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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】リラクタンスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 19/10 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
H02K19/10 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022563339
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2022028604
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021126683
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512272823
【氏名又は名称】株式会社ゲネシス・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荻野 三四郎
(72)【発明者】
【氏名】内川 據義
(72)【発明者】
【氏名】横尾 嘉也
(72)【発明者】
【氏名】大内 茂人
(72)【発明者】
【氏名】深津 健一
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-136150(JP,A)
【文献】特開2018-11396(JP,A)
【文献】特開2013-81350(JP,A)
【文献】特開2016-13050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性部材からなる複数の突極の先端が隣接する隙間に磁石を前記先端の横部に接するように配置し、前記突極を励磁するための巻線を有するステータと、
前記突極に対向して設けられる突起部を有するロータと
を有するリラクタンスモータであって、
前記ロータの前記突起部の周方向の長さは、前記ステータの前記磁石の周方向の長さおよび前記突極のロータに対向する周方向の長さと等しく、
前記突極は、前記磁石が配置された横部が、前記巻線が施される基部側より太く形成された顎部を有し、
前記ステータの突極数と前記ロータの突起部数の比は、4:3であり、
駆動相数が4である、
ことを特徴とするリラクタンスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のリラクタンスモータであって、
前記突極のロータ側の先端部の周方向の太さが、基部側の周方向の太さとの比は、1対0.6であり、
前記顎部の径方向の長さは、前記突極の径方向の長に対して、ほぼ、0.25である、
ことを特徴とするリラクタンスモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリラクタンスモータであって、
前記ステータの突極数は12であり、前記ロータの突起部数は9である、
ことを特徴とするリラクタンスモータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載のリラクタンスモータであって、
前記ステータの前記突極は、4相の励磁電流により励磁され、
一つの相の突極は、当該突極の励磁時間の前半は、隣接する一方の前記突極の励磁と重複して励磁され、励磁時間の後半は、隣接する他方の前記突極の励磁と重複して励磁され、励磁時間の中間は、両隣の前記突極の励磁とは重複せずに単独に励磁される、
ことを特徴とするリラクタンスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リラクタンスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチドリラクタンスモータ(以下SRモータという)が知られている。本願発明の発明者の荻野らは、リラクタンスモータとして、ステータの磁極にコイルと永久磁石とを備えたハイブリッド型リラクタンスモータを提案している(特許文献1、特許文献2)。提案するハイブリッド型SRモータは、ステータの磁極と磁極との隣接する隙間に永久磁石を配置したリラクタンスモータである。このハイブリッド型SRモータは、直流のパルス電流によって駆動させるもので、制御をディジタルで行うことができ、制御回路をディジタル回路で構成することができる利点がある。また、ロータに高価な永久磁石を使用することないので安価にでき、高トルク出力ができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-17314号公報
【文献】特許第4383058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のハイブリッド型SRモータは、永久磁石の磁束とコイルによって励磁された磁束をうまく利用して高効率(高トルク)を実現できるモータであるが、さらなる高効率のSRモータの実現が求められている。
【0005】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、さらに高効率なSRモータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、磁性部材からなる複数の突極の先端が隣接する隙間に磁石を前記先端の横部に接するように配置し、前記突極を励磁するための巻線を有するステータと、前記突極に対向して設けられる突起部を有するロータとを有するリラクタンスモータであって、前記ロータの前記突起部の周方向の長さは、前記ステータの前記磁石の周方向の長さおよび前記突極のロータに対向する周方向の長さと等しく、前記突極は、前記磁石が配置された横部が、前記巻線が施される基部側より太く形成された顎部を有し、前記ステータの突極数と前記ロータの突起部数の比は、4:3であり、駆動相数が4である、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の側面は、上述の発明に加えて更に、前記顎部は、ロータ側の周方向の幅と、基部側の周方向の幅との比は、1対1であり、前記顎部の径方向の長さは、前記突極の径方向の長に対して、ほぼ、0.25である、ことが好ましい。
【0008】
また、本発明の他の側面は、上述の発明に加えて更に、前記ステータの突極数は12であり、前記ロータの突起部数は9である、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明に加えて更に、前記ステータの突極は、4相の励磁電流により励磁され、一つの相の突極は、当該突極の励磁時間の前半は、隣接する一方の突極の励磁と重複して励磁され、励磁時間の後半は、隣接する他方の突極の励磁と重複して励磁され、励磁時間の中間は、両隣の突極の励磁とは重複せずに単独に励磁される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来のSRモータに比較して、5から6倍以上の高トルク出力が期待できる高効率なリラクタンスモータを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るリラクタンスモータのステータ鉄心部分とロータ鉄心部分の平面図である。
図2】ステータの突極の形状を示す平面図である。
図3】ロータが0°の状態の磁路を示す図である。
図4】ロータが5°回転した状態の磁路を示す図である。
図5】ロータが10°回転した状態の磁路を示す図である。
図6】ロータが15°回転した状態の磁路を示す図である。
図7】ロータが20°回転した状態の磁路を示す図である。
図8】第1の実施の形態の励磁パルスを示すタイムチャートである。
図9】ロータが17.5°回転した状態の磁路を示す図である。
図10図9の一部の磁路を摸式図として示す図である。
図11】ロータが16°回転した状態の磁路を示す図である。
図12】ロータが19°回転した状態の磁路を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係るリラクタンスモータの磁路を示す図であり、ロータが0°回転した状態の磁路を示す図である。
図14】ロータが7.5°回転した状態の磁路を示す図である。
図15】ロータが15°回転した状態の磁路を示す図である。
図16】ロータが22.5°回転した状態の磁路を示す図である。
図17】第2の実施の形態の励磁パルスを示すタイムチャートである。
図18図16からロータが少し回転した位置でのB相、C相の突極とロータとの位置関係と磁路を示す図である。
図19図18の磁路を磁気回路として表した図である。
図20図18に対応する従来のSRモータの突極とロータの位置関係と磁路を示す図である。
図21図20の磁路を磁気回路として表した図である。
図22】磁気回路解析で第2の実施形態のHBSRモータのトルクと従来のSRモータのトルクとを計算した例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態のリラクタンスモータの断面を表したものである。この第1の実施の形態のリラクタンスモータは、SRモータとハイブリッド型磁石を応用したもので、以下HBSRモータと称する。このHBSRモータは、ステータ1とロータ2とを有している。この第1の実施形態のHBSRモータは、ステータ1が、12個の突極(ティース)、ロータ2が、9個の突起部(ティース)を有する例である。
【0013】
ステータ1は、12個の突極11a~11lと、各突極11a~11lの先端の横部と隣接する突極の横部との隙間に配置される12個の磁石12a~12lと、各突極11a~11lの根元側にコイルを巻くことで設置される12個の巻線13a~13lとを有している。そして、各突極11a~11lの根元は、バックヨークに当たる連結部14により周方向に連結されている。以下、突極11a~11l、磁石12a~12l、巻線13a~13lのそれぞれについて、特定の突極、磁石、および巻線を意味しないときは、突極11、磁石12、および巻線13と称する。
【0014】
ステータ1の突極11を形成するステータ素材は、高透磁率材料の軟磁性材料からなる。例えば、飽和磁束密度が極めて高い軟鉄の薄板が積層された材料などが使用される。
【0015】
磁石12は、ロータ2に対向する面の径方向の長さが、突極11の先端の径方向長さと同一または若干小さくされた逆台形あるいは矩形の形状としている。また、この磁石12は、ネオジウムを使用した残留磁束密度が高い希土類磁石で、隣り合う磁石12の対向する磁極が同極となるように着磁されており、その磁極が突極11の先端の横部に接するように配置されている。すなわち、一つの突極11aについてみるに、その両隣の突極11b、11lとの間では、自極側がN、他極側がSとなるように、逆に隣の突極11bは、自極側がS、他極側がNとなるように、着磁された磁石が設けられている。各磁石12のモータの周方向の長さ(隣接する突極との距離になる)は、突極11の先端の周方向の長さと等しく構成されている。磁石12の固定は、接着剤などで突極11に接着させている。なお、磁石12としては、ネオジウム磁石以外の、サマリウムコバルト磁石やフェライト等の永久磁石を用いることもできる。
【0016】
巻線13は、それぞれ、ステータ1の連結部14側からは突極11の先端に向かって同一方向にコイルが巻かれることで形成される。コイルのターン数は、100~200程度とされる。コイルの巻き方向は、突極11の先端側を起点として連結部14側に向けて巻くようにしてもよい。巻き方は、整列巻きが好ましいが、他の巻き方であってもよい。また、同相の励磁パルス電流を流した場合に、隣接する突極ごとに磁極が逆転するように、交互に巻線方向が異なるようにしてもよい。
【0017】
ロータ2は、9個の突起部21a~21iを有している。また、中心は、モータの回転軸23を有している。なお、以下では、突起部21について個別のものを指示する場合は、突起部21a~21iのいずれかの符号を利用することとする。この突起部21は、極歯となるもので、突極11と対向することで、磁束の流れに安定点をもたらすものである。各突起部21の周方向の長さは、機械的角度で15度の範囲にわたる大きさとなっており、対向するステータ1の各磁石12、突極11の周方向の長さとほぼ等しいものとなっている。
【0018】
ロータ2の鉄心材料としては、飽和磁束密度が大きい磁性材料が使用される。たとえば、珪素鋼板の薄板を積層したものが使用される。また、軟鉄やパーマロイ等他の軟磁性材料としてもよい。
【0019】
ここで、図2に一つの突極11の形状を示して、ステータ1の一つの突極11の形状を示して、顎部112を説明する。顎部112は、突極11のロータ2に対向する先端部分の磁石が配置される横部が、巻線13が巻かれる部分より幅が太くなっている形状を示す。この先端部分の幅と、連結部14に連結される基部側の幅との比は、ステータの突極11が12個、ロータの突起部21が9個の場合、A対Bの比が1:0.8~1:0.66である。また、顎部112の径方向の長さCと巻線が施される基部側の長さDとの比は、このステータの突極数が12、ロータの突起数が9の場合、約1:4程度である。ステータの突極数が増えると、Dの長さが小さくなり、磁石12の径方向の長さも短くなるが、全体としての磁石の量は減らない。
【0020】
ここで、ステータの突極11が励磁されていない状態では、各磁石12により、ステータの突極11から連結部14を通った閉磁路を形成している。SBSRモータは、励磁された突極11が形成するメインの磁路と、各磁石が形成する磁路とが協働してロータ2に回転動作を与えるところに特徴がある。
【0021】
以下、図3から図7に、第1の実施の形態のHBSRモータのロータの回転状態(シフト状態)で形成されたステータ1とロータ2とがなす磁路を示し、図8にステータの突極11a~11lに対する励磁パルス電流のタイムチャートを示して動作を説明する。なお、磁路を示すため、図面では巻線の部分は省略している。
【0022】
図3は、図8のパルス波形で、0°で示す状態でのロータ2とステータ1とが構成する磁路を説明するものである。このとき、突極11の電磁石は、A相とB相とが励磁されており、A相とB相が作る磁路がメインの磁路になる。磁力線の方向は、A相の突極11からエアギャップを介してロータ2を通過して、B相の突極11に戻り、連結部14を通って、A相の突極11に戻る閉磁路を生成している。このメインの閉磁路を図3では、太線で表す。ここで、C相、D相は励磁されていないが、突極11間に磁石12が挿入されており、その磁石(D-C間の磁石)の磁力線は、突極11とロータ2の突起21との間には、エアギャップがあるので、ロータ2には向かわずに、ステータ1内で閉磁路を形成している。この励磁されていない相の磁石が作る閉磁路を図3では、細い線で表す。
【0023】
図4は、図8で5°の状態のロータ2とステータ1とがなす磁路を示すものである。ロータ2は、5°時計周りに回転している。励磁されている突極11は、0°の時と同じで、A相とB相であるので、磁力線の方向は、0°と同じであり、磁石12の磁力線も同じである。
【0024】
図5は、図8で10°の状態のロータ2とステータ1とがなす磁路を示すものである。ロータ2は0°の位置から10°回転しており、このときは、図8のパルス波形が示すように、突極11の電磁石は、A相とD相とが励磁されている。この状態では、メインの磁路は、A相の突極11からロータ2を通って、D相の突極11へ入り、連結部14を通ってA相の突極11へ戻る閉磁路を形成している。
【0025】
図6は、図8で、15°で示す状態のロータ2とステータ1とがなす磁路を示している。このとき、突極11の電磁石は、A相とD相とが励磁されており、ロータ2の突起21は、ステータ1の突極11のうち、A相で励磁された突極11に正対している。このときは、メインの磁路の磁力線は、図6に示すように、A相の突極11からロータ2の突起21とのエアギャップを介してロータ2を通過し、D相の突極11に戻り、連結部14を通って、A相の突極11と閉磁路を形成する。また、励磁していないB相の突極とC相の突極では、磁石12の磁力線は、ロータ2に向かわずにステータ1内で閉磁路を形成している。
【0026】
図7は、図8で、20°の状態のロータ2とステータ1とがなす磁路を示している。このとき、突極11の電磁石は、D相とC相が励磁しており、メインの磁路の磁力線は、C相の突極11からロータ2とのエアギャップを介してD相の突極11に入り,C相の突極11に戻る閉磁路を形成している。励磁していないA相の突極11とB相の突極11の磁石が作る磁力線は、ステータ1内で閉磁路を形成している。
【0027】
ここで、本実施の形態での電磁石の励磁タイミング制御による磁路強化を説明する。
図8は、励磁パルス電流のタイムチャートを示す。この図8に示す励磁パルス電流は、A、B、C、D相が交互に逆相の電流が巻線13に流れるものとなっている。これは、各突極11の巻線13が同一方向に巻かれている場合の励磁パルス電流の例であり、励磁パルスで励磁されると、突極11の先端は、N、S、・・と交互に異なる磁極に励磁される。なお、巻線方向が交互に異なる方向に巻かれている場合は、図8の励磁パルス電流は、同相の励磁パルス電流であれば同じ励磁となる。
【0028】
図8の励磁タイミングのタイムチャートが示すように、各相の励磁オン時間は、15°、励磁オフ時間は、25°となっている。励磁オン時間の15°を5°ずつ前中後に分けてみていくと、前5°は、2相励磁、中5°は1相励磁、後5°は2相励磁になっている。
【0029】
D相についてみると、前5°の間は、A相とオーバーラップし、後5°の間は、C相とオーバーラップしているが、中5°の間は、どこの相ともオーバーラップしていない。この中5°の間は、A相が励磁オフとなったタイミングと、C相が励磁オンになったタイミングの間に位置する。このタイミングでは、前5°、後5°の2相励磁に対して、1相励磁なので、巻線には2倍の電流が流れる。すなわち、それまで、2相に流れていた電流が1相になることで、中5°の期間は、1相に2倍の電流が流れる込むことになる。
【0030】
このときの磁路の様子を説明する。図9は、17.5°の回転状態での磁路を示す。A相,B相,C相は、励磁オフなので、磁石の磁力線のふるまいが図3から図7の2相励磁の場合と異なっている。A相については、AB間の磁石のN極(回転方向であるのでAcwNと称する)は、AB間の磁石のS極(反回転方向なのでBccwSと称する)と連結部14を通って閉磁路を構成する。AccwNは、顎部からエアギャップを介してロータ2の突起部21を通り、DcwSと閉磁路を構成すると同時に、励磁オン状態のD相の電磁石と合流し、連結部14を通り、B相のBccwSと閉磁路を構成する。CcwNは、連結部14を通って、BcwSと閉磁路を構成する。CccwNは、顎部からエアギャップを介してロータの突起部21を通り、DccwSと閉磁路を構成すると同時に、励磁オン状態のD相の電磁石と合流し、連結部14を通り,B相のBcwSと閉磁路を構成する。
【0031】
ここで、ロータ2の突起部21は、まだC相の突極に、約2.5°届いていない。D相が励磁状態であるため、A相の磁石AccwNとC相の磁石CccwNは、強制的にD相に引き込まれることになる。このとき、A相とロータ2の位置関係では、法線ベクトルが強く、接線ベクトルは弱いの対して、C相とロータ2の位置関係では、法線ベクトルではなく、D相とロータ2の位置関係からしても、C相の接線ベクトルとの和により、A相のブレーキ役となる接線ベクトルよりも回転方向の接線ベクトルが強くなる。また、ステータの突極は、顎部があることで、AccwNとCccwNは、それぞれ対向するAcwNとCcwNに引きずられることがないので、その磁力線は、連結部14を通って閉磁路を構成することはない。このときの磁路を図10に模式図として示す。
【0032】
さらに、上記17.5°回転する前の16°、回転した後の19°のときの磁路について検討する。
16°の状態は、A相が、励磁オフになった直後の状態で、19°は、C相が励磁オンになる直前の状態である。16°でのA相は、D相の励磁による磁力線の流れ込みによって、AccwNとAcwNは、それぞれ強制的にエアギャップを介して、ロータ2を通り、DcwSおよびDccwSと閉磁路を構成する。このときのステータ1とロータ2の位置関係においては、A相のccw接線ベクトルよりもD相のcw接線ベクトルの方が強くなる。この16°のときの磁路を図11に示す。
【0033】
19°では、A相とロータ2との位置関係は、4°のccw接線ベクトルで、D相とロータ2の位置関係は、6°のcw接線ベクトルになる。C相とロータ2の位置関係は、1°ロータ2に届いていないが、十分にCccwNは、DcwSと閉磁路を構成できる。これにより、19°においても、D相とA相、C相の位置関係により、cw接線ベクトルの方が強くなり、磁路が強化される。この19°の時の磁路を図12に示す。
【0034】
このように、一つの相の励磁オンタイミングの15°のうち、5°のタイミング間は、励磁タイミングはオーバーラップしていないが、励磁タイミング15°のうち、励磁タイミングオフのB相、C相の磁石の磁力線がメインの磁路を強化すると考えられる。
【0035】
以上説明したように、ステータの突極数が12個、ロータ2の突起数が9個で、4相の励磁パルス電流で、A、B、C、Dと2相ずつ、5°の期間、オーバーラッピングし、中間の5°の期間では1相のみの励磁とし、15°励磁オン、25°励磁オフで駆動タイミング制御をすることで、磁路強化がされた駆動ができ、高トルク出力、高効率の出力が可能となった。
【0036】
つぎに、本発明の第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態は、ステータ1の突極11の突極数が8個、ロータの突起部数が6個のSRモータであり、これを4相で駆動制御するものである。
【0037】
図13図16は、ステータ1の突極数が8個、ロータ2の突起部数が6個のSRモータのロータの回転状態における磁気回路を示すものであり、図13は、0°、図14は、7.5°、図15は、15°、図16は、22.5°の時の磁力線を示すものである。そして、図17は、この第2の実施の形態における励磁パルスのタイムチャートを示す。
【0038】
この、ステータ1の突極数が8、ロータ2の突起部数が6の場合、ロータの突起部21の周方向の長さは、ステータの磁石の周方向の長さに等しく、回転角度で22.5°である。そして、励磁パルス電流の励磁オン時間は、22.5°、励磁オフ時間は、37.5°になる。
この実施の形態においても、励磁オン時間の前半1/3は、2相励磁、中間の1/3は、1相励磁、後半の1/3は2相励磁となり、磁路強化が行われる。
【0039】
さらに、ステータ1の突極数が4、ロータ2の突起部数が3の場合には、突起部21の周方向の長さは、ステータ1の磁石12の周方向の長さ、突極11の先端の周方向の長さに等しく、回転角度で45°になる。
【0040】
上述のように、4相駆動の場合、ステータ1の突極数12、ロータ2の突起部数が9では、メインの磁路は、3つであるが、突極数が4、突起部数が3の場合には、メインの磁路は、1つ、突極数が8、突起部数が6の場合は、メインの磁路は2である。突極数が16、突起部数が12の場合は、メインの磁路数は4と増加する。
【0041】
図16の22.5°からロータ2が若干回転(x)した状態の時の磁気回路の解析例を説明する。図18は、図16からロータ2の突起部21が若干回転(x分)して、ステータ1のB相とC相の突極11と一部重なった状態の位置関係と磁路を模式的に表した図である。矢印方向が磁力線の方向になる。特徴的なことは、ロータ2の突起部21から突極11、突極11から突起部21への磁力線が一部扇形に向かうようになっていることである。
【0042】
図19は、図18の磁路を磁気回路として表した図である。ここで、Rは、磁気抵抗であり、φ1は、電磁石の磁束密度、φ2は、ロータの磁束密度、R1は、電磁石の磁気抵抗、R2は、突極11の磁気抵抗、R3は、連結部14の磁気抵抗、R4はロータ2の磁気抵抗、R0は、突起部21の磁気抵抗、Rnは、永久磁石の磁気抵抗、F1、F2は、電磁石の吸引力(起磁力)、Fnは、永久磁石の吸引力(起磁力)である。この磁気回路では、突起部21から突極11への磁気抵抗を、3つに分け、突起部21から突極11へ垂直にいく磁気抵抗をR01、扇形の磁気抵抗をR0H1、R0H2、対応する突極側の磁気抵抗をxR2a、扇形の磁気抵抗を(1-x)R2a、R2bとして表している。
【0043】
この図19に示す磁気回路を数式で表現すると、以下のようになる。
【数1】
【0044】
また、従来のSRモータについて、ロータと磁極の位置関係であるときの磁路は、図20のように表され、その磁気回路は、図21に表される。
【0045】
ここで、ロータ2の回転に働く磁力線(扇形の磁力線の部分)をφ2Hとして求めると、φ2Hは、数2のように表現される。
【数2】
【0046】
図18のHBSRモータの吸引力FHBSRは、数式中のa、bについて、a=1.35、b=5として求めると、数3のように表される。ここで、SOHは扇形の磁力線が働く断面積を表す。
【数3】
【0047】
図20のSRモータのφ22と、吸引力FSRとは、以下のように表される。
【数4】
【0048】
そして、連結部14の径を93mm、ロータ2の突起部21までの径を45.8mm、ロータ2の突起部21のない部分の径を35.6mm、突極11の周方向の長さを6mmとして、ロータ2の突起部21が突極11に重なるまでのモータの吸引力を計算すると、図22のようになり、比較すると、本実施形態のHBSRモータの吸引力は少なくとも従来のSRモータの4倍のトルクが発生し、高トルク出力、高効率の出力が可能であることを示している。
【符号の説明】
【0049】
1 ステータ
11 突極
12 磁石
13 巻線
14 連結部
2 ロータ
21 突起部
23 回転軸

【要約】
高効率なハイブリッドSRモータを提供する。
磁性部材からなる複数の突極の先端が隣接する隙間に磁石を先端の横部に接するように配置し、前記突極を励磁するための巻線を有するステータと、突極に対向して設けられる突起部を有するロータとを有するリラクタンスモータであって、ロータの突起の周方向の長さは、対向する磁石、突起の周方向の長さと等しく、突極は、磁石が配置された横部が、巻線が施される基部側より太く形成された顎部を有し、ステータの突極数とロータの突起部数の比は、4:3であり、4相の駆動電流で駆動させる。
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図22