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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】反射型液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1335 20060101AFI20221221BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20221221BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20221221BHJP
   F21V 9/14 20060101ALI20221221BHJP
   F21V 7/28 20180101ALI20221221BHJP
   F21V 5/02 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02F1/13357
F21S2/00 455
F21S2/00 459
F21S2/00 461
F21V9/14
F21V7/28 240
F21V5/02 300
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018060928
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019174575
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関 克矢
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209225(JP,A)
【文献】特開2001-264680(JP,A)
【文献】特表2005-512110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02F 1/13357
F21S 2/00
F21V 9/14
F21V 7/28
F21V 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
反射型液晶表示パネルと、
前記光源から出射された光を拡散する拡散板と、
前記光源から出射された光に含まれる互いに偏光軸が直交する二種類の直線偏光のうち一方の直線偏光のみを透過させる偏光板と、
前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光を前記反射型液晶表示パネルの画像表示面に向けて反射すると共に、前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面から出射された前記一方の直線偏光とは偏光軸が直交する他方の直線偏光を透過させる光透過反射面を有する偏光ビームスプリッターと、
前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面と前記偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面との間に配置された、光の屈折率が空気層の光の屈折率よりも大きい第一の透明部材と、
前記偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面を透過した前記他方の直線偏光が入射する第二の透明部材と、
前記第二の透明部材を覆う筐体と、
を有する反射型液晶表示装置であって、
前記拡散板は、前記第一の透明部材の表面のうち前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光が入射する光入射面と対向する位置に配置され、
前記拡散板の光出射面は、前記第一の透明部材の前記光入射面に対して傾斜しており、
前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光の主光束は、前記第一の透明部材の内面で全反射されてから前記偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面に入射し、
前記第二の透明部材の光出射面の外周側に位置する前記第二の透明部材の側面と前記筐体の側面との間には、迷光の一部を閉じ込めることが可能な空気層が介在している、
ことを特徴とする反射型液晶表示装置。
【請求項2】
前記第一の透明部材と前記第二の透明部材のうち少なくとも何れか一方の表面のうち光学面を除く領域には、光吸収部が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の反射型液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、反射型液晶表示装置における小型化、特に低背化は、観測者と液晶表示パネルの距離を近づけることで、液晶表示パネルの視認性や集光効率を向上させるために必要な技術とされており、さらにその要求は強くなっている。その要求を満たすため、液晶表示パネルの照明光学系の一部に透明部材(プリズム)を用いた反射型液晶表示装置が提案されている。
【0003】
図2は、従来の反射型液晶表示装置を示す縦断面図である。従来の反射型液晶表示装置は、以下の構成を備えている。回路基板1の同一面上には、画像表示面を上方に向けて反射型液晶表示パネル2が配置され、それと隣接するように光出射面を上方に向けて光源3が配置されている。反射型液晶表示パネル2の上方とその周囲には、反射型液晶表示パネル2を覆うように、第一の筐体13が配置され、光源3の上方とその周囲には、光源3を覆うように、第二の筐体14が配置されている。第二の筐体14の内面には、光源3から出射された光を反射型液晶表示パネル2の上方に配置された板状の偏光ビームスプリッター6へ向かって案内するための第一の反射面14aと第二の反射面14bが設けられている。第二の反射面14bから偏光ビームスプリッター6へと進む光路上には、光を拡散させる拡散板4と、互いに偏光軸が直交する二種類の直線偏光のうち一方の直線偏光(以下P波という)のみを透過させる偏光板5が配置されている。偏光ビームスプリッター6は、P波を反射し、それと偏光軸が直交する他方の直線偏光(以下S波という)を透過させる光透過反射面を有するもので、偏光板5から偏光ビームスプリッター6に入射したP波を反射型液晶表示パネル2の画像表示面へ垂直に入射させるように傾斜角が決められ、第一の筐体13により保持されている。
【0004】
また、従来の反射型液晶表示装置は、光源3から出射された光を屈折させるための第一の透明部材9と第二の透明部材10を備えている。第一の透明部材9は、偏光板5から出射されたP波が入射する第一の面9aと、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する第二の面9bと、反射型液晶表示パネル2の画像表示面と対向する第三の面9cとで構成される側面と、それらの側面と直角に接続される互いに平行な2つの底面(不図示)とを有し、第一の面9aと第三の面9cが互いに直交する直角三角柱状の透明部材である。第二の透明部材10は、第一の筐体13の側面と対向する第一の面10aと、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する第二の面10bと、観察者の目15に向かって光が出射される第三の面10cとで構成される側面と、それらの側面と直角に接続される互いに平行な2つの底面(不図示)とを有する直角三角柱状の透明部材である。第一の透明部材9は、第三の面9cが反射型液晶表示パネル2の画像表示面と近接するように、反射型液晶表示パネル2の上方に配置されている。第二の透明部材10は、第二の面10bが偏光ビームスプリッター6を挟んで第一の透明部材9の第二の面9bと対向するように、第一の透明部材9の上方に配置されている。第一の透明部材9と第二の透明部材10は、例えば、光の屈折率が1.6程度のポリカーボネートで構成され、互いに同形状を有している。
【0005】
第一の透明部材9の第二の面9bには、第一の屈折膜7が形成され、第二の透明部材10の第二の面10bには、第二の屈折膜8が形成されている。第一の屈折膜7と第二の屈折膜8は、例えば、光の屈折率が2.5から2.72の酸化チタンをスパッタ法、蒸着法、塗布法などで成膜したものである。但し、第一の屈折膜7と第二の屈折膜8は、必須ではなく、省略される場合がある。
【0006】
第一の屈折膜7と偏光ビームスプリッター6との間には、下部空気層11aが設けられ、第二の屈折膜8と偏光ビームスプリッター6との間には、上部空気層11bが設けられている。但し、下部空気層11aと上部空気層11bは、省略される場合がある。
【0007】
第一の透明部材9の第三の面9cと反射型液晶表示パネル2の画像表示面との間には、空気層12が設けられている。但し、空気層12は、省略される場合がある。
【0008】
拡散板4と偏光板5は、互いに積層され、第一の透明部材9の第一の面9aと対向する位置に配置されている。拡散板4の光出射面と拡散板5の光出射面は、それぞれ、第一の透明部材9の第一の面9aと平行となるように配置されている。
【0009】
光源3から出射された光の主光束は、図2中の矢印で示されるような経路をたどって反射型液晶表示パネル2の画像表示面に垂直に入射する。反射型液晶表示パネル2の画像表示面から出射された光の主光束は、図2中の矢印で示されるような経路をたどって観察者の目15に入射する。
【0010】
反射型液晶表示パネル2は、電源オフ状態でP波がそのまま液晶を通過するように構成されており、偏光ビームスプリッター6側から垂直に入射したP波はそのまま液晶を通過し、反射型液晶表示パネル2の裏面側に設けられた反射要素(反射電極等)で垂直に反射され、反射されたP波は再び偏光ビームスプリッター6へ向かって進む。偏光ビームスプリッター6はP波を透過しない状態に配置されており、反射型液晶表示パネル2で反射されたP波は遮断されるため、電源オフ状態では黒表示状態となる。
【0011】
一方、反射型液晶表示パネル2は、電源オン状態では液晶がP波をS波へと変換し、S波はP波と同様に反射型液晶表示パネル2の裏面側で反射され、偏光ビームスプリッター6へ向かって進む。偏光ビームスプリッター6はS波を透過する状態に配置されているので、電源オン状態では白表示となる。
【0012】
以上のプロセスは反射型液晶表示パネル2の画素毎に行われ、偏光ビームスプリッター6を通過したS波が観察者の目15に入射し、映像として視認される。
【0013】
図2に示したような、反射型液晶表示パネル2と偏光ビームスプリッター6との間に光を屈折させるための透明部材が配置された従来の反射型液晶表示装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2014-209225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図2に示した従来の反射型液晶表示装置では、拡散板4が第一の透明部材9の第一の面9aに対して平行となるように配置されていることから、拡散板4から出射された光は、第一の透明部材9の第一の面9aに均一に入射する。しかし、光学系の設計によっては、第一の透明部材9の第一の面9aに均一に光が入射することで、結果的に、反射型液晶表示パネル2の画像表示面から出射される光が不均一となり、画質が低下することがある(例えば、画像に暗線が発生する)。
【0016】
本発明は、以上の問題に鑑みたもので、画質を向上させることが可能な反射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
光源と、反射型液晶表示パネルと、前記光源から出射された光を拡散する拡散板と、前記光源から出射された光に含まれる互いに偏光軸が直交する二種類の直線偏光のうち一方の直線偏光のみを透過させる偏光板と、前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光を前記反射型液晶表示パネルの画像表示面に向けて反射すると共に、前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面から出射された前記一方の直線偏光とは偏光軸が直交する他方の直線偏光を透過させる光透過反射面を有する偏光ビームスプリッターと、前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面と前記偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面との間に配置された、光の屈折率が空気層の光の屈折率よりも大きい透明部材と、を有する反射型液晶表示装置であって、前記拡散板は、前記透明部材の表面のうち前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光が入射する光入射面と対向する位置に配置され、前記拡散板の光出射面は、前記透明部材の前記光入射面に対して傾斜している、反射型液晶表示装置とする。
【0018】
前記拡散板の前記光出射面は、前記透明部材の前記光入射面のうち前記偏光ビームスプリッターと隣接する領域と対向する領域が、前記透明部材の前記光入射面のうち前記反射型液晶表示パネルと隣接する領域と対向する領域よりも、前記透明部材の前記光入射面から遠ざかるように、傾斜している、反射型液晶表示装置であっても良い。
【0019】
前記偏光板は、前記透明部材の前記光入射面と対向する位置に配置され、前記偏光板の光出射面は、前記透明部材の前記光入射面に対して傾斜している、反射型液晶表示装置であっても良い。
【0020】
前記拡散板の前記光出射面と前記偏光板の前記光出射面は、前記透明部材の前記光入射面に対して互いに同じ方向へ傾斜している、反射型液晶表示装置であっても良い。
【0021】
前記拡散板は、前記偏光板の光入射面と対向する位置に配置され、前記拡散板の前記光出射面から出射された光は、前記偏光板の前記光入射面に入射する、反射型液晶表示装置であっても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、画質を向上させることが可能な反射型液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による反射型液晶表示装置の一実施形態を示す縦断面図
図2】従来の反射型液晶表示装置を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による反射型液晶表示装置の一実施形態を示す縦断面図である。本発明による反射型液晶表示装置の一実施形態は、以下の構成を備えている。回路基板1の同一面上には、画像表示面を上方に向けて反射型液晶表示パネル2が配置され、それと隣接するように光出射面を上方に向けて光源3が配置されている。反射型液晶表示パネル2の上方とその周囲には、反射型液晶表示パネル2を覆うように、第一の筐体13が配置され、光源3の上方とその周囲には、光源3を覆うように、第二の筐体14が配置されている。第二の筐体14の内面には、光源3から出射された光を反射型液晶表示パネル2の上方に配置された板状の偏光ビームスプリッター6へ向かって案内するための第一の反射面14aが設けられている。第一の反射面14aから偏光ビームスプリッター6へと進む光路上には、光を拡散させる拡散板4と、互いに偏光軸が直交する二種類の直線偏光のうち一方の直線偏光(以下P波という)のみを透過させる偏光板5が配置されている。偏光ビームスプリッター6は、P波を反射し、それと偏光軸が直交する他方の直線偏光(以下S波という)を透過させる光透過反射面を有するもので、偏光板5から偏光ビームスプリッター6に入射したP波を反射型液晶表示パネル2の画像表示面へ垂直に入射させるように傾斜角が決められ、第一の筐体13により保持されている。
【0025】
本実施形態の反射型液晶表示装置は、光源3から出射された光を屈折させるための第一の透明部材9と第二の透明部材10を備えている。第一の透明部材9は、偏光板5から出射されたP波が入射する第一の面9aと、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する第二の面9bと、反射型液晶表示パネル2の画像表示面と対向する第三の面9cとで構成される側面と、それらの側面と直角に接続される互いに平行な2つの底面(不図示)とを有する三角柱状の透明部材である。第一の透明部材9の第一の面9aと第三の面9cとが成す角度は、鋭角である。第二の透明部材10は、第一の筐体13の側面と対向する第一の面10aと、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する第二の面10bと、観察者の目15に向かって光が出射される第三の面10cと、反射型液晶表示パネル2の外周部と対向する第四の面10dと、偏光板5と隣接する第五の面10eとで構成される側面と、それらの側面と直角に接続される互いに平行な2つの底面(不図示)とを有する台形柱状透明部材である。第二の透明部材10の第一の面10aと第五の面10eは、互いに平行であり、第三の面10cと第四の面10dは、互いに平行である。第一の透明部材9は、第三の面9cが反射型液晶表示パネル2の画像表示面と近接するように、反射型液晶表示パネル2の上方に配置されている。第二の透明部材10は、第二の面10bが偏光ビームスプリッター6を挟んで第一の透明部材9の第二の面9bと対向するように、第一の透明部材9の上方に配置されている。第一の透明部材9と第二の透明部材10は、例えば、光の屈折率が1.6程度のポリカーボネートで構成されている。
【0026】
第二の筐体14の内面のうち、光源3の光出射面と対向する領域には、第一の反射面14aが設けられている。第一の反射面14aは、光源3から出射された光の主光束を拡散板4に向けて反射するように角度が設定されている。第一の反射面14aは、例えば、第二の筐体14を白色樹脂で形成したり、第二の筐体14の内面に反射シートなどを配置したりすることにより、反射面として構成されている。第二の筐体14の内面のうち、第一の反射面14aを除く領域は、それらと同様に反射面とされていても良いが、反射面とされていなくても良い。
【0027】
拡散板4は、偏光板5の光入射面に積層され、偏光板5と一体となって第一の透明部材9の第一の面9aと対向する位置に配置されている。拡散板4と偏向板5は、それぞれの光出射面が第一の透明部材9の第一の面9aに対して傾斜した状態で第二の筐体14に保持されている。拡散板4と偏向板5は、それらの上端部(第一の透明部材9の第二の面9bと隣接する側の端部)が下端部(第一の透明部材9の第三の面9cと隣接する側の端部)よりも第一の透明部材9の第一の面9aから遠ざかるように傾斜しており、これにより、第一の透明部材9の第一の面9aと偏光板5との間には、厚さが連続的に変化する空気層16が形成されている。空気層16の厚さは、拡散板4と偏光板5の傾斜に従い、それらの上端部側が相対的に大きく、下端部側が相対的に小さくなるように連続的に変化している。それに伴い、偏光板5と第一の透明部材9の第一の面9aとの間の光路長も同様に変化している。その光路長が相対的に大きい(長い)部分では、その光路長が相対的に小さい(短い)部分よりも、偏光板5側から第一の透明部材9の第一の面9aに入射する光の拡散性が高い。空気層16の厚さは、例えば、1mm以上である。
【0028】
第一の透明部材9の第一の面9aに対する拡散板4と偏光板5の角度は、第一の透明部材9の第一の面9aから第一の透明部材9の内部へ入射したP波の主光束が、第一の透明部材9の第三の面9cと反射型液晶表示パネル2との間にある空気層(不図示)との境界面で全反射するように設定されている。全反射する条件は、例えば、第一の透明部材9の第三の面9cと反射型液晶表示パネル2との間に介在する空気層の屈折率をnA、第一の透明部材9の屈折率をnB、第一の透明部材9の第一の面9a側から第三の面9cに入射するP波の入射角(第三の面9cの法線に対する角度)をαとした場合に、スネルの法則を用いて導き出される式「sinα=nA/nB」に基づき決定される。即ち、全反射する条件としては、第一の透明部材9の第一の面9a側から第三の面9cに入射するP波の入射角が式中のθ(臨界角)よりも大きいこと、となる。
【0029】
第一の透明部材9の第二の面9bと第二の透明部材10の第二の面10bとの間には、所定の厚さの空気層(不図示)が介在し、その空気層の中間に平板状の偏光ビームスプリッター6が配置されることにより、空気層がその厚み方向へ下部空気層(不図示)と上部空気層(不図示)とに分割されている。下部空気層は、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と第一の透明部材9の第二の面9bとの間に介在し、上部空気層は、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と第二の透明部材10の第二の面10bとの間に介在している。この構成は、図2に示した従来の反射型液晶表示装置と同様である。但し、下部空気層と上部空気層は、必須ではなく、必要に応じて、何れか一方又は両方が省略されていても良い。下部空気層と上部空気層を省略した場合、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と第一の透明部材9の第二の面9bは、互いに密着し、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と第二の透明部材10の第二の面10bは、互いに密着していても良いが、それらの間に透明な接着剤等が介在していても良い。
【0030】
第一の透明部材9の第二の面9bの角度は、第一の透明部材9の第三の面9cで全反射して第一の透明部材9の第二の面9bに入射するP波の主光束が、第一の透明部材9の第二の面9bと下部空気層(不図示)との境界面で全反射しない角度に設定されている。全反射しない条件は、例えば、下部空気層の屈折率をnA、第一の透明部材9の屈折率をnB、第一の透明部材9の第三の面9c側から第二の面9bに入射するP波の入射角(第二の面9bの法線に対する角度)をθとした場合に、スネルの法則を用いて導き出される式「sinθ=nA/nB」に基づき決定される。即ち、全反射しない条件としては、第一の透明部材9の第三の面9c側から第二の面9bに入射するP波の入射角が式中のθ(臨界角)よりも小さいこと、となる。
【0031】
但し、第一の透明部材9の第一の面9aから入射して、第一の透明部材9の第三の面9cに入射せずに、直接、第一の透明部材9の第二の面9bに入射するP波の主光束については、この限りではない。即ち、第一の透明部材9の第二の面9bの角度は、第一の透明部材9の第一の面9a側から第二の面9bに入射するP波が、第二の面9bと空気層(不図示)との境界面で全反射して第一の透明部材9の内部を第三の面9cへ向かって進み、第三の面9cと空気層(不図示)との境界面で再び全反射して第一の透明部材9の内部を第二の面9bへ向かって進み、場合によってはそれらの全反射を繰り返して、P波の主光束が反射型液晶表示パネル2の画像表示面全体に行き渡るような角度にも設定されている。
【0032】
本実施形態において、光源3から出射された光の主光束は、図1中の矢印で示されるように、第二の筐体14の内面に設けられた第一の反射面14aで反射されて拡散板4に入射する。拡散板4に入射した光は、拡散板4で拡散された後、偏光板5を通過してP波となり、空気層16を通過して第一の透明部材9の第一の面9aに入射する。第一の面9aに入射したP波は、第一の透明部材9の内部を通過して第一の透明部材9の第三の面9cに入射する。第三の面9cに入射したP波は、第三の面9cと空気層(不図示)との境界面で第一の透明部材9の第二の面9bに向かって全反射し、第一の透明部材9の内部を通過して第一の透明部材9の第二の面9bに入射する。第二の面9bに入射したP波は、第二の面9bを通過し、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面に入射する。偏光ビームスプリッター6の光透過反射面に入射したP波は、光透過反射面で反射型液晶表示パネル2の画像表示面へ垂直に入射する方向へ反射され、第一の透明部材9の第二の面9bと第一の透明部材9の内部を通過して第一の透明部材9の第三の面9cに入射する。第三の面9cに入射したP波は、第三の面9cと空気層(不図示)との境界面で屈折せずに、空気層を通過して反射型液晶表示パネル2の画像表示面に垂直に入射し、そこで映像光(P波とS波の混合光)となって偏光ビームスプリッター6側へ反射される。反射された映像光は、空気層を通過して第一の透明部材9の第三の面9cに入射し、第三の面9cと空気層との境界面で屈折せずに、第一の透明部材9の内部を通過して第一の透明部材9の第二の面9bに入射する。第二の面9bに入射した映像光は、第二の面9bを通過し、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面に入射する。偏光ビームスプリッター6の光透過反射面に入射した映像光に含まれるS波は、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面を通過し、第二の透明部材10の第二の面10bに入射する。第二の面10bに入射したS波は、第二の面10bと第二の透明部材10の内部を通過して第二の透明部材10の第三の面10cに入射する。第三の面10cに入射したS波は、第三の面10cと外界(空気層)との境界面で屈折せずに、第二の透明部材10から外界へ出射して観察者の目15に入射し、映像として視認される。
【0033】
尚、図1中の光路を示す矢印は、あくまでも光路を概念的に示したものであり、必ずしも実際の光路と一致するわけではない。また、偏光板5と空気層16との境界面、第一の透明部材9の第一の面9aと空気層16との境界面、反射型液晶表示パネル2の内部などで生じる光の屈折は、便宜上無視しているが、実際には、そのような光の屈折も考慮して光学系を設計することとなる。
【0034】
本実施形態では、拡散板4と偏光板5を第一の透明部材9の第一の面9aに対して傾斜させているため、拡散板4と偏光板5を第一の透明部材9の第一の面9aに対して平行に配置した場合と比較すると、偏光板5と第一の透明部材9の第一の面9aとの間の隙間(空気層16)の厚さが部分的に大きくなり、その隙間が部分的に大きくなった部分において光路が長くなることから、偏光板5から出射して第一の透明部材9の第一の面9aに入射する光の拡散性が高まる。これにより、反射型液晶表示パネル2の画像表示面から出射される光の輝度ムラが低減されて画質が向上する。尚、この効果は、例えば、拡散板4のみを第一の透明部材9の第一の面9aに対して傾斜させた場合にも同様に得られる。但し、この効果は、本実施形態のように拡散板4と偏光板5の両方を第一の透明部材9の第一の面9aに対して傾斜させた場合の方がより高い。
【0035】
以上の実施形態において、光源3の光を偏光ビームスプリッター6側に照射する方法は、第二の筐体14の内面に設けられた第一の反射面14aを用いた方法に限らず、例えば、光源3の光出射面と偏光板5の光入射面との間に導光板を介在させる方法や、光源3の光が拡散板4に直接照射されるように光源3の光出射面を拡散板4の光入射面と対向させて配置する方法等、種々の方法が選択可能である。また、拡散板4は、光の拡散性が十分確保されている場合などには省略することが可能である。また、光源3は、回路基板1上ではなく、FPCなどで構成される別の基板上に実装することも可能である。
【0036】
第一の透明部材9と第二の透明部材10の表面のうち光学面を除く領域には、黒色部材で着色することなどにより、不要な光を吸収する光吸収部が形成されていても良い。
【0037】
第一の透明部材9の第二の面9bと第二の透明部材10の第二の面10bの表面には、光を偏光ビームスプリッター6の光透過反射面へ垂直に入射する方向から遠ざかる方向へ屈折させる屈折膜が形成されていても良い。この場合、屈折膜の屈折率や厚さは、光をどのように屈折させるかや光の透過率なども考慮して適宜選択されるが、屈折膜は、光の透過をできるだけ妨げない薄膜であるのが好ましい。
【0038】
第一の透明部材9の第一の面9aと第三の面9cとが成す角度は、図2に示した従来の反射型液晶表示装置と同様に、直角(90°)であっても良い。
【0039】
第一の透明部材9と第二の透明部材10は、互いに異なる光の屈折率を有していても良い。
【0040】
第一の透明部材9と第二の透明部材10は、互いに同じ形状を有していても良い。
【0041】
第二の透明部材10は、必須ではなく、省略されていても良い。
【0042】
第一の筐体13と第二の筐体14は、それらの内部で発生した不要な光を吸収する黒系色樹脂などで構成されていても良い。
【0043】
第一の筐体13と第二の筐体14は、互いに一体的に構成されていても良い。
【0044】
第一の透明部材9の第二の面9bと偏光ビームスプリッター6との間、第二の透明部材10の第二の面10bと偏光ビームスプリッター6との間には、空気層が設けられていなくても良い。
【0045】
拡散板4と偏光板5は、互いに積層されていなくても良い。
【0046】
拡散板4は、偏光板5と第一の透明部材9の第一の面9aとの間に配置されていても良い。但し、拡散板4は、図1に示したように偏光板5の光入射面側に配置されているのが、光学的には望ましい。
【0047】
拡散板4と偏光板5は、それらのうち何れか一方のみが第一の透明部材9の第一の面9aに対して傾斜していても良い。
【0048】
拡散板4と偏光板5は、図1に示した方向とは異なる方向へ傾斜していても良い。また、拡散板4と偏光板5は、互いに異なる方向へ傾斜していても良い。但し、拡散板4と偏光板5は、図1に示したように互いに同じ方向へ傾斜しているのが、光の輝度分布を制御するうえでは望ましい(制御し易い)。何れにしても、拡散板4と偏光板5を傾斜させる方向は、画像の輝度ムラが減少するように適宜決定される。
【0049】
第一の透明部材9の第一の面9aと偏光板5との間に設けられた空気層16は、省略されていても良い。その場合、第一の透明部材9の第一の面9aと偏光板5との間には、透明な樹脂等が介在していても良い。
【0050】
拡散板4と偏光板5との間、拡散板4の光入射面と対向する位置、又は、偏光板5の光出射面と対向する位置には、プリズムシートなどの光学シートが配置されていても良い。その場合、光学シートは、拡散板4や偏光板5と同様に、第一の透明部材9の第一の面9aに対して傾斜していても良い。
【0051】
第一の透明部材9の第三の面9cと反射型液晶表示パネル2の画像表示面との間には、介在していても、介在していなくても、どちらでも良い。
【0052】
第二の透明部材10の第一の面10aと筐体14の側面との間には、空気層が介在していても、介在していなくても、どちらでも良い。尚、第二の透明部材10の第一の面10aと筐体14の側面との間に空気層が介在している場合には、その空気層(隙間)に迷光の一部を閉じ込めることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 回路基板
2 反射型液晶表示パネル
3 光源
4 拡散板
5 偏光板
6 偏光ビームスプリッター
9 第一の透明部材
9a 第一の面
9b 第二の面
9c 第三の面
10 第二の透明部材
10a 第一の面
10b 第二の面
10c 第三の面
10d 第四の面
10e 第五の面
11a 下部空気層
11b 上部空気層
12 空気層
13 第一の筐体
14 第二の筐体
14a 第一の反射面
14b 第二の反射面
15 観察者の目
16 空気層
図1
図2