(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】寝台装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20221221BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20221221BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61B5/055 366
A61B6/04 332P
A61B6/03 323Z
(21)【出願番号】P 2018025358
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高村 知俊
(72)【発明者】
【氏名】樋山 陽一
(72)【発明者】
【氏名】薄田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大塚 ゆりな
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6002678(JP,B2)
【文献】特開2004-267801(JP,A)
【文献】特開平11-033010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0158524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像診断装置本体と機械的に、および電気的に接続可能な寝台装置であって、
前記寝台装置と床面との間に設けられた走行部と、
前記走行部の駆動のロック、アンロックの操作が可能なロックペダルと、
を備え
、
前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とが機械的に接続された状態で、前記ロックペダルによる操作に応じて前記走行部の駆動がロックされると、前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とが電気的に接続さ
れ、
前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とが機械的に接続された状態で、前記ロックペダルによる操作に応じて前記走行部の駆動がアンロックされると、前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とが電気的に分離される、
寝台装置。
【請求項2】
医用画像診断装置本体と機械的に、および電気的に接続可能な寝台装置であって、
前記寝台装置と床面との間に設けられた走行部と、
前記走行部の駆動のロック、アンロックの操作が可能なロックペダルと、
を備え
、
前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とが機械的に接続された状態で、前記ロックペダルによる操作に応じて前記走行部の駆動がロックされると、前記走行部の駆動がロックされたことに連動して前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とが電気的に自動で接続さ
れ、
前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とが機械的に接続された状態で、前記ロックペダルによる操作に応じて前記走行部の駆動がアンロックされると、前記走行部の駆動がアンロックされたことに連動して前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とが電気的に自動で分離される、
寝台装置。
【請求項3】
医用画像診断装置本体と機械的に、および電気的に接続可能な寝台装置であって、
前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置との機械的な接続状態を検出する第1検出部と、
前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置との電気的な接続が可の状態か不可の状態かを検出する第2検出部と、
前記第1検出部と前記第2検出部による検出結果に応じて動作が制限される、前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とを機械的に分離する分離ペダルと、
を備えた寝台装置。
【請求項4】
前記分離ペダルは、
前記第1検出部により前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置との機械的な接続が検出され、かつ、前記第2検出部により前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置との電気的な接続が不可の状態であると検出されると、前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置とを機械的に分離するための動作がロックされる、
請求項
3記載の寝台装置。
【請求項5】
医用画像診断装置本体と機械的に、および電気的に接続可能な寝台装置であって、
前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置との電気的な接続および電気的な分離を制御する制御部と、
前記医用画像診断装置本体と前記寝台装置との機械的な分離の可否を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、
機械的な分離の可否を、(a)前記寝台装置と床面との間に設けられた走行部の駆動のロック、アンロックの状態と、(b)前記寝台装置にける被検体を載置する位置の近傍に設けられたフェンスの傾きと、の少なくとも1つにもとづいて判定し、
前記制御部は、
前記判定部による判定結果に連動して、電気的な接続および電気的な分離の制御を行う、
寝台装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、寝台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置で利用される寝台装置には、病室からMRI装置が設置された検査室まで、被検体を載置して移動可能であるとともに、検査室内でMRI装置本体と機械的に、および電気的に接続可能な移動式の寝台装置がある。
【0003】
しかし、MRI装置本体と寝台装置とが接続されて通電している状態で、たとえばユーザの誤操作によってMRI装置本体と寝台装置とが分離されてしまうと、MRI装置本体や寝台装置の電気系統が破損してしまう危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、機械的に、および電気的に接続状態にある医用画像診断装置本体から、寝台装置を安全に分離することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る寝台装置は、医用画像診断装置本体と機械的に、および電気的に接続可能な寝台装置であって、走行部と、ロックペダルとを備える。走行部は、寝台装置と床面との間に設けられる。ロックペダルは、走行部の駆動のロック、アンロックの操作が可能である。ロックペダルによる操作と、医用画像診断装置本体との電気的な接続とは、連動する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る寝台装置を含むMRI装置の一構成例を示すブロック図。
【
図2】(a)は寝台装置が装置本体と機械的に分離された様子の一例を示す説明図、(b)は機械的に接続された様子の一例を示す説明図。
【
図3】装置本体と寝台装置とが機械的に分離された状態における、寝台装置の内部構成の様子を概略的に示す説明図。
【
図4】装置本体と寝台装置とが機械的に分離された状態における、判定部の動作の一例を示す説明図。
【
図5】(a)は装置本体と寝台装置とが機械的に分離された状態であるとともに、キャスタ旋回ロック状態である場合の判定部の動作の一例を示す説明図、(b)はキャスタフリー状態である場合の判定部の動作の一例を示す説明図、(c)はキャスタロック状態である場合の判定部の動作の一例を示す説明図。
【
図6】装置本体と寝台装置とが機械的に接続された状態であって、キャスタロックペダルによりキャスタがフリー状態とされている場合における、寝台装置の内部構成の様子を概略的に示す説明。
【
図7】装置本体と寝台装置とが機械的に分離され、かつキャスタフリーの状態(上段)から、機械的に接続されて(中段)、キャスタロック状態とされる(下段)までの判定部の状態遷移を説明するための図。
【
図8】装置本体と寝台装置とが機械的に接続された状態であって、キャスタロックペダルによりキャスタがロック状態とされている場合における、寝台装置の内部構成の様子を概略的に示す説明図。
【
図9】装置本体と寝台装置との電気的な接続方法の一例を説明するための図。
【
図10】サイドフェンスを有する寝台装置の一構成例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、寝台装置の実施形態について詳細に説明する。実施形態に係る寝台装置がその本体と機械的に、および電気的に接続される医用画像診断装置としては、MRI装置、SPECT装置やPET装置などの核医学診断装置、X線CT装置など種々のモダリティが挙げられる。
【0009】
ここで、医用画像診断装置の「本体」とは、撮像室内に設置されるユニットをいう。たとえばMRI装置であれば、本体とは磁石や傾斜磁場コイルなどが収められたユニットをいい、X線CT装置であれば、本体とはX線源およびX線検出器などの撮像系が収められたユニットをいう。
【0010】
以下の説明では、実施形態に係る寝台装置と機械的に、および電気的に接続される医用画像診断装置本体として、MRI装置の本体(以下、装置本体という)を用いる場合の例を示す。
【0011】
図1は、一実施形態に係る寝台装置500を含むMRI装置1の一構成例を示すブロック図である。MRI装置1は、装置本体(磁石架台ともいう)100、制御キャビネット300、コンソール400、寝台装置500、およびRF(Radio Frequency)コイル20を有する。装置本体100、制御キャビネット300、および寝台装置500は、一般に検査室に設置される。コンソール400は一般に、検査室に隣接する制御室に設置される。
【0012】
装置本体100は、静磁場磁石10、傾斜磁場コイル11、およびWB(Whole Body)コイル12を有する。これらの構成品は円筒状の筐体に収納されている。寝台装置500は、寝台本体50と天板51を有している。寝台装置500の構成の詳細については、
図2-10を参照しながら後述する。
【0013】
制御キャビネット300は、傾斜磁場電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)、RF受信器32、RF送信器33、およびシーケンスコントローラ34を有する。
【0014】
コンソール400は、処理回路40、記憶回路41、ディスプレイ42、および入力インターフェース43を有する。コンソール400は、ホスト計算機として機能する。
【0015】
装置本体100の静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体、たとえば患者、が搬送されるボア内に静磁場を発生させる。ボアとは、装置本体100の円筒内部の空間のことである。静磁場磁石10は、たとえば、超電導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超電導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場用電源(図示せず)から供給される電流を超電導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は長時間、たとえば1年以上に亘って、静磁場を発生し続ける。なお、静磁場磁石10は、超電導コイルを内蔵した超電導磁石に限定されず、永久磁石であってもよい。
【0016】
傾斜磁場コイル11は、静磁場磁石10と同様に概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に固定される。傾斜磁場コイル11は、傾斜磁場電源(31x、31y、31z)から供給される電流により、X軸、Y軸、Z軸の方向に傾斜磁場を形成する。
【0017】
寝台装置500の寝台本体50は、天板51を上下方向および水平方向に移動することができる。たとえば、寝台本体50は、天板51に載置された被検体を撮像前に所定の高さまで移動させる。また、撮像時には、天板51を水平方向に移動させて被検体をボア内に移動させる。
【0018】
WBコイル12は、傾斜磁場コイル11の内側に被検体を取り囲むように概略円筒形状に固定されている。WBコイル12は、RF送信器33から伝送されるRFパルスを被検体に向けて送信する。また、水素原子核の励起によって被検体から放出される磁気共鳴信号、即ちMR(Magnetic Resonance)信号を受信する。
【0019】
MRI装置1は、WBコイル12の他、
図1に示すように局所コイル20を備える。局所コイル20は、被検体の体表面に近接して載置されるコイルである。局所コイル20には様々な種別があり、たとえば、
図1に示すような被検体の胸部や腹部、或いは脚部に設置されるボディコイル(Body Coil)や、被検体の背側に設置されるスパインコイル(Spine Coil)といった種別がある。局所コイル20は受信専用または、送信専用、あるいは、送信と受信を双方行う種別のものであってもよい。局所コイル20は、たとえば、ケーブルを介して天板51と着脱可能に構成されている。
【0020】
RF受信器32は、WBコイル12や局所コイル20からのチャンネル信号、即ち、MR信号をAD(Analog to Digital)変換して、シーケンスコントローラ34に出力する。デジタルに変換されたMR信号は、生データ(Raw Data)と呼ばれることもある。
【0021】
RF送信器33は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいてRFパルスを生成する。生成したRFパルスはWBコイル12に伝送され、被検体に印加される。RFパルスの印加によって被検体からMR信号が発生する。このMR信号を局所コイル20またはWBコイル12が受信する。
【0022】
局所コイル20で受信したMR信号、より具体的には、局所コイル20内の各要素コイルで受信したMR信号は、天板51および寝台本体50に設けられたケーブルを介してRF受信器32に入力される。
【0023】
シーケンスコントローラ34は、コンソール400による制御のもと、傾斜磁場電源31、RF受信器32およびRF送信器33をそれぞれ駆動することによって被検体のスキャンを行う。スキャンによってRF受信器32から生データを受信すると、シーケンスコントローラ34は、この生データをコンソール400に送信する。
【0024】
シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備している。この処理回路は、たとえば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
【0025】
コンソール400は、記憶回路41、ディスプレイ42、入力インターフェース43、および処理回路40を備える。記憶回路41は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の他、HDD(Hard Disk Drive)や光ディスク装置等の外部記憶装置を含む記憶媒体である。記憶回路41は、各種の情報やデータを記憶する他、処理回路40が具備するプロセッサが実行する各種のプログラムを記憶する。
【0026】
ディスプレイ42は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELパネル等の表示デバイスである。入力インターフェース43は、たとえば、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル等であり、各種の情報やデータを操作者が入力するための種々のデバイスを含む。
【0027】
処理回路40は、たとえば、CPUや、専用または汎用のプロセッサを備える回路である。プロセッサは、記憶回路41に記憶した各種のプログラムを実行することによって、各種の機能を実現する。処理回路40は、FPGAやASIC等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路40は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組み合わせて、各種の機能を実現することもできる。
【0028】
図2(a)は寝台装置500が装置本体100と機械的に分離された様子の一例を示す説明図であり、(b)は機械的に接続された様子の一例を示す説明図である。また、
図3は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離された状態における、寝台装置500の内部構成の様子を概略的に示す説明図である。
【0029】
本実施形態に係る寝台装置500は、いわゆる移動式の装置であり、
図2(a)および(b)に示すように、ハンドル52と、寝台装置500と床面との間に設けられたキャスタ53とを有する。キャスタ53は、走行部の一例である。また、
図3に示すように、寝台装置500は、キャスタロックペダル54と、結合ペダル55と、分離ペダル56とを有する。
【0030】
また、寝台装置500は、寝台側連結ユニット501を有する。寝台側連結ユニット501は、本体側連結ユニット101と機械的に接続するための機械的接続機構を有する。以下の説明では、機械的接続機構として、装置本体100と寝台装置500とを機械的に確実に接続するための固定機構と、装置本体100と寝台装置500の配線を接続するためのコネクタと、を用いる場合について説明する。
【0031】
この場合、装置本体100と寝台装置500とを機械的に接続する際には、まず、固定機構により装置本体100と寝台装置500とを機械的にしっかりと連結してから、コネクタによる機械的な接続をして配線を接続することが好ましい。固定機構による連結を完了させておくことにより、コネクタどうしを正確に対面させることができるため、コネクタのピンが折れてしまい破損するなどの事故を未然に防ぐことができる。
【0032】
固定機構は、たとえば油圧で動作するシリンダにより制御される。コネクタは、固定機構による連結が完了した後、たとえばバネによって押し込まれることにより互いに機械的に接続される。
【0033】
なお、機械的な接続、すなわち、固定機構による機械的な接続とコネクタによる機械的な接続および配線の接続との両方の接続、が完了した直後は、電気的な接続は行われていない。突然のショートを避けるためである。この時点では、配線の一部が開放された状態であり、装置本体100から寝台装置500への通電は不可能である。本実施形態に係る寝台装置500は、機械的な接続が完了し、かつ電気的な接続が可の状態であることが検出されて初めて、装置本体100との電気的な接続を行う。
【0034】
寝台側連結ユニット501は、機械的接続機構による機械的な接続状態を検出するための部材を有する。以下の説明では、当該部材の一部として挿抜片502を用いる場合の例を示す。挿抜片502は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離した状態であると、寝台側連結ユニット501から突出した状態である一方(
図2(a)参照)、機械的に接続されると寝台側連結ユニット501に押し込まれた挿入状態となるよう構成される(
図2(b)参照)。
【0035】
なお、この種の機械的接続機構としては従来各種のものが知られており、これらのうち任意のものを使用することが可能である。本実施形態では、本体側連結ユニット101と寝台側連結ユニット501を利用することで機械的接続機構による機械的な接続(以下、適宜、機械的な接続と称する)が確実に達成されるものとし、挿抜片502が寝台側連結ユニット501に押し込まれた状態となると機械的な接続が完了したものとみなす場合の例について説明する。
【0036】
キャスタロックペダル54は、キャスタ53の駆動のロック、アンロックの操作が可能なペダルである。キャスタロックペダル54は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続されると、ユーザにより、キャスタ53の駆動をロックするように操作される。キャスタロックペダル54は、ロックペダルの一例である。
【0037】
結合ペダル55は、機械的接続機構による機械的な接続を行うためのペダルである。結合ペダル55は、装置本体100と寝台装置500とが機械的および電気的に分離している場合には、たとえば天板51の上昇用または下降用の一方のペダルとして機能してもよい。
【0038】
分離ペダル56は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続されているとき、互いを機械的に分離するためのペダルである。分離ペダル56は、装置本体100と寝台装置500とが機械的および電気的に分離している場合には、たとえば天板51の上昇用または下降用の他方のペダル(結合ペダル55と相補する機能)として機能してもよい。
【0039】
装置本体100と寝台装置500とが電気的に接続されているときに、通電状態にある機器に対する給電が意図せずに瞬間的に遮断されてしまうと、これらの機器に損害を与えてしまう場合がある。このため、装置本体100と寝台装置500とが機械的および電気的に接続されているときは、意図せずに電気的な接続を分離しないようにすることが好ましい。
【0040】
そこで、本実施形態に係る寝台装置500は、機械的な分離の可否を判定する判定部510を有する。判定部510は、装置本体100と寝台装置500とが機械的および電気的に接続されているときは、機械的な分離を不可と判定し、分離ペダル56による機械的な分離操作をロックする。
【0041】
具体的には、分離ペダル56は、装置本体100と寝台装置500との機械的な接続状態と、電気的な接続が可の状態か不可の状態かと、に応じて動作が制限される。たとえば、分離ペダル56は、装置本体100と寝台装置500との機械的な接続が検出され、かつ、装置本体100と寝台装置500との電気的な接続が可の状態であると検出されると、装置本体100と寝台装置500とを機械的に分離するための動作がロックされる。
【0042】
機械的に接続状態にあるか分離状態にあるかは、上述のとおり、挿抜片502などの寝台側連結ユニット501の状態にもとづいて検出することができる。
【0043】
電気的な接続が可の状態か不可の状態かは、コネクタが機械的に接続されているか否かにもとづいて検出する。たとえば、キャスタロックペダル54によってキャスタ53の駆動がロックされた場合、ユーザには寝台装置500を現在の位置で固定する意思があるものと予想できる。このため、コネクタが機械的に接続されているときに、キャスタ53の駆動がロックされた場合は、ユーザが突然に機械的な分離を行う可能性は低いと考えられる。
【0044】
そこで、本実施形態に係る寝台装置500は、キャスタロックペダル54の操作と、電気的な接続とを連動させる。また、本実施形態に係る寝台装置500は、機械的な接続が検出され、かつ、キャスタロックペダル54によってキャスタ53の駆動がロックされると、電気的な接続が可の状態であると検出する。また、キャスタロックペダル54によってキャスタ53の駆動がアンロックされると、電気的な接続が不可の状態であると検出し、装置本体100と寝台装置500とを電気的に分離する。
【0045】
続いて、本実施形態に係る寝台装置500の具体的な構成例および動作例について説明する。
【0046】
図3に示すように、装置本体100と寝台装置500とが機械的接続機構によって機械的に接続されて挿抜片502が押し込まれると、挿抜片502は揺動支持片503を介してバネ504を変形させる。
【0047】
寝台装置500は、この挿抜片502の移動量を判定部510のブロック511に伝達する伝達手段として、たとえば
図3に示すように、アウターワイヤ522を有する連結連動ワイヤ521を有する。また、寝台装置500は、キャスタロックペダル54の操作量を判定部510のブロック511に伝達する伝達手段として、たとえば
図3に示すように、アウターワイヤ532を有するキャスタペダル連動ワイヤ531を有する。
【0048】
判定部510のブロック511は、挿抜片502の移動量とキャスタロックペダル54の操作量とに応じて移動し、いわゆる機械的なAND機構として動作する。
【0049】
まず、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離された状態における寝台装置500の動作例について説明する。
【0050】
図4は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離された状態における、判定部510の動作の一例を示す説明図である。
【0051】
また、
図5(a)は装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離された状態であるとともに、キャスタ旋回ロック状態である場合の判定部510の動作の一例を示す説明図であり、(b)はキャスタフリー状態である場合の判定部510の動作の一例を示す説明図であり、(c)はキャスタロック状態である場合の判定部510の動作の一例を示す説明図である。
【0052】
本実施形態に係るキャスタロックペダル54は、キャスタ53の旋回を抑制する旋回ロック状態と、キャスタ53の旋回も直進も許容するフリー状態と、キャスタ53の駆動の一切をロックするロック状態と、の3つの状態のいずれかにキャスタ53の駆動を遷移させることができる。なお、旋回ロック状態は、たとえば右前輪または左前輪の旋回のみをロックする状態であり、直進は許容される。このため、ユーザが寝台装置500を現在の位置で固定する意思があるとは断定できず、本実施形態では、旋回ロック状態は、フリー状態とともに、キャスタ53の駆動がアンロック状態であるものとしてあつかう。
【0053】
寝台装置500は、ブロック511の移動量を伝達する伝達手段として、たとえば
図3に示すように、アウターワイヤ542を有するロックピン連動ワイヤ541を有する。
【0054】
分離ペダル56は、分離ロックピン551が挿入される開口56aを有する。分離ロックピン551は、バネ552により開口56aに向けて常時付勢される。
【0055】
連結連動ワイヤ521は、一端521aがブロック511の内部に設けられた第1制限領域512に位置し、他端521bが揺動支持片503に固設される。キャスタペダル連動ワイヤ531は、一端531aがブロック511の内部に設けられた第2制限領域513に位置し、他端531bが、キャスタロックペダル54に設けられたキャスタロック検知センサ560に接続される。ロックピン連動ワイヤ541は、一端541aがブロック511に固設され、他端541bが分離ロックピン551に固設される。
【0056】
キャスタロック検知センサ560は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続されると動作し、キャスタロック状態か否か(アンロック状態か)の情報を出力する。
【0057】
図3に示すように、寝台側連結ユニット501のバネ504と分離ロックピン551のバネ552の強度は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離された状態において、寝台側連結ユニット501のバネ504が連結連動ワイヤ521を引く力F1が、分離ロックピン551のバネ552がロックピン連動ワイヤ541を引く力F2よりも大きくなるように設定される。
【0058】
このため、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離された状態では、
図4に示すように、第1制限領域512に位置する連結連動ワイヤ521の一端521aは、第1制限領域512の図中左側壁を図中左側に引きつける。
【0059】
いま、ブロック511がレール511a(
図5(a)、(b)、(c)参照)に沿って移動する方向をsとし、このとき連結連動ワイヤ521の一端521aが位置する座標をs=s1とする。このとき、第2制限領域513に位置するキャスタペダル連動ワイヤ531の一端531aは、キャスタロックペダル54の操作に応じて、第2制限領域513内を自由に動く(
図5(a)、(b)、(c)参照)。以下の説明では、旋回ロック状態でs=s1、フリー状態でs=s2、ロック状態でs=s3に位置するものとする。
【0060】
図5(a)、(b)、(c)に示すとおり、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離された状態では、キャスタロックペダル54の操作によらず、ロックピン連動ワイヤ541の一端541aはs=s4の位置から動かず、分離ロックピン551が分離ペダル56の開口56aに挿入されることはない(
図3参照)。
【0061】
次に、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続された状態における寝台装置500の動作例について説明する。
【0062】
図6は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続された状態であって、キャスタロックペダル54によりキャスタ53がフリー状態とされている場合における、寝台装置500の内部構成の様子を概略的に示す説明図である。
【0063】
また、
図7は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離され、かつキャスタフリーの状態(上段)から、機械的に接続されて(中段)、キャスタロック状態とされる(下段)までの判定部510の状態遷移を説明するための図である。
【0064】
装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続された状態では、連結連動ワイヤ521の一端521aは、挿抜片502によってバネ504の付勢力が効かなくなるとともに、揺動支持片503の移動に応じて第1制限領域512で図中右側に移動する。このとき、本実施形態では、一端521aはs=s3に位置するものとする(
図4参照)。
【0065】
バネ504の付勢力が効かなくなるため、ブロック511は、今度はバネ552の付勢力により図中右側に引きつけられ、ロックピン連動ワイヤ541が図中右側に送り出される。このとき、キャスタペダル連動ワイヤ531の一端531aは、第2制限領域513の左側壁を食い止める役割を果たす。このため、ブロック511の位置は、キャスタペダル連動ワイヤ531の一端531aに応じて、すなわち、キャスタロックペダル54の操作に応じて、規定される。
【0066】
したがって、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続され、キャスタロック状態におけるロックピン連動ワイヤ541の一端の541aがs=s6に位置するときに、分離ロックピン551が開口56aに挿入されるように設計しておけば、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続され、かつ、キャスタロック状態である場合に、分離ペダル56による分離動作をロックすることができる。
【0067】
図8は、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続された状態であって、キャスタロックペダル54によりキャスタ53がロック状態とされている場合における、寝台装置500の内部構成の様子を概略的に示す説明図である。
【0068】
図8に示すように、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続され、かつ、キャスタロック状態であれば、容易かつ確実に分離ペダル56による分離動作をロックすることができる。
【0069】
次に、装置本体100と寝台装置500との電気的な接続方法について説明する。
【0070】
図9は、装置本体100と寝台装置500との電気的な接続方法の一例を説明するための図である。
【0071】
図9に示すように、装置本体100は、給電制御回路150を有する。給電制御回路150の前段にはAND回路が設けられる。このAND回路には、固定機構による機械的な接続を検知するセンサ出力と、コネクタによる機械的な接続を検知するセンサ出力とが入力される。
【0072】
一方、寝台装置500は、制御部561は、装置本体100と寝台装置500との電気的な接続および電気的な分離を制御する。制御部561は、たとえばキャスタロック検知センサ560からキャスタロック状態である旨の出力を受けると、装置本体100と寝台装置500とを電気的に接続するとよい。制御部561が装置本体100と寝台装置500とを電気的に接続すると、AND回路が1を出力する。そして、給電制御回路150が寝台装置500への給電を開始する。このとき、給電のほか、データの送受信が行われてもよい。
【0073】
なお、本実施形態では、コネクタが機械的に接続されると、装置本体100からキャスタロック検知センサ560へと微電流が供給されてキャスタロック検知センサ560が動作を開始するが、この段階ではまだキャスタロック検知センサ560を除く寝台装置500の他のコンポーネントには給電されないものとする。
【0074】
また、本実施形態では、装置本体100と寝台装置500とが機械的に分離されている状態では、寝台装置500の各コンポーネントが動力源として油圧を利用するなどして電力を用いない場合の例について説明したが、寝台装置500は2次電池を備えても構わない。この場合、装置本体100と寝台装置500とが機械的および電気的に接続されると、装置本体100の電源回路は、給電制御回路150に制御されて、寝台装置500の2次電池を充電してもよい。
【0075】
本実施形態に係る寝台装置500は、キャスタロックペダル54の操作のように、装置本体100と寝台装置500との機械的な接続および分離の際に実行される操作と、装置本体100との電気的な接続とを連動させることができる。このため、装置本体100と寝台装置500とが電気的に接続されているにもかかわらず装置本体100と寝台装置500とが意図せずに機械的に分離されてしまう事故を、容易かつ確実に防ぐことができる。したがって、通電状態にある機器に対する給電が意図せずに瞬間的に遮断されてしまうことがなく、これらの給電遮断により寝台装置500のモータ等の動作機構やセンサ制御用等の制御基板、装置本体100の電源回路などに生じうる障害を未然に防ぐことができる。
【0076】
なお、装置本体100と寝台装置500とが機械的に接続され、かつ、キャスタロック状態で分離ペダル56による分離動作をロックすることができれば、通電の瞬間的な遮断を回避することができる。このため、キャスタ53の駆動のアンロック状態は、キャスタフリー状態のみでもよいし、キャスタフリー状態および旋回ロック状態に加えて1以上の状態が定義されてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、判定部510による判定結果に連動して機械的な接続を判定し、電気的な接続の可否はキャスタロックペダル54の操作に応じて判定する場合の例を示したが、判定部510による判定結果に連動して電気的な接続および電気的な分離を制御してもよい。この場合、たとえば、キャスタロック検知センサ560と分離ロックピン551とにもとづいて電気的な接続および分離を制御することが考えられる。
【0078】
また、装置本体100と寝台装置500との機械的な接続および分離の際に実行される操作であれば、キャスタロックペダル54の操作に限られない。
【0079】
図10は、サイドフェンス57を有する寝台装置500の一構成例を示す概略図である。寝台装置500は、被検体を載置する位置の近傍にサイドフェンス57が設けられてもよい。サイドフェンス57を有する場合、寝台装置500のユーザは、機械的に分離するときは、寝台装置500の移動中における被検体の転落を防止するようサイドフェンス57を立ち上げ、装置本体100と寝台装置500とを機械的に接続するときはサイドフェンス57を下げると考えられる。
【0080】
そこで、サイドフェンス57の傾きを、キャスタロックペダル54の状態にかえて、あるいはキャスタロックペダル54の状態とあわせて、装置本体100と寝台装置500との電気的な接続の可否判定に利用してもよい。
図10には、寝台装置500が、サイドフェンス57の操作量をブロック511に伝達する伝達手段として、アウターワイヤ572を有するフェンス連動ワイヤ571を有するとともに、サイドフェンス57が下がっているか否かの情報を出力する。サイドフェンス57が下がっていない場合には、サイドフェンス57が垂直に立ち上がっている場合のほか、点滴や注射における被検体の手の載置用のテーブルとして水平に張り出された状態を含む。
【0081】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、機械的に、および電気的に接続状態にある医用画像診断装置本体から、寝台装置を安全に分離することができる。
【0082】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 MRI装置
50 寝台本体
53 キャスタ
54 キャスタロックペダル
56 分離ペダル
57 サイドフェンス
100 装置本体
101 本体側連結ユニット
500 寝台装置
501 寝台側連結ユニット
510 判定部
511 ブロック
521 連結連動ワイヤ
531 キャスタペダル連動ワイヤ
541 ロックピン連動ワイヤ
551 分離ロックピン
560 キャスタロック検知センサ
561 制御部
571 フェンス連動ワイヤ