(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/013 20120101AFI20221221BHJP
B24B 49/02 20060101ALI20221221BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20221221BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B49/02 Z
B24B49/12
H01L21/304 622S
H01L21/304 622F
(21)【出願番号】P 2018092434
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇史
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-081518(JP,A)
【文献】特開2005-294365(JP,A)
【文献】特開2009-142969(JP,A)
【文献】特開2016-124053(JP,A)
【文献】特開2002-181514(JP,A)
【文献】特開平05-149720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0207651(US,A1)
【文献】米国特許第8045142(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
B24B 49/00 - 49/18
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨対象を保持する保持部と、
前記研磨対象を研磨する研磨部と、
前記研磨部の下方から照射光を前記研磨対象へ照射する照射部と、
前記研磨対象から反射した反射光を受けて該反射光の波長と光量との関係を検出する受光部と、
前記研磨対象と前記照射部との間に水を供給する供給部と、
前記受光部と通信可能に接続され、前記研磨対象の膜厚を演算する演算部とを備え、
前記研磨対象と前記水との間の第1面からの第1反射光のS偏光の第1光量および前記研磨対象の前記第1面とは反対側にある第1材料層と該研磨対象との間の第2面からの第2反射光のS偏光の第2光量のいずれもが、前記第1材料層の前記
第2面とは反対側にある第2材料層と該第1材料層との間の第3面からの第3反射光のS偏光の第3光量を上回るように、前記照射部は、前記研磨対象の研磨面に対して傾斜する第1方向から前記照射光を照射し、
前記演算部は、前記第1方向から前記照射光を照射したときに前記受光部で検出された前記第1および第2反射光のS偏光の干渉を用いて前記研磨対象の膜厚を演算する、研磨装置。
【請求項2】
前記研磨対象がシリコン酸化膜であり、
前記第1材料層がシリコン窒化膜であり、
前記第2材料層がシリコン酸化膜であるときに、
前記研磨対象に対する前記照射光の前記第1方向の角度は、75.4°以上である、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
研磨対象を保持する保持部と、前記研磨対象を研磨する研磨部と、前記研磨部の下方から照射光を前記研磨対象へ照射する照射部と、前記研磨対象から反射した反射光を受ける受光部と、前記研磨対象と前記照射部との間に水を供給する供給部と、前記受光部と通信可能に接続された演算部とを備えた研磨装置を用いた研磨方法であって、
前記研磨対象と前記水との間の第1面からの第1反射光のS偏光の第1光量および前記研磨対象の前記第1面とは反対側にある第1材料層と該研磨対象との間の第2面からの第2反射光のS偏光の第2光量のいずれもが、前記第1材料層の前記
第2面とは反対側にある第2材料層と該第1材料層との間の第3面からの第3反射光のS偏光の第3光量を上回るように、前記研磨対象の研磨面に対して傾斜する第1方向から前記照射光を照射し、
前記受光部で検出された前記第1および第2反射光の干渉を用いて前記研磨対象の膜厚を演算することを具備する、研磨方法。
【請求項4】
前記研磨対象がシリコン酸化膜であり、
前記第1材料層がシリコン窒化膜であり、
前記第2材料層がシリコン酸化膜であるときに、
前記研磨対象に対する前記照射光の前記第1方向の角度は、75.4°以上である、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、研磨装置および研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスのCMP(Chemical Mechanical Polishing)工程では、基板上の研磨対象膜の残存膜厚を測定しながら研磨の終点検出が行われる。膜厚測定では、白色光を研磨対象膜に照射し、反射光のスペクトルを解析して研磨対象膜の膜厚を測定する。
【0003】
従来の終点検出では、白色光は研磨パッドに予め設けられた孔もしくは透明窓を介して、水またはスラリを通過して基板表面に達する。通常、白色光の照射部と反射光の受光部は近接しており、白色光はほぼ垂直に基板に照射される。
【0004】
しかしながら、研磨対象膜がシリコン酸化膜の場合、シリコン酸化膜と水の屈折率は近いので、研磨対象膜の表面と水との界面からの反射光が著しく弱くなる。この場合、研磨対象膜よりも下層の材料膜からの反射が研磨対象膜の表面からの反射光より強くなり、研磨対象の膜厚が正確に測定できなくなってしまうことがある。例えば、立体型メモリセルアレイの製造工程では、研磨対象膜の下に多数の積層膜が存在するので、研磨対象膜の膜厚を測定することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-294365号公報
【文献】特開2009-142969号公報
【文献】特開2009-196002号公報
【文献】米国特許公開第2007/0042675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研磨対象膜の膜厚を正確に測定することができる研磨装置および研磨パッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態による研磨装置は、研磨対象を保持する保持部を備える。研磨部は、研磨対象を研磨する。照射部は、研磨部の下方から照射光を研磨対象へ照射する。受光部は、研磨対象から反射した反射光を受けて該反射光の波長と光量との関係を検出する。研磨対象の第1面からの反射光のS偏光の第1光量および前記第1面とは反対側の研磨対象の第2面からの反射光のS偏光の第2光量が、研磨対象よりも下層からの反射光のS偏光の第3光量を上回るように、照射部は、研磨対象の研磨面に対して傾斜する方向から照射光を照射する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図。
【
図2】研磨テーブル、研磨ヘッド、照射部、受光部および開口部の位置関係を示す概略平面図。
【
図3】半導体基板、照射部および受光部の位置関係を示す概念図。
【
図5】第1~第3反射光のS偏光の光量と照射光の入射角との関係を示すグラフ。
【
図6】第1および第2反射光のP偏光の光量と照射光の入射角との関係を示すグラフ。
【
図7】シリコン酸化膜の膜厚が500nm、400nm、300nmのときの白色光の反射スペクトルを示すグラフ。
【
図8】シリコン酸化膜の膜厚が500nm、400nm、300nmのときの白色光の反射スペクトルを示すグラフ。
【
図9】シリコン酸化膜の膜厚が500nm、400nm、300nmのときの白色光の反射スペクトルを示すグラフ。
【
図10】反射スペクトルの変化量と入射角との関係を示すグラフ。
【
図11】第2実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図。
【
図12】第3実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図。
【
図13】第4実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図。
【
図14】第5実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図。
【
図15】第5実施形態による照射部および受光部の移動方法を示す概略断面図。
【
図16】第6実施形態による研磨装置の構成例を示す断面図。
【
図17】第7実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図。
【
図18】第7実施形態による研磨装置の変形例を示す断面図。
【
図19】第7実施形態による研磨装置の変形例を示す断面図。
【
図20】第7実施形態による研磨装置の変形例を示す断面図。
【
図21】窓部の底面が半導体基板の研磨面あるいは研磨パッドの表面と略平行である比較例を示す断面図。
【
図22】第8実施形態による窓部の構成例を示す断面図。
【
図23】入射角θ
Iと傾斜角θ
TI、θ
TOとの関係を示すグラフ。
【
図24】傾斜角θ
TI、θ
TOと入射角θ
WI、放射角θ
WOとの関係を示すグラフ。
【
図25】第8実施形態による窓部の構成例を示す断面図。
【
図26】第9実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図。
【
図27】窓部の底面の傾斜角θ
TI、θ
TOと角度θ
WI、θ
WOとの関係を示すグラフ。
【
図28】第10実施形態による研磨装置の構成例を示す概略平面図。
【
図29】第10実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図。
【
図30】第10実施形態の変形例による研磨装置の構成例を示す概略平面図。
【
図31】第10実施形態の他の変形例による研磨装置の構成例を示す概略平面図。
【
図32】第10実施形態のさらに他の変形例による研磨装置の構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図である。研磨装置100は、研磨パッド3と、研磨テーブル4と、研磨ヘッド6と、スラリ供給ノズル7と、ドレッサ機構9と、照射部10と、受光部11と、偏光フィルタ16と、演算部85とを備えている。
【0011】
研磨パッド3は、研磨層1と、クッション層2とを含み、これらの二層で構成されている。研磨パッド3は研磨テーブル4上に固定設置されている。研磨パッド3は、研磨テーブル4とともに中心軸S1を中心として回転可能に構成されている。回転研磨部としての研磨パッド3および研磨テーブル4は、回転することによって、研磨対象としての半導体基板5上の材料膜の表面(以下、単に半導体基板5の表面ともいう)を研磨する。
【0012】
研磨ヘッド6は、半導体基板5を保持した状態で中心軸S2を中心に回転可能に構成されている。研磨ヘッド6は、半導体基板5を研磨パッド3の表面に押圧しながら中心軸S1を中心に回転させる。このように、研磨パッド3の回転と研磨ヘッド6の回転によって、研磨装置100は、半導体基板5の表面を研磨する。
【0013】
スラリ供給ノズル7は、研磨パッド3の表面に砥粒を含むスラリ8を供給する。スラリ8は、研磨パッド3と半導体基板5との間に流れ込み、半導体基板5の表面を研磨する。このように、研磨装置100は、スラリ8を供給しながら研磨パッド3上に半導体基板5の表面を擦ることによって半導体基板5の表面を研磨する。
【0014】
ドレッサ機構9は、研磨中もしくは研磨後に研磨パッド3の表面状態を調整するために設けられている。
【0015】
照射部10は、研磨パッド3の下方から照射光LIを半導体基板5へ照射する。照射光LIは、例えば、白色光である。白色光は、研磨パッド3に設けられた開口部12を介して半導体基板5の表面に到達し、半導体基板5の表面で反射して反射光LRとなる。反射光LRは、開口部12を介して受光部11で受光される。受光部11は、偏光フィルタ16を介して半導体基板5からの反射光LRを受けて該反射光LRの波長と光量との関係(スペクトル)を検出する。偏光フィルタ16は、反射光LRのうちS偏光を通過させ、P偏光を遮断する光学フィルタである。偏光フィルタ16は、照射部10から受光部11までの光路の任意の位置に配置してよい。照射光LIおよび反射光LRの光路領域13には、スラリ8の混入を防ぐために純水が満たされている。純水は、純水供給部14から光路領域13に供給されている。
【0016】
研磨装置100は、半導体基板5の表面に照射部10からの白色光を入射し、反射光のスペクトルを解析して半導体基板5の表面に設けられた研磨対象膜の膜厚を測定する。膜厚測定において、演算部85は、受光部11と通信可能に接続されており、研磨対象膜の表層(第1表面)の界面からの反射光と該研磨対象膜の裏面(第2面)の界面からの反射光との干渉を利用することで研磨対象膜の膜厚を測定する。研磨装置100は、測定された研磨対象膜の残存膜厚が所定値になったときに、研磨処理を終了する(終点検出)。本実施形態による膜厚測定については、後でより詳細に説明する。
【0017】
図2は、研磨テーブル4、研磨ヘッド6、照射部10、受光部11および開口部12の位置関係を示す概略平面図である。研磨テーブル4は、中心軸S1を中心に回転する。研磨ヘッド6は、半導体基板5を保持し研磨パッド3へ押圧しつつ、中心軸S2を中心に回転する。研磨パッド3に設けられている開口部12は、研磨ヘッド6に保持された半導体基板5の中央部の軌道15上に設けられており、スリット状に形成されている。照射部10および受光部11は、開口部12を挟んで互いに反対側に略直線状に配置されている。
【0018】
図3は、半導体基板5、照射部10および受光部11の位置関係を示す概念図である。照射部10からの照射光L
Iは所望の入射角θ
Iで半導体基板5の表面に入射し、入射角θ
Iとほぼ同じ角度の反射角θ
Rで反射された反射光L
Rが受光部11で受光される。
【0019】
図4は、半導体基板5の構成例を示す断面図である。例えば、半導体基板5は、シリコン基板18と、シリコン酸化膜19、21、23と、シリコン窒化膜20、22とを有する。シリコン酸化膜19は、シリコン基板18上に設けられており、約40nmの膜厚を有する。シリコン窒化膜20は、シリコン酸化膜19上に設けられており、約40nmの膜厚を有する。シリコン酸化膜19とシリコン窒化膜20とは、繰り返し積層されており、
図4では、それぞれ8層が積層されている。シリコン酸化膜19とシリコン窒化膜20との積層の上には、シリコン酸化膜21が設けられている。シリコン酸化膜21の膜厚は、約100nmである。シリコン窒化膜22はシリコン酸化膜21上に設けられており、約200nmの膜厚を有する。シリコン酸化膜23はシリコン窒化膜22上に設けられており、約400nmの膜厚を有する。研磨対象膜としてのシリコン酸化膜23は、最上層であり、その最表面は、研磨される研磨面(第1面)となる。ただし、半導体基板5の構造は、これに限定されない。
【0020】
シリコン酸化膜21の下には、シリコン酸化膜19とシリコン窒化膜20の積層体およびシリコン基板18がある。例えば、メモリセルを三次元的に配列した立体型メモリセルアレイの製造工程では、このように研磨対象膜としてのシリコン酸化膜23の下に多数の材料膜が設けられている場合がある。この場合、照射光LIをシリコン酸化膜23の研磨面に対して略垂直に入射させると(即ち、入射角0°の場合)、シリコン酸化膜23からの反射光よりも下層の膜19~22からの反射光の光量が大きくなる場合がある。
【0021】
例えば、純水とシリコン酸化膜23の研磨面との界面からの反射光を第1反射光とし、シリコン酸化膜23の裏面とシリコン窒化膜22の表面との界面からの反射光を第2反射光とし、シリコン窒化膜22の裏面とシリコン酸化膜21の表面との界面からの反射光を第3反射光とし、シリコン酸化膜21の裏面とシリコン窒化膜20の表面との界面からの反射光を第4反射光とする。尚、シリコン酸化膜23の裏面は、シリコン酸化膜23の研磨面(第1面)とは反対側の面(第2面)である。
【0022】
このとき入射角がほぼ0°の場合、水とシリコン酸化膜との屈折率差は比較的小さいので、第1反射光の光量は比較的小さい。これに対し、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との屈折率差は比較的大きいので、第2~第4反射光の光量は、第1反射光の光量を上回ってしまう。研磨対象としてのシリコン酸化膜23の膜厚は、第1反射光と第2反射光との干渉による反射スペクトルの変化に基づいて測定される。しかし、入射角がほぼ0°の場合、第1反射光と第2反射光との干渉よりも、第2反射光と第3または第4反射光の干渉が強くなってしまい、高精度の終点検出を行うことが困難となってしまう。
【0023】
そこで、本実施形態において、照射部10は、半導体基板5の表面(シリコン酸化膜23の研磨面)に対して傾斜する方向から白色光を照射する。以下、半導体基板5は、
図4に示す構造を有するものとして説明するが、研磨対象としてのシリコン酸化膜23の図示は省略されている。従って、研磨対象を半導体基板5と呼ぶ場合がある。
【0024】
図5は、第1~第3反射光のS偏光の光量と照射光の入射角との関係を示すグラフである。
図6は、第1および第2反射光のP偏光の光量と照射光の入射角との関係を示すグラフである。これらのグラフの横軸は、照射光の入射角である。縦軸は、反射光の光量である。反射光の光量は、照射光の光量を1とした比率で表されている。
【0025】
図5に示すように、入射角θ
Iが大きくなると、第1反射光LrS1の光量(S偏光の光量)が大きくなる。入射角θ
Iが75.4°未満である場合、第1反射光LrS1の光量は、第3反射光LrS3の光量を下回っている。しかし、入射角θ
Iが75.4°以上になると、第1反射光LrS1の光量は、第3反射光LrS3の光量を上回る。従って、第1反射光LrS1と第2反射光LrS2との干渉によるスペクトルの変化は、第2反射光LrS2と第3反射光LrS3との干渉によるスペクトルの変化よりも大きくなる。さらに下層からの反射光は、第3反射光LrS3の光量よりも小さくなる。従って、第1反射光LrS1と第2反射光LrS2との干渉が、シリコン窒化膜22よりも下層からの反射光同士の干渉の中で最も大きくなる。その結果、シリコン酸化膜23の膜厚を正確に測定することができ、研磨処理の終点検出の精度を向上させることできる。
【0026】
図6のグラフを参照すると、反射光LrP1、LrP2のP偏光の光量は、入射角θ
Iがブリュースター角となる点で0となる。さらに入射角θ
Iが大きくなると、第1反射光LrP1のP偏光の光量は増大するが、第2反射光LrP2のP偏光の光量は、第2反射光LrP2のS偏光に比べて大幅に低い。このため、第1反射光LrP1と第2反射光LrP2とでは干渉を強めることができない。
【0027】
このように、
図5および
図6のグラフから、第1反射光LrS1と第2反射光LrS2との反射スペクトル変化を他の反射光のそれよりも大きくするためには、入射角θ
Iを約75.4°以上にし、かつ、反射光のS偏光を用いればよいことがわかる。入射角θ
Iを約75.4°以上にし、かつ、反射光のS偏光を用いることによって、第1反射光LrS1の光量(第1光量)および第2反射光LrS2の光量(第2光量)が、シリコン酸化膜23よりも下層からの反射光のS偏光の光量(第3光量)を上回る。これにより、シリコン酸化膜23の下方に積層膜が存在しても、研磨装置100は、シリコン酸化膜23の膜厚の変化を正確に測定することができ、終点検出の精度を向上させることできる。
【0028】
図7~
図9は、シリコン酸化膜23の膜厚が500nm、400nm、300nmのときの白色光の反射スペクトルを示すグラフである。
図7は、入射角θ
Iが0°(垂直入射)のときS偏光の反射スペクトルを示すシミュレーション結果である。
図8は、入射角θ
Iが76°のときのS偏光の反射スペクトルを示すシミュレーション結果である。
図9は、入射角θ
Iが76.0°のときのP偏光の反射スペクトルを示すシミュレーション結果である。横軸は、照射光L
Iの波長を示す。照射光L
Iは、例えば、白色光であり、広範囲の波長領域の光を含む。縦軸は、照射光の光量1とした反射光の比率(反射率)である。
【0029】
図7に示すように、入射角θ
Iが0°の場合、シリコン酸化膜23の膜厚が変化しても、反射スペクトルはあまり変化しない。これに対し、
図8に示すように、入射角θ
Iが76.0°の場合、S偏光の反射光は、シリコン酸化膜23の膜厚が変化すると、反射スペクトルが大きく変化している。
図9に示すように、入射角θ
Iが76.0°であっても、P偏光の反射光では、反射スペクトルの変化は大きいものの、全体の反射率がS偏光の反射光と比べて低い。
【0030】
図10は、反射スペクトルの変化量と入射角との関係を示すグラフである。横軸は、照射光L
Iの入射角θ
Iを示す。縦軸は、シリコン酸化膜23の膜厚の変化による反射スペクトルの変化量を示す。例えば、反射スペクトルの変化量は、シリコン酸化膜23の膜厚が500nmおよび400nmのときのスペクトルの差分の絶対値を、照射光L
Iの波長で積分した値である。反射スペクトルの変化量は、P偏光よりもS偏光において大きい。また、照射光L
Iの入射角θ
Iが大きいほど、S偏光およびP偏光は、反射スペクトルの変化量が増大する。特に、第1反射光LrS1の光量が第3反射光LrS3の反射光量を上回る入射角(75.4°以上)において、反射スペクトルの変化量は顕著に増大している。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、照射光LIの入射角θIは、シリコン酸化膜23の表面からの第1反射光のS偏光の光量およびシリコン酸化膜23の裏面からの第2反射光のS偏光の光量が、シリコン酸化膜23よりも下層からの反射光のS偏光の光量を上回るように設定される。例えば、入射角θIは、約75.4°以上に設定される。これにより、シリコン酸化膜23の膜厚変化による反射スペクトルの変化量(第1反射光LrS1の反射率と第2反射光LrS2の反射率との差)が増大し、研磨処理の終点検出の精度を向上させることできる。
【0032】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図である。
図11には、開口部12およびその周辺の構成を示す。第2実施形態による研磨装置102は、第1ミラー29と、第2ミラー30とをさらに備えている。第2実施形態では、照射部10および受光部11は、研磨パッド3の下方から略鉛直上方向へ出射面または受光面を向けて配置されている。第1反射部としての第1ミラー29は、照射部10からの照射光L
Iをシリコン酸化膜23に対して傾斜する方向へ屈曲させる。第2反射部としての第2ミラー30は、シリコン酸化膜23からの反射光L
Rを受光部11へ屈曲させる。第1ミラー29は、純水で満たされた光路領域13の上部内壁に設けられ、照射部10の鉛直方向に配置されている。第1ミラー29は、照射部10からの照射光L
Iの方向を変更し、入射角θ
Iを所望の角度に変更することができる。第2ミラー30も、純水で満たされた光路領域13の上部内壁に設けられ、受光部11の鉛直方向に配置されている。第2ミラー30は、シリコン酸化膜23からの反射光L
Rの方向を変更し、受光部11へ到達させる。
【0033】
このように、第1および第2ミラー29、30を配置することによって、照射部10および受光部11は、光路の延長線上に斜め配置する必要はなく、研磨テーブル4の任意の位置に配置することができる。照射部10および受光部11は比較的大きな部材であるので、
図11に示すようにそれぞれ第1および第2ミラー29、30の鉛直下方に縦に配置することによって、研磨テーブル4の大型化を抑制することができる。研磨テーブル4の大型化を抑制することによって、研磨装置の配置面積を抑制することができる。
【0034】
第2実施形態のその他の構成および動作は、第1実施形態の対応する構成および動作と同様である。これにより、第2実施形態は、第1実施形態の効果もさらに得ることができる。
【0035】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図である。第3実施形態による研磨装置103は、光ファイバケーブル31と、光ロータリジョイント32と、光源33と、検出部34とをさらに備えている。光源33および検出部34は、研磨テーブル4の外部に配置されており、研磨テーブル4とともには回転せず、固定配置されている。光源33および検出部34は、光ファイバケーブル31を介して光ロータリジョイント32と光学的に接続されており、光ロータリジョイントからさらに光ファイバケーブル31を介して照射部10および受光部11にそれぞれ光学的に接続されている。光源33は、光ファイバケーブル31および光ロータリジョイント32を介して照射部10に照射光L
Iを送る。検出部34は、光ファイバケーブル31および光ロータリジョイント32を介して受光部11からの反射光L
Rを光電変換して電気信号として検出する。
【0036】
このように、光源33および検出部34を研磨テーブル4の外部に設置することによって、回転する研磨テーブル4の機構を小型化もしくは軽量化することができる。第3実施形態のその他の構成および動作は、第1実施形態の対応する構成および動作と同様である。これにより、第3実施形態は、第1実施形態の効果もさらに得ることができる。第3実施形態は、第2実施形態と組み合わせてもよい。尚、
図11において、純水供給部14は設けられていてもよいが、その図示は省略されている。また、第1および第2実施形態において、光ファイバケーブル31、光ロータリジョイント32、光源33および検出部34の図示も省略されている。
【0037】
(第4実施形態)
図13(A)および
図13(B)は、第4実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図である。
図13(A)および
図13(B)には、開口部12およびその周辺の構成を示す。第4実施形態によれば、照射部10は、シリコン酸化膜23上において照射光L
Iが細長形状になるように照射光L
Iを照射する。例えば、照射部10の出射部分は、細長いスリット形状に形成されており、照射光L
Iを入射角θ
Iの傾斜方向に長手方向を有する細長いスリット状に成形する。照射光L
Iがスリット状であることによって、反射光L
Rも細長いスリット状になる。受光部11は、照射光L
Iの長手方向に配置されており、スリット状の反射光L
Rの一部を受光する。照射光L
Iで照射される半導体基板5の照射領域36も、照射光L
Iと同様に入射角θ
Iの入射方向に細長いスリット状になる。
【0038】
研磨パッド3が磨耗したり、研磨中の押圧力で圧縮されたり、別の構造を有する研磨パッドへ交換されると、研磨パッド3の厚みが変化する場合がある。研磨パッド3の厚みが変化すると、それに応じて照射部10と基板5との間および受光部11と基板5との間の鉛直方向の距離が変化する。従って、照射光L
Iを斜めに入射した場合、研磨パッド3の厚みが変化すると、シリコン酸化膜23の照射位置は水平方向に変化する。例えば、研磨パッド3が比較的厚い積層構造(例えば、研磨層1およびクッション層2の積層構造)の場合、
図13(A)に示すように、基板5における照射光L
Iの照射位置は開口部12の右側にある。一方、研磨パッド3が薄い単層構造(例えば、研磨層1の単層構造)の場合、
図13(B)に示すように、基板5における照射光L
Iの照射位置は開口部12の左側へ移動する。このような研磨パッド3の厚みの変化による照射光L
Iの照射位置の移動は、照射光L
Iの入射角θ
Iが大きいほど、大きくなる。
【0039】
もし、照射光LIが短い形状を有する場合、研磨パッド3の厚みが変化したときに、照射光LIの照射位置が移動するため、受光部11が反射光LRを受光することが困難になる場合がある。
【0040】
これに対し、第4実施形態によれば、研磨パッド3の厚みが変化して、基板5(シリコン酸化膜23)における照射領域36が変化しても、照射光LIおよび反射光LRが照射方向に細長いスリット状であるので、受光部11は、反射光LRの少なくとも一部を受光することができる。これにより、研磨パッド3の厚みが変化しても、研磨装置104は、シリコン酸化膜23の膜厚を確実に測定することができる。
【0041】
尚、本実施形態では、光路上の研磨パッド3を除去することで開口部12が形成されている。従って、光路領域13を純水で満たすためには、開口部12の体積または面積が小さいことが好ましい。そのために、開口部12は、照射光LIとともに細長いスリット状にすることが好ましい。
【0042】
第4実施形態によれば、入射角θ
Iが小さくてもよいが、入射角θ
Iが大きいほど、その効果は大きい。例えば、照射領域36の長手方向の長さL
radは、基板5の鉛直方向の最大移動量(即ち、研磨パッド3の厚みの変化量)をd
Vmaxとすると、式1で表すことができる。
【数1】
【0043】
dVmaxを1.5mmとし、入射角が45°とした場合、照射領域36の長手方向の長さLradは、3.0mm以上とすることが好ましい。また、dVmaxを1.5mmとし、入射角が75.4°とした場合、長さLradは、11.5mm以上とすることが好ましい。これにより、研磨パッド3の厚みが変化しても、受光部11が反射光LRを確実に受光することができる。
【0044】
第4実施形態のその他の構成および動作は、第1実施形態の対応する構成および動作と同様でよい。従って、第4実施形態は、第1実施形態と同様の効果をさらに得ることができる。尚、
図13において、純水供給部14は設けられていてもよいが、その図示は省略されている。
【0045】
(第5実施形態)
図14は、第5実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図である。第5実施形態による研磨装置105は、移動機構80と、研磨パッド厚測定部81と、演算部85と、記憶部86とをさらに備えている。
【0046】
移動機構80は、照射部10または受光部11を略鉛直方向D1または略水平方向D2に移動させる。移動機構80は、例えば、モータ、動力シリンダ等のアクチュエータである。照射部10および受光部11の移動方法については、
図15を参照して後で説明する。
【0047】
ドレッサ機構9には、位置センサ87が設けられており、位置センサ87がドレッサ機構9の高さ位置を検知する。これにより、研磨パッド3の膜厚が測定され得る。研磨パッド厚測定部81は、位置センサ87に接続されており、ドレッサ機構9の高さ位置に基づいて研磨パッド3の膜厚の変化量を測定する。演算部85は、距離推定部と、移動量計算部とを備えている。距離推定部は、研磨パッド3の膜厚の変化量に基づいて、半導体基板5と照射部10との間のD1方向の距離、あるいは、半導体基板5と受光部11との間のD1方向の距離の変化量を推定する。移動量計算部は、半導体基板5と照射部10または受光部11との間の距離変化量、および、入射角θIに基づいて、照射部10および/または受光部11の移動量を計算する。移動機構80は、移動量計算部からの移動量に従って照射部10および/または受光部11を移動させる。
【0048】
図15(A)~
図15(C)は、第5実施形態による照射部10および受光部11の移動方法を示す概略断面図である。
図15(A)では、研磨パッド3が比較的厚い積層構造(例えば、研磨層1およびクッション層2の積層構造)を有する。
図15(B)および
図15(C)では、研磨パッド3が比較的薄い単層構造(例えば、研磨層1の単層構造)を有する。
【0049】
第5実施形態では、研磨パッド3の厚みが変化した場合に、移動機構80は、受光部11が反射光L
Rを受光できるようにするために、かつ、基板5における照射光L
Iの照射位置37をほぼ同一位置に維持するために、照射部10および受光部11を略水平方向あるいは略鉛直方向へ移動させる。例えば、研磨パッド3が比較的厚い場合、照射部10および受光部11は、
図15(A)に示す位置にある。研磨パッド3が薄くなった場合、移動機構80は、
図15(A)および
図15(B)に示すように照射部10および受光部11を略水平方向に移動させてもよい。あるいは、研磨パッド3が薄くなった場合、移動機構80は、
図15(A)および
図15(C)に示すように照射部10および受光部11を略鉛直方向に移動させてもよい。さらに、移動機構80は、照射部10および受光部11の略水平方向の移動と略鉛直方向の移動とを組み合わせてもよい。
【0050】
図15(B)に示すように、照射部10および受光部11を略水平方向に移動させる場合、照射部10および受光部11のそれぞれの移動量m
Hは、照射部10または受光部11と基板5との距離または該距離の変化量をd
Vとすると、式2で表すことができる。
【数2】
【0051】
図15(C)に示すように、照射部10および受光部11を略鉛直方向に移動させる場合、照射部10および受光部11のそれぞれの移動量m
Hは、基板5の鉛直方向の変化量(移動距離)d
Vとほぼ等しい。
【0052】
このように、第5実施形態によれば、研磨パッド厚測定部81が研磨パッド3の厚みまたはその厚みの変化量を測定し、演算部85が研磨パッド厚測定部81で測定された研磨パッド3の厚みまたは該厚みの変化量に基づいて、照射部10または受光部11と基板5との距離の変化量dVを推定する。尚、変化量dVは、研磨パッド3の厚みの変化量と等しい場合もある。さらに、演算部85は、変化量dVに基づいて、照射部10および受光部11の移動量(移動距離)mHを決定する。移動機構80は、演算部85から移動量mHを受け取り、移動量mHに従って照射部10および受光部11を略水平方向または略鉛直方向へ移動させる。
【0053】
これにより、研磨パッド3の厚みが変化し基板5の位置が鉛直方向に移動しても、受光部11が反射光LRを確実に受光できるように光路を制御することができる。また、研磨パッド3の厚みが変化し基板5の位置が鉛直方向に移動しても、基板5における照射光LIの照射位置37をほぼ同一位置に維持することができる。その結果、研磨装置105は、終点検出の精度をさらに向上させることができる。
【0054】
尚、第5実施形態によれば、入射角θIが小さくてもよいが、入射角θIが大きいほど、その効果は大きい。また、移動機構80は、照射部10および受光部11を両方とも移動させてもよいが、いずれか一方のみを移動させてもよい。照射部10および受光部11の一方のみを移動させた場合、受光部11は、反射光LRを受けることができるものの、基板5における照射光LIの照射位置37は移動してしまう。従って、終点検出の精度は或る程度劣るが、移動機構80の構成は小さくかつ簡略化することができる。
【0055】
また、上記例では、研磨パッド3の厚みは、ドレッサ機構9に配置された位置センサ87によって測定されている。しかし、位置センサ87は、研磨ヘッド6に配置してもよいし、独立の機構として研磨パッド3上に設置してもよい。また、研磨パッド3の厚みは、位置センサ87に代えて、光学センサ等のセンサを用いて測定してもよい。さらに、研磨パッド3の厚みは、基板5の研磨枚数、研磨パッド3の使用時間または研磨パッド3のドレッシング時間と研磨パッド3の厚みとの相関関係に基づいて推定されてもよい。基板5の研磨枚数、研磨パッド3の使用時間または研磨パッド3のドレッシング時間は、過去に処理された履歴情報から得られる。また、基板5の研磨枚数等と研磨パッド3の厚みとの相関関係も過去における研磨実績に基づいて算出される。これらの履歴情報および相関関係等は、予め記憶部86に格納され、その後の研磨処理において研磨パッド3の厚みを算出するために演算部85によって用いられる。
【0056】
基板5と照射部10または受光部11との間の距離変化量は、研磨パッド3の厚みによらず、研磨ヘッド6と研磨テーブル4との間の距離に基づいて測定もしくは推定してもよい。この場合、研磨ヘッド6および研磨テーブル4に近接センサ等を配置して、研磨ヘッド6と研磨テーブル4との間の距離を測定すればよい。
【0057】
第5実施形態は、第1~第4実施形態のいずれかに適用してもよい。第5実施形態を第2実施形態に適用する場合、移動機構80は、照射部10および/または受光部11の位置に代えて、第1ミラー29および/または第2ミラー30の位置を移動させればよい。
【0058】
第5実施形態において、研磨パッド3には開口部が設けられている。研磨パッド3の開口部には、第8~第10実施形態による透過性の窓部(46、62)が設けられていてもよい。
【0059】
(第6実施形態)
図4の半導体基板5は、研磨対象としてのシリコン酸化膜23の下にシリコン窒化膜22が設けられていたが、例えば、研磨対象としてのシリコン酸化膜23の下にシリコン炭化膜がある場合、第1および第2反射光のS偏光の光量が第3反射光のS偏光の光量を上回るような入射角θ
Iは、約78.6°以上となる。このように半導体基板5に設けられている積層構造の材料が異なると、適切な入射角θ
Iも変化する。
【0060】
そこで、第6実施形態による研磨装置106は、角度調節機構88と、構造入力部89とを備えている。
図16は、第6実施形態による研磨装置の構成例を示す断面図である。駆動部としての角度調節機構88は、構造入力部89に入力された半導体基板5の構造に基づいて、第1および第2反射光のS偏光の光量が第3反射光のS偏光の光量を上回るように照射部10および受光部11の傾斜を変更する。
【0061】
ユーザは、研磨対象としての半導体基板5の積層構造の材料等の情報を構造入力部89に入力する。積層構造の情報は、記憶部86に格納される。演算部85内の入射角計算部は、積層構造の各材料の屈折率等を用いて、第1および第2反射光のS偏光の光量が第3反射光のS偏光の光量を上回るような入射角θIを算出する。角度調節機構88は、入射角計算部で算出された入射角θIに従って、照射部10および受光部11の傾斜を調節する。
【0062】
これにより、半導体基板5に設けられた積層構造の材料が異なる場合でも、第1および第2反射光のS偏光の光量が第3反射光のS偏光の光量を上回るように、入射角θIを設定することができる。その結果、研磨装置106は、終点検出の精度を向上させることができる。
【0063】
第6実施形態は、第1~第4実施形態のいずれかに適用してもよい。第6実施形態を第2実施形態に適用する場合、角度調節機構88は、照射部10および/または受光部11の角度に代えて、第1ミラー29および/または第2ミラー30の角度を変更すればよい。
【0064】
(第7実施形態)
図17は、第7実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図である。
図17には、開口部12およびその周辺の構成を示す。第7実施形態による研磨装置107は、第1ミラー29と、第2ミラー30とを備えている点で第2実施形態と同じである。また、照射部10および受光部11がそれぞれ第1および第2ミラー29、30の鉛直下方に配置されている点でも第2実施形態と同じである。
【0065】
しかし、第4実施形態では、光路変更機構39が光路領域13内に設けられている。光路変更機構39は、光路領域13内において半導体基板5の研磨面に対して略垂直方向に移動可能である。第1および第2ミラー29、30は、このような光路変更機構39に配置されている。従って、第1および第2ミラー29、30は、光路変更機構39とともに、半導体基板5の研磨面に対して略垂直方向に移動可能である。第1ミラー29は、照射部10から略鉛直上方向へ照射された照射光LIを半導体基板5に対して傾斜する方向へ屈曲させる。第2ミラー30は、半導体基板5からの反射光LRを受光部11へ屈曲させる。光路変更機構39には、照射部10および受光部11を透過させる材料(例えば、石英ガラス)を用いている。
【0066】
研磨パッド3には、開口部12が設けられており、光路変更機構39の上面は、研磨パッド3とともに半導体基板5の研磨面に接触している。光路変更機構39の下方には、光路領域13に純水を供給する純水供給部14が設けられている。研磨処理の際には、純水供給部14が光路領域13に純水を供給することによって、光路変更機構39を、純水の圧力によって押し上げる。これにより、光路変更機構39は、半導体基板5の研磨面に押圧される。このとき、半導体基板5が研磨パッド3から浮き上がることを防ぎ、半導体基板5の研磨処理の妨げにならないように、光路変更機構39を押し上げる圧力は、半導体基板5を研磨パッド3へ押し当てる研磨圧力より低いことが好ましい。
【0067】
これにより、研磨パッド3の厚みが変化したときに、半導体基板5の略鉛直方向の移動に従って、光路変更機構39は、半導体基板5によって押されて略鉛直方向へ移動する。これにより、研磨パッド3の厚みが変化しても、光路変更機構39は、半導体基板5の研磨面と第1および第2ミラー29、30との間の距離を維持することができる。
【0068】
尚、第7実施形態において、光路変更機構39は、純水の圧力で半導体基板5に押圧されているが、純水に代えて他の透明な液体(流体)を用いても構わない。また、図示しないが、光路変更機構39は、動力シリンダ等の他の駆動機構を用いて半導体基板5に押圧されても構わない。
【0069】
また、光路変更機構39の上面の外縁部の少なくとも一部には、傾斜部41が設けられており、面取りされている。傾斜部41は、或る曲率を有するラウンド部であってもよい。研磨テーブル4の回転によって光路変更機構39上から半導体基板5が無くなったときに、光路領域13の純水の圧力によって、光路変更機構39の中心部が研磨パッド3の表面よりも高い位置まで上昇する場合がある。しかし、光路変更機構39の外縁部が傾斜部41によって研磨パッド3の表面よりも低い位置にあれば、半導体基板5が再来したときに、半導体基板5は、傾斜部41から光路変更機構39上に乗り上げて、研磨ヘッド6の圧力により光路変更機構39の上面を研磨パッド3の表面の高さまで押し下げることができる。これにより、再度、
図17に示す状態になる。従って、半導体基板5が光路変更機構39上に来るごとに、半導体基板5の研磨面と第1および第2ミラー29、30との間の距離はほぼ一定に維持され得る。
【0070】
光路変更機構39上に半導体基板5が無くても、光路変更機構39の外縁部を研磨パッド3の表面よりも低く維持するために、ストッパ40が光路変更機構39に設けられている。ストッパ40は、略水平方向に突出し、光路領域13の略水平方向に設けられた凹部に受容されている。光路変更機構39が略鉛直上方向に移動したときに、ストッパ40が光路領域13の凹部の上面に当接することによって、光路変更機構39は停止し、それ以上、上方へ移動できなくなる。これにより、光路変更機構39の外縁は、研磨パッド3の表面よりも低い位置に維持され得る。
【0071】
尚、研磨テーブル4の回転に同期させて、光路領域13の純水の圧力を制御することによって、半導体基板5が光路変更機構39上に無いときに、光路変更機構39の上面を研磨パッド3の表面から突出しないようにしてもよい。この場合、光路変更機構39の外縁部には、傾斜部41を設ける必要は無い。
【0072】
第7実施形態によれば、光路変更機構39が半導体基板5の研磨面に押圧されるので、照射光LIおよび反射光LRの屈曲点である第1および第2ミラー29、30と半導体基板5の研磨面と間の距離を、研磨パッド3の厚みによらずほぼ一定にすることができる。これにより、研磨装置107は、照射部10および受光部11を移動させることなく、照射光LIを半導体基板5の研磨面の同一領域に照射することができ、かつ、反射光LRを受光部11に確実に到達させることができる。
【0073】
研磨終了後、研磨パッド3の表面をドレッシングする際には、光路変更機構39を下方向に移動させ、光路変更機構39の上面を研磨パッド3の表面より下に低下させる。これにより、ドレッサ機構9による光路変更機構39へのダメージを抑制することができる。
【0074】
光路変更機構39は、研磨テーブル4とは独立しているので、研磨テーブル4から取り外して交換することが可能である。この場合、半導体基板5に設けられている積層構造に応じて入射角θIを変更可能なように、光路変更機構39は、他の構成を有する光路変更機構に交換してもよい。
【0075】
図18~
図20は、第7実施形態による研磨装置の変形例を示す断面図である。
図18に示す光路変更機構39_1は、石英ガラス内に第1および第2ミラー29、30を埋設している。光路変更機構39_1は、
図17の光路変更機構39に比べて、ミラー29、30と半導体基板5との間の光路の途中における屈折面を少なくしている。また、照射部10からの照射光L
Iは、純水と光路変更機構39_1との界面に対して略垂直方向から入射する。第2ミラー30からの反射光L
Rは、純水と光路変更機構39_1との界面に対して略垂直方向から出射する。これにより、照射光L
Iおよび反射光L
Rの光路において、屈折面が少なく、光路変更機構39_1の設計が容易になる。
【0076】
図19に示す光路変更機構39_2は、半導体基板5との接触面に透過性樹脂42を設けている。石英ガラスが半導体基板5の研磨面に接触すると、その研磨面にスクラッチが発生する場合がある。本変形例による光路変更機構39_2は、その上面に半導体基板5より柔らかい透過性樹脂42を有することによって、半導体基板5へのスクラッチを抑制することができる。
【0077】
図20に示す光路変更機構39_3は、半導体基板5との接触面の少なくとも一部に開口部43を有する。これにより、照射光L
Iおよび反射光L
Rの全ての光路は、光路領域13内の純水となり、屈折面が無い。照射光L
Iは、第1ミラー29から開口部43を介して半導体基板5に照射される。反射光L
Rは、開口部43を介して第2ミラー30に達する。
【0078】
光路領域13に開口部43があると、光路領域13内の純水は圧力で光路変更機構39_3を押し上げることができない。従って、本変形例による研磨テーブル4は、動力シリンダ機構44がストッパ40の直下に設けられている。動力シリンダ機構44は、光路変更機構39_3の上面を半導体基板5の研磨面に押し当てるように光路変更機構39_3を略鉛直上方向へ押し上げている。動力シリンダ機構44の押上げ力は、半導体基板5が研磨パッド3から浮き上がらないように、半導体基板5を研磨パッド3へ押し当てる研磨圧力より低いことが好ましい。尚、スラリ8が混入しないように純水供給部14は他の実施形態や他の変形例と同様に光路領域13に純水を供給している。
【0079】
このように、第7実施形態による光路変更機構39は、
図18~
図20に示す光路変更機構39_1~39_3のいずれかあるいはその他の光路変更機構に交換し、照射光L
Iの入射角を変更してもよい。尚、上記実施形態および変形例において、ミラー29、30が用いられている。しかし、ミラー29、30に代えて、プリズムを用いて、照射光L
Iおよび反射光L
Rの光路を変更してもよい。また、ミラーとプリズムを組み合わせて、照射光L
Iおよび反射光L
Rの光路を変更してもよい。
【0080】
(第8実施形態)
第1~第7実施形態では、研磨パッド3には、照射光LIおよび反射光LRの光路に開口部12、43が設けられている。
【0081】
これに対し、第8実施形態によれば、研磨パッド3には、照射光LIおよび反射光LRの光路に透過性の窓部46が設けられている。窓部46は、例えば、石英ガラス、透過性ウレタン等でよい。
【0082】
図21(A)および
図21(B)は、窓部46の底面が半導体基板5の研磨面あるいは研磨パッド3の表面と略平行である比較例を示す断面図である。
図21(A)は照射光L
Iの光路を示し、
図21(B)は反射光L
Rの光路を示す。
【0083】
図21(A)に示すように、照射部10からの照射光L
Iは、窓部46の下部に存在する空気を通して窓部46の底面47で屈折する。さらに、照射光L
Iは、窓部46の上面48に到達し、窓部46と半導体基板5との間に存在する水49で再度屈折し、半導体基板5の研磨面に照射される。このとき、半導体基板5の研磨面への入射角θ2を大きくするためには、窓部底面47および窓部上面48での屈折を考慮し、窓部底面47への入射角θ1をθ2より大きくする必要がある。窓部底面47への入射角θ1を空気から窓への臨界角以上に大きくすると、窓部下面47で全反射してしまい、半導体基板5へ入射光を到達させることができなくなる。このため、半導体基板5の研磨面への入射角θ2には上限が存在する。θ2の上限は窓部46の屈折率に依らず、水から空気への臨界角(48.6°)となる。従って、研磨層1の上面と下面からの反射光の干渉が十分に強くなるまで入射角θ2を大きくすることができない。
【0084】
一方、
図21(B)に示すように、半導体基板5の研磨面からの反射光L
Rは、水を介して、窓部46の上面48で屈折し、底面47に到達する。半導体基板5の研磨面からの反射角θ3が水から空気への臨界角(48.6°)を超える場合、底面47への反射光L
Rの入射角θ4は、窓部46から空気への臨界角を超えてしまう。これにより、反射光L
Rは空気中に放出されずに窓部46の底面47で全反射し、受光部11に到達しなくなってしまう。
【0085】
このように、窓部46の底面47を半導体基板5の研磨面と略平行になるように設計した場合、照射光LIの入射角θ2を水から空気への臨界角以上にすることはできない。また、入射角θ2を水から空気への臨界角以上にしたとしても、反射光LRの反射角θ3が水から空気への臨界角を超えるので、反射光LRは窓部46の底面47で全反射してしまう。よって、受光部11が反射光LRを検出することができない。
【0086】
図22(A)および
図22(B)は、第8実施形態による窓部46の構成例を示す断面図である。
図22(A)に示すように、第8実施形態による窓部46の底面47は、照射光L
Iの入射角θ
WIを大きくすることができるように、半導体基板5の研磨面あるいは研磨パッド3の表面に対して傾斜している。照射光L
Iの光路における底面47の傾斜角をθ
TIとすると、照射光L
Iの入射角θ
WIは、比較例の入射角θ1と比べて傾斜角θ
TIの分だけ大きくすることができる。これにより、窓部46の上面48に対する照射光L
Iの入射角も大きくすることができるので、半導体基板5の研磨面への照射光L
Iの入射角θ
Iは、水から空気への臨界角(48.6°)を超える角度にすることができる。従って、研磨層1の上面と下面からの反射光の干渉を十分に強めることができる。
【0087】
図22(B)に示すように、第8実施形態による窓部46の底面47は、反射光L
Rの放射角θ
WOを大きくすることができるように、半導体基板5の研磨面あるいは研磨パッド3の表面に対して傾斜している。反射光L
Rの光路における底面47の傾斜方向は、照射光L
Iの光路における底面47のそれとは反対となる。反射光L
Rの光路における底面47の傾斜角をθ
TOとすると、底面47への反射光L
Rの入射角θ
RIは、比較例と比べて傾斜角θ
TOの分だけ小さくすることができる。従って、半導体基板5の研磨面からの反射角θ
Oが水から空気への臨界角(48.6°)を超えていても、入射角θ
RIは、窓部46から空気への臨界角を超えないようにすることができる。これにより、反射光L
Rを空気中に放出させることができ、受光部11は、反射光L
Rを受光することができる。
【0088】
ここで、所望の入射角θ
Iにするための傾斜角θ
TI、θ
TOの範囲は、以下の式3~式6で表される。n
WATERは水の屈折率、n
WINDOWは、窓部46の屈折率、n
AIRは空気の屈折率である。
【数3】
【0089】
図23は、入射角θ
Iと傾斜角θ
TI、θ
TOとの関係を示すグラフである。尚、窓部46は、ウレタン(屈折率1.490)とした。傾斜角θ
TI、θ
TOの上限ULおよび下限LLは、式3~式6から得られる。傾斜角θ
TI、θ
TOおよび入射角θ
Iは、上限ULと下限LLとの間で設定可能である。例えば、入射角θ
Iを約75.4°とすると、傾斜角θ
TI、θ
TOは、約17.7°~約120.0°の間に設定すればよい。
【0090】
さらに、入射角θ
Iが水から空気への臨界角を超えるか否かにかかわらず、傾斜角θ
TI、θ
TOが式7および式8を満たす場合、入射角θ
WIおよび窓部46の底面47から放出される反射光の鉛直方向からの放射角θ
WOは、入射角θ
Iよりも小さくすることができる。これは、照射部10および受光部11の小型化に繋がる。
【数4】
このとき、入射角θ
WIおよび放射角θ
WOは、式9および式10で表される。
【数5】
【0091】
図24は、傾斜角θ
TI、θ
TOと入射角θ
WI、放射角θ
WOとの関係を示すグラフである。尚、窓部46は、ウレタン(屈折率1.490)とした。入射角θ
Iが75.4°の場合に、入射角θ
WIおよび放射角θ
WOを入射角θ
Iよりも小さくするためには、傾斜角θ
TI、θ
TOは、約33.0°以上である必要がある。入射角θ
Iが45.0°の場合に、入射角θ
WIおよび放射角θ
WOを入射角θ
Iよりも小さくするためには、傾斜角θ
TI、θ
TOは、約27.8°以上である必要がある。さらに、入射角θ
Iが45.0°の場合、傾斜角θ
TI、θ
TOを約80.7°に設定することによって、入射角θ
WIおよび放射角θ
WOをほぼ鉛直方向(即ち、0°)にすることができる。この場合、照射部10および受光部11は、窓部46の鉛直下方に配置することができる。
【0092】
図25(A)および
図25(B)は、第8実施形態による窓部46の構成例を示す断面図である。第8実施形態において、研磨パッド3の一部に開口部があり、窓部46は、開口部の研磨層1に対応する箇所に設けられている。窓部46には、例えば、透過性のポリウレタンが用いられている。
【0093】
図25(A)に示す窓部46は、第1透明部63と、第2透明部64とを有する。第1透明部63は、照射光L
Iを半導体基板5へ透過させ、照射光L
Iを入射させる入射面が
図22(A)に示す底面47のように窓部46の上面または半導体基板5の研磨面に対して傾斜している。第2透明部64は、半導体基板5からの反射光L
Rを透過させ、反射光L
Rを出射させる出射面が
図22(B)に示す底面47のように窓部46の上面または半導体基板5の研磨面に対して傾斜している。第1透明部63の入射面と第2透明部64の出射面は、互いに逆方向に傾斜している。
図22(A)および
図22(B)を参照して説明したように、第1透明部63の入射面は照射光L
Iの入射角θ
WIを大きくすることができるように傾斜しており、第2透明部64の出射面は反射光L
Rの放射角θ
WOを大きくすることができるように傾斜している。第1透明部63の入射面の傾斜角θ
TIおよび第2透明部64の出射面の傾斜角θ
TOは、上記の通りである。
【0094】
図25(B)に示す窓部46の第1透明部63は、複数の傾斜部分63aに分割されている。複数の傾斜部分63aの傾斜角はそれぞれ等しくθ
TIである。第2透明部64も、複数の傾斜部分64aに分割されている。複数の傾斜部分64aの傾斜角はそれぞれ等しくθ
TOである。即ち、第1透明部63および第2透明部64は、それぞれフレネルプリズム構造となっている。
【0095】
図25(B)の窓部46は、
図25(A)の窓部46と同様の効果を有する。しかし、傾斜角θ
TI、θ
TOが大きい場合、
図25(B)の窓部46の中心部の厚みは
図25(A)の窓部46のそれよりも薄くすることができるという利点がある。従って、窓部46の厚みを抑制しつつ、傾斜角θ
TI、θ
TOを大きくするには、
図25(B)に示すフレネルプリズム構造を有する窓部46が好ましい。
【0096】
尚、第8実施形態において、窓部46の底面47に傾斜が一体として設けられている。しかし、窓部46の底面47は上面と略平行にして、傾斜構造を底面47に別途接着してもよい。この場合、窓部46と傾斜構造(図示せず)とは別材料で形成してもよい。
【0097】
(第9実施形態)
図26は、第9実施形態による研磨装置の構成例を示す概略断面図である。
図26には、開口部66およびその周辺の構成を示す。第9実施形態による研磨装置109は、透明部としての窓部62を有する。透過性の窓部62は、開口部66のうち研磨層1に対応する箇所に設けられている。
【0098】
窓部62の下の光路領域13には、高屈折率液体供給部67が設けられている。高屈折率液体供給部67は、純水もしくは純水より屈折率の大きい高屈折率液体を光路領域13に供給する。これにより、高屈折率液体供給部67は、窓部62の下の光路領域13内に純水または高屈折率液体を充填することができる。純水または高屈折率液体は、照射部10と窓部62との間、および、受光部11と窓部62との間に満たされる。これにより、照射光LIおよび反射光LRが屈折率の低い空気と材料膜との界面で屈折することを抑制することができる。
【0099】
また、高屈折率液体を光路領域13に供給すれば、窓部62の底面の傾斜角θTI、θTOを0°としても、半導体基板5への照射光LIの入射角θIを大きくすることができ、その反射光を窓部62の底面より出射させ受光部11に到達させることができる。これにより、研磨層1の上面と下面からの反射光の干渉を十分に強めることができる。
【0100】
さらに、高屈折率液体を光路領域13に供給した場合、窓部62の底面に傾斜角θTI、θTOを0°としても、照射光LIの鉛直方向からの角度θWIおよび窓部62から放出される反射光LRの鉛直方向からの角度θWOは、入射角θIよりも小さくすることができる。
【0101】
さらに、第9実施形態は、第8実施形態と組み合わせてもよい。この場合、傾斜角θTI、θTOが正値に設定されるのでさらに角度θWI、θWOを小さくすることができる。尚、窓部62の厚みは、研磨パッド3の厚みにより制限されるため、傾斜角θTI、θTOは小さいほうが好ましい。
【0102】
角度θ
WI、θ
WOは、式11および式12のように表される。n
FILLERは高屈折率液体の屈折率である。n
WINDOWは窓部62の屈折率である。θ
TIは、照射光L
Iの光路における窓部62の底面の傾斜角である。θ
TOは、反射光L
Rの光路における窓部62の底面の傾斜角である。
【数6】
【0103】
図27は、窓部62の底面の傾斜角θ
TI、θ
TOと角度θ
WI、θ
WOとの関係を示すグラフである。尚、窓部62は、ウレタン(屈折率n
WINDOW=1.490)とした。入射角θ
Iは、75.4°とした。
【0104】
光路領域13に充填される媒体が空気である場合、窓部62の底面の傾斜角θTI、θTOは、0°にすることはできず、約18°以上にする必要がある。光路領域13に充填される媒体が純水である場合、窓部62の底面の傾斜角θTI、θTOは、0°にすることができるが、その場合には、角度θWI、θWOは、入射角θIと同じ約75.4°にする必要がある。光路領域13に充填される媒体が高屈折率液体としての1-ヨードナフタレン(屈折率nFILLER=1.701)である場合、窓部62の底面の傾斜角θTI、θTOは、約0°にすることができ、かつ、角度θWI、θWOは、例えば、約49.3°と小さくすることができる。このように、高屈折率液体を光路領域13に充填することによって、窓部62の底面は、半導体基板5の研磨面または窓部62の上面に対して傾斜せず、傾斜角θTI、θTOを約0°にすることができる。
【0105】
第9実施形態では、光路領域13内の流体と窓部62上にあるスラリとが窓部62によって分離されており、充填液とスラリは混合しない。このため、研磨特性に影響を与えたり、光路領域13内の流体の屈折率が変化することを抑制できる。
また、窓部62が開口部66に設けられているので、研磨パッド3の交換時に、光路領域13内に流体を満たすことが容易である。さらに、光路領域13内には、流体が満たされているため、研磨パッド3の表面と半導体基板5の接触による振動や変位が光路に影響を与えない。
【0106】
(第10実施形態)
図28および
図29は、第10実施形態による研磨装置の構成例を示す概略平面図および断面図である。第10実施形態によれば、照射部10および受光部11は、研磨テーブル4の外部に設けられており、研磨ヘッド6を挟む位置に配置されている。研磨テーブル4には、照射光L
Iを通過させる第1光路P1が開口部12および光路領域13に連通するように設けられている。また、研磨テーブル4には、反射光L
Rを通過させる第2光路P2が開口部12および光路領域13に連通するように設けられている。第10実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0107】
研磨テーブル4の外部に配置された照射部10は、照射光LIを入射窓68および第1光路P1を通過させて半導体基板5の研磨表面に照射する。反射光LRは、第2光路P2および放射窓69を通過して、研磨テーブル4の外部に設置された受光部11により受光される。尚、入射窓68は、照射光LIを屈折または反射しないように照射光LIに対して略垂直面であることが好ましい。放射窓69は反射光LRを屈折または反射しないように反射光LRに対して略垂直面であることが好ましい。
【0108】
第10実施形態では、研磨テーブル4は回転するものの、照射部10および受光部11は、固定配置されている。このため、半導体基板5に照射光L
Iを照射して、受光部11が反射光L
Rを受けるためには、研磨テーブル4、照射部10および受光部11が
図28に示す配置関係になる必要がある。即ち、研磨テーブル4が1回転するごとに、半導体基板5の研磨対象(シリコン酸化膜23)の膜厚が1回だけ測定可能となる。
【0109】
第10実施形態では、照射部10および受光部11を研磨テーブル4の外部に設置している。このため、回転する研磨テーブル4には、照射部10および受光部11を配置する必要が無く、光路P1、P2および光路領域13等を設ければよい。従って、研磨テーブル4を小型化および軽量化することができる。
【0110】
図30は、第10実施形態の変形例による研磨装置の構成例を示す概略平面図である。本変形例では、研磨テーブル4に複数の第1光路P1、複数の第2光路P2および複数の開口部12が設けられている。複数の開口部12は、研磨テーブル4の回転中心からほぼ同一距離にほぼ均等に配置されている。照射部10および受光部11は、複数の第1光路P1、複数の第2光路P2および複数の開口部12を介して、半導体基板5に照射光L
Iを照射して、受光部11が反射光L
Rを受けることができる。これにより、研磨テーブル4が1回転するごとに、半導体基板5の研磨対象(シリコン酸化膜23)の膜厚が複数回測定可能となる。即ち、半導体基板5の研磨対象(シリコン酸化膜23)の膜厚の測定頻度を増加させることができる。
【0111】
図31は、第10実施形態の他の変形例による研磨装置の構成例を示す概略平面図である。本変形例では、複数の第1光路P1、複数の第2光路P2および複数の開口部12が半導体基板5の径方向に配列して設けられている。複数の照射部10および複数の受光部11が、第1光路P1、第2光路P2および複数の開口部12に対応して設けられている。本変形例では、複数の照射部10および複数の受光部11が、複数の第1光路P1および複数の第2光路P2を介して、半導体基板5に照射光L
Iを照射して、受光部11が反射光L
Rを受ける。これにより、複数の照射部10および複数の受光部11は、半導体基板5の径方向に異なる位置において膜厚を測定することができる。即ち、半導体基板5の研磨対象(シリコン酸化膜23)の膜厚の面内分布を知ることができる。
【0112】
このように、第1光路P1、第2光路P2、開口部12、照射部10および受光部11の配置、個数は、任意に設定可能である。また、
図30の変形例と
図31の変形例とは組み合わせてもよい。
【0113】
図32は、第10実施形態のさらに他の変形例による研磨装置の構成例を示す断面図である。本変形例3では、光路領域13は、外気に開放されており、光路領域13には空気がある。照射光L
Iおよび反射光L
Rは、空気を介して照射されあるいは出射される。
【0114】
研磨パッド3には、開口部66が設けられている。開口部66のうち研磨層1に対応する箇所に、透過性の窓部62が設けられている。窓部62は、開口部66を覆うように設けられている。
【0115】
照射部10、受光部11、第1光路P1および第2光路P2の角度は、窓部62の底面および上面における屈折を考慮して、照射光LIが半導体基板5の研磨面に所望の入射角θIで入射し、反射光LRが受光部11に到達するように設定される。尚、入射角θIを水から空気への臨界角を超える角度にする場合、第8実施形態のように窓部62の底面を傾斜構造にしてもよい。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0117】
3 研磨パッド、4 研磨テーブル、6 研磨ヘッド、7 スラリ供給ノズル、9ドレッサ機構、10 照射部、11 受光部、16 偏光フィルタ、85 演算部