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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】寝具
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
A47C27/15 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021190034
(22)【出願日】2021-11-24
【審査請求日】2021-12-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521174185
【氏名又は名称】伊藤建友株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093115
【弁理士】
【氏名又は名称】佐渡 昇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佐喜男
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0134437(US,A1)
【文献】国際公開第2016/022886(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/15
A47C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の横臥時に使用者の肩が入る凹部を有する寝具であって、
使用者の仰向け時および横臥時に使用者の頭部を下方から支持し得る頭載せ部(13)と、
この頭載せ部(13)から使用者の首方向に向かって延び、使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部(11)とを有し、
この首支持部(11)の左右両側に、使用者の横臥時に使用者の肩が入る肩逃がし凹部(12)をそれぞれ有し、
使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部(11)と、この首支持部(11)の左右にそれぞれ連なり左右の肩周辺部を下方から支持する肩支持部(16)とが、いずれも、上下方向に関しチップウレタン層(10c)と、このチップウレタン層(10c)の上側と下側とに配置される高反発ウレタン層(10u)とを有する複層構造となっており、かつ、
前記肩逃がし凹部(12)の底部が高反発ウレタン層(10u)で構成されていることを特徴とする寝具。
【請求項2】
請求項1において、
前記肩逃がし凹部(12)の首支持部(11)側の端部(12c)は、平面視で、首支持部(11)側が凸となる湾曲状となっていることを特徴とする寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具に関するものである。特に、寝返り時や横臥時に、肩に対する圧迫を軽減することのできる寝具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に見られるように、
「肩の疾患問題の解消、予防、安眠を目的」とし、「マットレスと枕5を一体にした枕一体マットレスは、両肩にあたる位置に空洞凹部2を設け、肩を下にして寝る際の肩への圧迫を解消する」枕一体プロテクトショルダーマットレスが知られている(同文献要約欄等)。
【0003】
しかし、この枕一体プロテクトショルダーマットレスは、空洞凹部2が左右方向全長に亘って設けられているので、仰向けになった時に首を支える部位がない。
そのため、仰向け時に首に大きな負担がかかってしまうという難点がある。
【0004】
なお、同様な構造及び難点を有する寝具は、特許文献2、3にも開示されている。
【0005】
これに対し、例えば特許文献4には、空洞凹部に低反発材を組み込んだ横寝睡眠専用体形順応枕が開示されている。
しかしこのものは、左右方向全長に亘る空洞凹部に同じく全長に亘って低反発材が組み込まれているので、寝返り時や横臥時に肩を支持する部位と、仰向け時に首を支える部位とが同じ柔軟性を有することになる。
そのため、寝返り時や横臥時に肩に対する圧迫を十分に軽減することができないし、仰向け時に首にかかる負担も軽減できないという難点を有する。
【0006】
なお、特許文献5には、
「就寝時に使用する寝具であって、
使用者の頭部を支持しクッション性を有し可撓変形可能な枕部と、
使用者の身体部を支持しクッション性を有し可撓変形可能な本体シート部と、
前記枕部と前記本体シート部とを繋ぐ薄肉シート材からなる連結部と、
前記本体シート部の左右両側部に沿って一体的に配置され、当該本体シート部よりも厚みが大きくクッション性を有し可撓変形可能な棒状をなす一対のウォール部とを備え、
前記本体シート部の幅寸法は、前記使用者の身体部の幅寸法の略半幅に対応させており、
前記枕部の左右両側端部を、前記連結部の左右両側端よりも外側に延在させるとともに、当該枕部の左右両側端部と前記ウォール部との間に、前記連結部が存在しないスペースを形成し、
前記連結部は、使用者の肩から上腕部を何れか一方の前記スペースに向けて通過させ得る大きさに構成していることを特徴とする横臥寝姿勢サポート寝具」
が記載されている(同文献請求項1)。
【0007】
しかしこの横臥寝姿勢サポート寝具の枕部と本体シート部とを繋ぐ連結部3は薄肉シート材からなるので、この薄肉シートでは、仰向けになった時に首を有効に支えることができない。
そのため、仰向け時に首に大きな負担がかかってしまうという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実用新案登録第3207242号公報
【文献】特開2000-253957号公報
【文献】実用新案登録第3164566号公報
【文献】実用新案登録第3168726号公報
【文献】特許第6089239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、寝返り時や横臥時に、肩に対する圧迫を軽減することのできるとともに、仰向け時に首に大きな負担がかからないようにすることができる寝具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の寝具は、
使用者の横臥時に使用者の肩が入る凹部を有する寝具であって、
使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部を有し、この首支持部の左右両側に、使用者の横臥時に使用者の肩が入る肩逃がし凹部をそれぞれ有することを特徴とす。
【0011】
この寝具は、上記の構成となっているので、次のような作用効果が得られる。
【0012】
使用者はこの寝具の上に寝る際、仰向けに寝るときには、首支持部の上に首を載せるようにして寝ることができる。すると、首支持部が使用者の首を下方から支えるので、首に大きな負担がかからない。
また、寝返り時や横臥時には、首支持部の左側または右側にある肩逃がし凹部に肩を入れるようにして寝返りし又は横臥することができる。これにより、寝返り時や横臥時における肩に対する圧迫を軽減することのできる。
【0013】
以上のように、この寝具によれば、寝返り時や横臥時に、肩に対する圧迫を軽減することのできるとともに、仰向け時に首に大きな負担がかからないようにすることができる。
【0014】
この寝具においては、
使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部と、この首支持部の左右にそれぞれ連なり左右の肩周辺部を下方から支持する肩支持部とが、いずれも、上下方向に関しチップウレタン層と、このチップウレタン層の上側と下側とに配置される高反発ウレタン層とを有する複層構造となっている構成とすることができる。
【0015】
このように構成すると、使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部と、この首支持部の左右にそれぞれ連なり左右の肩周辺部を下方から支持する肩支持部とにおいて、上記複層構造のチップウレタン層によって、使用者の体重がかかることによるいわゆるへたれ(弾性変形後の復元性の低下)を抑制できると共に、チップウレタン層の上側と下側とに配置された高反発ウレタン層によって適度の弾性を得ることが可能となる。
【0016】
この寝具においては、
前記肩逃がし凹部の首支持部側の端部は、平面視で、首支持部側が凸となる湾曲状となっている構成とすることができる。
【0017】
このように構成すると、寝返り時や横臥時に、肩逃がし凹部に肩を入れやすくなるとともに、仰向け時には使用者の首を首支持部で下方から良好に支持しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る寝具の実施の形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は図(a)におけるc-c断面図。
図2】(a)(b)は同実施の形態の使用例を示す図、(c)は作用説明図。
図3】他の実施の形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図。
図4】(a)(b)は更なる他の実施の形態の使用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る寝具の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0020】
図1に示すように、この実施の形態の寝具10は、
使用者(図示せず)の横臥時に使用者の肩が入る凹部を有する寝具であって、
使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部11を有し、この首支持部11の左右両側に、使用者の横臥時に使用者の肩が入る肩逃がし凹部12(L,R)を有している。なお、13は使用者の頭部を下方から支持し得る頭載せ部である。
【0021】
この寝具10は、上記の構成となっているので、次のような作用効果が得られる。
【0022】
使用者はこの寝具10の上に寝る際、仰向けに寝るときには、首支持部11の上に首を載せるようにして寝ることができる。すると、首支持部11が使用者の首を下方から支えるので、首に大きな負担がかからない。
【0023】
また、寝返り時や横臥時には、首支持部11の左側または右側にある肩逃がし凹部12(LまたはR)に肩を入れるようにして寝返りし又は横臥することができる。これにより、寝返り時や横臥時における肩に対する圧迫を軽減することのできる。特にスポーツ選手に効果的である。
【0024】
以上のように、この寝具10によれば、寝返り時や横臥時に、肩に対する圧迫を軽減することのできるとともに、仰向け時に首に大きな負担がかからないようにすることができる。
【0025】
使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部11と、この首支持部11の左右にそれぞれ連なり左右の肩周辺部を下方から支持する肩支持部16(L,R)とは、いずれも、上下方向に関しチップウレタン層10cと、このチップウレタン層10cの上側と下側とに配置される高反発ウレタン層10uとを有する複層構造となっている(図1(c)参照)。
【0026】
このように構成すると、使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部11と、この首支持部11の左右にそれぞれ連なり左右の肩周辺部を下方から支持する肩支持部16とにおいて、上記複層構造のチップウレタン層10cによって、使用者の体重がかかることによるいわゆるへたれ(弾性変形後の復元性の低下)を抑制できると共に、チップウレタン層10cの上側と下側とに配置された高反発ウレタン層10uによって適度の弾性を得ることが可能となる。
【0027】
例えば、前述した特許文献1のものの場合、本実施の形態の寝具10とは異なり、首支持部を有していないことに加え、マットレスの各部位はそれぞれ同じ硬さの硬質ウレタンなどの材質(1)からなっている(同文献0010段落)。
このため、使用者の体重がかかる部位、特に左右の肩周辺部を下方から支持する部位において、使用者の体重がかかることによるいわゆる「へたれ」が生じやすいという難点を有している。
【0028】
これに対し、この実施の形態の寝具10によれば、使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部11を有していると共に上述の構成となっていることにより、使用者の体重がかかることによるいわゆるへたれを抑制できると共に、チップウレタン層10cの上側と下側とに配置された高反発ウレタン層10uによって適度の弾性を得ることが可能となる。
【0029】
肩逃がし凹部12(L,R)の首支持部11側の端部12cは、平面視で、首支持部11側が凸となる湾曲状となっている。
【0030】
このように構成すると、寝返り時や横臥時に、肩逃がし凹部12(L,R)に肩を入れやすくなるとともに、仰向け時には使用者の首を首支持部11で下方から良好に支持しやすくなる。首支持部11の前後部分11cが湾曲状に幅広となっているからである。
【0031】
この実施の形態の寝具10は、全体としては、高反発ウレタンで構成することができる。
前述した首支持部11と肩支持部16とにチップウレタン層(チップウレタンブロック)10cを組み込むことで、上述した複層構造を構成している。
【0032】
高反発ウレタンは、高弾性ウレタンともよばれる公知の材料であり、弾性が高いため、体重・体圧がかかると反発して体を押し返す性質を有している素材である。
【0033】
チップウレタンは、 スポンジ端材を粉砕し接着剤をブレンドして型に入れ、蒸気で押し固めた公知の素材であり、圧縮してあるので普通のウレタンに比べて「へたり」に強い性質を有する素材である。
【0034】
寝具10の大きさ、形状は適宜設定することができる。
図1に示すものは、マットレスタイプのものであり、例えば、長さL1=1960mm程度、左右の幅W1=1000mm程度、厚さT1=120mm程度としてある。
また、首支持部11の最小部の幅W3は180mm程度とし、頭載せ部13の長さL3は300mm程度とする。肩逃がし凹部12の長さL2は180mm程度とし、深さT2は90mm程度とする。
【0035】
チップウレタン層10cは、例えば、幅W2=W1=1000mm程度、長さL4=380mm程度、厚さT3=70mm程度とする。
チップウレタン層10cの上側の高反発ウレタン層10uの厚さT4は20mm程度、下側の高反発ウレタン層10uの厚さT5は30mm程度とする。
【0036】
この実施の形態の寝具10は、長手方向約半分の位置で、ジョイント部14を介して分割可能に構成されている。
【0037】
このように構成すると、寝具10を長手方向で分割することで、搬送しやすくなる。
【0038】
ジョイント部14の構造は適宜の構造を採用でき、例えば、図1に示した相欠き継ぎの他図3に示すような蟻型の構造とすることもできる。
図1または図3のジョイント構造とすると、長手方向に外れる事もなく上からの圧力も良好に受けることができる。
【0039】
この実施の形態の寝具10は、頭載せ部13の上に、使用者の好みに応じた枕を載せて使用することができる。
【0040】
図2は本件発明者が提案する枕を示している。
この枕20は、適宜の材料、例えば低反発ウレタンで構成することができる。
低反発ウレタンは低反発弾性ウレタンともよばれ、弾性が低く粘性が高くなるよう加工された素材であり、弾性が低いため押し返す力が弱く、体重・体圧がかかると反発せずにそのまま沈む性質を有している。
【0041】
この枕20の特徴は、図2(b)(c)に示すように、この枕20を頭載せ部13の上に設置した際、使用者の首部を支える左右方向に伸びる首支持部21が、肩逃がし凹部12上に突出する点にある。
【0042】
このように構成すると、横臥時に、肩逃がし凹部12内への肩の収まりが良くなると同時に使用者の首を良好に支持することができる。
【0043】
枕20と頭載せ部13との接合は、公知の適宜の構造、例えば、面テープによる接合、縫着、接着等を採用することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
例えば、
【0045】
図4に示すように、肩逃がし凹部12の底面12bには、低反発ウレタンからなる平面視が肩逃がし凹部12と同形の板状体15を設けてもよい。このように構成すると、横臥時に肩に作用する負荷を低減させることができる。板状体15の厚さは適宜設定でき、例えば30mm程度とする。この構造は、前述した特許文献4のものとは異なり、肩逃がし凹部12の底面12bにのみ板状体15が設けられ、その上方には凹部が確保されているので、横臥時に肩に作用する負荷を低減させることができる。
【0046】
図4に示すように寝具10の厚さは、足先方向に向かって肉薄となる形状とすることができる。
【0047】
図3に示すように、チップウレタン層10cは必ずしも設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10: 寝具
10c: チップウレタン層
10u: 高反発ウレタン層
11: 首支持部
12: 肩逃がし凹部
12c: 首支持部側の端部
16: 肩支持部
【要約】
【課題】寝返り時や横臥時に、肩に対する圧迫を軽減することのできるとともに、仰向け時に首に大きな負担がかからないようにすることができる寝具を提供する。
【解決手段】使用者の横臥時に使用者の肩が入る凹部を有する寝具であって、使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部11を有し、首支持部11の左右両側に、使用者の横臥時に使用者の肩が入る肩逃がし凹部12をそれぞれ有する。使用者の仰向け時に使用者の首を下方から支える首支持部11と、首支持部11の左右にそれぞれ連なり左右の肩周辺部を下方から支持する肩支持部16とが、いずれも、上下方向に関しチップウレタン層10cと、チップウレタン層10cの上側と下側とに配置される高反発ウレタン層10uとを有する複層構造となっている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4