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  • 特許-両面粘着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】両面粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/26 20180101AFI20221221BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221221BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C09J7/26
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018025030
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019026824
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2017148405
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】田村 彰規
(72)【発明者】
【氏名】椿 裕行
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 博之
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252095(JP,A)
【文献】実開平02-136042(JP,U)
【文献】特開2015-155528(JP,A)
【文献】国際公開第2013/154137(WO,A1)
【文献】特開平07-278507(JP,A)
【文献】特開2002-338919(JP,A)
【文献】特開2010-155969(JP,A)
【文献】特開2007-119584(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146108(WO,A1)
【文献】特開2005-052936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一表面および第二表面がいずれも粘着面となっている両面粘着シートであって、
シート状の発泡体基材と、
前記発泡体基材の第一面側に配置された第一被覆部と、
前記発泡体基材の第二面側に配置された第二被覆部と
を含み、
前記発泡体基材は、ポリオレフィン系発泡体基材であり、
前記第一被覆部は、前記第一表面に露出する粘着剤層と該粘着剤層と結合して設けられている補強層Aとを含み、
前記補強層Aの長手方向の引張強度は1N/15mm以上50N/15mm以下であり、
前記補強層Aは空隙を有し、前記第一表面に露出する粘着剤層を構成する粘着剤が前記空隙に含浸しており、
前記第二被覆部は、前記第二表面に露出する粘着剤層と、該粘着剤層と結合して設けられている補強層Bとを含む、両面粘着シート。
【請求項2】
前記補強層Aは繊維質シートである、請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記補強層Aの厚さは20μm以上150μm以下である、請求項1または2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
前記第一表面に露出する粘着剤層は、活性エネルギー線重合性粘着剤組成物から形成された粘着剤により構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
前記第一表面に露出する粘着剤層は、ゲル分が70%以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項6】
前記補強層Aの外面は前記第一表面に露出する粘着剤層で覆われており、前記第一表面に露出する粘着剤層が前記外面を覆う厚さは10μm以上200μm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項7】
前記発泡体基材の厚さは200μm以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項8】
前記発泡体基材の25%圧縮強度は30kPa以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シートに関する。より詳しくは、発泡体基材を備える両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、基材の両面に粘着剤層を有する基材付き両面粘着シートの形態で、様々な分野において接合や固定などの目的で広く利用されている。
【0003】
上記基材として気泡構造を有する発泡体を用いた基材付き両面粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)は、気泡構造を有しないプラスチックフィルムを基材とする両面粘着シートに比べて、衝撃吸収性や表面形状追従性(例えば、段差追従性)等の点で有利なものとなり得る。このため、発泡体基材付き両面粘着シートは、携帯電話等の電子機器における部品の接合や固定等に好ましく適用され得る。発泡体基材付き両面粘着シートに関する技術文献として、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5537613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の携帯電話やスマートフォン等の電子機器の高性能化に伴い、両面粘着シートによって固定されるレンズ等の部材(被着体)の重量が、より重くなってきている。このため、電子機器に使用される両面粘着シートには、該電子機器に落下等による強い衝撃が加わった場合であっても剥離することなく、部材を強固に固定・保持できる機能が求められてきている。一方、両面粘着シートを用いた製品の製造においては、製造中や製造後の検査において不具合が判明した場合に、製品中の部材を再利用するために当該部材から両面粘着シートを剥離(再剥離)する、いわゆる「リワーク」を実施する場合がある。また、使用後の製品を解体したり、当該製品から部材を回収する際には、当該部材から両面粘着シートを剥離する場合がある。
【0006】
しかし、一般に、被着体をより強固に固定することのできる両面粘着シートは、該被着体からの剥離がより困難となる傾向にある。特に、発泡体基材を用いた両面粘着シートでは、被着体との接合強度を高めると、剥離作業の際に上記発泡体基材が途中で千切れたり、該発泡体基材の層間剥離(発泡体基材がその厚み内部で裂ける剥離形態)が生じたりしがちであった。この点に関し、特許文献1に記載の技術では、発泡体基材の構造や架橋度の選択、粘着力の経時上昇抑制等によって、発泡体基材付き両面粘着シートにおいて部材を強固に固定する性能と該部材からの剥離性との両立を図っている。しかし、生産性やリサイクル効率を向上させる観点から、被着体からの剥離性(例えばリワーク性)をさらに改善したいとの要請がある。本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この明細書により提供される両面粘着シートは、第一表面および第二表面を備える。上記両面粘着シートは、該シートの両面、すなわち上記第一表面および上記第二表面が、いずれも粘着面となっている。上記両面粘着シートは、シート状の発泡体基材と、上記発泡体基材の第一面側に配置された第一被覆部と、上記発泡体基材の第二面側に配置された第二被覆部とを含む。上記第一被覆部は、上記第一表面に露出する粘着剤層と該粘着剤層を結合して設けられている補強層とを含む。上記第二被覆部は上記第二表面に露出する粘着剤層を含む。このような構成を有する両面粘着シートは、上記補強層を有することにより、被着体からの剥離時における両面粘着シートの千切れや裂けを抑制することができ、改善された剥離性(例えばリワーク性)を示すものとなり得る。また、上記両面粘着シートは、発泡体基材を備えることにより、良好な衝撃吸収性や段差吸収性を発揮し得る。
【0008】
上記補強層は空隙を有することが好ましい。そのような補強層の構成材料としては、例えば紙等の不織布のように、空隙を有するシート材を好ましく用いることができる。上記粘着剤層を構成する粘着剤が上記空隙に含浸していることが好ましい。これにより、補強層と粘着剤層との結合性を高め、剥離後の被着体表面に粘着剤の残渣が残る事象、すなわち糊残りの発生を好適に防止することができる。以下、糊残りを発生しにくい性質のことを「非糊残り性」ともいう。
【0009】
いくつかの好ましい態様において、上記補強層は繊維質シートであり得る。繊維質シートは、変形容易性に優れ、該両面粘着シートの巻回や折り曲げに対する適応性が高い。したがって、ここに開示される補強層として好適に使用され得る。
【0010】
いくつかの態様において、上記補強層の厚さは、例えば20μm以上150μm以下であり得る。この範囲であると、両面粘着シートの表面形状追従性を大きく損なうことなく、該両面粘着シートの千切れや裂けが好適に防止される傾向にある。
【0011】
いくつかの態様において、上記第一表面に露出する粘着剤層は、活性エネルギー線重合性粘着剤組成物から形成された粘着剤により構成され得る。活性エネルギー線重合性粘着剤組成物を用いると、粘着剤層と補強層との密着性の高い第一被覆部を形成しやすい。特に、活性エネルギー線重合性粘着剤組成物を補強層に接触(例えば含浸)させた状態で、該活性エネルギー線重合性粘着剤組成物の重合反応を進行させることが好ましい。
【0012】
いくつかの態様において、上記第一表面に露出する粘着剤層は、ゲル分が70%以上であることが好ましい。このような粘着剤層は、凝集性が高く、非糊残り性に優れたものとなりやすい。
【0013】
ここに開示される両面粘着シートにおいて、上記補強層の外面は、上記第一表面に露出する粘着剤層で覆われていることが好ましい。ここで、補強層の外面とは、発泡体基材から遠い側の面をいい、第一被覆部を構成する補強層では両面粘着シートの第一表面に近い側の面をいう。また、補強層の内面とは、上記外面とは反対側の面、すなわち発泡体基材に近い側の面をいう。上記第一表面に露出する粘着剤層が上記補強層の外面を覆う厚さは、例えば10μm以上200μm以下であり得る。この範囲の厚さであると、被着体に対する高い粘着力と、該被着体から剥離する際における非糊残り性とが、より高レベルで両立される傾向にある。
【0014】
なお、以下において、粘着剤層が補強層の外面を覆う厚さを「外面被覆厚さ」ということがある。また、補強層の内面が粘着剤層で覆われている場合、該粘着剤層が補強層の内面を覆う厚さを「内面被覆厚さ」ということがある。いくつかの好ましい態様において、第一被覆部は、空隙を有する補強層と、上記補強層の空隙に含浸し、さらに該補強層の外面および内面を覆う粘着剤層とを含んで構成され得る。
【0015】
いくつかの態様において、上記発泡体基材としては、ポリオレフィン系発泡体基材を好ましく採用し得る。ポリオレフィン系発泡体基材を有する両面粘着シートにおいて、本発明の適用効果が特によく発揮され得る。
【0016】
いくつかの態様において、上記発泡体基材の厚さは200μm以上である。発泡体基材の厚さが大きくなると、耐衝撃性は向上する一方、従来の構成では発泡体基材の裂け(層間剥離)が生じやすくなる傾向にある。したがって、発泡体基材の厚さが200μm以上である態様によると、本発明の適用効果が特によく発揮され得る。
【0017】
いくつかの態様において、上記発泡体基材の25%圧縮強度は30kPa以上である。このような圧縮強度を有する発泡体基材を用いることにより、良好な衝撃吸収性や段差吸収性を発揮し、かつ部材を強固に固定する性能と剥離性とを高レベルで両立する両面粘着シートが好適に実現される傾向にある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る両面粘着シートの構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0020】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により被着体に接着する性質を有する材料をいう。また、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマー、すなわち室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーのうちの主成分をいう。本明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分をいう。
【0021】
ここに開示される両面粘着シートは、第一表面に露出する粘着剤層を有する第一被覆部と、第二表面に露出する粘着剤層を有する第二被覆部と、上記第一被覆部と上記第二被覆部との間に配置された発泡体基材とを含み、上記第一表面および上記第二表面がいずれも粘着面となるように構成されている。上記第一被覆部および上記第二被覆部は、それぞれ。上記発泡体基材の第一面側および第二面側に配置されている。上記第一被覆部は、上記第一表面(第一粘着面)に露出する粘着剤層と結合して設けられている補強層をさらに含む。上記第二被覆部は、上記第二表面(第二粘着面)に露出する粘着剤層と結合して設けられている補強層を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。なお、本明細書でいう粘着シートの概念には、テープ状等の長尺状の形態その他、種々の外形形状を有するものが含まれ得る。
【0022】
ここに開示される両面粘着シートの一構成例を図1に模式的に示す。この実施形態に係る両面粘着シート10は、発泡体基材15と、発泡体基材15の第一面15Aおよび第二面15Bにそれぞれ固定的に(剥離する意図なく)設けられた第一被覆部11および第二被覆部12とを有する。
【0023】
第一被覆部11は、両面粘着シート10の第一表面10Aに露出する第一粘着剤層112を含む。すなわち、第一粘着剤層112の外面112Aは、両面粘着シート10の第一表面(第一粘着面)10Aを兼ねる。第一粘着剤層112の内面112Bは、発泡体基材15の第一面15Aに結合(接合)している。第一被覆部11は、第一粘着剤層112に結合して設けられている補強層114をさらに含む。この実施形態では、補強層114は第一粘着剤層112の厚み内に埋設されている。言い換えると、補強層114は、第一粘着剤層112の外面112Aと内面112Bとの間に配置されている。この実施形態では、空隙を有するシート材(例えば、不織布等の繊維質シート)が補強層114として用いられ、第一粘着剤層112を構成する粘着剤が上記空隙に含浸している。補強層114は、第一粘着剤層112を構成する粘着剤が補強層114の外面114Aおよび内面114Bを覆っていることに加えて、上記空隙に上記粘着剤が含浸することにより、上記第一粘着剤層を構成する粘着剤と結合している。以下、粘着剤層を構成する粘着剤が補強層に含浸していることを、簡略化して、粘着剤層が補強層に含浸していると表現することがある。
【0024】
第二被覆部12は、両面粘着シート10の第二表面10Bに露出する第二粘着剤層122を含む。すなわち、第二粘着剤層122の外面122Aは、両面粘着シート10の第二表面(第二粘着面)10Bを兼ねる。第二粘着剤層122の内面122Bは、発泡体基材15の第二面15Bに結合(接合)している。第二被覆部12は、図1に示すように、第二粘着剤層122に結合して設けられている補強層124をさらに含み得る。補強層124の構成や配置は、第一被覆部11における補強層114の構成や配置と同様であってもよく、異なってもよい。あるいは、補強層124は省略されてもよい。すなわち、第二被覆部12が補強層を含んでいなくてもよい。図1に示す例では、第二被覆部12は、第一被覆部11と同様に構成され、発泡体基材15を挟んで第一被覆部11と対称に配置されている。すなわち、補強層124は、第二粘着剤層122を構成する粘着剤が補強層124の外面124Aおよび内面124Bを覆っていることに加えて、補強層124の空隙に上記粘着剤が含浸することにより、上記粘着剤と結合している。
【0025】
使用前(被着体への貼り付け前)の両面粘着シート10は、図1に示すように渦巻き状に巻回された粘着シートロール1の形態であり得る。この粘着シートロール1において、両面粘着シート10は、両面剥離性の剥離ライナー20と重ね合わされた状態で巻回されている。これにより、両面粘着シート10の第一粘着面10Aおよび第二粘着面10Bが、一枚の剥離ライナー20の第一表面(第一剥離面)20Aおよび第二表面(第二剥離面)20Bにそれぞれ当接して保護されている。
【0026】
なお、図1に示す例では、両面粘着シート10は、第一被覆部11が内周側となる向きで巻回されているが、この向きに限定されず、第二被覆部12が内周側となる向きで巻回されてもよい。また、図1に示す例では、両面粘着シート10の第一粘着面10Aおよび第二粘着面10Bが一枚の剥離ライナー20により保護されているが、両面粘着シート10の第一粘着面10Aおよび第二粘着面10Bを2枚の独立した剥離ライナーによってそれぞれ保護してもよい。すなわち、第一粘着面に当接する第一剥離面と、第二粘着面に当接する第二剥離面とが、2枚の異なる剥離ライナーの剥離面に当接していてもよい。使用前における両面粘着シートの形態は、図1に示すようなロール形態に限定されず、枚葉状であってもよい。例えば、2枚以上の複数枚の両面粘着シートと、2枚以上の複数枚の両面剥離性剥離ライナーとが、交互に重ね合わされた形態であってもよい。
【0027】
剥離ライナーとしては、例えば、プラスチックフィルムや紙(樹脂含浸紙や樹脂ラミネート紙であり得る。)等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー;フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)のような低接着性材料からなる剥離ライナー;等を用いることができる。上記剥離処理層は、上記ライナー基材を剥離処理剤により表面処理して形成されたものであり得る。剥離処理剤の例としては、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、硫化モリブデン(IV)等が挙げられる。一態様において、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムの片面または両面に剥離処理剤(例えば、シリコーン系剥離処理剤)による剥離処理層を有する剥離ライナーを好ましく採用し得る。
【0028】
<発泡体基材>
ここに開示される両面粘着シートにおける発泡体基材は、気泡構造を有するものであればよく、特に限定されない。上記発泡体基材は、単層の形態を有していてもよいし、二層以上の多層複層(多層)の形態を有していてもよい。ここで、本明細書において多層とは、特記しない場合、二層以上の意味である。ここに開示される両面粘着シートは、発泡体基材を有することにより、衝撃吸収性や表面形状追従性(例えば、段差追従性)に優れるという利点を有する。層間剥離の防止や柔軟性向上等の観点から、いくつかの態様において、単層(一層)の発泡体層からなる発泡体基材を好ましく採用し得る。
【0029】
発泡体基材の材質は特に制限されない。通常は、プラスチック材料の発泡体(プラスチ
ック発泡体)により形成された発泡体層を含む発泡体基材が好ましい。プラスチック発泡
体を形成するためのプラスチック材料(ゴム材料を包含する意味である。)は、特に制限
されず、公知のプラスチック材料のなかから適宜選択することができる。プラスチック材
料は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0030】
プラスチック発泡体の具体例としては、ポリエチレン製発泡体、ポリプロピレン製発泡
体等のポリオレフィン系樹脂製発泡体;ポリエチレンテレフタレート製発泡体、ポリエチ
レンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系
樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;脂肪族ポリアミド(ナイロン)
樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体
;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリ
スチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン
系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また、プラスチック発泡体として、ポリクロロプレン
ゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。
【0031】
ここに開示される両面粘着シートにとって好ましい発泡体として、ポリオレフィン系樹脂製発泡体(以下「ポリオレフィン系発泡体」ともいう。)が例示される。上記ポリオレフィン系発泡体基材を構成するポリオレフィン系樹脂としては、公知または慣用のポリオレフィン系樹脂を用いることができ、特に限定されない。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。LLDPEの例としては、チーグラー・ナッタ触媒系直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
なかでも、上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、より好ましくはポリエチレン系樹脂である。すなわち、ここに開示される技術における発泡体基材としては、ポリエチレン系発泡体基材、ポリプロピレン系発泡体基材が好ましく、より好ましくはポリエチレン系発泡体基材である。ここでポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主モノマー(すなわち、モノマーのなかの主成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等の他、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン-プロピレン共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。同様に、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主モノマーとする樹脂を指す。
【0033】
発泡体基材の平均気泡径は、特に限定されないが、通常は10μm~1000μmの範囲にあることが適当である。平均気泡径が大きくなると、耐衝撃性が向上する傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、平均気泡径は、例えば20μm以上であってよく、30μm以上、50μm以上、70μm以上、100μm以上、または150μm以上でもよい。また、平均気泡径が小さくなると、両面粘着シートの強度(特に、層間剥離強度)が向上する傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、平均気泡径は、例えば700μm以下であってよく、600μm以下、500μm以下、または400μm以下でもよい。ここでいう平均気泡径は、発泡体基材をその流れ方向に延びる直線に沿って切断した断面を顕微鏡(KEYENCE社、デジタルマイクロスコープ VHX-1000)を用いて倍率200倍で観察し、当該発泡体基材の流れ方向に沿う長さ1mmの測定範囲内で観察される気泡の流れ方向の長さを測定し、それらの平均を算出することで得られる。なお、上記発泡体基材の流れ方向(MD)は、長尺状の発泡体基材では、一般に該発泡体基材の長手方向と一致する。
【0034】
発泡体基材の密度(見掛け密度)は、特に限定されず、例えば0.02~0.5g/cm3であり得る。密度が0.02g/cm3以上であると、両面粘着シートの強度(特に、層間剥離強度)が向上し、耐衝撃性および再剥離性が向上する傾向がある。かかる観点から、いくつかの態様において、発泡体基材の密度は、例えば0.05g/cm3以上であってよく、0.07g/cm3以上でもよく、0.1g/cm3以上でもよく、0.2g/cm3以上でもよく、0.25g/cm3以上でもよく、0.3g/cm3以上でもよい。一方、密度が0.5g/cm3以下であると、柔軟性が低下し過ぎず、段差追従性が向上する傾向がある。両面粘着シートの段差追従性が良好であると、一般に、段差を有する被着体に貼り合わせた場合でも、被着体表面との間に隙間を生じにくく、接合信頼性やシール性が向上する。かかる観点から、いくつかの態様において、発泡体基材の密度は、例えば0.45g/cm3以下であってよく、0.40g/cm3以下でもよい。なお、密度(見掛け密度)は、例えば、JIS K6767に準拠する方法により測定することができる。
【0035】
発泡体基材の発泡倍率は、特に限定されないが、例えば2~50cc/gが好ましく、より好ましくは2.5~30cc/gである。発泡倍率が2cc/g以上であると、柔軟性が向上し、段差追従性が向上する傾向がある。一方、発泡倍率が50cc/g以下であると、両面粘着シートの強度(特に、層間剥離強度)が向上し、耐衝撃性および再剥離性が向上する傾向がある。なお、本明細書において、発泡体基材の発泡倍率は、JIS K6767に準拠して測定される見掛け密度の逆数として定義される。
【0036】
ここに開示される両面粘着シートに用いられる発泡体基材(例えば、ポリオレフィン系発泡体基材)は、公知または慣用の形成方法(例えば、発泡剤による形成方法など)を利用して形成することができる。そのような形成方法は、例えば、上述のようなプラスチック材料の成形工程、発泡工程、および架橋工程を含み得る。また、必要に応じて延伸工程を含み得る。発泡工程は成形工程を兼ねていてもよい。上記プラスチック発泡体を架橋させる方法としては、例えば、有機過酸化物などを用いる化学架橋法、または電離性放射線を照射する電離性放射線架橋法などが挙げられ、これらの方法は併用され得る。上記電離性放射線としては、電子線、α線、β線、γ線などが例示される。電離性放射線の線量は特に限定されず、発泡体基材の目標物性(例えば架橋度)等を考慮して適切な照射線量に設定することができる。上記発泡体基材として、市販品を用いることもでき、市販品に後処理または後加工を施したものを使用してもよい。あるいは、市販品のメーカーに組成、物性、構造、形状等に関する要望を伝えて注文することによって所望の発泡体基材を入手することも可能である。
【0037】
ここに開示される両面粘着シートに用いられる発泡体基材としては、その表面に表層が形成されているものを好ましく採用し得る。上記表層は、発泡体基材の内部に比べて高密度の層として把握され、緻密層(例えば、実質的に気泡を有しない層)であり得る。発泡体基材が表層を有することにより、第一被覆部および/または第二被覆部と該発泡体基材との接合強度を高めやすくなる。これにより、上記接合界面における両面粘着シートの裂けが抑制される傾向にある。発泡体基材の製造容易性や、該発泡体基材の内部と表層との境界での裂け防止の観点から、上記表層は、発泡体基材を構成するプラスチック材料自体によって構成されていることが好ましい。プラスチック材料を発泡させる際に該プラスチック材料が型等の表面に押し当てられることで生じるスキン層は、ここでいう表層の概念に包含される一典型例である。
【0038】
発泡体基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤など)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、界面活性剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0039】
発泡体基材の表面には、公知の表面処理が施されていてもよい。例えば、下塗り処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などの化学的または物理的な表面処理が施されていてもよい。より具体的には、粘着剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的または物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤などによるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0040】
発泡体基材の厚さは、両面粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。発泡体基材に期待される衝撃吸収性や表面形状性を適切に発揮する観点から、通常は、厚さが30μm以上または50μm以上の発泡体基材を用いることが適当である。また、両面粘着シートの取扱い性(例えば、細幅のテープ形状への加工性、巻取り性、打ち抜き加工性)等の観点から、発泡体基材の厚さは、通常、4000μm以下が適当であり、3000μm以下でもよく、2000μm以下でもよく、1500μm以下、または1200μm以下でもよい。
【0041】
いくつかの態様において、発泡体基材の厚さは、例えば200μm以上であってよく、250μm以上でもよく、300μm以上でもよい。発泡体基材が厚くなると、強度が向上し、衝撃吸収性や再剥離性が向上する傾向がある。ここに開示される両面粘着シートを重量が重い製品や大型の製品、例えば、パソコン、テレビなどの大型フラットパネルディスプレイ等の用途に適用する場合には、このように比較的厚い発泡体基材を用いることが特に有意義である。かかる態様において、発泡体基材の厚さは、例えば、4000μm以下、3000μm以下、または2000μm以下であり得る。
【0042】
いくつかの態様において、発泡体基材の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、700μm以下でもよく、400μm以下でもよく、300μm以下でもよく、300μm未満でもよく、250μm未満でもよく、200μm未満でもよい。ここに開示される両面粘着シートを携帯用の電子機器、例えば、携帯電話、スマートフォンなどの用途に使用する場合には、発泡体基材の厚さを小さくすることは、両面粘着シートの取扱い性や、製品の小型化、軽量化等の観点から、このように比較的薄い発泡体基材を用いることが特に有意義である。かかる態様において、発泡体基材の厚さは、例えば、30μm以上、50μm以上、70μm以上、100μm以上、または125μm以上であり得る。
【0043】
発泡体基材の25%圧縮硬さ(25%圧縮強度)は、特に限定されず、例えば10kPa以上300kPa以下の範囲であり得る。ここで、発泡体基材の25%圧縮強度とは、測定対象の発泡体基材を30mm角の正方形状にカットしたものを積み重ねて約2mmの厚さとした測定試料を一対の平板で挟み、それを当初の厚さの25%に相当する厚さ分だけ圧縮したときの荷重(圧縮率25%における荷重)をいう。すなわち、上記測定試料を当初の厚さの75%に相当する厚さまで圧縮したときの荷重をいう。なお、測定対象の発泡体基材の厚さが約2mmより大きい場合には、該発泡体基材を30mm角の正方形状にカットしたものをそのまま測定資料として用いればよい。25%圧縮強度(以下、単に「圧縮強度」ともいう。)を10kPa以上とすることにより、衝撃吸収性や落下特性が向上する傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、圧縮強度は、例えば30kPa以上であってよく、35kPa以上でもよく、40kPa以上でもよく、50kPa以上でもよく、60kPa以上でもよく、70kPa以上でもよい。また、圧縮強度を300kPa以下とすることにより、表面形状追従性が向上する傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、圧縮強度は、例えば200kPa以下であってよく、150kPa以下でもよく、100kPa以下でもよい。
【0044】
なお、発泡体基材の25%圧縮強度は、JIS K6767に準拠して測定される。後述する実施例においても同様の測定方法が用いられる。発泡体基材の圧縮強度は、例えば、該発泡体基材を構成するプラスチック材料の種類の選択、架橋度、発泡倍率等により制御することができる。
【0045】
発泡体基材の長手方向(MD)の伸びは、特に限定されないが、通常は200%~800%が好ましく、より好ましくは400%~600%である。MD伸びを200%以上とすることにより、耐衝撃性や凹凸に対する追従性が向上する傾向にある。MD伸びを800%以下とすることにより、発泡体基材の強度が向上し、落下特性(例えば、落下衝撃等による発泡体基材の損傷を抑制する性能)が向上する傾向にある。
【0046】
発泡体基材の幅方向(TD)の伸びは、特に限定されないが、通常は50%~800%が好ましく、より好ましくは100%~600%である。TD伸びを50%以上とすることにより、耐衝撃性や凹凸に対する追従性が向上する傾向にある。TD伸びを800%以下とすることにより、発泡体基材の強度が向上し、落下特性が向上する傾向にある。
【0047】
なお、発泡体基材の伸び(MD伸び、TD伸び)は、JIS K6767に準拠して測定される。発泡体基材の伸びは、例えば、発泡体基材を構成するプラスチック材料の種類の選択、発泡倍率、架橋度等により制御することができる。
【0048】
発泡体基材の長手方向(MD)の引張強さ(MD引張強度)は、特に限定されないが、通常は0.5MPa~20MPaが好ましく、より好ましくは1MPa~15MPaである。MD引張強度0.5MPa以上とすることにより、再剥離性が向上する傾向にある。MD引張強度20MPa以下とすることにより、衝撃吸収性や表面形状追従性が向上する傾向にある。
【0049】
発泡体基材の幅方向(TD)の引張強さ(TD引張強度)は、特に限定されないが、通常は0.2MPa~20MPaが好ましく、より好ましくは0.5MPa~15MPaである。TD引張強度を0.2MPa以上とすることにより、再剥離性が向上する傾向にある。TD引張強度を20MPa以下とすることにより、衝撃吸収性や表面形状追従性が向上する傾向にある。
【0050】
なお、発泡体基材の引張強度(MD引張強度、TD引張強度)は、JIS K6767に準拠して測定される。発泡体基材の引張強度は、例えば、該発泡体基材を構成するプラスチック材料の種類の選択、発泡倍率、架橋度等により制御することができる。
【0051】
いくつかの態様において、発泡体基材としては、独立気泡率が70%以上のものを好ましく使用し得る。ここで「独立気泡率」とは、下記の方法により測定される値をいう。独立気泡率の上限は、原理上、100%である。
【0052】
(独立気泡率測定方法)
まず、発泡体基材から、一辺が5cmの平面正方形状でかつ一定厚さの試験片を切り出す。上記試験片の厚さを測定して試験片の見掛け体積V1(cm3)を算出するとともに、試験片の重量W1(g)を測定する。
次に、上記試験片の、気泡が占める見掛け体積V2(cm3)を、下記の式に基づいて算出する。なお、上記試験片を構成する樹脂の密度を1g/cm3として計算している。
気泡の占める見掛け体積V2=V1-W1
続いて、上記試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、上記試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。その後、上記試験片を水中から取り出し、試験片の表面に付着した水分を除去して該試験片の重量W2(g)を測定する。そして、下記式に基づいて独立気泡率を算出する。
独立気泡率(%)=100-{100×(W2-W1)/V2
【0053】
発泡体基材には、一般に、独立気泡(独立気泡構造)および/または連続気泡(連続気泡構造)が存在し得る。上記独立気泡率は、発泡体基材中に存在する気泡(気泡構造)のうち、独立気泡の割合を表す指標となる値である。なお、「独立気泡」とは、壁によって囲まれ、他の気泡とは連結されていない気泡をいう。一方、「連続気泡」とは、他の気泡と連結されている気泡をいう。ここに開示される両面粘着シートにおいて、発泡体基材の独立気泡率が70%以上であると、強度や落下特性が向上する傾向にある。上記独立気泡率が80%以上であることがより好ましい。独立気泡率は、発泡体基材を構成するプラスチック材料の種類の選択、発泡倍率、延伸条件等により制御することができる。
【0054】
発泡体基材(例えば、ポリオレフィン系発泡体基材)の架橋度は、例えば3~60重量%であり得る。ここで「架橋度」とは、下記の方法により測定される値をいう。
【0055】
(架橋度測定方法)
まず、発泡体基材から重さ約100mgの試験片を採取し、該試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網でろ過して金網上の不溶解成分を採取して真空乾燥し、不溶解成分の重量B(mg)を精秤する。得られた重量Aおよび重量Bに基づいて、下記式により、発泡体基材の架橋度(単位:重量%)を算出する。
架橋度(重量%)=100×(B/A)
【0056】
上記架橋度は、発泡体基材を構成するポリマー(例えば、ポリオレフィン系発泡体ではポリオレフィン系樹脂)が架橋している度合いを表す指標となる値である。すなわち、発泡体基材の架橋度が大きいほど、上記基材を構成するプラスチック材料の架橋構造が密であることを示す。架橋度が高くなると、発泡体基材の強度や落下特性が向上する傾向にある。架橋度が低くなると、衝撃吸収性や表面形状追従性が向上する傾向にある。これらをバランスよく両立する観点から、いくつかの態様において、発泡体基材の架橋度は、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~40重量%、さらに好ましくは15~35重量%であり得る。架橋度は、発泡体基材を構成するプラスチック材料の種類の選択、発泡倍率、架橋工程の条件等により制御することができる。
【0057】
発泡体基材は、ここに開示される両面粘着シートにおいて意匠性や光学特性(遮光性、光反射性等)を発現させるために、着色されていてもよい。
【0058】
例えば、ここに開示される両面粘着シートを遮光用途に用いる場合、発泡体基材の可視光透過率は、特に限定されないが、後述の両面粘着シートの可視光透過率と同様に、15%以下(例えば0~15%)が好ましく、より好ましくは10%以下(例えば0~10%)である。
【0059】
発泡体基材の着色には、着色剤が用いられる。なお、上記着色剤は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
本発明の両面粘着シートを遮光用途に用いる場合、発泡体基材は黒色に着色されることが好ましい。黒色としては、L***表色系で規定されるL*(明度)で、35以下(例えば、0~35)が好ましく、より好ましくは30以下(例えば、0~30)である。なお、L***表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、特に限定されないが、両方とも-10~10(より好ましくは-5~5、さらに好ましくは-2.5~2.5)の範囲であることが好ましく、特に、両方とも0またはほぼ0であることが好ましい。
【0061】
なお、本明細書における、L***表色系で規定されるL*、a*、b*は、色彩色差計(商品名「CR-200」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。なお、L***表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L***)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L***表色系は、日本工業規格では、JIS Z8729に規定されている。
【0062】
発泡体基材を黒色に着色する際に用いられる黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素などを用いることができる。なかでも、コスト、入手性の観点から、カーボンブラックが好ましい。
【0063】
黒色着色剤の使用量は、特に限定されず、本発明の両面粘着シートに対し所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0064】
一方、両面粘着シートを光反射用途に用いる場合、発泡体基材は白色に着色されることが好ましい。白色としては、L***表色系で規定されるL*(明度)で、87以上(例えば、87~100)が好ましく、より好ましくは90以上(例えば、90~100)である。なお、L***表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも-10~10(より好ましくは-5~5、さらに好ましくは-2.5~2.5)の範囲であることが好ましく、特に、両方とも0またはほぼ0であることが好ましい。
【0065】
白色に着色する際に用いられる白色着色剤としては、例えば、酸化チタン(ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタンなどの二酸化チタン)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化イットリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなど)、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、亜鉛華、硫化亜鉛、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、カオリン、燐酸チタン、マイカ、石膏、ホワイトカーボン、珪藻土、ベントナイト、リトポン、ゼオライト、セリサイト、加水ハロイサイト等の無機系白色着色剤や、アクリル系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、アミド系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、尿素-ホルマリン系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子等の有機系白色着色剤などが挙げられる。
【0066】
白色着色剤の使用量としては、特に限定されず、本発明の両面粘着シートに対し所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0067】
<粘着剤>
ここに開示される両面粘着シートにおいて、粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。ここで、アクリル系粘着剤とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、すなわち50重量%を超えて含まれる成分)とする粘着剤をいう。ゴム系粘着剤その他の粘着剤についても同様の意味である。ここに開示される両面粘着シートの粘着剤層としては、透明性や耐候性等の観点から、アクリル系粘着剤により構成された粘着剤層、すなわちアクリル系粘着剤層を好ましく採用し得る。
【0068】
この明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0069】
また、この明細書においてアクリル系ポリマーとは、該アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分としてアクリル系モノマーを含む重合物をいう。すなわち、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位(重合残基)を含む重合物をいう。ここでアクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。
【0070】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術のいくつかの態様において、上記粘着剤層は、アクリル系粘着剤組成物を用いて形成されたアクリル系粘着剤層であり得る。上記アクリル系粘着剤組成物とは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分を含む粘着剤組成物を意味する。ここで「アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分」とは、アクリル系粘着剤組成物から得られる粘着剤において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分をいう。上記モノマー成分は、アクリル系粘着剤組成物中に、未反応モノマー(すなわち、重合性官能基が未反応である原料モノマー)の形態で含まれてもよく、重合残基(すなわち、アクリル系ポリマーの構成単位(モノマー単位))の形態で含まれていてもよく、これらの両方の形態で含まれていてもよい。以下、主に粘着剤層がアクリル系粘着剤層である場合を例として本発明をより具体的に説明するが、本発明における粘着剤層はアクリル系粘着剤層に限定されない。
【0071】
(モノマー成分)
ここに開示される技術の一態様において、上記粘着剤層は、上記モノマー成分として以下の成分(A)を含むアクリル系粘着剤組成物を用いて形成することができる。好ましい一態様において、上記粘着剤層は、上記モノマー成分として少なくとも以下の成分(A)を含むアクリル系粘着剤組成物を用いて好適に形成され得る。
【0072】
上記成分(A)は、炭素数1~18のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートである。以下、炭素数がX以上Y以下のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを「CX-Yアルキル(メタ)アクリレート」と表記することがある。C1-18アルキル(メタ)アクリレートにおけるC1-18アルキル基の構造は特に限定されず、上記アルキル基が直鎖であるものおよび分岐鎖であるもののいずれも使用可能である。成分(A)としては、このようなC1-18アルキル(メタ)アクリレートの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
直鎖アルキル基をエステル末端に有するC1-18アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-へプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n-ヘプタデシル(メタ)アクリレートおよびn-オクタデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。直鎖C2-18アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0074】
分岐鎖アルキル基をエステル末端に有するC3-18アルキル(メタ)アクリレートとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソへプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソミスチリル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0075】
ここに開示される技術は、成分(A)がC4-9アルキルアクリレートから選択される1種または2種以上を含む態様で好ましく実施され得る。C4-9アルキルアクリレートの好適例としては、n-ブチルアクリレート(BA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、イソオクチルアクリレートおよびイソノニルアクリレートが挙げられる。いくつかの態様において、成分(A)は、BAを単独で含んでもよく、2EHAを単独で含んでもよく、BAと2EHAとを任意の重量比で組み合わせて含んでもよい。成分(A)がBAと2EHAとを組み合わせて含む場合におけるBA/2EHAの重量比は、例えば5/95~95/5であってよく、20/80~80/20でもよい。いくつかの態様において、BA/2EHAの重量比は、5/95~60/40でもよく、10/90~40/60でもよい。
ここに開示される技術は、例えば、成分(A)全体のうちC6-9アルキルアクリレート(例えば2EHA)の占める割合が50~100重量%、60~100重量%、または70~100重量%である態様で好適に実施され得る。
【0076】
上記モノマー成分は、上記成分(A)に加えて、任意成分である成分(B)として、脂環式モノマーを一種または二種以上含有してもよい。
【0077】
脂環式モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ脂環構造含有基を有するものを、特に制限なく用いることができる。成分(B)としては、このような脂環式モノマーの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで「脂環構造含有基」とは、少なくとも一つの脂環構造を含む部分をいう。また、「脂環構造」とは、芳香族性を有しない飽和または不飽和の炭素環構造をいう。この明細書では、脂環構造含有基を単に「脂環式基」ということがある。脂環式基の好適例としては、脂環構造を含む炭化水素基や炭化水素オキシ基が挙げられる。
【0078】
ここに開示される技術において好ましい脂環式モノマーの例として、脂環式基と(メタ)アクリロイル基とを有する脂環式(メタ)アクリレートが挙げられる。脂環式(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどのほか、下記化学式に示すHPMPA、TMA-2、HCPAなどが挙げられる。
【0079】
【化1】
【0080】
脂環式モノマーにおける脂環式基(脂環式(メタ)アクリレートの場合、該脂環式(メタ)アクリレートから(メタ)アクリロイル基を除いた部分)の炭素数は特に限定されない。例えば、脂環式基の炭素数が4~24(好ましくは5~18、より好ましくは5~12)である脂環式モノマーを用いることができる。なかでもシクロヘキシルアクリレート(CHA)、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート(IBXA)およびイソボルニルメタクリレートが好ましく、CHAおよびIBXAがより好ましく、CHAが特に好ましい。
【0081】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、上記成分(A)に加えて、任意成分である成分(C)として、ヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくともいずれかを有するモノマーを一種または二種以上含有してもよい。成分(C)は、一種または二種以上のヒドロキシ基含有モノマーのみを含んでもよく、一種または二種以上のカルボキシ基含有モノマーのみを含んでもよい。
【0082】
ヒドロキシ基を有するモノマー、すなわちヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。ヒドロキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等などのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレートが挙げられる。その他、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。これらのなかでもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。例えば、炭素数2~6のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。好ましい一態様において、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)および4-ヒドロキシブチルメタクリレートから選択される1種または2種以上をヒドロキシ基含有モノマーとして用いることができる。ここに開示される技術の好適な態様において使用されるヒドロキシ基含有モノマーは、4HBA単独、2HEA単独、または4HBAと2HEAとの組合せであり得る。
【0083】
カルボキシ基を有するモノマー、すなわちカルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。カルボキシ基含有モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;これらの金属塩(例えばアルカリ金属塩);無水マレイン酸、無水イタコン酸等の、上記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物等;が挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。
【0084】
ここに開示される技術は、成分(C)がヒドロキシ基含有モノマーを含む態様で好ましく実施することができる。すなわち、成分(C)がヒドロキシ基含有モノマーのみを含むか、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。成分(C)がヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーを含む場合、成分(C)全体に占めるヒドロキシ基含有モノマーの割合は、凡そ50重量%超であることが好ましく、凡そ80重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)であることがより好ましい。成分(C)に占めるヒドロキシ基含有モノマーの割合を多くすることは、カルボキシ基に起因する金属腐食等を低減する観点等から好ましい。ここに開示される技術は、成分(C)が実質的にヒドロキシ基含有モノマーのみからなる態様、すなわちモノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。例えば、モノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合を、凡そ1重量%未満、好ましくは凡そ0.5重量%未満、より好ましくは凡そ0.2重量%未満とすることができる。
【0085】
ここに開示される技術は、また、成分(C)全体の凡そ50重量%以上がカルボキシ基含有モノマーである態様で好ましく実施することができる。成分(C)全体に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、凡そ80重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)であることがより好ましい。成分(C)に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合を多くすることは、カルボキシ基に起因する水素結合性分子間力を利用して粘着力を高めたい場合に有効に作用し得る。ここに開示される技術は、成分(C)が実質的にカルボキシ基含有モノマーのみからなる態様、すなわちモノマー成分がヒドロキシ基含有モノマーを実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。例えば、モノマー成分に占めるヒドロキシ基含有モノマーの割合を、凡そ1重量%未満、好ましくは凡そ0.5重量%未満、より好ましくは凡そ0.2重量%未満とすることができる。
【0086】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、上記成分(A)に加えて、任意成分である成分(D)として、ヘテロ環含有モノマーを一種または二種以上含有してもよい。ヘテロ環含有モノマーの例としては、環状窒素含有モノマーや環状エーテル基含有モノマー等が挙げられる。
【0087】
環状窒素含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ環状窒素構造を有するものを特に制限なく用いることができる。環状窒素含有モノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマー;2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有モノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルモルホリン等の窒素含有複素環を有するN-ビニル系モノマー等が挙げられる。環状窒素含有モノマーの他の例として、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環、アジリジン環等の窒素含有複素環を含有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。具体的には、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、N-アクリロイルアジリジン等が挙げられる。環状窒素含有モノマーのさらに他の例として、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;例えばN-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;等の、環構造内にエチレン性不飽和結合を有するモノマーが挙げられる。上記環状窒素含有モノマーのなかでも、凝集性等の点からは、ラクタム系ビニルモノマーが好ましく、N-ビニル-2-ピロリドンがより好ましい。
【0088】
環状エーテル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつエポキシ基、オキセタン基、オキソラン基等の環状エーテル基を有するものを特に制限なく用いることができる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。オキセタン基含有モノマーとしては、例えば、3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。オキソラン基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。
【0089】
上記成分(A)がモノマー成分全体に占める割合は、特に限定されない。粘着力と凝集力とのバランスのよい粘着剤層が得られやすいこと等から、上記成分(A)の割合は、通常、凡そ99重量%以下が適当であり、凡そ97重量%以下でもよく、凡そ95重量%以下でもよい。いくつかの態様において、上記成分(A)の割合は、90重量%以下、85重量%以下、または80重量%以下であり得る。また、被着体に対する初期接着性等の観点から、上記成分(A)の割合は、通常、凡そ30重量%以上が好ましく、凡そ50重量%以上がより好ましい。いくつかの態様において、モノマー成分全体に占める成分(A)の割合は、65重量%超、70重量%超、または75重量%超であり得る。
【0090】
ここに開示される技術におけるモノマー成分が、上記成分(A)に加えて上記成分(B)、上記成分(C)および上記成分(D)の少なくともいずれかの成分を含有する場合、モノマー成分全体に占める成分(B),(C),(D)の合計量の割合は、例えば0.5重量%以上であってよく、通常は1重量%以上が適当であり、3重量%以上、または5重量%以上でもよい。いくつかの態様において、成分(B),(C),(D)の合計量の割合は、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。ただし、モノマー成分全体に占める成分(B),(C),(D)の合計量の割合は、成分(A)の割合との合計が100重量%以下となるように設定される。
【0091】
成分(B)を用いる場合、モノマー成分全体に占める成分(B)の割合は、特に限定されない。凝集力向上や補強層との結合性向上等の観点から、上記成分(B)の割合は、例えば3重量%以上であってよく、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、または30重量%以上でもよい。また、被着体に対する初期接着性等の観点から、上記成分(B)の割合は、通常、65重量%以下が適当である。いくつかの態様において、上記成分(B)の割合は、例えば40重量%以下であってよく、25重量%以下、15重量%以下、または5重量%未満でもよい。モノマー成分は、成分(B)を実質的に含有しなくてもよい。
【0092】
成分(C)を用いる場合、モノマー成分全体に占める成分(C)の割合は、特に限定されない。架橋起点としての有効性向上等の観点から、上記成分(C)の割合は、例えば0.1重量%以上であってよく、0.2重量%以上、または0.5重量%以上でもよい。凝集力向上や補強層との結合性向上等の観点から、いくつかの態様において、上記成分(C)の割合は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上、10重量%以上、または15重量%以上でもよい。また、被着体に対する初期接着性等の観点から、いくつかの態様において、上記成分(C)の割合は、35重量%以下が適当であり、30重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、20重量%以下、15重量%未満、または10重量%未満でもよい。いくつかの態様において、モノマー成分は、成分(C)を実質的に含有しなくてもよい。
【0093】
成分(D)を用いる場合、モノマー成分全体に占める成分(D)の割合は、特に限定されない。凝集力向上や補強層との結合性向上等の観点から、上記成分(D)の割合は、例えば1重量%以上であってよく、通常は3重量%以上が適当であり、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、または20重量%以上でもよい。また、被着体に対する初期接着性等の観点から、上記成分(D)の割合は、35重量%以下が適当であり、30重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、または5重量%未満でもよい。いくつかの態様において、モノマー成分は、成分(D)を実質的に含有しなくてもよい。
【0094】
ここに開示される技術におけるモノマー成分は、上述した成分(A)~成分(D)以外のモノマー(以下「その他モノマー」ともいう。)を含有してもよい。
【0095】
上記その他モノマーの例として、成分(A)に属しないアルキル(メタ)アクリレート、すなわちアルキル基の炭素数が1であるかまたは19以上(例えば19~24)のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。そのようなアルキル(メタ)アクリレートの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、n-ノナデシル(メタ)アクリレート、イソノナデシル(メタ)アクリレート、n-エイコシル(メタ)アクリレート、イソエイコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
上記その他モノマーの他の例として、ヒドロキシ基およびカルボキシ基以外の官能基を含有し、かつ成分(B),(D)に属さないモノマーが挙げられる。このような官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーへの架橋点導入、凝集力向上、補強層との結合性向上等の目的で使用され得る。官能基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー; 例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;例えば2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルアセトアセテート等のケト基含有モノマー;例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
ここに開示される技術におけるモノマー成分は、(メタ)アクリル系ポリマーのTgの調整や凝集力の向上等の目的で、上記その他モノマーとして、上記成分(A)と共重合可能であって上記で例示した以外のモノマーを含んでいてもよい。そのようなモノマーとして、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;例えばスチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;例えばアリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;例えば(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系モノマー;(ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
特に限定するものではないが、上記モノマー成分全体に占める成分(A)~(D)の合計量の割合は、典型的には凡そ50重量%超であり、好ましくは凡そ70重量%以上、より好ましくは凡そ80重量%以上、さらに好ましくは凡そ90重量%以上である。ここに開示される技術は、上記合計量の割合が凡そ95重量%以上(例えば凡そ99重量%以上)である態様で好ましく実施され得る。上記合計量の割合が100重量%であってもよい。ここに開示される技術は、上記モノマー成分全体に占める上記合計量の割合が99.999重量%以下(例えば99.99重量%以下)である態様で好ましく実施され得る。
【0099】
特に限定するものではないが、上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のガラス転移温度(Tg)は、補強層との密着性等の観点から、-20℃以下であることが好ましく、-30℃以下でもよく、-40℃以下でもよく、-45℃以下でもよい。また、上記共重合体のTgは、例えば-70℃以上であってよく、-65℃以上でもよく、-60℃以上でもよく、-55℃以上でもよい。
【0100】
ここで、モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgとは、上記モノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
【0101】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
n-ブチルアクリレート -55℃
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
イソボルニルアクリレート 94℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0102】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc.、1989年)に記載の数値を用いるものとする。上記Polymer Handbookに複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。上記Polymer Handbookにもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
【0103】
<粘着剤組成物>
ここに開示される粘着剤層は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)、あるいはこれらの混合物の形態で含む粘着剤組成物を用いて形成され得る。上記粘着剤組成物は、有機溶媒中に粘着剤(粘着成分)を含む形態の組成物(溶剤型粘着剤組成物)、粘着剤が水性溶媒に分散した形態の組成物(水分散型粘着剤組成物)、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された組成物(活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等の、種々の形態であり得る。
【0104】
ここで、本明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。また、上記活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の概念には、活性エネルギー線の照射前は流動性であって、活性エネルギー線の照射により重合反応を進行させて粘弾性体(粘着剤)を形成し得るように構成された活性エネルギー線重合型粘着剤組成物と、溶媒の除去等により粘着剤層を形成した後、該粘着剤層に活性エネルギー線を照射することにより架橋反応を進行させて粘着物性を変化させ得るように構成された活性エネルギー架橋型粘着剤組成物と、が包含される。補強層への含浸性の観点から、活性エネルギー線重合型粘着剤組成物がより好ましい。
【0105】
上記粘着剤組成物は、典型的には、該組成物のモノマー成分のうち少なくとも一部(モノマーの種類の一部であってもよく、分量の一部であってもよい。)を重合物の形態で含む。上記重合物を形成する際の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。これらの重合方法において、重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力、光照射量、放射線照射量等)、モノマー以外の使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)等を適宜選択して行うことができる。
【0106】
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の光重合開始剤や熱重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。熱重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。なお、熱重合は、例えば20~100℃(典型的には40~80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、重合対象のモノマー100重量部に対して重合開始剤凡そ0.001~5重量部(典型的には凡そ0.01~2重量部、例えば凡そ0.01~1重量部)を用いることができる。
【0107】
ここに開示される技術における粘着剤組成物は、該組成物のモノマー成分(原料モノマー)の少なくとも一部を含むモノマー混合物の重合反応物を含み得る。上記モノマー混合物は、モノマー成分の全部を含んでいてもよい。上記モノマー混合物の重合反応物は、該モノマー混合物を少なくとも部分的に重合させることにより調製することができる。ここに開示される技術における粘着剤組成物は、上記モノマー成分の一部または全部を含むモノマー混合物の、部分重合物または完全重合物を含み得る。
【0108】
(モノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物)
いくつかの態様において、ここに開示される技術における粘着剤組成物は、上記モノマー成分(原料モノマー)の一部を含むモノマー混合物を重合反応物(部分重合物または完全重合物)の形態で含み、上記モノマー成分の残部を未重合物(未反応のモノマー)の形態で含む。このように未反応モノマーを含む粘着剤組成物は、溶媒または分散媒を実質的に含有しないかあるいは含有量が比較的少なくても、低粘度の粘着剤組成物となり得、かつ該未反応モノマーを重合させることにより良好な粘着性能を発揮する粘着剤層を形成し得る。粘着剤組成物が低粘度であることは、該粘着剤組成物の補強層への含浸を促進する観点から好ましい。
【0109】
また、ここに開示される粘着剤組成物は、モノマー成分(原料モノマー)のうち一部の種類のモノマーを含むモノマー混合物の完全重合物が、残りの種類のモノマーまたはその部分重合物に溶解した形態であってもよい。このような形態の粘着剤組成物も、モノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物の例に含まれる。
なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。上記完全重合物の重合転化率は、例えば97重量%以上でもよく、99重量%以上でもよく、実質的に100重量%でもよい。
【0110】
いくつかの好ましい態様において、上記粘着剤組成物は、上記モノマー成分の一部を含むモノマー混合物の部分重合物を含み得る。このような部分重合物は、上記モノマー成分に由来するポリマーと、上記モノマー成分のうち未反応のモノマーとの混合物であって、典型的にはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「ポリマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。
【0111】
モノマー混合物の重合反応物を得る際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、上記モノマー混合物の重合転化率を容易に制御することができる。
【0112】
上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率(モノマーコンバーション)は、特に限定されない。粘着剤組成物の粘度を抑えて補強層への含浸性を高める観点から、上記重合転化率は、例えば凡そ70重量%以下とすることができ、凡そ60重量%以下とすることが好ましく、凡そ50重量%以下でもよく、凡そ40重量%以下でもよく、凡そ35重量%以下でもよい。重合転化率の下限は特に制限されないが、塗工性や硬化後(重合反応後)の粘着物性の観点から、通常は凡そ1重量%以上が適当であり、凡そ5重量%以上が好ましく、凡そ10重量%以上でもよい。
【0113】
上記モノマー混合物の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、上記モノマー成分(原料モノマー)の一部または全部を含むモノマー混合物を、適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより容易に得ることができる。上記部分重合物を含む粘着剤組成物は、該部分重合物以外に、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤、多官能モノマー、アクリル系オリゴマー、シランカップリング剤、原料モノマーの残部、架橋剤、粘着付与樹脂等)を含み得る。そのような他の成分を含有させる方法は特に限定されない。例えば、上記モノマー混合物の一部に他の成分をあらかじめ混合する方法、上記モノマー混合物の部分重合物に他の成分を添加する方法等を採用することができる。これらの方法は適宜組み合わせることができる。
【0114】
多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基やビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性官能基(典型的にはラジカル重合性官能基)を少なくとも2つ有するモノマーである。多官能モノマーの使用により、粘着剤組成物から形成される粘着剤層に架橋構造を導入することができる。したがって、多官能モノマーの使用は、後述するゲル分の調節に役立ち得る。また、多官能モノマーを適切に用いることにより、粘着剤層の凝集性を適度に高め、かつ粘着剤層と補強層との結合性を高めることができる。
【0115】
多官能モノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート,1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。これらのうちの好適例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも好ましい例として1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。反応性等の観点から、通常は、2以上のアクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0116】
多官能モノマーの使用量は特に限定されず、該多官能モノマーの使用目的が達成されるように適切に設定することができる。ここに開示される好ましい貯蔵弾性率と他の粘着性能または他の特性とをバランスよく両立する観点から、いくつかの態様において、多官能モノマーの使用量は、モノマー成分100重量部に対して凡そ3重量部以下とすることができ、凡そ2重量部以下が好ましく、凡そ1重量部以下でもよく、凡そ0.5重量部以下でもよく、0.3重量部以下でもよい。多官能モノマーを使用する場合における使用量の下限は、モノマー成分100重量部に対して0重量部より大きければよく、特に限定されない。通常は、モノマー成分100重量部に対する多官能モノマーの使用量を凡そ0.001重量部以上とすることにより、該多官能モノマーの使用効果が適切に発揮され得る。いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する多官能モノマーの使用量は、例えば凡そ0.01重量部以上であってよく、0.05重量部以上でもよい。
【0117】
多官能モノマーの使用量のうち少なくとも一部は、モノマー混合物の部分重合物に添加して、該多官能モノマーの有する重合性官能基が未反応の状態で粘着剤組成物に含まれることが好ましい。このことによって、粘着剤組成物の粘度上昇を抑えて該粘着剤組成物の補強層への含浸性を高め、かつ該多官能モノマーの重合性官能基を反応させることにより凝集性のよい粘着剤層を形成し得る。多官能モノマーの使用量の全部をモノマー混合物の部分重合物に添加してもよい。
【0118】
ここに開示される粘着剤組成物には、粘着力向上等の観点から、アクリル系オリゴマーを配合することができる。アクリル系オリゴマーとしては、上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のTg(典型的には、粘着剤組成物から形成される粘着剤に含まれるベースポリマーのTgに概ね対応する。)との比較において、よりTgが高い重合体を用いることが好ましい。アクリル系オリゴマーの使用は、粘着剤層と補強層との結合性向上にも貢献し得る。
【0119】
上記アクリル系オリゴマーは、Tgが約0℃以上約300℃以下、好ましくは約20℃以上約300℃以下、さらに好ましくは約40℃以上約300℃以下であることが望ましい。Tgが上記範囲内であることにより、粘着力および補強層との結合性を好適に向上させることができる。なおアクリル系オリゴマーのTgは、上記モノマー成分の組成に対応する共重合体のTgと同じく、Foxの式に基づいて計算される値である。
【0120】
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、典型的には約1000以上約30000未満、好ましくは約1500以上約20000未満、さらに好ましくは約2000以上約10000未満であり得る。Mwが低すぎないことにより、良好な粘着力が得られやすくなる傾向にある。また、Mwが高すぎないことにより、補強層と粘着剤層との結合性を高めやすくなる。例えば、オリゴマーの配合による粘着剤組成物の粘度上昇を抑制し、該粘着剤組成物を補強層の空隙に含浸させやすくなる。アクリル系オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、東ソー株式会社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH-H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5ml/分の条件にて測定される。
【0121】
アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。このような(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0122】
アクリル系オリゴマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレートなどの環状構造を有する(メタ)アクリレートに代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、粘着剤層の接着性をさらに向上させることができる観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有するものが好ましく、アルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート、または脂環式アルコールとのエステルを、アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとして好適に用いることができる。
【0123】
このような点から、好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、DCPMAとMMAの共重合体、等を挙げることができる。上述した各共重合体において、後に記載したモノマー種の使用量は、先に記載したモノマー種の使用量に対して、重量基準で、例えば0.1倍以上10倍以下であってよく、0.2倍以上5倍以下でもよく、0.3倍以上3倍以下でもよく、0.5倍以上2倍以下でもよいが、これらの例示に限定されない。
【0124】
ここに開示される粘着剤組成物にアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は特に限定されない。アクリル系オリゴマーの使用による効果を好適に享受する観点から、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対するアクリル系オリゴマーの含有量は、例えば3重量部以上であってよく、5重量部以上でもよく、7重量部以上でもよい。また、被着体や発泡体基材に対する初期接着性や補強層との密着性の観点から、モノマー成分100重量部に対するアクリル系オリゴマーの含有量は、通常、50重量部以下とすることが適当であり、30重量部以下でもよく、20重量部以下でもよい。
【0125】
ここに開示される粘着剤組成物は、モノマー成分(原料モノマー)の一部を含むモノマー混合物の部分重合物に、上記モノマー原料の残部を配合したものであってもよい。上記モノマー成分の残部は、上記モノマー成分に包含されるモノマーのうち一部の種類であってもよく、一部の分量であってもよい。例えば、モノマー成分を構成する複数種類のモノマーのうち成分(B)~(D)のいずれかに属する一種類のモノマーについて、その一部または全部を上記モノマー混合物から除外し、該モノマー混合物の部分重合物に対して上記除外したモノマーを配合することができる。上記モノマー混合物から除外するモノマー成分の量は、特に限定されず、例えばモノマー成分全体の1~50重量%程度であってよく、5~20重量%程度でもよい。
【0126】
ここに開示される粘着剤組成物には、必要に応じて公知のシランカップリング剤を配合することができる。シランカップリング剤は、補強層と粘着剤層との結合性向上や、発泡体基材と粘着剤層との結合性向上に役立ち得る。シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。シランカップリング剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して1重量部以下が適当であり、好ましくは0.01~1重量部、さらに好ましくは0.02~0.6重量部である。
【0127】
このようにモノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の硬化方法(重合方法)としては、光重合法を好ましく採用することができる。このような粘着剤組成物は、光硬化型(重合型)粘着剤組成物として把握され得る。光重合法によって調製された重合反応物を含む粘着剤組成物では、その硬化方法として光重合法を採用することが特に好適である。光重合法により得られた重合反応物は、すでに光重合開始剤を含むので、この重合反応物を含む粘着剤組成物をさらに硬化させて粘着剤を形成する際、新たな光重合開始剤を追加しなくても光硬化し得る。あるいは、光重合法により調製された重合反応物に、必要に応じて光重合開始剤を追加した組成の粘着剤組成物であってもよい。追加する光重合開始剤は、重合反応物の調製に使用した光重合開始剤と同じでもよく、異なってもよい。光重合以外の方法で調製された粘着剤組成物は、光重合開始剤を添加することにより光硬化性とすることができる。光硬化性の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層であっても容易に形成し得るという利点を有する。好ましい一態様において、粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の光重合は、紫外線照射により行うことができる。紫外線照射には、公知の高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライトランプ等を用いることができる。
【0128】
(モノマー成分を完全重合物の形態で含む粘着剤組成物)
他のいくつかの態様に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物のモノマー成分を完全重合物の形態で含み得る。このような粘着剤組成物は、例えば、モノマー成分の完全重合物であるアクリル系ポリマーを有機溶媒中に含む溶剤型粘着剤組成物、上記アクリル系ポリマーが水性溶媒(分散媒)に分散した水分散型粘着剤組成物、等の形態であり得る。
【0129】
ここに開示される粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、粘着剤の分野において公知ないし慣用の架橋剤を使用することができる。架橋剤の例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等を挙げることができる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
架橋剤の含有量(2種以上の架橋剤を含む場合にはそれらの合計量)は特に限定されない。接着力や凝集力等の粘着特性をバランスよく発揮する粘着剤を実現する観点から、架橋剤の含有量は、粘着剤組成物に含まれるモノマー成分100重量部に対して、通常は凡そ5重量部以下とすることが適当であり、凡そ0.001~5重量部とすることが好ましく、凡そ0.001~4重量部とすることがより好ましく、凡そ0.001~3重量部とすることがさらに好ましい。あるいは、上述のような架橋剤を実質的に含有しない粘着剤組成物であってもよい。
【0131】
いくつかの態様において、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを組み合わせて用いることができる。かかる態様において、イソシアネート系架橋剤の含有量とエポキシ系架橋剤の含有量との関係は特に限定されない。補強層に対する密着性と凝集性とをバランスよく両立する観点から、イソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば、エポキシ系架橋剤の含有量の1倍より多い量であってよく、2倍以上でもよく、5倍以上でもよく、7倍以上でもよい。また、粘着剤層の凝集性を効果的に高める観点から、イソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば、エポキシ系架橋剤の含有量の200倍以下が適当であり、100倍以下でもよく、50倍以下でもよく、20倍以下でもよい。
【0132】
イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2-エチレンジイソシアネート;1,2-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0134】
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2-シクロペンチルジイソシアネート、1,3-シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0135】
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0136】
好ましい多官能イソシアネートとして、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA-100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
【0137】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を特に制限なく用いることができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0138】
特に限定するものではないが、エポキシ系架橋剤の具体例として、例えばN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-C」および商品名「TETRAD-X」、DIC社製の商品名「エピクロンCR-5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」等が挙げられる。
【0139】
粘着剤組成物には、必要に応じて粘着付与樹脂を含有させることができる。粘着付与樹脂は、被着体に対する粘着力の向上や、発泡体基材に対する粘着力の向上に役立ち得る。粘着付与樹脂としては、特に限定されず、フェノール系粘着付与樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(テルペンフェノール樹脂等)、ロジン系粘着付与樹脂(未変性ロジン、ロジンエステル、これらの水添化物、不均化物、重合物等)、石油樹脂、スチレン樹脂、クマロン・インデン樹脂、ケトン系樹脂等の、公知の各種粘着付与樹脂から選択される一種または二種以上を用いることができる。好適例として、重合ロジンエステル等のロジン系粘着付与樹脂およびテルペンフェノール樹脂が挙げられる。
【0140】
ここに開示される技術では、上記粘着付与樹脂として、軟化点(軟化温度)が凡そ100℃以上(好ましくは凡そ120℃以上、より好ましくは凡そ135℃以上)であるものを好ましく使用し得る。上述した下限値以上の軟化点をもつ粘着付与樹脂を含む粘着剤によると、より耐反撥性に優れた粘着シートが実現され得る。上記で例示した粘着付与樹脂のうち、このような軟化点を有するテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を好ましく用いることができる。上記粘着付与樹脂は、例えば、軟化点135℃以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様で好ましく用いられ得る。また、軟化点140℃以上の粘着付与樹脂を含む粘着剤によると、特に優れた耐反撥性が実現され得る。例えば、軟化点が140℃以上のテルペンフェノール樹脂を好ましく使用し得る。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃以下(典型的には凡そ180℃以下)とすることができる。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0141】
粘着付与樹脂の使用量は、粘着剤層が硬くなりすぎない範囲で設定することが望ましく、通常はベースポリマー100重量部に対して40重量部以下、20重量部以下、または10重量部以下とすることが好ましい。ここに開示される技術は、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量が5重量部以下か、または粘着付与樹脂を実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。これにより、溶媒または分散媒を実質的に含有しないかあるいは含有量が比較的少なくても低粘度の粘着剤組成物が得られやすくなる。
【0142】
その他、ここに開示される技術における粘着剤組成物には、粘着剤の分野において公知の各種添加剤を必要に応じて含有させることができる。例えば、染料や顔料等の着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤、軟化剤、架橋助剤、レベリング剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤等を、用途に応じて適宜添加することができる。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0143】
いくつかの好ましい態様において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物としては、活性エネルギー線(典型的には光)硬化型粘着剤組成物を好ましく採用し得る。上記活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物のなかでも、上記活性エネルギー線重合型粘着剤組成物が特に好ましい。上記活性エネルギー線重合型粘着剤組成物は、溶媒または分散媒を実質的に含有しないかあるいは含有量が比較的少なくても、低粘度の粘着剤組成物となり得、かつ該未反応モノマーを重合させることにより良好な粘着性能を発揮する粘着剤層を形成し得る。粘着剤組成物が低粘度であることは、粘着剤と補強層との結合性を高める観点から有意義である。特に、不織布等のように空隙を有する補強層に、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を付与した後、該粘着剤組成物を硬化(好ましくは重合)させることにより、補強層によく含浸し、かつ凝集力に優れた粘着剤層が形成され得る。このようにして形成された粘着剤層を有する両面粘着シートは、被着体からの剥離時において、該両面粘着シートの千切れや裂けが抑制され、かつ非糊残り性に優れたものとなり得る。
【0144】
他のいくつかの態様において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物として、モノマー成分の完全重合物が溶媒に溶解または分散した形態の粘着剤組成物を使用してもよい。この種の粘着剤組成物において、溶媒の含有量は特に限定されない。いくつかの態様において、溶媒の含有量は、粘着剤組成物全体の70重量%以下であってよく、55重量%以下でもよく、45重量%以下でもよい。粘着剤組成物に含まれる溶媒は、該粘着剤組成物から粘着剤層を形成する過程で乾燥等により除去されるべき成分である。したがって、溶媒の含有量を抑えることは、両面粘着シートの生産性の向上、材料コストやエネルギーコストの低減等の観点から好ましい。また、有機溶媒の使用量を低減することは環境負荷軽減等の観点からも好ましい。さらに、溶媒の含有量を少なくすることにより、溶媒除去時に粘着剤層内で発泡が生じる事象を抑制しやすくなる傾向にある。このことは、粘着性能の均質性向上や非残り残り性向上の観点から有利となり得る。
【0145】
上記粘着剤組成物の粘度は、特に限定されないが、通常は50Pa・s以下であることが適当であり、25Pa・s以下であることが好ましい。粘着剤組成物の粘度が低くなると、該粘着剤組成物を補強層に付与することにより、該補強層との結合性のよい粘着剤層が形成される傾向にある。空隙を有する補強層(例えば不織布)を用いる場合には、粘着剤組成物の粘度を低くして含浸性を高めることが特に有意義である。かかる観点から、いくつかの態様において、粘着剤組成物の粘度は、例えば20Pa・s以下であってよく、15Pa・s以下でもよく、10Pa・s以下でもよく、8Pa・s以下でもよい。粘着剤組成物の粘度の下限は特に制限されない。粘着剤組成物のレベリング性や厚さ制御の容易性を向上させる観点から、いくつかの態様において、粘着剤組成物の粘度は、例えば1Pa・s以上であってよく、2Pa・s以上でもよく、3Pa・s以上でもよい。
粘着剤組成物の粘度は、BH粘度計を用いて、測定温度30℃、回転数10rpmの条件で測定される。後述する実施例においても同様の測定方法が用いられる。粘着剤組成物の粘度は、例えば、該粘着剤組成物に含まれる重合物の重量平均分子量、未重合物や溶媒の種類および量、その他の成分(例えば、アクリル系オリゴマー、粘着付与樹脂等)の種類および量、等により調節することができる。
【0146】
<補強層>
ここに開示される両面粘着シートは、第一粘着面に露出する粘着剤層と結合して設けられている補強層を含む。上記補強層としては、特に限定されないが、第一粘着面と発泡体基材との間に配置し得るものが好ましく用いられ得る。補強層としては、例えば、麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、金属繊維等の繊維状物質により構成される繊維質シート;多孔質ポリエチレン膜等の多孔質ポリオレフィン膜、多孔質ポリビニルアルコール膜、多孔質ポリアミド膜等の多孔質樹脂膜;ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を利用することができる。補強層には、下塗剤の付与、コロナ放電処理等の、粘着剤と補強層との結合を強化するための処理が施されていてもよい。
【0147】
上記繊維質シートの概念には、上述のような各種の繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布、編物、ネット等が含まれる。ここで不織布とは、一般的な抄紙機を用いて作製されるような不織布、例えば和紙や上質紙等の紙類を包含する概念である。また、上記不織布の概念にはフェルトが含まれる。上記プラスチックフィルムとは、典型的には非多孔質のプラスチック膜を指し、上述した織布や不織布等の繊維質シートや、上述した多孔質樹脂膜とは区別される概念である。上記プラスチックフィルムとしては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。
【0148】
補強層の厚さは、両面粘着シートの柔軟性が大きく損なわれないように設定することが好ましい。いくつかの態様において、補強層の厚さは、例えば150μm以下であってよく、100μm以下、80μm以下、70μm以下、または60μm以下であってもよい。また、強度や取扱い性の観点から、上記厚さは10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、または30μm以上であることが好ましい。耐反撥性と強度をバランスよく両立する観点から、好ましいいくつかの態様において、補強層の厚さは、例えば30μm~60μmであってよく、35μm~55μmであってもよく、40μm~50μmであってもよい。
【0149】
上記補強層としては、空隙を有するものを用いることが好ましい。上記補強層の空隙は、典型的には、該補強層の表面に開口する空隙、換言すると補強層の外部に対して開放された空隙であり得る。このような空隙を有する補強層によると、該補強層と粘着剤層との結合性が向上する傾向にある。いくつかの好ましい態様では、粘着剤層を構成する粘着剤の一部が上記空隙に入り込んでいる。すなわち、粘着剤層が補強層に含浸している。これにより、補強層と粘着剤層との結合性を高め、非糊残り性を向上させることができる。
【0150】
空隙を有する補強層としては、上述した繊維質シートや多孔質樹脂膜を利用し得る。なかでも繊維質シートの使用が好ましい。補強層としての繊維質シートに粘着剤を含浸させることにより、該粘着剤が繊維質シートを構成する繊維のバインダとして機能し、繊維質シートの強度を向上させることができる。粘着剤層を構成する粘着剤を繊維質シートに含浸させることは、該粘着剤層の強化にも役立ち得る。したがって、被覆部において両面粘着シートの表面に露出する粘着剤層を繊維質シートに含浸させて設けることにより、該両面粘着シートの剥離時における千切れや裂けを抑制し、かつ良好な非糊残り性を発揮することができる。その結果、両面粘着シートの剥離性を効果的に改善することができる。
【0151】
また、繊維質シートは、変形容易性(例えば、伸縮容易性)に優れ、該両面粘着シートの巻回や折り曲げに対する適応性が高い。このことは、使用前の両面粘着シートが渦巻き状に巻回された形態である場合や、製造や使用の過程で両面粘着シートを搬送ロールに通過させる場合等において、両面粘着シートを構成する各層間にシワや浮きが発生する事象を抑制する観点から有利である。上記シワや浮きの発生を抑制することは、非糊残り性の向上や外観品質の向上に役立ち得る。
【0152】
いくつかの好ましい態様において、上記補強層として不織布を用いることができる。不織布としては、例えば、木材パルプ、麻パルプ等のパルプ類、綿、麻(例えばマニラ麻)等の天然繊維から構成される不織布;ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等のポリエステル繊維、レーヨン、ビニロン、アセテート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等の化学繊維(合成繊維)から構成される不織布;材質の異なる2種以上の繊維を併用して構成された不織布;等を使用することができる。なかでも、粘着剤の含浸性や強度の観点から、木材パルプや麻パルプ(例えば、マニラ麻を原料とする麻パルプ)等の紙パルプを構成繊維とする不織布、PET繊維から構成される不織布等が好ましい。
【0153】
不織布は、上述のような構成繊維の他に、デンプン(例えば、カチオン化デンプン)、ポリアクリルアミド、ビスコース、ポリビニルアルコール、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の樹脂成分を含有し得る。上記樹脂成分は、当該不織布基材の紙力増強剤として機能するものであり得る。かかる樹脂成分を必要に応じて使用することにより、不織布基材の強度を調整することができる。ここに開示される技術における不織布基材は、その他、歩留まり向上剤、濾水剤、粘度調整剤、分散剤等の、不織布の製造に関する分野において一般的な添加剤を必要に応じて含有し得る。
【0154】
繊維質シート(例えば不織布)の厚さは、通常、凡そ150μm以下であることが適当である。粘着剤を繊維質シートの内部まで充分に含浸させやすくする観点から、上記厚さは、例えば100μm以下でもよく、80μm以下でもよく、70μm以下でもよく、60μm以下でもよい。強度や取扱い性の観点から、上記厚さは、通常、10μm以上であることが適当であり、15μm以上であることが好ましく、20μm以上、25μm以上、30μm以上、または40μm以上であってもよい。
【0155】
繊維質シート(例えば不織布)の坪量は、通常、凡そ4g/m以上であることが適当である。いくつかの態様において、上記坪量が凡そ5g/m以上、凡そ7g/m以上、凡そ10g/m以上、または凡そ12g/m以上の繊維質シートを好ましく使用し得る。坪量が高くなると、繊維質シートの強度や取扱い性が向上する傾向にある。一方、粘着剤を繊維質シートの内部まで充分に含浸させやすくする観点から、上記坪量は、通常、凡そ30g/m以下が適当であり、凡そ25g/m以下が好ましく、凡そ20g/m以下でもよく、凡そ18g/m以下でもよく、凡そ16g/m以下でもよい。
【0156】
繊維質シート(例えば不織布)の嵩密度は、通常、凡そ0.1g/cm以上であることが適当であり、凡そ0.2g/cm以上、例えば凡そ0.25g/cm以上であることが好ましい。嵩密度が高くなると、繊維質シートの強度や取扱い性が向上する傾向にある。一方、上記嵩密度は、例えば凡そ1.1g/cm以下であってよく、凡そ0.8g/cm以下でもよい。粘着剤を繊維質シートの内部まで含浸させやすくする観点から、上記嵩密度は、通常、凡そ0.6g/cm以下が適当であり、凡そ0.5g/cm以下が好ましい。いくつかの態様において、嵩密度が凡そ0.4g/cm以下、さらには凡そ0.35g/cm以下、例えば凡そ0.3g/cm以下の繊維質シートを好ましく用いることができる。
【0157】
特に限定するものではないが、補強層の長手方向(MD)の引張り強さ(MD引張強度)は、例えば1N/15mm以上であり得る。補強層のMD引張強度が高くなると、両面粘着テープの剥離時における千切れや裂けがよりよく防止される傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、補強層のMD引張強度は、例えば2N/15mm以上であってよく、3N/15mm以上でもよい。また、補強層のMD引張強度は、通常、50N/15mm以下であることが好ましく、例えば30N/15mm以下、20N/15mm以下、または10N/15mm以下であってもよい。MD引張強度が低くなると、粘着剤の含浸性や補強層の変形容易性が向上する傾向にある。
【0158】
特に限定するものではないが、補強層の幅方向(TD)の引張り強さ(TD引張強度)は、MD引張強度と同様の理由から、例えば1N/15mm以上、2N/15mm以上、または3N/15mm以上であり得る。また、上記TD引張強度は、、MD引張強度と同様の理由から、例えば50N/15mm以下、30N/15mm以下、20N/15mm以下、または10N/15mm以下であり得る。
【0159】
なお、補強層の引張強度(MD引張強度、TD引張強度)は、JIS P8113に準拠して、幅15mm当たりの値として測定される。すなわち、補強層として使用されるシート状材料(例えば不織布)を幅15mmの帯状にカットしたものを試験片に用いて測定される。後述する実施例においても同様の測定方法が用いられる。補強層の引張強度は、補強層の構成材料(例えば、繊維質シートを構成する繊維の材質)、嵩密度、厚さ等により制御することができる。
【0160】
空隙を有する補強層(例えば、不織布等の繊維質シート)を用いる態様において、該補強層は、以下の方法で行われる液透過性試験において、透過時間が1000秒以下であることが好ましい。
【0161】
(液透過性試験)
内径20mm、高さ75mmの円筒を容易する。補強層として使用されるシート状材料(例えば不織布)を、上記円筒の開口部を十分に覆い得るサイズ(例えば、50mm角の正方形)にカットして試験片を用意する。この試験片で上記円筒の一端の開口部を外側から覆い、該開口部の外方にはみ出した部分を上記円筒の外周に、テトラフルオロエチレン製パッキンで固定する。上記シート状材料で覆われた側の端を下側とし、該下側が宙に浮いた状態となるように上記円筒を垂直に立てて保持する。そして、上記円筒の上端開口部から、試験液(後述するアクリル系ポリマー溶液)10gを静かに投入し、その試験液が上記試験片を透過して最初に滴り落ちるまでの時間を計測する。後述する実施例においても同様の方法が用いられる。
上記試験液としては、以下の条件で調製したアクリル系ポリマー溶液(粘度6.0Pa・s)を使用する。
[試験液の調製方法]
2-エチルヘキシルアクリレート(90重量部)およびアクリル酸(10重量部)から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」BASF社製、0.05重量部)と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」BASF社製、0.05重量部)とを配合する。この配合物に、460nm以下の波長を含む紫外線を照射して、上記配合物の粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が6.0Pa・sになるまで上記モノマー混合物を部分重合させて得られたアクリル系ポリマー溶液を、上記液透過性試験用の試験液として使用する。
【0162】
補強層の液透過性が高く(透過時間が短く)なると、補強層に付与した粘着剤組成物が補強層の内部まで浸透(含浸)しやすくなる傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、上記透過時間は、例えば800秒以下であってよく、600秒以下でもよく、400秒以下でもよく、200秒以下でもよい。上記透過時間の下限は特に制限されないが、補強層の強度や取扱い性の観点から、通常は10秒以上が適当であり、20秒以上でもよく、30秒以上でもよい。いくつかの態様において、補強層の透過時間は、50秒以上または70秒以上であってもよい。
【0163】
<第一被覆部>
ここに開示される両面粘着シートは、第一被覆部および第二被覆部のうち少なくとも第一被覆部が、第一粘着面に露出する粘着剤層および該粘着剤層と結合して設けられた補強層を含んで構成されている。上記補強層は空隙を有する補強層(例えば不織布)であり、上記粘着剤層は上記補強層に含浸していることが好ましい。
【0164】
いくつかの態様において、上記粘着剤層は、第一被覆部の外面(両面粘着シートの第一粘着面を兼ねる。)を構成する外層と、第一被覆部の内面を構成する内層とを含み得る。上記外側層は、典型的には補強層の外面を覆う部分を含む。上記内側層は、典型的には補強層の内面を覆う部分を含む。空隙を有する補強層(例えば不織布)に含浸して粘着剤層が設けられ、該粘着剤層が上記外側層および上記内側層を含む態様において、上記補強層に含浸している粘着剤層は、外側層であってもよく、内側層であってもよく、外側層および内側層の両方でもよい。外側層および内側層の両方が補強層に含浸している場合、補強層への含浸の程度は、外側層と内側層とで同程度であってもよく異なってもよい。非糊残り性を効果的に向上させる観点からは、少なくとも外側層が補強層に含浸していることが好ましい。
【0165】
補強層と結合する粘着剤層を形成する方法としては、従来公知の種々の方法を適用し得る。例えば、補強層に粘着剤組成物を直接塗布する方法(直接法)、適当な剥離面上に粘着剤組成物を塗布して該剥離面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を補強層に貼り合せて転写する方法(転写法)等が挙げられる。これらの方法を組み合わせて用いてもよい。上述のように粘着剤層が外側層および内側層を含む構成において、外側層および内側層の一方を転写法により形成し、他方を直接法により形成してもよい。例えば、補強層の内面に内側層を転写した後、該補強層の外面に粘着剤組成物を塗布することにより外側層を形成してもよい。粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。
【0166】
補強層を備える両面粘着シートのいくつかの態様において、該補強層(例えば、不織布等の繊維質シート)には、空隙面積が500μm2/400μm以下となるように粘着剤層が含浸していることが好ましい。
ここで「空隙面積」とは、両面粘着シートを構成する不織布基材の流れ方向(MD方向、典型的にはシートの長手方向)と直交する切断線に沿って該両面粘着シートを厚み方向に切断した断面(縦断面)において、該断面の長さ(典型的には、不織布基材の幅方向の長さに相当する。)400μm当たりに観察される空隙の面積(該断面への開口面積)をいう。この空隙面積は、例えば、上記断面を倍率100~1000倍程度(例えば300倍)の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られた像(SEM像)を解析することにより把握することができる。より具体的には、後述する実施例に記載の方法に従って空隙面積を求めることができる。補強層として用いられるシート材料の長手方向(MD)に切断位置を異ならせて少なくとも3箇所(より好ましくは5箇所以上、例えば5~10箇所)の断面について空隙面積を求め、それらの平均値を採用することが好ましい。
【0167】
上記空隙面積がより小さいことは、補強層に粘着剤がよりよく含浸していることを意味する。したがって、空隙面積が小さくなるように第一被覆部を構成することにより、補強層と粘着剤層との結合性を高め、非糊残り性を効果的に向上させることができる。いくつかの態様において、上記空隙面積は、例えば300μm2/400μm以下であってよく、200μm2/400μm以下でもよく、100μm2/400μm以下でもよい。空隙面積の下限は特に制限されず、実質的に0μm2/400μm以下であってもよい。いくつかの態様において、生産性や材料コストを考慮して、空隙面積が例えば10μm2/400μm以上または30μm2/400μm以上であってもよい。空隙面積は、補強層の選択、粘着剤組成物の粘度、粘着剤層の形成方法等により調節することができる。
【0168】
いくつかの態様に係る第一被覆部において、補強層の外面は粘着剤層で覆われていることが好ましい。粘着剤層が補強層の外面を覆う厚さ(外面被覆厚さ)は、例えば10μm以上であり得る。被着体に対する粘着性を高める観点から、上記外面被覆厚さは、20μm以上であってよく、25μm以上でもよく、30μm以上でもよく、40μm以上でもよい。また、補強層による非糊残り性向上効果を好適に発揮する観点から、上記外面被覆厚さは、通常、200μm以下であることが適当である。いくつかの態様において、上記外面被覆厚さは、150μm以下、100μm以下、または75μm以下であり得る。
【0169】
いくつかの態様にかかる第一被覆部において、補強層の内層は粘着剤層で覆われていることが好ましい。粘着剤層が補強層の内面を覆う厚さ(内面被覆厚さ)は、例えば3μm以上であり得る。上記内層を覆う粘着剤層を利用して第一被覆部を発泡体基材に貼り合わせる場合、発泡体基材からの第一被覆部の剥離を防止する観点から、上記内面被覆厚さは、好ましくは10μm以上であり、15μm以上または20μm以上であってもよい。また、補強層の内面を覆う粘着剤層の破壊(凝集破壊)を防止する観点から、上記内面被覆厚さは、通常、200μm以下であることが適当であり、150μm以下、100μm以下、または75μm以下であってもよい。
【0170】
外面被覆厚さと内面被覆厚さとの関係は、特に限定されない。いくつかの好ましい態様において、外面被覆厚さを内面被覆厚さと同等以上とすることができ、外面被覆厚さを内面被覆厚さより大きくしてもよい。これにより、両面粘着シートの総厚を抑制しつつ、第一粘着面において被着体に対する良好な粘着力が発揮される傾向にある。かかる態様では、空隙を有する補強層(例えば、不織布等の繊維質シート)と、外側層および内側層を含む粘着剤層を採用し、かつ少なくとも外側層を構成する粘着剤を補強層に含浸させることが特に有意義である。外面被覆厚さの厚さは、例えば、内面被覆厚さの1.0倍とすることができ、1.0倍超、1.2倍以上、または1.5倍以上であってもよい。
【0171】
第一被覆部の厚さ(すなわち、該第一被覆部の外面と内面との距離)は、特に限定されず、例えば20μm以上であり得る。被着体に対する接着性を高めるとともに、補強層を設けることによる効果を好適に発揮する観点から、いくつかの態様において、第一被覆部の厚さは、例えば30μm以上であってよく、50μm以上、70μm以上、または100μm以上であってもよい。また、両面粘着シートの総厚を抑える観点から、いくつかの態様において、第一被覆部の厚さは、例えば500μm以下であってよく、400μm以下、300μm以下、または200μm以下であってもよい。
【0172】
<第二被覆部>
ここに開示される技術における第二被覆部は、第二粘着面に露出する粘着剤層を含む。第二被覆部の粘着剤層の材質、構成、製造方法等としては、第一被覆部の粘着剤層に適用し得るものとして上記で例示したものから適宜選択することができる。第二被覆部の粘着剤層の材質、構成、製造方法等は、それぞれ、第一被覆部の粘着剤層と同一であってもよく、異なってもよい。生産性の向上や両面粘着テープの使い勝手向上等の観点から、いくつかの態様において、同一の粘着剤組成物を第一粘着剤層および第二粘着剤層の形成に用いることができる。
【0173】
<両面粘着シート>
ここに開示される両面粘着シートは、発泡体基材の第一面側および第二面側にそれぞれ第一被覆部および第二被覆部が配置された構成を有する。かかる構成の両面粘着シートを製造する方法は、特に限定されない。例えば、第一被覆部は、あらかじめ作製した第一被覆部の内面を発泡体基材の第一面に貼り合わせることで配置してもよく、発泡体基材の第一面上で第一被覆部を形成することにより配置してもよい。発泡体基材の第一面上で第一被覆部を形成する方法としては、例えば、上記第一面上に粘着剤層(内側層)を転写法または直接法により配置し、該内側層の外面に補強層を貼り合わせ、該補強層の外面に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層(外側層)を形成する方法を用いることができる。第二被覆部も同様に、あらかじめ作製した第二被覆部の内面を発泡体基材の第二面に貼り合わせることで配置してもよく、発泡体基材の第二面上で第二被覆部を形成することにより配置してもよい。補強層を含まない第二被覆部の場合、該第二被覆部を構成する粘着剤層を直接法または転写法により発泡体基材に設けることができる。
【0174】
いくつかの好ましい態様において、粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分は、凡そ70%以上であり得る。粘着剤のゲル分が高くなると、非糊残り性が向上する傾向にある。また、粘着剤が補強層(例えば、不織布等の繊維質シート)に含浸した構成においてゲル分を高めることにより、粘着剤と補強層との結合性が向上する傾向にあり、該粘着剤による補強層の強度向上の効果も大きくなる傾向にある。かかる観点から、いくつかの態様において、粘着剤のゲル分は、例えば70%超であってよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、85%以上でもよく、87%以上でもよい。ゲル分の上限は特に制限されないが、被着体に対する粘着性を高める観点から、通常は99%以下が適当であり、97%以下でもよい。ゲル分は、モノマー成分の組成の選択、重合方法や重合条件の選択、多官能モノマーの使用、架橋剤の使用等により調節することができる。粘着剤のゲル分は、以下の方法で測定される。後述する実施例においても同様の方法が用いられる。上記ゲル分は、第一粘着面を構成する粘着剤および第二粘着面を構成する粘着剤のいずれにも適用され得る。少なくとも第一粘着面を構成する粘着剤が上記ゲル分を有することが好ましい。
【0175】
(ゲル分測定方法)
粘着剤層から採取した約0.1gの粘着剤サンプル(重量Wg1)を、平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(重量Wg2)で巾着状に包み、口をタコ糸(重量Wg3)で縛る。上記多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜としては、商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(日東電工株式会社、平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用する。この包みを酢酸エチル50mLに浸し、室温(典型的には23℃)で7日間保持して上記サンプル中のゾル(酢酸エチル可溶分)を上記膜外に溶出させる。次いで、上記包みを取り出し、外表面に付着している酢酸エチルを拭き取った後、該包みを130℃で2時間乾燥させ、該包みの重量(Wg4)を測定する。各値を以下の式に代入して粘着剤のゲル分Gを算出する。
ゲル分G(%)=[(Wg4-Wg2-Wg3)/Wg1]×100
【0176】
ここに開示される両面粘着シートの総厚(すなわち、第一粘着面から第二粘着面までの距離)は、特に限定されない。発泡体基材の特性を活かし、かつ被着体に対する良好な接着しを発揮する観点から、両面粘着シートの総厚は、例えば50μm以上であってよく、75μm以上でもよく、100μm以上でもよく、150μm以上でもよい。また、両面粘着シートの取扱い性(例えば、細幅のテープ形状への加工性、巻取り性、打ち抜き加工性)等の観点から、該両面粘着シートの厚さは、通常、5000μm以下が適当であり、4000μm以下でもよく、3000μm以下でもよく、2500μm以下、2000μm以下、または1500μm以下でもよい。両面粘着シートの厚さを小さくすることは、該両面粘着テープが適用される製品の小型化や軽量化等の観点からも好ましい。
【0177】
なお、ここに開示される両面粘着シートは、本発明の効果を大きく損なわない範囲で、発泡体基材、第一被覆層および第二被覆層以外の層(下塗り層、帯電防止層等の機能層、、印刷層等の装飾層等。以下、「他の層」ともいう。)をさらに含んでもよい。上記他の層は、例えば、発泡体基材と第一被覆層との間および/または第二被覆層との間にされ得る。また、上記他の層は、第一被覆層および/または第二被覆層に含まれていてもよい。
【0178】
<用途>
ここに開示される両面粘着シートの貼付け対象物(被着体)は特に限定されない。ここに開示される両面粘着シートは、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、PC-ABSブレンド樹脂、PC-HIPSブレンド樹脂等の樹脂材料;天然ゴム、ブチルゴム等のゴム材料;およびこれらの複合材料等からなる被着体に貼り付けられる態様で用いることができる。
【0179】
ここに開示される両面粘着シートは、発泡体基材を含むことから、衝撃吸収性や防水性、防塵性等に優れたものとなり得る。このような特長を活かして、電子機器用途、例えば、携帯電子機器の表示部固定用、携帯電子機器の表示部保護部材固定用、携帯電話のキーモジュール部材固定用、テレビのデコレーションパネル固定用、パソコンのバッテリーパック固定用、デジタルビデオカメラのレンズ防水等の用途に好ましく適用され得る。特に好ましい用途として、携帯電子機器用途が挙げられる。特に、液晶表示装置を有する携帯電子機器に好ましく使用され得る。例えば、このような携帯電子機器において、表示部(液晶表示装置の表示部であり得る。)または表示部保護部材と筐体とを接合する用途等に好適である。
【0180】
なお、上記表示部保護部材は、典型的には厚さ方向への光透過性を示す領域を有する部材(以下「光透過性部材」ともいう。)であり、レンズと称されることもある。ここで、本明細書において「レンズ」とは、光の屈折作用を示すものと光の屈折作用を示さないものとの両方を包含する概念である。つまり、本明細書における「レンズ」には、屈折作用がない光透過性部材、例えば携帯電子機器の表示部を単に保護する保護パネル等も含まれる。上記保護パネルは、光透過性を有する表示部保護部材または表示部カバー部材としても把握され得る。上記保護パネルの材質がガラスである場合、該保護パネルは「カバーガラス」とも称することができる。ただし、上記保護パネルまたは上記レンズの材質はガラスに限定されず、光透過性を示し得る材質であればよい。
【0181】
また、本明細書において携帯電子機器とは、携帯して使用する電子機器一般のことをいい、それ以外特に限定されない。ここで「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは十分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。ここでいう「携帯電子機器」の例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型PC、ノートPC等が含まれる。このような携帯電子機器は、いわゆるウェアラブル型(例えば、腕時計型等のリストバンド型、メガネ型等のヘッドマウント型等)の端末であってもよい。上記携帯電子機器は、例えば、電話、時計、カメラ、メガネ、パソコンその他の情報端末、血圧計や脈拍計、歩数計等の健康管理ツール、音楽プレーヤー、動画プレーヤー、録音、録画等の1または2以上の機能を有するものであり得る。
【0182】
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 第一表面および第二表面がいずれも粘着面となっている両面粘着シートであって、
シート状の発泡体基材と、
上記発泡体基材の第一面側に配置された第一被覆部と、
上記発泡体基材の第二面側に配置された第二被覆部と
を含み、
上記第一被覆部は、上記第一表面に露出する粘着剤層と該粘着剤層と結合して設けられている補強層とを含み、
上記第二被覆部は上記第二表面に露出する粘着剤層を含む、両面粘着シート。
(2) 上記補強層は空隙を有し、上記第一表面に露出する粘着剤層を構成する粘着剤が上記空隙に含浸している、上記(1)に記載の両面粘着シート。
(3) 上記補強層は繊維質シートである、上記(1)または(2)に記載の両面粘着シート。
(4) 上記補強層の厚さは凡そ20μm以上凡そ150μm以下である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(5) 上記第一表面に露出する粘着剤層は、活性エネルギー線重合性粘着剤組成物から形成された粘着剤により構成されている、上記(1)~(4)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(6) 上記第一表面に露出する粘着剤層は、ゲル分が凡そ70%以上である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(7) 上記補強層の外面は上記第一表面に露出する粘着剤層で覆われており、該粘着面が上記外面を覆う厚さは凡そ10μm以上凡そ200μm以下である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(8) 上記発泡体基材は、ポリオレフィン系発泡体基材である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(9) 上記発泡体基材の厚さは凡そ200μm以上である、上記(1)~(8)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(10) 上記発泡体基材の25%圧縮強度は凡そ30kPa、凡そ35kPaまたは凡そ40kPa以上である、上記(1)~(9)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(11) 上記補強層は、上述した液透過性試験における透過時間が凡そ30秒以上凡そ1000秒以下である、上記(1)~(10)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(12) 上記補強層は不織布(好ましくは紙)である、上記(1)~(11)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(13) 上記補強層は、麻パルプを構成繊維とする不織布(好ましくは紙)である、上記(1)~(12)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(14) 上記構成繊維の実質的に100重量%(典型的には98重量%以上、例えば99重量%以上)が麻である、上記(13)に記載の両面粘着シート。
(15) 上記補強層のMD引張強度が凡そ1N/15mm以上凡そ50N/15mm以下である、上記(1)~(14)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(16) 上記第一表面に露出する粘着剤層は、活性エネルギー線重合性粘着剤組成物から形成された粘着剤により構成されており、上記粘着剤組成物は、該粘着剤組成物を構成するモノマー成分100重量部に対して凡そ0.05重量部以上凡そ1重量部以下の多官能モノマーを含む、上記(1)~(15)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(17) 上記第一表面に露出する粘着剤層は、粘度が凡そ3Pa・s以上凡そ50Pa・sの粘着剤組成物から形成されたものである、上記(1)~(16)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(18) 上記第二被覆部は、上記第二表面に露出する粘着剤層と、該粘着剤層と結合して設けられている補強層とを含む、上記(1)~(17)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(19) 上記発泡体基材は、その表面に表層が形成されている発泡体基材である、上記(1)~(18)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(20) 上記第一表面に露出する粘着剤層は、アクリル系粘着剤層である、上記(1)~(19)のいずれかに記載の両面粘着シート。
(21) 上記アクリル系粘着剤層はアクリル系粘着剤組成物から形成されたものであり、
上記アクリル系粘着剤組成物は、モノマー成分として、以下の成分(A)を含み、さらに以下の成分(B)、成分(C)および成分(D)の少なくともいずれかを含む、上記(20)に記載の両面粘着シート。
成分(A):炭素数1~18のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート。
成分(B):脂環式モノマー。
成分(C):ヒドロキシ基およびカルボキシ基から選択されるモノマー。
成分(D):ヘテロ環含有モノマー。
(22) 上記成分(A)全体のうちC6-9アルキルアクリレート(例えば2EHA)の占める割合が凡そ50重量%以上100重量%以下、凡そ60重量%以上100重量%以下、または凡そ70重量%以上100重量%以下である、上記(21)に記載の両面粘着シート。
【実施例
【0183】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0184】
<例1>
(ポリマーシロップ1(2EHA/AA=90/10)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA、90部)およびアクリル酸(AA、10部)から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(0.1部)を配合した後、窒素雰囲気下において、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が6.0Pa・sになるまで460nm以下の波長を含む紫外線を照射して、部分重合物(ポリマーシロップ1)を得た。上記光重合開始剤としては、BASF社製の製品名「イルガキュア651」と、同社製の製品名「イルガキュア184」とを1:1の重量比で使用した。
【0185】
(粘着剤組成物UV-Aの調製)
上述したアクリル系ポリマーシロップ1(100部)に対して、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、0.1部)を配合して、有機溶媒を実質的に含有しない紫外線硬化型粘着剤組成物UV-Aを調製した。この粘着剤組成物UV-Aの粘度は6.0Pa・sであった。なお、粘着剤組成物UV-Aの粘度は、BH粘度計を用いて、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃の条件で測定した。以下で説明する各粘着剤組成物の粘度も同条件で測定した。
【0186】
(被覆部の作製)
片面が剥離処理された厚さ38μmのポリエステルフィルム(ポリエステル製剥離ライナーA)の剥離処理面に、上記粘着剤組成物UV-Aを25μmの厚さに塗布した。上記剥離ライナーA上に塗布された粘着剤組成物UV-Aの表面(開放面)に、該剥離ライナーAと同種のポリエステル製剥離ライナーB(ただし、剥離ライナーAより剥離性が高い。)の剥離処理面を重ねることにより、2枚の剥離ライナーA,Bの剥離処理面間に粘着剤組成物UV-Aが挟まれた構成の積層物を形成した。この積層物の両側(両剥離ライナーの外側)から、照度5mW/cmのブラックライトランプにて3分間紫外線を照射した。このようにして厚さ25μmの粘着剤層を作製した。
上記粘着剤層から剥離ライナーBを剥がして粘着剤層の片面を露出させ、補強層としての不織布の第二面(発泡体基材側の面)に貼り合わせることにより、該第二面に転写法による粘着剤層(内側粘着剤層)を設けた。上記貼り合わせの後、上記剥離ライナーAは引き続き上記粘着剤層の保護に使用した。上記不織布としては、麻パルプを構成繊維とする紙A(坪量14.2g/m、日本製紙パピリア社から入手可能な不織布)を使用した。
【0187】
次いで、上記紙Aの第一面(両面粘着シートの第一粘着面側を向く面)に、粘着剤組成物UV-Aを直接塗布した。粘着剤組成物UV-Aの塗布量は、紙Aに含浸する分を考慮して、該紙Aの第一面(外面)を粘着剤が被覆する厚さ、すなわち外面被覆厚さが、約50μmとなるように調節した。紙Aの外面に塗布された粘着剤組成物UV-Aの表面(開放面)に、剥離ライナーAと同種のポリエステル製剥離ライナーC(ただし、剥離ライナーAより剥離性が低い。)の剥離処理面を重ね、該剥離ライナーCの外側から照度5mW/cmのブラックライトランプにて3分間紫外線を照射することにより、直接法による外側粘着剤層を形成した。
このようにして、内側粘着剤層と外側粘着剤層とが一体化(融合)した粘着剤層と、該粘着剤層が含浸した補強層とを備える第一被覆部を、上記粘着剤層の内面および外面がそれぞれ剥離ライナーA,Cにより保護された形態で得た。上記第一被覆部を2枚作製し、そのうち一枚を第二被覆部として使用した。
【0188】
(両面粘着シートの作製)
上記で得た第一、第二被覆部の内面を覆う剥離ライナーAを剥がし、両面にコロナ放電処理が施された架橋ポリエチレン系発泡体シートA(製品名「ボラーラ」、厚さ0.30mm、密度0.20g/cm、圧縮強度80kPa、積水化学工業社から入手可能)の第一面および第二面にそれぞれ貼り合わせた。次いで、圧力0.5MPa、速度10m/分の条件で50℃のラミネータに1回通過させた後、40℃のオーブン中で24時間養生して、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0189】
<例2>
(粘着剤組成物Sol-Aの調製)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、2EHA(95部)およびAA(5部)と、酢酸エチルとトルエンとの混合溶媒(212部、酢酸エチル/トルエンの重量比=70/30)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.4部のベンゾイルパーオキサイドを加え、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーのMwは約120×10であった。
上記アクリル系ポリマー溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対し
て、イソシアネート系架橋剤(0.4部、東ソー社製、製品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液)およびエポキシ系架橋剤(0.05部、三菱瓦斯化学社製、製品名「TETRAD-C」)を加え、攪拌混合して、溶剤型の粘着剤組成物Sol-Aを調製した。
【0190】
(被覆部および両面粘着シートの作製)
上述した剥離ライナーAの剥離処理面に粘着剤組成物Sol-Aを塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ25μmの粘着剤層を作製した。この粘着剤層を不織布(紙A)の第二面に貼り合わせることにより、該第二面に転写法による粘着剤層(内側粘着剤層)を設けた。上記剥離ライナーAは引き続き上記粘着剤層の保護に使用した。
次いで、上記紙Aの第一面(両面粘着シートの第一粘着面側を向く面)に、粘着剤組成物Sol-Aを直接塗布し、100℃で2分間乾燥させることにより、直接法による外側粘着剤層を形成した。粘着剤組成物Sol-Aの塗布量は、紙Aに含浸する分を考慮して、該紙Aの外面被覆厚さが約50μmとなるように調節した。外側粘着剤層の表面に上述した剥離ライナーCを貼り付けて保護した。このようにして、内側粘着剤層と外側粘着剤層とが一体化(融合)した粘着剤層と、該粘着剤層が含浸した補強層とを備える第一被覆部を、上記粘着剤層の内面および外面がそれぞれ剥離ライナーA,Cにより保護された形態で得た。上記第一被覆部を2枚作製し、そのうち一枚を第二被覆部として使用した。
これらの被覆部を用いた他は例1における両面粘着シートの作製と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0191】
<例3>
(ポリマーシロップ2(2EHA/NVP/HEA)=78/18/4)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA、78部)およびN-ビニル-2-ピロリドン(NVP、18部)およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA、4部)から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(0.07部)を配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が6.0Pa・sになるまで460nm以下の波長を含む紫外線を照射して部分重合物(ポリマーシロップ2)を得た。上記光重合開始剤としては、BASF社製の製品名「イルガキュア651」と、同社製の製品名「イルガキュア184」とを1:1の重量比で使用した。
【0192】
(粘着剤組成物UV-Bの調製)
上述したポリマーシロップ2(100部)に対して、HEA(17.5部)、HDDA(0.087部)およびシランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業社製、0.35部)を配合して、有機溶媒を実質的に含有しない紫外線硬化型粘着剤組成物UV-Bを調製した。この粘着剤組成物UV-Bの粘度は6.5Pa・sであった。
粘着剤組成物UV-Aに代えて粘着剤組成物UV-Bを用いた他は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0193】
<例4>
(アクリル系オリゴマー1の調製)
メチルメタクリレート(MMA、38.7部)およびジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA、57.7部)と、連鎖移動剤としての1-チオグリセロール(3.3部)と、溶媒としての酢酸エチル(64部)とを混合し、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を除去した。次に、重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(0.30部)を加え、70℃で2時間反応させ、続いて80℃で2時間反応させた。得られた反応液から、85℃、7.5kPaの真空乾燥条件下で酢酸エチルおよび残存モノマーを除去して、粉末状のアクリル系オリゴマー1を得た。
【0194】
(粘着剤組成物UV-Cの調製)
上記で得られた粉末状のアクリル系オリゴマー1と2EHAとを1:1の重量比で混合し、30分間攪拌して溶解させて、オリゴマー/2EHA混合物を得た。
上述したポリマーシロップ2(100部)に対して、上記オリゴマー/2EHA混合物(12部)、HEA(17.5部)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、0.087部)およびシランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業社製、0.35部)を配合して、有機溶媒を実質的に含有しない紫外線硬化型粘着剤組成物UV-Cを調製した。この粘着剤組成物UV-Cの粘度は5.4Pa・sであった。
粘着剤組成物UV-Aに代えて粘着剤組成物UV-Cを用いた他は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0195】
<例5~7>
例1で用いた粘着剤組成物UV-Aの調製において、アクリル系ポリマーシロップ1(100部)に対するHDDAの使用量を0.05部(例5)、0.15部(例6)、および0.30部(例7)にそれぞれ変更して、粘着剤組成物UV-D,UV-E,UV-Fを得た。粘着剤組成物UV-Aに代えて上記粘着剤組成物UV-D,UV-E,UV-Fを用いた他は例1と同様にして、例5~7に係る両面粘着シートを得た。
【0196】
<例8,9>
補強層として、例1で使用した紙Aに代えて、例8では麻パルプを構成繊維とする紙B(坪量17.8g/m、日本製紙パピリア社から入手可能な不織布)、例9では紙パルプを構成繊維とする紙C(坪量17.2g/m、日本製紙パピリア社から入手可能な不織布)を、それぞれ使用した。その他の点は例1と同様にして、例8,9に係る両面粘着シートを得た。
【0197】
<例10>
ポリマーシロップ1の調製において、部分重合物を得る際の紫外線照射時間をより短くすることにより、ポリマーシロップ1に比べて低粘度のポリマーシロップ3を調製した。このポリマーシロップ3を用いた他は粘着剤組成物UV-Aの調製と同様にして、有機溶媒を実質的に含有しない粘着剤組成物UV-Gを調製した(粘度3Pa・s)。粘着剤組成物UV-Aに代えて粘着剤組成物UV-Gを用いた他は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0198】
<例11>
ポリマーシロップ1の調製において、部分重合物を得る際の紫外線照射時間をより長くすることにより、ポリマーシロップ1に比べて高粘度のポリマーシロップ4を調製した。このポリマーシロップ4を用いた他は粘着剤組成物UV-Aの調製と同様にして、有機溶媒を実質的に含有しない粘着剤組成物UV-Hを調製した(粘度30Pa・s)。粘着剤組成物UV-Aに代えて粘着剤組成物UV-Hを用いた他は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0199】
<例12~15>
紙Aの第一面に粘着剤組成物UV-Aを直接塗布する際における塗布量を、表2に示す外面被覆厚さとなるように調節した。その他の点は例1と同様にして、例12~15に係る両面粘着シートを得た。
【0200】
<例16>
発泡体シートAに代えて、両面にコロナ放電処理が施された架橋ポリエチレン系発泡体シートB(製品名「ボラーラ」、厚さ0.2mm、密度0.20cm、圧縮強度45kPa、積水化学工業社から入手可能)を使用した。その他の点は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0201】
<例17>
発泡体シートAに代えて、両面にコロナ放電処理が施された架橋ポリエチレン系発泡体シートC(製品名「ボラーラ」、厚さ2.0mm、密度0.07cm、圧縮強度45kPa、積水化学工業社から入手可能)を使用した。その他の点は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0202】
<例18>
発泡体シートAに代えて、両面にコロナ放電処理が施された架橋ポリオレフィン系発泡体シートD(厚さ0.3mm、密度0.10cm、圧縮強度37kPa)を使用した。その他の点は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0203】
<例19>
発泡体シートAに代えて、両面にコロナ放電処理が施された架橋ポリオレフィン系発泡体シートE(厚さ0.3mm、密度0.08cm、圧縮強度36kPa)を使用した。その他の点は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0204】
<例20,21>
補強層として、例1で使用した紙Aに代えて、例18では紙パルプを構成繊維とする紙D(坪量6.0g/m、日本製紙パピリア社から入手可能な不織布)、例19では紙パルプを構成繊維とする紙E(坪量23.0g/m、日本製紙パピリア社から入手可能な不織布)を、それぞれ使用した。その他の点は例1と同様にして、例20,21に係る両面粘着シートを得た。
【0205】
<例22>
補強層として、例1で使用した紙Aに代えて、厚さ0.012mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。その他の点は例1と同様にして、本例に係る両面粘着シートを得た。
【0206】
<例23>
剥離ライナーAの剥離処理面に、粘着剤組成物UV-Aを75μmの厚さに塗布し、これに剥離ライナーBを重ねて両側から照度5mW/cmのブラックライトランプで3分間紫外線を照射することにより、両面が剥離ライナーA,Bで保護された厚さ75μmの粘着剤層を得た。上記粘着剤層を2枚用意し、それぞれ剥離ライナーAを剥がして発泡体シートAの第一面および第二面に貼り合わせることにより、本例に係る両面粘着シートを得た。この両面粘着シートは、発泡体シートAの第一面側および第二面側のいずれにも、粘着剤層と結合して設けられた補強層を有しない。
【0207】
<測定および評価>
(空隙面積の測定)
各例において作製した第一被覆部を、補強層のMDと直交する切断線に沿って厚み方向に切断し、4%オスミウム(Os)水溶液を用いて50℃で5時間蒸気染色した。その後、ミクロトームにより観察用試料を切り出して導電性粘着テープで試料台に固定し、Pt-Pdスパッタリングを20秒間施した。このようにして調整した試料の断面を以下の条件で観察した。
装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製品、電界放出型走査電子顕微鏡、型番「S-4800」;
測定条件:加速電圧3kV(倍率300倍)にて二次電子像を観察。
このようにして得られたSEM像を市販の画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製品、商品名「A像くん」を使用した。)で解析することにより、上記試料断面の長さ400μm当たりに観察される空隙の面積(μm2/400μm)を求めた。なお、上記画像解析ソフトにおける解析モードは「粒子解析」とした。解析条件の設定にあたっては、個々のSEM像を見ながら、実際に空隙となっている部分が適切にピックアップされるように留意して、空隙か空隙でないかの閾値を手動で設定した。また、測定の目的たる空隙(すなわち、不織布への含浸の程度を示す空隙)とは明らかに異なる部分(例えば観察用試料の調整時に生じた粘着剤層のひび割れ等)は空隙面積に算入されないようにした。不織布基材の流れ方向に切断位置を異ならせた3箇所の断面について上記空隙面積を求め(すなわちn=3)、それらの平均値を当該両面粘着シートの空隙面積とした。
得られた空隙面積の値に基づいて、以下の4段階で、粘着剤の補強層への含浸の程度を評価した。
E:空隙面積が100μm2/400μm以下(優)
G:空隙面積が100μm2/400μmを超えて200μm2/400μm以下(良)
A:空隙面積が200μm2/400μmを超えて500μm2/400μm以下(実用上許容し得る)
P:空隙面積が500μm2/400μmを超える(含浸性に乏しい)
【0208】
(千切れ・裂け防止性)
各例に係る両面粘着シートについて、以下の千切れ・裂け防止性試験を行った。
具体的には、両面粘着シートを幅10mm、長さ100mmの長方形状に裁断して試験片を調製した。この試験片の第一粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した第一粘着面をガラス板(幅30mm、長さ100mm以上)に、2kgのローラを一往復させて圧着した。これを室温(約25℃)で30分間静置した後、第二面の剥離ライナーを剥がし、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、TG-1kN)を使用して、引張速度1000mm/分、剥離角度90度の条件で、上記試験片をガラス板から引き剥がし、そのときの千切れ・裂けの発生の有無を観察した。上記引き剥がしの際に、両面粘着シートが破断することなくガラス板上から剥離した場合には、千切れ・裂け防止性を「G」(良好)と評価した。上記引き剥がしの途中で両面粘着シートが破断した場合には、千切れ・裂け防止性を「P」(乏しい)と評価した。
【0209】
(非糊残り性)
各例に係る両面粘着シートの第二粘着面を覆う剥離ライナーを剥がして厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせ、幅25mm、長さ100mmの長方形状に裁断して試験片を調製した。この試験片の第一粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した第一粘着面をガラス板(幅30mm、長さ100mm以上)に、2kgのローラを一往復させて圧着した。これを室温(約25℃)で30分間静置した後、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、TG-1kN)を使用して、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、上記試験片をガラス板から引き剥がした。引き剥がし後のガラス板表面をデジタルカメラ(CASIO社、商品名「EXILIM EX-ZS12」)で撮影して得られた画像を解析し、以下の式により糊残りの割合を算出した。
糊残りの割合(%)=(ガラス板上に粘着剤が残っている面積)/(ガラス板に両面粘着シートを貼り合せた面積)×100
得られた値に基づいて、以下の4水準で非糊残り性を評価した。
E:糊残りの割合が0%以上1%以下(非糊残り性に優れる)
G:糊残りの割合が1%より多く5%以下(非糊残り性良好)
A:糊残りの割合が5%より多く15% 以下(実用上許容し得る非糊残り性を示す)
P:糊残りの割合が15%より多い(非糊残り性に乏しい)
【0210】
得られた結果を表1~3に示した。なお、表中の「塗工時粘度」は両面粘着シートの作製に使用した粘着剤組成物の粘度を示し、補強層の「引張強度」はMD引張強度を示している。
【0211】
【表1】
【0212】
【表2】
【0213】
【表3】
【0214】
表1~3に示されるように、被覆部が補強層を有しない例23の両面粘着シートは上記千切れ・裂け試験において試験片が破断した。一方、被覆部が補強層を有する例1~22の両面粘着シートは、上記千切れ・裂け試験において、途中で破断することなくガラス板から剥離することができた。また、空隙を有する補強層を使用した例1~21の両面粘着シートは、補強層としてPETフィルムを使用した例22の両面粘着シートに比べて明らかに非糊残り性に優れることが確認された。
【0215】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0216】
1 粘着シートロール
10 両面粘着シート
10A 第一表面(第一粘着面)
10B 第二表面(第二粘着面)
11 第一被覆部
12 第二被覆部
15 発泡体基材
15A 第一面
15B 第二面
112 第一粘着剤層(粘着剤層)
112A 外面
112B 内面
114 補強層
114A 外面
114B 内面
122 第二粘着剤層(粘着剤層)
122A 外面
122B 内面
124 補強層
124A 外面
124B 内面
図1