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特許7197993開閉装置並びにこの開閉装置を用いた端末機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】開閉装置並びにこの開閉装置を用いた端末機器
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20221221BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20221221BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20221221BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20221221BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
F16C11/04 F
F16C11/10 D
G06F1/16 312E
G06F1/16 312U
G06F1/16 313F
H05K5/02 V
H05K5/03 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018081757
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019190519
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000124085
【氏名又は名称】加藤電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆之
(72)【発明者】
【氏名】井上 二郎
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270872(JP,A)
【文献】特開2004-225780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
F16C 11/10
G06F 1/16
H05K 5/02
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体のいずれか一方に取り付けた取付部材と、いずれか他方に取り付けた支持部材をヒンジシャフトを介して連結することによって、前記第1筐体と前記第2筐体を相対的に開閉可能に連結するヒンジ部と、このヒンジ部の前記ヒンジシャフトに作用し前記第1筐体と前記第2筐体を任意の開閉角度で停止保持を可能にするフリクショントルク発生手段と、前記フリクショントルク発生手段の動作、非動作を選択できるクラッチ手段とで構成し、
前記クラッチ手段を、付勢手段により一方向にスライド付勢されたヒンジシャフトを挿通係合させて設けた第1クラッチ部材と、この第1クラッチ部材に圧接すると共に、前記支持部材に回転を拘束されて共に回転可能に取り付けられた第2クラッチ部材と、前記第1クラッチ部材と第2クラッチ部材の噛合状態と非噛合状態を作り出す第1クラッチ部材作動手段とで構成したことを特徴とする、開閉装置。
【請求項2】
前記ヒンジシャフトに、さらに回転トルク発生手段を接続させることにより、前記フリクショントルク発生手段の非作動時においても前記第1筐体と前記第2筐体の回転トルクを制御することができるように成したことを特徴とする、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記ヒンジ部の前記ヒンジシャフトを一方向にスライド付勢させる付勢手段を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記フリクショントルク発生手段を、前記ヒンジシャフトを挿通させて設けた前記クラッチ手段の第1クラッチ部材に接して設けたことを特徴とする、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記第1クラッチ部材作動手段を、前記ヒンジシャフトの先端側に接して第1クラッチ部材を第2クラッチ部材側へ常に押圧させている偏心カム手段と、前記ヒンジシャフトを常に前記偏心カム手段側へ押圧する付勢手段と、前記偏心カム手段による前記ヒンジシャフトに対する押圧力を解く解離手段とで構成したことを特徴とする、請求項に記載の開閉装置。
【請求項7】
請求項1~6に各記載の開閉装置で、前記第1筐体と前記第2筐体を開閉可能に連結したことを特徴とする、端末機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコン、ラップトップ型パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)等の端末機器において、相対的に開閉可能に連結される第1筐体と第2筐体とを互いに連結する開閉装置並びにこの開閉装置を用いた端末機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した端末機器は、一般的に、下記特許文献1や2に記載されているように、テンキーやキーボードを設けた装置本体を構成する第1筐体と、ディスプレイ装置を設けた蓋体を兼ねる第2筐体とが、互いに重ね合わせた状態から上下方向へ相対的に開閉可能となるように、開閉装置を用いて連結されている。このような開閉装置の多くは、フリクショントルク発生手段を備えており、このフリクショントルク発生手段が創出するフリクショントルクが第1筐体と第2筐体の全開閉角度にわたって発生するように構成されている。
【0003】
このように構成すると、例えば第1筐体と第2筐体を相対的に開く際にフリクショントルク発生手段のフリクショントルクによって、開閉操作が重くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-337301号公報
【文献】特開2012-211606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術の持つ問題点に鑑み、端末機器の第1筐体と第2筐体を開閉可能に連結するフリクショントルク発生手段付きの開閉装置において、第1筐体と第2筐体の開閉操作時に、当該開閉装置の前記フリクショントルク発生装置の回転トルクを切り替えることのできる開閉装置並びにこの開閉装置を用いた端末機器を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る請求項1の開閉装置は、第1筐体と第2筐体のいずれか一方に取り付けた取付部材と、いずれか他方に取り付けた支持部材をヒンジシャフトを介して連結することによって、前記第1筐体と前記第2筐体を相対的に開閉可能に連結するヒンジ部と、このヒンジ部の前記ヒンジシャフトに作用し前記第1筐体と前記第2筐体を任意の開閉角度で停止保持を可能にするフリクショントルク発生手段と、前記フリクショントルク発生手段の動作、非動作を選択できるクラッチ手段とで構成し、前記クラッチ手段を、付勢手段により一方向にスライド付勢されたヒンジシャフトを挿通係合させて設けた第1クラッチ部材と、この第1クラッチ部材に圧接すると共に、前記支持部材に回転を拘束されて共に回転可能に取り付けられた第2クラッチ部材と、前記第1クラッチ部材と第2クラッチ部材の噛合状態と非噛合状態を作り出す第1クラッチ部材作動手段とで構成したことを特徴とする。
【0007】
次に、本発明に係る請求項2の開閉装置は、請求項1に記載の開閉装置のヒンジシャフトに、さらに回転トルク発生手段を接続させることにより、前記フリクショントルク発生手段の非作動時においても前記第1筐体と前記第2筐体の回転トルクを制御することができるように成したことを特徴とする。
【0008】
次に、本発明に係る請求項3の開閉装置は、請求項1に記載のヒンジ部のヒンジシャフトを一方向にスライド付勢させる付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
次に、本発明に係る請求項4の開閉装置は、請求項1に記載のフリクショントルク発生手段を、前記ヒンジシャフトを挿通させて設けた前記クラッチ手段の第1クラッチ部材に接して設けたことを特徴とする。
【0011】
次に、本発明に係る請求項の開閉装置は、前記第1クラッチ部材作動手段を、前記ヒンジシャフトの先端側に接して第1クラッチ部材を第2クラッチ部材側へ常に押圧させている偏心カム手段と、前記ヒンジシャフトを常に前記偏心カム手段側へ押圧する付勢手段と、前記偏心カム手段による前記ヒンジシャフトに対する押圧力を解く解離手段とで構成したことを特徴とする。
【0012】
次に、本発明に係る請求項の開閉装置は、請求項2に記載の回転トルク発生手段を、請求項1に記載の支持部材と取付部材の間に設けた第1トーションコイルスプリングと、前記ヒンジシャフトに作用させた回転ダンパーとで構成したことを特徴とする。
【0013】
そして、本発明に係る請求項の端末機器は、これを構成する第1筐体と第2筐体を上記した開閉装置で開閉可能に連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1発明によれば、第1筐体と第2筐体の開成時にクラッチ手段によってフリクショントルク発生手段を非作動状態に切り替えることができるので、フリクショントルクに遭遇することなく軽い操作力で開成操作を行うことができるものである。そして、請求項1発明によれば、クラッチ手段を、第1クラッチ部材と、この第1クラッチ部材に圧接すると共に、前記支持部材に回転を拘束されて共に回転可能に取り付けられた第2クラッチ部材と、前記ヒンジシャフトを前記付勢部材の弾力に抗して押圧する状態と解除する状態を作り出す第1クラッチ部材作動手段とで構成することにより、簡単な構成でクラッチ手段の、動作、非動作状態を作り出すことができるものである。
【0015】
請求項2発明によれば、クラッチ手段によりフリクショントルク発生手段を非作動状態にしても、回転トルク発生手段により、第1筐体と第2筐体の開成操作に伴う回転トルクを制御して、軽い操作力で第1筐体に対し第2筐体を開くことができるものである。
【0016】
請求項3発明によれば、付勢手段によりフリクショントルク発生手段の非作動状態を維持できるものである。
【0017】
請求項4発明によれば、効率よくフリクショントルク発生手段の非作動状態を作り出すことができるものである。
【0019】
請求項発明によれば、前記第1クラッチ部材作動手段を、前記ヒンジシャフトの先端側に接して第1クラッチ部材を第2クラッチ部材側へ常に押圧させている偏心カム手段と、前記ヒンジシャフトを常に偏心カム手段側へ押圧する付勢部材と、前記偏心カム手段による前記ヒンジシャフトに対する押圧力を解く解離手段とで構成することにより、効率よく第1クラッチ部材と第2クラッチ部材の噛合いと解離を行うことができるものである。
【0020】
請求項発明によれば、簡単な構成で、第1筐体と第2筐体の開閉操作に基づく回転トルクを制御することができるものである。
【0021】
請求項発明によれば、第1筐体と第2筐体の開閉操作時において、伴う操作力の向上した端末機器を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器の閉成状態の斜視図である。
図2】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器の閉成状態を示し、(a)はその全体の正面図、(b)その一部拡大正面図である。
図3】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器の閉成状態の右側面図である。
図4】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器の第2筐体を90度まで開いた状態の斜視図である。
図5】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器の第2筐体を90度まで開いた状態の右側面図である。
図6】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器の第2筐体を120度まで開いた状態の斜視図である。
図7】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器の第2筐体を120度まで開いた状態の右側面図である。
図8】本発明に係る開閉装置を用いた端末機器を裏側から見た状態の斜視図である。
図9図8の状態における本発明に係る開閉装置を示し、(a)はその一部分解斜視図、(b)は(a)における第1クラッチ部材作動手段の分解斜視図と縦断面図である。
図10図8の状態における本発明に係る開閉装置の斜視図である。
図11図8の状態における本発明に係る開閉装置の本体部分の分解斜視図である。
図12図8の状態における本発明に係る開閉装置の平面図である。
図13図12に示した本発明に係る開閉装置の一部平面断面図である。
図14】本発明に係る開閉装置の取付部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその右側面図である。
図15】本発明に係る開閉装置の支持部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその平面図(c)はその右側面図、(d)は(b)ののA-A線断面図である。
図16】本発明に係る開閉装置のヒンジシャフトを示し、(a)はその平面図、(b)その左側面図、(c)はその右側面図である。
図17】本発明に係る開閉装置のベース部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその底面図、(c)はその右側面図である。
図18】本発明に係る開閉装置の第1クラッチ部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその右側面図、(c)は(b)のB-B線断面図である。
図19】本発明に係る開閉装置の第2クラッチ部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその正面図、(c)は(b)のC-C線断面図である。
図20】本発明に係る開閉装置の偏心カム部材を示し、(a)はその斜視図、(b)はその平面図、(c)は底面図、(d)は(b)のD-D線断面図である。
図21】本発明に係る開閉装置の偏心プーリーを示し、(a)はその斜視図、(b)はその側面図である。
図22】本発明に係る開閉装置の動作を説明する一部平面断面図である。
図23】本発明に係る開閉装置において、クラッチが切れた状態の平面図である。
図24】発明に係る開閉装置において、クラッチが切れた状態の一部平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を、端末機器の中でもノート型パソコンに実施した場合について説明するが、本発明を実施する端末機器には、ノート型パソコン以外のラップトップ型パソコン、PDA等の端末機器も含まれる。
【実施例1】
【0024】
図1乃至図8において、指示記号1で示したものは、端末機器の一例としてのノート型パソコンであって、このノート型パソコン1は、図示してないテンキーやキーボード等の入力手段を上面に設けた機器本体としての第1筐体2と、下面に図示してないディスプレイ装置を設けた蓋体としての第2筐体3とを有し、第1筐体2と第2筐体3とが本発明に係る開閉装置4、4を介して上下方向へ相対的に開閉可能に連結されている。第1筐体2の一端部側には、とくに図9図10に示したように、支持部材6のケース部6cを挿通させる挿通部2aが設けられると共に、取付部材5の一端部側を固着する突起部2b、2bが設けられ、さらに後述するベース部材32を取り付ける取付孔2c、2c・・が設けられている。
【0025】
図1乃至図8に示す実施例では、本発明に係る開閉装置4、4は、同じ構成のものが左右一対設けられている。構成は同じなので以下に図2図4における右側の開閉装置4について説明する。この右側の開閉装置4は、とくに図2図9図10に示したように、ヒンジ部Aと、フリクショントルク発生手段Bと、クラッチ手段Cと、回転トルク発生手段Dとを備えている。この中で回転トルク発生手段Dは、これがあると、クラッチ手段Cによってフリクショントルク発生手段Bが切り替えられ、フリクショントルクが発生しない場合でも、第1筐体2と第2筐体3の相対的な回転トルクを制御することができるものである。
【0026】
まず、ヒンジ部Aから説明する。図2乃至図7に示したように、ヒンジ部Aは、第1筐体2の後端部側に左右方向の両端部側に渡って伸び、そこに取り付けた取付部材5と、第2筐体3側に取り付けた支持部材6と、この支持部材6を取付部材5に連結するヒンジシャフト7とで構成されている。詳しくは取付部材5は帯状のもので、図14に示したように、帯状の取付部5aの両端部側から上方へ折り曲げて構成した折曲げ部5b、5bに取付部5aと直交する状態で設けられところの変形取付孔5c、5cを有するブラケット部5d、5dが設けられており、このブラケット部5d、5dの外周には係止溝部5e、5eが設けられている。この取付部材5の一端部側は、図9に示したように、取付孔5f、5fを介して第1筐体2に設けた突起部2b、2bへ取付ビス2d、2dを用いて固着される構成である。
【0027】
支持部材6は、とくに図15に示したように、取付孔6b、6bを有する支持板部6aと、この支持板部6aより設けたケース部6cとから成なる。このケース部6cは、例えば図10に示した取付部材5のブラケット5d側に変形取付孔6dを設けた壁部6eが設けられると共に、この壁部6eの外側に係止片6fが突設されている。ヒンジシャフト7は、とくに図16に示したように、その中間部に設けたところの外周に係止溝部7bを設けたフランジ部7aと、このフランジ部7aの図中右側に設けた第1変形軸部7cと、この第1変形軸部7cに続いて設けられたこの第1変形軸部7cよりも小径の第2変形軸部7dと、フランジ部の図中左側に設けたやや短い第1円形軸部7eと、この第1円形軸部7eに続いて設けられた第3変形軸部7fと、この第3変形軸部7fの端部側に設けられた雄ネジ部7gと、この雄ネジ部7gに続いて設けられたところのこれもやや短い第2円形軸部7hとを有している。
【0028】
ヒンジシャフト7の取付部材5と支持部材6に対する連結構成は以下のとおりである。即ち、とくに図13に示したように、ヒンジシャフト7は、その一端部側の第2変形軸部7dの先端側を、第1筐体2に取り付けたベース部材32内に軸方向へスライド可能に取り付けられたところの回転トルク発生手段Dを構成する回転ダンパー31に保持させ、続いて第2変形軸部7dの残った部分と第1変形軸部7cを第2筐体3側に取り付けた支持部材6のケース部6c内の軸心部軸方向を貫通させ、さらに第1筐体2に取り付けた取付部材5のフランジ部7a内を貫通することによって、最終的に取付部材5と支持部材6を互いに回転可能に連結させている。
【0029】
しかるに、この連結構成はかなり複雑であり、さらに説明する。図面によれば同じく図13に示したように、ヒンジシャフト7の第2変形軸部7dの部分は、支持部材6のケース部6cの一側部に設けた付勢手段19を構成する取付プレート27と付勢部材2と押圧プレート26を貫通しており、第1変形軸部7cの部分はケース部6c内部の軸方向へ挿通して設けた筒状シャフト部20の変形挿通孔20c内を係合貫通している。この筒状シャフト部20は、その一端部側に設けたフランジ部20aを、支持部材6のケース部6cの入口に設けた変形取付孔6dへ挿通係合させた第2クラッチ部材9の小径挿通孔9bに係合させている。そして、この第2クラッチ部材9は、その変形部9aを取付部材5の変形取付孔5cへ挿入係合させている。
【0030】
ヒンジシャフト7のフランジ部7aは、とくに図13に示したように、筒状シャフト部20の一端部側と接し、第2クラッチ部材9の大径挿通孔9c内に軸方向へスライド可能に収容されている。さらに、ヒンジシャフト7の第1円形軸部7eは、第1クラッチ部材8の挿通孔8c内を貫通し、第3変形軸部7fの部分にフリクショントルク発生手段Bが取り付けられており、第2円形軸部7hの部分にキャップ17が取り付けられている。したがって、ヒンジシャフト7は、取付部材5の取付部5aと回転ダンパー31に支えられて支持部材6のケース部6c内を軸方向へ支持部材6と共に回転可能となるように貫通している。
【0031】
次に、フリクショントルク発生手段Bは、とくに図11に示したように、ヒンジシャフト7の第1円形軸部7eを回転可能に挿通させて第2クラッチ部材9に対向して設けた第1クラッチ部材8と、この第1クラッチ部材8の第2クラッチ部材9側にヒンジシャフト7の第1円形軸部7eをその軸心部軸方向に設けた円形挿通孔10aへ挿通させて設けられ、その外周に設けた係止片10bをヒンジシャフト7のフランジ部7aに設けた係止溝部7bに係止させた第1フリクションプレート10と、この第1フリクションプレート10に隣接して設けられ、同じくヒンジシャフト7の第1円形軸部7eをその軸心部軸方向に設けた挿通孔11aへ挿通させ、その外周に設けた係止片11bを第1クラッチ部材8に設けた第1係止孔8dに係止させた第2フリクションプレート11と、第1クラッチ部材8の反対側にその軸心部軸方向に設けた挿通孔12aにヒンジシャフト7の第1円形軸部7eを挿通させると共にその外周に設けた係止片12bを第1クラッチ部材8の第2係止孔8eに係止して設けられた第3フリクションプレート12と、この第3フリクションプレート12に隣接してその軸心部軸方向に設けた変形挿通孔13aにヒンジシャフト7の第3変形軸部7fを挿通係合させて設けた第4フリクションプレート13と、この第4フリクションプレート13に隣接しかつ重ね合わせて設けられたところの、それぞれその軸心部軸方向に設けた変形挿通孔14a、14a・・へヒンジシャフト7の第3変形軸部7fを挿通係合させて成る複数の皿バネ14、14・・と、この皿バネ14に接してその中心部軸方向に設けた変形挿通孔13cにヒンジシャフト7の第3変形軸部7fを挿通係合させて設けた第5フリクションプレート13dと、ヒンジシャフト7の雄ネジ部7gにネジ着された締付ネジ15と、で構成されている。尚、第4フリクションプレート13と第5フリクションプレート13dには、その面部に複数のオイル溜部13b、13b・・と13e、13e・・が設けられている。
【0032】
次に、クラッチ手段Cは、とくに図9図11乃至図13に示したように、互いに向き合わせて設けた第1クラッチ部材8と、第2クラッチ部材9と、第1クラッチ部材動作手段16とで構成されており、この第1クラッチ部材作動手段16は、ヒンジシャフト7の先端側の第2円形軸部7hに取り付けたキャップ17に接して第1クラッチ部材8を第2クラッチ部材9側へ常に押圧させている偏心カム手段18と、ヒンジシャフト7を常に偏心カム手段18側へ押圧する付勢手段19と、偏心カム手段18によるヒンジシャフト7のキャップ17に対する押圧力を解く実施例では形状記憶合金製のワイヤーから成る解離手段25で構成されている。
【0033】
さらに詳しく説明すると、第1クラッチ部材8は、とくに図18に示したように、側板部8aとこの側板部8aから設けた周壁部8bとから成る椀状のもので、側板部8aにはその中心部軸方向にヒンジシャフト7の第1円形軸部7eを挿通させる円形の挿通孔8cと、この円形の挿通孔8cを挟んで側板部8aに設けた第1係止孔8dと第2係止孔8eが設けられ、周壁部8bの側端部には交互に形成させた多数の凸部と凹部から成る第1歯部8fが形成されている。
【0034】
第1クラッチ部材8は、上述したように、第1歯部8fを第2クラッチ部材9の第2歯部9dに向け、その円形挿通孔8cへヒンジシャフト7の第1円形軸部7eを挿通させており、ヒンジシャフト7のフランジ部7aとの間に互いにその軸心部軸方向に設けた円形挿通孔10aへヒンジシャフト7の第1円形軸部7eを挿通させて第1フリクションプレート10と第2フリクションプレート11を介在させている。
【0035】
第2クラッチ部材9は、とくに図19に示したように、筒状のもので一側部側の外周を削り取ることによって変形部9aが形成され、他側部側には交互に形成させた多数の凸部と凹部から成る第2歯部9dが形成されており、この第2歯部9dと第1クラッチ部材8の第1歯部8fが、互いに噛み合うことによって、フリクショントルク発生手段Bの動作、非動作がなされるものである。さらに、この第2クラッチ部材9の変形部9aの内側に小径挿通孔9bが設けられ、第2歯部9d側の内側には大径挿通孔9cが設けられている。
【0036】
第2クラッチ部材9は、同じく図19に示したように、取付部材5のブラケット部5dに設けた変形取付孔5cにその変形部9aを挿入係合させると共に、内部に支持部材6のケース部6cより伸長した筒状シャフト部20を通し、この筒状シャフト部20の一端部側に設けたフランジ部20aを大径挿通孔9cに収容させている。この筒状シャフト部20は、とくに図11に示したように、フランジ部20aに続いて変形軸部20bが形成されており、この変形軸部20bの部分を支持部材6のケース部6cの一側部に設けた側壁6eに設けた変形取付孔6dと係合させている。さらにこの筒状シャフト部20にはその中心部軸方向を貫通して変形挿通孔20cが形成されており、この変形挿通孔20cへヒンジシャフト7の第1変形軸部7cを挿通係合させている。
【0037】
偏心カム手段18は、取付部材5のヒンジ部A側に位置して支軸22fを用いて回転可能に取り付けた偏心カム部材22と、この偏心カム部材22に重なり合っている偏心プーリー23と、この偏心プーリー23に偏心カム部材22ごと回転付勢力を与える第2トーションコイルスプリング24と、偏心プーリー23に懸架した形状記憶合金製のワイヤーから成る解離手段25とで構成されている。
【0038】
即ち、偏心カム部材22は、取付部材5の側に取り付けた支持ピン22fに対し回転可能に取り付ける取付孔22bを有する筒部22aと、この筒部22aの一側部側に設けた押圧部22cとから成り、上面部に偏心プーリー23用の取付孔22dと係止孔22eが設けられている。尚、図9において指示記号22gのものは、偏心カム部材22を支軸22fへ取り付けるビスである。偏心プーリー23には軸支孔23aと係止片23bが設けられており、軸支孔23aを通した支持ピン23cで偏心カム部材22の取付孔22dに対し回転可能に取り付けられると共に、係止片23bを偏心カム部材22の係止孔22eへ挿入係止させることにより、共に回転するように構成されている。偏心カム部材22の筒部22aには、第2トーションコイルスプリング24が環巻きされており、その一端部側24bを取付部材5に取り付けた係止ピン24aへ係止させ、他端部側24cを押圧部22cの内側へ係止させることにより、反時計方向へ回転付勢させることにより、押圧部22cがキャップ17を介してヒンジシャフト7を図中右側へ押圧させている。このことにより、第1クラッチ部材8は第2クラッチ部材9側に押され、互いの第1歯部8fと第2歯部9dとが噛み合う状態となっている。
【0039】
偏心プーリー23には形状記憶合金製のワイヤーから成る解離手段25が懸架されている。この解離手段25は、取付部材5の上面に取り付けられた断面矩形状を呈した各棒状の台部材33上に設置されている。この解離手段25は、とくに図2図8図9に示したように、左右一対の開閉装置4、4に用いられる1本のもので、その両端部を台部材33上に固定させてある。この解離手段25は、例えば形状記憶合金(Ti-Ni系形状記憶合金)製のワイヤーから成り、左右
の開閉装置4、4の偏心プーリー23、23(一方のみ表示)に懸架され、電流を流すことにより体積が収縮する性質を利用して偏心カム手段18を動作させるものである。
【0040】
付勢手段19は、とくに図11図13に示されたように、支持部材6のケース部6c内に非回転に挿入され、その軸心部軸方向に設けた変形挿通孔26aへヒンジシャフト7の第2変形軸部7dを挿通係合させた押圧プレート26と、その軸心部軸方向に設けた変形挿通孔27aへヒンジシャフト7の第2変形軸部7dを挿通させると共に、ケース部6cへ取り付けた取付プレート27と、押圧プレート26と取付プレート27との間にヒンジシャフト7の第2変形軸部7dに環巻させつつ弾設した圧縮コイルスプリングから成る付勢部材28とで構成され、ヒンジシャフト7を常に偏心カム手段18側へ押圧させている。
【0041】
ここにおいて、とくに図12図23及び図24に示したように、第1クラッチ部材作動手段16の第2トーションコイルスプリング24が、偏心カム部材22を介してヒンジシャフト7を図中右方向へスライド付勢させる付勢力は、付勢手段19の付勢部材28がヒンジシャフト7を図中左方向へ押圧する力よりも強くなるようにお互いの弾力を選定してある。したがって、通常時はヒンジシャフト7に取り付けた第1クラッチ部材8は、第2クラッチ部材9側へ押し当てられており、お互いの第1歯部8fと第2歯部9dとが強く噛み合っているが、第1クラッチ部材作動手段16が動作すると、付勢部材28がヒンジシャフト7を図中左方向へ押圧させ、図23図24に示したように、第1クラッチ部材8を第2クラッチ部材9に対して解離させ、フリクショントルク発生手段Bが非作動状態となるものである。
【0042】
次に、支持部材6に回転付勢力を与える回転トルク発生手段Dは、とくに図11図13及び図14に示したように、ヒンジシャフト7の外周へ通したカラー部材29を囲んで、取付部材5のブラケット部5dに設けた係止溝部5eと支持部材6のケース部6eに設けた係止片6fとの間に弾設した第1トーションコイルスプリング30と、ヒンジシャフト7の端部に設けた回転ダンパー31とで構成されており、常に支持部材6を第2筐体の開成方向へ回動付勢させている。回転ダンパー31は、取付部材5側に取り付けたベース部材32内に軸方向へスライド可能に収装されており、ヒンジシャフト7の回転に対し、所定の回転トルクを付与すると共に、ヒンジシャフト7の軸方向のスライド動作に同調して共にベース部材32内をスライドする構成である。
【0043】
ベース部材32の構成は、とくに図9図10及び図17に示したように、内部軸方向に回転ダンパー31を非回転かつ軸方向へスライド可能に保持するものであって、側面蒲鉾形状を呈し、軸方向に回転ダンパー31用の挿通孔32aを有し、底部に回転ダンパー31の図示してないガイド凸部を収容ガイドするガイド溝32bが設けられている。この回転ダンパー31は、公知構成のものであり、とくに図示してないが、本出願人の先願である特願2017-21942号の図13に示されている構成のものなどである。また、このベース部材32は、とくに図9に示したように、第1筐体2に設けた取付孔2c、2c・・へ取付用ビス32c、32c・・を用いて固着される。
【0044】
次に、本願発明に係る開閉装置の作用効果について説明する。以下の説明では開閉装置4、4の一方のみについて説明するが、他方のものも同じ動作をするものである。図1乃至図3に示したように、第1筐体2に対し第2筐体3を閉じたノート型パソコン1の使用前の状態においては、形状記憶合金製のワイヤーから成る解離手段25は緩んだ状態にある。この状態において、図2図12及び図13図22示したように、偏心カム手段18の偏心カム部材22の押圧部22cは、トーションコイルスプリング24により、図中左側へ回転付勢されており、この押圧部22cに当接しているヒンジシャフト7をキャップ17を介して当該ヒンジシャフト7を右方向へ押圧し、第1クラッチ部材8の第1歯部8fが第2クラッチ部材9の第2歯部9dと互いに強く噛み合っている。このトーションコイルスプリング24の弾力は、付勢手段19の付勢部材28がヒンジシャフト7を左方向へ押圧する弾力よりも強いので、偏心カム手段18が動作している間は、この付勢手段19の付勢部材28の弾力によって噛合いが解かれることはない。
【0045】
この状態で第1筐体2に対し第2筐体3を開閉させると、共に回転するヒンジシャフト7により、フリクショントルク発生手段Bの第1フリクションプレート10と第2フリクションプレート11との間、及び第3フリクションプレート12と第4フリクションプレート13との間、並びに第5フリクションプレート13dとこの第5フリクションプレート13dと圧接している皿バネ14との間にフリクショントルクが発生し、第2筐体3は第1筐体2に対してフリーストップに開かれる。この際には、回転トルク発生手段Dのトーションコイルスプリング30と回転ダンパー31により、回転トルクが発生し、ヒンジシャフト7の回転トルクを制御する。
【0046】
しかしながら、図示してないスイッチにより、形状記憶合金製のワイヤーから成る解離手段25に通電させると、当該解離手段25は形状記憶合金で製作されているので、解離手段25自身の体積の収縮が起こり、偏心プーリ-23を介して偏心カム部材22をトーションコイルスプリング24の弾力に抗して時計方向へ回転させることになる。そうすると、偏心カム部材22の押圧部22cの外周はその軸心配置からの距離が短く形成されているので、ヒンジシャフト7に対する押圧が解かれて、付勢手段19の付勢部材28によって第1クラッチ部材8をヒンジシャフト7と共に回転ダンパー31を左方向へ移動させて、図23図24に示したように、第1クラッチ部材8と第2クラッチ部材9の噛合いが解かれ、その状態が付勢部材28によって維持される。その結果、フリクショントルク発生手段Bが動作しなくなるので、第2筐体3は第1筐体2に対して軽い操作力で開くことが可能となる。
【0047】
この際には、回転トルク発生手段Dは動作しており、ヒンジシャフト7の回転を制御することになるので、第2筐体3を開く際の操作力の軽減と、閉じる際の急激な落下を緩衝することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る開閉装置は、以上のように構成したので、端末機器の第1筐体と第2筐体を開閉可能に連結する開閉装置として用いると、第1筐体と第2筐体を開く際には、クラッチ手段によりフリクショントルク発生手段のフリクショントルクが発生しないので、軽く開くことができ、閉じる際にはフリクショントルクが発生するようにして、急激に閉じないようにすることができるので、操作性の良い開閉装置、さらにはこの開閉装置を用いた端末機器として、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0049】
A ヒンジ部
B フリクショントルク発生手段
C クラッチ手段
D 回転トルク発生手段
1 端末機器(ノート型パソコン)
2 第1筐体
3 第2筐体
4 開閉装置
5 取付部材
6 支持部材
7 ヒンジシャフト
8 第1クラッチ部材
9 第2クラッチ部材
10 第1フリクションプレート
11 第2フリクションプレート
12 第3フリクションプレート
13 第4フリクションプレート
13d 第5フリクションプレート
14 皿バネ
16 第1クラッチ部材作動手段
18 偏心カム手段
19 付勢手段
22 偏心カム部材
23 偏心プーリー
24 第2トーションコイルスプリング
28 付勢部材
30 第1トーションコイルスプリング
31 回転ダンパー
32 ベース部材
図1
図2
図3
図4
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