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特許7197972光硬化性樹脂組成物、被膜付基材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、被膜付基材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20221221BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20221221BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20221221BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D4/02
C09D133/04
C08F2/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017195143
(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公開番号】P2019065245
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 裕輝朗
(72)【発明者】
【氏名】本田 清二
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-092342(JP,A)
【文献】特開平09-052068(JP,A)
【文献】特開2001-288230(JP,A)
【文献】特開2012-021049(JP,A)
【文献】特開2002-194039(JP,A)
【文献】特開2008-202022(JP,A)
【文献】特開2011-148948(JP,A)
【文献】特開2012-025898(JP,A)
【文献】特開2012-252215(JP,A)
【文献】特開2014-201688(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116798(WO,A1)
【文献】特開2014-233946(JP,A)
【文献】特開2014-037416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-301/00
C09D 1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)、光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)、球状フィラー(C)、光重合開始剤(D)ならびに2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)を含有する住宅部材用光硬化性樹脂組成物であって、
前記単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)が、トリメチルシクロヘキシルアクリレートおよび(2メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートから選択される少なくとも1種であり、
前記光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーもしくはポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーであり、
前記2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)は、前記光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)以外のものである、住宅部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記球状フィラー(C)が、平均粒子径0.1~12μmの範囲内である請求項1に記載の住宅部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量が、住宅部材用光硬化性樹脂組成物の合計100質量%に対して10~50質量%の範囲にある、請求項1または2に記載の住宅部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
基材表面の少なくとも一部に、請求項1~のいずれか1項に記載の住宅部材用光硬化性樹脂組成物から形成された硬化被膜を有する被膜付基材。
【請求項5】
基材表面の少なくとも一部に、請求項1~のいずれか1項に記載の住宅部材用光硬化性樹脂組成物を塗布する塗装工程と、当該塗装面を光照射して該組成物を硬化させる光照射工程を有する被膜付基材の製造方法。
【請求項6】
前記塗装工程が、ロールコーターによって行われる請求項に記載の被膜付基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面に耐汚染性、低光沢性、表面平滑性に優れた被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物および被膜付基材、被膜付基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅の床材として、木質基材を用いる木質フローリング板が良く知られている。木質基材を床材として用いるために求められる性能としては、耐汚染性、耐擦傷性および耐薬品性等の機能面の他、木質基材の特徴を生かした肌触りや、無塗装感、低光沢などの美観面が要求される。
【0003】
汚れや傷がつき易い木質基材の表面を保護し、耐汚染性、耐擦傷性を向上させるため、一般に木質基材表面には、ウレタン樹脂組成物や光硬化性樹脂組成物によって、保護層が設けられている。
【0004】
一方、木質基材を住宅部材に用いた場合は、カウンター、手摺、ドア、収納扉等の手が触れる部位や、床材や階段踏み板等の足が接触する部位等に用いられるため、人間の皮膚が直接接触する機会が多い。そのため、近年では耐汚染性や耐擦傷性に加えて、素材感や風合い感、そして触感(ざらざら感がなく、優れた表面平滑性を有する)に配慮した上質感を有する木質基材が求められている。
【0005】
たとえば、特許文献1では、優れた触感、意匠性、耐汚染性、および耐擦傷性を有する木質建材の提供を目的として、シリカ微粒子、ポリエチレン微粒子、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性オリゴマー、反応性モノマー、および光重合開始剤を含有し、シリカ微粒子およびポリエチレン粒子の少なくとも一方が球状粒子である光硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0006】
一般に、フローリング板等の木質基材用途に用いる樹脂組成物は、ロールコーター(スポンジロールコーター、ナチュラルロールコーター、リバースロールコーター等)によって塗装される。さらに、硬化被膜を低光沢化する場合は、シリカや樹脂ビーズ等の艶消し剤を含む樹脂組成物が使用される。艶消し剤は、硬化被膜表面から突出して表面凹凸を形成し、光を乱反射させて光沢を低下させる。
【0007】
このようなロールコーター塗装では、塗料の粘度が高すぎないことが求められる。一方、前記の艶消し剤は吸油量が高く、塗料の粘度を向上させるため、反応性希釈剤を用いて粘度を調整することが行われ、低光沢塗料に関しては、反応性希釈剤として、一般的に単官能(メタ)アクリレートが用いられていた。また、反応性希釈剤を使用することで、有機溶剤を用いず、無溶剤型の光硬化性塗料とすることも可能となる。
【0008】
なお、本発明のように、表面張力が所定の範囲の反応性希釈剤と球状フィラーを組み合わせて、平滑性が高い光硬化性樹脂組成物を得るという技術的思想は先行文献に開示されていない。
【0009】
また、本発明で使用される単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)については、特許文献2および特許文献3にはその製造方法およびこれを用いた木工用トップコート等のコーティング剤が開示されているものの、球状フィラーと併用することは示唆がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2010-143153号公報
【文献】特開2004-059435号公報
【文献】特開2007-146071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、単官能(メタ)アクリレートモノマーの種類によっては、架橋密度が低く、硬化被膜の硬度が劣るため、硬化被膜表面に汚れが残り易く(耐汚染性が劣る)、さらに、ロールコーター塗装独特のローピングと呼ばれる現象(仕上がりにロール目が現れる現象)が生じ、表面の平滑性が損なわれ、手触りが悪くなるという問題があった。特に、艶消し剤の含有量が多い樹脂組成物の場合は、反応性希釈剤も増量する必要があり、このような現象が顕著となるという課題があった。
【0012】
なお、樹脂組成物の表面張力を下げることで被膜表面の平滑性を高くすることもできる。たとえば、シリコーン系やフッ素系のレベリング剤を組成物に添加することが一般的に知られている。しかしながら、無溶剤型の樹脂組成物においては、このようなレベリング剤を用いても効果は不十分であり、また、リコート性(硬化被膜の上層に、別の樹脂組成物を塗り重ねる際の付着性)を損なうという問題があった。
【0013】
また、樹脂組成物の塗装時に、フローコーター塗装を用いれば、表面平滑性に優れた硬化被膜を得られる利点があるものの、安定した被膜が得られるまでの時間を要する点や、膜切れ、泡ガミ等の不具合、さらに設備を導入していない製造ラインが多い等の欠点があるため、ロールコーターを用いながら、表面平滑性に優れる被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような状況の下、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)表面張力が所定の範囲にある単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(C)球状フィラーとを組み合わせることで、耐汚染性、低光沢性、表面平滑性に優れた硬化被膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
[1]表面張力が35.0dyn/cm以下の単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)、光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)、球状フィラー(C)ならびに光重合開始剤(D)を含有する光硬化性樹脂組成物。
[2]前記単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)がトリメチルシクロヘキシルアクリレート、(2-メチル-2-エチルー1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレートから選択される少なくとも1種である[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[3]前記光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーもしくはエステル(メタ)アクリレートオリゴマーである[1]または[2]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[4]さらに、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)を含有する[1]~[3]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[5]前記球状フィラー(C)が、平均粒子径0.1~12μmの範囲内である[1]~[4]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[6]住宅部材用である[1]~[5]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[7]基材表面の少なくとも一部に、[1]~[6]に記載の光硬化性樹脂組成物から形成された硬化被膜を有する被膜付基材。
[8]基材表面の少なくとも一部に、[1]~[6]に記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する塗装工程と、当該塗装面を光照射して該組成物を硬化させる光照射工程を有する被膜付基材の製造方法。
[9]前記塗装工程が、ロールコーターによって行われる請求項8に記載の被膜付基材の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる光硬化性樹脂組成物を使用することで、耐汚染性および表面平滑性が高く、低光沢性に優れた被膜を形成できる。さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物は、ロールコーター塗装の場合であっても、ローピングが解消され、フローコーター塗装に匹敵するほどの滑らかな硬化被膜を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本明細書における「平均粒子径」とは、JIS Z 8825:2013で規定されている「粒子径解析-レーザ回折・散乱法」を用いて測定された粒度分布のd50値のことを指す。d50値とは任意の分散媒中での体積基準の粒度分布から、小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径のことである。
【0018】
表面張力の測定方法としては、Wilhelmy法(プレート法、垂直板法)、du Nouy法(リング法、輪環法)、懸滴法(ペンダント・ドロップ法)、最大泡圧法、接触角を測定してヤングの式から算出する方法などが挙げられ、いずれの方法でも良いが、Wilhelmy法が好ましい。
【0019】
本明細書における、「単官能」、「2官能」および「多官能」が指す官能基とは、光重合性の(メタ)アクリレート基を示し、(メタ)アクリレート構造が1つの場合を単官能、2つの場合を2官能、2以上の場合を多官能という。
【0020】
<光硬化性樹脂組成物>
本発明の実施形態に係る光硬化性樹脂組成物は、光を照射することで硬化されて、硬化被膜を形成するものであり、単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)、光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)、球状フィラー(C)ならびに光重合開始剤(D)を含有する。以下、各成分について説明する。
【0021】
〔単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)〕
単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)は、光硬化性樹脂組成物の粘度を下げる反応性希釈剤として用いられ、表面張力が35.0dyn/cm以下の単官能の(メタ)アクリレートモノマー(A)であれば特に制限なく使用可能である。本組成物に用いられる単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
【0022】
単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)は、従来使用されていた単官能(メタ)アクリレートモノマーと比較して希釈性が高く、表面張力が低いため、ロールコーター塗装におけるローピングを軽減することが可能であり、得られる硬化被膜の耐汚染性にも優れている。表面張力が低い(A)成分と、球状粒子(C)とを併用することで、フローコーター塗装のような平滑性を有する、手触り感の良好な硬化被膜を得ることができる。また、皮膚への刺激性が少なくいため、フローリングなどの木質基材の上塗りに使用しても、かぶれなどを生じることも少ない。
【0023】
単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)としては、たとえば、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。
【0024】
また、式(I)で表されるオキソラン系(メタ)アクリレートであって、表面張力が35.0dyn/cm以下のものも挙げることができる。
【0025】
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖、分岐鎖もしくは環状の炭素数1~18のアルキル基またはフェニル基であり、R1とR2とは結合して環を形成していてもよい。R3 は水素原子または炭素数1~4の低級アルキル基を示す)
【0026】
直鎖、分岐鎖もしくは環状の炭素数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0027】
前記式(I)で表されるオキソラン系(メタ)アクリレートの代表例としては、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、などが挙げられる。
【0028】
前記単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)としては、硬化被膜の耐汚染性に優れる点から、環状骨格を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、具体的には、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートおよびイソボルニルアクリレート等が好ましい。中でも、トリメチルシクロヘキシルアクリレートまたは(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートが、皮膚刺激性(P.I.I)の低さによる安全性、樹脂組成物の希釈性能、得られる硬化被膜の耐汚染性等の物性や、低光沢性が可能な点でより好ましい。
【0029】
〔光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)〕
光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)は、本発明における光硬化性樹脂組成物のバインダーとして機能する。光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)は、光硬化性であって、例えば、少なくとも1つの不飽和二重結合を有するオリゴマーまたは樹脂が挙げられる。本組成物に用いられる光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
【0030】
前記不飽和二重結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等が挙げられ、光照射時の反応性等の点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0031】
本発明における光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られるオリゴマーまたは樹脂が好ましい。光硬化性(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル共重合体の側鎖にアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入した共重合系(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
このような光硬化性オリゴマーおよび/または光重合性樹脂(B)としては、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー等の(メタ)アクリレート系オリゴマーおよびウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエーテル(メタ)アクリレート系樹脂等の(メタ)アクリレート系樹脂が挙げられ、好ましくは、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーもしくはポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーであり、より好ましくは、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーである。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーまたは樹脂としては、例えば、イソシアネート化合物と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物と、任意にポリオール化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーまたは樹脂が挙げられる。
【0034】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の水酸基含有アルキルエステルが挙げられる。
【0036】
前記ポリオール化合物としては、例えば、水素化ビスフェノールAとエチレンオキサイドとの付加物、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0037】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーまたは樹脂としては、例えば、エポキシ系オリゴマーまたは樹脂に、(メタ)アクリル酸を付加させて得られる(メタ)アクリル酸変性エポキシ系オリゴマーまたは樹脂が挙げられる。変性に供される前記エポキシ系オリゴマーまたは樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSまたはフェノールノボラックと、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるオリゴマーまたは樹脂、シクロペンタジエンオキシドまたはシクロヘキセンオキシドと、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるオリゴマーまたは樹脂が挙げられる。
【0038】
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーまたは樹脂としては、例えば、多塩基酸またはその無水物と多価アルコールとから合成されるポリエステル系オリゴマーまたは樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーまたは樹脂が挙げられる。
【0039】
前記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、イソセバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ピメリン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
【0040】
前記多価アルコールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0041】
ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーまたは樹脂としては、例えば、ポリエーテルとエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応によって得られるポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー又は樹脂が挙げられる。
【0042】
前記ポリエーテルとしては、例えば、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールなどをエトキシ化やプロポキシ化などすることにより得られたポリエーテル、1,4-ブタンジオールなどをポリエーテル化することにより得られたポリエーテルが挙げられる。
【0043】
光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)を用いることで、硬質の被膜を形成することができ、被膜付基材に必要な耐汚染性および耐擦傷性を効果的に付与することができる。
【0044】
〔球状フィラー(C)〕
球状フィラー(C)は、艶消し剤として機能し、平均粒子径が好ましくは0.1~12μmの範囲、より好ましくは1~9μm、さらに好ましくは2~5μmの範囲にある球状の粒子が使用される。球状フィラー(C)を用いることで、硬化被膜を低光沢化することが可能となる。また、平均粒子径がこの範囲内にある球状フィラーは、手触りの触感(例えば、すべすべ感、柔らかさ(以降、省略し単に「触感」と称する。))を向上させることが可能となる。球状フィラー(C)は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
【0045】
球状フィラー(C)としては、例えば、球状シリカ等の無機球状フィラー、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、シリコンビーズ等の有機球状フィラーが用いられる。
球状フィラーとして、無機球状フィラーを用いる場合、非晶質の球状シリカが好ましい。
【0046】
球状シリカは表面処理がなされていてもよい。表面処理がなされていると、被膜の耐薬品性、耐汚染性を向上できる他、組成物の粘度上昇を抑制できる。なお、表面処理方法には特に限定はないが、有機ケイ素化合物やワックスなどによる有機化合物を用いた処理、シランカップリング剤などの無機化合物を用いた処理が挙げられる。
【0047】
球状フィラーとして、有機球状フィラーを用いる場合、ウレタンビーズが好ましい。有機球状フィラーは、主成分以外の他の樹脂成分を含んでいてもよく、例えば、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリプロピレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等を含んでも構わない。なお、主成分とは、当該有機球状フィラーの50質量%を超える成分を指す。
【0048】
〔光重合開始剤(D)〕
光重合開始剤(D)は、光照射によりラジカルまたはカチオンを発生し、前述の単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)、光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)ならびに後述する2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)を反応させ、本組成物を硬化可能な化合物であれば特に制限されない。光重合開始剤(D)は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
【0049】
光重合開始剤(D)としては、例えば、アルキルフェノン系開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤、水素引抜型開始剤が挙げられる。
アルキルフェノン系開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンが挙げられる。
【0050】
アシルフォスフィンオキサイド系開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0051】
水素引抜型開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、カンファーキノン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルが挙げられる。
【0052】
これらの中でも、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、オキシ-フェエル-アセチックアシッド-2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルと2-オキシ-フェニル-アセチックアシッド-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルの混合物が好ましい。
【0053】
〔2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)〕
本発明の光硬化性樹脂組成物は、組成物の粘度調整および硬度、耐汚染性の向上のため、任意成分として、前記光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)以外の2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)を含んでいてもよい。2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)は反応性希釈剤として用いられるとともに、被膜の架橋密度の調整に用いられる。2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
【0054】
2官能(メタ)アクリレートモノマー(E)としては、従来公知のものを使用でき、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PEG200#ジ(メタ)アクリレート(EO部がn≒4)、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PEG300#ジ(メタ)アクリレート(EO部がn≒6)、PEG400#ジ(メタ)アクリレート(EO部がn≒9)、PEG600#ジ(メタ)アクリレート(EO部がn≒13~14)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO付加ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(EO変性)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのEO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリル酸安息香酸エステル等を挙げることができる。
【0055】
また、2官能超の多官能(メタ)モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(PO部がn=2または3)、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、PO付加グリコールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0056】
光硬化性樹脂組成物の組成
本発明における光硬化性樹脂組成物の合計100質量%に対して、単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)の含有量は、10~50質量%の範囲が好ましく、20~40質量%の範囲がより好ましい。
【0057】
光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)の含有量は、光硬化性樹脂組成物の合計100質量%に対して、20~50質量%の範囲が好ましく、25~40質量%の範囲がより好ましい。単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)と光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)との質量比(A/B)は、よりその効果を発揮できるため、1/3~5/3の範囲が好ましく、2/3~4/3の範囲にあることが、より好ましい。
【0058】
球状フィラー(C)の含有量は、光硬化性樹脂組成物の合計100質量%に対して、10~50質量%の範囲が好ましく、10~30質量%の範囲がより好ましい。
光重合開始剤(D)の含有量は、光硬化性樹脂組成物の合計100質量%に対して、2~6質量%の範囲が好ましく、3~5質量%の範囲がより好ましい。当該配合量が下限値以上であれば、被膜の硬化を十分行うことができ、耐汚染性が向上する。一方、当該配合量が上限値以下であれば、被膜の耐候性が良好となり黄変するおそれも少なくなる。
【0059】
2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)の含有量は、光硬化性樹脂組成物の合計100質量%に対して、10~30質量%の範囲が好ましく、15~25質量%の範囲がより好ましい。2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)と光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)との質量比(E/B)は、よりその効果を発揮できるため、1/4~4/4の範囲が好ましく、2/4~3/4の範囲にあることが、より好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記各成分を公知の手段で混合することで調製可能である。
【0060】
〔添加剤〕
本組成物は、必要に応じて、前述した成分以外のその他の添加剤を配合してもよい。
その他の添加剤としては、本発明の分野で通常用いられてきた添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で用いることができ、例えば、有機溶剤、レベリング剤、消泡剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、艶消し剤、沈降防止剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0061】
これらの配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜調整することができる。
前記その他の添加剤は、それぞれ、1種単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
本組成物には、粘度を所定の範囲に調整する等の点から、有機溶剤を配合してもよい。
【0062】
有機溶剤としては、従来公知の溶剤を用いることができる。例えば、芳香族炭化水素類(例:キシレン、トルエン)、ケトン類(例:メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル類(例:酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル)、アルコール類(例:イソプロピルアルコール、ブタノール)、グリコールエーテル類(例:プロピレングリコールモノメチルエーテル)が挙げられる。
【0063】
本組成物は、溶剤で希釈しない無溶剤組成物とすることが可能である。作業者の健康や環境面、揮発性溶剤が残留する危険を考慮すると、無溶剤組成物であることが望ましい。
また、無溶剤組成物の場合、作業性に優れる観点から、紫外線(UV)照射により硬化する組成物であることが好ましい。UV照射は、大気、窒素雰囲気、炭酸ガス雰囲気等の環境下で行うことができる。
【0064】
本組成物には、該組成物を塗布した際の塗膜のハジキを改善して、基材面への濡れ性を向上させ、膜厚の均一な硬化被膜を容易に形成できる等の点から、レベリング剤を配合してもよい。
【0065】
レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系、アクリル系、シリコン系等の各種レベリング剤が挙げられる。
本組成物の固形分100質量%に対するレベリング剤の配合量は、好ましくは0.01~1.5質量%、より好ましくは0.05~1.0質量%である。
【0066】
本組成物には、該組成物における気泡の発生を抑制し、外観が良好な硬化被膜を容易に形成できる等の点から、消泡剤を配合してもよい。
消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系、シリコン系等の各種消泡剤が挙げられる。
【0067】
本組成物の固形分100質量%に対する消泡剤の配合量は、好ましくは0.0001~1.0質量%である。
本組成物には、該組成物における球状フィラー(C)の分散性を向上し、外観が良好な硬化被膜を容易に形成できる等の点から、分散剤を配合してもよい。
【0068】
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸、リン酸、アミン等の顔料吸着基を有し、脂肪酸、ポリアミノ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート等の相溶性鎖を有するコポリマーや共重合体等の各種分散剤等が挙げられる。
本組成物の固形分100質量%に対する分散剤の配合量は、好ましくは0.1~10質量%である。
【0069】
<本組成物の用途>
本組成物の用途は特に限定されないが、壁、床、天井、ドア、階段、家具、窓枠等の住宅用部材に用いることが好ましい。本組成物によると、耐汚染性、表面平滑性(触感)および低光沢性に優れる硬化被膜を形成できるため、特に木質基材を用いた床材の塗装に好適である。
【0070】
〔硬化被膜、硬化被膜付基材〕
本発明に係る硬化被膜は、前記本組成物から形成された膜であり、具体的には、本組成物を光照射により硬化させる工程(硬化工程)を含むことで製造することができる。
【0071】
また、本発明に係る硬化被膜付基材は、基材と該硬化被膜とを含む。
前記硬化被膜および該硬化被膜付基材は、具体的には、本組成物を基材の少なくとも一部に塗布する工程(塗布工程)と、その後、光照射により塗布された本組成物を硬化させる工程(硬化工程)とを含むことで製造することができる。
【0072】
<基材>
基材としては、特に制限されず、前記硬化被膜を形成したい被塗物であればよく、木材(木質基材)、プラスチック、紙、金属、ガラス、セラミックス、コンクリート等を挙げることができる。プラスチックとしては、例えば、各種プラスチック基材(例:トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルホン、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリルニトリル等から形成されるフィルムや成形体)が挙げられる。基材としては、木質基材が好ましい。
【0073】
住宅部材に使用される木質基材は、突き板貼りや紙貼り、シート貼り基材であってもよく、無垢材であってもよい。また、当該木質基材は、素材感や風合い感(外観、肌触り感)を損なわない範囲内で、必要に応じて従来公知の目止処理、着色処理等を予め表面に施すことができる。また、従来公知の下塗塗料、さらには中塗塗料を塗布することもできる。なお、当該下塗塗料および当該中塗塗料は、一般に塗料を塗布する際に適用されている手段、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、ロールコーター、およびフローコーター等により塗布することができる。下塗塗料、中塗塗料としては、紫外線硬化型塗料が使用され、無溶剤型の紫外線硬化型塗料がより好ましい。
【0074】
<塗布工程>
前記塗布工程における塗布(コーティング)方法としては、用いる本組成物の組成および基材の種類等に応じて適時選択すればよいが、例えば、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、ディッピング法が挙げられる。
【0075】
本発明にかかる組成物は、ロールコーター塗装(ロールコート法)の場合であっても、ローピングが解消され、フローコーター塗装に匹敵するほどの滑らかな硬化被膜を得ることが可能である。ロールコーターは、一般的に用いられている塗装設備であり、設備を導入しているユーザーも多いことから、大きな設備投資をすることなく、本発明の組成物を適用することが可能となるため、塗装工程は、ロールコート法によって行われることが好ましい。
【0076】
前記塗布工程の後、前記硬化工程の前に、塗布された組成物を乾燥させる乾燥工程を設けてもよい。この乾燥工程は、乾燥時間を短縮させるため、5~120℃程度の加熱下で行ってもよい。
【0077】
<硬化工程>
前記硬化工程において照射される光としては、活性エネルギー線が好ましく、該活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線などの電磁波、電子線、プロトン線、中性子線が挙げられ、これらの中でも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格などの点から、紫外線が好ましい。
【0078】
紫外線を照射する光源としては、200~500nmの波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極ランプ、LEDランプ等を挙げることができる。
【0079】
紫外線照射の条件としては、照射強度は、好ましくは50~500mW/cm2であり、より好ましくは、100~350mW/cm2である。積算照度は、通常50~3,000mJ/cm2、好ましくは、100~500mJ/cm2、より好ましくは、100~350mJ/cm2である。
前記硬化工程では、光を照射した後、または、光を照射する際に、硬化時間を短縮させるために、5~120℃程度の加熱を行ってもよい。
【0080】
〔被膜の膜厚〕
硬化後の被膜の膜厚は、所望の機能を発揮できる程度の厚みであれば特に限定されないが、通常5~50μm、好ましくは5~20μmである。
【0081】
なお、このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、特に所望とする効果に応じ、2回(必要によりそれ以上)の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
なお、上記に記載した工程以外であっても、必要に応じて、被膜付基材を製造する際に公知の工程を行っても構わない。
【0082】
〔樹脂組成物の塗布量〕
基材に対する本発明の樹脂組成物の塗布量は、特に制限されないが、機能を十分に発揮するため、樹脂組成物の固形分換算で5~20g/m2が好ましい。樹脂組成物の塗布量がこの範囲にあると、得られる被膜付基材の耐汚染性を高く維持でき、素材感や風合い感等の意匠性(美観)および表面平滑性(触感)を共に高く維持できる。
【実施例
【0083】
次に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
[実施例1~11および比較例1~5]
<光硬化性樹脂組成物の製造方法>
下記材料を表1に示す配合量でディスパーを用いて均一に混合し、光硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表1における光硬化性樹脂組成物の欄の数値は、質量部を示す。
【0084】
<単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)>
TMCHA:トリメチルシクロヘキシルアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、表面張力:26.3dyn/cm)
MEDOL-10:(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、表面張力:32.3dyn/cm)
比較例に以下の単官能(メタ)アクリレートモノマー(A)を使用した。
GX8301S(MTGA):メトキシトリエチレングリコールアクリレート(第一工業製薬(株) 製、表面張力:35.1dyn/cm)
DCPEA:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成(株)製、表面張力:36.0dyn/cm)
CTFA:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(Miwon Specialty Chemical製、表面張力:36.2dyn/cm)
ACMO:アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ(株)製、表面張力:44.6dyn/cm)
4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、表面張力:54.9dyn/cm)
【0085】
<光硬化性オリゴマーおよび/または光硬化性樹脂(B)>
2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(Miwon Specialty Chemical製)
【0086】
<2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(E)>
HDDA(EO):EO変性1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Miwon Specialty Chemical製)
TMPTA(EO):EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(Miwon Specialty Chemical製)
【0087】
<光重合開始剤(D)>
I-184(BASFジャパン(株)製、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)
I-754(BASFジャパン(株)製、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルとの混合物)
<球状フィラー(C)>
ミズパール K-300:(水澤化学工業(株)製、球状シリカ、平均粒子径2μm)
アートパール C-1000透明:(根上工業(株)製、ウレタンビーズ、平均粒子径3μm)
アートパール C-800透明:(根上工業(株)製、ウレタンビーズ、平均粒子径6μm)
アートパール C-600透明:(根上工業(株)製、ウレタンビーズ、平均粒子径10μm)
ETERPEARL-GP3200:(長興材料工業(株)製、シリコンビーズ、平均粒子径2μm)
ETERPEARL-GP3500:(長興材料工業(株)製、シリコンビーズ、平均粒子径5μm)
ETERPEARL-GP3901:(長興材料工業(株)製、シリコンビーズ、平均粒子径9μm)
ガンツパール GM-0105:(アイカ工業(株)製、アクリルビーズ、平均粒子径2μm)
ガンツパール GM-0801:(アイカ工業(株)製、アクリルビーズ、平均粒子径8μm)
ガンツパール GM-1001:(アイカ工業(株)製、アクリルビーズ、平均粒子径10μm)
【0088】
<被膜付基材の作製>
基材として木質フローリング板を使用した。まず初めに、水系着色剤(ステイン W UD、中国塗料(株)製)をロールコーターで木質フローリング板に塗布し、JET乾燥機によって100℃×1分乾燥して着色した。
【0089】
着色後、その上に、下塗塗料として、紫外線硬化型無溶剤塗料(オーレックスNo.822F HSG、中国塗料(株)製)を、ロールコーターにて塗布量2.0g/尺2で塗布し、紫外線を積算照度:100mJ/cm2、照射強度:100mW/cm2の条件で照射して硬化させ、下塗硬化被膜を形成した。
【0090】
次いで、得られた下塗硬化被膜上に、中塗塗料として、紫外線硬化型無溶剤塗料(オーレックスNo.673B、中国塗料(株)製)を、ロールコーターにて塗布量2.0g/尺2で塗布し、紫外線を積算照度:100mJ/cm2、照射強度:100mW/cm2の条件で照射して硬化させ、中塗硬化被膜を形成した。
【0091】
更に、得られた中塗硬化被膜上に、上塗塗料として、実施例1~11および比較例1~5で得られた光硬化性樹脂組成物を、ロールコーターにて塗布量1.5g/尺2で塗布し、紫外線を積算照度:300mJ/cm2、照射強度:300mW/cm2の条件で照射して硬化させ、硬化被膜付木質フローリング板を得た。
【0092】
<評価方法>
次に、得られた被膜付基材に対し、以下に示す評価を行った。
(1)硬化性
紫外線積算照度計「UVPF-A1」(アイグラフィック社製)を使用して、1パスが照度40mJ/cm2、照射量80mW/cm2での条件で紫外線を照射し、綿棒で擦った後、硬化被膜に擦り傷が付くか否かで判断し、擦り傷が付かないパス数を評価した。なおパス数が2以下で合格とした。
【0093】
(2)光沢度
グロスチェッカー「IG-320」(HORIBA製)を使用して、硬化被膜の光沢度を測定、評価した。なお、本発明では、光沢度30以下を合格とした。
【0094】
(3)耐汚染性
合板の日本農林規格で定める汚染B試験に基づいて、被膜付基材に対し、青インキを用いて試験を行った。
なお、耐汚染性試験の評価基準は以下の通りであり、○評価を合格とした。
○:試験終了後、青インクの痕がわからない状態
△:試験終了後、青インクの痕がわずかにわかる状態
×:試験終了後、青インクの痕がわかる状態
【0095】
(4)平滑性
被膜付基材に対し、硬化被膜を手で触った際の触感によって評価した。
なお、平滑性の評価基準は以下の通りであり、△評価以上を合格とした。
○:全く凹凸を感じない仕上がり
○△:ほとんど凹凸を感じない仕上がり
△:凹凸を感じる仕上がり
×:大きく凹凸を感じる仕上がり
【0096】
<評価結果>
実施例1~11および比較例1~5について、それぞれの評価結果を表1に示す。
【0097】
【表1】