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特許7197958廃棄布製品処理方法及び廃棄布製品処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】廃棄布製品処理方法及び廃棄布製品処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20221221BHJP
   C10B 47/38 20060101ALI20221221BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20221221BHJP
   C10L 5/48 20060101ALI20221221BHJP
   C01B 32/324 20170101ALI20221221BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20221221BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
C10B47/38
C10B53/00 A
C10L5/48
C01B32/324
B09B101:85
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022542236
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2022019150
【審査請求日】2022-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397029873
【氏名又は名称】株式会社大木工藝
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大木 武彦
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-279950(JP,A)
【文献】特開2006-016699(JP,A)
【文献】特開2010-285467(JP,A)
【文献】特開2006-219597(JP,A)
【文献】特開2010-095611(JP,A)
【文献】特開2011-111480(JP,A)
【文献】特開2004-231783(JP,A)
【文献】特開2011-225815(JP,A)
【文献】国際公開第2020/070816(WO,A1)
【文献】特開2005-139313(JP,A)
【文献】特開2010-264391(JP,A)
【文献】特開2016-172652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
C10B 1/00-57/18
C10L 5/48
C01B 32/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ、包装袋等の付属品が付いたままで且つ、合成繊維、天然繊維等性状の異なる複数の前記廃棄布製品を還元炉の加熱室に投入する廃棄布製品投入工程と、
500℃~1000℃の間で温度調整される前記加熱室において、熱分解時に発生するガスを前記廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出するガス抜き工程を行いながら、炭化処理して炭化物を得る炭化工程と、を備え、
前記ガス抜き工程では、前記還元炉を揺動もしくは振動させてガス抜きを行うことを特徴とする廃棄布製品処理方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記廃棄布製品は、衣料品であり、
前記廃棄布製品投入工程では、前記衣服を断裁することなく前記還元炉に投入し、前記炭化工程は、バッチ式で行われることを特徴とする廃棄布製品処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記廃棄布製品投入工程において、前記還元炉に投入される複数の前記廃棄布製品のうち、2割以上を毛、綿、絹、麻、レーヨン等の天然繊維を含んで構成された製品とすることを特徴とする廃棄布製品処理方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記炭化処理された炭化物を所定の粒度に粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程において、前記炭化物を10~50μmに粉砕して得た炭化粉に、糖類を含むバインダーを混合するバインダー混合工程と、
前記混合工程において、混合された混合物を圧縮して成形し固形燃料炭を得る圧縮工程とを備える廃棄布製品処理方法。
【請求項5】
請求項3において、
前記炭化処理された炭化物を所定の粒度に粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程において、前記炭化物を10~50μmに粉砕して得た炭化粉に、糖類を含むバインダーを混合するバインダー混合工程と、
前記混合工程において、混合された混合物を圧縮して成形し固形燃料炭を得る圧縮工程とを備える廃棄布製品処理方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記炭化処理された炭化物を所定の粒度に粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程において、前記炭化物を10~50μm以下に粉砕して得た炭化粉を賦活処理し活性炭を得る賦活工程を備える廃棄布製品処理方法。
【請求項7】
請求項3において、
前記炭化処理された炭化物を所定の粒度に粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程において、前記炭化物を10~50μm以下に粉砕して得た炭化粉を賦活処理し活性炭を得る賦活工程を備える廃棄布製品処理方法。
【請求項8】
金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ等の付属品が付いたままで且つ、合成繊維、天然繊維等性状の異なる複数の前記廃棄布製品が投入される投入口と、
無酸素もしくは低酸素状態で前記廃棄布製品を炭化する還元炉と、前記還元炉の加熱室内を加熱する燃焼室と、前記加熱室内を500℃~1000℃の間で温度調整する温度制御部と、熱分解時に前記廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出されるガスを二次燃焼室へ誘導するガス流通部とを備え、
前記還元炉は、前記炭化処理された炭化物もしくは賦活処理された活性炭を取り出す取出口を備え、
前記加熱室は、揺動自在に構成されるとともに、前記取出口へ向けて前記炭化物が自重により次第に移動する傾斜面を備えていることを特徴とする廃棄布製品処理装置。
【請求項9】
金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ等の付属品が付いたままで且つ、合成繊維、天然繊維等性状の異なる複数の前記廃棄布製品が投入される投入口と、
無酸素もしくは低酸素状態で前記廃棄布製品を炭化する還元炉と、前記還元炉の加熱室内を加熱する燃焼室と、前記加熱室内を500℃~1000℃の間で温度調整する温度制御部と、熱分解時に前記廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出されるガスを二次燃焼室へ誘導するガス流通部とを備え、
前記ガスが抜ける隙間を有して前記複数の布廃棄製品が混載され、前記ガスが通気する通気部を備えた金属製の網状かごと、該網状かごが載置される載置部と、該載置部を振動させる振動手段とを備え、
前記加熱室は、前記載置部の上に段積みされた複数の前記網状かごが収容される空間を有していることを特徴とする廃棄布製品処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄される衣料品、タオル、寝具等の布製品をまとめて炭化処理してリサイクルする廃棄布製品処理方法及び廃棄布製品処理装置に関する。
【0002】
近年、地球環境を配慮したサステナブルな社会を実現する動きが求められる中、流行のサイクルが短いファストファッションの流行や流行の細分化に伴い、衣料製品の種類が増え、大量に売れ残った衣料品の廃棄が社会的な問題として注目されている。このような布製品は、再販売されるものもあるが、ほとんどのものが焼却されたり、屋外にそのまま投棄されたり、地中に埋められる。しかしながら、化学繊維が多く用いられた布製品からはプラスチックと同様に有害物質を出すため、屋外投棄や埋められると大気汚染や土壌汚染、地下水の汚染等、様々な問題を引き起こす要因となる。そこで、焼却する場合程の大量の燃料を必要とせず、二酸化炭素の排出量も低減できる炭化処理が注目されている。
【0003】
下記特許文献1には、有機廃棄物を炭化して炭化物を得るとともに、炭化の際に排出される可燃性ガスを有効利用することにより、マテリアルリサイクルとエネルギーリサイクルとの両方が可能な還元炉リサイクルシステムが開示されている。
下記特許文献2には、木綿、麻、ウール、化学繊維等からなる衣服廃材や廃棄された弁当等の食品残渣、木片や木皮等の等の木質系廃棄物、有機物の汚泥、プラスチック系廃棄 物等の有機廃棄物を炭化処理して活性炭等の炭材料としてリサイクルするとともに、その炭化処理工程において発生する排ガスからの熱を電気エネルギーとしてリサイクルする還元炉リサイクルシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-253277号公報
【文献】特開2010-285467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のものは、炭化処理の前段階において、有機廃棄物に応じて選別、脱水、乾燥等の前処理を要するため、手間を要する。例えば有機廃棄物の中にプラスチックが含まれている場合、塩ビなどの塩素含有のものや、熱硬化性、熱可塑性など様々な性質があり、熱分解時に発生するガスを排気しながら炭化処理を行わなくては、ガス爆発や火災につながるおそれがあり、技術を要する。またPP、PE、PS等は200℃の熱で溶解し300℃で油化してしまい、それ以上温度を上げても炭化物は1%程度である。
【0006】
特許文献2に開示のものは、炭化処理するものに含水率が高い食品残渣が含まれている。特許文献2には、含水率が少なくかつ吸水量が大きい衣服等と混同すると記載されているが、現実的には含水率のコントロールが難しいことが予想され、食品残渣の乾燥工程が必要となろう。また炭化処理するものに、食品残渣が含まれると、食品残渣は春夏秋冬により含まれる物質が異なる上、地域に根付く食文化の違いもあるため、選別せずに炭化処理することは非常に難しい。またプラスチック、木質材、衣料品、食品それぞれに炭化温度が異なり、含水率を同じにしても、炭化できるものや炭化できないものがある上、有害物質になる恐れもある。
【0007】
廃棄物の処理の策の一つに、食品残渣を含む家庭ゴミなどを親指大に圧縮して乾燥させゴミ固形燃料(RDF:Refuse Derived Fuel)とし、工場等の燃料とする取り組みもなされている。しかし、この場合は、RDFの原料性状が、塩素や重金属など不純物が含まれるうえ、生ゴミ等を含むと混入する水分が多いのため、品質が安定しないという課題がある。このRDFを炭化して肥料とする策もあったが、ダイオキシン発生や炭化しても塩分が残るため、肥料としての使用が困難である。実際にRDFの製造工場において、出来上がったRDFを貯蔵するサイロで発熱・発火・ガス爆発の事故が各地で生じており、廃棄物のリサイクルの難しさを示している。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、廃棄される衣料品やタオル等の布製品からリサイクル可能な炭化物が得る廃棄布製品処理方法及び廃棄布製品処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る廃棄布製品処理方法は、金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ、包装袋等の付属品が付いたままで且つ、合成繊維、天然繊維等性状の異なる複数の前記廃棄布製品を還元炉の加熱室に投入する廃棄布製品投入工程と、500℃~1000℃の間で温度調整される前記加熱室において、熱分解時に前記廃棄布製品から発生するガスを前記廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じてガス抜きを行いながら、炭化処理して炭化物を得る炭化工程と、を備え、前記ガス抜き工程では、前記還元炉を揺動もしくは振動させてガス抜きを行うことを特徴とする。
【0010】
上記処理方法によれば、事前に布製品に付いている金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ、包装袋等の付属品を取り外したり、合成繊維、天然繊維等性状ごとに仕分けすることなく、ガス抜きを効率よく行うことで良質で均一な炭化物を得ることができる。
【0011】
上記構成において、前記廃棄布製品は、衣料品であり、前記廃棄布製品投入工程では、前記衣服を断裁することなく前記還元炉に投入し、前記炭化工程は、バッチ式で行われるようにしてもよい。
また上記構成において、前記廃棄布製品投入工程において、前記還元炉に投入される複数の前記廃棄布製品のうち、2割以上を毛、綿、絹、麻、レーヨン等の天然繊維を含んで構成された製品としてもよい。
さらに上記構成において、前記粉砕工程において、前記炭化物を粒度10~50μm以下に粉砕して得た微細炭化粉を賦活処理し活性炭を得る賦活工程を備えてもよい。
また上記構成において、前記炭化処理された炭化物を所定の粒度に粉砕する粉砕工程をさらに備えてもよい。
この場合、前記粉砕工程において、前記炭化物を粒度10~50μm以下に粉砕して得た微細炭化粉を賦活処理し活性炭を得る賦活工程を備えてもよい。
またこの場合、前記粉砕工程において、前記炭化物を粒度10~50μmに粉砕して得た炭化粉に、糖類を含むバインダーを混合する混合工程と、前記混合工程において、混合された混合物を圧縮して成形し固形燃料炭を得る圧縮化工程とを備えてもよい。
【0012】
また上記目的を達成するために、本発明に係る廃棄布製品処理装置は、金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ等の付属品が付いたままで且つ、合成繊維、天然繊維等性状の異なる複数の前記廃棄布製品が投入される投入口と、無酸素もしくは低酸素状態で前記廃棄布製品を炭化する還元炉と、前記還元炉の加熱室内を加熱する燃焼室と、前記加熱室内を500℃~1000℃の間で温度調整する温度制御部と、熱分解時に前記廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出されるガスを二次燃焼室へ誘導するガス流通部とを備え、前記還元炉は、前記炭化処理された炭化物もしくは賦活処理された活性炭を取り出す取出口を備え、前記加熱室は、揺動自在に構成されるとともに、前記取出口へ向けて前記炭化物が自重により次第に移動する傾斜面を備えていることを特徴とする。
また上記目的を達成するために、本発明に係る他の廃棄布製品処理装置は、金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ等の付属品が付いたままで且つ、合成繊維、天然繊維等性状の異なる複数の前記廃棄布製品が投入される投入口と、無酸素もしくは低酸素状態で前記廃棄布製品を炭化する還元炉と、前記還元炉の加熱室内を加熱する燃焼室と、前記加熱室内を500℃~1000℃の間で温度調整する温度制御部と、熱分解時に前記廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出されるガスを二次燃焼室へ誘導するガス流通部とを備え、前記ガスが抜ける隙間を有して前記複数の布廃棄製品が混載され、前記ガスが通気する通気部を備えた金属製の網状かごと、該網状かごが載置される載置部と、該載置部を振動させる振動手段とを備え、前記加熱室は、前記載置部の上に段積みされた複数の前記網状かごが収容される空間を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の廃棄布製品処理方法及び廃棄布製品処理装置によれば、上述した構成とされているため、廃棄される衣料品やタオル等の布製品からリサイクル可能な炭化物が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る廃棄布製品処理方法の一例を示すフローチャートである。
図2図1に示すフローチャートの工程を実際の写真を交えて示すフローチャートである。
図3】廃棄布製品を炭化する前(S200)の写真を拡大して示したものである。
図4】(a)は同廃棄布製品処理方法によって得た炭化物(図2・S201)の写真を拡大して示したもの、(b)は同様にして得た炭化物の一部をさらに拡大して示した写真である。
図5】(a)は第1実施形態に係る廃棄布製品処理装置の外観模式図、(b)は廃棄布製品処理装置で用いられる網状かごの一例を模式的に示した斜視図である。
図6】同廃棄布製品処理装置の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
図7】(a)及び(b)は評価試験を行った際の写真であり、(a)は廃棄布製品を炭化する前の写真、(b)は同廃棄布製品処理方法によって得た炭化物の写真である。
図8】同評価試験を行った際の加熱室及び燃焼室の温度状況を示すグラフである。
図9】同廃棄布製品処理方法によって得た炭化物を水蒸気賦活し、そこで得た活性炭の比表面積を測定したグラフである。
図10】(a)は同廃棄布製品処理方法によって得た活性炭の電子顕微鏡写真であり、(b)及び(c)は活性炭の成分分析結果を表にしたものである。
図11】同実施形態に係る廃棄布製品処理装置とその周辺装置の異なる例を示す外観模式図である。
図12】(a)同廃棄布製品処理方法を行う際に用いられる第2実施形態に係る廃棄布製品処理装置を示す外観模式図、(b)は(a)のX-X線断面図である。
図13】(a)は振動篩機により、選り分け処理を行って得た廃棄布製品の付属品の写真、(b)は図12に示す第2実施形態に係る廃棄布製品処理装置に振動篩機を設置した例を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態に係る廃棄布製品処理方法は、金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ、包装袋等の付属品が付いたままで且つ、合成繊維、天然繊維等性状の異なる複数の前記廃棄布製品を還元炉10の加熱室に投入する廃棄布製品投入工程と、500℃~1000℃の間で温度調整される前記加熱室11において、熱分解時に前記廃棄布製品から発生するガスを前記廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じてガス抜きを行いながら、炭化処理して炭化物を得る炭化工程と、を備える。以下、詳しく説明する。
<第1実施形態>
【0017】
図1図6を参照しながら、第1実施形態に係る廃棄布製品処理方法、廃棄布製品処理装置について説明する。
第1実施形態に係る廃棄布製品処理方法等は、新品、中古品等、廃棄される布製の衣服、タオル、寝具、おもちゃ等をまとめて炭化処理し、炭化物を得て、該炭化物を燃料炭や活性炭等にしてリサイクルするものである。炭化物の原料となる廃棄布製品は、天然繊維でも合成繊維でも布製品であればよく、布が使用され、含水率が30%以下のものであれば、ダウン、毛皮、革が使用されていてもよく、素材としては、それらの素材も合成素材、天然素材を問わない。含水率が30%を超えると、乾燥工程が必要になり、コストと時間、手間がかかる。また炭化処理するに際し、廃棄布製品に付属する付属品を事前に排除する必要はない。ここでいう付属品としては、ボタン、チャック、袖口のゴム、衣服の飾り(リボン、ホログラム、ラインストーン、パール等)、商品タグ、包装袋等が挙げられ、素材は、金属製、プラスチック製、ガラス製、陶製、石製、紙製、木製等のあらゆる各種材料を含んでいてもよく、布製品の表面にプリント等印刷されているものでもよい。また廃棄布製品は、2メートルを超える長尺なものでなければ、衣服、タオル、クッション、クッションカバー、座布団等、事前に断裁する必要はない。一方、カーテン、カーペット、毛布、ふとん、ふとんカバー等、大型の布製品や2メートル近いサイズのものは、取り扱いしやすく、網状かご2や還元炉10に投入やすいように断裁してもよいし、折り畳んで投入してもよい。以下では、廃棄布製品として、衣料品を炭化処理する例を説明する。また以下では、図5に示す廃棄布製品処理装置1を使ってバッチ式(まとめて同時に処理する方式)にて炭化処理する例を説明する。
【0018】
図1及び図2は、第1実施形態に係る廃棄布製品処理方法の一例を示すフローチャートである。図5(a)は第1実施形態に係る廃棄布製品処理装置1とその周辺装置の外観模式図である。図5(b)は同廃棄布製品処理装置1で用いられる網状かご2の一例を模式的に示した斜視図である。図6は同廃棄布製品処理装置1の内部構造を模式的に示す概略断面図である。
【0019】
<廃棄布製品投入工程>
まずは、廃棄布製品投入工程(S100)を行う。廃棄布製品を1辺が1m~2m程度の立方体形状で金属製の網状かご2(図5(a)及び図5(b)参照)に収容する。網状かご2に廃棄布製品を収容したら、複数の網状かご2を台車15に乗せ、廃棄布製品処理装置1を還元炉10の密閉扉16を開け、密閉扉16から搬入する。なお、網状かご2の大きさは後記する還元炉10の規模に応じて設定され、上記サイズに限定されるものではない。
【0020】
図5(b)に示すように網状かご2は、立方体形状からなり、6面すべてに炭化工程(S101)で発生するガスを排気する通気部2aを備える。図例のものは、通気部2aが、格子状に配して構成された線状の鉄材21で構成されている。網状かご2の上方は、廃棄布製品が投入できるよう開閉自在に構成されているが、網状かご2の構成によっては、上面がなくてもよい。ここでは網状かご2に廃棄布製品を投入し炭化する例を説明するが、図5(b)に示すようなものに限定されず、通気部2aとなる貫通孔が複数設けられていればよいし、後述する加熱室11内が複数に仕切られているような場合は、上方が開口したトレイタイプのものであってよい。廃棄布製品を網状かご2に収容する際には、隙間を持たせ圧縮しすぎないように収容する。網状かご2内に衣料品を圧縮しすぎて収容すると熱分解時に廃棄布製品を構成する繊維から発生するガスをスムーズに網状かご2外に排出できず、温度も万遍に伝わりにくくなるため、均一な炭化処理を実現できない一因となる。網状かご2に収容する衣料品は、同じ種類のものばかりでもよいし、複数種類を混載してもよい。このとき、合成繊維(化学繊維)が多く含まれて構成された衣料品は炭化処理を行うと熱分解が始まる前に消失(気化)・液化する。具体的には、合成繊維、例えばポリエステル、ナイロン、ウレタン、アクリルなどの熱可塑性樹脂からなるものや、フェノール、ユリア等の熱硬化性樹脂からなるもの、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等からなるものは、炭化工程(S101)で200℃程度の温度で気化したり、軽油化するため、炭化物の収率が悪い。よって天然繊維を含んで構成された衣料品の割合いが2割を下回ると、炭化物の収率が2割に満たない傾向となる。よって、網状かご2には、2割以上を毛、綿、絹、麻、レーヨン等の動物性・植物性の天然繊維を含んで構成された衣料品が混載されるように収容することが望ましい。
【0021】
図3の写真は、廃棄布製品投入工程前の写真であり、発明者は、これらをまとめて炭化することに成功している。在庫として処分する新品の衣料品の場合は、衣料品がビニールの梱包袋のままである場合が多いが、炭化処理するために、梱包袋から衣料品のみを取り出さなくても、良質の炭化物を得られた。また加熱室11に搬入する廃棄布製品全体に対して、1割~2割程度であれば、図3に写っているように段ボール箱ごと炭化してもよい。また天然繊維の割り合いが少なくても、炭化は可能であるが、天然繊維を含んで構成された衣料品が2割を下回ると、上述のとおり、炭化物の収率が2割に満たない傾向となる。発明者が炭化処理試験を行ったところ、3割以上天然繊維で構成されたものが含まれていれば、炭化物の収率を2割以上にでき、廃棄布製品から効率よく均一に炭化された良質の炭化物を得ることができることがわかった。図3の写真に示す廃棄布製品のうち、天然繊維は、アルパカ、コットン、レーヨン、ウールで、合成繊維は、アクリル、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタンであった。金属製のチェックや飾り、ゴム製の付属品は問題なく一緒に炭化可能である。ボタンやリボン等は素材によるが、炭化する廃棄布製品全体からすれば微量であるので、収率にほとんど影響がない。
【0022】
加熱室11で廃棄布製品を炭化するに際し、含水率は30%以下であることも重要であるが、例えば含水率60%の食品残渣や含水率80%の下水汚泥等を炭化する場合と比べて、衣料品等の布製品は、在庫となった新品が多く、乾燥した状態で廃棄されるため、廃棄布製品投入工程(S100)において、脱水したり乾燥したりする工程は生じない。しかし、廃棄布製品が濡れて水分を含む場合は、含水率30%以下に脱水・乾燥する必要がある。また食品残渣、産業廃棄物、一般ごみを炭化する場合は、なにからなるものか不明なものが混載されることになるが、本実施形態に係る衣料品や上記列挙した布製品は、どのような素材からなるかの表示がされているものがほとんどであるので、炭化処理において有害物質が出現したり、異常発熱・発火・ガス爆発といった事故リスクも極めて低減することができる。発明者が行った炭化処理試験については、後述でさらに詳しく説明する。
【0023】
<炭化工程(ガス抜き工程)>
次に廃棄布製品を炭化する炭化工程(S101)を行う。
炭化する還元炉10は、酸素を遮断した状態で有機化合物などの炭素化合物を加熱して熱分解する装置である。炭素化合物は熱分解により、一部はガス化し、一部は炭化して減容される。還元炉10は過熱水蒸気を用いて加熱するバッチ型炉が好適で、ローラ式の載置部17と密閉扉16と側枠18を含んで構成されている。載置部17、密閉扉16及び側枠18は一体とされており、載置部17に網状かご2を乗せた状態で、台車15により還元炉10の加熱室11に対し搬入出されるようになっている。載置部17の上には、複数の網状かご2,2・・・が並列に配列され複数段に積み上げて載置される。側枠18は、これら積み上げられた網状かご2,2・・・が倒れて崩れないように側面を支持するように設けられている。また還元炉10の加熱室11を密閉するために密閉扉16が設けられているが、これに使用するパッキンとしては、ゴムではなく、加熱により変形しにくい膨張黒鉛を用いることが望ましい。また熱分解時に廃棄布製品から発生するガスを廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じてガス抜きするガス抜き工程を促進させるため、載置部17を適宜振動させる振動手段(不図示)を備えていてもよい。
【0024】
還元炉10は、加熱室内を500℃~1000℃の間で温度調整する温度制御部(不図示)と、加熱室11を加熱する燃焼室(不図示)と、ボイラー13に接続された過熱水蒸気発生装置(不図示)とを備え、還元炉10の加熱室11内に過熱水蒸気が供給される。これにより、加熱室11内は過熱水蒸気の対流により温度が略一定に保たれる。図6に示すように加熱室11は二次燃焼室19とガス流通部19aを介して連通接続されている。加熱室11で廃棄布製品から発生するガスのうち、乾留ガスは二次燃焼室19に導かれ、そこで加熱燃焼され、水蒸気が排気筒14から排出される一方、排ガスは還元炉10の加熱用に利用された後、還元炉10より排出され、ガス冷却器12aを有するガス処理装置12で冷却および除塵がされ無害化されて大気に放出される。
【0025】
還元炉10は、加熱室11内を炭化に最適な温度設定が可能とされていればよく、例えば500℃に昇温加熱して一定時間維持しておき、そこに網状かご2に収容された廃棄布製品を搬入した後、無酸素状態で、600~800℃に昇温加熱して一定時間維持し、さらにその後、800~1000℃前後に昇温加熱して炭化してもよい。また段階昇温せず、500~1000℃に加熱された加熱室11で2~3時間炭化処理を行うようにしてもよく、温度を上げると炭化物が硬くなり、良質の炭化物となる。発明者が行った炭化試験については後述する。
【0026】
加熱室11での炭化は熱分解であっても、加熱温度によっては、合成繊維の一部は、ガスを発生するも炭化はせず溶融するおそれがあるため、急激に高温で加熱しないなどの温度制御が必要とされる。加熱室11に廃棄布製品が収容された網状かご2,2・・・を搬入し、常温から加熱処理を行ってもよいが、所定の温度まで室内を加熱するのには時間を要するため、空の状態で事前加熱することが望ましい。例えば、事前にバーナーなどで加熱しておき、その後、網状かご2,2・・・を還元炉10内に搬入するほうが、効率的な加熱処理を行うことができる。このとき、加熱室11内では熱分解が始まると、自己発熱するため、焼却する場合と比べて加熱室11を加熱するための燃料の使用料を大幅に低減することができ、二酸化炭素の排出も低減できる。炭化工程(S101)における炭化処理は2時間~4時間を要し、冷却処理には1~2時間を要する。よって、還元炉10を複数基用意し、炭化工程(S101)で発生する熱を別の還元炉10の予熱に使用する等し時間差で加熱処理すれば、効率化を図ることができる。またこの炭化工程(S101)では、熱分解時に発生するガスを廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出するガス抜き工程を行うことが肝要である。衣料素材として、皮革や不織布等、様々な仕様があり、本実施形態に係る廃棄布製品として、部分的に皮革や不織布が使用されていたり、例えば天然・合成問わず、皮革製のジャンパーが混載されても問題ないが、主としては、織物、もしくは編物で構成された繊維材を構成されたものを炭化することを想定している。織物は、平織、綾織、朱子織等、問わないが、長さ方向の経糸と幅方向の緯糸が、織機によって互いに直角に上下に組み合わされて交差しているため、隙間が存在する。本実施形態における廃棄布製品の処理方法は、その繊維の隙間を通じて熱分解時に発生するガスをスムーズに排気させながら、炭化処理を行うことで、均一で良質な炭化物を得ることができることを見いだしたものである。特に天然繊維は良質な炭化物を得ることができ、図2のS201に示す写真を拡大したものが図4(a)であり、図4(a)の一部をさらに拡大した写真が図4(b)である。図4(b)に示す写真は、レーヨン72%、ナイロン28%で構成されたニットを炭化したもので、この写真から明らかなとおり、本実施形態の廃棄布製品処理方法によれば、ニットの編み柄・形をそのまま残して炭化することができる。通常、ナイロン等のプラスチック製の糸は炭化すると溶けて形が残らず塊になるが、布製品とするため、天然糸との織物になると、天然糸がプラスチック製糸を溶解させずに形を維持した状態で所定の温度に達すると熱分解が開始するとともに繊維の隙間からガスが排出される効果も相まって、ほぼ形を残した炭化物になることが判明した。
【0027】
熱分解により廃棄布製品から発生する乾留ガスを熱エネルギーとして利用できるように電気変換器を備えていてもよい。具体的には、乾留ガスを電気に変換できるスターリングエンジンやマイクロガスタービンに再利用すればよい。乾留ガスのこのような利用により、熱分解処理のランニングコストを低減化することもできる。また発生した乾留ガスを油化して生成油を生成することもできる。つまり、ケミカルリサイクル(合成樹脂を石油に戻す)を実現することができる。これらの生成油はディーゼルエンジン、レシプロエンジン、ロータリーエンジンなど内燃機関の燃料や、その他機械燃料、ボイラー燃料、発電などに使用することができる。また還元炉10での加熱処理は、熱分解処理であるため二酸化炭素の発生が抑制されるが、熱分解処理により発生した二酸化炭素は、水素や窒素と反応させてメタンガス、エタノール等を生成するようにしてもよい。このようにすることで、メタンガスなどの有用な物質を分離回収することができ、かつ二酸化炭素の排出を大幅に低減化することができる。なお、電気変換する場合は、常時還元炉10からガスが発生する方がよく、第2実施形態に示す揺動式の還元炉10が好適である。
【0028】
<燃料炭製造工程>
次に炭化工程S101を経て、このようにして炭化されて得た炭化物(図2・S201参照)は、上述のとおり、熱分解時に発生するガスを廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出するガス抜き工程を行いながら炭化することで、均一で良質な炭化物となるため、燃料炭、活性炭等に活用することができる。ここではまず燃料炭とする場合について説明する。
【0029】
炭化物を燃料炭とする場合は、まずは粒度100~500μmに炭化物を粉砕する粗粉砕工程(S102)を行う。次にジェットミル等を使用し粒度10~50μm、さらに好適には10~30μmに粉砕する微粉砕工程(S103)を行う(図2・S202参照)。こうして得た炭化粉に、CMC、PVAに糖ミツ等の糖類を混合したバインダーを混合するバインダー混合工程(S104)を行う。そしてバインダー混合工程(S104)において、混合された混合物を所定の形状に圧縮して成形する圧縮化工程(S105)を経て、燃料炭を得ることができる(図2・S203参照)。本実施形態に係る燃料炭によれば、原料が廃棄される廃棄布製品からなる炭化物であるので、環境問題に配慮した材料からなる燃料炭を構成できる。またバインダーとしてCMC、PVAを用いると味も臭いもなく、バーベキュー等の燃料炭に好適である。また糖ミツをバインダーにすると、火付きがよく、食材の味もよくなり、使用後に水をかけても、炭の形が崩れず、残れば消し炭を再度利用することができる。燃料炭の形状、大きさは図2・S203の写真で示すように特に限定されず、アウトドアで行うバーベキューで用いられる燃料炭の場合、特に限定されないが、例えば圧縮率が1cm/50~70Kg(1秒~2秒)、乾燥時間は自然乾燥で5~10時間(10℃~20℃)、燃焼時間は3~5時間とし、径が3~5cmで10~13センチの棒状のものが使用しやすい。バインダーとしては、でんぷん、セルロース、アルギン酸、フェノール、ポリアクリル酸ソーダ、デキシトリン等が挙げられる。これにおがくず炭やヤシガラ炭を1~2割追加してもよいし、はちみつ、水あめ等の糖類を添加すると火がつきやすい燃料炭にすることができ、肉・魚・野菜を焼く燃料炭にすると、美味になる。なお、S103の「微粉砕工程」を経て得た炭化粉は、S203に示すような固形の燃料炭に限定されず、炭化粉の状態で火力発電などの燃料とすることもできる。
【0030】
<活性炭製造工程>
一方、炭化工程S101を経て、炭化物を活性炭にする場合について説明する。
炭化物を燃料炭とする場合は、まず燃料炭の場合と同様に粒度100~500μmに炭化物を粉砕する粗粉砕工程(S106)を行う。次にジェットミル等を使用し粒度10~50μmに粉砕する微粉砕工程(S107)を行い、炭化粉を得る(図2・S204参照)。そして炭化粉を多孔質材料に変える賦活処理工程(S108)を行う。賦活処理工程(S108)で行う活性化反応、賦活処理の方法はガス賦活でも薬品賦活でもよい。ガス賦活としては、水蒸気、二酸化炭素、空気、燃焼ガス等のガス賦活剤を利用して700~1000℃の高温で反応させる方法が挙げられる。薬品賦活としては、塩化亜鉛、リン酸等の賦活薬剤を利用して水溶液にしてそこに炭化粉を含浸し、不活性ガス雰囲気下で500~700℃の温度で焼成する方法が挙げられる。賦活薬剤として、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属を使用してもよく、発明者の試験によれば、ガス賦活の場合は、水蒸気賦活、薬品賦活の場合は、アルカリ賦活とすると、比表面積が800m/g以上の活性炭が得られた。比表面積が800m/g以上の活性炭を得るには、炭化粉の硬度が高く、炭化収率が高い必要があるが、本実施形態に係る廃棄布製品処理方法によって得た炭化粉を賦活処理したところ、十分な比表面積を有する活性炭が得られた。こうして得られた活性炭は、様々なものに利活用できる。例えば図2のS205に示すように2枚の不織布の間に活性炭が混在するシートを配し、1枚のシート体とすれば、臭い吸着機能を有する活性炭シートとすることができ、床材、壁材、天井材等、建材シートとして活用できる(図1・S109)。また例えば図2のS206に示すように活性炭を投入した水にフィルターとして使用する天然パルプ紙を含浸させれば、活性炭フィルターとして活用でき、エアコンのフィルター等として利用できる(図1・S110)。また活性炭の用途によって硬い活性炭がよい場合は、粉末状の活性炭に金属を結合させると硬くすることができる。またアルカリ賦活すると比表面積が3000m/g以上の非常に優秀な活性炭を得ることができた。ここまで比表面積が高い活性炭であれば、急速充放電のキャパシタ用等に使用可能である。
【0031】
<各種試験について>
次に図7図8を参照しながら、廃棄布製品の炭化処理試験について説明する。
図7(a)に示す試験に用いた衣料品の情報は、表1に列挙しているとおりであり、種々素材からなる衣料品を混載させた。試験に用いた衣料品にはボタン、チャック、首元・手首・裾に縫製されたゴム等の付属品は取り外すことなく行った。試験炉は、複数のボックスを備えた小型の図5及び図6と同様設備を備えたバッチ式の還元炉を用いた。炭化容器は1200mm×1250mm×200mmからなる上方が開口した箱型のトレイを用いた。設定温度は500~550℃を目標とした。温度と時間は図8に示すとおりであり、実線が燃焼室の温度、点線が加熱室の温度を示している。図8のその他の点線は、加熱室内に左右2つ、上下に仕切られて設けられる各ボックスの温度であり、前記トレイは、右ボックス上に載置し炭化処理を行った。炭化時間は、試験のため、9時間燃焼室の温度を1000℃に保って行ったが、4時間ほどで十分に炭化されていたことが確認された。図7(b)は炭化処理後の写真であり、この試験により、天然繊維からなる衣料品はそのまま形を残して炭化され、合成繊維は形を留めないものの、溶解して塊にはならず、炭化されることがわかった。この試験において、右ボックス上は空間があり、前記トレイは上方が開口しているので、熱分解時に発生するガスを廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出するガス抜き工程がなされていることが均一で良質な炭化の要因であることがわかった。本試験における衣料品の総重量は、炭化処理前は14キロ、炭化処理後は3.28キロで、炭化物の収率は23.43%という良好な結果が得られた。
【0032】
【表1】
【0033】
次に図9を参照しながら、同廃棄布製品処理方法によって得た炭化粉の賦活試験について説明する。上記発明者が行った廃棄布製品の炭化処理試験と同じ処理方法で得た炭化物をジェットミルで10~50μm以下に粉砕し炭化粉を製し、その炭化物を水蒸気賦活処理(窒素ガス)し活性炭を得た。具体的には、炭化粉をロータリーキルン炉に入れ、回転させながら窒素ガスと一緒に水を送り込む。バンドヒーターで250℃に加熱し20時間賦活処理を行った。炉内では、水蒸気を発生させると炭化粉に吸熱反応が生じ、ガス化することによりその痕に微細孔が生成される。この賦活試験によれば、水蒸気賦活し、収率を50%以下にすると、表面積が約1,000m/g以上の良質で臭い吸着性能を有する活性炭が得られた。またさらに発明者が上記条件において、炉内の加熱温度を900℃~1000℃に上げれば、20時間の賦活処理時間を2時間~3時間に短縮しても、表面積が約1,000m/g以上が得られた。
【0034】
続いて図10を参照しながら、同廃棄布製品処理方法によって得た活性炭の成分分析結果について説明する。
図10(a)は活性炭の電子顕微鏡写真であり、図10(b)及び図10(c)は活性炭の成分分析結果を表にしたものである。図10(a)の電子顕微鏡写真は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察できる反射電子像(BSE)を示し、500倍、1000倍、3000倍の反射電子像をそれぞれ示している。活性炭は、図9の賦活試験時と同様の方法で賦活処理を行ったものを用いた。図10(a)の500倍の反射電子像に示すスペクトル9の成分分析結果を表にしたものが図10(b)であり、図10(a)の500倍の反射電子像に示すスペクトル10の成分分析結果を表にしたものが図10(c)である。スペクトル9の成分分析を行った結果、「C」の質量が73.13%、原子数濃度が88.81%と高い数値を示し良質な炭化物であることを示している。「Ti」「Ca」「Fe」が検出された。このうち、「Ti」と「Fe」は染色による顔料に含まれていたものであると考えられる。また「Ca」は動物性の天然繊維から検出されたものと考えられる。スペクトル10の成分分析を行った結果、「c」の質量が92.96%、原子数濃度が96.03%とスペクトル9よりも高い数値を示しさらに良質な炭化物であることを示している。ここでも「Ca」と「Ti」が検出されたがごく微量であった。これら結果から活性炭としての利用を阻害するような物質は検出されなかった。なお、ペットボトルをリサイクルして衣服を製造する取り組みがあるが、リサイクルされた製品を再度リサイクルすると、「Ti」「Ca」「Fe」等の含有量が増え、再利用できず焼却や埋め立てられるが、本実施形態の処理方法によれば、布製品がリサイクルされたものか否かに関わらず炭化することができる。
【0035】
<廃棄布製品処理装置の別例>
次に図11を参照しながら、廃棄布製品処理装置1を構成する還元炉10の別例について説明する。図5及び図6に示す例と共通する構成には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。基本的な炭化方式は同じである。図11に示す例では、上方開口の枠体状のトレイ25の上に網状かご2を載置し、載置部17に設けられた回転する円筒体のローラ17aで矢印方向Aに搬送する連続搬送式の還元炉10とした例を示している。この例においても、熱分解時に廃棄布製品から発生するガスを廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じてガス抜きを行いながら、炭化処理できるように網状かご2を用いる点は上記の例と同様である。またこのガス抜きを促進させるため、ローラ17aを適宜振動させる振動手段(不図示)を備えていてもよい。
【0036】
還元炉10は、加熱室11内を500℃~1000℃の間で温度調整する温度制御部(不図示)と、網状かご2が搬送される搬送入口側(搬送口扉40a側)に設けられる待機室40と、中央に設けられ加熱室11と、搬送出口側(搬送口扉40d側)に設けられる冷却室41とを備え、待機室40と加熱室11、加熱室11と冷却室41とはそれぞれ隣接に設けられる。還元炉10が、加熱室11、燃焼室20、二次燃焼室19、排気筒14の他、ガス処理装置、ボイラー等を備えている点は上述と同様である。図中、13aはボイラーに接続され、加熱室11内に過熱水蒸気を供給する過熱水蒸気発生装置である。搬送入口及び搬送出口には、加熱室11内を密閉し開閉自在に構成された搬送口扉40a,40dがそれぞれ設けられている。また待機室40と加熱室11との間、加熱室11と冷却室41との間にも、加熱室11を真空状態に密閉し開閉自在に構成された密閉扉体40b,40cが設けられている。このように密閉扉体40b,40cに加え、搬送口扉40a,40dを設けることで加熱室11の密閉状態が保ちやすく、搬送時に温度が極端に下がってしまうことを防ぐことができる。待機室40、冷却室41と同じ大きさに設けられているが、加熱室11は一度に複数の網状かご2,2・・・が収容され、順次搬送されてくる網状かご2を時間差で炭化できるように長手方向に長く設けられている。ここではトレイ25単位で搬送される例を示しているが、網状かご2をそのまま載置部17に乗せて炭化、搬送してもよいし、複数段に積み重ねてもよい。搬送手段も図例に限定されず、ベルトコンベアでもよい。還元炉10の全長は10メートル~100メートル等、特に限定されず、設定温度が異なる加熱室11を複数設け、順次送り出す方式を採用してもよい。もちろん加熱室11をしっかり密閉できれば、待機室40,冷却室41を備えていなくてもよい。また廃棄布製品を網状かご2に収容した例を示しているが、これに限定されず、段ボール箱に貫通孔を形成し通気孔を複数形成すれば、廃棄布製品が収容された段ボール箱ごとトレイ25に乗せて炭化処理してもよい。
【0037】
この還元炉10では炭化処理が順次行われるように、所定の温度に加熱された加熱室11内に収容可能な数の網状かご2,2・・・が搬送され、待機室40には、次に炭化処理を行うものを待機させておく。そして加熱室11内で順次移動し、炭化処理が完了すると、冷却室41に搬送される。すなわち加熱室11内においては、炭化度合いの異なるものが収容され加熱室11内での炭化処理時間の合計が所定の時間(例えば2時間)になったときに、冷却室41に移動し、冷却工程に移行できるよう構成されている。炭化処理が完了し、冷却室41から搬出された後は自然冷却されればよいため、引き続き搬送されながら、冷却するようにしてもよいし、別の場所に移動させて冷却してもよい。このように順送りの搬送式とすれば、効率よく炭化処理を行うことができる。
【0038】
<第2実施形態>
次に図12及び図13を参照しながら、第2実施形態に係る廃棄布製品処理方法に用いられる廃棄布製品処理装置1Aを説明する。ここでも、第1実施形態に係る処理方法及び装置と共通する点の説明は省略し、主に異なる点を説明する。
【0039】
第2実施形態に示す廃棄布製品処理装置1Aは、加熱室11と、賦活処理を行う賦活室30とが、一体となった還元炉10を備え、揺動手段(不図示)によって還元炉10を揺動させて炭化処理する揺動型の廃棄布製品処理装置1Aである。従来、合成樹脂材を炭化する場合は、200℃前後から一旦溶解し、その後、600℃前後で炭化する。よって、羽根を備えたロータリー式の還元炉で炭化すると羽根に溶解した樹脂が付着するため、故障の原因となる。本実施形態の場合は、原料が廃棄布製品であり、上述のとおり、ほぼ原形を残したまま炭化することに成功したため、ロータリー式での炭化が可能ではあるが、廃棄布製品がコート等、長尺のものであると、炭化前に羽根に絡みつく可能がある。またバッチ式の場合は、量産化が難しい。そこで、図12に示すコンクリートミキサーのような還元炉10とすれば、炉の大型化が可能で故障の要因を低減できる。
【0040】
本実施形態における還元炉10は、加熱室11が揺動自在に構成されており、熱分解時に廃棄布製品から発生するガスを廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じてガス抜きを行うガス抜き工程の効果を促進させることができる。加熱室11内が揺動する構造となっている。還元炉10自体が揺動する後述する送風機23等、周辺機器の設置が可能となる。還元炉10を適宜、揺動手段で揺動する。このとき、還元炉10自体が揺動するのではなく、図12(a)に示すように揺動角は特に限定されないが、120°~150°程度で緩やかに還元炉10を揺動させると、振り子のように左右に万遍なく揺れるため、廃棄布製品の偏りを防ぎ、ガス抜きを促進させることができ、ムラなく均一な炭化を行うことができる。またガス抜き工程を促進させる手段としては、加熱室11の底面を適宜振動させる振動手段(不図示)を揺動手段に替えて備えていてもよいし、両方備えていてもよい。
【0041】
還元炉10は、加熱室11内を500℃~1000℃の間で温度調整する温度制御部(不図示)と、活性炭生成の原料となる廃棄布製品が投入される投入口40eと、燃焼室20と、加熱室11と、賦活室30と、送風機23と、エアチャンバー22と、炭化及び賦活処理された活性炭を取り出す取出口40fとを備えている。この他、第1実施形態で示す二次燃焼室や熱分解時に廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出されるガスを二次燃焼室へ誘導するガス流通部を備えていてもよい。また、熱分解により廃棄布製品から発生する乾留ガスを熱エネルギーとして利用するため、電気変換器等を備えてもよい。燃焼室20は、加熱室11内を所定温度に加熱する。加熱室11は投入された廃棄布製品を熱分解し炭化する。加熱室11の底部側には、電気加熱式の複数のエアチャンバー22が設けられており、これにより、廃棄布製品を直接加熱し、熱分解を促進させることができる。送風機23は、還元炉10の上方に設置され、加熱室11及び賦活室30内の温度を均一にするために風を送るように構成されている。炭化工程(S101)において、熱分解が始まると炭化物は自己発熱するため、補助燃料が不要であるため、使用燃料は二次燃焼室を備えている場合のヒートアップのための燃料があればよく、大型炉であっても、ランニングコストを低減することができる。自己発熱量が足りない場合は、プラスチック材や木片等、廃棄物を投入してもよい。賦活室30は加熱室11で炭化された炭化物を賦活処理する。加熱室11及び賦活室30の底部側は、取出口40fへ向けて炭化物もしくは活性炭が自重により次第に移動する傾斜面(不図示)を備えている。これにより、炭化物もしくは活性炭の自重を利用して取出口40fから排出するように構成できる。
【0042】
なお、また炭化物も活性炭も炭化処理、賦活処理により質量が減るため、補助的に適宜取出口40fへ案内するための押出手段や送風手段等があってもよい。またここでは炭化処理及び賦活処理を行える還元炉10を説明したが、賦活室30を備えていない構造であってもよい。その場合は、取出口40fからは加熱室11で炭化処理された炭化物が排出される。また還元炉10での加熱処理は、熱分解処理であるため二酸化炭素の発生が抑制されるが、熱分解処理により発生した二酸化炭素は、水素や窒素と反応させてメタンガス、メタノール等を生成するようにしてもよいことは第1実施形態と同様である。これにより、二酸化炭素の排出を大幅に低減化することができる。
【0043】
取出口40fから排出された炭化物(もしくは活性炭)は、図12(a)に示すベルトコンベア装置50によって順次搬送されるが、取出口40fとベルトコンベア装置50との間に図13(b)に示すような振動式の篩機60を設けてもよい。篩機60の構成は特に限定されないが、図例のものは、上方開口の箱型からなる本体63と、炭化物(もしくは活性炭)の粒度に合わせて設けられた金網61と、本体63を横方向に振動させ金網61上に落下した炭化物(もしくは活性炭)を篩にかける振動手段62とを備えている。本実施形態に係る処理方法を実行する廃棄布製品に、装飾部分やボタンの材質に金属材が多く含まれる場合、図13(a)の実際の写真に示すように炭化しきれないものが多数でることがある。そのような廃棄布製品を多く炭化する際には、オプションとして篩機60を設置し、篩機60に設けられた金網61を通過した炭化物(もしくは活性炭)を再利用品として納品するようにし、金網61を通過しなかったものは回収するように選り分けを行ってもよい。以上の構成とすることで、より炭化純度が高い高品質な炭化物もしくは活性炭を得ることができる。
【0044】
以上、図を参照しながら、説明した実施形態に係る廃棄布製品処理方法及び廃棄布製品処理装置の構成や態様は、図例に限定されるものではない。また還元炉10の構成についても、過熱水蒸気炉の他、電気炉やガス炉であってもよく、さらにマイクロ波を用いる方式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 廃棄物布製品処理装置
2 網状かご
2a 通気部
10 還元炉
11 加熱室
19 二次燃焼室
19a ガス流通部
20 燃焼室
40e 投入口
40f 取出口
【要約】
金属製やプラスチック製のボタン、チャック、ゴム、商品タグ、包装袋等の付属品が付いたままで且つ、合成繊維、天然繊維等性状の異なる複数の前記廃棄布製品を還元炉10に投入する廃棄布製品投入工程(S100)と、500℃~1000℃の間で温度調整される前記還元炉において、熱分解時に発生するガスを前記廃棄布製品を構成する繊維の隙間を通じて排出するガス抜き工程を行いながら、炭化処理して炭化物を得る炭化工程(S101)と、を備えることを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13