
化したサポートの使用及びペデスタルの使用による負の角度に対するサポートが容易にな
る。
【0191】
層の物体部分は、一般に第1のインクと称される物体インクでプリンティングされる。
同様に、物体のサポート部分は、一般に第2のインクと称されるサポートインクでプリン
ティングされる。
【0192】
一般に、サポートを有する物体をプリンティングする方法は、少なくとも第1のインク
を用いて第1の層の物体部分をプリンティングすることから始まり、第1のインクには、
第1のキャリア、及び
物体を構築し第1のキャリア中に分散する第1の微粒子、
が含まれる
少なくとも第2のインクを用いる第1の層のサポート部分は、物体部分がプリンティン
グされる前、又は同時、又は後にプリンティングされる。第2のインクには、
第2のキャリア、及び
サポートを構築し第2のキャリア中に分散する第2の微粒子、
が含まれる
好ましくは第2のキャリアは第1のキャリアである。一般に、2の微粒子は、第1の微
粒子とは異なり、キャリアは液体である。
【0193】
上述の通り、サポート部分は、第2のインクで、そして付加的に第1のインクでプリン
ティングすることができる。言い換えれば、一般に、物体部分及びサポート部分の両方を
第1のインクでプリンティングし、そして(又は同時に)第2のインクでサポート部分だ
け再プリンティングする。
【0194】
好ましい実施形態では、プリンティングは第1のプリンティングヘッド、通常は2以上
のプリンティングヘッドであり、各プリンティングヘッドは1つのタイプのインクを噴出
させ、各プリンティングヘッドは第1の層の内容(物体、サポート、及び、空間部分)に
従い調節されるような、プリンティングヘッドを介して行われる。
【0195】
第1の層のプリンティングのあと、物体が完成していない(未完成である)場合は、次
の層が第1の層の上にプリンティングされ、この次の層には、第1の層の上のそれぞれの
物体部分とサポート部分とが含まれる。
【0196】
サポートインク中の固体微粒子には、水に混ぜることができ、少なくとも部分的に水に
溶解する微粒子、無機固体、有機物、重合体、第1の微粒子、塩、金属酸化物(例えば、
酸化亜鉛)、シリカ(SiO2)、硫酸カルシウム、タングステンカーバイド(WC)を
含むことができる
本明細書の他の部分に記載したように、物体部分及びサポート部分に用いられる微粒子
は、具体的な応用例、要求、及び物体の特性により決まる。使用する微粒子には、金属、
金属酸化物、金属炭化物、合金、無機塩類、重合体微粒子、ポリオレフィン、及びポリオ
レフィンポリ(4-メチル-1-ペンテン)を含めることができる。
【0197】
サポートを有する物体のプリンティングが完了したとき、サポートは、プリンティング
の直後又はそれに続くオーブン内での処理の後、取り除かなければならない。サポートは
、種々の技術を用いて物体から取り除くことができ、具体的な技術はサポートのタイプに
より決まる。技術には、燃焼、浸漬させてサポートを溶解させる、水に漬けてサポートを
溶解させる、酸に漬けてサポートを溶解させる、薄い酸に漬ける、強い酸に漬ける、HN
O3に漬ける、サンドブラスト、水ジェット、等が含まれる。
【0198】
記載した方法は他の領域にも用いることができると予想される。例えば、一般に(非公
式に)2次元(2D)と呼ばれる物体を構築することがあげられる。限定を意図しない実
施例として、柔軟性のある金属又は複合アンテナ及び生物学的センサーが含まれる。これ
らの場合において、2D物体は、3D物体の構築の場合と同様の必要条件をもっている可
能性がある。例えば、2D物体をプリンティングさせるのに用いられるインクには、プリ
ンティングのための分散剤が含まれるが、分散剤は物体が完成した後除去しなければなら
ない。
【0199】
本明細書で言及されたインクは、商業的に入手可能な従来のインクであることに留意す
べきである。代替的インク付加的インク及び新しいインクは、本発明に用いることができ
ることが予見される。
【0200】
この実施形態の説明を補助するために用いられた選択は、本発明の有効性及び有用性を
損なうものではない。応用例に応じて、より一般的な選択を行うことが予見される。
【0201】
この実施形態の説明を補助するために簡単にした計算を用いることは、本発明の有用性
及び基本的な利点を損なうものではない。
【0202】
ここで留意すべきは、応用例に応じてモジュール及び処理について種々の実施形態が可
能であることである。モジュールは、1つ以上の場所で単一のプロセッサ又は分散配置さ
れたプロセッサ上で、ソフトウェアで実行することが好ましいが、ハードウェア及びファ
ームウェアとして実行することもできる。上述のモジュールファンクションはもっと少な
いモジュールに統合し実施すること、又は、サブファンクションに分割し、多数のモジュ
ールとして実施すること場できる。上記記載により、当業者は具体的な応用例に対する実
施について設計することができるであろう。
【0203】
ここで留意すべきは、上記実施例、使用した数、例示的な計算は、この実施形態の説明
を補助するためのものであることである。不注意による誤記、誤計算、及び/又は、単純
化した計算により、本発明の有用性及び基本的な利点を損なうものではない。
【0204】
添付請求項は、多重従属がないように記載されているが、これは、そのような多重従属
を許容しない司法的な形式的要求を適応させるためだけのものである。ここで留意すべき
は、多重従属請求項による表現により実行できる特徴のすべての組み合わせは、明らかに
予見されるものであり、本発明の一部と考えられることである。
【0205】
当然のことながら上記説明は、例示のみを目的とするものであり、多くの他の実施形態
が添付請求項で定義される本願発明の技術的範囲内となる可能性がある。