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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】耐火被覆方法及び鉄骨梁
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20221221BHJP
   E04C 3/08 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
E04B1/94 D
E04B1/94 F
E04B1/94 V
E04C3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021002096
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107257
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】398036863
【氏名又は名称】パイロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 篤
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036489(JP,A)
【文献】特開2013-028982(JP,A)
【文献】特開2015-010322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0148660(US,A1)
【文献】特開2004-346657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された鉄骨材の耐火被覆方法であって、
前記開口部が形成された前記鉄骨材と、前記鉄骨材の少なくとも前記開口部の近傍表面を高温から保護する表面耐火被覆材と、耐火性を有する被覆材と、を準備する準備工程と、
前記鉄骨材に前記表面耐火被覆材を配設する配設工程と、
前記鉄骨材に形成された前記開口部の内周縁に対向する位置を高温から保護する耐火断熱部を形成する耐火工程と、
前記耐火断熱部及び前記開口部の近傍表面に位置する前記表面耐火被覆材を前記被覆材で被覆する被覆工程と、を備え、
前記被覆工程は、少なくとも前記配設工程及び前記耐火工程を実施し終えてから、前記耐火断熱部及び前記開口部の近傍表面に位置する前記表面耐火被覆材を前記被覆部材で被覆することにより、前記耐火断熱部を前記開口部に向かって押圧しつつ支持する、耐火被覆方法。
【請求項2】
前記準備工程では、前記鉄骨材の前記開口部の近傍を高温から保護する開口耐火被覆材を準備し、
前記耐火工程では、前記鉄骨材に形成された前記開口部の内周縁に対向する位置に前記開口耐火被覆材を配設することで前記耐火断熱部を形成する、請求項1に記載の耐火被覆方法。
【請求項3】
開口部が形成された鉄骨材と、
前記鉄骨材の少なくとも前記開口部の近傍表面を高温から保護する表面耐火被覆材と、
前記開口部の内周縁に対向して形成される耐火断熱部と、
耐火性を有する被覆材と、を備え、
前記被覆材は、前記耐火断熱部及び前記開口部の近傍表面に位置する前記表面耐火被覆材を被覆することにより、前記耐火断熱部を前記開口部に向かって押圧しつつ支持してなる、鉄骨梁。
【請求項4】
前記耐火断熱部は、前記鉄骨材の前記開口部の近傍を高温から保護する開口耐火被覆材である、請求項3に記載の鉄骨梁。
【請求項5】
前記被覆材は、シート状の耐火部材である、請求項3または4に記載の鉄骨梁。
【請求項6】
前記被覆材は、少なくとも一部に短手方向に延びるスリットが形成されてなる、請求項5に記載の鉄骨梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火被覆方法及び鉄骨梁に係り、特に鉄骨梁の耐火性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨梁には、空気用のダクトや配線(配線等)が通過するための開口が設けられることがある。このように開口が設けられた鉄骨梁は、開口の周辺の火災時における強度が他の箇所と比較して低くなる。そこで、開口縁を耐火被覆材で被覆することで、開口縁の温度上昇を抑制するようにして、火災時における鉄骨梁の強度を向上させる技術が開発されている。(特許文献1)。
【0003】
また、鉄骨梁の表面に耐火性を有する耐火マットを配設することで、例えばロックウールを鉄骨梁の表面に吹き付ける耐火被覆方法と比較して空気中をロックウールの粉体が舞うことを抑制することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-346657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される耐火被覆材は、高温下で熱収縮する場合がある。このように耐火被覆材が熱収縮すると、耐火被覆材と耐火マットとの間には、隙間が生じることがあり、さらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐火被覆材(耐火断熱部)と耐火マット(表面耐火被覆材)との間に隙間が生じることを抑制することができる耐火被覆方法及び鉄骨梁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の耐火被覆方法は、開口部が形成された鉄骨材の耐火被覆方法であって、前記開口部が形成された前記鉄骨材と、前記鉄骨材の少なくとも前記開口部の近傍表面を高温から保護する表面耐火被覆材と、耐火性を有する被覆材と、を準備する準備工程と、前記鉄骨材に前記表面耐火被覆材を配設する配設工程と、前記鉄骨材に形成された前記開口部の内周縁に対向する位置を高温から保護する耐火断熱部を形成する耐火工程と、前記耐火断熱部及び前記開口部の近傍に位置する前記表面耐火被覆材を前記被覆材で被覆する被覆工程と、を備え、前記被覆工程は、少なくとも前記配設工程及び前記耐火工程を実施し終えてから、前記耐火断熱部及び前記開口部の近傍表面に位置する前記表面耐火被覆材を前記被覆部材で被覆することにより、前記耐火断熱部を前記開口部に向かって押圧しつつ支持することを特徴とする。
【0008】
これにより、鉄骨材に形成された開口部の内周縁に対向する位置を高温から保護する耐火断熱部を形成する耐火工程と、鉄骨材に表面耐火被覆材を配設する配設工程とを実施し終えてから、耐火断熱部及び開口部の近傍に位置する表面耐火被覆材を被覆材で被覆することにより、耐火断熱部を開口部に向かって押圧しつつ支持する被覆工程を実施することで、耐火断熱部と表面耐火被覆材とが乖離することを被覆材によって抑制することが可能とされる。
【0009】
その他の態様として、前記準備工程では、前記鉄骨材の前記開口部近傍を高温から保護する開口耐火被覆材を準備し、前記耐火工程では、前記鉄骨材に形成された前記開口部の内周縁に対向する位置に前記開口耐火被覆材を配設することで前記耐火断熱部を形成するのが好ましい。
これにより、鉄骨材に形成された開口部の内周縁に対向する位置に開口耐火被覆材を配設して耐火断熱部を形成することで、耐火断熱部の形成に係る作業を容易にすることが可能とされる。
【0010】
また、本発明の鉄骨梁は、開口部が形成された鉄骨材と、前記鉄骨材の少なくとも前記開口部の近傍表面を高温から保護する表面耐火被覆材と、前記開口部の内周縁に対向して形成される耐火断熱部と、耐火性を有する被覆材と、を備え、前記被覆材は、前記耐火断熱部及び前記開口部の近傍表面に位置する前記表面耐火被覆材を被覆することにより、前記耐火断熱部を前記開口部に向かって押圧しつつ支持してなることを特徴とする。
【0011】
これにより、表面耐火被覆材によって鉄骨材の開口部の近傍表面を高温から保護し、鉄骨材に形成された開口部の内周縁に対向するよう耐火断熱部を形成し、該耐火断熱部を被覆材で被覆することで、被覆鉄骨材の耐火性を耐火断熱部及び表面耐火被覆材によって向上させつつ、耐火断熱部と表面耐火被覆材との間に隙間が生じることを被覆材によって抑制することが可能とされる。
【0012】
その他の態様として、前記耐火断熱部は、前記鉄骨材の前記開口部近傍を高温から保護する開口耐火被覆材であるのが好ましい。
これにより、耐火断熱部として開口耐火被覆材を用いることで、鉄骨材の耐火性を向上させることが可能とされる。
【0013】
その他の態様として、前記被覆材は、シート状の耐火部材であるのが好ましい。
これにより、被覆材としてシート状の耐火部材を用いることで、耐火断熱部と表面耐火被覆材との接続部分の耐火性をまんべんなく高めることが可能とされる。
【0014】
その他の態様として、前記被覆部材は、少なくとも一部に短手方向に延びるスリットが形成されてなるのが好ましい。
これにより、被覆材の少なくとも一部に短手方向に延びるスリットを形成することで、耐火断熱部を被覆材で被覆する際に該被覆材にしわが生じることを抑制することが可能とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の耐火被覆方法によれば、鉄骨材に形成された開口部の内周縁に対向する位置を高温から保護する耐火断熱部を形成する耐火工程と、鉄骨材に表面耐火被覆材を配設する配設工程とを実施し終えてから、耐火断熱部及び開口部の近傍に位置する表面耐火被覆材を被覆材で被覆する被覆工程を実施するようにしたので、耐火断熱部と表面耐火被覆材とが乖離することを被覆材によって抑制することができる。
【0016】
また、本発明の鉄骨梁によれば、表面耐火被覆材によって鉄骨材の開口部の近傍表面を高温から保護し、鉄骨材に形成された開口部の内周縁に対向するよう耐火断熱部を形成し、該耐火断熱部を被覆材で被覆したので、被覆鉄骨材の耐火性を耐火断熱部及び表面耐火被覆材によって向上させつつ、耐火断熱部と表面耐火被覆材との間に隙間が生じることを被覆材によって抑制することができる。
これらにより、鉄骨梁の耐火性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】構造物の鉄骨梁の斜視図である。
図2】構造物の鉄骨梁を短手方向から視た正面図である。
図3図2中I-I断面の断面図である。
図4】耐火被覆材の斜視図である。
図5】被覆シートの正面図である。
図6】鉄骨梁の耐火被覆方法の施工手順を示すフローチャートである。
図7】開口部13の斜視図である。
図8】別実施例に係る、図2中I-I断面の断面図である。
図9】さらなる別実施例に係る、図2中I-I断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の第1実施形態について説明する。
図1を参照すると、構造物の鉄骨梁1の斜視図が示されている。また、図2を参照すると、構造物の鉄骨梁1を短手方向から視た正面図が示され、図3を参照すると、図2中I-I断面の断面図が示さている。
【0019】
鉄骨梁(鉄骨材)1は、H形鋼からなる鉄骨材であり、上下方向及び長手方向に延びるウェブ11が形成されてなる。この鉄骨梁1は、長手方向端部が柱(所定の構造物)2に固定され、上方には鉄筋コンクリート造のスラブ3が配設されている。また、鉄骨梁1の表面には、耐火マット(表面耐火被覆材)5が被覆されてなる。耐火マット5は、例えばアルカリアースシリケートウールやガラス繊維を含むシート状の耐火材であり、要求耐火性に適合した厚さで形成されている。この耐火マット5は、先端が鉄骨梁1に溶着可能な固定ピン(固定部材)5aによって固定されてなる。なお、耐火マット5によって鉄骨梁1の表面を被覆する方法については後述する。
【0020】
ウェブ11には、円形の開口部13が長手方向に複数並んで形成されている。開口部13は、ウェブ11を貫通させるようにして構造物の配管や電線等を設置するために設けられる穴である。この開口部13近傍には、補強部材21、耐火被覆材(耐火断熱部、開口耐火被覆材)23及び被覆シート(被覆部材)25が配設されている。
【0021】
補強部材21は、短手方向から視て円形の平板部材であり、中央に開口部13に対応する形状の開口21aが形成されてなる。また、補強部材21は、ウェブ11の平面11aに、開口21aと開口部13とが合わさるように溶接されている。これにより、鉄骨梁1は、ウェブ11に開口部13が形成されることによる強度の低下を補強部材21によって補強しつつ、構造物の配管や電線等を設置するために設けられた開口部13を有効に活用することができる。
【0022】
図4を参照すると、耐火被覆材23の斜視図が示されている。耐火被覆材23は、要求耐火性を有する耐火材である。詳しくは、耐火被覆材23は、耐火断熱部31、不燃金属箔33及び粘着部35を有し、例えばロール状にして保管されてなる(不図示)。
【0023】
耐火断熱部31は、薄い帯状のアルカリアースシリケートウールを複数層に重ねて形成されており、折り曲げ自在に構成されている。この耐火断熱部31は、1000℃以下の温度であれば焼失せずに耐火性を維持することが可能である。不燃金属箔33は、薄膜状のアルミシートであり、断面形状がロの字形のカバー状に形成され、耐火断熱部31を囲うように形成されてなる。すなわち耐火断熱部31は、不燃金属箔33により上面23a、下面23b及び両側面23cが被覆されてなる。粘着部35は、耐火断熱部31、すなわち不燃金属箔33の上面23a中央に貼り付けられ、帯状に形成された両面粘着テープである。この粘着部35は、不燃金属箔33側とは反対側の面が離型紙35aによって覆われてなる。
【0024】
図3によると、耐火被覆材23は、開口部13の内周面(開口部の内周縁)に粘着部35を貼り付けることで、ウェブ11に形成された開口部13の内周縁に対向するよう、開口部13の内周面に配設されてなる。これにより、ウェブ11に形成された開口部13近傍は、補強部材21によって補強することができ、耐火被覆材23によって耐火性を向上させることができる。なお、耐火被覆材23を開口部13の内周面に配設する方法については後述する。
【0025】
このように、耐火断熱部31は、不燃金属箔33によって被覆される構成からなるため、耐火被覆材23の表面は不燃金属箔33によって保護される。これにより、耐火断熱部31は、筒状の耐火被覆材23の中に構造物の配管や電線等を設置させる際などに耐火被覆材23が欠損し難くなり、開口部13近傍の耐火性を維持させることができる。また、耐火断熱部31、不燃金属箔33及び粘着部35は、比較的軽量な材料であるため、耐火被覆材23全体としても比較的軽量となる。これにより、耐火被覆材23は、取り付けるときや運ぶときの作業者の負担を軽減することができる。また、耐火被覆材23は、簡易的な構成からなるため、安価に製作される。これにより、施工コストの低減を図る事ができる。
【0026】
図5を参照すると、被覆シート25の正面図が示されている。被覆シート25は、例えば無機材料であってアルカリアースシリケートウールやガラス繊維を含んでなり、1000℃以上の温度に耐えることが可能な耐火性を有するシート状の部材である。この被覆シート25は、ロール状にして保管されている。また、被覆シート25は、短手方向両側に例えば8つずつのスリットが設けられたスリット部(スリット)25aを有する。以下、説明の便宜上、スリット部25aが形成されていない部分を被覆部25bという。
【0027】
図3によると、被覆シート25は、耐火被覆材23を覆うように被覆してなる。また、被覆シート25は開口部13に向かって押圧するように耐火被覆材23を支持しつつ、スリット部25aが固定ピン5aによって固定されている。ここで、被覆シート25は、耐火性を有しているため、例えば火災によって鉄骨梁1が高温下に晒されるような場合であっても、耐火マット5と耐火被覆材23との接続部分が高温下に晒されることを抑制することができる。また、被覆シート25は、耐火被覆材23を開口部13に向かって押圧するように支持してなるため、耐火被覆材23が高温下で熱収縮する場合であっても、耐火マット5と耐火被覆材23との間に隙間が生じることを抑制することができる。なお、被覆シート25によって耐火被覆材23を被覆する方法については後述する。
【0028】
図6を参照すると、鉄骨梁1の耐火被覆方法の施工手順がフローチャートで示されており、図6に沿い、上記した構成からなる耐火被覆材23及び被覆シート25を使用する鉄骨梁1の耐火被覆施工(耐火被覆方法)について説明する。
【0029】
まず、補強部材21によって開口部13が補強された鉄骨梁1、ロール状にして保管されている耐火被覆材23、ロール状にして保管されている被覆シート25、耐火マット5及び固定ピン5aを準備する(準備工程S1)。
【0030】
次に、構造物の建築現場にて、鉄骨梁1を柱2に設置する(設置工程S2)。この設置工程S1のあと、図示はしないが、耐火被覆施工以外の工程での構造物の建築が進められ、スラブ3が形成される。
【0031】
次に、耐火マット5を鉄骨梁1の表面に配設する(配設工程S3)。具体的には、ロール状にして保管されている状態の耐火マット5をシート状に延ばし、開口部13に対応するよう開口を形成したあと、ウェブ11等の鉄骨梁1全体に配設する。
【0032】
次に、耐火被覆材23によって開口部13の内周面を被覆する(耐火工程S4)。具体的には、ロール状にして保管されている状態の耐火被覆材23を鉄骨梁1に配設された開口部13の内周面の内周長さとなるように切り分けて帯状にしたあと、開口部13の内周面の形状に適合した形状に耐火被覆材23を折り曲げて、上面23aが外周になるよう筒状に変形させる。そして、筒状に形成された耐火被覆材23を開口部13の内周面に挿通し、粘着部35を開口部13の内周面に貼着して接合することで、開口部13の内周面を耐火被覆材23で被覆する。
【0033】
このように耐火被覆材23は、粘着部35が開口部13の内周面に貼りつくように配置されるため、開口部13の内周面に耐火被覆材23を容易に施すことができる。また、開口部13の内周面に耐火被覆材23を被覆させることで、耐火被覆材23は、開口部13に対向して配置することができる。
【0034】
図7を参照すると、開口部13の斜視図が示されている。耐火工程S2のあと、被覆シート25で耐火被覆材23を被覆する(被覆工程S5)。具体的には、被覆部25bによって耐火被覆材23の下面23b及び両側面23cを覆う。その後、スリット部25aを補強部材21の側面(鉄骨材の表面)21bに位置させる。なお、スリット部25aを補強部材21の側面21bに例えば両面テープを用いて仮止めしてもよい。
【0035】
これにより、被覆シート25は、耐火被覆材23を覆うことで、耐火被覆材23を開口部13に向かって押圧するようにしつつ支持することができる。また、被覆シート25は、スリット部25aが形成されることにより、被覆シート25にしわ等が生じることを抑制しつつ好適に、開口部13に被覆シート25を設けることができる。
【0036】
さらに、配設工程S4のあと、固定ピン5aによって耐火マット5をウェブ11に固定する(固定工程S5)。具体的には、被覆シート25におけるスリット部25aの一片Pに対応する位置に固定ピン5aを差し込み、該固定ピン5aの先端をウェブ11に溶着させる。これにより、耐火マット5をウェブ11に固定するのと同時に被覆シート25をウェブ11に固定することができる。
【0037】
このようにして耐火被覆施工をしたあと、開口部13内に配置された筒状の耐火被覆材23の中に構造物の配管や電線等を設置する。したがって、耐火被覆材23を用いて開口部13の耐火被覆施工を施したことで、開口部13の有効に活用可能な範囲を広く保つことや、開口部13の耐火性を向上させることができた。
【0038】
次に、本実施形態に係る別実施例について説明する。
図8を参照すると、別実施例に係る、図2中I-I断面の断面図が示されている。第1実施形態の前記実施例と比較すると、耐火被覆材23が耐火マット5によって短手方向で挟まれるようにして配設されている点で相違する。このように、耐火マット5によって短手方向で挟まれるように耐火被覆材23を配設した場合であっても、耐火マット5と耐火被覆材23との間に隙間が生じることを被覆シート25によって抑制することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係るさらなる別実施例について説明する。
図9を参照すると、さらなる別実施例に係る、図2中I-I断面の断面図が示されている。第1実施形態の前記実施例と比較すると、耐火被覆材23に代えて耐火マット5を開口部13の内周縁に位置させて耐火断熱部を形成している点で相違する。このように、耐火マット5によって耐火断熱部を形成した場合であっても、耐火マット5間の接合部分、すなわち耐火マット5と耐火断熱部との間に隙間が生じることを被覆シート25によって抑制することができる。
【0040】
以上説明したように、第1実施形態に係る耐火被覆方法では、開口部13が形成された鉄骨梁1の耐火被覆方法であって、開口部13が形成された鉄骨梁1と、開口部13の近傍である側面21bを高温から保護する耐火マット5と、耐火性を有する被覆シート25と、を準備する準備工程S1と、鉄骨梁1に耐火マット5を配設する配設工程S3と、鉄骨梁1に形成された開口部13の内周縁に対向する位置を高温から保護する耐火被覆材23を形成する耐火工程S4と、耐火被覆材23及び開口部13の近傍に位置する耐火マット5を被覆シート25で被覆する被覆工程S5と、を備え、被覆工程S5は、少なくとも配設工程S3及び耐火工程S4を実施し終えてから実施する。
【0041】
従って、鉄骨梁1に形成された開口部13の内周縁に対向する位置を高温から保護する耐火被覆材23を形成する耐火工程S4と、鉄骨梁1に耐火マット5を配設する配設工程S3とを実施し終えてから、耐火被覆材23及び開口部13の近傍に位置する耐火マット5を被覆シート25で被覆する被覆工程S5を実施したので、耐火被覆材23と耐火マット5とが乖離することを被覆シート25によって抑制することができる。
【0042】
そして、準備工程S1では、鉄骨梁1の開口部13近傍を高温から保護する耐火被覆材23を準備し、耐火工程S4では、鉄骨梁1に形成された開口部13の内周縁に対向する位置に耐火被覆材23を配設したので、耐火断熱部の形成に係る作業を容易にすることができる。
【0043】
また、第1実施形態に係る鉄骨梁では、開口部13が形成された鉄骨梁1と、鉄骨梁1の少なくとも開口部13の近傍側面21bを高温から保護する耐火マット5と、開口部13の内周縁に対向して形成される耐火被覆材23と、耐火性を有する被覆シート25と、を備え、被覆シート25は、耐火被覆材23及び開口部13の近傍側面21bに位置する耐火マット5を被覆してなる。
【0044】
従って、耐火マット5によって鉄骨梁1の開口部13の近傍表面を高温から保護し、鉄骨梁1に形成された開口部13の内周縁に対向するよう耐火被覆材23を形成し、耐火被覆材23を被覆シート25で被覆したので、鉄骨梁1の耐火性を耐火被覆材23及び耐火マット5によって向上させつつ、耐火被覆材23と耐火マット5との間に隙間が生じることを被覆シート25によって抑制することができる。
【0045】
そして、耐火断熱部として、鉄骨梁1の開口部13近傍を高温から保護する耐火被覆材23を用いたので、鉄骨梁1の耐火性を向上させることができる。
そして、被覆材として、シート状の耐火部材である被覆シート25を用いたので、耐火被覆材23と耐火マット5との接続部分の耐火性を高めることができる。
【0046】
さらに、被覆シート25には、短手方向に延びるスリットを有するスリット部25aが形成されたので、耐火被覆材23を被覆シート25で被覆する際に被覆シート25にしわが生じることを抑制することができる。
【0047】
以上で本発明に係る耐火被覆方法及び鉄骨梁の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、図6のフローを用いて耐火被覆施工(耐火被覆方法)を説明したが、同フローの順番は一例であり、本発明を実施可能な程度に順番を入れ替えるようにしてもよく、特に、配設工程S3と耐火工程S4を実施する順番は適宜入れ替えるようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、設置工程S2のあとで配設工程S3以降の工程を実施したが、設置工程S2によって鉄骨梁1を柱2に設置する前に配設工程S3~固定工程S6の工程を鉄骨梁1の生産工場で実施してから構造物の建築現場にて設置工程S2を実施するようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、補強部材21を開口部13近傍に設けるようにしたが、補強部材21を設けなくてもよく、ウェブ11の開口部13及び補強部材21の開口21aの内周縁に嵌合及び溶接される筒状の部材を設けて、開口部13をさらに補強するようにしてもよい。
また、本実施形態では、アルカリアースシリケートウールやガラス繊維を含む被覆シート25を用いているが、セラミックファイバーや耐火マット5と同じ材質の部材を使用してもよい。
【0050】
また、本実施形態では、耐火被覆材23は、アルカリアースシリケートウールを複数積層してなる耐火断熱部31を用いているが、本発明は積層されていない耐火断熱部でもよく、例えば熱膨張性耐火ゴムシート等の耐火被覆材を使用してもよい。
また、本実施形態では、粘着部35は帯状に形成されているが、本発明は、複数の粘着部を点在させてもよく、細いライン状の粘着部を平行に複数形成させてもよい。これによって、粘着部35の面積は少なくなり、コストを軽減することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 鉄骨梁(鉄骨材)
2 柱(所定の構造物)
5 耐火マット(表面耐火被覆材)
5a 固定ピン(固定部材)
13 開口部
21b 側面(鉄骨材の表面)
23 耐火被覆材(耐火断熱部、開口耐火被覆材)
25 被覆シート(被覆部材)
25a スリット部(スリット)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9