(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221221BHJP
【FI】
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2017103608
(22)【出願日】2017-05-25
【審査請求日】2020-03-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】細糸 強志
【合議体】
【審判長】林 毅
【審判官】山崎 慎一
【審判官】山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-37258(JP,A)
【文献】特開2013-132412(JP,A)
【文献】特開2015-142452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子を直列に接続してなるスイッチングレグを複数相分有するインバータ回路と、
前記上側スイッチング素子の駆動用電源を生成するためのブートストラップコンデンサと、
前記インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子をPWM制御するもので、前記PWM制御に用いる搬送波を生成するタイマを有し、前記タイマのカウント値を設定した比較値と比較することでPWM信号を生成する信号生成部を有する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記比較値を設定し、前記タイマのカウント動作を開始させると、所定の無効化時間が経過するまでは、少なくとも前記信号生成部による前記上側スイッチング素子への信号出力を無効化すると共に、前記上側スイッチング素子をオフ状態に維持し、
前記信号生成部を、上側スイッチング素子用と、下側スイッチング素子用との2つ備え、
前記無効化時間が経過すると、所定の充電時間が経過するまでは前記上側スイッチング素子用信号生成部の出力端子を非アクティブレベルにすると共に、前記下側スイッチング素子用信号生成部の出力端子をアクティブレベルにするインバータ装置。
【請求項2】
上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子を直列に接続してなるスイッチングレグを複数相分有するインバータ回路と、
前記上側スイッチング素子の駆動用電源を生成するためのブートストラップコンデンサと、
前記インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子をPWM制御するもので、前記PWM制御に用いる搬送波を生成するタイマを有し、前記タイマのカウント値を設定した比較値と比較することでPWM信号を生成する信号生成部を有する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記比較値を設定し、前記タイマのカウント動作を開始させると、所定の無効化時間が経過するまでは、少なくとも前記信号生成部による前記上側スイッチング素子への信号出力を無効化すると共に、前記上側スイッチング素子をオフ状態に維持し、
前記信号生成部を、上側スイッチング素子用と、下側スイッチング素子用との2つ備え、
前記無効化時間が経過すると、所定の充電時間が経過するまでは前記上側スイッチング素子用信号生成部の出力端子を非アクティブレベルにすると共に、前記下側スイッチング素子用信号生成部の出力端子をアクティブレベルに維持するか、又はアクティブレベルと非アクティブレベルとを交互に繰り返す状態とするインバータ装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記無効化時間が経過するまでは前記信号生成部の出力端子をハイインピーダンス状態にする請求項
1又は2記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インバータ回路を構成する上側スイッチング素子の駆動用電源を生成するためのブートストラップコンデンサを備えるインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インバータ回路を構成する上側スイッチング素子の駆動用電源を、ブートストラップコンデンサを充電制御して生成する構成については、例えば特許文献1,2等に開示されている。このような構成では、ブートストラップコンデンサの初期充電を完了してから、インバータ回路におけるスイッチング制御,例えばPWM制御を開始する必要がある。そして、スイッチング制御を行う制御回路の仕様によっては、動作開始後の初動期間内にPWM制御が不安定となるものがある。それに起因して、ブートストラップコンデンサの初期充電が十分に行われない場合には、スイッチング素子の駆動電圧が不足する。すると、上アーム側のスイッチング素子がオンラッチして上下アーム間に短絡電流が流れたり、当該素子が発熱する等のおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3661395号公報
【文献】特開平5-292755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に開示されている構成は何れも、動作開始後の初動期間内にPWM制御が不安定となる場合の対処については、全く言及がない。
そこで、初動期間内にPWM制御が不安定となる制御回路を用いた場合でも、短絡電流の発生や、発熱による誤動作等を確実に防止できるインバータ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のインバータ装置によれば、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子を直列に接続してなるスイッチングレグを複数相分有するインバータ回路と、
前記上側スイッチング素子の駆動用電源を生成するためのブートストラップコンデンサと、
前記インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子をPWM制御するもので、前記PWM制御に用いる搬送波を生成するタイマを有し、前記タイマのカウント値を設定した比較値と比較することでPWM信号を生成する信号生成部を有する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記比較値を設定し、前記タイマのカウント動作を開始させると、所定の無効化時間が経過するまでは、少なくとも前記信号生成部による前記上側スイッチング素子への信号出力を無効化すると共に、前記上側スイッチング素子をオフ状態に維持する。
そして、前記信号生成部を、上側スイッチング素子用と、下側スイッチング素子用との2つ備え、前記無効化時間が経過すると、所定の充電時間が経過するまでは前記上側スイッチング素子用信号生成部の出力端子を非アクティブレベルにすると共に、前記下側スイッチング素子用信号生成部の出力端子をアクティブレベルにする。
また、前記信号生成部を、上側スイッチング素子用と、下側スイッチング素子用との2つ備え、前記無効化時間が経過すると、所定の充電時間が経過するまでは前記上側スイッチング素子用信号生成部の出力端子を非アクティブレベルにすると共に、前記下側スイッチング素子用信号生成部の出力端子をアクティブレベルに維持するか、又はアクティブレベルと非アクティブレベルとを交互に繰り返す状態とする。
また、前記制御回路は、前記比較値を設定し、前記タイマのカウント動作を開始させると、前記無効化時間を設定するための待機カウンタにカウンタ値をセットする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態であり、洗濯機の電気的構成を示す回路図
【
図2】タイマRD0,RD1のカウント動作を開始した直後の期間を示すタイミングチャート
【
図3】
図2よりも長い期間に亘る動作を示すタイミングチャート
【
図5】洗濯機の構成を模式的に示す一部の縦断側面図
【
図6】第2実施形態であり、制御部による処理内容を示すフローチャート
【
図7】第3実施形態であり、制御部による処理内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
以下、ランドリー機器である洗濯機に適用した第1実施形態について
図1から
図5を参照して説明する。
図5に示すように、洗濯機10は、その外郭を構成する外箱11の内部に、上面が開放した有底円筒状の水槽12が弾性吊持機構13によって弾性的に支持されている。この水槽12の内部には、上面が開放した有底円筒状の回転槽14が回転可能に設けられている。回転槽14の底部には、当該回転槽14の底部を補強するための補強部材15が設けられている。回転槽14は、垂直な軸線を中心に回転するように構成されており、洗濯物を洗う洗い行程及び洗濯物をすすぐすすぎ行程における洗濯槽、及び、洗濯物を脱水する脱水行程における脱水槽として兼用される。つまり、洗濯機10は、回転槽14の回転中心軸が垂直方向に延びるいわゆる縦軸型洗濯機である。
【0008】
この回転槽14は、その周壁部に多数の孔16を有している。これらの孔16は貫通しており、通水及び通気が可能である。なお、
図5には多数の孔16のうちその一部のみを示している。回転槽14の上部には、例えば塩水等の液体が封入された合成樹脂製のバランスリング17が取り付けられている。回転槽14内の底部には、撹拌体として例えば合成樹脂で形成されたパルセータ18が回転可能に設けられている。
【0009】
水槽12の下部には排水経路19が設けられている。この排水経路19には排水弁20が設けられており、この排水弁20が開放されることにより、水槽12内の水が機外に排出される。また、水槽12の底部には、水位検知用のエアトラップ21が設けられている。
【0010】
水槽12の下部の中央部には駆動機構部23が設けられている。この駆動機構部23は、モータ24、及び図示しないクラッチ機構部等を備えている。駆動機構部23は、洗い行程時またはすすぎ行程時においては、クラッチ機構部により回転力をパルセータ18に伝達する。このため、洗い行程時またはすすぎ行程時に回転槽14は回転駆動されず、パルセータ18だけが回転駆動される。また、駆動機構部23は、脱水行程時においては、モータ24の回転力をクラッチ機構部によりパルセータ18及び回転槽14に伝達する。このため、脱水行程時にパルセータ18は、回転槽14と一体に回転駆動される。
【0011】
外箱11の上部には、トップカバー26が設けられている。このトップカバー26には、洗濯物出入口を開閉する例えば二つ折り式の蓋27が開閉可能に設けられている。なお、水槽12の上部には、図示しない槽カバーが開閉可能に取り付けられている。トップカバー26の前部には、操作パネル28が設けられている。操作パネル28の裏側には、洗濯機10の動作全般を制御する制御ユニット29が配置されている。
【0012】
トップカバー26内の後部には、水源からの水を水槽12内に供給する給水機構部30が設けられている。この給水機構部30は、図示しない給水弁や水槽12に連通する図示しない給水経路等を備えており、制御ユニット29が給水弁の開閉を制御することにより、水槽12内への給水が制御される。
【0013】
次に、洗濯機10の制御系に係る電気的構成について説明する。
図1に示すように、制御ユニット29は、PWM制御方式インバータであるインバータ回路50を備えている。インバータ回路50は、6個のIGBT51を三相ブリッジ接続して構成されており、各IGBT51のコレクタ-エミッタ間には、フライホイールダイオード52が接続されている。IGBT51はスイッチング素子に相当する。インバータ回路50の各相出力端子は、モータ24の各モータ巻線24aに接続されている。本実施形態では、モータ24として、例えばアウタロータ型の三相ブラシレスDCモータを採用している。
【0014】
下アーム側のIGBT51のエミッタには、それぞれ電流検出抵抗であるシャント抵抗53がグランドとの間に直列に接続されている。また、下アーム側のIGBT51のエミッタとシャント抵抗53との共通接続点は、過電流検出回路54及び抵抗分圧回路で構成されたレベルシフト回路64にそれぞれ接続されている。シャント抵抗53には、下アーム側のIGBT51がONしているタイミングで、モータ巻線24aと同じモータ相電流が流れる。したがって、その端子電圧は、モータ相電流に応じたレベルを示す。上アーム,下アームのIGBT51が直列に接続されることで、各相に対応するスイッチングレグが構成されている。
【0015】
過電流検出回路54は、インバータ回路50の上下アームが短絡した場合等に生じる過電流を検出するもので、三相分を検出するために図示しない3つのコンパレータを有している。これら3つのうち何れか1つ以上のコンパレータにおいて、入力電圧が予め設定されている閾値を超えるとその出力レベルが変化する。そして、コンパレータ出力の変化を受け付けた制御回路55により、PWM信号の出力が直ちにOFFされる。これにより回路素子の破壊等が防止される。
【0016】
シャント抵抗53には、インバータ回路50が動作する際にグランド電位に対して正負の端子電圧が発生する。そのため、レベルシフト回路64は、シャント抵抗53の端子電圧,すなわちIGBT51のエミッタとシャント抵抗53との共通接続点の電圧を、制御回路55に内蔵されている図示しないA/D変換器の入力範囲に合わせてレベルシフトする。レベルシフト回路64の電源電圧は、例えば図示しない3端子レギュレータによって5V電源から生成されており、本実施形態では3.3Vである。
【0017】
レベルシフト回路64は、電源電圧に接続されている3つの抵抗65a~67a、及び、これらの抵抗65a~67aとシャント抵抗53との間に直列に接続されている3つの抵抗65b~67bによって、シャント抵抗53の端子電圧をそれぞれ抵抗分圧して制御回路55に入力する。
【0018】
モータ24には、ロータの位置を検出するために例えばホールICなどで構成された回転位置センサ56が設けられており、回転位置センサ56が出力するセンサ信号が制御回路55に入力される。制御回路55は、モータ24の各モータ巻線24aに流れる電流値に基づいてフィードバック制御,例えばベクトル制御によりPWM信号を生成し、インバータ回路50に与えることでモータ24を制御する。制御回路55は、前述のようにA/D変換器等を内蔵したマイクロコンピュータで構成されている。
【0019】
インバータ回路50の入力側には、駆動用電源回路57が接続されている。駆動用電源回路57は、入力端子が100Vの交流電源61に接続される、ダイオードブリッジからなる全波整流回路58と、全波整流回路58の出力端子間に接続されるコンデンサ59a及び59bの直列回路とで構成されている。コンデンサ59a及び59bの共通接続点は、全波整流回路58の入力端子の一方に接続されている。駆動用電源回路57は、倍電圧全波整流により生成した約280Vの直流電圧をインバータ回路50に供給する。
【0020】
全波整流回路58の出力側には、制御ユニット29で使用する電源電圧,例えば5V,16Vの2種類の電圧をチョッピングにより生成する電源回路62が設けられている。電源回路62で生成された5Vの電源電圧は、制御回路55の動作用電源電圧や、回転位置センサ56のセンサ信号を制御回路55に入力するための反転バッファの電源にも使用されている。ユーザにより図示しない電源オンスイッチが操作されると、駆動用電源回路57が電圧を出力することで16V,5V電源が発生し、制御回路55が動作を開始する。また、16V電源は、後述するようにIGBT51のゲート駆動電圧に使用される。
【0021】
制御回路55は、三相のインバータ回路50に対応して、U相のモータ相電流を検出する入力端子:U相電流A/D,V相のモータ相電流を検出する入力端子:V相電流A/D,W相のモータ相電流を検出する入力端子:W相電流A/Dを備えている。
【0022】
制御回路55は、モータ24を駆動するためのPWM指令を生成する。また、制御回路55は、PWM信号の搬送波周期毎に、下アーム側のIGBT51がONするタイミングの中間付近で最低二相分,例えば下アームのON時間が長い相を選択し、それらの端子電圧をA/D変換してモータ相電流を取得する。制御回路55は、モータ24の回転に伴う回転位置センサ56の出力に基づきロータの位置を取得してPWM信号を調整し、モータ24のd軸電流及びq軸電流が適切な値となるようにベクトル制御演算を行い、モータ24を駆動制御する。
【0023】
制御回路55は、前記PWM信号を生成するために、2つのタイマRD0,RD1を備えている。タイマRD0は、上側IGBT51を駆動するPWM信号を生成出力するもので、上側スイッチング素子用信号生成部に相当する。タイマRD1は、下側IGBT51を駆動するPWM信号を生成出力するもので、下側スイッチング素子用信号生成部に相当する。尚、タイマRD0,RD1の出力端子は、外部よりハイレベル,ローレベル,ハイインピーダンス(Hi-z)への切替設定が可能となっている。これらの動作の詳細については後述する。
【0024】
タイマRD0,RD1の出力端子は、駆動回路86の入力端子に接続されている。そして、前記入力端子は、抵抗85によってプルダウンされている。タイマRD0,RD1により生成されたPWM信号は、駆動回路86を介して、更に上アーム側は高圧ドライバ87を介して各IGBT51のゲートに入力される。各IGBT51のエミッタと、高圧ドライバ87との間には、ブートストラップコンデンサ88が接続されている。制御回路55は、これらのブートストラップコンデンサ88を充電することで、高圧ドライバ87が上側のIGBT51のゲートを駆動するための電源電圧を生成させる。
【0025】
次に、本実施形態の作用について
図2から
図4を参照して説明する。
図2に示すように、制御回路55が備えるタイマRD0,RD1は、PWM制御に使用する例えば64μs周期の搬送波を互いに同期させて生成する。但し、タイマRD1のタイマ値は、タイマRD0の値よりも所定値だけ高くなるように設定されている。その所定値分の差によって、上側IGBT51,下側IGBT51間のスイッチングに0.7μsのデッドタイムを生じさせている。タイマRD0,RD1は、PWMデューティを決定するため、搬送波タイマ値と比較される値を設定するためのバッファを備えている。以下、前記バッファに設定される値を「コンペア値」と称する。
【0026】
ここで、制御回路55はマイクロコンピュータの特性として、タイマRD0,RD1の動作を開始させた直後はその動作が不安定となり、バッファに設定されたコンペア値との比較結果が正しく出力されない場合がある。
図2に示す「コンペア値更新=0」の後に、タイマRD1,RD0の出力レベルが瞬間的にロー,ハイレベルに変化している部分が不安定な動作によるものである。そこで本実施形態では、タイマRD0,RD1の動作開始後から所定の期間,例えば256μsは、
図3にも示すように初期禁止期間に設定してPWM信号の出力を禁止する。初期禁止期間は無効化時間に相当する。
【0027】
図4は、制御回路55により実行される処理を、本実施形態の要旨に係る部分について示すフローチャートである。このフローの実行周期は、例えば128μsであるとする。洗濯運転が開始されず,つまりモータ24を駆動する必要が無くPWM制御を開始する前の状態であれば(S1;NO)、タイマRD0,RD1より6つのIGBT51にPWM信号を出力するための端子を入力状態に、すなわちハイインピーダンス,Hi-z状態にセットする(S7)。この場合、駆動回路86の入力端子はプルダウンされているので、入力はローレベルとなる。そして、タイマRD0,RD1を何れもリセット状態又は停止状態に設定する(S8)。
【0028】
PWM制御が開始されても(S1;YES)タイマRD0,RD1が動作中でなければ(S2;NO)、ステップS7と同様の処理を行い(S3)コンペア値として「1」をセットする(S4)。ここでセットするコンペア値は、PWMデューティ100%,0%に相当する値以外であれば任意である。尚、コンペア値の設定はダブルバッファを介して行われるようになっており、制御回路55がセットしたコンペア値は
図2に示すように、搬送波がピークを示すタイミングで比較用のバッファに転送される。それから、タイマRD0,RD1の計時動作を開始させ(S5)、初期禁止期間を設定するための待機カウンタにカウンタ値「2」をセットする(S6)。
【0029】
次回の実行時には、ステップS2で「YES」と判断されて、待機カウンタの値「0」でないか否かを判断する(S9)。前記カウンタ値が「0」でなければ(YES)待機カウンタの値をデクリメントし(S10)、当該カウンタ値が「0」か否かを判断する(S11)。前記カウンタ値が「0」でなければ(NO)コンペア値として「0」をセットし(S12)、タイマRD0,RD1より各IGBT51にPWM信号を出力するための端子を出力状態に切換える(S13)。更に、ブートストラップコンデンサ88の充電時間を設定するための10m秒カウンタに、10m秒相当値をセットする(S14)。
【0030】
コンペア値=「0」はPWMデューティ100%に対応する。したがって、上側IGBT51はPWM周期に亘りオンを継続し、下側IGBT51はその反転でオフを継続する状態になる。これより、上側IGBT51を介してブートストラップコンデンサ88の初期充電が開始される。尚、ゲート信号に与えるハイレベルはIGBT51がオン状態になるアクティブレベルであり、同ローレベルは非アクティブレベルである。
【0031】
更に次の実行時には、待機カウンタの値が「0」となり(S9;NO)、タイマRD0,RD1の計時動作を開始させた時点から256μsが経過して初期禁止期間が終了する。
図2に示すように、初期禁止期間内に制御回路55がコンペア値「1」,「0」を設定しても、タイマRD0,RD1の動作が不安定であるため正しい比較結果,つまりPWM信号が生成されずとも、上記期間内はタイマRD0,RD1に基づくPWM信号の出力が禁止,つまり無効化されているので、意図しないデューティのPWM信号がインバータ回路50に出力されることはない。
【0032】
ステップS9で「NO」と判断すると、10m秒カウンタの値が「0」でないか否かを判断する(S15)。前記カウンタ値が「0」でなければ(YES)10m秒カウンタの値を減算する(S16)。そして、初期充電の開始から10m秒が経過すると(S15;NO)、ブートストラップコンデンサ88の初期充電を終了して通常のPWM制御に移行するため、コンペア値を通常のモータ制御に使用する値にセットする(S17)。
【0033】
以上のように本実施形態によれば、インバータ回路50を構成する上側IGBT51の駆動用電源を生成するためのブートストラップコンデンサ88を備える構成において、タイマRD0,RD1を内蔵する制御回路55を用い、上側,下側で互いに逆相となるPWM信号を生成出力する。制御回路55は、タイマRD0,RD1にコンペア値を設定し、カウント動作を開始させると、初期禁止期間が経過するまではタイマRD0,RD1の出力端子をハイインピーダンスに設定し、IGBT51への信号出力を無効化すると共に少なくとも上側IGBT51をオフ状態に維持する。
【0034】
このように構成すれば、タイマRD0,RD1のカウント動作を開始させた直後に、その動作が不安定になる制御回路55を用いた場合でも、短絡電流が流れることを確実に防止できる。また、上側IGBT51をゲート電圧が不足している状態で駆動することが無いので、発熱による誤動作などを防止できる。
【0035】
そして、制御回路55は、初期禁止期間が経過すると、コンペア値を「0」にしてタイマRD0,RD1による信号出力を有効化し、デューティ比0%に設定することで、充電時間が経過するまではタイマRD0の出力端子をローレベルにすると共に、タイマRD1の出力端子をハイレベルにする。これにより、実質的なPWM制御を開始する前に、ブートストラップコンデンサ88の初期充電を確実に行い、上側IGBT51のゲート電圧を十分なレベルに確保することができる。
【0036】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態を示すものであり、以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。第2実施形態では、ステップS3,S7に替わるステップS21において、上側IGBT51に対応するPWM信号の出力端子をローレベルに固定し、下側IGBT51に対応するPWM信号の出力端子をハイレベルに固定する。これにより、第1実施形態におけるデューティ比0%の設定と同様の信号出力状態となるから、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0037】
(第3実施形態)
図7に示す第3実施形態では、第2実施形態のステップS21,S4を、ステップS22,S23に置き換えている。また、ステップS12及びS13を削除している。ステップS22では、コンペア値を、タイマRD0の最大値の例えば1/10に設定する。それから、タイマRD0の出力端子をハイインピーダンス状態に設定し、タイマRD0の出力端子を有効化する(S23)。
【0038】
ここで、タイマRD0の最大値の1/10は、デューティ比10%に相当する。したがって、初期禁止期間ではタイマRD0の出力端子はハイインピーダンスであり、タイマRD0の出力端子はデューティ比10%でオンオフを繰り返す。初期禁止期間については、少なくとも上側IGBT51をオフ状態に維持すれば良く、下側IGBT51のスイッチング状態は問わない。したがって、この動作により、初期禁止期間においてもブートストラップコンデンサ88は充電される。
【0039】
初期禁止期間が経過すると、下側IGBT51の動作状態が継続したまま充電期間に移行する。そして、初期充電の開始から10m秒が経過すると(S15;NO)、ステップS13と同様に、タイマRD0,RD1より6つのIGBT51にPWM信号を出力するための端子を出力状態に切換えてから(S24)、ステップS17に移行する。このように構成した場合も、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0040】
(その他の実施形態)
制御回路は、1つのタイマを用いて上側,下側で互いに逆相となるPWM信号を生成する構成でも良い。
正弦波駆動を行うものに限らず、120度通電方式によるものに適用しても良い。
各電源電圧等については、個別の設計に応じて変更すれば良い。周波数や周期,各期間の具体数値ついても同様である。
スイッチング素子はIGBT51に限ることなく、MOSFETやパワートランジスタ等でも良い。
ドラム式洗濯機や洗濯乾燥機,乾燥機などのランドリー機器に適用しても良い。また、ランドリー機器に限ることなく、その他の製品等に使用されているインバータ装置に適用しても良い。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
図面中、10は洗濯機、50はインバータ回路、51はIGBT、55は制御回路、RD0,RD1はタイマを示す。